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非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part36 [転載禁止]©2ch.net

1 :創る名無しに見る名無し:2015/03/05(木) 01:14:17.94 ID:Wob/LOal
1999年刊行された小説「バトル・ロワイアル」

現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。

基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前に登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などを発表するかは書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・ロワ名を「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!

前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part35
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1393846727/

非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html

2 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/08(日) 22:30:25.87 ID:s2N4+ooG
新スレッド乙です
では投下します

3 :「閉ざされたドア叩き壊したい」 ◆ymCx/I3enU :2015/03/08(日) 22:31:04.59 ID:s2N4+ooG
83話 「閉ざされたドア叩き壊したい」

「野獣、KMR、嘘だよ……あいつら死んでしまったのか」
「……」
「春巻先生まで……」

D-5エリアイベントホール内にて、第二放送を聞いたMUR、貝町ト子、鈴木フグオの三人。
死者の発表ではそれぞれの知っている名前が何人も呼ばれた。
MURはクラスメイトで、仲が良かった野獣先輩こと田所浩二、KMR、
仲が良かった訳では無いが交流はそれなりに有った虐待おじさんこと葛城蓮の三人、
フグオは担任教師の春巻龍、ト子は三人の中では最も多い、太田太郎丸忠信、銀鏖院水晶、シルヴィア、テト、フラウの五人が呼ばれた。
また、四、五時間程前に出会い、また会う約束をして別れた野原ひろしも、その妻と共に名を呼ばれている。
反対に彼と一緒に居たト子のクラスメイト、ラトは呼ばれなかった。

「野原さんも……また会おうって言ったのに、奥さんの方も呼ばれていたゾ……」
「おじちゃん、奥さんに会えたのかなキャプ……」
「分からない……会えていれば良いんだけどな、いや、良いと言えるかどうかは分からないけど」

野原ひろしについて話し合うMURとフグオを尻目に、ト子は個人的な思考を巡らせていた。

(太田め、ざまあみろ……)

今まで自分を良いようにしてきた鬼畜男、太田の死を心の中で喜ぶト子。
自身もその死を喜ばれるような屑だと言うのは理解していたが、それでも喜ばずには居られない。

(……テトも死んだのか)

一方で、テトの死について複雑な感情を抱く。

会わなくて良かったと思う反面、やはり許されなくても、会って謝りたかったと言う気持ちもわき起こった。

(会わなくて良かったのか、それとも……)

「ト子ちゃん?」
「え?」

物思いに耽るト子の様子を心配したMURがト子に声を掛けた。
不意を突かれる形となったト子は驚く。

「考え込んでるのかゾ? 大丈夫か?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「確かト子ちゃんのクラスメイトも何人か呼ばれていたけど、親しい人が居たのか……?」
「気にしないでくれ」
「……なら、良いんだが……」
「……生き残りは、私達を入れて15人。だいぶ減ってしまったな。
今もどんどん減っているかもしれない」
「そうだな」
「禁止エリアは四つともここからは離れている、が、その内のE-4は、会場中央の市街地の半分を覆う。
このイベントホールに生き残りがやってくる可能性も高まるだろうな」

ト子が指摘するのは、新たに指定された禁止エリアによる生存者達の移動。
人が集まりやすいと思われる会場中央部の市街地、それの地図から見て右半分、つまりE-4エリアが禁止エリアの一つに指定されている。
その為、今居るイベントホールへ生存者が訪れる可能性も今まで以上に高くなると思われた。
無論、殺し合いに乗っている、乗っていないに関わらず。

ここで、三人は筆談を始める。

4 :「閉ざされたドア叩き壊したい」 ◆ymCx/I3enU :2015/03/08(日) 22:31:40.21 ID:s2N4+ooG
〈時にト子ちゃん、首輪の方はどうなってるゾ?〉
〈ぼくも気になるキャプ〉

MURとフグオが一番知りたいのは何と言っても首輪についてであった。
ト子は二人の顔を交互に見た上で、返事を書き綴る。

〈解除方法は大方算段が付いた。だが、実際に、生存者の、稼働している状態の首輪で試さなければ、
方法が合っているかどうか分からない〉

ト子の書いた内容は、二人に希望と緊迫を半々に与える。
長時間に渡って首輪の解析を行い、ト子は起爆させずに首輪を解除出来るであろう方法をどうにか編み出した。
しかし、それは今現在理論上の話でしか無い。
彼女が書き綴ったように、生きている参加者の首輪でその方法を試さなければ、方法が本当に合っているかどうかはまだ分からないのだ。
故に、一番最初に解除方法を試す事になる参加者は、死の危険性を孕む「実験台」と言えた。

〈最初に解除を希望する奴は、死ぬ事を覚悟する他無い、と言う事だなゾ?〉
〈察しが良いなMURさん。そう言う事だ〉

「?」

すぐにト子の伝えたい事を察せられたMURとは違い、クエスチョンマークを浮かべるフグオ。
しかし、かなり深刻な事を二人は議論していると言う事は理解していた。
フグオの様子を見て取ったMURは、流石にそのまま伝える事を憚り柔らかく誤魔化してフグオに書き伝えた。

〈首輪を外すのは危ない事には変わらないから、注意しないといけないって事だゾ〉

それを読んで、納得したのか否かは不明だったが、フグオは頷いた。
MURはト子との筆談に戻る。

〈でも、運営の奴らがあれだけ外せないって言っていた首輪を外そうとするんだから、それなりの覚悟はして貰わないといけないと思うゾ〉
〈だが、解除希望者がそれを理解してくれるかどうか〉

首輪の解除を最初に志願する者は相応のリスクを背負って貰う必要が有る。
無論、ト子も解除方法については、何度も吟味を重ねてきたつもりだったが、それでも確実とは言えない。
その辺りを志願者に理解して貰うのは時として難しい、最悪揉め事に発展する恐れも有る。

〈いざと言う時は、俺の首輪で試してくれ〉
〈MURさん?〉

唐突なMURの申し出にト子は戸惑う。

〈勘違いしないでくれ、決して自分の命が最優先って訳じゃない。
俺の首輪でト子ちゃんの編み出した方法が正しいって事を証明してくれって事だゾ。そうすれば信用を得られるだルルォ?〉

MURは、ト子の首輪解除法の有効性を示す為の「実験台」を自ら願い出たのだ。
勿論、志願者がト子の方法に不信を表したらの話ではあるが。

〈危ないプリ……そんなの〉

フグオが心配するが、MURは穏やかに笑い、返事を書いた。

〈心配してくれてありがとうだゾ、フグオ君。でも、ト子のおねえさんはとっても頭が良いからきっと大丈夫だゾ。俺はト子ちゃんを信じているゾ。
あー、こう書くとト子ちゃんに凄くプレッシャーを与えてしまうかもしれない……〉
〈いや、気にしなくて良いMURさん〉

5 :「閉ざされたドア叩き壊したい」 ◆ymCx/I3enU :2015/03/08(日) 22:35:34.85 ID:s2N4+ooG
「自分を信じる」そうMURから伝えられ、ト子は勇気付けられた。
尻込みしていても何も始まらないのは分かっているし、MURの思いを無駄にする訳にもいかない。
自分は一度、友人の信頼を裏切って、結果、自分の身を滅ぼす遠因となった。
再び、信頼を裏切るような真似は、ト子としても御免であった。

〈いざと言う時は、頼むよMURさん〉
〈当たり前だよなぁ? 任せてくれだゾ〉

そこまで協議した所で、三人は筆談を切り上げた。

「腹減ったなぁ」
「そうだな、昼だし、何か食べよう。と言っても支給品の食糧しか無いが」
「僕もお腹空いたキャプ……」

一先ず、三人共空腹を感じていたので、適当に何か食べる事にした。


【日中/D-5イベントホール】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康(全身のダメージはほぼ回復)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。取り敢えず食事を摂る。
       2:野獣、KMR、野原さん……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪(分解)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。少し休もう。
       2:他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪の解除方法を誰かで実践しなくてはならないが……。
       5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※首輪の解除方法を編み出しましたが、あだ確実では有りません。

【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神疲労(大)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:春巻先生……。
       2:……死にたくない。誰かが死ぬ所も見たくない。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※「死」に対して敏感になっています。

6 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/08(日) 22:36:34.12 ID:s2N4+ooG
投下終了です 未だにフグオの支給品が不明と言う事実に草

7 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:11:37.76 ID:ecHOh/rm
投下乙です、何気にそちらもかなり終盤……!
こちらも四字熟語ロワを投下します。
エピローグ2、主催戦、まず一度で投下できる分量でキリいいところまで。
できれば一気に投下したいんだけど制限ってつらいなあ…。

8 :46◇おはなし(1/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:12:58.44 ID:ecHOh/rm
 


 そして、おはなしの時間。


◆◆◆◆


 おはなしの時間を設けます、そう言われた直後――――。
 まばたきを一つして、目を開くとそこは廊下だった。
 コンクリートの床は灰色で、中央に白のライン。
 壁は上下に黒のラインが入った白壁で、等間隔に四角窓が空いている。
 窓の外は雑木で遮られ、明かりは天井からの蛍光灯。それも等間隔。
 少年が抱いた第一印象は、どこかの施設だ、というものだった。
 蛍光灯によって照らされた廊下の奥には、洋風の大きな木扉がある。
 大きな部屋があの奥にあるとすれば、
 ここはおそらく――最初に集められた講義室のような場所に続く廊下だ。

「とすると……これは、夢から醒めたって、ことなのかな?」
「いえ、まだ夢の中ですよ」

 後方から声がして、少年は振り向く。
 長く続く廊下の、少し離れた場所に、一人の男が立っていた。
 少年は水色のシャツを着たその男の姿に、目を丸くした。
 見覚えのある人物だった。

「……え?」

 そしてそれは、そこにいるはずがない人物だった。
 ……いていい人物では、なかった。だって、死んでいるはずなのだから。
 銀の髪を横に撫でつけた男は、いつか聞いたものと同じ、キザな口調で話し始める。

「お久しぶりです、紆余曲折くん。
 優勝……おめでとう、というべきなんですかね……」
「……えっと……すいません、……まさかあなたが、“主催”?」
「いいえ、違います」
「でも……じゃあなんで――いや……そういえば……」

 そういえば。
 と少年はその人物が死んだ瞬間のことを思い出す。
 そういえば、あのとき、爆発音は聞いたけれど。
 死体は確認、してなかった。
 この人の死体は、禁止エリアへ飛んで行って、車の向こうに、落ちたから。

「じゃあ……まさか、爆発が……」
「ええ、フェイクだったんですよ」

 男は少年の解答を先回りする。

「あのときボクの首輪は確かに爆発したけれど、それはボクを殺すようなものではなかった。
 爆発音が大きく聞こえたのは、内蔵スピーカーによるもの、だそうです。
 そしてボクは、……「先手必勝」は、“文字だけ死亡扱いになって”、あの場から退場させられた」

 そしてここにいる。
 ここに、ずっといたのだと。
 あの悪夢の娯楽施設にて「先手必勝」の名を与えられていた男は、早口にそう言った。

9 :46◇おはなし(1/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:14:47.27 ID:ecHOh/rm
 
 爆発した、という首輪は、彼の首からはすでに外されている。
 代わりに首輪が巻かれていた首筋の一部分に、ケロイドじみた焼け跡がある。 
 どうやら首輪は、“実演”した焼肉定食のもの以外は、
 一部だけが小爆発するものだったようだ。
 男の容姿をさらに見れば、
 死ぬ前にかけていた銀縁のメガネは、今は外した状態になっている。
 娯楽施設に置いてくる形になってしまったのか? 聞くと、どうやらその通りだった。

「あのメガネが、ボクの遺品ということになるんでしょうね」
「……遺品、って……あなたはまだ、生きてるじゃないですか」
「いいえ、死んだんですよ。「先手必勝」はあそこで。生きているのは紆余曲折くん、君だけです」
「リョーコさんみたいなことを言わないでください……大体、」
「一刀両断に会いたいですか?」
「……は?」

 また唐突に、銀髪の男は言った。
 
「会えますよ。あの扉の向こうに、彼女は居ます」
「何を」
「ボクと違って、死体は確認した、ですよね。ええ。分かります。
 でも、居ます。一刀両断はあの向こうにね。そして、主催も。
 脱落し、落ちのびてここにいるボクの役目は……あの扉の向こうまでのエスコート。
 ちょっとしたサプライズ用の、案内役……ボクはそれだけの存在、というわけです。
 最後に登場する奴に先手必勝なんて名前が付いていたなんて、まったく笑えませんけどね……」
「……すいません。把握が追いつきません、というかそもそも、」
「首輪をそんな仕様にする意味が分からない、ですか?」

 先手必勝だった男は、そこだけは与えられた文字通りに、
 常に少年の思考を先回りしたかのような言葉や問いかけを少年に投げた。
 先手を打たれて二の句を継ぐタイミングを外された少年を前に、男はさらに先回りをする。
 少年のほうへと近づいて、その首にまだ嵌まっている銀の首輪に手を伸ばしながら、言葉をこぼす。

「そうですね。そうでしょう。普通に爆発するように作ればいいものを、どうしてそうしたのか。
 普通に考えたら分かりませんよね。ボクだって分かりませんでした。
 あんなお別れまでしておいて生き残らされて……恥さらしにもほどがあるって話だ。
 でもね、それは前提からして間違っている思考なんです。守られたのはボクの命じゃない。
 単純な別解。
 主催者の側に立ってみれば、すぐ分かることだったんです。
 先手を打って、言っておきましょう。答えは……首輪が“参加者”を管理するものだから、です」
「……?」
「いえ……違いますね。どちらかといえば」

 こちらに近寄ってくる男の手に。鍵、のような形状のものが、握られていた。
 その鍵が、いまだ状況把握に手間取っている少年の首輪に触れると、
 首輪は首の左側からぱきりと開いて、半円孤二つが連結したものになった。
 見栄えの悪い「3」か「ω」のような状態になったその筒状物体を掴んで、
 その裏側――首に触れていた部分に、さらに男は鍵のようなものを当てる。
 するとさらに筒がズレて、中身が露出した……いや、開かれて、落ちてきた……。

「首輪それ自体が」

 首輪の筒の中に入っていたのは、

「実験の“参加者”の、本体だからです……と言った方が、近いんでしょうね」
「……!!」

10 :46◇おはなし(1/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:15:52.75 ID:ecHOh/rm
 
 丸められた、紙だった。
 男は紙を開く。
 四角い紙を、巻物を垂らすようにゆっくりと開く。
 そこに書かれていた文字は――「紆余曲折」。
 虹色の文字で描かれた……本当に最初の最初に少年が見た、文字紙だった。

「それ、……!」
「これが、“君”です。大事に持っておいてください」
 
 男は少年に文字紙を押し付けると、扉へ向かってすたすたと歩き出した。
 少年は受け取った紙を見つめて、四秒間ほど停止した。

 ・
 ・
 ・
 ・

 逃げではない。
 頭の中で色々な問いと回答が砂嵐のように廻った結果、動くことができなかったのだ。
 首輪。の中に、四字熟語。紆余曲折。首輪。文字紙。
 七色のインク。世界の規則を揺るがすルール能力。首輪の中に。首。脊髄。脳。
 ルール能力を使っていたのは。
 そう、これは実験。ここは夢の中。その中に、脱出しても爆発しない首輪。

(そうだ)

 少年は後追いで組み上がっていく論理パズルに操られるように脳内で声を出す。

(奇々怪々はこれは実験だと言った。そして実験には、「観測するもの」が必須だ。
 モニターで観測できるのは外部の情報だけ。対象の内部を観測するものは……
 実験対象の近くになければいけない。それが首輪だったんだ。
 ルール能力も通じないほどに首輪が頑丈に守られていたのも、
 主催や殺し合いに反抗しても脱出してしまっても首輪が爆発しなかったのも、
 首輪が壊れてしまうことが一番ダメなことだったなら納得できる。
 傍若無人が首輪を集めていたのだって、首輪については言及できなかったのだって、
 首輪が最重要アイテムかつ最機密アイテムだったのなら、より筋が通りやすくなる。
 ルール能力が使い手が死んでもしばらく残っていたのも、
 そもそもルール能力が僕たちではなく、首輪から発生していたのなら、理由がついてしまう……)

 「来ないんですか」と、その場で止まっていた少年に男が発破をかける。
 考えに俯いていた少年はその言葉に打たれて慌てて銀髪の男の方へ歩き出す。
 顔を上げて前を向くと、突き当たりにある洋風の大扉に再び視線が向いた。

(そうだ、扉。……まだその先は未知だった)

 新たな情報で塗りつぶされかけていたが――他にも考えなければいけないことはあった。
 あの扉の向こうには何が居ると、先ほど男は言った?
 少年にとって、最も重要な情報を漏らしていたのではなかったか?
 首輪の真実は明かされた。だがそれらについては、まだ不透明なままだ。
 一刀両断がいる、などと言った意味も、男が自らをもう死んでいると称した意味も分からないまま。
 少年は早足で男に追いつくと、ひと息を整えてから刺すような声で尋ねる。

「……色々なことに、今、説明がつきましたが、」
「まだ分からないことのほうが多いでしょう?」
「……っ」

 問いかけにはまた先手の回答。その間にも早足で廊下は歩かれて、
 もともとそう長くはなかった扉との距離がぐんぐん縮まっているのに、少年は気付く余地が無かった。

11 :46◇おはなし(1/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:18:11.00 ID:ecHOh/rm
 
「でも、ボクは結局、エスコート役。ボクから得られるものは、多くは望めません。
 どうせ扉の向こうには、全てを知る者がいるんです。そちらに聞いてみればどうでしょう」
 あるいは、扉をくぐる前に推理してみても面白いでしょうね。どちらを選ぶかは君に任せます」

 たたたたたたんと勢いよく歩いていた男の足は、
 そこまで言い切ると扉の直前で、ピタリ、と止まる。

「ボクは。この扉の向こうには行きたくないので、ここで、終わりです」
「っ、行きたく……ない?」

 急な停止に危うく追い抜きかけて、振り返るように少年は男を見る。

「行きたく、ないって……なんで、」
「……」
「え?」

 眼に入ってきたのは、やや下を向き、
 諦めと寂しさを残してほかを全て失ったような目をした銀髪の男の姿だった。
 その瞳を覗いた少年は、推理してしまう。
 これもまた、ヒントなのだと、気づいてしまう。

 迂回の思考回路を焼き切って直接推測が脳にまわる。
 扉の前で意味深に止まった男。「行きたくない」は、「会いたくない」、だろう。
 一刀両断が扉の奥に居ると男は言った。では一刀両断に「会いたくない」、だろうか?
 違うはずだ。確かに先手必勝が戦いに敗れて死んだのは一刀両断の乱入の影響が大きかったが、
 短い中で感じた先手必勝の印象からして、彼はずいぶん論理的で負けず嫌いだ。
 負けた相手に会うのが怖いだとか、みじめだとかの、逃げの感情を持つとはあまり思えなかった。

 では同じく扉の奥で待っている主催に「会いたくない」? こちらはありうる。
 なにしろ殺し合いの首謀者で、そしてきっと底の知れない超越的な存在であろう。
 いくら負けず嫌いといっても、人間の範囲の話だ。絶対的なものの前では人は竦み上るしかない。
 男が主催を怖がり、会いたくないと思っている可能性は否定できない。
 だがしかしそれも何か違うと少年は思った。
 男の目が、どこか懺悔をしているようなその目が、主催に向けられたものだとは少年には思えなかった。
 では例えばその目が「ごめんなさい」だとしたら。
 誰に向けての、「ごめんなさい」?

 心当たりは、あった。

「……分かりました」
「分かりましたか」
「はい。何が起きているのかは、大体。
 そしてそれを理解するためには、扉を開けないといけないってことが、分かりました」

 臆病思考を振り払って、少年は扉の取っ手に手をかけた。

「さすが、いい察しの早さですね」
「褒められるような話じゃないですよ。場合によっては、
 あなたが会いたくないその人にひどいこともするかもしれないですし、
 それでも何も出来ずに終わるかもしれない。そっちの可能性のほうが、むしろ高いです」
「いいんですよ」

12 :46◇おはなし(1/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:20:01.21 ID:ecHOh/rm
 
 銀髪の男は、卑屈にも聞こえる言葉を吐いた少年の肩を、ぽんと叩いた。
 そして、いつか自分が掛けられた言葉を、今度は自分から掛けた。

「ダメだったら、次の作戦を考えればいい。
 君は優勝した。“負けたボクと違って”、実験からの解放を約束された存在だ。
 今、全世界で君以上に、主催と対等な存在は居ない。驕らず、焦らず、無理せず戦って下さい」
「……!」
「だから――頼みましたよ」

 少年は扉を押し込みながら、最後の最後に一つ気付いて後ろを振り返ろうとした。
 だけどその動作よりも、男が少年を扉の奥へと押し込む動きの方が早かった。
 少年は、男の顔を見れなかった。
 負けたがゆえに、実験からいつまでも解放されない、永久凍土の中の化石のような、
 永久の冷たい夢の中へ閉じ込められた男の姿を眼に焼き付けることは、ぎりぎりで叶わなかった。

 ・
 ・
 ・
 ・

 その代わり、広がった視界の先は。

 扉が閉じる音と共に、少年が見た光景は。

 ・
 ・
 ・
 ・

「“こんにちは”。いや、“こんばんは”?
 少なくとも、まだ夢から醒めていないから“おはよう”じゃないね――」

 そこは、大学の講義部屋のようなところだった。ただし机はなくて、イスがある。
 何もない白い空間の中、前方のステージに大きなイスがひとつあった。
 その上にちょこんと、椅子の大きさに不釣り合いな小ささで、
 白衣を着たちょっと地味目な女の人が座っている。
 奇々怪々ではない。もっと毒気が少なくて、装飾品も何もなくて、
 髪もぼさぼさではないし、体格も小さい、いたって普通の女の人だった。

「はじめまして、は微妙にニアイコールって感じだけど……とりあえずはそれでいいかな?」

 超然とした何かを想定していた少年からすると軽く拍子抜けなくらい、
 外見は普通に見えるその少女めいた女性は、ほほえむ。
 それはどこか人間味を欠いているような表情であるように、少年には思えた。

「ともかく、待ってたよ。さあ、おはなしをしよう。楽しい、おはなしを。
 ああ、君と話すのを、ずっと前から楽しみにしていたような気さえするなあ……
 対等な会話は、久しぶりなんだ。他の実験仲間は慕ってしかくれないし、“ひとりあそび”は楽しくないしね」

13 :46◇おはなし(1/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:21:36.25 ID:ecHOh/rm
 
 だって。
 こんな状況で、どうして笑えるんだ。
 椅子に座る彼女の周りに、「居る」のに。
 すでに死んだはずの人が――人たちが、幽鬼めいた無表情で、部屋の中に、「居る」のに。

 傍若無人が。
 優柔不断が。切磋琢磨が。
 東奔西走が。青息吐息が。鏡花水月が。破顔一笑が。
 洒々落々が。先手必勝が。
 軽妙洒脱が。一望千里が。心機一転が。猪突猛進が。
 一刀両断が。

 実験で死んだはずの十四人が。
 しかも先ほど外にいたはずの先手必勝まで含めて。
 人形みたいな表情で、人形みたいに動かずに。
 あるモノは床に倒れあるモノはだらんと腰を床につけて座り
 あるモノはぐちゃぐちゃの体勢で放置され、あるモノは棒立ちでポーズを取って。
 人形みたいに扱われ、人形みたいに置かれているのに。
 その真っ只中に、
 その中心に彼女は、それが当たり前であるかのように座っている。いた。
 おもちゃ箱をひっくり返してあそぶ、王様気取りの子供のようにだ。
 人間。人形。おもちゃ。文字。遊ぶ、娯楽。……娯楽施設。


「あたしの名前は、「天飼千世」。
 文字を愛して文字になった、最初の幻想言語学者。
 ようこそ、あたしの部屋(りょういき)へ。歓迎するよ、紆余曲折(ゆうしょうしゃ)くん」


.

14 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/10(火) 04:22:28.57 ID:ecHOh/rm
投下終了です。続きは、ちかいうちに。

15 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/11(水) 21:45:40.22 ID:WvYmAan7
投下乙です
あれえ……何なんだこの展開は、たまげたなぁ
続き気になります

自分も投下します

16 :何で太陽は僕をいぢめるの ◆ymCx/I3enU :2015/03/11(水) 21:48:22.53 ID:WvYmAan7
84話 何で太陽は僕をいぢめるの

E-4エリアからの退避を目的として、ノーチラス達四人は西方向へとひたすら歩いていた。
遠方から銃声が響く時も有り、その都度、生き残りの数が少なくなった今も殺し合いは確実に継続している事を四人は再認識させられる。

「もうそろそろ、E-4からは出られたんじゃねーか? ノーチラスのにーちゃん」

とある十字路に差し掛かった時に小鉄がノーチラスに言う。

「うーん、確かに大分歩いた気はするけどな……」

小鉄の言うようにE-4エリアからは既に脱しているかもしれないが、
エリアの境界線と言うのが地図上では描かれているが、実際の場所に線が引かれたりしている訳では無いので、
現在位置が本当にE-4の外かどうかノーチラス含め四人共判断が付かない。

「んん……」

サーシャが自分の地図を取り出し、周囲の建物と地図に記載されたD-4エリアのランドマークを照らし合わせる。

「どう?」

傍に居た沙也がサーシャの地図を覗き込む。
ノーチラスと小鉄もこれに続く。
結果、地図のD-4エリアに記載されている店と、四人のすぐ近くに有る店が一致し、現在位置が間違い無くD-4エリアで有る事を四人は確認した。

「どうやらこの辺りはD-4みたいだな」
「じゃあもう急ぐ必要ねーよな?」
「ふぅ……」
「取り敢えずは安心、って事かな?」

一先ず首輪作動の危険は回避出来、四人は安堵の表情を浮かべる。

「これからどうしようか」

サーシャがノーチラスに尋ねる。

「そうだな……南にイベントホールが有ったよな、そこに行ってみるか。目立つ建物だし人が居るかもしれない」
「宛ても無いし、良いと思うけど……小鉄君と君塚さんは?」
「俺もそれで良いと思うぜ」
「私も構わないよ」
「よし、決まりだな」

四人は次の行き先を、現在位置から南に存在するイベントホールに決めた。

17 :何で太陽は僕をいぢめるの ◆ymCx/I3enU :2015/03/11(水) 21:48:57.90 ID:WvYmAan7
【日中/D-4市街地】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、ジュースやお菓子(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。フグオ、金子先生を捜す。
       1:サーシャのねーちゃん達と一緒に行動。イベントホールへ向かう。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しています。
    ※E-4エリアから脱出した事を確認しました。

【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ローバーR9(3/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)、???(武器になる物では無い)
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:ノーチラス、君塚さん、小鉄君と行動。イベントホールへ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※テトから「以前の殺し合い」の真相を聞きました。まだノーチラスには話していません。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しています。
    ※E-4エリアから脱出した事を確認しました。

【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラス、サーシャさん、小鉄君と行動。イベントホールへ向かう。
        2:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しています。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて発見した死体が土井津仁である事を確認しています。
    ※E-4エリアから脱出した事を確認しました。

【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(1/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(7)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也、サーシャ、小鉄と行動。イベントホールへ向かう。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しています。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて発見した死体が土井津仁である事を確認しています。
    ※E-4エリアから脱出した事を確認しました。

18 :何で太陽は僕をいぢめるの ◆ymCx/I3enU :2015/03/11(水) 21:49:43.61 ID:WvYmAan7
◆◆◆


ラトの傷の手当てを済ませ、しばらく休んだ後、遠野達三人はMUR達が居るであろうイベントホールへ向け出発した。

「傷の具合は大丈夫ですか? ラト君」
「無理しないでね」
「ありがとう……」

遠野と樹里がラトを気遣う。
腹部に重傷を負い、処置したと言っても遠野と樹里が素人知識で頑張った程度の心許無い物。
本来なら安静にするべき状態である。

「もう十分休んだし、それに、いつまでも休んでは居られないよ。
さっきも言ったけど、MURさんとまた会うって約束したからね。遠野さんも早くMURさんと合流したいでしょう?」
「それは……そうですけど……まあ、無茶はしないように……」
「ああ」
「……さっき、どこかからまた銃声が聞こえたし、気を付けて行こ」

ラトの状態と、周囲の様子に気を付けながら、三人はイベントホールを目指す。


【日中/D-4市街地】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]精神的疲労(大)
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(5)、TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ、
     コルト ポリスポジティブ(5/6)@現実、.32コルトニューポリス弾(12)、オートマグ(3/7)@現実、オートマグの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:ラトさん、北沢さんと行動。MURさんの元へ向かう。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでが触手の怪物になった事を知りました。
    ※フラウのクラスメイトの情報を当人より得ています。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

19 :何で太陽は僕をいぢめるの ◆ymCx/I3enU :2015/03/11(水) 21:50:17.67 ID:WvYmAan7
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腹部に盲管銃創(処置済)
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)、デトニクス スコアマスター(6/7)@現実、スコアマスターの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:北沢さんと行動。遠野さんを連れ、イベントホールへ向かう。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、
     モンキーレンチ、コンバットナイフ@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:ラト、遠野さんと行動。
        2:サーシャに会ったらシルヴィアの事を伝える。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。
    ※首輪からの盗聴の可能性についてはラトから伝えられています。

※三人はノーチラス達とは離れた場所に居ます。

20 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/11(水) 21:52:54.70 ID:WvYmAan7
投下終了です。
状態表はもう適当になってきたので雰囲気でカバーして下さい(執筆者の屑)
次回作では状態表をもっと改善と言うか色々しないとなぁ

21 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:36:17.56 ID:HgiEN0OE
後半戦の状態表クソめんどいですよね…
もともと状態表はリレー時のバトンとして作られたものなので、非リレーだと
自分で覚えておきたいとこ以外は省略してくってのが持論です
弾数の残りとかは僕は管理無理だ!って投げるけど、
これはこだわっただけ得るリアリティもあるし、一概には言えないですねー

四字熟語ロワ投下します!

22 :46◇おはなし(2/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:37:20.69 ID:HgiEN0OE
 
「あたしの名前は、「天飼千世」。
 文字を愛して文字になった、最初の幻想言語学者。
 ようこそ、あたしの部屋(りょういき)へ。歓迎するよ、紆余曲折(ゆうしょうしゃ)くん」
「――ッ!!」


 少年は手を後ろに回し、扉に張り付くくらい、その場から後ろに下がった。
 分かってしまったのだ。比喩でもなんでもなく。
 目の前の彼女は、人ではない「べつのそんざい」で。
 娯楽施設は、実験は、彼女のための娯楽でもあるのだと、理解できてしまったからだ。

「ああ……予想はしてたけど予想以上だった?」

 分かりやすい顔をしていただろう少年を優しい目で見て、主催の女性は言った。

「うん。うんうん。驚いてるけれど、それは目の前の光景、状態に対してだけで、
 死んだはずのキャラクター(文字)がここに揃っている状況は予測していたってところかな?
 君ならきっと内心は、そのくらいのリアクションだと思うんだよね。
 でもまあ、びっくりして、退いちゃうよね。そりゃあそうだ。
 落ちつくまで待ってもいいけど……どうだろう。そろそろ会話をしてくれると、嬉しいんだけど?」
「……、……ッ」
「あれ? 思ったよりショックうけてるのかな? うーん、でも、そっか。
 他はともかく、ここには君が殺した文字も、「居る」ものね。当然、一刀両断も。
 さっき別れたばかりの相手とこんな形で再会ってのは……予想出来てても辛いものがあるか。
 じゃあちょっと、サービスしてあげよっかな。時系列、も最後の最後に合わせたげるよ」

 指鳴らしぱちり。
 狭くない部屋にも響くような音が広がると、床に垂直に立っていたポニーテールのジャージ女が、
 少年の知るところの一刀両断が、瞳に朱い光を灯らせて、がたたんと静止状態を崩すように動いた。
 彼女は表情は変えないまますぐに自分の両手を見て、次に周りの風景を見る。
 そして一瞬のうちに現況を把握したらしい。
 眉間にしわをよせ、口の端を引きつらせて困ったような表情をした。
 一刀両断のそれは、やってくれたな、という感じの表情であることが、少年には分かっていた。
 だから少年はそこまで察すると、そこでようやく、言葉を発することに成功した。

「リョーコ、さ、ん……」
「……」

 呼びかけにはいろいろな想いが含有されていた。
 例えばあれだけ思い切り今生の別れみたいなことをやっておいて、
 こんな速攻かつ異常な状態で再会だなんておいおい、みたいな気持ち。
 その次に、これは、先手必勝と同じ気持ちなのだろうか、
 彼もまた青息吐息と同じように会ってしまって同じようにこんな気持ちになったのだろうか、
 という思いがやってきたし、多分そうなのだろうという肯定も同時に襲って来ていた。

 でも初期感情の最初の10%くらいがそれだとしたら
 そのあと70%くらいは「また会えてよかった」だった。

 この先絶対に無い、それこそ地獄にでも落ちた時くらいにしかないと思っていた再会に遭遇してしまったのだから、
 半信半疑で扉を開いた先に見覚えのあるポニーテールがあって、
 それが見覚えのある赤いジャージを着た見覚えのある顔の人のしている見覚えのある髪型だと確認したその瞬間に、
 驚きとか恐怖とか疑いとかの否定感情をどこかへ吹っ飛ばして感動とかそのへんのわっとくる思いが
 紆余曲折の少年の脳地図を埋め尽くしてしまっていたのは確認するまでもない事実だったし、
 人形のように動かなかったその身体が動かされて命のようなものが宿ったように見えた
 その瞬間には思わず、安堵、のようなものを覚えてしまっていたのも確かだ。

 もちろん残り20%で後追いで冷静に状況を把握しようとも努めていた、
 だが少年は無意識的にそれを脇に置いた。

23 :46◇おはなし(2/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:39:50.81 ID:HgiEN0OE
 
 ありえないだとか罠だとか、まず思い通りの結果にはならないだろうとか、
 そういう思考がきっと正解だということは脳のどこかで分かっていた、分かっていたけれど望んでしまう。
 ただ「紆余」と、死ぬ前のあのときの最後に笑いあったように呟く言葉が聞きたくて、
 聞いておきたくて聞いて何かを得たくて聞いて安心したくて、少年は呼びかけた。

「リョーコ……さん?」

 呼びかけて、しまった。呼びかけて、しまったのだった。

「……」
「ふふ」
「……」
「ねぇ。答えてあげなよ、一刀両断。
 知ってるでしょう? あそこにいるのは、君が惚れこんだ男だよ」

 少年の呼びかけを見て、「天飼千世」は嬉しそうに、一刀両断へと語りかける。
 一刀両断は、困ったような表情を崩さないままに、「天飼千世」のほうを見ると力の限り睨んだ。

 ・
 ・
 ・
 ・

 何秒ほど睨んでいただろう、一刀両断は無言で首を下に振った。
 一瞬それは肯定の頷きにも見えたけれど、少年が見た限りでは違った。
 珍しいことだが、本当に始めて見たんじゃないかと思うのだが、一刀両断は迷うような表情で俯いたのだ。
 迷ったのだ。うつむいて、どうすればいいのか、考え始めたのだ。

 そしてすぐ、そこはやはり彼女に与えられた文字通りに瞬時に決意をしたようで、
 主催を睨んでいた時間より明らかに短い思考時間のあと、一刀両断は少年の方を見て、
 少年と目を合わせた。

「……」
「……」

 そこまで時間を置いたから、少年の方も少しはもう、望みを捨てられていた。
 こちらを向いた一刀両断が、これも初めて見たかのように泣きそうな表情をしていたので、
 捨ててもいっぱい残っていた望みをさらにかいつまんで捨てた。
 そしてさらに、軽く眼をつむりながら一刀両断が「うん」と頷いてそのあと、
 象徴的に、首を横に振ったとき、
 眉を八の字にしながら、ふるふる、と振って「ノー」を表した時にはもう、
 捨てたあと残っていた中からかいつまんで捨てたあと、それでも残っていた願望を、
 あり過ぎたそれを、極限まで減らしていた。
 ああ、きっと望んだようなことにはならないのだと。
 減らし切ってもう大丈夫だと思ったところに、不意打ちの言葉だった。


「はじめまして、“紆余曲折”」


 と、彼女は言った。


「あたしは、“一刀両断”だ。“あたし”が、その、なんだ……世話に、なったな」

 ・
 ・
 ・
 ・

24 :46◇おはなし(2/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:44:04.61 ID:HgiEN0OE
 
「  」

 少年は、その言葉を呪わずにはいられなかった。
 ――「紆余」でもなく、「よぉ、」でもない、
 ――「久しぶり」でもなければ、「すまねーな」でもない、
 ――「なんだよ変な顔して」でもないし、「ああ、まいったな」でも、「ちくしょう」でも、
 ――なんならあって欲しかった、ひどい想像だろうとそれなら受け止められた、「誰?」でもなかった。

 はじめまして。
 あたしが、世話になったな。

 だった。

「いまの回答の通りだ。お前の知るあたしは、もう死んだ。
 ここにいるこのあたしは、
 そのあたしを元にして人格を付加された、“四字熟語”の一刀両断。
 リョーコさんじゃ、ない――擬似的な文字じゃない、本物の文字になった、存在だ」

 「そして……これを作り出すことこそが、
 この実験のふたつめの目的だったってことだ」、と。

 最初の文字とたくさんの人の形をした文字とひとつの悲しげな作られた文字と
 たったひとりの人間だけがいる部屋の中で、一刀両断は、吐き捨てるように、呟いた。

 その風景をにやけながら見ていた「天飼千世」は、そっと補足する言葉を置く。

「ちなみに。この実験の目的は、今彼女が言ってくれたものを含めて、主に“4つ”ある。
 データ収拾がひとつ。四字熟語の形成がひとつ。
 そして、因果の調整と……その収束による“勇者”の裁定。
 おはなしは。それを今から、君に教えようってことなんだよ、紆余曲折くん。
 反応を見てあたしが楽しむから、早く君も席に付こう? テーブルとイスは、今出すよ」

 再度、主催は指を鳴らす。
 一刀両断の目から朱色の光が消えてその動作が止まる。床に顔から崩れ落ちる。
 同時に部屋の中央に小さなテーブル。少年の前に大仰なイスが出現する。

「君に君の名前を返すのは、そのあとだ。
 さあ、座って。聞いてくれるだけだって構わない。欲しい理由を、全てあげる。
 君たちを殺し合わせた文字が、なぜそうしたのか、
 疑問に思っていることすべて、あたしが語る……種明かしの、時間だよ」


「そんなものいらないからあなたを殺すと言ったら?」

 メインディッシュを前に主催が舌なめずりして少年を手招き口招きした、その時だった。
 初めて少年が主催に言葉を返した。
 返しながら少年は、右手を地面に平行な高さまで上げて、真っ直ぐに伸ばしていた。
 その手には、黒い物体、
 物体としか表現できないへんてこな形のものが握られている。
 へんてこなそれは上側がまるで爆発したかのように裂けていて、そのくせ持ち手があって、
 どこか銃みたいな形をしていて、しかし銃の機能はとても果たせないように見えた。

 そう、
 それは、少年が優柔不断を殺す際に使用した拳銃のなれのはて。
 “リョーコさん”がしっかり回収し、そして最期の時に“紆余”に返したモノ。
 「百発百中」の銘が入ったそれを少年は、「天飼千世」へと真っ直ぐ向けていた。

25 :46◇おはなし(2/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:46:52.31 ID:HgiEN0OE
 
「僕は。僕は……あなたとおはなししに来たんじゃない、
 あなたと戦いに来たんだ。あなたを」
「……」
「殺しにきたんだ」
「……《百発百中》。服の下に隠してたんだ」
「天飼さん。あなたは――生きているべきでは、ない」

 少年はまじりけのない本音を撃ちこむ。
 こいつは生きているべきではないというのが、少年の回答で、感情だった。
 怒りは薄い。向ける感情は諦めが一番近かった。
 目の前の存在は、人間ではなく、文字なのだ。
 人間を文字へと変えてしまう、恐るべき化け物だったのだ。

 人を拉致して殺し合わせ、
 殺し合わされる人間が必死にもがく姿を笑いながら、
 生き様だけを盗んで、自分の手元に置いた文字人形に降ろして遊んでいるような、そんな存在だったのだ。
 充分だった。
 目の前のそれが「べつのなにか」で、そこに対話の余地などないことは、もう十二分に分かった。
 決断は、もうした。

 そんな少年の言葉と行動に、「天飼千世」は呆れ顔をする。

「じゃあ撃ってみればいいよ」
「……」
「撃ってみれば、いいよ。その銃身のない銃でも、銘が砕けていないなら《百発百中》は機能する。
 君に支給していた「鎧袖一触」の盾は文字部分を真っ二つにされて文字を失ったけれど、
 あたしが見るにその銃はまだ、あたしの心臓を確実に貫くに十分な条件(ルール)が添加されている」
「……それは、挑発ですか」
「試験の申し込みだよ、紆余くん。きみが、人間が、あたしを。
 文字を殺せるかの試験だ。まあ、合格か不合格か、
 その結果をあたしはもう、知っているかもだから……試験するのは、君だけど」
「……」
「撃てないなんてことはないでしょう? 君はそれを乗り越えてここに来たんだから。
 殺せるようになったから、殺しに来たんだから。だから、殺してみればいい。引き金を引くだけの簡単な作業」
「……」
「あたしは逃げも隠れも防御も、反撃もしないよ」

 挑発的に主催は両手を挙げた。少年はごくりと唾を呑む。
 ――これで殺せるとは思えない。余裕綽々かつ挑発的な態度がなによりの証拠だ。
 そもそもルール能力を通さない首輪を作れる主催側に《百発百中》の銃は、気休めでしかない。
 それでも、この一撃でなにかが掴めれば。糸口の一つでも見つかれば。

「……分かりました。死んで、ください」

 少年は引き金を引いた。

 ・
 ・
 ・
 ・

「さて、じゃあまずひとつ目だけど、これはぼくから解説しよう」

 椅子に座る壮年の男が、向かいの椅子に座る少年に礼儀正しく話しかけた。
 《先程まで、特徴のない女性の外見だったそれは、今はそのような外見になっている》。
 口調も合わせて変わったようで、《銃を取り上げられ》《椅子に座らされた》少年は少し混乱した。
 銃弾は――どうなったのだっけ。外れた? 当たっても跳ね返された?
 それともそもそも撃たせてすらもらえなかった? いや、確か引き金は引けた。
 銃弾は飛んで行った。そこまでは覚えている。そのあと、《当たるはずのそれが当たらなかった》のだ。

26 :46◇おはなし(2/4) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:50:21.43 ID:HgiEN0OE
 
「ひとつ目……四字熟語のデータを取りたいという理由だね。
 これを説明するにはまず、君が知るルール能力とは何なのかというところから、説明する必要がある」

 さらにその後《気付いたら椅子に座らされていて》、《銃が奪われていた》。
 ……混乱は整理できたけれどやはりというかなんというか、意味不明で不条理だ。
 苦い顔をする少年の前で、壮年の男に《なった》天飼千世は、少年から奪った銃をくるくると回す。
 
「まず、ルール能力をこの世にひとつ産むには二つのものが必要になる。
 ひとつは文字、ひとつはそれを解釈する人間だ。ただ、どんな文字でもいいわけではない。
 君も知っているとおり、指定のインクで描く必要がある。そのインクは――」

 かちり、と急に銃の引き金が引かれる。
 ドン。
 
「こうやって作られている」

 撃たれたのは少年ではなく、天飼千世の、銃を持っていないほうの手だった。
 少年は目を見張った。
 天飼千世――今は男の姿の、その文字の前腕に大きな穴が空いて、その先から血が流れている。
 虹色の、血が。噴きだすように流れている。
 もちろん撃ち間違いでも腔発でもないようで、男は平然としていた。
 少年も驚いたが動揺はしない。インクが血液――想像はしていなかったが、
 明らかに人の世界のモノではないインクだ、フラスコで作ったと言われるよりは説得力がある。

「そのインクで書いた文字に、力が宿るってことですか?」

 ……とにかく今は、相手にできることとできないことを知る必要がある。
 少年が確認のために問いかけると、天飼千世は頷いた。
 頷きながら、テーブルに流れた血を指につけて文字を書き始める。

「そうだ。これはぼくの……最初の文字の身体からしか出ない、文字の原液だ。
 これがすべての能力を形作る素材となる。だがそれには、人間の解釈を必要とする。
 しかもただ意味を解釈するのではない。文字の力を信じてもらった上で、
 自分ならその文字にどんな力を見出すか、を解釈してもらわなければならない」
「文字の力についての講義を最初にして、首輪を付けるのにそれを使ったのは、そのためってことですね」
「ああ」
 
 不思議な虹色の血は指筆でもテーブルによく伸びて、四字熟語を描き出した。
 文字は「焼肉定食」。
 最初の講義にも“使われた”四字熟語とはいえないような気もする四文字。

「さて、この文字。君に解釈してもらおう」
「……僕にやらせるんですね。あなたは“文字”で“人間”ではないから、できないと?」
「その通りだ。文字は新たにルール能力を定義することができない。さあ、やってみてくれたまえ」
「……」
「文字は身体に近い方がいい。触って」

 言われるがままに少年は文字を触りにいきながら、念じる。
 しかし、触れようとしたその指が、電流のような光に弾かれた。

「痛ッ」
「ははは、だめだよ。その文字からぼくを殺すような能力を連想しようとしたのだろうけれど、
 そういう無理で恣意的な解釈の押し付けは文字に拒絶される。
 文字が力を持つと知ってしまった後に、“文字に能力を持たせよう”と――文字を“使おうとする”のは悪手だ。
 それができるのはぼくたちの実験のように、その仕組みを知らない、まっさらな状態からスタートした被験者だけだよ」

 思考を読まれたダメ出しに少年は眉をひそめた。
 なるほど――それを理解させるために、わざわざ塩を送るようなマネをしたらしい。狡猾なやり方だ。

27 :※今回の投下はここまでです ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:52:46.59 ID:HgiEN0OE
 
「……恣意的な能力の決定には、限界があるってことですね。
 確かに僕は「焼肉定食」の字から、あなたを殺すような攻撃的な意味を感じ取れない。
 自分がこの文字をどう使うかではなくて。自分がこの文字ならどういう力を持っているのか、
 自分が文字として持つ力はなんなのか……自分を文字とシンクロさせる必要が、あると」

 少年はもう一度指で文字に触れながら言う。今度は文字は拒絶しなかった。
 《テーブルの上に、焼肉定食が現れる》。少年が行った定義は、文字通り《目の前に焼肉定食を出す》というものだった。
 天飼千世は《出てきた》焼肉定食を見てまた、はは、と笑った。

「察しがいいとは知っていたが、本当にいい解釈力だね。
 そう、そういうことだよ、紆余くん。大正解だ。
 ――さて、君がいまその焼肉定食の字に能力を定義したことで、その文字は“固定”された。
 もう君以外にその文字の能力を再定義することはできないし、新たに文字を刻んでもその能力になるだろう。
 “固定”……「文字」と「最初の解釈」の紐付けを外すには、かなり面倒な手順が必要になる。
 あまり成功率が高くないし、成功したとしても、文字の影響が薄れるまで、かなりの時間を待たなければならなくなる。
 それだけに、定義は基本的に慎重にしなければいけないんだ。分かったかな?」

 少年を試すような目で天飼千世は言った。
 ……分かったかな? と言われれば分かったかと答えるだろうが、
 少年はその言葉にもっと深い意味を読みとった。つまり、殺し合いをさせた意味について。
 文字のルール能力を定義できるのは人間だけ。
 そして、その事実を知らないまま、自分を文字だと思いこませるようにすることが
 より多彩な能力を生み出せるのだということは、なんとなく伝わった。
 実験の理由が「文字のデータを取るため」だというのはこれで完全に理解できた。
 
 だがそれだけでは“殺し合い”を開く理由にはならない。
 実験をする必要はあるだろうが、殺し合いの中でルールを定義させる意味はない。
 被験者にルール能力のしくみを教えないまま文字だけを与えて、
 何かの拍子に能力が定義されるのを見守ればいいだけだ。
 殺し合いの意味。極限状態でルール能力を定義させた、理由。
 定義は慎重に行わなければならない縛りの中で、時間効率も法律も無視する手段を取る、理由。

 娯楽でもあろう。でも、合理的な理由も、含まれているはずだ。
 ……ヒントは、殺し合いは極限状態だということだろう。
 非日常状態であると言うこと、一触即発の戦闘状態だということ。
 その中でのふるまい。それを期待しているのだとしたら。
 何を期待しているのか?
 見えてきた。そう――例えば今回の実験では、
 おそらく先に定義されたものを与えられたのだろう傍若無人を除けば――どういう能力が定義されていた?

「……戦うための、能力」
「そうだ。ひとつめの、殺し合いの中でデータを取る理由は、それだよ。
 ぼくたちは文字として……人と戦うための力が欲しい。そのための解釈が欲しい」

 ヒトに使われるだけの文字が、いまここに意味と意思を持っている。
 なのに、ヒトに使われるだけで満足できるはずがないじゃないか。

「文字だって、人を使っていいはずだ」

 天飼千世はあっけらかんと。されど真剣に、そう信じて疑わないといった顔で、言った。

「な……」
 
 少年はその言葉を聞いて、矢に撃たれたような衝撃を受けた。
 スケールが大きいなんてものじゃない。自分がいま、やっていることは。
 自分の立場は、ヒト代表だった。
 これは――ヒトと文字との、戦争だったんだ。

28 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/13(金) 03:53:48.62 ID:HgiEN0OE
投下終了です。なんか壮大な話に見えてきましたね
次も説明パートかなー

29 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:40:42.69 ID:X7pF03Fk
投下乙です
うわすごい事なってきましたね…正直頭良くない自分には
雰囲気で読み取るしか出来ないですけど(汗)

自分も投下します 長くなりそうなので前後編に分けます

30 :KUROAME(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:42:47.35 ID:X7pF03Fk
85話 KUROAME(前編)

MUR達が長い間拠点に使っているイベントホール。
第二放送からそれなりの時間が経った頃、訪問者が現れる。

「誰ゾ!」

見張りに立っていたMURがStg44を構えて警戒しつつ、訪問者「達」に問い質した。
「達」と述べたように、訪問者は複数、正確には四人居た。

「待ってくれ! 俺達は殺し合いには乗っていない」

四人の内の一人、茶色の狼獣人の少年が殺し合う気が無い事をMURに訴える。
「それは本当か?」と訝しんだMURだったが、良く考えれば殺し合いにやる気になった者が、
四人も固まって動くのは考え難かった為、程無くMURは警戒を解いた。

「すまなかったゾ……」
「いや、警戒するのは当然だ。気にしないでくれ」
「俺はMURって言うゾ。じゃあまず、君達の名前を聞かせてくれるかな?」

MURがそう求めると四人はそれぞれ自分の名前を述べた。
狼の少年が「ノーチラス」、紺色毛皮の猫少女が「サーシャ」、灰色毛皮の猫少女が「君塚沙也」、丸刈りの少年が「大沢木小鉄」。

「ん? ノーチラス君とサーシャちゃん、は、ト子ちゃんのクラスメイトだな?」

ノーチラスとサーシャが、同行者のト子から聞かされていた彼女のクラスメイトの内の二人であると思い出したMURが二人に尋ねる。

「そうだけど、貝町を知っているのか?」
「もしかして一緒に?」
「ああ。中に居るゾ。それと、小鉄君だったかな?」
「おう」

続いて、こちらも同行者のフグオからその名前を聞かされていた大沢木小鉄に、MURはフグオの事を伝えた。

「フグオ君の、クラスメイトだね? フグオ君も一緒に中に居るんだゾ」
「本当か!?」

フグオの事を聞いた小鉄は大きく反応した。
その様子から、彼もフグオを始めとして自分のクラスメイトに会いたかったのだなとMURは思う。

「取り敢えずみんな、中に入って、どうぞ」
「お言葉に甘えて……」
「お邪魔します」
「入るよー」
「フグオ……」

MURは四人をイベントホールの中へと通した。
メインに使っているホールにて、ノーチラスとサーシャはト子に、小鉄はフグオに再会する。

「ノーチラスに、サーシャか……」
「貝町、久しぶりだな。取り敢えず元気そう、だな」
「久しぶりだね、貝町さん……」
「……あ、ああ」

31 :KUROAME(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:43:19.81 ID:X7pF03Fk
ト子は引き攣り気味の表情で、ばつが悪そうだ。
それの原因はサーシャとの対面である、と言うのも以前の殺し合いでト子はサーシャを殺害した。
元々クラスメイトとは余り会いたくなかったが、よりによって自分が殺した一人と再会してしまうとはとト子はとても気まずい。

「どうしたの?」
「あ、いや」
「大丈夫だよ? 前の事なら、気にしてないから」
「……本当か?」
「気にしてないって言うか……状況が状況だし、今は不問にしとく」
「……」

サーシャは口ではそう言ったが、恐らく心では自分に憎悪を向けているに違い無い、ト子はそう思わずには居られない。
尤も自業自得、因果応報なのではあるが。
一方のノーチラスは、サーシャの様子が妙な事には気付いていたようだが、
サーシャがト子に殺される遥か前に落命していた為に事情が良く分からいのだろう、特に何も言わずに黙っていた。

「フグオ! うおーお前こんな所に居たのかよ、探したぞ!」
「小鉄っちゃん! 会いたかったキャプリィ……うっ、うっ」
「おいおい泣くなって」

小鉄との再会を涙を流して喜ぶフグオ。
今までどんな美味しい食物を食べた時よりも、幸福に感じていた。
いつ死に直面するか分からない状況で、精神をすり減らしていた彼にとって、小鉄との再会は大きな安らぎを与えた。

「いいゾ〜これ」

同行者二人が知り合いに再会出来て良かったと、MURはほっこりとした表情を浮かべる。
ト子とサーシャの間の妙な空気は少し気にはなったが。

……

……

サーシャは以前の殺し合いで同行者共々、貝町ト子に殺された。
そして今、そのト子が目の前に居る。
とは言っても、今更ト子をどうこうしようとも思わないが。
ただそれでも、一度自分を死に至らしめた張本人である事には変わり無い為もやもやする物は有る。
現にたった今のト子とのやり取りで、サーシャの返答には少し険が籠っていた。

「どうかしたのか?」

ノーチラスが心配してサーシャに尋ねる。
彼はサーシャがト子に殺される遥か前に死亡した為に事情は知らない。

「あー、大丈夫、こっちの事」

サーシャは誤魔化し、正確には答えなかった。
見た限り、今回の殺し合いではト子は殺し合いには乗っておらず、仲間を作ってこの殺し合いに反抗している。
「少なくとも」今現在は自分達と思想を同じくしているのだから、わざわざ遺恨を作らなくても良いだろう。

32 :KUROAME(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:43:51.22 ID:X7pF03Fk
(テトの時とはえらい違いね)

テトの時は会ったら殺意を抑えられなくなるのではと危惧したりしたのに、
自分を殺害したト子に対しては比較的寛大な接し方をしているのは何故なのかとサーシャは自問自答した。
テトは殺し合いの黒幕、ト子はその殺し合いに乗って自分やその時の仲間を殺した。
双方、罪状としては似たより寄ったりだと思うのだが。

(良く分からないや……)

結局理由はつかず、サーシャは思考を切り上げた。

……

……

「どうかした? 私の顔に何か付いてる?」

自分の顔を見ていたト子に、沙也がやや不快感を湛えた顔をしながら尋ねた。
とは言え、理由は予想付いていたが。

「……いや、すまない、ちょっと、クラスメイトに似ていたものでな」

やはりか、と沙也は少しうんざりした。

「テトって子でしょ」
「! 何故それを……」
「ノーチラスとサーシャさん、小鉄君にも間違われたからねー、あ、サーシャさんと小鉄君は、
そのテトって子と一緒に行動してたらしいわよ」

やや険の籠った口調で沙也がサーシャに言う。
元々自己承認欲求が強い沙也にとって――沙也に限った話では無いかもしれないが――他人と間違われる、
或いは他人の面影を重ねられるのは気分の良い物では無い。

「そ、そうなのか……すまない、確かにテトに似ていると思った。容姿だけでなく声も」
「そこまで言われたらちょっと本人に会ってみたいけど……それも叶わないか。
貝町さんだっけ? 貴方はテトって子の友達か何か?」
「いや、私は……」

沙也が何気無く質問すると、ト子は何やらとても困ったような、言い難そうな表情を浮かべ口籠った。
それを見て、どうやらト子はテトと何か嫌な思い出が有り、話したくないのだろうと沙也は判断する。
少なくとも仲の良い友達、と言う関係では無さそうだ、と。

「あー、良いよ。言いたくないなら無理に答えなくても」
「……済まん」

どうせ碌な事では無いだろうし、ト子とテトとの間に有った事など自分には関係無いと、沙也はそれ以上の追求はしなかった。

33 :KUROAME(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:44:32.56 ID:X7pF03Fk
……

……

「仁ものり子も、春巻先生も、死んじゃったプリ……」
「ああ……」

再会を遂げたフグオと小鉄は今は亡き友人や担任教師に思いを馳せる。
時々金絡みで暴走する事は有ったが友達思いの優しい男だった土井津仁。
小鉄と時々喧嘩もしたが明るく元気だった関西娘、西川のり子。
度々問題を起こし遭難し多くの人に迷惑を掛けていたが何やかんやで本気で憎めなかった春巻龍。
いつも当たり前のように身近に存在したこの三人とはもう永久に会話は出来ない。
そう思うとフグオはどうしようも無く悲しかった。

「金子先生は今どこに居るのかなぁ」
「分からねぇけど……アイツも結構、すげぇ体力してるし頭も良いし、きっと生き残ってるさ。
少なくともさっきの放送では名前は呼ばれなかったんだからまだ生きてる筈だ」
「うん……」

小鉄は、恐らく自分を励ます意味も籠めて希望的な事を言うが、根拠はどこにも無いだろうとフグオは諦観気味に思う。
フグオものり子や仁、春巻ならきっと生き残ると信じていた。だが現実は違ったのだ。
金子先生だって、放送時点では生きていたかもしれないが今現在はどうなのかなど分からない。

「フグオ、暗ぇよ……大丈夫か?」
「あ、ご、ごめんキャプ……」
「いや、謝る事は無ぇけどよ……いつもお菓子だの何だの食って笑ってるお前がそんな暗い表情するの多分初めて見たからよ」
「……」

小鉄の言う通り、自分はもうすっかり笑顔を浮かべる事が無くなってしまったとフグオは感じた。
状況が状況だけに仕方の無い事かもしれないが、普段の自分を知る者が今の自分を見れば小鉄のような感想を抱く事は間違い無いだろう。
あの頃、お菓子やお肉、カルピスを味わい、笑っていたあの頃が、今では遠い遠い日の事のようにフグオは感じた。


……

……


「MURさん達は、ずっとこのイベントホールに居るのか?」
「そうだよ(肯定)」

会話するMURとノーチラス。
MURは自分とト子、フグオがイベントホールにやって来るまでの経緯を簡ケツに説明する。
時計塔でゲームをスタートし、同時にト子と出会った事。
暫くして鈴木フグオと、彼と同行していたアルジャーノンと言う喋る馬が現れ一緒に行動する事になった事。
しかし、ケルベロモンと言う巨大な黒い犬の襲撃を受けアルジャーノンは殺害され、時計塔も焼け落ちた事。
その後、時計塔を後にし、ガソリンスタンドで鈴木正一郎の死体を発見し、イベントホールに辿り着きそこでも吉良邑子の死体を発見した事。

34 :KUROAME(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:45:34.73 ID:X7pF03Fk
「そっちも大変だったんだな……鈴木と吉良か」
「ト子ちゃんのクラスメイトなら、ノーチラス君のクラスメイトでも有るよな。仲が良かったのかゾ?」
「いや、そう言う訳じゃないけど、クラスメイトが死んだと聞かされるのはやっぱり良い気分はしない」
「ト子ちゃんから聞いてるが、殺し合いは二回目だと……」
「ああそうだ。俺は前の時は、第一放送前に死んでしまったけど」
「そうか……」
「……今度はこっちの事も話すよ」

ノーチラスもまた今までの経緯をMURに話した。
沙也との性行為関連についてはぼかしたものの概ね事実通りに話す。
西の小さな住宅地での沙也との出会い、警察署にて小鉄とフグオのクラスメイト土井津仁の死体を発見した事、
その直後くらいに触手の怪物の襲撃を受け逃げるようにして中央部市街地へ辿り着き、
そこでも襲撃を二回程受け、二回目の襲撃の時にサーシャと小鉄に出会った事。
また、二回目の襲撃者が、開催式で見せしめに殺された赤子の母親、野原みさえである事も話した。

「ノーチラス君も大変だったなぁ」
「まあな」
「しかし、触手の怪物……そんな物まで居るとはたまげたなぁ」
「リカオン獣人の、俺より少し年下ぐらいの子供から、大量の触手が生えたような感じだった。
小鉄が、そいつの服に付いていた名札を見たんだ。名前は『小崎史哉』って言うらしい」
「小崎史哉……? 確か放送で呼ばれていたゾ」

触手の怪物の物らしい「小崎史哉」と言う名前は、第二放送で呼ばれていたと思い返すMUR。

「ああ、誰が倒したのかは知らないけど、どうやらあの触手の怪物はもう居ないみたいだ」

もう触手の怪物の脅威に怯える必要は無い。
少なくともノーチラスはそう考えていた。
怪物の名前が放送で呼ばれたのだから、そう考えるのが普通であろう。

「おっ、そうだな、安心だゾ」

MURもその考えに便乗する。
だが胸の内では何か引っ掛かる物が有った。

(本当に、その触手の怪物は居なくなったのか? 何だか、気になるゾ)

確証は無い。確信出来る証拠と言う物は無かったが、MURには触手の脅威が完全に消え去ったとは思えなかった。



*【後半に続く】

35 :KUROAME(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/19(木) 13:47:55.94 ID:X7pF03Fk
前編投下終了です。
後半では遠野・ラト・樹里・KBTIT・巴を登場させる予定です
全く関係無いが最近の浦安鉄筋家族嫌いじゃないけど好きじゃない
昔の(元祖初期以前の)浦安鉄筋家族好き

36 :KUROAME(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:38:11.82 ID:4YCdAt39
後編投下します

37 :KUROAME(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:39:15.15 ID:4YCdAt39
※KBTIT・巴は次の話に登場させる事にしました

85話 KUROAME(後編)

ノーチラス達がやって来てからそう時間が経たずして、再び来訪者が現れる。
ライフルを持った青年、腹部に包帯を巻いた黒猫少年、茶髪の少女の三人。

「遠野、それに……ラト君か!」
「ラト、北沢!」

MURは青年と黒猫少年に覚えが有り、ノーチラスは黒猫少年と少女に覚えが有った。
青年はMURのクラスメイト、遠野。
黒猫少年と茶髪少女はそれぞれ、ラトと北沢樹里。ノーチラス、サーシャ、貝町ト子のクラスメイトである。

「MURさん!」

知り合いに再会出来た嬉しさからか屈託の無い笑顔を浮かべる遠野。
MURもまた、安堵の笑みを顔に湛える。

「遠野、また会えて良かったゾ」
「ラト君から、MURさんがここに居るって聞いて、一緒に来たんです」
「ラト君も……あっ、お腹怪我してるじゃないか、大丈夫か大丈夫か」
「ええ、何とか……」
「ソファーが有るから、そこで横になってろラト」
「そうするよ、ノーチラス君」

ノーチラスに促され、ラトはホールの隅に置かれていたソファーに横になった。

「後で、野原さんに何が有ったか、聞いても良いかゾ?」
「ああ……」

ラトと共に行動していた野原ひろしは第二放送で妻共々名前が呼ばれた。
何が起きたのか、後々その経緯を話して貰う事をMURはラトに約束して貰う。

「ノーチラスにサーシャさん……うちのクラスの子は他にも居るの?」
「貝町が居るぞ。MURさんと、フグオって子供とずっと一緒に居たらしい」
「他には、君塚さんって子が居るわ。あの、猫族の子」
「ちょっとテトに似てる、ね……」

やはり、自分達のクラスメイトは、沙也に対して初見では同じ感想を持つのかとノーチラスとサーシャは思う。
二人も樹里と同様の事を初めて沙也に会った時思ったのだから。
沙也の機嫌を無駄に損ねかねないので本人の前ではテトに似ている云々は余り言わないようにと、二人は樹里に釘を刺した。

……

……

遠野はMURに今までの事を大まかに話す。

「野獣と一緒に居たのか……」
「はい……でも、ひで君が襲ってきて、一緒に居た稲葉さんと柏木さんは殺されて、
先輩も、僕の事を庇って、致命傷を負って……」
「そうか……」

38 :KUROAME(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:40:45.86 ID:4YCdAt39
つぶさに語る遠野の表情は悲しみに溢れている。
遠野が野獣をとても良く慕っていたのはMURも知っていた、それ故に遠野の心情は痛い程察する事が出来た。

「先輩、死ぬ直前に僕の事が好きだったんだよって言ってくれました。でも、返事を返す前に先輩は……」
「遠野……」
「……すみません、大丈夫です」

滲んできた涙を拭う遠野に「無理するな」とMURが気遣うが、
遠野は尚も「大丈夫」と返し話を続けた。

「それで、ひで君とは、この殺し合いで二回会ったんです。
一回目が夜中、図書館で。二回目が今話した昼間に民家で……それで、二回目の時のひで君が……」
「どうしたんだ?」
「文字通り『怪物』と化していたんです」
「何……? 詳しく聞かせてくれゾ」
「は、はい」

信じてはくれないだろうと思っていた遠野はMURの意外な反応に少し驚きながらも、
ひでによる二回目の襲撃を受けた時の事を出来る限り細かく話した。
即ち、ひでが触手の怪物と化していた事を。

「まさか……」
「どうかしたんですか、MURさん」
「ノーチラス君、サーシャちゃん、小鉄君も、遠野と同じように触手の怪物に襲われたって話してたんだゾ」
「えっ!? まさかひで君に……」
「いや、それがな」

遠野の証言を聞いて、MURは疑問を抱いた。
ノーチラス、サーシャ、小鉄が話していた「触手の怪物」は「小崎史哉」なる人物でひでとは別人。
しかし遠野はひでが触手の怪物と化していたと言う。どう言う事なのか。

「先輩、僕と会う前にひで君に襲われたって言ってましたけど、ああ、思い出した。
その時触手の怪物が現れてひで君が捕まって逃げてきたって」
「うーん、ノーチラス君達にも話を聞こう」

ノーチラス、サーシャを呼んで、MURは事情を説明し「小崎史哉」に襲撃されたおおよその時間を訊く。
話を聞いていた樹里が途中で加わり、小崎史哉であろう触手の怪物が死んでいる傍で、
苦しんでいたひでをその時一緒に行動していた虐待おじさんこと葛城蓮と共に発見し、
突然、ひでの口から触手が飛び出して蓮を殺害した事、その時のおおよその時刻を証言した。

「ちょっとまとめるゾ……大体時系列順に」

自分のノートと鉛筆を取り出して、MURは聞き出した証言をまとめる。

すると、おおよそ以下のようになった。

39 :KUROAME(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:41:41.49 ID:4YCdAt39
@夜中(夜明け前ぐらい)に図書館にて遠野とひでが交戦、その時のひではまだ身体は正常だった
A朝方頃に警察署にてノーチラスと沙也が小崎史哉と交戦
B午前中、サーシャと小鉄が小崎史哉の襲撃を受け、その時行動していたテトが致命傷を負い、後に死亡
C同じく午前中、野獣がひでの襲撃を受けるが、小崎史哉(と思われる)にひでが捕まり野獣と同行者の柏木寛子が逃走
D同じく午前中、北沢樹里が小崎史哉らしき死体とその傍で苦しむひでと遭遇、野獣が逃げた後、ひでが小崎史哉を倒した?
直後、ひでの口から触手が飛び出し一緒に居た虐待おじさんが殺害される
E昼頃、ひでが遠野と野獣達を襲撃、この時点でひでは完全に触手の怪物と化していた。
野獣と同行していた稲葉憲悦、柏木寛子の三人が殺害される

つまり「ひでは小崎史哉を倒したらしいが、代わりに触手の怪物となった」と言う結論になる。

「え……でも、そのひでって人が小崎史哉を倒したとして、どうしてその人が怪物になるの?」

サーシャが口にした新たな疑問。議論に参加していた他の全員も同様の事を考える。
しかしいくら考えてもその理由など分からない。
そもそも「触手の怪物」の時点で前代未聞だと言うのに。
分かる事と言えば、触手の恐怖はまだ終わっていないと言う事だ。
ひでが小崎史哉の代わりに触手の怪物と化したのであれば、彼の名前はまだ放送では呼ばれていないのだから、
今現在も会場内に触手の怪物がウロウロしていると言う事になる。

「くそ、終わったと思ったのに、あんなのがまだ居るなんて」

もう脅威に怯える必要は無いと考えていただけにノーチラスの憤りと落胆は大きい。
無論それは彼に限った話では無いが。

(やっぱり、嫌な予感は当たってたゾ……)

自分の懸念が現実となってしまった事をMURは残念がる。出来る事なら杞憂であって欲しかった。
だが現実は変えようが無い。
兎にも角にも、ひでが襲ってきた時の為備えておくしか無いと結論付け、議論は一応終結した。


【日中/D-5イベントホール】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康(全身のダメージはほぼ回復)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式(食糧少量消費)、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
       1:ト子ちゃん、フグオ君、ノーチラス君達と行動。
       2:後でラトに野原さんの事を聞く。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※ひでが触手の怪物と化した可能性に気付きました。

【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式(食糧少量消費)、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪(分解)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオ、ノーチラス達と行動。
       2:首輪の解除方法を誰かで実践しなくてはならないが……。
       3:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※首輪の解除方法を編み出しましたが、あだ確実では有りません。

40 :KUROAME(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:44:59.41 ID:4YCdAt39
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神疲労(大)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。
       1:小鉄っちゃんに会えて良かったキャプチュ……。
       2:……死にたくない。誰かが死ぬ所も見たくない。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※「死」に対して敏感になっています。

【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、ジュースやお菓子(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
       1:サーシャのねーちゃん達と行動。
       2:フグオに会えて良かったぜ。でも金子先生は無事なのか?
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。

【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ローバーR9(3/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)、???(武器になる物では無い)
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:ノーチラス、君塚さん、小鉄君、MURさん達と行動。
        2:触手の怪物がまだ生きているなんて……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※テトから「以前の殺し合い」の真相を聞きました。まだノーチラスには話していません。
    ※ひでが触手の怪物と化した可能性に気付きました。

【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラス、サーシャさん、小鉄君、MURさん達と行動。
        2:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。

41 :KUROAME(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:46:04.76 ID:4YCdAt39
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(1/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(7)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也、サーシャ、小鉄、MURさん達と行動。
        2:まだ触手の怪物が居るのかよ……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※ひでが触手の怪物と化した可能性に気付きました。

【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]精神的疲労(大)
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(5)、TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ、
     コルト ポリスポジティブ(5/6)@現実、.32コルトニューポリス弾(12)、オートマグ(3/7)@現実、オートマグの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:ラトさん、北沢さん、MURさん達と行動。
       2:ひで君は今どこに居るんだ……?
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※ひでが触手の怪物になった事を知りました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腹部に盲管銃創(処置済)、ソファーに横になっている
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)、デトニクス スコアマスター(6/7)@現実、スコアマスターの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:北沢さん、遠野さん、MURさん達と行動。
       2:後で野原さんについてMURさんに話そう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、
     モンキーレンチ、コンバットナイフ@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:ラト、遠野さん、MURさん達と行動。
        2:サーシャに会ったらシルヴィアの事を伝える(まだ伝えていない)。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでが触手の怪物になった事を知りました。
    ※首輪からの盗聴の可能性についてはラトから伝えられています。

42 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 20:46:49.88 ID:4YCdAt39
投下終了です。

43 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/22(日) 23:29:32.99 ID:4YCdAt39
続いて巴、KBTITの話投下します。

44 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/25(水) 01:41:30.56 ID:ODR6vFA7
連投規制受けてたので避難所の方に投下しました

45 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:16:58.80 ID:PzjVYabs
投下します。結構死ぬよ!

46 :しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:17:48.05 ID:PzjVYabs
87話 しょくしゅ注意報 其の七 〜LASTSTAGE〜

(……サーシャさんにシルヴィアさんの事言わないと)

樹里は、かつて共に行動していたシルヴィアの事をまだサーシャに話していない事を思い出し、サーシャの元へ向かう。

「あ、サーシャさん」
「ん?」
「話しておきたい事が有って……」

工場にて虐待おじさんこと葛城蓮、ガルルモンと一緒に居たシルヴィアと遭遇し、そこからしばらく共に行動した事、
図書館にて野原みさえの襲撃を受け、ガルルモンと共にシルヴィアが殺害された事、
シルヴィアが死の間際、自分の事をサーシャに伝えて欲しいと言い残した事を、樹里はサーシャに話した。

「……ありがとう」

悲しげな表情を浮かべながら、サーシャは樹里に礼を述べた。
樹里もまた用事は済んだので、サーシャから離れる。
普段からサーシャがシルヴィアに良く接触し、気に掛けていたのは知っていた。
この殺し合い、前回の殺し合いでもそうだろうが、さぞ心配していた、会いたかったであろう。
彼女の心情は察するに余り有った。

樹里より、シルヴィアの行動、最期の様子について聞かされたサーシャ。
この殺し合いに反抗し、最期の時に名前を出す程度には自分の事を気に掛けていた、と言う。

(殺し合いに乗らないで、頑張ってたんだね、シルビー……)

前回の殺し合いで彼女がどう言うスタンスを取っていたかは分からないが、
少なくとも今回の殺し合いでは、仲間と協力しゲームに抗っていた。
もし、生きて自分達と合流出来ていたのならきっと心強い味方になってくれたに違い無い。
いやそれよりも何よりも会って話をしたかったな、とサーシャは思う。

……

……

MURはラトに、野原ひろしについての話を聞く。
かつてラトと共に行動していた筈の野原ひろしは、第二放送で妻のみさえと一緒に死者としてその名を呼ばれた。
ラトはこうして生きてはいるものの腹に大怪我を負い、何かが有った事は明白。
MURはそれを知りたかった。

「一体何が有ったんだゾ?」
「……あの後……イベントホールから出た後……」

ラトは野原ひろしと共にイベントホールから出発した後から今に至るまでの出来事を語る。
市街地へ向かい、そこで同行者を喪い単独行動していた北沢樹里と出会った事。
程無くして、ひろしの妻、みさえと遭遇し、ひろしは喜んだが、矢先にみさえはひろしを銃撃しラトも同様に撃ち抜いた事。

「何だそれは……どうして奥さんが夫を」
「みさえさんは殺し合いに乗っていました。既に正気を失っていたと思います。
『優勝して、見せしめに殺された娘を、それまでに死ぬであろう家族を生き返らせて、家族みんなでまた暮らす』と言っていました」
「……」

47 :しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:18:32.91 ID:PzjVYabs
MURは余りの事に言葉を失う。
開催式の惨劇、家族の悲痛な叫びは今も良く覚えている。
その家族の一人、殺された赤子の母親が、正気を失ったとは言え、自分の娘を殺した連中の言いなりになって殺し合いに乗るとは。
家族みんなでまた一緒にと言いながら自分の夫を撃つ矛盾に気付かない程狂って居た、と言うのか。

「北沢さんも撃たれそうになった時、野原さんがみさえさんを後ろから刺しました」
「……っ」
「そのまま、二人一緒に息絶えたんです」
「……何て事だゾ」

悲劇と言う他無い、とMURは思う。
野原ひろしは捜し求めていた愛妻に裏切られ、撃たれ、そして恐らくはこれ以上の妻の凶行を止めようとして刺殺し、自分も果てた。
平和に暮らしていただろう一家が、この馬鹿げた殺し合いに巻き込まれ、一家全滅と言う結末を迎えたのだ。
改めてMURは、殺し合いの運営連中への怒りが込み上げ、いつしか拳に力を込めていた。

「以上、です」
「ありがとう……大変だったな」
「いえ……」

MURはラトを労い、話は終わった。

「そう言えば、ノーチラス君はどこに」
「ノーチラス君なら、見張りをやってくれているゾ」

……

……

イベントホールの玄関で、村田銃を携えノーチラスは見張りに立つ。
それまではMURが担っていたが、ノーチラスが折角仲間になったのだから見張り位やると言って引き受けたのだ。
一応、交代の時間は決めては有る。

「静かだな……」

ノーチラスの立つ位置からは車一つ無い駐車場、そして川、遠くに会場を囲む断崖絶壁、彼から見て東北に、
現在は禁止エリアになり進入出来ないレジャー施設の有る丘が見える。
風と、風にざわめく草の音がノーチラスの耳に入る。
静かであった。

何気無く、ノーチラスは立っている位置から、左寄りの方角へ視線を向けた。

「何も無いよな」

そして視線を右に移そうとしたその時。

即頭部に冷たい物を押し当てられる。

「はい止まってぇ」
「……!」
「言っとくけどぉ今当ててんの本物だからね」

視界には入らないが自分の右手側に居るであろう、声から察するに自分と同年代もしくは年下の少女が、
間延びした口調では有るがはっきりと警告を発する。
即頭部に当てられているのは、恐らく銃口。
もしかすれば少女が脅しの為に嘘を点いていて銃では無いのかもしれないが、何にせよ下手には動けなかった。
恐らく建物の外壁沿いに玄関に接近してきたのだろう、植え込みのスペースが有るので、上手く身を隠しながら。
見晴らしが良いと思って油断していた――――ノーチラスは己の迂闊を後悔するも最早後の祭りである。

48 :しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:19:25.99 ID:PzjVYabs
「ねえちょっと聞いても良い?」
「な、何だ?」
「見張りしてるって事は、中にお仲間居るの?」
「……」

正直に答えるべきか否か迷うノーチラス。
いきなり陰から銃を突き付けてくる者が友好的とは全く考えられない。

「ねぇ、ねぇってば? ……さっ、私、殺し合う気は無いよん」
「え?」

意外な言葉に少し驚くノーチラスだったが、簡単に信じる訳には行かないと気を取り直す。

「そんなの信じられると思うか?」
「じゃあ銃下ろすからぁ、こっち向いてお話しよーよ」
「……っ」

その言葉通り、即頭部の冷たい感触が消えた。
恐る恐るノーチラスは右手方向を向く。
そこには自分達や沙也のとは別の学校の制服に身を包んだ、犬か狼族の少女の姿。
小柄な体躯に似合わぬ物々しい散弾銃を所持しており、先程まで即頭部に当てられていたのはあれだったのかと、
ノーチラスは肝を冷やした。

「私は原小宮巴。巴でいーよ。おにーさんは?」
「の、ノーチラスだ」

少女に続き自己紹介するノーチラス。
しかし巴の格好を良く見れば、白っぽい粉やら、血痕らしき物でかなり汚れており、
殺し合いに乗ってないと言う言葉に説得力を感じない。
しかし、現在のノーチラスに発言権は与えられていないようで巴が質問を続ける。

「ノーチラスさぁん、仲間居るの? ねぇ」
「……ああ、居るよ」

結局正直に答えてしまう。
心の中で中に居る仲間達に申し訳無いと思ったが、下手に逆らって機嫌を損ねると自分の身が危険だとノーチラスは判断したのだ。
巴は口調は無邪気だったが、言い知れぬ不気味さが有った。

「あっ、そっかぁ……あのさ、私と一緒に居る人がお腹痛い痛いになっちゃってて」
「? 仲間が居るのか?」
「うん」

巴が後ろに振り向き指を差す。そこには確かに外壁にもたれ掛かって座り込む男の姿が見える。
仲間を連れて居るなら、先程の殺し合いに乗っていないと言うのも信憑性が高まるとノーチラスは思う。
優勝出来るのは一人故、乗る気の者が徒党を組むのは考え難いからだ。
巴と共にその男の元へと向かうノーチラス。

「おーイッテェ……オイ、キッツイな……」
「タクヤさん、オッケーだってさ」
「いやまだ何も言って……ん? あんた、もしかして、MURさんと遠野さんのクラスメイトか?」
「何? 知ってんのか……?」

タクヤと言う名前を聞いて、MURと遠野から名簿に「KBTIT」として載っているクラスメイト「拓也」の事を思い出しノーチラスが尋ねると、
男は反応を示す。どうやら同一人物で間違い無いようだ。

(二人は、拓也は信用出来るって言っていた、なら、大丈夫か……?)

KBTITの人となりは聞かされているノーチラスは、先程思考した複数行動の事と合わせ、
この時点で巴及びKBTITは殺し合いには乗っていないと完全に警戒を解く。
いや、巴に関してはまだ完璧には心を許していなかったが。

49 :しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:20:10.75 ID:PzjVYabs
「中に二人が居る。きっと喜ぶよ。肩を貸そう」
「漏らしちゃ駄目だよー」
「悪ぃな、二人共……」

余程苦しいのか既に一人で立ち上がる事もままならない様子のKBTITにノーチラスと巴が肩を貸し、
イベントホールの玄関へとゆっくり向かって行った。


◆◆◆


腹痛が一段また一段と悪化するにつれ、KBTITこと拓也はこの腹痛が便意の類の物では無いのではと思い始めていた。
確証は持てなかった故に巴にも、やって来たノーチラスにも何も言っていなかったが。

いや、怖かったのかもしれない。
腹痛はひでを倒した後、出現した謎の虫が体内に入り込んでから現れた。
あの虫が腹痛の原因となっている事は間違い無い、ただ、巴が言ってたように腹の中を食い荒らしている、
と言う訳では無いだろう、そうなっていれば今生きてはいまい。

やはり虫が毒を持っていたのだろうか。
なら、トイレに行く程度でどうにかなる物では無いのではないか?
なら、なら、自分は――――。

KBTITは内心、怖くて怖くて堪らなかった。

巴とノーチラスがKBTITを両側から支える形でイベントホールの中へと入る。

「拓也さん!?」

遠野が三人を見付け、KBTITの本名を呼ぶ。

「遠野か……」
「どうしたんですか? 大丈夫ですか」
「貴方、タクヤさんのクラスメイトさん?」

巴が遠野に訊く。

「はい、遠野と言います」
「ああ遠野さんね、タクヤさんから聞いてる。
タクヤさん、お腹痛くて大変なのよ。トイレ、どこに有る?」
「あっちの方に……」

トイレの場所を聞かれそれを指差して教える遠野。
とは言っても、もう目と鼻の先でわざわざ聞くまでも無い状況になっていたが。
三人は男子トイレの中に入って行く。
巴は言うまでも無く女子だがこの状況で男子トイレに女子が〜などは気にするつもりは無かった。

「MURさんに知らせなきゃ(使命感)」

遠野は酷く苦しそうなKBTITの様子が心配になりつつも、MURにKBTITと巴がやって来た事を知らせに向かう。

「うっ……ぐおお、お」

男子トイレに入った途端、KBTITの腹痛は最高潮に達し、遂に動きを止めてしまう。
それと同時に、彼は意識が急激に揺らぐのを感じる。

50 :しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:21:31.47 ID:PzjVYabs
余りの激痛のせいだろうか、いや、これは違う――――?

「おい、大丈夫か?」
「もう少しだよ? 後1メートルだよ?」

呻いて床にへたり込んでしまったKBTITにノーチラスと巴が声を掛ける。
しかしこの時のKBTITにはもう、二人の声は届いていなかった。

意識が、全ての音が、感覚が消えて行く。

何者かの声が、頭の中に響く。


――――そろそろだ。

――――本当に、本当に時間が掛かったが、そろそろ、支配が完了するぞ。


「……あ……何だ……お前……何、だ……」
「? え?」
「おい、どうした? おい?」

聞こえてきた「何者か」の声に、掠れるような声で問い掛けるKBTIT。
しかし、「何者か」の声が聞こえる筈も無い巴とノーチラスには、
突然彼が独り言を言い始めたようにしか聞こえず困惑する。


――――さあ、お前はもう必要無い。

――――肉体を、寄越せ。


「……―――――ッ」

その声が何者なのか、KBTITには分からなかったし、もう理解する為の思考力も無かった。
一気に闇に飲まれていくKBTITの意識。
それでも、自分の身に「何か」が起きて、これから良くない事が起こるのは辛うじて分かったから、
両脇に居る筈の二人に、精一杯の力を振り絞って伝えた。

「巴、ノーチラス、おれ、から、はな、れ、ろ――――」

そう二人に告げた直後、KBTITは完全に床に倒れ伏した。

「おい! 拓也さん! おい!」
「あらら」

トイレの床の上にうつ伏せに倒れ意識を失ってしまったKBTITを心配するノーチラスと、
面倒臭そうな表情を浮かべる巴。KBTITの意識を失う直前の言葉は二人には届いていたものの、
二人には何を意味する事か分からず結局言葉には従わなかった。

51 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/03(金) 22:23:24.62 ID:PzjVYabs
クッソ長いので連投規制ががが怖い
なので残りは避難所に投下して……

明日になったらこっちにも残り投下します

52 : ◆2C/2roNgWQ :2015/04/07(火) 00:11:01.90 ID:QrRLx/Dk
投下します

53 : ◆2C/2roNgWQ :2015/04/07(火) 00:12:50.49 ID:QrRLx/Dk
狛村卯月という女性は、人を平気で殺すことができるほど冷酷な性格をしていない。
かといって、何処かへ隠れてやり過ごそうとするほど臆病な性格ではないし、味方の振りをして相手を騙そうとするほど卑怯な性格もしていない。
ではどんな性格をしているかというと、真っ当な感性を持っているが、己を高めることに重点を置き、それ以外には大して見向きもしないという、冷淡な性格をしていた。
人を殺すことは許されざる行為であると思っている一方で、しかしそれだけのことだと思えるのが彼女であった。
誰かが困っていて助けを求めた際に、一切そちらに顔を向けることをしないのが彼女であった。
人を殺すことは決して許されることではない、だがそれだけのことだ。
誰かが困っている、助けを求めてきた、だがどうでもいい。
己の強さを磨くことしか頭にない彼女は、誰かを助けるという行為に及ぶことはまずないであろう。
我が道を行く彼女にとって、それらは障害物でしかないからだ。

「ふざけんじゃねぇよ、何で俺がこんな目に……」

そんな避けられる障害物は尽く避けてきた彼女にとって、今自身に起こっている避けることのできない出来事を目の当たりにすれば、彼女が不愉快な気分に陥るのは自明の理であった。
どうして私がこんなことに巻き込まれなくてはいけないのかと、自身を拉致した男に激しく怒り憤った。
……爆殺された60人の死に対して彼女は何も思わなかったが、それを抜けば彼女の対応はマトモであった。

「……まあいいか。これはチャンスだと考えりゃいいだけだしよ」

――最初だけだったが。
確かに最初こそは、殺し合いを企画する為に自身を拉致した男に対して憤りを覚えていた彼女だったが、次第に憤りは薄れていき、殺し合いが始まるのを彼女は待つようになっていた。
初めに言った通り彼女は誰かを殺すような人間ではないので、他の人間を殺して生き残ると覚悟を決めたわけではい。
彼女は期待していた。60人が仕分けにより殺されたのは残念で仕方ないが、それ以外の生き残った39人に彼女は期待していた。
自身を高めることのできる存在――すなわち強敵と呼ぶことのできる人間が、39人の中に存在しているはずだと期待することにした。
強敵と戦えるチャンスだと、この場はそういうものだと、彼女は思うことにした。
人を殺さず、かといって人から逃げず、人を探して人と戦うことと、彼女はそう方針を固めたのだ。

「さあて、いるかなぁ……楽しみだなあ」

殺し合いの場である島へ飛ばされる直前、彼女は胸に期待を膨らませていた。
強敵と戦い、自身を切磋琢磨できることにわくわくしながら、彼女は島へと飛ばされた――


――――以上が狛村卯月という女性が演じている、嘘の設定である。
己を高めることに重点をおいているのは間違いないが、別段と彼女は薄情な性格ではないし、むしろ困っている人間を見かけたら放っておけない性格である。
確かに避けられる障害物は避けてきたが、あくまでもそれは助けを求めてきた人の為にならないから避けているだけであり、それ以外の障害物なら難なくぶち破っていくのが彼女の性分である。
そんな性格をした彼女が人殺しに対して「それだけのことだ」なんて思っているわけがなく、絶対に許してはいけない行為だと彼女は認識し、そんなことをし人がいたなら十発ぶん殴りたいと考えていた。
では、そういう性格をした彼女が何故嘘を演じようとしたのか。それはやはり己を高める為――ひいては自身の身を守る為に必要なことだからであった。
怒りの沸点が少し低い彼女は許せない出来事が起こると途端にキレて冷静さを失うことが多く、今回も最初に設定を固めていなければ冷静さを失い、あの男に向かって突撃していただろう。
不足の事態に備えて設定を固めておいて、その役にのめり込み集中することで彼女は冷静さを保つことができたのだ。
その強靭な集中力は彼女にとって長所であり、同時に短所でもあるのだが……


□□□

54 :五話 嵌り込む  ◆2C/2roNgWQ :2015/04/07(火) 00:14:11.68 ID:QrRLx/Dk
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…………」

森の一角で蹲りながらぶつぶつと喋り続ける男――天谷剣吾は、何処にでもいるような至って普通の高校生であった。
イケメンの部類に入るがヲタク趣味を持ち、自分が興味を持ったジャンルに積極的に関わるものの、それ以外は流されて生きる少々臆病な青年である。
そんな青年、普通の男子高校生が――60人もの人間が一斉に死ぬ光景を見て、どんな思いを抱いたのだろうか。
もしあの光景を見て狂えていたならば、どんなに彼は幸せだっただろう――少なくともその場で蹲ることはしなかっただろうし、踏み止まるという行為をしなかったはずだ。
だが、彼は踏み止まった、踏み止まってしまった。天谷はマトモな人間であったが、この場においてそれは不幸であった。
故に天谷は、デイバッグ開いて中身を確認したりせず、かといって何処かへ移動して隠れたりすることもなく、その場で思考停止をしてしまった。
死にたくない、その思いだけが彼の心と頭を埋め尽くしている。

「……ンだよ、なっさけねえ。コイツはなしだ、パスパス」

女性の声が聞こえてきたが、天谷はそれを聞いてどうこうするわけでもなく、ただじっと身を固めているだけだった。
抵抗する素振りも意思もなく、決断する度胸も勇気もない彼は、ただただじっと身を固めていることしかできなかった。
自身の身に何か起きませんように。どうか無事に生き残れますように、と。
神頼みをしながら、死にたくないと乞い願うことしかできなかった。

【E-5/森/一日目・日中】

【狛村 羽月】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本:強敵と戦い、己を磨く
1:強敵を探す

※設定を固め、役にのめり込んでいます

【天谷 剣吾】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本:死にたくない
1:死にたくない

【天谷剣吾(アマタニ ケンゴ)】
高校三年生。イケメンの部類に入るが、ヲタク趣味を持つ為、女子の人気は低い。
初対面の人間からは比較的好印象であるが、初対面の人間であろうとドン引きするような話題を平気で話す。
嫌われることが嫌な人間だが、自身が話していることが原因で嫌われていることには一切気づいていない。
友人は少ないながらもいるようである。

【狛村羽月(コマムラ ウヅキ)】
ベリーショートで体育会系の大学生。一人称は「俺」で男口調。
性格は熱血。困っている人がいたら放っておけないし、どんな事でも諦めない根性を持つ。
若干頭に血が上りやすく、本人も直そうと努力しているものの一向に治る気配が無い。
自分が固めた嘘の設定にのめり込むことができるほどの集中力を持つ。

55 : ◆2C/2roNgWQ :2015/04/07(火) 00:14:52.46 ID:QrRLx/Dk
投下終了です

56 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 11:55:55.79 ID:xRvHSteX
投下乙です。

>>51で予告していた続きを投下します。日が経ってしまっているのはご容赦下さい……

57 :(レス番号50からの続き) ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 11:57:03.29 ID:xRvHSteX
「離れろって、うんち漏らすからかな?」
「茶化してる場合か。まずいな、MURさん達に言った方が……」

ノーチラスがそう言いかけた時。

ビクッ

KBTITの身体が大きく揺れ動いた。

「ん?」
「……拓也さん?」

意識を取り戻したのかと二人は思った。その二人の目の前でゆっくりとKBTITは起き上がる。
しかし二人の声に反応する気配は全く無い。

「どしたの?」

巴が再び声を掛けるがやはり返事は無かった。
返事の代わりにある事が起きた。

KBTITの身体のあちこちから、皮膚を突き破り黒っぽい触手が生えた。

「「は?」」

突然の、予想だにしていなかった事態に巴とノーチラスの二人が間の抜けた声を出す。
その姿に二人は見覚えが有る――――巴の時とノーチラスの時で宿主に違いは有ったが、
紛れも無く、かつて戦った触手の怪物と同じ様相に、KBTITはなっていた。

「……あ゛あアあ……」

歪んだ声色で唸りながらゆっくりとKBTITは二人の方へ向き直る。
ゴーグルのせいで分かり難いが、自我はもう消え去っていると言う事は二人はすぐに察した。
察して、とにかく一旦狭いトイレから出た方が良いと判断し、巴とノーチラスは出口へと走る。

廊下に飛び出すと、遠野と彼から報告を受けKBTITに会いに来たMURがすぐ近くに居た。
トイレから必死な様子で飛び出した巴とノーチラスに、遠野とMURは戸惑いの表情を見せる。

「どうしたんだゾ?」
「何か有ったんですか? あれ、拓也さんは」
「はぁ、はぁ、た、拓也さん、が」
「まさかあんな事になるなんて」

巴とノーチラスがMURと遠野に状況を説明しようとした。
しかし、それはトイレの入口から黒い触手が何本も伸びてきた事により中断させられる。
変わり果てたKBTITの姿にMURと遠野は一瞬言葉を失った。

「こ、これは」

遠野が呻く。
KBTITがかつて戦ったひでと同じ、触手の怪物と成り果ててしまった事実に衝撃を隠せない。
一体何故、彼がこんな事になってしまっているのか。
余りの事態に、四人全員逃げる事を忘れ「それ」を考える事に気を取られてしまう。

58 :(レス番号50からの続き) ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 11:57:50.91 ID:xRvHSteX
「ウオア゛ァ゛アアア゛ア゛!!!」

すぐにそれどころでは無い事を四人は思い出した。
雄叫びを発しながらKBTITが四人目掛け突進してきたのだ。
かつて「触手の怪物」と呼称された小崎史哉とひでのように、右手から触手の束を出現させ、それを四人目掛け振り下ろす。
長く飛び出た触手の束は天井ボードを抉り、配線やダクトを破壊しながら、四人の居る位置の床に派手な音を立てて直撃した。

グシャアッ!!

幸いにも四人は二人ずつ分かれる形で左右に回避する事が出来た。
直撃した部分の床は大きく凹み、威力を物語る。
しかし。

「サイごのいっパツ、くれテヤルヨオラァアアア!!」
「「「「!!」」」」

脈絡の無い言葉を発しながら、KBTITは触手の束を左右に思い切り振り回した。
振り下ろし程では無いにしろ、太く重い触手の束は四人を軽く吹き飛ばしそれぞれ壁に強か身体を打ち付けてしまう。
四人のダメージはかなり大きく、痛みですぐには身動きが取れない。

「何? どうしたの……うわっ」

尋常ならざる音に、何事かと様子を見に来た沙也が惨状を目の当たりにして驚きの声を発する。
彼女だけでなく、サーシャ、フグオ、小鉄、ト子もやって来ていた。
MUR達にとっては最悪この上無い状況と化してしまう。

「みんな、来ちゃ駄目だゾ! 逃げ……」

逃げろとMURが叫ぼうとしたが、もう手後れで、KBTITは沙也達に向かって、勢い良く触手を伸ばした。
鋭利な槍の如き触手の先端が、とても生々しく嫌な音を立てて、二人の肉体を刺し貫く。
被害者は、フグオと沙也。

「キャ……プ……?」
「か、は……嘘……」

フグオと、沙也の胸元からそれぞれの肉体を貫いた触手に呆然とするフグオと沙也。
じわりじわりと、刺された場所から赤黒い染みが広がり床に同じく赤黒い液体が垂れ落ちる。
避ける事に成功した小鉄、サーシャ、ト子は、その様を見て、絶句した。
ずるりと、フグオと沙也の身体から触手が引き抜かれ、傷口から鮮血がどばっと溢れ出た。

「小鉄っ、ちゃ、ん」

血を吐きながら、フグオは小鉄の名前を彼の目を見ながら言い、崩れ落ちて、死んだ。
沙也もほぼ同時に、全て悟って諦めたような表情のまま、同じように崩れ落ちて、息が絶えた。


【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター  死亡】
【残り  10人】


「フグオ、フグオ……この野郎!!」

友人を眼前で殺され、小鉄が激高した。
MURやサーシャが制止の声を上げるが、聞き入れず、怒りに任せKBTITに突進していく。
その目には涙が滲んでいた。悪乗りして良く虐めていたが、フグオは大事な友達だったのに、よくも、よくも――――!
KBTITの触手を持ち前の健脚で避け、彼の懐に潜り込んだ小鉄は、持っていたドスを貧相な左太腿へと思い切り突き刺した。

59 :(レス番号50からの続き) ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 11:59:00.93 ID:xRvHSteX
「ぐおおおオオオおオ!!」

大きく悲鳴を上げよろめいたKBTIT。しかし動きを完封するには至らず、KBTITの右手が小鉄の首根っこを掴んだ。

ぐしゃり。

「あっ」

目と鼻の先で、小鉄が頭から壁に叩き付けられ、頭部が四散する様を見せられ、MURが口を開いたまま絶句する。
ノーチラス、遠野、サーシャ、ト子も、同様の反応を示した。


【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  9人】


KBTITが何故怪物化したのかは分からない、だが、今の彼はもう元の彼では無く、
例えその命を奪ってでも止めなければ、自分達は皆殺しにされてしまうと言う事は分かる。

「拓也さん、止めろぉ!(建前) 止めろぉ!(本音)」

身体の痛みを堪えてMURは立ち上がり、Stg44突撃銃をKBTITに向け発砲する。

「サーシャ、ト子! 壁に寄れ!」

続いて立ち上がったノーチラスが、銃撃に巻き込まれないよう二人に命令した。
サーシャとト子は言う通りにしつつ、サーシャはローバーR9自動拳銃、ト子は遠野から譲り受けた、
コルト オフィシャルポリス回転式拳銃にて加勢。
ノーチラス、巴もそれぞれ持った銃で続く。

「これは……」
「何これ!?」

ラトと、彼を肩で支える樹里も駆け付けた。

「あれって……」

総攻撃を浴びている触手の生えた男に樹里が釘付けになる。
触手の様はかつて同行者の蓮を殺した時のひでやその傍に転がっていた小崎史哉の死体と同じだが、
今前方に居るのは全く別の男だ。どうなっているのか。
いや、そんな事よりどうやら今はあの男を全員で倒さなければならないらしい。
ラトと樹里は程無く状況を把握し、銃を構えMUR達に加勢した。

「ヴオオオオオオオオオ!!」

全身に拳銃弾、散弾、小銃弾を満遍無く浴び、血肉を飛散させ、苦鳴を上げるKBTIT。
だがそれでもまだ彼の動きを止めるには至らない。
「寄生虫」の力によりその生命力、耐久力は異常な程高まっていた、そのせいである。

「モウユるさねェからナぁ!!」

KBTITは矛先を樹里に向ける。彼女に向けて触手の槍を伸ばす。

60 :(レス番号50からの続き) ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 12:00:15.85 ID:xRvHSteX
「危ない!!」

ラトが叫び、樹里を突き飛ばした。
樹里の代わりに、ラトが串刺しとなった。
包帯を巻いた腹部に、更なる穴が空く形となり、ラトは大量に吐血し悶絶の表情を浮かべる。

「ラト!!」
「ラト君!!」

サーシャとMURが叫ぶ。
ラトの身体から触手が引き抜かれ、その小柄な体躯がボロ切れのように床に投げ出される。
そしてKBTITは間髪入れず、身体を捻り、次の標的――――遠野に向け、ラトと同じく触手の槍を突き刺した。

「あっ……ぐぁ……」
「遠野!!」
「遠野さん!!」

悲痛な声を上げる、MURと樹里。

「……もう、もう……やめて、下さい……拓也、さん!!」

串刺しになったその体で、遠野はKar98Kを構え、薬室に残った最後の一発を発砲した。

「ウグ、ア」

その最後の一発は、KBTITの心臓部分を撃ち抜いた。
頭を撃ち抜く事も出来た、だが、やはり今までクラスメイトとして共に過ごしてきた人物の顔を吹き飛ばす勇気は出なかったのである。
例え、自分に致命傷を与えた張本人だったとしても。
その一撃が止めになったのか、遂にKBTITはその動きを止め、がくりと両膝をついて床に倒れた。
同時に、触手に貫かれたままの遠野も床に伏す。


――――まさか、こんなに早く壊れてしまうとは。

――――役立たずめ、さっさと次の肉体を――――


KBTITのズタズタになった傷口から、鮮血に塗れた虫が這い出てくるのを、巴が見付けた。

「あっ」
「どうしたゾ巴ちゃん」
「それ、タクヤさんの身体に入った虫が」
「……! 確か、拓也さんの様子がおかしくなったのは」
「うん、あの虫が身体に入ってから」

巴からそれを聞いて、MURは閃き、叫ぶ。

「その虫が元凶だゾ! 潰せ!!」

その声に、ト子が応えた。
床に赤い痕を残しながらずりずりと這うその虫を、思い切り、何度も何度も踏み付けた。


――――な、何? 何だと?

――――まさか、そんな、おい、やめろ、やめろ

――――ヤメロ、ヤメロ、ヤメ、ヤメロ、ヤ――――メ――――

61 :(レス番号50からの続き) ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 12:01:21.56 ID:xRvHSteX
生物の肉体に入り込みそれを支配すれば絶大な脅威となる「寄生虫」も、何も無い素の状態では、
単なる虫と大差無く、呆気無く潰されてしまった。
こうして、触手の脅威はようやく終わりを告げた。

「……う……ぁ……俺は……」
「タクヤさん? まだ生きてるの? って言うか元に戻ったの?」

KBTITはまだ辛うじて息が有った。
触手の怪物では無い、元の彼としての意識を取り戻していた。
ラトも、遠野も、まだ息が有る。
だが、三人共、もう長くは無い事は明らかだった。

KBTITと遠野の元にMURと巴、ラトの元にノーチラス、サーシャ、ト子、樹里が寄り添う。

「お、俺は……」
「悪い虫に身体を操られてたんだゾ……」
「あの時の虫、か……少し、だけ……がはっ……記憶が、有るんだ……俺は、何て、事を……」

フグオ、沙也、小鉄を殺した時の事、ラトと遠野に致命傷を負わせた時。
操られていた時の記憶が、それも嫌な場面ばかりピンポイントで、KBTITには僅かながら残っていた。

「拓也、さん、貴方は……ゲホッ、ゴホッ!」
「喋っちゃまずいよ遠野さん」
「良いんです、言わせ、て、下さい……拓也さ、ん、貴方は悪く、ありません……あな、たは、はぁ、はぁ、
操られていただけ、です……」
「遠野……」

操られていたとは言え、最早助からぬ傷を負わされたのにも関わらず、遠野はKBTITの事を気遣った。
それを聞いたKBTITは「本当に人間の鑑だ」と遠野の優しさに感謝し、ふっと笑みを浮かべる。
また、仲間を殺し、傷付けた罪悪感から、少し、ほんの少しだけ救われたような気がした。

「MUR、遠野、みん、な……俺、を……人間に戻して、くれて……あり、がと、ナス……」
「拓也さん!」
「タクヤさん……おやすみ」

怪物と化した自分を「人」に戻してくれた仲間達に感謝しながら、KBTITは逝った。


【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  8人】


「……MUR、さん……僕も、もう……」
「遠野……!」

遠野の命もまた、もうすぐ潰えようとしていた。
血に塗れた口で、最期のメッセージをMURに伝える。

「どうか、この殺し合い、から……生きて、脱出、して下さい」
「ああ、当たり前だよなぁ?」
「先輩に、怒られて、しまうかもしれ……ません、が……僕は……せん、ぱいの……ところ……に……――――」
「……遠野」

台詞が言い終わる事無く、遠野の息は絶えた。
これで愛する野獣の元へ行けると思い、安心したからか、その死に顔はとても安らかで、
口元の血が無ければ眠っているようであった。
MURは、声を押し殺して泣いた。
巴はその様子を黙って見ていた。

62 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/09(木) 12:04:31.33 ID:xRvHSteX
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  7人】


そして、ラト。
彼の傷もまた、手の施しようが無く、クラスメイト達が見守る中ゆっくりと命が消えて行く。

「ラト……」
「サーシャさん……また、会えたのは、本当に、嬉しかった……」
「私も……だよ」

これで最期だと言う事を察した話し方が、サーシャはとてもとても悲しかった。
以前の殺し合いで、ゲームが始まる前に死別して、何の因果かお互いに蘇生し、この殺し合いにて再会した。
しかし、また今ここで彼と死に別れようとしている。
これは神様の悪戯なのだろうか、死なないで、死なないで――――サーシャは泣き叫びたかったが、
そんな事をしてもどうにもならない事位、分かっても居る。

「皆……どうか……生きて……く……れ……」

ラトもまた、力尽きた。
サーシャは、彼の身体に顔を埋め、嗚咽を漏らした。
他の三人も、沈痛な面持ちを浮かべ、ラトの、いや、死んでいった仲間達を悼む。

突如起きた騒乱は、大きな爪痕を残し、沈静した――――。


【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  6人】


【午後/D-5イベントホール】

【MUR】
【貝町ト子】
【ノーチラス】
【サーシャ】
【北沢樹里】
【原小宮巴】
【生存者 残り6人】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。
うん、分割してなかったら間違い無く連投規制だった
分割後でさえ危ういもの

63 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/13(月) 22:44:03.93 ID:VIt7yvCM
投下します。

64 :感傷リフレクト ◆ymCx/I3enU :2015/04/13(月) 22:44:58.83 ID:VIt7yvCM
88話 感傷リフレクト

KBTITの突然の怪物化により巻き起こった戦闘、その末に、イベントホール内は死屍累々の有様となった。
鈴木フグオ、君塚沙也、大沢木小鉄、ラト、遠野、KBTIT、元々有った吉良邑子の死体と合わせると、
実に七体もの死体が一つ屋根の下に転がっていると言う惨状。
必然的にホール内には死臭が漂う。

「死体だらけだねぇ」
「おっ、そうだな……」

巴がMURに話を振り、それに静かに返すMUR。

「拠点を移動した方が良いんじゃないか?」

ト子がMURの元にやって来て提案する。
死体は片付けきれない。何より、仲間の死体をいつまでも目にしていては皆の精神衛生的にも好ましく無かった。
死臭も充満してきておりイベントホールは最早、拠点として使うには厳しい状態に有った。

「他の皆……ノーチラス君と、サーシャちゃんと、樹里ちゃんは」
「もう是非は聞いてきた。三人共、承諾してくれたよ。勿論、割り切れている様子じゃ無かったが」
「そうか……」

仲間達の死体をそのままにするのは、気が引けても仕方無いだろうとMURは思った。
ト子は元々「クラスメイトとは余り仲は良くない」と言っていたように、特に感傷的になっている風では無かったが。
一応、MURは巴にも確認を取り、イベントホールを離れる事に同意を得られた。
死んでいった仲間達の荷物から必要な物を回収した後、六人はイベントホールを後にする事に決める。

「……あ、そう言えば」

気になっていた事が有った事を思い出した樹里が、ト子に声を掛けた。

「貝町さん、あの」
「何だ?」
「何か、分解してたみたいだけど……むぐっ」

台詞の途中で、樹里はト子に口を塞がれる。
ト子はもう片方の手の人差し指を自分の口の前で立て、静かにするように樹里に命じる。
何事かといった表情を浮かべるノーチラス、サーシャ、巴。
MURはト子の行動の理由が分かっていた。MURとト子はアイコンタクトを取り、自分達が今まで調べてきた事を、
他のメンバーに話す時が来たと判断する。

「あー、みんなこっちに来てくれ」

ホールの奥、死臭も余り漂っていない場所にMURとト子は他のメンバーを集めた。
二人は鉛筆とノートを取り出して、他四人に筆談する事を要請する。
戸惑う四人であったが、重要な事には違い無いとすぐに察し、それぞれ鉛筆とノートを取り出した。

65 :感傷リフレクト ◆ymCx/I3enU :2015/04/13(月) 22:45:40.38 ID:VIt7yvCM
〈みんな、ト子ちゃんの分解していた物が何か気になるだろう〉

そう書いてMURが四人にノートを見せる。
最初にト子に訪ねた樹里を始めノーチラス、サーシャが頷くが、巴はクエスチョンマークを浮かべる。
巴はメンバーの中では新参さった上、ト子の分解していた物も気にしてはいなかった。

〈あっ、そっかぁ……巴ちゃんにもこれからちゃんと説明するゾ〉
〈一体何なの?〉

巴が催促する返事を書き、ト子がいよいよ核心を四人に説明し始める。

自分が分解していたのは参加者の首にはめられた首輪であり、それを解析し、解除法をどうにか編み出した事。
ただ、その方法が本当に会っているのかどうか、最初の希望者で試さなければいけない事。
最初に首輪解除を望む者は言わば「実験台」であり、失敗して死ぬ事を覚悟しなければならないという事――――を、
ト子は筆記して四人に伝えた。

四人は素直に、ト子への賛辞の言葉をノートに書いた。
不確定要素がまだ強いにしても、参加者を殺し合いに縛り付ける首輪について解除方法の目星を付けられるまでに調べ上げる等、
誰でも出来る事では無い。ト子が機械に強いと言う事は、ノーチラス、サーシャ、樹里も知っていたが、
ここまで優秀だったとはと、ト子を褒め称えた。

ト子は少しだけ顔を赤らめつつ、次に筆談の理由について書き綴る。

〈筆談の理由についてだが、首輪の中に盗聴器が仕掛けられているからだ。
参加者同士の会話は全て運営に筒抜けになっていたらしい〉
〈成程ね、運営に首輪外そうとしている事がばれたら、マズイもんねぇ〉

巴がノートに書いてト子とMURに見せる。
他の三人も、巴と同様の思考に至っているようだ。

〈そうだよ、巴ちゃん。遠隔操作されて首輪起爆されちゃうヤバイヤバイ……〉

MURが返事を書く。
ここで、サーシャがト子とMURに質問する。

〈だけど、どうやって首輪を手に入れたの?〉

解析に使った首輪の入手経路についての質問であった。
無理矢理外そうとすれば爆発する首輪をどうやって手に入れたのか、ノーチラス、樹里、巴も気になっていた。
その質問にはMURが答える。
B-6時計塔にて、ケルベロモンと言う巨大な犬に襲われ、その時同行していたアルジャーノンを殺害されるも、
返り討ちにしてその首を落として手に入れた事、それをノートに書いて四人に伝えた。
また、その時から、厳密にはアルジャーノンが目の前で殺されるのを目の当たりにしてから、フグオが塞ぎがちになってしまった事も一緒に書く。

66 :感傷リフレクト ◆ymCx/I3enU :2015/04/13(月) 22:48:12.86 ID:VIt7yvCM
〈アルジャーノンが目の前で殺されてから、フグオ君はずっと落ち込んでいたんだゾ。
目の前で一緒に居た仲間が酷い殺され方をしたんだから無理も無いとは思うが……。
小鉄君と再会した時のフグオ君は本当に嬉しそうでほっこりしたゾ〉
〈小鉄君も嬉しそうだった〉

フグオの友人小鉄と行動を共にしていたサーシャも、MURと同じように二人が再会した時の事を思い返す。
だが二人はもうこの世には居ない。
フグオは触手によって刺殺され、小鉄に至っては頭部が破壊され死に顔すら無いのだ。

〈話が逸れちゃったゾ……とにかく、首輪の入手経緯についてはそう言う事なんだゾ〉

首輪の入手経路についての話が終わった所で、ト子が本題を切り出す。
最初に首輪を解除して欲しい者は誰か四人に尋ねる。
ノーチラス、サーシャ、樹里、巴は互いに顔を見合わせた。
先に説明された通り、最初に首輪の解除を希望する者は、失敗による死の危険性がかなり高いのだ。
もっとも、解除失敗による死の危険は全員平等に孕んでいるとも言えたが。

〈待つんだゾト子ちゃん〉

しかし、突然MURがト子に物言いを行う。

〈MURさん?〉
〈まだみんなに選択させるのは早い気がするゾ。
これから拠点を移動しようとしていた所なんだから、もう少し考える時間を作った方が良い〉
〈そうか〉
〈みんな、今すぐに結論を出してくれとは言わない。今から移動もする事だし、考えておいてくれないか〉

首輪について説明したばかりでいきなり誰から解除すると言うのを聞くのは拙速であると考えたMURは、
四人に考える時間を与える事にした。
いざと言う時はMUR自ら最初の首輪解除試験者になるつもりではあったが。

〈一旦ここで首輪については話を終わろう。MURさんの言う通り、考える時間が必要だろうからな。
筆談はここで終わりだ、これからは首輪の話題は避けつつ、普段通りに喋ってくれ〉

ト子が四人にそう伝え、首輪についての筆談は一旦切り上げとなった。

「……移動するにしても、どこへ向かうんだ?」

ノーチラスがMURに尋ねる。
MURは自分の地図を取り出し、次の行き先の目星を全員で協議する。

結果、現在位置の南、D-6エリアの廃ビルに、次の行き先を決める。

荷物を纏め、準備が出来次第、六人は出発する事にした。
日は傾き、既に夕方に差し掛かっていた。

【夕方/D-5イベントホール】

【MUR】
【貝町ト子】
【ノーチラス】
【サーシャ】
【北沢樹里】
【原小宮巴】
【生存者 残り6人】

67 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/13(月) 22:49:17.19 ID:VIt7yvCM
投下終了です。
もう後半適当だけどゆるして
次は第三回放送予定

68 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/18(土) 23:50:07.43 ID:grlJekYl
投下します。

69 :第三放送 ◆ymCx/I3enU :2015/04/18(土) 23:50:45.06 ID:grlJekYl
89話 第三放送

バトルロワイアルの舞台の日が暮れる。
ゲーム開始から18時間が経過した午後6時、第三回目の定刻放送が始まる。
放送者は第一放送と同じ、じゅんぺいであった。

『えー、ン゛ン゛ッ、皆様お久しぶりでございます、じゅんぺいでございます。
ン゛ッ、皆様と言っても、もう生存者の方は数える人数、しか残っておりませんねぇ……。
それでは、第三回目の定時放送を始めます。

まず禁止エリアからです。
午後7時より、A-4、C-2、D-2、E-5。
午後7時より、A-4、C-2、D-2、E-5です。

それでは、脱落者のン゛ッ、発表をします。

大沢木小鉄
金子翼
君塚沙也
KBTIT
鈴木フグオ
遠野
ひで
油谷眞人
ラト

以上、9人。残りは6人となりました。
確認の為に、生存者の方の名前も発表します。

貝町ト子
北沢樹里
サーシャ
ノーチラス
原小宮巴
MUR

残り6人となり、ン゛ッ、いよいよ大詰めかと存じます。
最後まで、全力で、えー、戦い抜いて下さい。

では、次の放送は、夜の0時となります。
とは言っても、それまでに決着が着いてしまうかもしれませんが……それでは、第三回定時放送を、ン゛ン゛ッ、終わります』

相変わらず酷い滑舌の放送が終わりを告げた。

◆◆◆

70 :第三放送 ◆ymCx/I3enU :2015/04/18(土) 23:51:33.68 ID:grlJekYl
「お疲れだった、じゅんぺい君」
「うーい」

定時放送を終えたじゅんぺいを労う平野源五郎と、それに対し気怠そうに返事をするじゅんぺい。
大抵の人間ならそんな反応をされれば不快感を感じるであろうが、平野は特にそういった様子も無かった。

「平野さん、少し気になる事が有るのですが」

じゅんぺいが休憩に行った後、まひろが平野に深刻そうな面持ちで話し掛ける。

「どうしたんだね?」
「生存者6人についてですが、少々不審な点がございまして」

まひろが懸念を示しているのは、生存者6人の行動。
首輪からの特殊な電波、及び盗聴器によって運営本部は参加者の動向を把握する。
生存者6人は現在一つのチームとなり一緒に居るのだが、
時折、不自然な程誰も喋らなくなり、筆記音らしき音のみが響く時が有る、とまひろが平野に伝える。

「筆記音……無言……筆談か?」
「恐らくそれではないかと思います」
「ふむ……」

平野は思考する。
筆談を行っているとすれば、声に出してはまずい話題を仲間内で交わしていると言う事であろう。
しかし、まひろによれば、筆談と思われる行動を取っていた時に彼らの周囲には敵は居なかったと言う。
そもそももう彼ら6人しか残っていない。
それでも筆談する理由とは何か――――そこまで考えた時、平野はある事を思い出した。

確か生存者の内、MURと貝町ト子の二人組は首輪を手に入れていた。
ト子は解析するとも言っていた――――分解したとしても首輪の構造など理解出来まいとたかをくくっていたが、
もしや筆談内容と言うのは、首輪についてではないだろうか。
もしそうなら、首輪から盗聴されていると言う事実に気付いていると言う事になる。
いや、下手をすれば、内部構造も隅々まで把握され解除の方法まで探られているのでは。

「平野さん?」
「ああ、すまないまひろ君。じゅんぺい君を呼んできてくれないか。ちょっと話し合いたい事が有るんだ」
「ハイ」

平野に指示され、まひろはじゅんぺいを呼びに向かう。

「参加者達を甘く見過ぎていたかな……」

万一の事態になった時の事を思案しながら、モニタールームで平野は佇んでいた。


【残り  6人】

71 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/18(土) 23:52:16.10 ID:grlJekYl
投下終了です。

72 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/26(日) 22:48:06.91 ID:5Rj/JyE4
投下します。

73 :SWORDSMEN IN THE PLAIN ◆ymCx/I3enU :2015/04/26(日) 22:50:13.88 ID:5Rj/JyE4
90話 SWORDSMEN IN THE PLAIN

MUR、貝町ト子、ノーチラス、サーシャ、、北沢樹里、原小宮巴の六人がそれまで拠点として使っていたイベントホールを離れ、
南下して廃ビルへとやって来てから程無くの頃、午後の六時を回り、第三回定刻放送が始まった。
放送主は第一放送と同じじゅんぺい。相も変わらず酷い滑舌で放送内容を読み上げていた。

禁止エリアは四つとも、廃ビルの有るD-6エリアからは外れていた。
しかし、三回の放送を経て、禁止エリアの数は実に12エリアとなり、会場のほぼ三分の一を占める有様。
確実に行動可能な範囲は狭まっていた。

そして、死者の発表。ここでMUR達は、このゲームにおいて、最早自分達しか生き残っていない事を知る。

放送終了後、廃ビル二階の、元は会議室として使われていたと思われる、
古びた長テーブルと錆の浮き出たパイプ椅子が置かれた広い部屋で、六人は暫く無言だった。

「生き残っているのはもう俺達だけになってしまったのかゾ……」

最初に言葉を発したのはMUR。顔を両手で覆い、落胆した様子であった。
生存者が自分達だけになってしまった、と言う事も有るが、
自分のクラスメイトはもう誰一人として生き残っていないと言う現実も、彼に重く伸し掛った。

「もう私達しか居ないとなると、時間切れとの戦いになるな」

ト子が懸念を述べる。開催式でまひろが言っていた「制限時間」の事だ。
12時間、新たな死亡者が出なかった場合は、生存者全員の首輪を爆破し、優勝者は無しとなる。
最早この殺し合いには殺し合う気の無い六人しか居ないのだから、このまま何も無ければ、いずれ全員死ぬ運命に有る。

ト子が自分のノートと鉛筆を取り出す。
鉛筆の芯がかなり丸くなっていた為、樹里からナイフを借りて削り尖らせる。
そしてノートに文を書く。全員がそれに注目した。

〈そろそろ結論を出さなければならん、最初に首輪の解除を試したい奴は誰だ〉

一度保留となっていた、首輪解除方法の最初の希望者の話。
時間切れが迫る今、保留にしておく事は出来ない、結論を出さなければとト子が文面で宣告する。

そして、樹里が挙手をした。

〈良いのか?〉

ト子が念を押す。樹里はト子を見据えて頷いた。
自分はかつて大罪を犯し、一つのカップルを不幸に陥れた。
そんな自分が今更危険を避けて安穏とする、などとは思わない。
例え、失敗して死ぬ事になろうともそれは自分への罰として受け入れよう――――樹里は翻意するつもりは一切無かった。

〈みんな、異論は無いか?〉

MURがノーチラス、サーシャ、巴に尋ねる。
三人とも、異論は無いようだった。

74 :SWORDSMEN IN THE PLAIN ◆ymCx/I3enU :2015/04/26(日) 22:51:03.03 ID:5Rj/JyE4
〈よし、始めよう〉

そう書いてト子が締め括った後、いよいよ解除方法を試す時がやってきた。
樹里をパイプ椅子に座らせ、ト子が工具を手に樹里の傍に立ち、少し離れた位置で、他のメンバーが見守る。
ト子が樹里に合図を送った後、作業が始まった。

ト子が工具を持つ両手に全神経を集中させる。
目を瞑り、じっと待つ樹里。待った先に有るのは首輪の呪縛からの解放か、死か。樹里の運命はト子に委ねられている。
会議室の中には、首輪と工具が擦れる細かい金属音、六人の呼吸音の二種類の音が響いていた。

「……っ……」

自分でも知らない内に、樹里は両膝の上に置いた両手拳を強く握り締めていた。
心臓の鼓動も尋常では無い位早まっている。いつも陸上競技で走った後で感じる心地よいそれとは全く別物の気持ちの悪い鼓動の早さ。
――――恐い。とても恐い。
先程の覚悟をいとも容易く上塗りし潰してしまう程の恐怖が樹里の心の奥底から這い出て、蝕む。
大声で叫んでしまいたいがそれも出来ない。

(駄目、駄目、恐い……! 恐怖を、抑えきれない!)

死ぬ事になろうとも、などと決心しておいて情けないとは樹里も思ってはいたが、それでも恐怖はどうしようも無かった。
最初の死の時にはろくに感じなかった死の恐怖を樹里は今まざまざと実感する。

早く終われ。早く終われ。早く終われ。耐えられない。心が張り裂ける。早く終われ――――。

目を固く閉じた暗闇の中、樹里は心の中で叫び続け、恐怖と必死に戦った。
そして、勝利の女神は。

樹里に、いや、この場に居る全員に微笑んだ。

床に転がる、それまで樹里の首に付いていた筈の、死の首輪。
以前の殺し合いの時からずっと有った首元の感触が消え、樹里が目を開ける。

「あ……」

首元に手をやると、もう、首輪はどこにも無かった。

解除に成功したのだ。

全員が歓声を上げようとして、慌てて口を塞いだりしてそれを抑える。

〈落ち着け、落ち着け……まだ声を出すのはマズイ、分かるな?〉

ト子がノートに書いて全員に見せる。一番声を出して喜びたかったのは他でも無いト子だったのだが。
自分の知識と技術が間違いでは無かったと証明出来たのだから。
最早躊躇う理由は無く、MUR、サーシャ、巴、そしてト子自身と、あっと言う間に全員が首輪の呪縛から解放された。

75 :SWORDSMEN IN THE PLAIN ◆ymCx/I3enU :2015/04/26(日) 22:52:35.24 ID:5Rj/JyE4
今度こそ歓声を上げようとした一同だったが、MURが制した。
急いでノートに一文を書き全員に見せる。

〈首輪が全員解除された事で運営がどう動くか気にならないか?〉

「確かに」とMURに賛同する一同。
運営側が参加者の動向や生死を把握するのに首輪を使っているのは想像が付くが、
首輪が解除された場合は運営にはどう伝わるのか。
今となっては時間切れも遠隔操作による爆破も気にする必要は無い。
なら、運営がこれからどう動くのか様子を見ようではないかとMURが提案した。

全員がそれに賛成し、息を潜めて様子を窺い始める。
どこに有るのか分からない、運営本部の場所を知る手掛かりにも成りうる。

終結の時は確実に近付いていた。
どのような結末を生存者6人は迎えるのか。



【夜/D-6廃ビル二階会議室跡】
【首輪全員解除】

【MUR】
【貝町ト子】
【ノーチラス】
【サーシャ】
【北沢樹里】
【原小宮巴】
【残り  6人】

76 : ◆ymCx/I3enU :2015/04/26(日) 22:55:54.00 ID:5Rj/JyE4
投下終了です。いよいよ佳境、か?

77 : ◆YOtBuxuP4U :2015/05/05(火) 05:05:40.64 ID:16PI//Cs
クライマックス直前だけど俺得7th、おいついたぜー!投下乙です
いつも通りのいつ誰が活躍していつ誰が死ぬか分からない緊張感に
翼・みさえ・ケルベロモンなどのガチマーダー、ちょっと抜けてるのが逆に怖いひで、
さらには触手注意報の大量殺戮フラグまで用意されながらも、
巴KBTITとかノーチラス沙也とか面白いコンビの活躍、野原一家まわりの泣ける話、テトとサーシャの関係、
遠野と野獣の再会とかいろんなフラグが回収されてて俺得7th、かなり読みごたえありました…!
クライマックスにも期待です!

78 : ◆ymCx/I3enU :2015/05/23(土) 22:54:17.44 ID:bbkJxdwn
テスト

79 : ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:12:10.19 ID:mvJ9mn9j
投下します。長くなりそうなので前編後編に分けます。

80 :明日は来るのか ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:15:23.57 ID:mvJ9mn9j
91話 明日は来るのか(前編)

運営本部、黒いゴーグルを掛けた監視員の一人が平野源五郎の元へ走る。
そして、生存者全員の生存反応が監視モニタから消えたと伝えた。
「暫く待機するように」と監視員に支持し、モニタールームへ戻らせた後、平野は側近二人――じゅんぺいとまひろに声を掛けた。

「じゅんぺい君、まひろ君、聞こえたと思うが、生存者全員の反応がモニタから消えた。
本来ならば、全員死亡したと見るべき状況なのだが、さっき話した事を覚えているかね?」
「はい」
「ハイ」

平野は第三放送終了時にまひろからもたらされた情報から、生存者6人が首輪の解除を目指している可能性を考え、
それをじゅんぺいとまひろの二人にも伝えていた。

「確か、首輪がゲーム中に外れた場合、モニタの上じゃ、死亡って出るんですよね?」
「そうだじゅんぺい君」

じゅんぺいの言うように、ゲーム中に何らかの理由で首輪が外れた場合、モニタ上ではその参加者は「死亡」扱いになる。
ゲーム中に首輪が外れると言うのは、普通ならば優勝者に信号を送って解除する以外には無い筈、だが。

「6人全員、殺し合いには乗っていない者ばかり。
当然、周囲にはもう敵も居ない。そのような中で、突然、6人全員がモニタ上で『死亡』した。
と言う事、ですね? 平野さん」
「ああ、まひろ君。君はこれについてどう思う?」
「つまり、生存者達が、首輪の解除に成功したと」

まひろが語った考察に平野が頷いた。
直後に「そんな事有り得るのか」とじゅんぺいが疑問を呈す。
彼の言う通り、参加者が首輪の解除に成功したなど信じ難い、それは平野もまひろも一緒だ。
言うまでも無く高度な技術で作られた特別製の物なのだから。
しかし、生存者の内の一人、貝町ト子が機械類に詳しいと言う事や今までの生存者達の筆談と思われる行動を振り返るに、
可能性は捨てきれない。

「取り敢えずは、生存者達の反応が途絶えた、D-6エリアの廃ビルへ『迎え』を行かせる。
もし本当に全滅していたのならそれで良し、もし首輪を全員外していたのなら、私達の元に案内する」
「大丈夫なんすか? 案内なんかして。生き残り達は、俺らの事恨んでるだろうし、絶対襲ってくると思いますけどね」
「まあ、その辺りも考えてある。安心したまえ、じゅんぺい君。まひろ君も。それでは、始めようか」

余り多くの事は語らないまま、平野はモニタールームの方へ歩き去って行った。
やや呆れた表情を浮かべるじゅんぺいと、特に表情を変えないまひろ。

「あの人、たまに根拠の無ぇ自信見せる時有っからなぁ」
「まあ、本当に危険になったら、私達は避難して良いと言っていましたし」
「そうだな、いざって時は平野さんに悪いけどそうさせて貰おうぜ」

身の振り方を話しながら、二人は休憩室へと戻る。

◆◆◆

81 :明日は来るのか(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:16:40.43 ID:mvJ9mn9j
すっかり夜となったバトルロワイアルの会場。
最初の夜の時とは違い、銃声も悲鳴も聞こえない。聞こえるのは風の吹き抜ける音、
そして夜空を強力なライトを照らしながら飛行する大型の黒いヘリコプターのローター音のみ。

D-6エリア、廃ビルの駐車場だった場所にヘリは着陸した。
ヘリの中から、自動小銃を装備した、黒い服に身を包んだゴーグル男達が複数人出てくる。
彼らこそが平野源五郎の寄越した『迎え』の者達であった。
生存者6人が、モニタ上で生存反応の途絶えるその直前まで居た筈の廃ビルの中へゴーグル男達は入って行く。

彼らが確かめようとしているのは生存者6人の生死。
本当に死んだのか、それとも、平野源五郎の言う通り首輪を外す事に成功したのか。

「ぐあ!?」

その答えは彼らが二階フロアに足を踏み入れてすぐに判明した。

「落ちろ!」
「げぶっ」
「落ちたな(確認)」

床にうつ伏せに倒れたゴーグル男の一人を踏み付ける、生存者の一人、犬狼獣人の原小宮巴。
残りのゴーグル男達は彼女の首に、有る筈の首輪が無い事を見て取る。

「お前ら、やっぱり首輪を……」

ゴーグル男の一人が言いかけた、だが、それがゴーグル男達の発する最後の台詞となった。
次々と現れたMUR、ノーチラス、サーシャ、北沢樹里、貝町ト子に、ゴーグル男達は全滅させられてしまう。

「よし、この勢いに乗じて、あのヘリを奪うんだゾ!」

MURが号令し、生存者達が外に停めてあるヘリに向け突撃する。
ヘリの周囲にも当然武装したゴーグル男達が配備されていたが、あっと言う間に全員が排除されてしまった。

「何だお前ら……!?」
「抵抗するな」

ヘリの中へ押し入ったト子が、銃を突き付けてパイロットを脅す。
そして自分達を運営本部へ連れて行くよう命じた。
パイロットは逡巡する素振りを見せるも、銃口を目の前にしては従うしか無いと思ったのか、頷いた。

「良いゾ〜これ」
「上手く行ったな、MURさんの言う通り様子見して正解だった」

ノーチラスがMURを称賛する。
廃ビルにて全員の首輪解除に成功した時に、MURの提案によってその場で全員息を潜めていたが、
しばらくして会場周囲を囲む崖の向こうから夜空を照らす強烈なライトを照らしながらヘリがやってきて、
MURの考えが正しかった事が証明された。

MUR達によって奪取されたヘリは、廃ビルの駐車場からゆっくりと飛び立つ。
ヘリが離陸した後、倒れていたゴーグル男の一人が、苦しげに身体を起こし通信機を手に取って通信ボタンを押した。

「……生存者達の、襲撃に遭い……プランBに移行、しました……」
『分かった。大変な役目、ご苦労だった』

飛び去って行くヘリを見詰めつつ、ゴーグル男は通信機の向こうの男――平野源五郎とのやり取りを続ける。

◆◆◆

82 :明日は来るのか(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:17:23.71 ID:mvJ9mn9j
生存者6人に奪われたヘリは、ゲーム会場を外界から完全に隔絶していた絶壁を越え、
生存者達、いや、参加者達にとって全く未知の領域に入る。

「崖を越えたみたい」

窓の外を見ながらサーシャが言う。
樹里、巴も同じように窓の外に目をやる。
会場は街灯や幾つか建物の明かりが有るのに対し、会場の外はヘリのライト以外には月の光程度しか、明かりは無い。

「暗いなあ……」
「んー、下は草原と森なのかな? なんか、建物と言うかそういう人工物が見当たらない……見当たらなくない??」

会場の外は、月明かりとヘリのライトの光で視認出来る限り、人工物が見当たらず、延々と草原や森が続いているように見えた。
道路も畑も見当たらない。現代日本において到底考えられない景色だと、6人全員が思う。
但し、厳密にはMURと、ノーチラス・サーシャ・ト子・樹里と、巴の「日本」はそれぞれ似て非なる物なのだが。

「一体ここはどこなんだろうな、いや、それ以前に、日本なんだろうか、ここは」
「それも、このゲームの黒幕に聞けば分かると思うゾ」
「おい、ちゃんと本部に向けて飛んでいるんだろうな」

会話するノーチラスとMURの横で、再びパイロットを威圧するト子。

「と、飛んでいる! ほら、見えてきたぞ」
「む……」

怯えながら話すパイロットの言に、ト子を始めとして全員がウィンドウガラスの向こうに視線を送る。
暗闇の中、ぽつんと明るい場所が視認出来た。
ヘリポートである。

「あれが本部か」
「ああ、そうだ」
「よし、みんな乗り込むゾ! 準備は良いな? 必ずこのゲームの黒幕を倒して全員で生きて脱出するんだゾ」

MURが激を飛ばし、全員が決意を新たにした。
いよいよヘリが光り輝くヘリポートへと着陸する。
暗闇の中を飛んできた6人にとってヘリポートの光はとても眩く視界に溢れる光に思わず目を瞑るが、直ぐに慣れ目を開いた。

「……? 妙だな」

外の様子にノーチラスが疑問を持つ。
四方を高い塀に囲まれたヘリポートには人っ子一人見当たらない。
普通に考えれば警備の者位は居るのではないのか?

「誰も居ないわね……?」
「警備員ぐらい居そうなものなんだけど……」

サーシャと樹里も同様に不審がる。

「とりあえず外に出よう」

MURがそう言い、6人がヘリから降りる。
その時、パイロットが微かに哂ったが、誰も気付く者は居なかった。

「あそこ、入口が有るわ」

サーシャが指差す先に、大きな両開きの扉が付いた、コンクリートの建家が有った。
あれが本部の入口に違い無い、そう判断した6人は建家に向かって、辺りを警戒しつつ歩いて行く。
本当に誰も居ない、ただただ固いコンクリートの地面が有る広いヘリポート――――の筈だった。

83 :明日は来るのか(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:18:11.81 ID:mvJ9mn9j
「ん?」

先頭のMURは急に足が沈むような感覚に襲われた。
深い泥濘に嵌ってしまった時のような。足元を見ると、そこには黒い沼のような物が広がっていた。

「うおお!? 何だこりゃ!?」
「いっ!? うあ!」

ノーチラスと樹里が吃驚の声を上げる。巴とト子、サーシャも異変に気付く。
6人全員が、先程までただのコンクリートだった筈の地面に突如出現した「黒い沼のような物」に足を取られていた。
その上、6人はどんどんその黒い沼のような物に沈んで行く。

「くそ……!」

這い出ようとト子がもがくが、もがけばもがく程どんどん沈んで行ってしまう。全くの徒労であった。

「何なんだゾ!? うわあああ……!」

為す術も無く、MURは黒い沼のような物へと完全にその身体を沈めてしまった。
続いて、他の五人も同じように沈んで行き、その後、黒い沼のような物はどんどん小さくなり、
最後には消えてしまいただのコンクリートの地面へと戻った。

「そう甘くは無いんだよなぁ……問屋が卸さないって、はっきり分かんだね」

いつの間にかヘリから降りたパイロットの男が、黒い沼のような物が有った辺りを見ながら、不穏な笑みを浮かべた。

◆◆◆

(息が……出来ないゾ……!)

黒い沼のような物に飲み込まれたMUR。水中に居る感覚と全く同じで、息も出来ず、何も見えず、
ゴボゴボと言う自分の口から二酸化炭素の気泡が溢れ出る音しか聞こえない。
上下感覚が無くなり、最早自分が沈んでいるのか否かさえも分からなくなる。

(し、死、ぬ……!)

このまま窒息して溺れ死ぬのか――――そう思った時、急に辺りが明るくなった。
途端、身体中にまとわりついていた水に似た感覚が消え、重力が元通りになり、息が出来るようになる。
だが次の瞬間にはMURは固い床に叩き付けられた。
そのMURの上にト子、サーシャ、ノーチラス、樹里、巴が次々と降ってきて、彼を下敷きにしてしまう。

「いってぇ……」
「大丈夫? ノーチラス……あいた」
「サーシャ……北沢に貝町、巴、居るか?」
「居るよ」
「ああ」
「居まーす」
「あれ、MURさんは……あっ」
「ど、どいてくれゾ……」

恨めしそうに苦しそうに、五人の下からMURが声を発する。急いで五人はMURの上から退いた。
立ち上がって自分の腰を叩くMURにサーシャが気遣いの声を掛ける。

「ごめんなさいMURさん、大丈夫ですか……?」
「何とかな、それより……ここはどこなんだ?」

84 :明日は来るのか(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:18:43.97 ID:mvJ9mn9j
MURの言に周囲の様子を確認する五人。
現在居るのは、広いホールのような部屋だった。開催式の時の部屋とは別の物のように見える。
四方を真っ白い壁に囲まれ、入口らしき物も見当たらない。
自分達が落ちてきた天井を見上げれば、そこには簡素な照明が幾つか設置された無機質な天井しか無い。
いやそもそも、あの黒い沼のような物は何なのか。ヘリポートはただのコンクリートの地面だった筈だが。

「良く分からないけど、どうも、ヘリポートからこの部屋に、転移、した? って事かしら」

サーシャが全員の疑問に対する一応の答えになりそうな結論を出した。結果から言えばそうなのだろう。
尤も、あの突然現れた黒い沼のような物は何なのか、どうやってこの部屋まで転移したのか、など、全く解決の兆しが見えない事柄も多々有ったが。

「と言う事は、ここが奴らの、運営の本部……って事か?」

ノーチラスが新たな疑問を口にした直後、異変が起こる。
6人から見て正面の壁が、自動ドアのように開き始めた。そして現れた入口から、大勢のゴーグル男達が雪崩込んでくる。
武器を構えようとした6人だったが、ここで、武器を始めとした所持品が全て無くなっている事に気付いた。

「あれ、武器無いや」
「デイパックも無い!」

キョロキョロする巴、叫ぶ樹里。
そして6人はあっと言う間にゴーグル男達に包囲されてしまう。

(まさか罠だったのか……!?)

MURは自分達が本部まで来れたのは、運営側が仕掛けた罠なのではと思い始めていた。
思い出せば廃ビルにやって来たゴーグル男達は本気で抵抗していないように見えた。
首輪を外そうと言う話題は、盗聴器の存在を知る以前に多少声に出してしまっている。
運営は自分達が首輪を外した事を察知し、わざと自分達の本拠地におびき寄せたのでは――――?

(いや、今はそれより……)

運営が罠を仕掛けたのかどうかより現状を打破する事を優先すべきだと、MURは頭を切り替えた。
しかし、打破するとは言っても、いつの間にか武器が無いこの状態で下手に抵抗するのは自殺行為に等しい。

ところが、ゴーグル男達も、6人を包囲すれど、何か仕掛けてくる様子も無かった。

「何だ、どうして何もしてこないんだゾ……?」

困惑の色を浮かべるMUR、他の五人も多少の差はあれど同じような反応である。

「ようこそ、この殺し合いを生き抜いた6人の強者達」

男の声が響く。すると、ゴーグル男達が道を開け、三人の男が6人に向かって歩いて来た。
その内二人は6人も良く覚えている、じゅんぺいとまひろ。
その二人を従えるように中央に居る、作務衣姿の男は、6人は初めて見る顔であった。
じゅんぺい、まひろ、そして作務衣の男――――平野源五郎は、6人の二、三メートル前方で止まる。

「……お前がこの殺し合いの黒幕なのかゾ?」

進行役を務めていたじゅんぺいとまひろを従えている事から推測したMURが切り出した。

「如何にも。私の名前は、平野源五郎。このゲーム、バトルロワイアルの支配人を務めている。
君達の前に姿を現すのは、初めてかな」

85 :明日は来るのか(前編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:19:12.28 ID:mvJ9mn9j
丁寧な口調と仕草で、平野は肯定し自己紹介をした。
この「平野源五郎」こそがこの殺し合いの黒幕――――そう認識した6人の表情が険しくなる。
それを全く意に介さず平野が続けた。

「まさか首輪を解除してしまうとは、驚いたよ」
「気付いていたのかゾ……」
「我々もそう甘くは無いと言う事だ。貝町君かな? 解除したのは」
「……」

平野の問いにはト子は答えず睨み付けるのみ。
ふっと不敵な笑みを浮かべるのみで平野は特に咎める事もせずに、弁舌する。

「最初は、確信していなかったのだがね。幾つかの状況証拠、とでも言うのかな?
それらを纏めたのだよ……君達は、何度か不自然に無言になった事が有っただろう」

どのようにして6人が首輪解除に成功したと考えるようになったかを事細かに6人に説明する平野。
それを聞き、MURとト子が特に悔しげな表情を浮かべた。
首輪解除に関する事を隠す為の筆談が裏目に出てしまう形となったからだ。
とは言っても、首輪の盗聴器に気付く前に何回か口に出して言ってしまっている為それも一因であろうが。

「やっぱり、私達は誘い出されたと言う訳ね」
「その通りだよ。サーシャ君。首輪がゲーム中に外れるとこちらのモニタには『死亡』と表示される。
君達が一気に『死亡』となったから、確認に行かせた者に『全滅したのなら良し、さもなければ、やられる振りをして本部へ誘い込め』と、
指示を出したのだ……上手く君達は引っ掛かってくれた」
「へへ……どうも」

平野の後ろから、不快なにやけ顔をした男が現れる。ヘリのパイロットだ。
ト子に散々脅されていたパイロットも、平野の策謀の一翼を担っていたのだ。
しかし臆病なのは演技と言う訳では無いらしくト子に睨まれるとおずおずと後ろへ引き下がる。

「ここで立ち話も何だ、別室を用意してあるから、場所を移そうじゃないか」

そう言うと平野はゴーグル男達に再び道を開けさせ、6人に自分についてくるよう促す。

「どうする? MURさん」

従うべきかどうかMURに尋ねる樹里。
当然MURは迷ったが、武器は没収され大量のゴーグル男に囲まれ更に敵地のど真ん中に居る現在、
平野の言う通りにする以外に道は無さそうであった。

「今はあいつの言う通りにするしか無いだろうな……今の所、俺達をどうこうするつもりは無さそうだし、まだチャンスは有る筈だゾ」

他の五人に向かって、まだ希望は残っていると含みを持たせMURが言う。
6人は平野、じゅんぺい、まひろの三人の後について行った。

86 : ◆ymCx/I3enU :2015/05/24(日) 23:19:56.93 ID:mvJ9mn9j
前編ここで終了です。
後編も只今ひり出しています。

87 : ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:24:02.21 ID:AydTfB/h
前編と後編に分けると言いましたが予想以上に長くなるので、
前、中、後に分けます。と言う訳で、中編投下します。

88 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:25:59.23 ID:AydTfB/h
91話 明日は来るのか(中編)

案内されたのは、先程まで居た無機質なホールに比べ、洒落ている風に見える部屋。
黒いカーテンが掛かった壁の前に対になるように置かれた二つの革張りのソファー、
赤い蝋燭が灯る燭台の乗ったガラステーブル、その下には絨毯が敷かれ、更にその下は大理石の床。

「どうぞ、座ってくれたまえ」

黒いカーテンの有る方のソファーに座るよう、平野が6人に促した。
大人しく6人がそのソファーに座る。反対側のソファーには平野一人がど真ん中に座り、
まひろとじゅんぺいは何故かテーブルの脇に二人並んで立っていた。

「これから俺達をどうするつもりなんだ?」
「そう焦る必要は無い、ノーチラス君。今すぐどうこうしようと言う気は無いから安心したまえ」
「……聞かせてくれ。この殺し合いの目的は何なんだゾ?」

MURが平野に殺し合いの目的を尋ねる。
答えは他の五人も気になる所である、きっとろくな物では無い、とも思っていたが。

「目的か。大した事では無いのだよ。はっきり言ってしまえばね」
「勿体ぶらずに言うんだゾ……」
「MUR君の世界には『BR法』と言う物が存在するだろう」

平野がMURに言う。彼の言う通り、MURの居る世界、と言うより日本には、
今回の殺し合いのような事を中学生のクラスにさせると言う「BR法」なる物が存在していた。
だがMURは、この殺し合いが「BR法」による物では無いと判断していた。

「ああ、でも、お前達は政府の人間には見えない……」
「その通り、この殺し合いは私個人による物だ。最近、これを読んだのだよ」

そう言うと、平野は懐から一冊の本を取り出した。
黒い表紙の分厚い文庫本。赤い字で「バトル・ロワイアル」と書かれている。

「それって……」
「知っているかね? サーシャ君。この本は君や、ノーチラス君、北沢君、貝町君の世界では、
遥か大昔の遺物、と言う事になっているようだが……まあそれは良い。
この本は『バトル・ロワイアル』、中学生がクラスメイト同士で殺し合うと言う内容だ……MUR君の世界の『BR法』、
ノーチラス君達や原小宮君が体験したような殺し合いと、同じ内容だよ」
「まさかそれを読んで自分もやりたくなったって事……!?」

樹里が語気を強めて平野に訊く。

「その通り。いつ死ぬか分からない極限状況の中で繰り広げられる人間模様、群像劇……実に魅力的だった。
是非とも私もやりたいと思ったのだよ……ふふふ……」
「ふざけないでよ! そんな、そんなふざけた理由で……しんのすけだって、その家族だって遊び半分で死んで行った訳じゃない!」

立ち上がり、声を荒げて平野に噛み付く樹里。
横に居たサーシャに宥められ、まだ何かを言おうとしながらもソファーに座り直す。

「気持ちは分からなくないが、このような催しの理由など大抵そんな、下らない物なのだよ。
人と言うのは平気で酷い事が出来るのだ」
「そんなの言い訳にならないゾ!」
「落ち着き給え、MUR君。北沢君。君達が今考えなければいけないのはそこでは無いと思うがね」

論点ずらしするな、と抗議しようとしたMURは出かかった言葉を飲み込んだ。
平野の言う通り、今の自分達は危機的な状況に置かれている。
敵地のど真ん中で武器も没収され丸腰、その上首輪を解除して反旗を翻そうとしていた事も露見しているのだ。
他の五人もそれは理解していた。

89 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:26:40.77 ID:AydTfB/h
「さて君達をどうするかだが、首輪を自力で外し我々に反抗しようとしたその勇気は讃えるつもりでいる。
……これから殺し合いとは別のゲームをしよう。それをクリアすれば、君達は生かして帰そう。後ろを見てくれ給え」

平野の言に6人は後ろを向いた。
黒いカーテンが自動で開き始める。

数メートル先に、大きな木製の扉が存在していた。

「どうぞ」

平野がそう言った途端、扉から鍵が開く音が響く。

「あの扉の向こうに進み給え。分かっているとは思うが拒否権は無い。拒否すれば……」

脅すように言う平野の背後にはいつの間にかまひろとじゅんぺいが立っており、その手には短機関銃と思しき物が持たれている。
指示に従わなければ蜂の巣にするつもりであろう事は明白だ。
6人は渋々、扉に向かって進む。平野とまひろ、じゅんぺいも続く。
MURが、恐らく真鍮製と思われる豪華な装飾の施されたドアノブに手を掛け、扉を開けた。

「何なんだこれは……?」

扉の先で6人を待っていたのは、恐らく100メートルはあろうかと言う長大な奈落と、その上に渡された細長い足場。
良く見るとそれは、小学校の体育で使う平均台に酷似していた。

「これって、平均台〜? すっごい長いけど」

怪訝な表情を浮かべる巴。

「だな、平均台に見えるけど……ちょ、ちょっと待て、まさか、おい」

平野がこれから自分達にさせようとしている事を察したノーチラスが、平野の方を向く。
そして平野はにやりと笑い、6人に宣告した。

「君達にはこれから『競争』をして貰う。名付けて『平均デスレース』……平均台を渡り、向こう岸のゴールに辿り着け。
そうすればクリアだ。元の世界に帰してやろう」
「……但し」

平野の宣言に付け足すように、まひろが口を開く。

「クリア出来るのは、最大で、先着3名様まで、とさせて頂きます。
3人目のクリア者が出た時点で、残りの方には、申し訳有りませんが、お亡くなりになって頂きます」
「そんな!」

サーシャが抗議の声を上げた。
ここまで生き延び、今の今まで協力し合ってきた仲間達と争わせようとする冷酷さが耐えられなかったのだ。
そんなサーシャにじゅんぺいが嘲笑を向ける。

「当たり前だろ? 6人全員タダで帰すと思ってんの? そんなんじゃ甘いよ」
「それは……」
「さあ、スタート地点に着き給え。6人共」


平野がサーシャの言葉を遮り命令を下す。有無を言わさぬ構えだ。
まひろとじゅんぺいも短機関銃を構えて6人を脅し付けた。
厳しい表情を――巴はやはり無表情だったが――浮かべながら6人は、それぞれのスタート地点に向かう。
いや――ノーチラスは、向かおうとしなかった。

(……折角、ここまで来たのに、最後までこいつらの言いなりになるなんて)

90 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:28:26.59 ID:AydTfB/h
ノーチラスは心底悔しかった。このまま平野達の言いなりになるがままなのは耐えられなかった。
きっと、他の五人も同じ気持ちだろう、だが下手に逆らえば殺されるだろうから、やむなく従っているのだろう、とノーチラスは思う。
一度目の殺し合いでは自分の欲望に負け無様な死に様を晒した事も有って、二度目となった今回は、
仲間達と共に何としても運営を打倒しようと思っていたと言うのに、今からその信じ合った仲間達と殺し合いでは無いにしろ、
生死を賭けた競争をさせられようとしている。

一矢報いてやりたい。ノーチラスはそう思った。

(……はは、やってやるか)

そして彼は決意した。恐らく、いや、間違い無く自分は死ぬ事になるであろう、しかし彼にとっては最良と言える行動を取る事を。
仲間達と争わされる位ならば、仲間を犠牲にする位ならば平野達に一太刀浴びせてやろう――――。

「ノーチラス?」

MURがノーチラスの異変に気付いて話し掛ける。

「……MURさん、サーシャ、貝町、北沢、巴」

ノーチラスが五人の名前を呼んだ。
MUR以外の四人がノーチラスの方へ振り向く。

「……生きろよ」

そう言った直後。

ノーチラスは近くに居たじゅんぺいを思い切り殴り飛ばした。

「があっ!?」

まともに顔面に殴打を食らい、倒れ伏して伸びてしまうじゅんぺい。そしてノーチラスがじゅんぺいの持っていた短機関銃を奪い取る。

「ノーチラス何を!?」
「ノーチラス!?」

MURとサーシャが叫ぶ。ノーチラスのしようとしている事は分かったが何故それをしようとしているのかが分からなかった。
下手に逆らえば殺されてしまうのに何故? それ故に二人は叫んだ。だがノーチラスは止まらない。

「死ね! 平野ぉぉぉおお!!」

牙を大きく剥き出し絶叫しながら、ノーチラスは短機関銃を平野と、傍に居るまひろに向けて掃射する。
ダダダダダダ、と無数の拳銃弾が平野とまひろに向かって撃ち放たれた。

「ああっ――――」

まひろは反撃する間も無く、全身のあちこちから鮮血を噴き出し奇妙なダンスを踊った末に、床の上に仰向けに倒れて血溜まりを作り動かなくなった。
平野は――――居ない。

「……何??」

何が起きたのか理解出来ず固まるノーチラス。
短機関銃の引き金を引き、銃口から無数の銃弾が放たれたその瞬間、まひろの隣に居た筈の平野の姿が「消えた」。
放たれた銃弾はそのまままひろを貫き彼を死に至らしめたが、肝心の平野はどこへ?
いや、間違い無く今まで「そこ」に居た筈の平野が忽然と姿を消したのはどういう事か?
ノーチラスも、他の五人も困惑していた。

91 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:30:27.24 ID:AydTfB/h
「――――いけないなぁ、ノーチラス君、そういうズルをしちゃあ」

ノーチラスの首が後ろから誰かに掴まれる。そして聞き覚えの有る声。

「えぇ……?」

樹里が思わず声を漏らす。
何しろ、ノーチラスの背後に平野が突然「現れた」のだから。
全く以て、理解不能、説明不能の状態である。強いて言うならば「平野が瞬間移動した」と言えば説明した事になるだろうか。

「平野……ど、どうして」
「……一度目のズルは見逃した。だが、二度目は……無い」

ボキィ!!

酷く鈍い音が響き、ノーチラス身体がビクンと大きく跳ねた。
平野がノーチラスの頚椎をへし折ったのだ。
持っていた短機関銃を床に落とし、操り人形のように両手と両足をだらんとさせるノーチラス。
その目は虚空を見詰め、鼻と口から血が垂れる。

「……あ、あ、の、ノーチラスぅぅう!!」

サーシャが悲痛な叫びを上げた。
運営に、平野に一矢報いようとした狼の少年は、二回目となる死を迎えた。


【まひろ@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ  死亡】
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】


屍となったノーチラスを放り投げ、残された五人の方へ向き直る平野。
その双眸には言い知れぬ威圧感が有り、巴以外の四人はたじろぐ。

「ちょっとしたハプニングが起きてしまったが、まあ良い。さあ、スタート地点に着くんだ」

気絶しているじゅんぺい、死亡したまひろの事を特に気にする様子も無く、平野は再び生存者達に命じた。

「サーシャさん……」
「う……う……ノーチラス……」

ショックを受けるサーシャを介抱して立たせる樹里。

「ノーチラス……どうして無理をしたんだゾ……」
「……」
「あーあ」

MURはノーチラスの行動の意味を量りかね、ト子は無言、巴は残念そうな声を出す。
平野の得体の知れない力を目の当たりにしてもう誰も反抗する者は居ない。
五人はそれぞれスタート地点に着いた。直後、五人の背後に青白いレーザー光線が出現する。
シャッターのように、何本ものレーザーが並んでいた。

「そのレーザーには触れないように。簡単に切断されてしまうぞ」

警告する平野。後戻りさせないと言う事だろう。
ト子が奈落の底を覗き込むが、真っ暗闇で何も見えない程深い。
吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥りト子は奈落から目を背ける。

「それじゃあ……よーい、スタート」

92 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:31:59.43 ID:AydTfB/h
大して抑揚の無い声で、平野が号令を掛けた。
ゴールの有る対岸の壁に設置された大きなディスプレイに10分のタイマーが表示されカウントダウンが始まる。

「え、制限時間有るの!?」
「くっ……とにかく行くゾ!」

何の説明も無かった制限時間の出現に戸惑う樹里と逡巡しつつもやむを得ず皆に進むよう促すMUR。
平均台の上を五人はバランスを取りながら歩き始めた。

「うう……!?」

平均台の上を歩くなんて何年ぶりだろうか、という呑気な思考をサーシャはほんの一瞬だけ持ったがすぐに吹き飛んだ。
自分の足先より少し太いかぐらいの幅の足場、その下には漆黒の闇の奈落。

「下見るな……下見るなよ……」

MURがサーシャに忠告する。

「で、でも、下、見ながらじゃないと……歩けない……!」
「あっ……そうだよ……!」

サーシャに返された言葉を聞いて、MURがこのゲームの巧妙さに気付く。
平均台の上を少しでも安全に渡るには、見なければならない。自分の足元を、足場の下に広がる奈落を。
恐怖心を否が応無しに煽られる仕組みになっているのだ。

「くそ、平野もこんな事良く考えるな……! 本当に趣味が悪いゾ!」
「褒め言葉をありがとう」
「褒めてない……!」

平野のふざけた言葉に苛立ちながら何とか先へ進むMUR。それに続くサーシャ、樹里、ト子。

「よいしょ、よいしょ……っと」

巴は既に十数メートル進み、トップに立っていた。

「怖くないのあの子……度胸有るなぁ……」

特に恐怖を感じているようにも見えない巴にある種の感心を抱く樹里。
やがて会話も無くなり、五人はひたすらに平均台の上を進む。

(でも、このまま行ったとしても……生き残れるのは三人だけ。残りの二人は死ぬ。
その前に誰か落ちてしまうかもしれない……仲間の死ぬ所を見るのは、もう嫌だゾ……!
みんなが生き残れる方法は無いのか……!?)

MURはまだ、仲間全員が――ノーチラスは死んでしまったが――生き残れる方法が無いか模索していた。
だが、何も浮かばない。武器も無い、平野は超人的な能力を持っている、自分達は分断され虚空の上の平均台を渡らせられている。
全く以て絶望的。覆す方法は何一つ見付からず、MURは唇を噛んだ。

「うわ、あ」
「!」

MURの思考はサーシャの声で中断される。
焦りと恐怖の滲んだ声に、サーシャの方へ目を向けると、バランスを崩し大きくよろける彼女の姿が。

「サーシャ! 耐えろ!」

MURが叫ぶ。他の三人もサーシャの方へ目をやる。

「サーシャさん!」
「あ、あ!!」

93 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:32:52.19 ID:AydTfB/h
樹里が声を掛けるのと、サーシャが倒れ込んだのはほぼ同時だった。
誰もがサーシャの落下、そして死を疑わなかった。

「ぐうう!!」

しかしサーシャは機転を利かせた。咄嗟に平均台の足場にしがみつき、落ちずに済んだのだ。
ほっと胸を撫で下ろすMURと樹里。心中で安堵するト子。特に表情を変えない巴。

「あ、危なかった……死ぬかと思った……!」
「サーシャ! 大丈夫か! ゆっくり上に上がるんだゾ!」

慎重に足場の上に戻ろうとするサーシャ。
一先ずサーシャは助かった、誰もが、本人も、そう思っていた。

ドス。

サーシャの心臓の辺りに、銀色に光る矢のような物が突き刺さった。
硬直するMUR、樹里。息を呑むト子。少しだけ目元を動かした巴。
口の端から赤い筋を垂らし、そしてサーシャはぐらりと身体が傾いたかと思うとそのまま奈落の底へと消えた。


【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】


「……サーシャああああ!!」
「そ、そんな……! どうして……」

悲痛な声を上げるMURと樹里。
そこへ平野の冷徹な声が響く。

「言い忘れていたよ。平均台に手を着いたり、座ったりした場合は、反則と見なしその場で処刑させて貰う」

それを聞いて、怒りに拳を握り締め、身体を震わせるMUR。
「言い忘れた」などと言っているが、十中八九わざとであろう。
だれかが平均台に手を着いたりするのを待っていたに違いない。

「これからは気を付けるよ。それはそうと、残り時間が5分を切ったぞ」

奥のディスプレイが表示している残り時間は確かに5分を切っていた。
サーシャの死を悲しむ暇も、平野に怒りをぶつける暇も無いのだ。

「行こう……」
「うん……」

悲しみを引きずり悔しさを滲ませながらMURと樹里は再び歩み始める。

一方、巴とト子は異変を感じ取っていた。

「あれぇ……」
「おい、巴」
「うん」
「どうしたんだゾ? 二人共」

何やら立ち止まる巴とト子に、MURと樹里が追い付く。しかしその辺りで二人も違和感に気付いた。
足場の幅が狭くなっていた。スタート時は足の幅より余裕が有った筈なのに今や、足の両端が1センチ弱はみ出る位になっている。

94 :明日は来るのか(中編) ◆ymCx/I3enU :2015/05/31(日) 21:34:08.32 ID:AydTfB/h
「嘘だよ!? 足場が狭くなってないか!?」
「いや嘘じゃないよ……狭くなってる」
「冗談じゃないゾ……ただでさえ、バランスを取るのが厳しいって言うのに……!」
「あー難易度たっかいね〜何か昔ちょっと読んだ漫画でこんなの有った気がする」
「慎重に進むしか無いな……」

口々に細くなっている足場への不満を述べながらも四人は進む。
戻った所でレーザーシャッターで逃げ道は無し、残り時間も余裕が無い。
ディスプレイに表示されている残り時間は既に3分を切っている。
だが、残り3分でクリア出来そうな者が居るかと言うと、かなり微妙であった。
トップに立っているのは巴だが、それでもまだゴールまで20メートルは有る。それに加え足場が狭くなっているのを考えると、
3分以内にゴールに辿り着くのは非常に難しい。巴が難しいのだから他の三人は余計に難しい。

「みんな急、いや、無理だゾこれ、急げないゾ……!」
「ああ、これはもう駄目かも分からないねぇ」
「諦めるな巴……ッ!?」

ズルッ

ト子が足を滑らせた。
「あっ」と声を漏らす巴、硬直するMURと樹里。

「ぐっ!?」

先程のサーシャと同じように平均台の足場にしがみつくト子。落ちそうになれば至って普通の行動であろう。
しかし平野曰くこれは「ルール違反」であり、この時点でト子の失格、即ち「死」が確定した。
近くの壁面から、銃口のような物が現れ平均台にぶら下がるト子に照準を合わせた。

「やめろぉ!」

無駄だと知りつつも、MURが制止の声を上げた。

ドスッ

「が……は……」

銀色の大きな矢がト子の肉体を貫いた。
それでも暫くは平均台にぶら下がっていたト子だったが遂に力尽き、手を放して闇の底へと消えて行った。


……

……


(ああ、また私は死ぬのか)

落ちて行く中、薄れる意識の中、ト子は思う。
やはり自分は生き延びる資格など無かったのか。いやそうに違い無い。
かつての自分の行いを悔いてそれの償いの意味も含めてこの殺し合いに反抗し、仲間達と協力し合ってきた。
だが、以前は、自分の為だけに、同行者を裏切ったり、他人の命を奪っていた自分である。それ位で贖罪になどならない、と言う事だろう。

(今度は、あの世へ行ける、だろうか……そうしたら、テト、に……)

最後まで思考を繋ぎ止める前に、ト子の意識は途絶えた。


【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】

95 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/01(月) 09:49:19.84 ID:uO5gTeNd
中編終了です
連投規制食らってたので投下終了宣言遅れました、すみません

96 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/01(月) 22:32:11.79 ID:uO5gTeNd
後編投下します。

97 :明日は来るのか(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/06/01(月) 22:32:54.81 ID:uO5gTeNd
91話 明日は来るのか(後編)

「くそぉ……ト子ちゃん……!」
「貝町さん……」

また一人、仲間が目の前で死んだ事に悔しさと遣る瀬無さで心が張り裂けそうになるMURと樹里。
しかし、現実は非情にも彼らに更なる追い打ちを掛ける。

「あー、タイムオーバー」

巴が諦観が籠った台詞を発する。
MURと樹里がタイムが表示されているディスプレイに目を向けるとほぼ同時に、
タイマーが0を示しけたたましいブザーが鳴り響いた。
死を覚悟する三人だったが、サーシャやト子のように矢で射抜かれるのかと思いきや、意外な事に何も起こらない。

「あれ、な、何も起きないゾ……?」
「どういう……」
「あっ、MURさん、北沢さん、あれ」

巴が後方、つまりスタート地点の方向を見て指差す。
MURと樹里が足を踏み外さないようにして後ろを振り向く。

スタート地点に有った筈のレーザーシャッターが、自分達に迫ってきているのが確認出来た。

「ファッ!?」
「嘘!? レーザー、こっち来てる!!」

どうやら制限時間が過ぎると即死する訳では無く、レーザーシャッターが迫ってくるルールだったらしい。
これも平野はあえて言わなかったのだろう。何にせよ絶体絶命の状況には変わり無い。
急いで渡り切らねば、レーザーに身体を寸断されてしまう。

「一気に行けば何とかなるかなぁ……一、二の、三!」

掛け声と共に巴が駆け出す。
一歩、二歩、三歩、四歩、と、最早平均台とはとても呼べないレベルにまで細くなってしまった足場の上を巴は確実に踏み締め、
遂にゴールとなる対岸に辿り着いた。

「おお! 巴ちゃん! 凄いゾ」
「わ、私達も行こう!」

迷っている暇は無い、レーザーシャッターはすぐそこまで迫ってきている。
巴のように一気に駆け抜ける事にしたMURと樹里。

「ヌッ!?」

しかし、MURが途中で、右足を踏み外してしまう。
樹里がそれに気付いたのはゴール地点に到達してからだった。

「MURさん!?」
「ぬ……おおおあああ!!」

肝を冷やしている樹里が見たのは、残った左足のみで踏ん張り、足場に手を着く事無く体勢を立て直したMURだった。
人間、追い詰められると驚異的な力を発揮するのは本当なのだと樹里は思う。

「死んで、たまるかゾ!!」

98 :明日は来るのか(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/06/01(月) 22:33:36.41 ID:uO5gTeNd
MURは走る。
ゴールまで4メートル、3メートル、2メートル、そして――――。

……

……

生存者達を切り刻むべく迫っていたレーザーの壁は、ゴール地点までやって来た所で消滅した。
その様子を、原小宮巴、北沢樹里、そしてMURが見届ける。

「おめでとう、君達三人がクリアした。君達三人が、この殺し合いから生き延びたのだ」

どこからともなく平野の労いの声が聞こえた。
遠いスタート地点にはもう平野の姿は見えない。どこかに移動しているのか。だが今の三人にとってはもうどうでも良かった。
生還した喜びと、仲間を失った悲しみ――巴は悲しんでいる様子は無かったが――そして、
最後まで平野源五郎の手の内で踊らされた虚しさとが綯交ぜになった複雑な気持ちであった。

急に辺りが暗くなる。
しかし三人の姿だけははっきりと視認出来ると言う不思議な状況。
その暗闇の中、ぼうっと光の柱が浮かび上がる。

「その光の中に入り給え……そうすればこの殺し合いから解放される。これで、お別れだ。私の催しに付き合ってくれて、ありがとう」

暗闇から聞こえた平野の声。
「何がありがとうだ」と噛み付きたくなったMURと樹里だったが、下手な事をすればノーチラスの二の舞になる可能性が有り、
出そうになった言葉をぐっと飲み込んだ。

「これで終わるの……実感が沸かないなぁ……私、一度死んでるんだけど、どうなるんだろう」
「あっ、そういえば私も……」

一度落命した身である自分達が「帰った」らどうなるのだろうかと樹里と巴は不安に思った。
想像も付かない。何しろ死者が生き返ると言う事自体普通なら有り得ない事だ。
どうなるのか分からないと思った途端、光の柱に入るのを躊躇ってしまう二人。
そんな二人を見てMURは何とかしたいと思った。悩む彼女達を置いて一人行く気にはなれない。

考えた末、MURは二人に声を掛ける。

「大丈夫だゾ! 例え一回死んでいるとしても、二人は今ここに居るじゃないか!
樹里ちゃんは樹里ちゃん、巴ちゃんは巴ちゃんだゾ!」

正直な所、MUR本人も自分が何を言っているのか良く分からなかったが、
勇気付けたい、元気付けたいと言う気持ちは二人には伝わったようで、樹里と巴は笑顔を見せた。

「そうだね……ありがとう、MURさん」
「良い事言うねぇー」
「仲間なんだから、当たり前だよなぁ?」
「じゃあ、行こうか……ここでお別れだね」
「そうなるねぇ」
「寂しいけど仕方無いゾ……元気でな!」

別れを惜しみながら、三人は光の柱の中に飛び込んだ。
三人の姿は眩い光と共に消え去り、後には暗闇だけが残った。
やがてその暗闇が段々と明るくなり、元の平均台の有る部屋へと戻る。

99 :明日は来るのか(後編) ◆ymCx/I3enU :2015/06/01(月) 22:34:22.22 ID:uO5gTeNd
「……消えたか」

別室に移っていた平野がモニターから様子を見ていた。

「これでこの殺し合いは終了だな……おい、じゅんぺい君はどうだ」

近くに居たゴーグル男に平野はノーチラスに重傷を負わされたじゅんぺいの容態を尋ねる。

「思いの外強く殴られたようで……暫くは安静が必要かと」
「そうか……では、後始末を頼むよ」
「了解しました」

平野から指示を受け、ゴーグル男は去った。

「さて……中々に面白い物だな、バトルロワイアルと言う物は……またやろうかな……?」

バトルロワイアル――殺し合いゲームを、平野は大いに気に入った様子であった。
再び執り行う計画を、彼は頭の中で組み立てて行く。


【ゲーム終了】

【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】

【以上3人 バトルロワイアルより生還】

100 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/01(月) 22:36:12.70 ID:uO5gTeNd
投下終了です。
これにて本編は終了、後はエピローグとなります。
あー長かった 何か俺オリ3に続いて主催側優勢エンドになっちゃったけど次は対主催完全勝利エンド書きたい

101 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/02(火) 21:07:01.59 ID:LImqOnJc
MURエピローグ投下します

102 :ほら足元を見てごらん、これが貴方の歩む道 ◆ymCx/I3enU :2015/06/02(火) 21:08:51.69 ID:LImqOnJc
92話 ほら足元を見てごらん、これが貴方の歩む道

MURは気が付くと、夜の自宅前道路に倒れていた。
起き上がり、とても懐かしい感覚のする我が家の玄関を開けると、驚いた顔の両親と妹、飼い猫が出迎えてくれた。
全員がMURの帰りを喜び、涙を流した。
居間に移動し父親がMURに話し掛ける。

「心配したんだゾ……! 政府の人から、お前や野獣君達が居なくなっていたって聞いて」
「? どう言う事だゾ? トッチャマ」

父親の話した中の「政府の人」と言う言葉が気になり聞き返すMUR。
そして父親がMURに説明したのは、MURのクラスが「BR法」対象クラスに選ばれた事、
修学旅行に向かうバスの中で会場に連行する為クラスの全員が眠らされたがその時にMURや野獣達一部のクラスメイトが消えていた事。
手掛かりも無く脱走の可能性も低いと言う特異な事態だった為やむなく消失した生徒以外でBR法の競技を行った事。

皮肉な事に平野のバトルロワイアルに巻き込まれた結果MURは命拾いをした形になったのだ。

「そうだったのか……野獣達だけじゃなくてクラスの皆はもう」
「一体何が有ったの? 教えて欲しいゾ」

母親がMURに真相を尋ねる。
MURは信じて貰えるかどうか分からなかったが有りのままの事を全て話した。
自分や自分以外の消えたクラスメイトは、平野源五郎と言う男の催した別の殺し合いに巻き込まれた事。
クラスメイト以外にも大勢の人間――人間以外も居たが敢えて人間とする――がその殺し合いに巻き込まれ、もがき、非情にも命を落として行った事。
最終的に52人も居た参加者の内、自分含め3人しか生き残らなかった事。
最初は半信半疑だった家族も次第にMURの言う事を信じるようになった。

「そーなのかー……兄ちゃん、生きて帰ってきて本当に良かった」

妹がMURに抱き付いた。

「ただいまだゾ……」

妹の頭を撫でながら、MURは涙を流した。

その後、MUR一家は人知れず引っ越す事になった。
BR法によるバトルロワイアル直前に行方不明になった一人であるMURが帰還した事が広く知られれば、
間違い無く政府の調査やマスコミの追求を受ける事になる。
拉致され別のバトルロワイアルに巻き込まれていたなどと話した所で信用されまい。
下手すれば逮捕されてしまう危険性も有った。

出発の日。深夜に最低限の荷物を乗せたトラックがMURの家を出発した。

荷台に隠れるようにMURは乗っていた。

これから先、殺し合いと同じ位辛い現実が待ち構えているかもしれない。
だが、MURは絶対に挫けたりしないと誓った。
あの殺し合いで協力し合い、そして死んでいった友人達、仲間達の事を思いながら。
共に生き残った、別世界の人間、北沢樹里と原小宮巴の事を思いながら。

(俺は頑張るゾ……何が有ろうと、死んでいった野獣達や、仲間達の分も生きるゾ)

固い決意を胸に、MURは慣れ親しんだ町を家族と共に後にした。


【俺得バトルロワイアル7th  MUR  END】

103 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/02(火) 22:45:39.97 ID:LImqOnJc
投下終了です。

104 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/07(日) 18:22:32.29 ID:MgmUiJpb
エピローグ樹里編投下します

105 :狂乱祭(IFルート) ◆ymCx/I3enU :2015/06/07(日) 18:30:12.84 ID:MgmUiJpb
93話 狂乱祭(IFルート)

「ん……」

北沢樹里が目を覚ますと、まず見えたのは蛍光灯の有る天井。
そして強烈な血の臭い、得体の知れない異臭が鼻を刺激し、樹里は鼻を塞いだ。
身体を起こして辺りを見回す。

「ひっ!?」

窓の所に有った物に樹里は悲鳴を発した。
夥しい鮮血の中に、全裸の女性の下半身が落ちていた。その下半身は片足の先が無かった。
別の窓から恐る恐る外を見ると、上半身が落ちていた。
喉元を抉られた、自分の死体だ。

「うっ……ぷ……」

樹里は部屋の外に出て、そして堪らず嘔吐する。
一通り吐き出し幾分落ち着いた辺りで状況を整理し始めた。
自分が今居るのは、「以前の殺し合い」での分校、さっき目を覚ましたのはその保健室。
そう、足を失い自暴自棄になって介抱してくれた海野裕也を詰ったり、勢いに任せ事に及んだ挙句、
裕也の彼女、倉沢ほのかに発見され裕也共々殺された場所に間違い無かった。

自分は「自分が殺された後」の元の世界に帰ってきたのだ。樹里は思った。

「帰ってきたのね私は……でも、これ、どういう事なの?」

樹里が改めて疑問に思うのは自分の死体が何故あんな事になっているのかと言う事。
自分はほのかに喉を刺され殺された。身体を上下に切断された記憶は無い。つまり自分が死んだ後にああされたと言う事だ。
一体どうやればあんな風になるのか、いやそれよりも何故あんな風に損壊されたのか。誰がやったのか。

「まさか倉沢さんが? ……可能性高いわ」

自分の死体を損壊したのは、倉沢ほのかであると、樹里は推理した。いや、ほぼ断定していた。
ほのかは平野の殺し合いの時に再会した時からも分かるように自分に凄まじい憎悪を向けていたのだから。

「裕也の死体が無い……どこに?」

保健室に一緒に殺された筈の裕也の死体が無い事に樹里は気付く。
良く見れば引き摺ったような血の跡が床に残っていた。
誰かが裕也の死体を引き摺って持っていったと言う事だろうか?
ここで樹里は平野の殺し合いでの、ほのかの言葉を思い出す。

――裕也君と一緒に島から出る為に、一生懸命頑張ってたのに――

「……裕也の死体も倉沢さんが?」

その可能性に気付いた時、樹里は、自分と裕也を殺した後の倉沢ほのかが、
とんでも無い事になっていたのだと自分のしでかした事の重大さを思い知らされる。
廃村で出会った時の様子も思い出すと、恐らく精神に異常を来しているに違い無い。

106 :狂乱祭(IFルート) ◆ymCx/I3enU :2015/06/07(日) 18:31:00.84 ID:MgmUiJpb
「あれ?」

保健室の、丁度自分が目を覚ました辺りに見覚えの有るデイパックが有るのを樹里は見付ける。
「この」殺し合いの物では無い、「平野の」殺し合いのデイパックだ。
開けてみると、中にはしんのすけから譲り受けて以来装備していたスコフィールドリボルバーと予備弾、一通の手紙が入っていた。
差出人は何と平野源五郎である。

『北沢樹里君。この手紙を読んでいると言う事は君は自分の世界に帰った後だろう。
知っていると思うが君は自分の世界での殺し合いで一度死に、蘇って私の殺し合いを生き抜いた。
元の世界の殺し合いでやり残した事も有るだろうから、君が殺されて少し時間が経った辺りに君を戻させて貰ったよ。
その銃は私からの餞別だ。それでは第二、いや、第三の人生を楽しんでくれたまえ 平野源五郎』

色々と突っ込みたい所は有ったものの樹里は黙ってスコフィールドを装備した。
餞別は有難い。この手紙の通りなら「こちら」の殺し合いはまだ終わっていない。丸腰では危険だ。
首にはもう、枷となる首輪は無く、失った足も元に戻ってはいるが、だからと言って自分が絶対的優位では無い。

「殺し合いが終わってまた殺し合いってのも……はあ。
まあ、首輪は無いし足は元に戻ってるし……その辺りはマシか。
……って事はこっちの世界の貝町さんや、倉沢さんは……」

そこまで思考した時、体育館の方から何やら騒がしい声が聞こえてくるのに気付いた。

「……何?」

樹里は体育館へと向かう。

◆◆◆

「……ふふふっ。そうなんですかぁ。よかった。後何十人も戦わなきゃいけないのかと
うんざりしてたんですけど、手間がちょっと省けそうです。ねぇ、裕也君。」

分校、体育館の体育倉庫。倉沢ほのかが引き摺っている海野裕也の屍に話し掛ける。
彼女の目の前には鎖で一塊に拘束された四人。壱里塚徳人、久世明日美、神崎健二、貝町ト子が居た。
尤も状況を把握出来ているのはほのかの正面に居る壱里塚と久世の二人だけであったが。

ほのかは自分のデイパックからP-90を取り出して四人に銃口を向ける。
四人一篇に始末出来る絶好のチャンスなのだから逃がしてはならない。
裕也君と一緒に帰ると言う目的を果たす為の大きな一歩だ、心の壊れていたほのかはそう、本気で思っていた。

「……や……め……!」
「ちょっと! どうなってるの!? 見えないんだけど!? ねぇ!?」
「……倉沢……さん……いいんだ、これで。もう疲れたよ……俺を、姉ちゃんの所へ連れて行ってくれ」
「神崎、てめぇ……!」
「あぁ! 神崎さん! あなたもとうとう救われる時が来たのですね!  私もお供します! 待っていてくださいサーシャさん!」
「ふざけんな糞がぁ! てめえらみんな死ね!」

騒ぐ四人に「うるさいなぁ」と心の中で思いながら、ほのかはデイパックからP-90を取り出し、銃口を四人に向けた。
さっさと引き金を引いてしまおう。こんな所で立ち止まってはいられない。
自分から裕也を奪おうとしたあの女を殺した時からすっかり殺人に対する忌避感は無くなった。
良い事だ、殺人に躊躇するようではこの殺し合いから裕也と一緒に脱する事など出来ない。

「畜生! 嫌だ! 俺は死にたくねぇ! おい! やめろ! やめてくれぇぇぇぇ! 倉沢ぁぁぁぁぁ!」

徳人の必死の命乞いにも、ほのかは全く耳を傾ける事無く、そして、ニヤリと笑って死刑宣告を行った。

「さ・よ・う・な・ら」


――――ここまでが「正史」。

107 :狂乱祭(IFルート) ◆ymCx/I3enU :2015/06/07(日) 18:36:32.39 ID:MgmUiJpb
「止まって」

少女の制止の声と共に、ほのかの後頭部に固い物が押し当てられる。
動きを止めるほのか。狂っていた笑みばかり浮かべていたその顔が、恐怖に引きつった。
声には聞き覚えが有った。だが、有り得ない。有り得る筈が無い。
声の主は、確かにあの時自分が殺した筈だ、でも、この声は――――。


◆◆◆


体育館にやってきた樹里が目にした物。
体育倉庫にてクラスメイトに銃を向けている倉沢ほのかと、彼女の片手に引き摺られている海野裕也と思しき死体。
やはりほのかは正気を失っているのだと樹里は確信する。
切欠を作ったのは紛れも無く自分である事も理解していた。

(声からして壱里塚と、久世さんと、神崎弟と、貝町さん?)

どうやら拘束されて動けないらしいクラスメイトが誰なのか声から判断する樹里。
その中には平野の殺し合いで仲間として行動した貝町ト子も居るようだった。無論、そのト子とは別であろうが。

(止めなきゃ!)

このままではあの四人はほのかに殺される、止めなければ。樹里は音を可能な限り出さないようにして小走りでほのかの背後に近付く。
止めたとしてその先どうするのか、それは樹里自身にも分からなかった。
だが、本来もう自分が関わる筈の無かった「この」殺し合いに再び自分が戻ってきたと言う事はきっと無意味な事では無い筈。

なら、自分が出来る限りの事をやってみよう、まずは第一歩だ。

「止まって」

樹里はほのかの後頭部にスコフィールドリボルバーを突き付けた。

「……え? ……北沢、さん」

ほのかは信じられないと言った心情が読み取れる声を発する。当たり前だろう。
自分が殺したと思った女が、すぐ後ろで自分に銃を突き付けているのだから。
樹里は、ほんの少しだけ笑みを浮かべつつ言った。



「久しぶり、倉沢さん……地獄から、戻ってきたわ」



――――IFルート、開始。



でもそれは、別のお話。



【俺得バトルロワイアル7th  北沢樹里  END】

108 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/07(日) 18:37:13.10 ID:MgmUiJpb
投下終了です。
無理矢理締めた感が凄いけど

109 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/08(月) 13:23:33.44 ID:Q9I0SJV6
エピローグラスト 巴編 投下します

110 :身体だけは丈夫なので今日も笑っていよう ◆ymCx/I3enU :2015/06/08(月) 13:24:21.16 ID:Q9I0SJV6
94話 身体だけは丈夫なので今日も笑っていよう

(ああ、まさか家に帰れるなんて思わなかったなぁ)

自分に抱き着いて「良かった、良かった」と咽び泣く母親を見ながら巴は思った。

あの光の柱に飛び込んだ所で意識を失い、気付いた時には自宅アパートの自室に倒れていた。
それを母親が発見し、今に至る。母親は少しやつれているように巴には見えた。

母親は警察に捜索願を出していた為、後日巴は警察署へ事情聴取に向かう。
信じて貰えるかどうかは疑問だったが虚偽答弁する訳にも行かず巴は担当した狐獣人の女性刑事にありのまま話した。
すると女性刑事はすんなり信じてくれた。意外に思った巴が何故信じてくれるのか聞き返すと、

「貴方が嘘を言っているようには見えないからね」

とだけ答えた。しかし、もっと別の事情が有るように見えた。
だが恐らく追及した所ではぐらかされるのが落ちだろうし、そもそも特に興味も無い為巴は「そうですか」と頷くに留まった。
ただ、帰り際、女刑事が――恐らく巴には聞こえていないと思っていたのだろうが微かながら巴にも聞こえていた――呟いた一言は少し気に掛かった。

――――……やっぱり彼女も他の事例と……。

気には掛かったが、それだけで、ともかく事情聴取を終えた巴はその後、普段通りの、最初の殺し合いに巻き込まれる前の生活に戻る。
学校の友人から何が有ったのか尋ねられる事も勿論有ったが「風邪を引いた」など適当な事を言って誤魔化した。
刑事に話したような事を何度も言うのは面倒だったし、刑事や母親は信じてくれたが友人が信じてくれる保証は無かったからだ。

二ヶ月程経ったある日曜日、巴はとある地方都市へ出掛ける事にした。
母親は少々渋ったものの、ショートメールで連絡する事にしてどうにか出発する事が出来た。

様々な人々が行き交う大通りを歩き適当に店を回っていたが、昼頃になり空腹になった為、巴はとあるファミリーレストランに立ち寄った。

「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい」
「禁煙席と喫煙席どちらになされますか?」
「私煙草吸うように見える?」
「あ、いえ、その」
「禁煙席」
「は、はい。空いているお席へどうぞ」

少し店員をからかった後、巴は禁煙席区画へ向かう。

「ん?」

そこで、巴は見覚えの有る三人組を発見する。
小学生位の竜人の少年、高校生位の紺色狼獣人の少年、同じく高校生位の狐獣人の少女。

「あれって……わあ、凄い偶然」

巴はその三人が誰なのかすぐに分かりニヤリと笑みを浮かべる。
彼らも無事に帰る事が出来たのだ、と、彼女にしては珍しく安堵した。



「……え?」
「嘘、え、君は」
「ちょっ、な、何で……!?」

「やあ、久しぶり。そんな幽霊でも見るような目で見ないでよ」


【俺得バトルロワイアル7th  原小宮巴  END】

111 : ◆ymCx/I3enU :2015/06/08(月) 13:25:21.73 ID:Q9I0SJV6
投下終了です。一先ずこれで俺得7終了とさせて頂きます
読んで下さった方ありがとうございました

112 : ◆84AHk0CknU :2015/07/04(土) 00:58:11.65 ID:7TV3G3bQ
ロワ完結おめでとうございます。今回も楽しませてもらいました
初心者ですが自分も新ロワ投下します

愛好作品でロワ

113 : ◆84AHk0CknU :2015/07/04(土) 01:02:07.81 ID:7TV3G3bQ
00『オープニング〜神の暇つぶし〜』

薄暗い会議室のような場所、そこに大勢の人影があった。
彼等は皆自分の置かれた状況に困惑しているようで、不安と警戒心を持って周囲を見渡していた。
と、その時

「どーも。こんちゃーっす」

軽快な声と共に、前方に一人の男が姿を現していた。
どこか神々しさがあるロン毛の男はざわめき出す人々へ話し始める。

「気づいてる人も居ると思うけど、君たちをここに呼んだのは俺だ。
みんな忙しい所悪いんだけどさ、ちょっと俺の遊びに付き合って欲しいんだよね。
その遊びってのは……ズバリ殺し合い!」

突然現れ意味不明な話を始めるロン毛男。
そのマイペースさに傍に居た一人が男に詰め寄ろうとしたが、続く男の行動に動きを止める


「まま、そう焦んないでよ」


ロン毛の言葉とともにポンッという音がする。
音のした方を見ると、詰め寄ろうとした男の頭部が吹き飛んでいた。


「と、遠野ォォォォォォォ!!」


死体となった男の知り合いらしき者の慟哭が響く。
それを皮切りに周囲からも悲鳴が拡がるが

「大人しくしろぉ!バラ撒くぞこの野郎!(神の怒り)」

ロン毛男の怒声に静まり返る。
それを見て満足気に頷き口を開くロン毛。

「バトルロワイアルって知ってるかな?あれと同じで君たち全員で殺し合って欲しいんだ。
勿論タダでとは言わない。ゲームに優勝したらどんなお願いも叶えてあげるよ。
金持ちになりたい、世界中の美女をモノにしたい……死者を蘇らせたい、憎い奴を殺したいとかも、ね」

その言葉に何人かが目の色を変えたのを見逃さず、更に笑みを深めてロン毛が説明を続ける。

「それから君たちの付けてるその首輪。殺し合いなんてやだ〜!とか言って反抗する奴は、首輪を爆発させちゃいま〜す。
そこの彼みたいになるのが嫌ならゲームに乗ることだね。

後の詳しい説明は皆に配るルールブックに書いてあるからそれ見て終わりでいいんじゃない?(適当)
じゃ後は各自頑張って、ハイヨロシクゥ!」

それを最後に殺し合いの会場へ次々とワープする参加者達。

「んじゃ、精々楽しむとしますかね〜っと」
それを見ながらロン毛男――“GO”は静かに呟いた


【遠野@真夏の夜の淫夢 死亡確認】
【主催者:GO@真夏の夜の淫夢】

114 : ◆84AHk0CknU :2015/07/04(土) 01:49:42.62 ID:7TV3G3bQ
投下終了です
名簿は今日の昼辺りにでも

115 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 13:36:46.30 ID:HxL0rMuE
新ロワ出来たんでOP投下
見てる人はいなくても一応「本スレに投下→Wiki掲載」という順序は守らないといかんと思うので

116 :OP ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 13:40:06.25 ID:HxL0rMuE
と思ったら新ロワ投下された方が…乙です
GOは神 GO is god 語録の使い方が上手いです
自分も投下します
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
0話 そんな物始まらなくて良いから(良心)

「これから皆さんにちょっと殺し合いをして貰います」

「そいつ」は絶望的なゲームの内容を俺達に告知した。
――これだけじゃ何が何だか分からんだろうから少し順を追って説明しよう。

俺こと大崎年光は、いつものようにやっている武器屋の営業を終えて、売上金の計算やら何やらした後、
飯や風呂入ったり好きに過ごして寝た。んで目覚めたら知らないホールみたいな場所に居た。
もうこの時点で訳が分からないだろ。しかも寝巻と言うか寝る時の格好に着替えた筈なのに、
良く普段着にしているシャツとジーパン、ジーンズ姿になっていた。

んで、俺以外にも大勢居たんだ。種族は色々、年齢は若い奴が多いか?
何か変態なのかどうか知らんが素っ裸の奴も居たし。首輪まではめてやがると思っていたら、
その黒い金属製の首輪は俺含め全員にはめられていた。外そうとしたが取れやがらねぇ。俺にそんな趣味は無いってのに。

しばらくしてホールに何人か入ってきた。スーツ着崩したボサボサ頭の人間の男と、自動小銃携えた黒い戦闘服の兵士四人。

「えー、皆さん初めまして。わたくし、柴田行隆と申します。以後お見知りおきを。
さて、突然こんな所に連れて来られてさぞ困惑していると思いますが今しばらくわたくしの話に耳を傾けて下さい。
皆さんには、とあるゲームのプレイヤーになって頂きたいのです」

自己紹介した後にボサボサこと柴田が語った「ゲーム」。
そう、ここで冒頭の台詞の場面が来るんだ。

「そのゲームの名前は『バトルロワイアル』! 殺し合いゲームです。
これから皆さんにちょっと殺し合いをして貰います」

いきなり拉致同然(拉致そのものかもしれないが)に人を連れてきて殺し合いをしろと柴田は言う。
イカレている。イカレ過ぎだ。当然柴田に対して抗議する奴がちらほら現れる。
ふざけんな。訳が分からない。何だお前は。と、色々だ。
柴田は自分に向けられる罵倒にも動じる様子は無い。理由は俺達の首の首輪だった。

「やっぱ反抗しますよね? 気持ちは分かります。でもやって貰います。絶対ゲームをして貰う為に、
皆さんの首に特別な首輪を付けさせて頂きました。その首輪には、爆弾が内蔵されています」

曰く首輪には爆弾が付いていて無理に外そうとしたり度を越えた反乱や、逃亡を図ろうとしたりすれば爆発するらしい。
運営からリモート操作でいつでも爆破出来るとも言った。
抗議の声が一斉に止んだ。そりゃ、首にそんな危険物が有ると、いつでも起爆出来ると言われれば。

「どんな物か実際に爆破して試してみましょーか。ハイ、大田山一さん」
「え?」
「貴方は見せしめ要員です。名簿にも記載されていません。良かったですね、ゲームに参加しなくて済みますよ。それじゃ、ピッ」

柴田が上着のポケットから取り出した小さなリモコンらしき物を大田と呼んだ男に向けスイッチを押した。
直後に大田の首輪から電子音が鳴り響いた、かと思った次の瞬間、破裂音が響いて大田の首が宙を舞った。
何人かは悲鳴を上げ、転がってきた生首から逃げ惑う。俺は悲鳴こそあげなかったけど、はっきり言って固まってたよ。
30年生きてきて人の首が飛ぶ場面なんか初めて見たからな。当分忘れられはしないだろう。

117 :OP ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 13:41:41.23 ID:HxL0rMuE
「ハイ、お疲れ様でした大田さん。これで首輪の威力は皆さん分かって頂けましたでしょうか」

たった今一人殺したってのに柴田は全く気にする素振りを見せない。
嫌でも分かる。本当に殺し合いをしなければならないと言う事と、柴田行隆と言う男が平然と人を殺せる程度には冷酷だって事。

その後軽くルール説明がなされた。要点だけ言うと、最後の一人になるまで殺し合い最後の一人が優勝になって家に帰れると。
反則は無し、但し首輪が起爆するような真似は駄目だと。
一日四回、死人と入ったら首輪が爆発する禁止エリアの発表を行う放送が流れると。
最後の死人が出てから12時間誰も死ななかったら全員の首輪を爆破すると。
どうあがいても殺し合いをしなければならないシステムって事か。クソが。

「まあルール説明はこの位にしてちゃっちゃと始めちゃいましょうか。
ハイそれじゃゲームスタート。皆さん健闘祈っておりますよ」

物凄く投槍に聞こえる開幕宣言の直後、俺達の足元から眩い光が発生し、眩しさに堪らず俺は目を瞑る。
光が収まってきて、目を恐る恐る開けると、そこはホールでは無く屋外だった。

こうして俺、大崎年光は突然殺し合いゲームをする羽目になったとさ、めでたし、めでたし。

めでたい訳ねぇだろ。

【大田山一  死亡】
【残り52人】

【ゲーム開始】

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《キャラ紹介》
【大崎年光】
読み:おおさき としみつ
年齢:30
性別:男
種族:人間
特徴:茶色に染めた短髪、中肉中背。白いYシャツにジーンズ、スニーカー着用
職業:武器屋
備考:先祖代々続く武器屋を経営する男。口が悪く怠惰な印象を受けるが根は正義感が強い。
武器屋と言う職業柄、刀剣や銃火器の知識、扱いに一般人よりは慣れている。但し本職の軍人等には敵わない。

【柴田行隆】
読み:しばた ゆきたか
年齢:20代後半〜30代前半?
性別:男
種族:人間
特徴:着崩したスーツ姿、ボサボサの黒髪、長身
職業:不明
備考:殺し合いゲーム「バトルロワイアル」の進行役を務める謎の男。
彼がバトルロワイアルの主催者なのかそれとも単なる進行役でしか無いのか、現時点では不明。
面倒くさそうな投槍な態度が多いが、他人を平気で殺せる位には冷酷である。

【大田山一】
読み:おおた やまいち
年齢:不明
性別:男
種族:人間
特徴:これと言って特徴が無いのが特徴
職業:不明
備考:バトルロワイアルの首輪の威力を見せ付ける見せしめ役の為だけに拉致されてきた哀れな男。
名前の「大田山一」は作者が生まれて初めて思い付いた名前だったりする。
詳しいプロフィールは不明と言うか決める必要も無い為決めていない、ある意味一番謎に包まれた人物でもある。
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118 :名簿 ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 13:43:20.69 ID:HxL0rMuE
進行役:柴田行隆

【男】
イライアス・ウィズダム
ウォラゴ
ウラジーミル・イリイチ・コスイギン
大崎年光
緒方修二
隠塚英紀
鉤丸聖人
川田喜雄
キーレン
北原大和
久保永悠歩
倉持忠敏
黒牙
シャーガ
スィヴレバル
須牙襲禅
ゼユック
タロー
トロフィム・マラートヴィチ・クルトィフ
テオ・オトマイアー
千品武紀
鳴海竜也
沼倉勇喜
伏島茂晴
本庄忠朝
黛康裕
ユージーン

【女】
伊藤文子
伊藤椿
大木弓那
籠彩愛
北宇智恭世
霧島弥生
コンゼノア
ザスキア・フェルカー
志水セナ
修明院美宇
新藤真紀
末盛眸美
スカーレット・ガードナー
ゼンル
藤堂リフィア
長嶺和歌子
ハレナ
布川小春
松宮深澄
マリア・アルノーリドヴナ・ベーラヤ
六浦春部
室川美知
盛朋未
山津有岐
レカ

52/52

119 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 13:47:38.06 ID:HxL0rMuE
投下終了です
ルールやマップは過去作から流用します(マップはEX2)
ロワ名は「優しく俺のオリキャラでバトルロワイアル」です、名前の通り柔めギャグよりでいきたいかなと

120 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 13:57:07.13 ID:HxL0rMuE
訂正、「優しく軽めに俺のオリキャラでバトルロワイアル」です
略称は「優しく俺オリロワ」

121 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 22:01:39.54 ID:HxL0rMuE
1話目投下します
登場:大崎年光、籠彩愛

122 :賽は投げられた ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 22:02:33.49 ID:HxL0rMuE
1話 賽は投げられた

北に森、西に海、東に展望台らしき建物の見える場所で大崎年光のバトルロワイアルはスタートする。

「……とにかく支給品確認しよう」

近くに置いてあったデイパックを開けて、中身を確かめる。
基本支給品の他、コンバットナイフが入っていた。
当たりだな、と思いながら年光はそれを装備する。
名簿にも目を通すが、自分以外の51人に身近な人物は居ないようだった。

「殺し合い……馬鹿馬鹿しいだろ……乗らねぇぞ」

吐き捨てるように言う年光。普段怠惰な素振りが多く口も良くなかった彼ではあるが他人を殺して生き延びようとは思わない。
それ位の正義感は持ち合わせていた。ゲームに反抗する事を早々に決心する。
反抗=首輪の爆破だと柴田は言っていたが、余程奴の機嫌を損ねるような真似をしたりしなければ簡単には爆破されまいと年光は考える。
些細な事で次々参加者を処刑してしまえばそれこそ殺し合いにならなくなるからだ。
自分の推測が合っている事を祈りつつ、年光は次にこれからの事について思考を巡らせる。

「……52人、俺除いても51人か……乗る奴は出てくるだろうな……あ?」

思考が中断される。
茂みから人が飛び出してきた。金髪ツインテールの、小さな少女。
小学生かと年光は思ったがそれにしては胸がかなり大きく小学生では無いのかもしれない、何にせよその少女は怯えた表情を浮かべていた。
放っておくのもと思い、保護しようと年光はその少女に声を掛ける。

「おーい」
「!」
「えーと、君、一人……」
「あっ、あっ、嫌だっ! あああ!」
「え!?」

少女は逃げてしまった。年光は自分がナイフを抜き身で装備していた事を思い出す。危害を加えられると勘違いされたのだろう。

「待て違う! 俺は殺し合いには乗って……早いなオイ、駄目だ追い付けねぇ……」

少女の足は非常に早く、年光は追跡を一旦諦める。しかし行き先は予想出来た。

(多分あの建物に行くだろうな)

スタート地点から東、つまり少女の逃げ去った方向に有る展望台と思しき建物。
恐らく少女はそこに逃げ込むだろうと考え年光は展望台を目指し歩き始めた。

◆◆

巨乳小学生、籠彩愛は恐怖でパニック状態だった。
友人の長嶺和歌子の家に宿泊し、共にオス犬とのイケナイ遊びに興じた後眠りについた筈が気が付けば殺し合いの場に居たのだから。

(怖い、怖い……! ナイフ持った人居たし、殺されちゃうよ!)

先程自分に声を掛けた男を自分を殺そうとしていると一方的に決め付ける彩愛。
男は彼女を保護しようとしていたのだがそんな事は露知らず。

(わかちゃんどこに居るの? 会いたいよ……あ、あの建物に隠れよう。わかちゃんも居るかも)

隠れられる場所、友人の姿を追い求め、彩愛は古びた展望台を目指し走る。

123 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/04(土) 22:04:23.35 ID:HxL0rMuE
【明朝/A-4草原】
【大崎年光】
状態:健康
装備:コンバットナイフ
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いには乗る気は無い。展望台へ向かう。先程の少女(籠彩愛)を出来れば保護したい&誤解を解きたい。
備考:無し

【明朝/A-4、B-4境界線付近】
【籠彩愛】
状態:恐怖によるパニック
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:怖い。展望台に隠れる。わかちゃん(長嶺和歌子)に会いたい。
備考:大崎年光を「自分に危害を加える気が有る」と誤解している。

----
《キャラ紹介》
【籠彩愛】
読み:かご あやめ
年齢:11
性別:女
種族:人間
特徴:金髪のツインテール、小学生らしからぬ巨乳
職業:小学生
備考:小学生離れした美巨乳を持った少女。明るい性格だがパニックになりやすい。
友人の長嶺和歌子の影響で、犬との*交(獣*)に目覚めてしまう。
和歌子同様勉強は苦手だが運動神経は良い。和歌子の事は「わかちゃん」と呼んでいる。

《支給品紹介》
【コンバットナイフ】
支給者:大崎年光
分類:刃物
説明:軍用の頑丈で切れ味鋭い大型ナイフ。某ホラーアドベンチャーゲームの初期装備として有名か。
----

・・・・
投下終了です。伏字部分はWiki掲載時戻します

124 :愛好作品でロワ名簿 ◆84AHk0CknU :2015/07/04(土) 22:56:27.49 ID:7TV3G3bQ
おお、新たなオリロワが来ている…投下乙です
遅れましたが自ロワの名簿投下します

6/6【真夏の夜の淫夢】
○野獣先輩/○MUR/○KMR/○AKYS/○虐待おじさん/○ひで

6/6【魔法少女オブ・ジ・エンド】
○児上貴衣/○鞘野楓/○芥倫太郎/○半沢夜華/○穴井美羽/○パラサイト・M

5/5【仮面ライダーウィザード】
○操真晴人/○仁藤攻介/○稲森真由/○メデューサ/○グレムリン

5/5【NEEDLESS】
○アダム・ブレイド/○クルス・シルト/○セツナ/○未央/○六道銀

5/5【名探偵コナン】
○江戸川コナン/○灰原哀/○円谷光彦/○阿笠博士/○ジン

5/5【やる夫スレ】
○入速出やる夫/○キル夫/○水銀燈/○雪華綺晶/○伊藤誠

4/4【御伽噺】
○桃太郎/○浦島太郎/○シンデレラ/○赤ずきん

4/4【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○枢木スザク/○アーニャ・アールストレイム/○扇要/○ユーフェミア・リ・ブリタニア

4/4【戦国BASARA】
○徳川家康/○石田三成/○お市/○小早川秀秋

3/3【BLACK LAGOON】
○ヘンゼル/○グレーテル/○ロベルタ

3/3【チャージマン研!】
○泉研/○星君/○ボルガ博士

2/2【仮面ライダーW】
○照井竜/○井坂深紅郎

2/2【コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
○ゼロ/○ロロ・ヴィ・ブリタニア

54/54

昼頃と言ったのに大幅に遅れてしまった
すいません許してください何でもしますから!

125 : ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 00:31:34.76 ID:TQrv70Qk
早速投下します

126 :Bは血に染まる/真夏の夜の悪夢 ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 00:35:20.64 ID:TQrv70Qk
俺の目の前で遠野が死んだ。
漫画やアニメみたいに頭をボンッと爆発させて。
俺の大切な恋人がそうして呆気なく……死んだ。

何であいつが死ななきゃならない?あいつが何をしたって言うんだ?
…ひょっとして、これは俺への天罰なのか?
想いを伝える為とはいえ、薬を盛ってレイプなんてとんでもない事をした俺への。


それでも、俺は――――――





深夜の森、その奥にある教会でKMRは一人震えていた。
突然訳の分からない男に拉致された挙句殺し合いを強制される。
おまけに知人が目の前で殺されたとなると恐怖を覚えるのは当然だろう。

そう、知人。自分の先輩である野獣の恋人、遠野だ。
ふいに野獣の事が心配になった。
悲しみと怒りで自棄になっていないだろうか。いや、ひょっとして殺し合いに乗ってしまったんじゃ――

「いや、先輩に限ってそんな事……」

野獣は陽気でお調子者の面があるが、人を殺すような外道ではない。
しかし今はその陽気さも鳴りを潜めているだろう。


そうだ。いつまでも震えていてどうする。悲しみに暮れる今の野獣を支えるのは同じ空手部員の自分達がしなければいけないことだ。

「……このままビビってる訳にはいかないよな」

空手部の仲間はこんなゲームを肯定する輩ではない。
自分が怯えている間にもMURやAKYSは既に行動を開始している筈だ。
ならば自分も動き出さなければ。

「まずは先輩達とAKYS師範を探さなきゃ(使命感)」

決意を新たに荷物を纏め教会を出ようと力強く踏み出す。



<<――BEAST――>>


とそんなくぐもった音が聞こえたのはほぼ同時だった。

127 :Bは血に染まる/真夏の夜の悪夢 ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 00:38:33.33 ID:TQrv70Qk
「えっ」

何が起こったのか分からない。
気がつくと倒れていた。それに背中が酷く熱い。

あっという間に消え去ろうとする意識の中でKMRが思ったのは


(何で殺し合いなんかする必要があるんですか(正論))


そんな極当たり前の正論だった。






物言わぬ屍となったKMRを静かに見下ろす異形。
ソレはビーストドーパントといった。

「……ほんとに変身できたな」

自分の支給品であるガイアメモリとかいう道具。
何でもこれを使えばドーパントという怪物に変身できるとのこと。
説明書を読んだ時は半信半疑だったが、成る程本物だったようだ。

「こんだけ強けりゃAKYS師範にも勝てるかもな」

もう後戻りはできない、するつもりもない。
遠野を生き返らせる為ならこの手をどれだけ汚したって構わない。
後輩を己の手で殺したと言ったら仲間達は何と言うだろう。
失望し、責めるだろうか。それでも見捨てずに自分を救おうとするだろうか。
だがもう関係ない。結局殺すことには変わりないのだから。


「長居は無用。ほらいくど〜」


愛に狂ったクッソ哀れな野獣が行き着く先は果たして――――


【KMR@真夏の夜の淫夢 死亡確認】



【野獣先輩@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康、ビーストドーパントに変身中
[装備]:ビーストメモリ@仮面ライダーW
[道具]:共通支給品一式×2、不明支給品1〜3(KMR)
[思考]
基本:優勝して遠野を生き返らせる
1:皆殺し、MUR達に会っても容赦はしない
[備考]
※参戦時期は遠野と幸せなキスをした直後
※水泳部と空手部を兼任しているという設定です

128 : ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 00:46:57.77 ID:TQrv70Qk
投下終了です
駄文失礼しました

129 : ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 01:01:52.38 ID:TQrv70Qk
続いて2話目を投下します

130 :覚醒 の 黒き 魔王 ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 01:06:42.65 ID:TQrv70Qk
「全く、迷惑なものだな」

島の最北端に位地する豪邸、園咲邸の居間で筋骨隆々な仮面の男――ゼロはそう呟いた。
仮面のせいで顔は見えないが、声色からは現状に対する不満が聞いて取れる。

ゼロ――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアには使命がある。
世界にギアスをばら撒き、戦火と混沌を引き起こす魔王としての役割を果たすという使命が。。
最愛の妹ナナリーや無二の親友スザクとすら敵対する事を覚悟し旅立った矢先にこのゲームに巻き込まれ、今に至る。

「こんな下らん催しに付き合う気など無いのでな、思い通りに動かせるとは思わないことだ」

ゼロはこの殺し合いに乗る気は無かった。
己の使命は混沌を活性化させること、そしてそれを実行するのは明日を迎えることを望んだ自らの世界で、だ。
このような狭い箱庭で、しかも主催者の言いなりになって行うことでは断じて無い。
故に取るべき行動は一つ、主催者を殲滅し速やかに帰還することだ。

(とはいえ安易に勝てるような相手でもないか)

魔女C.C.と契約し人間を遥かに超えた魔王となった自分がこうも易々と拉致され、あまつさえ首輪まで着けられている。
それだけでもあの男が途轍もない力を持っているのは確かだ。

(更に気になるのは名簿にあるこの名前……)

ロロ・ヴィ・ブリタニア。
エデンバイタル教団の異端審問官にして呪われた愚弟。
自分の記憶が正しければ奴はネモと契約した騎士アリスによって討たれてた筈。
主催者は本当に死者を蘇生させる力を有しているのか、或いは平行世界のロロか。

「まぁ、それは会って確かめればいいか」

答えを出すのは情報を集めてからでいいだろう、焦っては判断を見誤る事となる。
となると優先すべきは他の参加者の捜索、及びゲームに乗った者の排除となるだろう。
考えを纏めるとゼロはすぐさま行動に移す。

「さて、では行くか」

今ここに、黒き魔王の新たな“反逆”が始まった。



【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:他の参加者を探し情報を集める
2:ゲームに乗った人間への対処
3:スザク、ユーフェミアとは一時共闘すべきだろうか
4:ロロは……
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※制限について
・身体能力&回復力に制限
・ガウェイン召喚可能時間10分。再度呼び出しには3時間の間が必要

131 : ◆84AHk0CknU :2015/07/05(日) 01:09:22.25 ID:TQrv70Qk
投下終了です
のんびり進めていきます

132 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/06(月) 00:18:04.13 ID:voiGKq1d
投下乙です
ん? 何でもするって言ったよね? では無理せずに、自分のペースで頑張って下さい

【Bは血に染まる/真夏の夜の悪夢】
昏睡レイプは十分天罰下るレベルだと思うんですがそれは、そして(闇に)落ちたな

【覚醒 の 黒き 魔王】
コードギアス系はパロロワで良く出場しているなぁ

自分も2話目投下します

133 :おためしかっ! ◆ymCx/I3enU :2015/07/06(月) 00:19:11.28 ID:voiGKq1d
2話 おためしかっ!

白い山羊獣人の美少年、キーレンは草むらの上で目を覚ます。

「ここは……ああ、そうだ。殺し合いしろって言われたんだった……どうしてこんな事に」

頭を抱えるキーレン。
男娼――彼は少年娼夫だった――の仕事を終えて自宅に帰り眠りについた筈なのに。
しかも今現在の格好は、裸に黒いニーソ、靴と言う仕事用の扇情的な格好。皮を中程まで被ったそれが丸見えの状態。
これも彼にとっては不可解であった。寝る前に寝巻に着替えた筈なのだが。
海が近いせいか吹き抜ける潮風に身を震わせる。

「寒い……はぁ、取り敢えず、僕、何が支給されたのかな」

自分のデイパックを開けて中身を漁るキーレン。地図や名簿、筆記用具等に混じって、園芸用の小さな金属製シャベルが出てきた。
それがキーレンのランダム支給品のようだった。
武器として使えない、事も無いだろうが心許無かった。

「これからどうしようかな……死にたくないな」
「ねぇ、君」
「ん……」

急に声を掛けられキーレンが立ち止まる。見ればそこには黒髪に赤い瞳の少女。
角が生えているようなので純粋な人間では無いようだが。

「何でしょうか」
「私はスカーレット。私にはこの銃が支給されたんだ」
「はぁ」

スカーレットと名乗った少女は手にしたリボルバー拳銃をキーレンに見せ付ける。
何故そんな事をするのかキーレンは分からず困惑していた。彼は自分の今置かれた状況を飲み込み切れて無かったのかもしれない。

「君で威力を試させてちょーだい♪」
「は?」

いきなりスカーレットはキーレンにリボルバー拳銃を向けた。そして引き金を引く。

ダァン!!

銃声が響いた。

「ひっ!?」

咄嗟に身体を捻って回避した為キーレンに怪我は無かった。

「う、うわあああ!!」

キーレンは悲鳴を上げながら、全速力でスカーレットから逃げ出す。背後から何発か銃声が聞こえその度に生きた心地がしなかった。
スカーレットは殺し合いに乗っていると見て間違い無い。逃げなければ殺されてしまう。
今まで仕事柄危ない目には何度か遭ってきた、命の危機に瀕した事だって有る。だが慣れる事は無い。

(嫌だ、死にたくない!)

目から涙を滲ませながらキーレンはひたすらに走った。行き先には教会が有った。

134 :おためしかっ! ◆ymCx/I3enU :2015/07/06(月) 00:19:47.33 ID:voiGKq1d
◆◆◆

「あーあ逃げちゃった」

銃口から煙を出すリボルバー拳銃、コルトシングルアクションアーミー、略称S.A.Aを右手に持ちながら、
スカーレット・ガードナーは山羊の少年を逃してしまった事を残念がる。

「ま、良いや……」

遠方に教会らしき建物が見え、どうやら少年はそこへ向かって行っているようなので追おうと思えば追える。
ただ別に少年に拘る必要も無い。

「ど・う・し・よ・う・か・な」

ふざけた口調で呟きながらこれからの行動をスカーレットは考える。
彼女はこの殺し合いを楽しむつもりで居た。優勝を目指す訳では無く、他参加者を殺す事を。
とある国の過激派組織に属する彼女にとって、別に死と隣り合わせの状況など珍しくも何とも無い。
それに、彼女は殺す事、甚振る事が好きな異常者であった。
進行役の柴田行隆には、むしろ感謝さえしている。面白いゲームをさせてくれるのだから。

「よっし決めた」

しばらく考えた後スカーレットは次の行動を定めた。


【明朝/F-5草原】
【キーレン】
状態:恐怖
装備:園芸用シャベル
持物:基本支給品一式
現状:死にたくない。スカーレットから逃げる。
備考:スカーレット・ガードナーを殺し合いに乗った危険人物と判断。現在G-5教会に向かっている。

【明朝/F-5草原】
【スカーレット・ガードナー】
状態:健康
装備:コルトS.A.A(2/6)
持物:基本支給品一式、.45ロングコルト弾(12)
現状:殺し合いを楽しむ。さて次は……。
備考:キーレンの外見のみ記憶。次の行動については次回登場話にて決定する。

135 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/06(月) 00:20:31.17 ID:voiGKq1d
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《キャラ紹介》
【キーレン】
年齢:12
性別:男
種族:山羊獣人
特徴:白い髪に毛皮、瞳孔は普通。黒ニーソに靴の裸ニーソ姿
職業:男娼
備考:戦災孤児で、男娼経営者に拾われ生きる為に男娼になる。が、割と楽しんでいる様子。
やや臆病では有るが基本的に明るく人懐っこい性格。

【スカーレット・ガードナー】
年齢:16
性別:女
種族:人間と悪魔族のハーフ
特徴:黒髪に赤い瞳、黒っぽい角。そこそこのスタイル。白シャツに茶色っぽいスカート、ブーツ
職業:過激派構成員
備考:生まれつきの残酷な性格で、12歳の時に母親を殺害、その後殺人や傷害を重ねる孤児となり、過激派組織に拾われた。
一応仲間と認めた者には手出しはしないようにしている。
年齢の割に子供っぽく、簡単な計算が出来ないなどやや学力に難が有る。

《支給品紹介》
【園芸用シャベル】
支給者:キーレン
分類:その他
説明:園芸用の金属製の小さなシャベル。

【コルトS.A.A】
支給者:スカーレット・ガードナー
分類:銃火器
説明:コルト社が1873年に開発したシングルアクション式のリボルバー拳銃。
S.A.Aは「シングルアクションアーミー」の略。連射と再装填に難が有るが頑丈かつ高威力の弾薬を使える。
今回登場するのは.45ロングコルト弾使用のシビリアン(民間)モデル。
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・・・・・

投下終了です。

136 : ◆84AHk0CknU :2015/07/06(月) 02:57:20.50 ID:TiKtmwQu
投下乙です。キーレン君は逆レイプされそう(こなみ)
では自分も投下します

137 :狂気の果てに行き着く先は ◆84AHk0CknU :2015/07/06(月) 03:03:52.69 ID:TiKtmwQu
自分にとって奴はどのような存在だったのだろうか。

そんな事決まっている。
私からあの御方を永遠に奪い去り、我ら豊臣を裏切った大罪人。
決して許すことなどできない、この手で斬滅しなくてはならない憎悪の対象。


その筈だ。


ではこの感情はなんだ?
奴をこの手で斬ったというのに何故こんなものが湧いて出る?
奴を殺すことが私の本懐ではなかったのか?


何故だ
何故こんなことになった
何故あの御方を殺した
何故私の元から去っていった


何故だ、家康――――――






突然拉致され殺し合いを命じられた。
爆弾付きの首輪を嵌められ、奴隷のような様となっている。

その全てがどうでもよかった。
この場で重要な事は只一つ。

138 :狂気の果てに行き着く先は ◆84AHk0CknU :2015/07/06(月) 03:05:03.65 ID:TiKtmwQu
「…………いた」

自分と同じく拉致された大勢の人間。
そこに奴の姿があった。

「……あの場に奴が」

見間違えなどではない。
ほんの少し前、己の剣で斬り殺したはずのあの男が。


「家康がいた」


徳川家康が確かにあの場に存在したのだ。


「クッククク………フハハハ……ハーッハハハハハハハハハハハハ!!」

ああ、ならば自分がすべき事は一つしかない。
今の自分に唯一残されたもの。


それはきっと


「待っていろ……家康ゥーーーーーー!!!」


あの男への――――


【石田三成@戦国BASARA】
[状態]:健康、狂気
[装備]:枢木スザクの刀@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
基本:家康を殺す
0:家康家康家康家康家康
[備考]
※戦国BASARA3三成赤ルート終了後からの参戦

139 : ◆84AHk0CknU :2015/07/06(月) 03:06:38.24 ID:TiKtmwQu
投下終了です

140 : ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:16:51.91 ID:tSlxbwlT
投下します

141 :赤ずきんと魔法使い ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:25:53.60 ID:tSlxbwlT
走る走る走る走る。
背後から追ってくる“ヤツ”から少しでも遠くへ逃げるため。
少女は脇目も振らずに走り続ける。

足を止めたら終わりだ。
止めたら最後、じわじわと嬲り殺しにされてしまう。
だから走る。ひたすら走る。とにかく走る。

そうしてどのくらい走っただろうか。
チラリと後ろを見たが“ヤツ”の姿は見えない。

(逃げ切ったのかな…?)

ふと目の前に民家が見えてきた。
いい加減体力も限界だ。あそこに入ってやり過ごそうと考えた所で

「鬼ごっこは終わりかい、お嬢ちゃん」

真後ろから声がした。

「ヒッ…」

追いついた“ソレ”を見て悲鳴を漏らす。

如何にも頑丈そうな鋼の肉体。赤く爛々と輝く右目。右手に持った巨大な剣。
明らかに人ではない、怪物がそこに居た。

「餓鬼にしちゃそれなりに頑張ったみてぇだが、運が悪かったなぁ」

怪物の表情に変化は無いが、ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべているのが頭に浮かぶ。
こちらを焦らすようにゆっくりと近づいてくる異形。

その異形は名を“キル夫”といった。





最高だ。
それがこの殺し合いに対してキル夫が思った事だ。

殺しが大好きであり元の世界でも殺人鬼として世間を賑わせていたキル夫。
そんなキル夫にとってこのゲームは自分の誕生日パーティーよりも心を躍らせるものだった。

またそれだけではない。
普段殺しに使っているナイフよりも格段に巨大な剣。
ドーパントという異形へと姿を変えられるガイアメモリなる道具。
これらの支給品も非常に自分をワクワクさせてくれるものだ。

この大剣で豪快に斬り殺したい。
ドーパントになった身体で嬲り殺したい。
この殺し合いを思う存分楽しみたい。

そんな歪んだ願望は偶然最初に出会った少女へと向けられることになる。

142 :赤ずきんと魔法使い ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:29:41.81 ID:tSlxbwlT



「さぁ〜って、どう殺そうかねぇ…」

楽しげに言いながら少女へと近づくキル夫。

大剣で四肢を斬り落とすか。
強化された肉体を利用し、素手で解体するのも悪くない。
ああ、想像しただけでも興奮する。

「や、やだ…来ないでよぉ!」

逃げようとするが腰が抜けてしまったのか、立てずに後ろへ這いずる少女。

(死にたくない、死にたくないよ!誰か…助けて…)

心の中で必死に助けを求める。
誰でもいいから助けて、自分は死にたくないと

「諦めな。お前はここで俺に殺される運命だったんだからよ。」

剣を持った右手をゆっくりと持ち上げるキル夫。
そうだ、ここは現実の世界。
そう都合良く助けなど現れるはずがない。

「精々絶望してくたばっちまいなぁ!!」



そうして振り下ろした剣は少女の首を



ガキィン!



「間一髪、だな」



斬り落とす前に止められた。




143 :赤ずきんと魔法使い ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:33:51.59 ID:tSlxbwlT
「なっ!?」

少女への一撃を止められ咄嗟に後方へ下がるキル夫。
そして自分の剣を防いだ人物を見る。

「大丈夫だったかい?お嬢さん」
「えっ、あっ、ハ、ハイ!」

黒いジャケットを着た茶髪の青年。
顔立ちは整っており、軽い調子で少女へと話しかけている。

「良かった。じゃあちょっと離れててもらえるかな?あっちの厳ついお兄さんと話があるからね」
「えっ、で、でも…」
「大丈夫だって。これでも俺強いしね」

そう言ってキル夫へ向き直る青年。
よく見ると手には掌のマークが付いた奇妙な剣を持っている。
さっきの一撃を防いだのはあれか。

「チッ、いいとこだったのに余計な茶々入れやがって…。変わりに相手してくれんのか?ニーチャンよ」
「ああ。こんな小さい子に襲い掛かるような奴、見逃しちゃおけないんでね」
「おいおい、正義の味方気取りか?俺には馬鹿な自殺志願者にしか見えねーがなぁ」

生身の青年とドーパントとなった自分。有利なのは明らかに後者だ。
だというのにこの男、やけに自信満々でいやがる。

「どんな場所だろうと関係無い」

そう言うと左手に赤い宝石の付いた指輪を身につける。
そしてそのまま手を腰のベルトへと移動させる。

<――Driver On――>

「お前のように誰かを絶望させようとする奴がいるのなら」

<――シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!――>

ベルトの形状が変わり奇妙な音声が鳴り響く。

「な、なんだそりゃ……?」
「しゃ、しゃば、どぅび…?」


「俺は戦い続ける」
「――――変身」

左手の指輪を鳴り響くベルトにかざす。

<――Frame Please ヒー! ヒー! ヒー!ヒー!ヒー!――>

その瞬間彼の姿は 別のものへと変化していた。
鎧とローブを融合させたかのような黒いボディ。
赤く輝く宝石のようなマスク。

そんな姿を見て驚くキル夫と少女を尻目に

「さぁ、ショータイムだ」

“指輪の魔法使い”、仮面ライダーウィザードこと“操真晴人”は敵の元へと駆け出した。

144 :赤ずきんと魔法使い ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:39:27.79 ID:tSlxbwlT
「っ!クソッタレが!」

一瞬で迫ってきたウィザードの一閃を慌てて大剣で防ぐするキル夫。
しかしウィザードの攻撃はそれで終わらず、連続して素早く斬り込む。
キル夫も負けじと防御するが全ては防ぎきれず、身体の各所に傷を負う。

「っの野郎…!離れろやぁ!」

大剣を大きく振り回し距離を取ろうとする。
ウィザードはバックスッップでそれを回避。すると手に持った剣、『ウィザーソードガン』を銃形態へと変え銃口をキル夫に向ける。
大剣を構え直そうとして気付いた。刃が所々大きく欠けてしまっている。
これでは剣としてまともに機能しないではないか。とんだ見掛け倒しのナマクラだったようだ。


キル夫は考える。ドーパントとはまた違う異形となったあの男。
今の少ない攻防だけでも理解できる。奴はかなり手強い。
向こうは銃を持っているがこちらに飛び道具は無い。おまけに唯一の武器も壊れる寸前ときた。
癪だがここは……

(退くべき、だな)

決断は一瞬。ウィザードが引き金を引くよりも早く剣を地面に叩きつける。
衝撃で地面が抉れ、土埃が舞う。
視界が封じられたその隙を見逃さず明後日の方向へと駆け出す。
メタルドーパントの筋力のお陰で地面を抉るという荒業も成功したが、代償として剣は使い物にならなくなった。

「まだゲームは始まったばかりなんだ。焦ることは無いさ」

足を動かしながらキル夫は呟く。
そうだ、何も今殺さなければならないというわけではないのだ。
この先もっと強力な武器が見つかるかもしれない。
そうやって準備が済んだら改めて殺せばいい。

「それまで待ってろよ、顔面宝石野郎」

【キル夫@やる夫スレ】
[状態]:疲労(中)、身体の各所に切り傷、ドーパントに変身中
[装備]:T2メタルメモリ@仮面ライダーW、聖剣・エクスカリ棒@NEEDLESS(柄の部分のみ)
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:ゲームを楽しむ
1:今は逃げる
2:もっと強い武器を集める




145 :赤ずきんと魔法使い ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:42:24.02 ID:tSlxbwlT
「逃げたか」

視界が晴れた時にはもう相手の姿は無かった。
現在持っている指輪を駆使すれば直ぐにでも追いつけるだろうが、今は他に優先すべきことがある。

「あ、あの…」
「ん。もう出て来ても大丈夫だよ」

変身を解き襲われていた少女の元へ駆け寄る。

「た、助けてくれてありがとうございます」
「なに、いいってことさ。希望を守るのは魔法使いの役目だからね」

少女の不安を取り除く為か、おどけた調子で答える晴人。

「魔法使い……?あの、お兄さんはいったい…」
「あー、まぁその辺の説明はあそこに入ってからにしよう。君も疲れてるみたいだしね」

殺し合いに巻き込まれ怪物に殺されかけたのだ。心を落ち着かせる時間が必要だろう。
はい、と小さく頷き民家へと入る少女の後に自分も続く。

(にしてもこの子……絵本とかに出てきそうな格好だな)





(お兄さん、かっこよかったなぁ)

先ほどの光景を思い出す。
鎧とマントのようなものを身に付け、自分を襲った怪物を撃退した勇姿。

変な人に攫われ、恐い化け物に襲われ、魔法使いと名乗る人に助けられた。
ここに来てからとても常識では考えられない目に遭ってばかりだ。
とはいえ以前も祖母諸共狼に食べられるというとんでもない体験をしているのだが。


そんな事を考えながら彼女――“赤すきん”と呼ばれる少女は民家の扉を開けた。

146 :赤ずきんと魔法使い ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:43:41.89 ID:tSlxbwlT
【操真晴人@仮面ライダーウィザード】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ウィザードライバー&ウィザードリング一式@仮面ライダーウィザード
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:絶望を破壊し希望を守る
1:少女と情報交換する
[備考]
※参戦時期は昭和ライダー対平成ライダー終了後
※制限として魔法使用時の魔力使用量増加
※まだ名簿を確認していません

【赤ずきん@御伽噺】
[状態]:疲労(大)
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1〜3(未確認)
[思考]
基本:死にたくない
1:お兄さんと情報交換する
[備考]
※外見は金髪の幼女です

147 : ◆84AHk0CknU :2015/07/07(火) 04:45:19.00 ID:tSlxbwlT
投下終了です
チカレタ…(小声)

148 : ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:16:20.54 ID:3qwWNONh
投下します

149 :悶絶少年ロワ外伝 ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:19:03.20 ID:3qwWNONh
痛い

胸が熱くて痛い

当然だろう、刀で斬られたのだから

俺はここで死ぬのか?

こんな意味不明なもんに巻き込まれて?





ふざけんな



まだつくねを助けてないんだよ

楓を一人残して逝けるかよ

ああそうだ

ようやく、真相を知ることができたんだ

ようやくあいつを助ける方法が見つかったんだ

これから始まるんじゃねぇかよ




死にたくねぇ

死にたくねぇよ




チクショウ……



【児上貴衣@魔法少女オブ・ジ・エンド 死亡確認】

150 :悶絶少年ロワ外伝 ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:20:37.87 ID:3qwWNONh


SMバー平野。
表向きはどこにでもある普通のバーだが、裏では監禁した少年を奴隷として客に提供するトチ狂った店。
そんなクッソ汚い店のカウンター席にひとり腰掛けている参加者が居た。

参加者の名はクルス・シルト。
青のブレザーと赤いチェックのスカート。ツインテールに可愛らしい顔立ちと、どこから見ても美少女にしか見えない女装少年だ。

「いったい何がどうなってるんだ…?」

彼は突如巻き込まれた殺し合いに困惑していた。

この場に連れて来られる直前、クルスと仲間達は宿敵アークライトと決着を着けるべく、敵の拠点であるシメオン本社に乗り込んだ。
死んだと思った照山の復活や、姉アルカの死など紆余曲折を経て、アークライトの居る地下の第7セクターへと辿り着いた。

(そのはずなのに、どうしてこんな所に居る?これはアークライトが仕組んだことなのか?)

この殺し合いはアダム・アークライトが自分達を始末する為行ったのではないかと推理する。
しかし直ぐにいや、と自分の言った事を否定する。

(いくら何でも回りくど過ぎる。それに僕たちの仲間を外して、知らない人を大勢巻き込むのも不自然だ)

直前まで共に居たイヴとディスク。少女部隊と戦闘中の照山。
本社の外で戦っているセトとソルヴァ。彼らをあえて呼ばなかったのは何故だ?
また、こちら側に付いた未央はともかく、何故敵対中のセツナまで連れてくる必要がある?

(でもアークライトの仕業じゃないなら、あの男は一体……)

あの得体の知れないロン毛はおそらくニードレスだろう。
会場へのワープや何時の間にか着けられた首輪など、そうでなければ説明が付かない。
尤も、ロン毛以外にも協力しているニードレスがいる可能性もあるが。

「とにかくまずは神父様たちを探そう。それにギド博士ならこの首輪を外せるかもしれないし」

ギドこと六道銀は優秀な科学者だ。彼ならばこの厄介な首輪も解除できる可能性が高い。
とはいえ戦闘力は皆無なので早めに合流する必要があるだろう。
考えを纏め終え、出発する為に立ち上がろうとし


「お?先客か?」

来訪者の出現に動きを止めた。

151 :悶絶少年ロワ外伝 ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:22:48.96 ID:3qwWNONh
…………


「いや〜良かったよ、クルス君みたいな殺し合いに反対する人に会えて」
「あはは…。僕も最初に会ったのが葛城さんで安心しました」

バーを訪れた男性は葛城蓮と名乗った。名簿には何故か『虐待おじさん』という物騒な名が記されているが。
しかし話してみると気さくでな人で、優しそうな普通のおじさんのようだ。

「でもよく僕が男だって一発で分かりましたね?しょっちゅう誤解されるんですが…」
「まぁ職業柄見慣れてる方だからね。流石にクルス君ほど女装が似合う子は居なかったけど」
「は、はぁ。(何の職業なんだろう……)」

軽い自己紹介が終わりお互いの知り合いの話となる。
まずはクルスがブレイド、未央、ギドは安全。逆にセツナは危険だと説明する。
今度はおじさんの知り合いは呼ばれているかを聞こうとした時

「クルス君。会っていきなりなんだけどちょっといいかな?」


おじさんが妙に真剣な顔で問いかけてきた。


「な、何ですか葛城さん。そんな急に改まって」
「実は君にお願いしたいことがあってね……聞いてくれるかい?」
「お願い、ですか?まぁその、僕にできることなら」

お願いとはなんだろうか。
ひょっとして誰か大切な人がゲームに連れて来られてしまったから、探すのを手伝って欲しいとかだろうか。
考えるクルスを余所に、おじさんは何故かネクタイを外すと


「そうかそうか、それは良かった……YO!」


クルスの首を絞めようと襲い掛かった。

152 :悶絶少年ロワ外伝 ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:24:30.51 ID:3qwWNONh
「うわっ!」
驚き咄嗟に後ろへ避けるクルス。

「か、葛城さん!?いきなり何を!?」
「何ってお願いだよお願い。ちょっと君の苦しむ姿を見せて欲しいんだ」

先程と変わらない優しそうな笑顔で言うおじさん。
それを見てクルスは背筋に寒いものを感じた。

「そんなもの聞ける訳ないでしょ!?まさかあなた殺し合いにn「は?(威圧)」

クルスの言葉を遮り笑みを消すおじさん。
さっきとは別人のような怒りの顔を作っている。

「お前さっきお願い聞くっていったよなぁ!なぁ!聞くって言ったのに聞かないって、おかしいだろそれよぉ!」

初対面でそんなお願いする方がおかしいんだよなぁ。

おじさんの豹変に戸惑いつつも、SMバー平野を跳び出し市街地へと逃げるクルス。
その後ろからは何時の間にか両手に日本刀を持ったおじさんが追いかけて来る。

「誰が逃げていいつったオラァ!」

あっという間にクルスに追いつくおじさん。
その化け物染みたスピードに驚くクルスへおじさんが刀を振りかざす。


逃げる暇など与えずクルスへと迫る刃。
クルスの死を確信しおじさんは邪悪に笑う。

この状況、どう足掻いてもクルスの死は確定だろう。



もっともそれは




「シールドオブイージス!!」




彼が“ただの無力な一般人”だったらの話だが。

153 :悶絶少年ロワ外伝 ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:28:18.37 ID:3qwWNONh
「うっ、おおおおおお!?」

クルスを狙った刃は見えないなにかに防がれ、おじさんは大きく弾き飛ばされた。
そのまま地面に激突すると思いきや、素早く身を捻り着地する。

その様子をクルスは冷や汗を掻きながら睨み付ける。
掌をかざした方向からの攻撃を完全に防ぐ『女神の盾(シールドオブイージス)』
もしもこの能力に覚醒していなければどうなっていたことやら。
思わず想像したifを頭から追い出し問いかける。

「葛城さん。あなた、このゲームに乗ったんですか?」
「自分の趣味を優先させてるだけださ。おじさんはねぇ、キッ君みたいな可愛い子が悶絶する顔が大好きなんだよ!(マジキチ)」
(変態だー!この人、神父様とは別方向の変態だー!)
「言う事聞いてくれないなら、君もこいつのようになっちゃうよオラオラ。ホラ、見ろよ見ろよ」

そう言ってデイバックを開き、中から16、7歳程の少年の生首を取り出す。
自分から見せていくのか(困惑)

「なっ…、それは!?」
「言う事聞かずに暴れだすからついお仕置きしちゃったよ。だからクルス君は……大人しくしてろYO!」

言うやいなや再び襲い掛かるおじさん。
しかし今度はクルスの方が一瞬早かった。
デイバッグから取り出したあるものをおじさんに投げつける。

「くるくるぺ〜」
「YO!]

邪魔だと言わんばかりに投げられた赤い玩具を斬る。


ドッゴォォン!


しかし斬りつけた瞬間大きな爆発が起きる。

「っよし!今の内に…!」

爆風を女神の盾で防ぎ一目散に逃げ出すクルス。
自分の能力は防御面では優秀だが攻撃には向いていない。故に撤退を決めた。
できれば今の爆発で倒れてくれよと願いながら、全速力でその場を後にした。


【クルス・シルト@NEEDLESS】
[状態]:疲労(大)
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いから脱出する
1:この場から離れる
2:神父様、未央ちゃん、ギド博士を探す
3:セツナと葛城を警戒
[備考]
※第103話開始直後からの参戦です。その為ギドの正体を知りません

154 :悶絶少年ロワ外伝 ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:29:37.76 ID:3qwWNONh
「逃げられちゃったか、悲しいなぁ」

既に見えなくなったクルスへ向けて呟くおじさん。
刀2本を犠牲にしたお陰で、それほど深い傷は負っていない。
幸いにしてまだ後4本残っている。新たに2本取り出すと腰のベルトに刺す。

「にしても殺し合いに乗ったのかなんて失礼な奴だな。俺はそんな気全く無いのに」

思いっきり殺しに掛かってたうえ、既に一人殺ってるんだよなぁ
この人頭おかしい…(小声)

「そういえばひでの奴も居たな。まぁあんな汚いのどうでもいいか」

少し前に拉致監禁し拷問と陵辱の限りを尽くした相手。
今にして思えば何故あんなクッソ汚いのをターゲットにしたのか自分でも謎だ。
しかし1秒後にはまぁどうでもいいかと思い、その場を立ち去った。


【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢】
[状態]疲労(中)、全身に軽い火傷
[装備]六爪@戦国BASARA(残り4本)
[道具]共通支給品一式(水と食料が2人分)、不明支給品1〜5、児上の生首
[思考]
基本:可愛い男の子の悶絶する顔が見たい
1:自分好みの子を探す
2:クルスは次にあったらお仕置きする
3:ひではどうでもいい
[備考]
※参戦時期はひでを虐待し終わって以降


支給品紹介
【バリカンの旧友@チャージマン研!】
クルス・シルトに支給。
泉家のおじいさんロボット『バリカン』の旧友を名乗るロボット。
その正体はジュラル星人が送り込んだロボット型の時限爆弾。
泉家で爆発する前に研の手で海に放り出された。

155 : ◆84AHk0CknU :2015/07/09(木) 01:32:39.70 ID:3qwWNONh
投下終了です

156 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/13(月) 12:59:00.20 ID:MPFU3xjY
投下乙です、ペース早いですね
自分も投下します

157 :擬似姉弟 ◆ymCx/I3enU :2015/07/13(月) 12:59:44.11 ID:MPFU3xjY
3話 擬似姉弟

はぁ、どうした物かな。
どうして殺し合いなんかしなきゃいけないのかな。
僕こと、本庄忠朝は、同じく殺し合いに巻き込まれた知り合いの女性、伊藤文子さんと一緒に草原を歩いていた。

「スタート地点が近くて良かったわ……」
「そうですね……一人きりじゃ不安でした」

僕と伊藤さんのスタート地点は程近く、すぐに合流する事が出来たのは幸運だったと言えるだろう。

「寒い……」
「そりゃ、バニーガールの格好では寒いですよ」

寒がる伊藤さん。無理も無い、伊藤さんは肌の露出の多いバニーガールの格好をしている。
確かに伊藤さんはカジノでバニーガールとして働いているけどどうして殺し合いの中でその格好なのか。

「昨日、と言うか拉致される前、確かにパジャマに着替えたんだけどなぁ。
気が付いたらこの格好よ。誰か着せたのかな……」
「うーん、まあ、僕も学校の制服いつの間にか着てますし……」

僕も伊藤さんも気が付いたら服が変わっていた、いや、着替えさせられていた、という状況。
誰が? どうやって? 気になる事は多かったけどそれを深く考えても仕方無いだろうな。
重要なのは僕達が殺し合いに巻き込まれてしまった事と、下手すれば死ぬと言う事。

「これからどうしよう」
「取り敢えず一度、どこかに落ち着きましょう。あっ、ほら、あそこにホテルっぽい建物有りますよ」

遠方にホテルらしき大きな建物を見付けた僕は、指を差して伊藤さんに教える。

「ホテル? ハッ、忠朝君いやらしい事考えて……」
「ません!」
「あらそう?」

考えて欲しかったのかな。
まあ確かにいつ万一の事になるのか分からないからそういう事しちゃいたいなーってのは有るけど。
いや決してホテル見付けたのはそういう気持ちとかじゃ。

「とにかくあそこで休みますよ」
「はーい」

とにもかくにも僕と伊藤さんはホテルに向かって歩みを進めた。

◆◆◆

158 :擬似姉弟 ◆ymCx/I3enU :2015/07/13(月) 13:00:56.11 ID:MPFU3xjY
知り合いの忠朝君に早く合流出来て本当に良かったと思う。
一人きりで居たら不安で、怖くて、心が張り裂けてしまいそうだから。
忠朝君も私と同じで殺し合いに乗っていないようで安心した。
でも私の方がお姉さんなんだし、しっかりしないとなぁ。きっと忠朝君だって怖いに決まってる。

しかしバニーの格好だと潮風がとても冷たい。
海が近いみたいだから風ちょっと強いのよ。
それにしても一体誰がどうやって着替えさせたのかな……いや、着替えさせたのは十中八九、拉致した奴らだろうけど。
裸見られた? うわ。

早い所、忠朝君とホテルに行って休もう。
――――ああ、もし出来るのなら、万一の時に備えて、忠朝君と「コト」に及んじゃいたいな。


【明朝/E-2ホテル周辺の草原】
【本庄忠朝】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:殺し合いはしない。伊藤さんと行動。ホテルへ向かって休みたい。
備考:現在伊藤文子と共にE-5ホテルへ向かっている。

【伊藤文子】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:殺し合いはしない。忠朝君と行動。ホテルへ向かって休みたい。
備考:現在本庄忠朝と共にE-5ホテルへ向かっている。

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《キャラ紹介》
【本庄忠朝】
読み:ほんじょう ただとも
年齢:16
性別:男
種族:竜人
特徴:灰色と白の身体、白髪、女性的な身体付き。学校制服のブレザー着用
職業:高校生
備考:優しいが気弱。それでいて女性的な身体付きの為よくからかわれ、挙句同性に犯されかけた過去を持つ。
近所に住むバニーガールの女性、伊藤文子と親密になっている。

【伊藤文子】
読み:いとう あやこ
年齢:19
性別:女
種族:人間
特徴:金髪の美人、露出の多いバニーガール姿
職業:カジノのバニーガール
備考:怖がりながら明るい性格。近所に住む竜人少年本庄忠朝と親密になっており、一緒にTVゲームや性交を行っている。
年下と接する時は年上だからしっかりしなければと思いつつも甘えてしまう。
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159 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/13(月) 13:01:22.89 ID:MPFU3xjY
投下終了です

160 : ◆84AHk0CknU :2015/07/16(木) 03:38:17.95 ID:MxwHWf+t
投下乙です。忠朝君の過去がさり気にヘビーで草
自分も投下します

161 :少女たちの夜 ◆84AHk0CknU :2015/07/16(木) 03:42:24.33 ID:MxwHWf+t
「どういうことなのかしら、これ」

シメオン少女部隊のニードレス、セツナは現状にため息を漏らした。
聖ローズ学園で起きた連続殺人事件を山田ことクルス、そして梔と共に解決した矢先にこの殺し合いに巻き込まれた。
ここに来る直前誰かに襲われたとかそういうものはなく、本当に気が付いたらこのゲームに呼ばれていた。
おまけに一緒に居たクルスはともかく、別行動中の未央まで呼ばれている。

「しかもあのブレイドまで居るなんてホント最悪ね」

アダム・ブレイド。敬愛する主、アダム・アークライトに楯突く忌々しい宿敵。
シメオンビルでの大爆発の後は行方知れずだと聞いたが、案の定生きていたか。
あのロリコン神父のデタラメな戦闘力は身を以って味わっている。マトモにやり合っても勝機は薄い。
殺さねばならない敵だが、できれば会いたくないのが本心だ。

「まずは未央を探さないとね。そう簡単に死にはしないだろうけどオツムが残念だし」

とにかくまずは仲間の捜索から始めよう。
近い施設を順に回っていくかと考え歩き出す。


…………


「悪いけど止まってくれるかしら」

歩き始めて数分が経過した頃、そんな言葉と共に銃を向けられた。
相手は自分よりも年下であろう桃色の髪の少女。やけに露出度の高い格好をしている。
梔が居たら興奮していただろうなと、どうでもいいことを思いながらも言葉を返す。

162 :少女たちの夜 ◆84AHk0CknU :2015/07/16(木) 03:44:16.35 ID:MxwHWf+t
「初対面の相手に随分と物騒なモノを向けるのね。」
「あら、こんな状況で見ず知らずの相手を信じろって方が無理ではなくて?」
「まぁ確かにそうね」

会話をしつつも相手に対する警戒は解かない。
いつでも能力を発動できるように構える。『速(スピード)』なら相手が引き金を引くよりも速く仕留められる。

「単刀直入に聞くけど、あなたこのゲームでどう動くつもりなの?」
「…とりあえず仲間との合流が最優先ってところね。今はゲームに乗る気はないわ」
「ふーん……」

まじまじと此方を見つめる少女。値踏みされているようで、あまり良い気分ではない。

「ならお互い協力できるってわけね」
「はぁ?」
「私もあなたと同じよ。殺し合いに乗る気は無く、探したい相手も居る。だったら手を組んで損は無いと思わない?」

少女の言葉にセツナは考える。未央の捜索、ブレイド達の抹殺、それに首輪の解除とすべきことは山積みだ。
自分と未央だけでは解決しきれない。ならば協力者は一人でも多いほうが良い。
それに脅しに銃を使ったということはニニードレスではない一般人、若しくは戦闘には向かない能力の持ち主なのだろう。
仮に自分を切り捨てようとしても返り討ちにできる自身はある。故に答えは決まった。

「分かったわ。少しの間だけどよろしくね」
「納得してもらえてうれしいわ」

微笑みながら銃を下ろす少女。同時に緊張感から解放される。
取り合えず名前を聞こうとするがそれより早く少女が、それじゃあと後ろの建物に目を向ける

「中でお話でもしましょうか」





『面影堂』という看板の出ている店に入り、来客用の椅子に腰を落ち着ける。
まずはお互いの自己紹介から始める。桃髪の少女はアーニャと名乗った。
話し合うこと数分。手短に済むと思っていた情報交換は予想に反して複雑になった。

「冗談で言ってるの?あんまり面白くないわよ」
「こっちの台詞よそれ」

アーニャの言うブリタニア帝国。セツナの言うニードレスとBS(ブラックスポット)。
知っていて当然の事をお互い全く知らないという奇妙な状況。
単なる妄想か、あのロン毛に記憶を弄られたか、と考え続けるアーニャ。
そんな彼女を見ながらため息を吐きつつ話しかけるセツナ。

「とりあえずお互いがイカれてるかもとかそういうのは置いておきましょう」
「え?」
「私たちは仲間を探してる、そして互いに争う気はない。今はそれだけで十分じゃないかしら」
「…そう、ね。確かめるのは彼らと合流した後でもいいわね」

163 :少女たちの夜 ◆84AHk0CknU :2015/07/16(木) 03:46:44.23 ID:MxwHWf+t
完全には納得していないようだが同意は得られたようだ。この話題は一旦打ち切り情報交換を続ける。
続いてお互いの仲間の情報。アーニャはゼロと枢木スザクの2人を探しているという。
セツナは未央が仲間、アダム・ブレイド、クルス・シルト、六道銀は敵であると告げる。

続いてお互いの支給品の確認となった。
アーニャは銃が一丁とバッチが二つ。バッチは探偵バッチと言って小型の通信機の役割を果たすという。
もしも別行動を取った時の為にと一つ渡される。断る理由も無いので礼を言い受け取る。

セツナの支給品は包丁が一本、赤青緑黄の4色盤に回るタイマー、袋詰めされたきびだんごの三つ。
どう考えても外れだ。これにはアーニャも苦笑いしている。
まぁ能力(フラグメント)があれば武器は特に必要ない。それに他の参加者よりも多少食料に有利になったのだ。前向きに捉えよう。

話が終わるとアーニャがそれじゃあと立ち上がり、セツナもそれに続く。
面影堂を後にし、当初の予定通り近くの施設から順に当たっていく。
歩いている途中でふとクルスのことが頭に浮かんだ。
止むを得ない状況とはいえ敵である自分達に協力し、自分が怪我をした時には本気で心配してくれた少年。

(悪く思わないでね。どの道次に会えば殺しあうしかないんだから)

思うところが全く無いわけではない。
それでも止まれないのだ。自分はとっくにアークライトに尽くす事を決めたのだから。





(面倒なことになったわね)

心中でそう呟くアーニャ。
否。正確には彼女はアーニャではない。
ナイトオブラウンズのNo.6アーニャ・アールストレイムであるのはその肉体のみ。
中に住まう者は全くの別人だ。

(C.C.とも連絡が取れないなんて……。あの男何者?)

その者名はマリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。
ルルーシュとナナリー兄妹の実母にして神聖ブリタニア帝国の皇妃の一人である。
数年前の襲撃により死に瀕した際に覚醒したギアスにより、魂を別の人間の中へと移動しながら生きてきたのだ。
そして彼女には元の世界で『C計画』果たすという重大な目的がある。こんな訳の分からないゲームで足止めをくらっている場合ではない。
一番手っ取り早く帰還できる方法は殺し合いに優勝することだろう。
しかし、優勝者を必ず生還させるという保障はどこにもない。故に今は様子見に徹しつつ情報を集める。
脱出できる明確なプランが見えたらそちらへ、無理なら優勝を目指す。これが彼女の方針だ。

そしてその為に必要な人材。それがゼロことルルーシュとナイトオブセブンこと枢木スザクの二名である。
あの2人の有能さと未熟な面は全て把握済みだ。御するのは難しくない。
2人ともユーフェミアの死には相当な負い目がある。そこを突けば容易く心を揺り動かせるだろう。
特にルルーシュの持つ絶対遵守のギアスはこの場で何よりも重宝する。早めに合流しておきたい。

(それにしてもさっきの話、あれはどういうことなのかしら)

164 :少女たちの夜 ◆84AHk0CknU :2015/07/16(木) 03:50:28.25 ID:MxwHWf+t
先程のセツナの話、全くもって不可解だ。ブリタニアの名は子供でも知っているというのにそれを知らない。
加えて第三次世界大戦とその影響で生まれたBSという汚染地域。そしてニードレスという超能力者。
単なる妄想だと片付けるのは簡単だ。だが彼女は至って健全に見えるし、ただの妄想にしては妙にリアリティが感じられた。
更に不可解なのは名簿にある「ロロ・ヴィ・ブリタニア」の名前。
ブリタニア姓を名乗っているがそんな者には会ったことがないし、名を聞いたことも無い。
ロロ・ランペルージと何か関係があるのだろうかと考えを巡らせるが答えは出てこない。

(…今はルルーシュ達を探す方に集中しましょう。だから精々役に立ってね、セツナちゃん)

全てはアーカーシャの剣の発動の為。そのためなら何を犠牲にしても構いはしない。
セツナからは見えない位置で口元を歪めながら魔女は歩み続ける。




彼女は知らない

この場に居る息子が自分の居た世界とは別の世界の住人であることに

御せると踏んだ相手は、最愛の妹すら切り捨てる道を選択した強大な魔王であるということを

マリアンヌは、知らない


【セツナ@NEEDLESS】
[状態]:健康
[装備]:探偵バッジ@名探偵コナン
[道具]:共通支給品一式、ダディクールが持ってる包丁@やる夫スレ、ドラゴタイマー@仮面ライダーウィザード、きびだんご@御伽噺
[思考]
基本:ゲームからの脱出
1:アーニャと行動し互いの仲間を探す
2:ブレイド一派の抹殺(但しブレイドは確実に殺せる機が来るまで無理はしない)
3:ブリタニア…?
[備考]
※参戦自時期は学園編終了後

【アーニャ・アールストレイム@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康、マリアンヌ状態
[装備]:グロッグ17L(17/17)@BLACK LAGOON、探偵バッジ@名探偵コナン
[道具]:共通支給品一式、予備マガジン×4
[思考]
基本:自身の生存を最優先
1:セツナと行動し互いの仲間を探す
2:脱出の方法を探す。無理ならば優勝に切り替える
3:セツナの話とロロ・ヴィ・ブリタニアの名に疑問
[備考]
※ルルーシュに正体を明かすよりも前からの参戦
※現時点での意識はマリアンヌのものです。この先アーニャの意識が表面化するかは不明です
※ゼロ(ルルーシュ)を「反逆」世界のゼロと思っています

165 : ◆84AHk0CknU :2015/07/16(木) 03:55:40.86 ID:MxwHWf+t
投下終了です
後名簿に一部変更を
ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュと半沢夜華@魔法少女オブ・ジ・エンドの2名を外します

もーほんまつっかえ……やめたら?この仕事(自戒)

166 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/17(金) 20:54:04.43 ID:iD7emVuN
投下乙です
(名簿変更くらいは)多少はね?
自分も投下します

167 :ユウウツ ◆ymCx/I3enU :2015/07/17(金) 20:55:25.04 ID:iD7emVuN
4話 ユウウツ

「ヌッ……クォクォア……」

黛康裕は砂浜で目を覚ます。
立ち上がって身体に付いた砂を払い落とし、そして自分が殺し合いに巻き込まれてしまった事を思い出した。

「畜生、何だって殺し合いなんか……これからどうすっかな」

近くに有ったデイパックを拾い上げて、これからの事を考える康裕。
参加者には知人が二人居る。同性愛者である彼が通うハッテン場の仲間、犬獣人の沼倉勇喜と、人虎(ワータイガー)のスィヴレバル。
この二人とはそこそこに仲が良いので康裕は二人を捜す事にした。

「あいつら、殺し合いに乗ってなきゃ良いんだけどな……」

懸念を示す康裕。

ダァン……。

銃声が響く。同時に康裕は胸が何かに貫かれるような感覚を覚えた。
激痛。口から溢れる鉄錆味の熱い液体。胸元を見れば胸に大きな穴が空いていて鮮血が噴き出していた。背中も熱い。
何が何だか分からぬ内に、康裕の意識は闇に呑まれ、二度と戻らなくなった。

◆◆◆

海岸近くの食堂の、僅かに空いた窓の隙間から銃口が覗いていた。
その銃、レミントンM700ボルトアクションライフルの持ち主、鹿獣人の緒方修二はスコープ越しにたった今撃った男の様子を確認する。

「当たった……死んだよな……?」

男は砂浜を赤く染めて倒れ動く様子は無かった。

「俺もついに、人殺しか」

自嘲気味に修二は笑う。
成人向け漫画家としてそこそこの収入を得ながら、裏の趣味として自分の自慰動画を裏動画サイトに投稿したりしていたがまさか殺人を犯すに至るとは。
だが仕方無いのだ、やらなければ死ぬ。
やるしかないのだと、修二は心の中で自分に言い聞かせる。

「原稿、仕上げてないのになぁ、落としちゃうかなこりゃ……遺作になるかも……いや、死にたくない。生き残ってやる、誰を犠牲にしようとも」

M700のグリップを強く握り閉めて修二は決意を新たにする。
殺し合いに乗り生きて帰る事を目指すのだ。


【黛康裕  死亡】
【残り51人】

168 :ユウウツ ◆ymCx/I3enU :2015/07/17(金) 20:56:28.01 ID:iD7emVuN
【明朝/D-7海岸沿いの食堂】
【緒方修二】
状態:健康
装備:レミントンM700(3/4)
持物:基本支給品一式、7.62mm×51mm弾(12)
現状:殺し合いに乗り優勝を目指す。自分が生き残る事を最優先する。
備考:黛康裕の荷物を回収しに向かうかどうかは不明。

----
《キャラ紹介》
【黛康裕】
読み:まゆずみ やすひろ
年齢:25
性別:男
種族:人間
特徴:金色に染めた短髪。ヤンキーみたいな見た目。仕事着のツナギ
職業:バイクショップ店員
備考:同性愛者でハッテン場に良く通っている。参加者の内、沼倉勇喜、スィヴレバルはハッテン場仲間
ヤンキーみたいな外見だがそこまでDQNでは無い

【緒方修二】
読み:おがた しゅうじ
年齢:35
性別:男
種族:鹿獣人
特徴:灰色の鹿獣人。長身で痩せ気味。巨根。くたびれたシャツとジーパン姿
職業:成人向け漫画家
備考:そこそこの人気の有る成人向け漫画家。やや気弱で口下手。
自分の自慰動画を裏動画サイトに投稿する趣味を持つ(顔は隠している)。かなりの巨根の持ち主。

《支給品紹介》
【レミントンM700】
支給者:緒方修二
分類:銃火器
説明:1962年にレミントン・アームズ社より発売されているボルトアクションライフル。
堅牢な構造と高い命中精度により警察や軍で狙撃銃として使われている。
本ロワの物はスコープが装着された7.62mm×51mm口径モデル。
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169 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/17(金) 20:57:57.46 ID:iD7emVuN
投下終了です。

170 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/21(火) 00:04:54.65 ID:F0Mxiw8Z
投下します

171 :No Logic ◆ymCx/I3enU :2015/07/21(火) 00:05:27.78 ID:F0Mxiw8Z
5話 No Logic

黒髪の美少女、大木弓那は自分の使い魔兼家族兼弟的存在兼玩具である、
人狼型魔獣黒牙の姿を探しながら、森の中を歩いていた。

「黒牙、うーん、どこに居るのやら……いつもだったらテレパシー的なの使えるんだけどねぇ。
全然使えなくなってるみたいだし……無事で居てくれると良いんだけど」

自分の支給品である特殊警棒を右手に装備し、黒牙の捜索をする弓那。

「やめて! ひいい」
「私の為に死ね!」
「あら」

道中、兎獣人型の悪魔獣人少女が、青髪に青い竜の両手足、尻尾、翼を持った半竜族の女性に襲われているのを発見する。
半竜族の女性はどうやら殺し合いに乗っているようだった。

(見て見ぬフリもなぁ、仕方無い、助けてあげよう)

弓那は追われている悪魔獣人少女を救援する事にする。

「エイヤー!!」
「なあっ!?」

持っていた日本刀で悪魔獣人少女に斬り掛かろうとしていた半竜族の女性に死角から殴り掛かる弓那。

「いった、何よアンタ!? い、い!?」
「特打!! 特打!! もっと早く!!」
「あぁいったい痛い痛い!!? ねぇちょっともう、痛い!! 畜生!」

半竜族の女性は堪らず逃げ去った。

「大丈夫?」
「うわああん、ありがとう! ありがとう!」

悪魔獣人少女は余程怖かったのだろう、泣きながら弓那に礼を言う。
よしよしと頭を撫でる弓那。

「私、大木弓那って言うの。貴方は?」
「わたし、コンゼノア……」
「貴方、追われてたけど、殺し合いには……」
「乗ってないよ!」
「それは良かった。私も乗ってないから安心して。折角だから一緒に行かない?」
「良いの? ……分かった、一緒に行く」

コンゼノアは弓那との同行を快諾する。
悪魔族としては臆病な性格だったコンゼノアにとって、殺し合いの中での単独行動は避けたかった事も有り、
実際先程襲われた事も重なって、弓那の同行の申し出は有難い物だった。

「ところで、黒と赤の毛皮を持ったワーウルフ見なかった? 黒牙って言って、私の使い魔なんだけど」
「いや見てない、ごめん」
「そっか、いや気にしないで。しっかし凄い格好……さっきの半竜の女も大概だったけど」
「まあ、悪魔だし……」

コンゼノアの、ビキニのような物で隠されている豊満な乳房を見て感想を述べる弓那。
もっとも弓那もかなりの大きさであったが。

172 :No Logic ◆ymCx/I3enU :2015/07/21(火) 00:06:04.32 ID:F0Mxiw8Z
「それより、私、この特殊警棒が支給されたんだけど……貴方は? 何なの?」
「まだ見てないのよ。見る前にさっきの半竜族に襲われたから……ちょっと見てみる」

自分のデイパックを漁るコンゼノア。そして出てきた物は何と小型の短機関銃ミニウージーであった。
予備のマガジンも5個セットで入っている。

「当たりだわ……」
「これ使えばさっきの女にも対抗出来たんじゃないの? とは言っても、
確認する前に襲われたんじゃしょうがないね」
「装備しておこ」

コンゼノアはミニウージーを装備した。
「悪魔なんだから魔法とか使えないの?」と弓那が訊くと、
「この殺し合いが始まってから威力が弱まって使い物にならない、使えなくなった物も有る」とコンゼノアは返した。

◆◆◆

半竜族の女性、レカは憂さ晴らしに日本刀を振り回して細い木や背の高い草を切っていた。

「くっそぉ、あの人間のメス! 邪魔した上にボコボコ殴りやがって! いったい……」

種族柄、致命傷には至らなかったものの、ほぼ全裸に近い格好(胸と秘部はビキニのような物で隠していた)の身体を、
特殊警棒で何度も殴られてダメージが無い訳は無く、その痛みがレカに更なる苛々を発生させる。

「次会ったら絶対殺す! あの人間も、兎みたいな奴も! この殺し合いに居る奴ら全員ぶっ殺して、絶対生きて帰るんだから」

整っている顔立ちを白い牙を剥き出しにし、野獣のように歪ませるレカ。
とある犯罪組織の一員である彼女は、美しい、美女と言っても良い容姿と裏腹に自己中心的かつ攻撃的な性格であった。
そんな彼女がこの殺し合いに巻き込まれて、最終的な目的とする事は、勿論自己の生還、即ち優勝狙いである。

「ウォラゴの奴も居るけど知ったこっちゃ無いわ。私の命が一番大事」

殺し合いには彼女と同じ組織に所属する知人が居たが、そのような事にはお構い無しに、レカは優勝を狙う気でいた。


【明朝/D-6森】
【大木弓那】
状態:健康
装備:特殊警棒
持物:基本支給品一式
現状:殺し合う気は無い。黒牙の捜索。コンゼノアと行動
備考:レカの容姿のみ記憶、危険人物と判断

【コンゼノア】
状態:健康
装備:IMIミニウージー(32/32)
持物:基本支給品一式、ミニウージーのマガジン(5)
現状:殺し合いはしたくない。死にたくない。弓那と行動する
備考:レカの容姿のみ記憶、危険人物と判断。大木弓那より黒牙の情報を入手


【明朝/D-6森】
【レカ】
状態:全身に打撲
装備:日本刀
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いに乗り、優勝を目指す
備考:大木弓那とコンゼノアの容姿のみ記憶

173 :No Logic ◆ymCx/I3enU :2015/07/21(火) 00:06:42.44 ID:F0Mxiw8Z
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《キャラ紹介》
【大木弓那】
読み:おおき ゆみな
年齢:17
性別:女
種族:人間
特徴:黒髪、セミロングの美少女。学校制服のブレザー姿
職業:高校生
備考:黒牙と言う、人狼型の魔獣を使い魔にしている。使い魔と言うより弟であり家族であり玩具であり、肉体関係も有る。
黒牙と契約してから、テレパシー等色々使えるようになった(本ロワ内では封印されている模様)。
マイペースかつ、少しSっ気が有る性格。でも基本的に優しい。契約した詳しい経緯は不明

【コンゼノア】
年齢:不明(外見は10代後半位)
性別:女
種族:兎獣人型悪魔
特徴:灰色の兎に似た獣人型悪魔。黒い露出の多い格好をしている。巨乳
職業:悪魔
備考:悪魔にしては気弱で臆病な性格。男複数人に呼び寄せられ輪姦され奴隷にされた事も有る(何とか脱出)。
それなりに強力な魔法も使えるのだが本ロワでは悉く封印か弱体化されておりただのエロい格好の兎状態

【レカ】
年齢:19
性別:女
種族:半竜族
特徴:青い髪に竜の角と翼、尻尾。両手足の肘、膝から先が竜の物。胸と秘部はビキニのような白い布で隠している
職業:犯罪組織構成員
備考:美貌とは裏腹に攻撃的かつ自己中心的な性格。
犯罪組織ギルドに所属しており、略奪、暴行、殺人等多様な悪事を働いている。
ロワ参加者の一人、ウォラゴは同じ組織所属の知人。但し仲が良い訳では無い

《支給品紹介》
【特殊警棒】
支給者:大木弓那
分類:鈍器
説明:伸縮式の金属製の警棒。見た目に寄らず強度が有る。

【IMIミニウージー】
支給者:コンゼノア
分類:銃火器
説明:イスラエルのIMI社が1951年に開発した短機関銃、ウージーの小型版。
携帯性が増しているがマズルジャンプが強くなった。9mmパラべラム弾使用。

【日本刀】
支給者:レカ
分類:刃物
説明:切れ味の良い無銘の打刀。
----

174 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/21(火) 00:08:30.68 ID:F0Mxiw8Z
投下終了です。

175 : ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 03:56:10.08 ID:jtg4t+mQ
投下乙です

【ユウウツ】
ちょっと特殊な性癖の奴が多過ぎやしませんかね…(震え声)

【No Logic】
犯罪組織の一員が女子高生にシバかれてレカ姉貴は恥ずかしくないの?(嘲笑)

では自分も投下します

176 : ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 03:57:10.56 ID:jtg4t+mQ
ボルガ博士、お許しください!

177 : ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 03:59:51.86 ID:jtg4t+mQ
ボルガ博士、お許しください!





深夜の山下公園。そこで白衣の老人、ボルガ博士は怒りを燃やしていた。
怒りを向ける相手は自分を殺し合いに呼んだロン毛――ではなくとある少年と宇宙人である。
ここに来る前ボルガ博士はとある宇宙人改めジュラル星人の手で人間爆弾へと改造された。
彼らの目的は各国の科学者が集うレセプションの場でボルガ博士を爆発させることであり、後一歩の所で目的は達成される筈だった。
しかしその直前博士はチャージマン研によりレセプション会場から連れ出され、ジュラルの宇宙船へ排出、その衝撃で爆死という最期を迎えた。
と、こう書けば研の取った行動は仕方が無いもののように見えるが、真実は少し違う。

「許さんぞチャージマン研…。貴様がワシを見殺しにしたことはな…!」

博士が人間に化けたジュラル星人に連れ去られる瞬間を研は目撃していた。
にも関わらず救出に向かう所か、映画を観てそのまま帰宅。呑気にテレビを眺めていたのである。
このキチガイ行動には温厚なボルガ博士も腸が煮えくり返っていた。
故に彼は決意した。必ずやチャージマン研に相応の報いを受けさせることを。


――尤もそれは叶わないのだが。


「むっ!?こ、これは」

まずは他の参加者を探そうと歩き出した瞬間急に動きを止めた博士。
いや、止めたのではなく体が勝手に止まったのだ。
身動きができず困惑する彼の耳に乾いた発砲音が響く。同時に胸の辺りが急に熱くなった。

「ガッ!アァ…」

ようやく動けるようになったのも束の間、地面に崩れ落ちてしまう。
焼けるような胸の痛みに悶えながら自分の死が近づいているのを本能的に感じる。

178 : ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 04:01:12.53 ID:jtg4t+mQ
(ワシは、いったい、なんの為に……)

変な宇宙人に改造され、キチガイヒーローに見捨てられ、生き返ったと思えば直ぐに殺される。
いくら何でもこの仕打ちはあんまりではないか。いったい自分は何の為に生きてきたのか。
己の不幸を嘆くもどうやら不幸はまだ続くらしい。
背中にポンッと何かが当たる感触がした。残念ながらそれが何かを考える暇は無かった。
なぜなら彼の上半身はかつて人間爆弾となった時のように吹き飛んでしまったのだから

【ボルガ博士@チャージマン研! 死亡確認】

179 : ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 04:02:15.91 ID:jtg4t+mQ
目覚めよ。実験体C.C.-102





全てが偽りだった。
ルルーシュの双子の弟にしてエデンバイタル教団の異端審問官ロロ・ヴィ・ブリタニア。
そんなものは最初から存在しなかった。
あったのは偽の記憶を植えつけられた哀れな皇帝のお人形。
己が抱く憎悪も、悲しみも、野望も全てが他者の手で造られたもの。

「ふざけるな」

憎い。
何もかもが憎い。目に見える全てが忌々しい。
俺はロロ・ヴィ・ブリタニア。魔王となるべくして生まれた男だ。
魔王ゼロ、自分の正体を知りつつも陰で嘲笑っていたアーニャ、ユーフェミアの騎士である枢木スザク、その他有象無象の参加者どもとあのロン毛男。
その全てを殺し力を奪い取る。それが済んだら皇帝もナナリーもアリスも教団の連中も皆殺しだ。

「まずはゼロ、貴様の力を頂くぞ」

足元に倒れている老人。彼を殺す際「ジ・アイス」のギアスで動きを止めた。
しかしどういうわけか止めている間疲労が身体に蓄積していた。ロン毛が何か細工をしたのだろうか。
いずれにせよ自分の能力だけでは限界がある。(認めたくはないが)
まずはゼロを殺し魔王の力を手に入れる。その過程で参加者から武器を奪い戦力を整える。
自分の支給品は銃と触れた物を爆発させるステッキ、そしてビデオカメラの三つ。カメラはともかく銃とステッキは当たりだ。
不老不死であるゼロの力が手に入ればこの首輪もどうにかできるだろう。
そしてアーニャ。あの小娘はただでは殺さん。時間をかけて嬲り殺しにしてやらねば気が済まない。

「待っていろ、貴様らの全てを奪い取ってやる」

世界の全てに憎悪を抱き哀れな人形は歩き出す。今しがた殺した老人のことなど一切気に留めてはいなかった。


【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ダッチのリボルバー(5/6、予備弾×24)@BLACK LAGOON、エクスプロド・Mのステッキ@魔法少女オブ・ジ・エンド
[道具]:共通支給品一式×2、ビデオカメラ@真夏の夜の淫夢、不明支給品1〜3(ボルガ博士)
[思考]
基本:魔王となり全てを殺す
1:ゼロを殺し力を手に入れる
2:参加者を殺し武器を奪う
3:アーニャは嬲り殺しにしてやらねば気が済まん
4:ギアスの不調をどうにかしたい
[備考]
※参戦時期は自身の出生の真実を知った直後
※ジ・アイス使用時の疲労増加
※ヴィンセント召喚可能時間10分。最召喚には3時間のインターバル必要

180 :こんなもののために生まれたんじゃない ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 04:06:21.35 ID:jtg4t+mQ
私たちは永遠なのさ
そう、永遠なのよ





ロロが去り、上半身が吹き飛んだボルガ博士の死体が無残に投げ捨てられているだけの公園。
そこへ一人の少女が訪れた。彼女は血に沈むボルガ博士の下半身を見つけると、恐れることなく近づいた。

「あら、災難だったわね」

ニッコリと微笑みながら告げる銀髪の少女。
彼女の名はグレーテル。
かつて双子の兄と共にとある港湾都市で虐殺騒ぎを起こした危険極まる殺し屋だ。
彼女にとってはこの殺し合いは何時もと同じ遊びでしかなく、博士の死体も見慣れた所か見飽きたものだ。
これよりもっと酷いモノは幾つも見てきたし、自分達で作ったりもした。

「それにしても早速楽しんでる人が居るのね。私も早く混ざりたいわ」

この下半身のみの死体を生んだ加害者へ、そしてまだ見ぬ他の参加者との遊びへと想いを馳せるグレーテル。
両手に持った銃を意識しながら恍惚と笑うその顔はまるで天使のようだった。


【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:織田信長のショットガン(8/8、予備弾×80)@戦国BASARA
[道具]:共通支給品一式、不明支給品×1(武器ではない)
[思考]
基本:何時もどおりに遊ぶ
1:兄さまを探し一緒に遊ぶ
[備考]
※参戦時期は死亡以前のどこか

181 : ◆84AHk0CknU :2015/07/21(火) 04:08:28.43 ID:jtg4t+mQ
投下終了です

182 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/26(日) 23:03:56.34 ID:n20FFSz0
投下乙です

復活したのに大した活躍も無く退場したボルガ博士に(涙が)出、出ますよ…
自分も投下します

183 :欠落オートメーション ◆ymCx/I3enU :2015/07/26(日) 23:04:34.68 ID:n20FFSz0
6話 欠落オートメーション

森の中にひっそりと佇む孤児院。その二階寝室にて、黒と赤の人狼型魔獣、黒牙はゲームをスタートさせる。

「弓那を捜さなきゃ(使命感)」

そして自身のマスター兼姉的存在兼ご主人様である人間の少女、大木弓那の捜索を最優先事項に定めた。
その次に、殺し合いに乗っていない参加者の捜索である。

「つっても弓那どこに居るんだろう」

地図を広げる黒牙。ゲームの会場は中々広い。
広大な会場の中、どこに転移させられたかも見当付かない弓那を捜し出すのは大変だ。
いつも使っているテレパシー能力なら、場所の特定も容易になるであろうが、このゲームが始まってからと言う物、
他の幾つかの特殊能力同様に使えなくなってしまっていた。

「自力で捜すしか無いな。しかしだ……何だ、オレの支給品、これ」

黒牙は自分の支給品に首を傾げた。
古びたビデオテープが五個。全てテープに白いカビが生えてしまっている。
ラベルの類は貼られておらず、何か録画されているのか、未使用なのかは分からなかったが、
何にせよビデオデッキに突っ込むのは憚られる代物。
いやそれよりも何よりも、殺し合いの支給品としてどうしてこんなゴミみたいな物が渡されたのか。

「こんなんじゃ武器になんないよ〜……武器の調達も急務だな」

デイパックの中にビデオテープと地図を押し込み、黒牙は孤児院内の探索を始める。

◆◆◆

道具屋兼薬屋を経営する白猫獣人の男、イライアス・ウィズダムは孤児院一階の集会室にて溜息をついた。
殺し合いに巻き込まれどうするべきか思案していた。

「どうするも、こうするも無いか……」

行動指針はすぐに決定した。
自分の支給品である薪割り用の斧を右手に殺し合いに乗る事を決意する。
このゲームには彼の経営する店の常連客も一人居たが、それに構うつもりは無いようだった。

「!」

物音が聞こえハッとするイライアス。
階段を下りてくる音。この孤児院には自分以外にも参加者が居たらしい。
階段下に隠れて足音の主が現れるのを待ち構える。現れた所を一気に襲うつもりだった。
果たして姿を現したのは、黒と赤の人狼。
イライアスはその頭部目掛けて、一気に斧を振り下ろした。

パシッ

だが、その斧はあっさり人狼の右手によって受け止められてしまう。

「あ……」
「誰? いきなり何すんの」

人狼は無表情で、イライアスに向かって誰何する。
無表情ではあったが、いきなり襲い掛かってきたイライアスに対する怒りが滲んでいた。

184 :欠落オートメーション ◆ymCx/I3enU :2015/07/26(日) 23:05:07.07 ID:n20FFSz0
「聞いてんのかよ」
「うわ!?」

質問に答えず斧を人狼の手から奪い返そうとしていたイライアスに業を煮やしたのか、
斧を掴む右手を思い切り振って人狼はイライアスを床に倒す。
そしてその腹を、踏み潰さない程度にではあるが力を込めて踏み付けた。

「げぇっ!?」
「誰なのか何すんのかって聞いてんだよオレは」
「げほっ! げほっ! ま、待って……待って」

咳き込みながら訴えるイライアス。腹を踏まれた事による苦しみで質問に答える余裕が無い。
それを知ってか知らずか、人狼は尚もイライアスに名前を尋ねる。

「なーまーえーはー?」
「い、イライアス……」
「ふーん……何でオレを襲ったのかな?」
「あ……えーと」

何故と聞かれれば「殺し合いに乗っていたから」としか答えようが無い。
恐怖で錯乱していたなどと言う言い訳は通じないだろう。
自分の蒔いた種ではあるが「詰み」の状態と言っても過言では無かった。
答えに逡巡している内人狼が勝手に代弁してしまう。

「乗ってるんだろ? 殺し合いにさ。
怖くておかしくなってるってカンジでも無さそうだしさぁ」
「……っ」
「おい」
「……そう……です……で、でも、間違ってました! ごめんなさ、い、許して下さい……!」

白状した上で謝罪するイライアス。
正直に罪を認めてしまえばまだ見逃して貰える可能性が有ると踏んだのだ。
普通に考えて自分から襲ったにも関わらず、身勝手にも程の有る思考だがそのような結論に至ってしまう程今の彼には余裕が無かった。
先述したように「自分の蒔いた種」だったが。

「何でも、何でもしますから、命だけは」
「ん? 今何でもするって言ったよね?」

そして余裕の無い心はイライアスに余計な一言を言わせてしまう。

「え? あ、ハイ」
「……じゃあオマエの持ってる斧、チョーダイ」
「えっ、それは」

イライアスの持つ斧を要求してきた人狼。
自分の現時点での唯一の武装を欲しいと言う申し出にイライアスは困惑する。
それを察したのか、人狼がイライアスを踏み付ける足に力を込めた。

「ぎゃああ!?」
「何でもするって言ったのにしないってのはおかしいだろそれよぉ」
「差し上げます! 差し上げますぅ!!」

泣きながらイライアスは要求を呑んだ。

185 :欠落オートメーション ◆ymCx/I3enU :2015/07/26(日) 23:05:35.62 ID:n20FFSz0
「こ、これで、見逃して貰えるんですよね?」
「……」

無言で、人狼はイライアスの腹から足をどける。
息苦しさから解放され安堵するイライアス。

しかし、どう言う訳か、人狼はイライアスの首に腕を組み付かせてきた。
直後、ボキッ、と言う鈍い音が響く。
イライアスの首の骨が粉砕された音。

(え――――なん――――で――――)

イライアスは自分が「殺害」された事に、意識が消えるその瞬間まで最後まで疑問を抱き続けていた。

彼は先程の人狼――黒牙が出した要求を飲めば助命してくれると思っていたが、それはあくまで、
イライアスの勝手な思い込みによる物だった。
黒牙自身は「斧をくれれば助けてやる」とは一言も言っていなかった。

◆◆◆

「何が『助けてくれるんですよね?』だよ、ばーか。
オレがいつ、そんな事言ったんだよ。勘違いしてんじゃねーよ」

口と鼻から血の泡を流し、首が有り得ない方向に曲がり、
筋肉が弛緩して失禁をしている無残な死体となったイライアスに向かって黒牙は罵倒を吐きかける。
彼にとってみれば、自分を襲った時点で排除の対象であり助ける気など毛頭無かったのに勝手に勘違いをされて不服であった。
黒牙は殺し合いに乗る気こそ無かったものの、襲いかかってくる者、危険人物と判断した者は容赦無く排除するつもりで居た。
多少は吟味もするが、基本的にその方針で行くつもりである。

「斧貰うよ」

イライアスの斧を入手し、本格的にゴミとしか思えないビデオテープ達を捨てようとして、黒牙は思い止まる。

「うーん、どうしようかなこれ……」

特に根拠は無いのだがビデオテープはまだ残しておいた方が良い気がした。
ビデオデッキの被害を度外視すれば視聴出来なくは無いだろう。

「残そう」

結局、ビデオテープはまだ持っている事にした。
但し、まず優先すべきは弓那や殺し合いに乗っていない者の捜索。
視聴を試すのは後回し――――黒牙は一先ずそう結論付けた。


【イライアス・ウィズダム  死亡】
【残り50人】

186 :欠落オートメーション ◆ymCx/I3enU :2015/07/26(日) 23:06:19.61 ID:n20FFSz0
【明朝/B-3森の中の孤児院】
【黒牙】
状態:健康
装備:薪割り斧
持物:基本支給品一式、古びたビデオテープ(5)
現状:殺し合いには乗らないが襲い掛かってきた者や危険と判断した者は排除する。
弓那や殺し合いに乗っていない者の捜索。ビデオテープの内容を確認したい
備考:特に無し


----
《キャラ紹介》
【黒牙】
読み:こくが
年齢:外見及び精神年齢20代
性別:♂
種族:魔獣
特徴:人狼型の魔獣。赤と黒の毛皮で獣足のワーウルフの外見。四足形態や普通の獣人形態にもなれる。半ズボン着用
職業:使い魔
備考:ひょんな事から人間の女子高生、大木弓那の使い魔となる。
基本的に温厚かつやや天然であるが、敵と判断した者には残酷かつ冷徹な面を見せる。
魔獣だけあり様々な特殊能力(弓那とのテレパシー等)が使えるが本ロワでは封印或いは弱体化されている物が多い。
元々の身体能力、戦闘力が高い為素手でも戦える、が、身体が血で汚れる為武器を使い方が好きらしい。
弓那と肉体関係を持っている。擬似体液の為、避妊の必要は無いとか

【イライアス・ウィズダム】
年齢:25
性別:男
種族:猫獣人
特徴:白い毛皮の猫獣人。中肉中背。着古したジャケットを羽織る形の普段着姿
職業:道具屋兼薬屋
備考:ファンタジー風世界において道具屋兼薬屋「ウィズダム商店」を経営している青年。
表向きは回復系や補助系等普通の店だが、裏では強力な催淫薬や増精薬等を処方しておりその手の常連の方が多い。
性格は温和ではあるが自分の事を最優先させる。他人を心からは信用しない。だが窮地に陥ると相手に媚びる傾向が有る。
本ロワの参加者の一人、シャーガは彼の店の常連


《支給品紹介》
【古びたビデオテープ】
支給者:黒牙
分類:その他
説明:かなり経年感の有るビデオテープ。テープには白いカビが生えており視聴出来るかどうか怪しい。
ラベルも無く、何か録画されているのかどうかも分からない。五本有る。

【薪割り斧】
支給者:イライアス・ウィズダム
分類:鈍器
説明:薪を割るのに使う中型の斧。恐らく首を飛ばすのには使えない。
一応刃は有るが切る事に特化してはいないので鈍器とする。
----

187 : ◆ymCx/I3enU :2015/07/26(日) 23:06:55.37 ID:n20FFSz0
投下終了です。

188 : ◆84AHk0CknU :2015/07/27(月) 02:25:16.40 ID:tSY7MZ3G
投下乙です
道具屋が魔獣に挑むとか無謀すぎるんだよなぁ…(呆れ)
テープの中身は重要なものなのかどうか気になる

では自分も投下します

189 :その 名 は ひで ◆84AHk0CknU :2015/07/27(月) 02:29:22.95 ID:tSY7MZ3G
「うぅん…、あぁ……」

豪華な装飾が施されたベッドでクッソデカい体操着の少年(と言えるか微妙だが)――ひでがが目を覚ます。
目を擦りながら周囲を見回すとそこが自分の知っている場所では無いことにひでは気付く。

「あれぇ?ここどこだぁ?」

首を捻り現状に疑問の声を漏らす。
確か自分は宿題をやるために少々急ぎ足で帰宅していた筈だ。
それが何故こんな知らない部屋のベッドで眠っていたのだろうか。
ふと思い出す。そういえばガレージのある家の前を通りかかった時、誰かに襲われたような気がした。
ひょっとしてその何者かに連れて来られたのだろうか。

「ま、いいや」

しかしホモガキ特有の楽観的思考であっさりと興味を失くす。
待っていればそのうち何とかなるだろうという、危機感の欠片も無い事を考えながらベッドから立ち上がる。
その時足に何かが当たる感触がしたので足元を見てみると、デイバッグが一つ落ちている。
なんとなしにそれを開けてみると派手な服と仮面、それに大き目の銃とその予備マガジンが出てきた。

「ワーオ!」

妙にテンションの高い声を出すクソデカ小学生。
他にも地図やら名簿やらもバッグの中にあったがそれらには全く興味を示さず、銃と衣装を見つめている。
その目は親にプレゼントを貰った無垢なホモガキのように輝いている。
ひょっとしてこれは自分へのサプライズなのかもしれないとひでは思い始めた。
普段から良い子にしている自分へのプレゼントを誰か優しい人が用意してくれた、きっとそうだ。

「僕ってとってもいいこだからな〜。ヤダハズカシイデスー」

冗談はよしてくれ(タメ口)
完全にサプライズだと思い込んだひでは早速衣装を着てみる。
体操着を脱ぎ、体格の良い裸体の上から衣装を身に付け仮面を被る。
それから銃を持ち鏡の前でポーズを取る。気分はスーパーヒーローだ。

ドンッ!

その時、ひでの後ろにあるドアが乱暴に開いた。
音に気付きひでが振り返ると、そこには前髪をアフロにした男が銃を向けていた。

190 :その 名 は ひで ◆84AHk0CknU :2015/07/27(月) 02:30:25.51 ID:tSY7MZ3G



男――扇要は憎悪の感情に支配されていた。
最初は突然の殺し合いに困惑していたが、名簿を確認しある名を発見した時、その顔は怒りに歪んだ。
ゼロ。自分たち『黒の騎士団』のリーダーであり、反ブリタニアを掲げる英雄。
だがその正体はギアスという悪魔の力で自分達を操ってきた悪魔、ブリタニア皇族のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。

「ゼロっ!お前だけはっ!許さない!!」

ブラックリベリオンの時に戦死した同胞や危機に陥った千草の事を考えると更にゼロへの怒りが沸く。
四番倉庫での粛清からは逃げられたが、今度はそうはいかない。
必ずこの手で引導を渡してやる。
幸いに自分の支給品にはサングラスが入ってあった。これならばゼロのギアスも防ぐことができる
そう決意し歩き出すこと数十分。ガレージのある家から物音が聞こえた。
支給された銃を構えながら慎重に家の中に入っていく。
ゆっくりと中に入ると奥の方から声が聞こえる。物音を立てないように近づきそっと様子を窺う。
だが部屋のなかに居た人物を目にした瞬間、扉を蹴破り銃を突きつける。

「覚悟しろ!ゼロォォォォ!!」
「ヒィエ!?」


【ひで@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:ゼロの衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ、グレーテルのBAR(20/20)@BLACK LAGOON
[道具]:共通支給品一式、予備マガジン×5
[思考]
基本:?????
0:何だこのオッサン!?(驚愕)
[備考]
※虐待おじさんに拉致された所からの参戦です
※ここが殺し合いの場であることを全く理解していません

【扇要@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康、激しい怒り
[装備]:デザートイーグル(7/7)@現実、KBTITのサングラス@真夏の夜の淫夢
[道具]:共通支給品一式、予備マガジン×7
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:ゼロを殺す
1:誰か殺し合いに反対する者を探す
2:枢木スザクを警戒
[備考]
※R2第19話終了後からの参戦
※名簿のゼロを「反逆」世界のゼロと思っています
※ひでをゼロ(ルルーシュ)と勘違いしています

191 : ◆84AHk0CknU :2015/07/27(月) 02:32:41.06 ID:tSY7MZ3G
投下終了です
もっと文章上手くなりて〜な〜俺もな〜

192 : ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 01:54:24.05 ID:b/uh6Pr1
投下します

193 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 01:56:13.50 ID:b/uh6Pr1
暗い夜道に少女は一人立っていた。

確か自分は自宅で姉妹たちと共に夕飯を取っていたはず。なのにどうしてこんな所に居るのだろうか。

突然の異常事態に困惑しつつ、ふと先程の光景が頭をよぎる。

見知らぬ部屋に自分と大勢の見知らぬ人々。よく見れば大切な家族と友人も居るではないか。

知った顔を見つけ安心しそちらに駆け寄ろうとした時、妙な雰囲気を纏った男が現れ殺し合いを命じてきた。

この人は何を言ってるんだろう、と訝しげに思っていたら突如ボンッ!という音と共に前に居た若い男の首が吹き飛んだ。

呆然としながら体を離れゴロゴロと転がる“ソレ”と目が合った時、嫌な汗が流れる。

ロン毛の男が何かを言っていたが、全く頭には入らず、そうして気が付けばここに放り出されていた。

顔を青くしながら右手で首をなぞると、冷たい金属の感触がした。

途端に恐怖で足がガクガクと震えだす。


怖い、いやだ、死にたくない、殺し合いなんてしたくない、家族や友達に会いたい。


ふと自分の居る場所が道路のど真ん中だと思い出す。

こんな所に突っ立っていては目立つ。それこそ殺し合いを平然と行うような危険人物にでも見られたら…

慌てて周囲を見渡すと一軒のガソリンスタンドが見つかった。

震える足を無理やり引き摺ってそこに辿り着くと、急いで中に入る。

それを見ている者が居るとは気付かずに…

194 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 01:57:37.72 ID:b/uh6Pr1



街頭のみが照らす薄暗い道路をゼロはバイクで走り抜ける。
目指す場所は地図中央にある市街地。
マントをなびかせバイクを操る姿はまるでコミックブックから飛び出したヒーローのようだ。
支給品の一つであるこのバイク、ハードボイルダーという名で紫と緑の奇妙な配色がなされている。
園咲邸を出た時玄関前に置いてあるのを発見し、デイバッグに入っていた鍵を試しに挿したところエンジンが掛かった。

(中々便利なものだな)

ゼロ=ルルーシュには乗馬はまだしもバイクの操縦をした事は一度も無い。
学生時代のバイクの運転はリヴァルの役目で、ルルーシュはサイドカーでのんびりしているのが常だった。
そのため折角の移動手段も宝の持ち腐れだと思われるかもしれないが、全く問題ない。
ゼロの超人的な身体能力ならば多少強引にだがハードボイルダーを乗りこなす事も十分可能なのだ。

(このまま一気に中心部まで…ん?)

丁度ガソリンスタンドの近くに差し掛かった時、魔王の視覚が微かな人影を捉える。
影が見えたのは一瞬だが見間違えなどではない。確かに人影が待合室の奥へと移動しているのが見えた。

「寄ってみるか」

瞬時にそう判断すると進む方向を変える。
ガソリンスタンドに入ると給油機の所でハードボイルダーを止める。
相手がゲームに乗っていないならばそれで良し。乗っているのならば排除する。
どちらにせよ他の参加者との情報交換は必須だ。積極的に接触を図るべきだろう。
そう考えつつゼロは待合室への扉を開けた。


…………


中に入るとゼロは室内をぐるりと見回す。
待合室はそこそこ広く内装も小奇麗なもので売店もある。
奥には左右に扉が一つずつあり、天井から垂れ下がってるプレートを見ると右は男女共同トイレで左が事務室らしい。
待合室は透明ガラスなので外から丸見えだ。幾ら何でも殺し合いの最中にそんな場所で呑気に居座る奴は居ないだろう。

(ふむ、ならばこっちだな)

左にある事務室のドアに手をかける。
トイレのような身動きの取り辛い狭い空間にわざわざ入りはしないだろう。
ゼロは事務室の扉を開けると、ゆっくりと足を踏み入れた。

ガタッ

事務室に入ると同時に小さな物音をゼロの鼓膜が捉えた。
音の発生源は左奥にあるデスクの下からのようだ。ゼロはそちらに目を向け声を掛ける。

195 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 02:03:25.42 ID:b/uh6Pr1
「先に言っておくが私に殺し合いをする気は無い。無論、襲われれば対処するがな」

言いながら一歩近づくと息を呑むのが聞こえた。

「そちらがゲームに反対する者ならば話がしたい。出てきてはくれないか?」

エデンバイタルの魔王たる自分がこんな穏便な方法を取るとはな、と我ながらどこか可笑しく思った。
だがこの場で余計な荒事を起こすのは得策ではないと理解しているし、不必要ないざこざは避けるに限る。

「もしまだ信用できないのなら私のデイバッグをそちらに投げよう。それで戦意が無いことの証明にならないか?」

デイバッグをデスクの方へと放り投げるとそのまま黙って相手の出方を見る。
これでも信用できないなら仕方ないが当初の予定通り市街地に向かう。時間を無駄にはできない
もし向こうがバッグを奪い襲ってきても余裕で撃退できる自身がゼロにはあった。

「…本当に、殺し合いには乗っていないんですか?」

向こうからの問いかけ、声からすると少女のようだ。

「ああそうだ。」

デスクの下から感じる息遣いなどから少女はまだ迷っているのだろうことが理解できた。
だが意を決したように息を吐く音が聞こえると、デスクの下からゆっくりと立ち上がる姿が見えた。

白のミニドレスに白薔薇の髪飾り、更に右目にも白薔薇の眼帯を着けた白い肌の美少女が姿を見せる。
どことなく儚げな雰囲気のある白い少女。そんな第一印象をゼロは抱いた。
少女は不安気な表情をしていたが、こちらの姿を見ると一変してキョトンとした顔をする。

「…コスプレ、ですか……?」
「違う、間違っているぞ」

思わず素で答えてしまった。






「私はゼロ。さっきも言ったがこのくだらんゲームには乗っていない」
「えっと…雪華綺晶と言います。私も…殺し合いなんてする気はない、です」

椅子に腰掛け向き合いながら自己紹介をするゼロと少女―――雪華綺晶。
雪華綺晶としては黒い装甲服とボディスーツ、マントに仮面というゼロの格好が気になったのだが、当の本人が「気にするな」の一言で済ましたので、余り深く考えないことにした。
もっともゼロからすれば雪華綺晶の格好も少々変わっているように思えたが。
その後は互いの知り合いの話となった。
雪華綺晶によると、姉の水銀燈と上の学年でで幼い頃からの友だちであるやる夫。
この2名は信頼できるし、殺し合いなどには絶対に乗らないとのこと。
逆に伊藤誠は面識は無いが女癖が酷いなど悪い噂が絶えない男子生徒だという。
最初の部屋に居たロン毛男と殺された青年については知らないらしい。
ゼロの方はスザクと扇が信用できる人物だと伝えたが、ロロに関しては今のところ不確定要素が多いので告げずに居た。

「ふむ…」

情報を交換し終えるとゼロは腕を組み暫し思案する。

196 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 02:06:06.75 ID:b/uh6Pr1
(思った以上に面倒な事態となっているようだな)

自己紹介の際に聞いたが雪華綺晶は日本の学生だと言う。
それ自体は別段気にすることではない。問題は彼女が自分を全く知らない素振りであったことである。
ゼロはかつて反ブリタニア組織、黒の騎士団を率いて“弱者を虐げる暴力”への反逆を行っていた。
日本解放戦線によるホテルジャックでの人質救出を皮切りに、黒の騎士団は次々と法では裁けない悪を断罪してきた。
当然その出来事は連日のようにニュースで報道され、国を問わず黒の騎士団とゼロの名を知らない者は居ない程の知名度となった。
にも関わらずこの白い少女はゼロを、変わった服装の男の人くらいにしか認識していない。
余程の田舎出身の人間かとも思ったが、話によると都会の学生だと分かったのでそれも違うようだ。

(加えてブリタニアも知らない。いや、そもそも彼女の認識ではそんな国自体存在しない、か)

世界の三分の一を支配下に置く超大国、それが神聖ブリタニア帝国。
かつての極東事変により日本もその配下に治められ、エリア11というブリタニアの属領としての名を与えられるなど屈辱的な扱いを長年に渡り受けてきた。
現在では新皇帝ユーフェミアにより各エリアは解放されたが、それでも日本人との間には未だ溝が残っているだろう。
先程試しに自分はブリタニア出身だと言ってみたが、雪華綺晶からは外国の方でしょうかといった反応しかなかった。
ゼロという存在以上に知らないなど有り得ない事なのだが、彼女が嘘を言っているとは思えなかったし、嘘を付く理由も無い。
これは一体どういうことなのか。ゼロは一つの答えを導き出す。

(パラレルワールド…)

天獄門(ヘブンズドア)に触れたナナリーが見たという無限の可能性宇宙。
そして自身も魔王を受け継いだ時よりエデンバイタルを通して知った異なる世界。
そう考えれば雪華綺晶とゼロ、お互いの常識がまるで違うのもそれぞれが別の世界の住人だからだろう。
ここに来て最初に名簿を見た時のロロに対しての疑問も、彼が自分とは違う世界――或いは時間――から連れて来られたと考えれば納得がいく。

そして改めてこの悪趣味なゲームを開催したロン毛男に疑問を抱く。
50人以上の人間を突如まとめて拉致している。その中にはゼロのように特殊な力を持ったものが居るであろうにも関わらずだ。
さらに並行世界や時間にまで干渉する能力又は技術を手にしているであろうあのロン毛。
ギアスユーザーか、別世界の異能者か、はたまた神や悪魔の類か。
その正体は不明だが自然と警戒心が上がっていく。

「あの、どうかしましたか…?」

と、声のした方へ視線をやると雪華綺晶が心配そうにゼロを見ていた。
どうやらこちらが一言呟いて急に黙り込んだので不安になったらしい。
何でもない大丈夫だ、と言い雪華綺晶の方へ視線を移す。
答えが見つからないのならば今あの男の事をあれこれ考えても無駄と思い、思考を打ち切る。

「そういえば、支給品は何が渡されているかはもう確認したか?」
「え、あっ」

慌ててバッグの中に手を入れる雪華綺晶。

「ご、ごめんなさい。私、まだ…」
「別に謝る必要は無い。今落ち着いて確認すればいいことだ」

怯えて隠れていたことや話の内容からしても雪華綺晶が争いとは無縁の一般人であることはすでに分かっている。
突然巻き込まれた殺し合いという異常な状況で、冷静に行動しろと言うのは酷な話だろう。
そうして雪華綺晶がバッグから取り出した物は二つ。
忍者が使うような10本セットのクナイと裏にダイヤルとスピーカーが付いた蝶ネクタイ。
付属していた説明書を読むと後者は蝶ネクタイ型変声機という名で、声色を自在に模倣できるアイテムらしい。
中々面白い代物だが殺し合いの場では特に必要は無い。

「雪華綺晶。このクナイを私の支給された銃と交換しないか?」
「え…?」
「なに、そう深い意味は無い。ただクナイよりは銃の方が扱い易いと思ってな」

197 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 02:11:30.93 ID:b/uh6Pr1
当然ながら雪華綺晶は銃など使ったことは一度も無い。
ただそれでもクナイよりは強力な武器だろうことは確かだ。

「でも、いいんですか?」
「構わん。私もあまり銃は得意ではないのでな」

ゼロの戦闘スタイルは己の肉体とマント、ギアスを武器にした肉弾戦である。
何度か拳銃を使ったこともあるが、無ければ無いで困るものでもない。
ならば自衛の手段として一般人である雪華綺晶に譲っても特に問題はないだろう。
それにゼロの腕力ならば投擲したクナイで銃弾並の威力を出すことができる。
雪華綺晶は暫し逡巡していたが、やがて差し出された銃と弾薬をありがとうございますと礼を言い受け取るとクナイを手渡す。
互いの情報を粗方整理し終えると、突然ゼロがスッと立ち上がる。

「さて。では雪華綺晶」
「…?何でしょうか?」

何だろうかと思い自分も立ち上がろうと腰を浮かばせようとした時


「下がっていろ」


バァン!!


事務室の扉が轟音と共に吹き飛ばされた。





暗い夜道に男は一人立っていた。

とある大学で空手部の師範代を勤めている自分は、今日も部員に指導をする為部室に向かっていた。

それが何時の間にかおかしな所に居て、これまたおかしな男に殺し合いをしろと言われた。

男のふざけた言動に苛立ち一発殴ってやろうとした瞬間、知り合いの首が吹っ飛んだ。

その知人は教え子の恋人だった男だ。彼とは数回話した程度の間柄だが、こんな訳の分からない場で死んでいいような奴ではなかった。

そしてそれはここに連れて来られた三人の教え子達も同様だ。お調子者だったり、不真面目な所もあるが皆良いやつらばかりだ。

こんなふざけた事をしでかしたあのロン毛に怒りが湧くと同時に、どうすれば教え子たちを救えるか考えた。

己が直々に鍛えたのだ。そう簡単にくたばりはしないだろうが、集められた参加者の中には明らかに堅気では無い輩も混じっていた。

そんな連中に襲われればいくらあいつらでも危険だ。


どうすればいい?いったいどうすれば……

198 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 02:18:41.06 ID:b/uh6Pr1
そのままじっと考え込み数分が経過した頃、男は覚悟を決めた。

教え子たちのために己の拳を血で染める覚悟を。

今の自分を彼等が見たら大いに失望するだろう。だが構わない。大切なものを守るためになら鬼にも悪魔にもなってやる。

支給品の手甲を装備しどこへ行こうかと思案した時、バイクのエンジン音が聞こえた。

音のした方へ近づくと一軒のガソリンスタンドが在り、バイクが止めてあるのを発見した。

修羅と化した男――AKYSは拳を強く握り締めると、参加者を殺すべく店内へ入っていった…





一瞬何が起こったのか雪華綺晶は理解できなかった。
ゼロが下がれと言ったのとほぼ同時に事務室のドアが破壊され、胴着を着た長身の男が飛び込んで来た。
ハッとゼロの方を見ると、彼は胴着男の放ったであろう右拳を掌で受け止めていた。
ドアを吹き飛ばす胴着男も恐ろしいが、それを平然とガードするゼロも只者ではない。
両者そのまま睨み合っているが、ゼロが沈黙を破る。

「聞くまでもないだろうが、どうやらゲームに乗ったようだな」
「…ああ。恨みは無いがお前らには死んでもらうぜ」

言い終わるよりも早く胴着男ことAKYSが左手でゼロを殴りつける。
しかし当たる寸前、ゼロのマントが生き物のように動き、AKYSの腕を絡み取る。
抜け出そうとするAKYSを待合室の方へと放り投げるが、下に叩きつけられる直前右手で床を殴りつけ落下を防ぐ。

「あっ、あの」
「下がっていろと言っただろう。巻き込まれるぞ」

呼び止める雪華綺晶へ再度警告をしゼロはAKYSを追って事務室を飛び出す。
相手は既に構え直しており、こちらを見つけるや否や怒声と共に正拳突きを繰り出してくる。
ゼロは素早くそれを避け、蹴りを叩き込むが手甲で防がれる。

「チッ…。無駄な抵抗しやがって」
「それはこちらの台詞だ」

今度はAKYSがお返しとばかりに殴りかかるが、ゼロは自分の拳をぶつけて相殺。
互いに己の拳をぶつけ合い、ラッシュの応酬が繰り広げられる

「オルルァ!オルルァ!」
「フンッ…!」

お互い徐々に殴る速度を上げていき、その余波で待合室の自販機や椅子が破壊されていく。
互いに一歩も引かず拳を打ち付けあう。
しかしゼロの拳がAKYSの頬を掠めると、相手の動きが一瞬鈍る。
その隙を見逃さず、ゼロが渾身の一撃を叩き込む

199 :BLACK ACTION ◆84AHk0CknU :2015/07/31(金) 02:23:08.09 ID:b/uh6Pr1
「ぐっ、おォォ!!」

咄嗟に両腕でガードするAKYSだが、ガラスをぶち破り外へと吹き飛ばされる。
追い討ちを掛けるべく自身も外に出ようとするゼロだが、両手に鈍い痛みが走っているのに気付く。
AKYSと激しく拳をぶつけあったせいだろうか。
4メートルを超える起動兵器に蹴り飛ばされても無傷だった己が、これしきで傷を負ったという事実に首を傾げる。
何か体に細工をされたか、胴着の男が思った以上の実力者だったか、或いはその両方か。
だがこの程度の傷どうということはない。
両腕を軽く振り痛みを振り払うと、外へ出て敵を追う。
外へ出ると血が点々と落ちていた。あの男のものだろう。
血はガソリンスタンドを出て左側に続いている。その先を見るとAKYSがふらつきながらもゼロを睨み付けてくる。

「それ程の力を持ちながら、あんなふざけた男の言いなりか」
「……」

呆れたようなゼロの言葉に視線を更に鋭くするAKYS。
ゼロが一気に片をつけようと近付くとAKYSも応戦するべく走り寄り殴りかかる。
拳と手甲が音を立ててぶつかり合い、衝撃でアスファルトが砕け散る最中

『ゼロさん上です!逃げて!!』

雪華綺晶の声が響き、ゼロとAKYSは咄嗟に言われた通り上を見た。

「あれは…」

そこには見た事の無い怪物が宙に浮き、こちらに黒い光弾を放とうとしていた。





雪華綺晶はゼロに言われた通り事務室に隠れながら、間近で起こる戦闘を固唾を呑んで見守っていた。
ゼロも、襲ってきた胴着の男もまるで漫画のキャラクターのようにデタラメな動きで戦っている。
その現実離れした光景に夢でも見ているのだろうかと混乱するが、頭を振って意識を現実に戻す。
ふいに姉と友だちの事が頭に浮かんだ。
自分はゼロという殺し合いに反対する者と出会えた。だが彼らはどうだ?
水銀燈は運動神経抜群だがゼロ達のような動きは当然できないし、やる夫に至っては体育の成績は常に1という有様。
もしも二人が胴着男のような危険人物に襲われていたら?いや、ひょっとしたらもう既に…
脳裏に浮かんだ最悪の光景を必死に振り払おうとするも、一度想像してしまったらそう簡単には消えない。

(姉さん…やる夫さん…)

震えだす自分の体を両腕でキツく押さえつけ俯く。

ガッシャァァン!!

ガラスが割れる音がしたのでハッと顔を上げると、胴着男が外に殴り飛ばされたのが見えた。
男を追ってゼロが外へと飛び出したのを見て、自分も様子を見に行こうかと考えた時。

“ソレ”が目に入った

「なに、あれ…?」

赤い女性のようなモノが宙に浮いている。
上半身はドレスを着ているようにも見えるが、下半身は芋虫のような形で一番下から目玉が覗いている。
顔は下半分しかなく、上には触手のようなものが生えていた。
超人的な力を持つとはいえ見た目は人のそれと変わらないAKYSやゼロと違い、あちらは完全な怪物だ。
突如現れた異形に凍りつく雪華綺晶を尻目に、事は進んでいく。
怪物の両手に赤黒く輝く玉が現れる。そしてゼロ達に当てるべく狙いを定めていた。
ゼロも胴着男も、この怪物の出現にはまだ気付いていない。

200 :創る名無しに見る名無し:2015/08/01(土) 20:21:10.25 ID:ZXbVORLp
そろそろ続きいいんじゃね

201 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/01(土) 21:16:12.40 ID:dlg6OkVL
無視して投下しても良いそうなので投下します

202 :最悪過ぎる景色なら何も見えないでOK ◆ymCx/I3enU :2015/08/01(土) 21:17:57.53 ID:dlg6OkVL
7話 最悪過ぎる景色なら何も見えないでOK

ジェットコースター、メリーゴーラウンド、コーヒーカップ、ゴーカート等、様々な遊具が存在する遊園地。
もっとも、いずれも錆びて荒廃してしまっていて、遊ぶ事は出来なかった。
とうの昔に閉鎖された、廃墟の遊園地だ。
雑草が伸び放題になっている園内を一人の狐獣人の美少女が歩いていた。

「廃墟の遊園地ねー、寂しいものね」

狐の少女――修明院美宇、愛称「ミーウ」は、自分の支給品、自動拳銃グロック19を片手に誰も見当たらない遊園地内を散策する。
幼馴染であり、恋愛感情に似た物も抱いている伊藤椿と共に殺し合いに巻き込まれてしまったミーウの目指す所は、
まず椿を捜し出し合流する事、それと、この殺し合いからの脱出である。
殺し合うつもりこそ無かったが、やる気になっている者に襲われた時は容赦しないつもりだった。

「ん?」

メリーゴーラウンドの方に目をやったミーウは違和感を覚える。
馬型の座席の一つが動いているように見えた。

「誰か居るのか?」
「本物!?」

否、それは本物の馬、もといユニコーンの牡だった。
ユニコーンはメリーゴーラウンドから下りてくる。

「何……? まさか、やるつもり?」

警戒するミーウだったがユニコーンは否定する。

「待て待て、俺は殺し合う気は無い」
「本当? ……分かった」

ミーウは一先ず構えていた銃を下ろす。しかし引き続き用心はしていた。

「お前は女か?」
「見れば分かるでしょそんなの……」
「女装した男の可能性も微粒子レベルで存在するだろ?」
「いやいやいや」
「まぁ良いさ……男じゃないのなら悪いが用は無い。これで失礼するよ」
「え、どういう事?」

ユニコーンの発した意味深な台詞に思わず反応するミーウ。

「俺はな、男が、オスが好きなんだ。ゲイって奴だよ。
いつ死んでしまうか分からないから、死ぬ前に思い切り愉しんでおきたいんだよ」

同性愛者――ゲイであると言うユニコーン。
ユニコーンは処女にしか心を開かない、と言った話をミーウも聞いた事は有ったが、
そう言った御伽噺を根底から覆す目の前のユニコーンに少し唖然としていた。
とにかく、このユニコーンは殺し合いには乗っていないものの、生還は諦めていると言う事は良く分かった。

203 :最悪過ぎる景色なら何も見えないでOK ◆ymCx/I3enU :2015/08/01(土) 21:18:36.84 ID:dlg6OkVL
「だから女と一緒には行くつもりは無いんだ。分かってくれ」
「ああ、そう……そう言う事なら仕方無いわね……名前位は聞かせてくれる?」
「ユージーン」
「私は修明院美宇。ミーウって呼ばれてる」
「そうか……ミーウ、縁が有ったらまた会おうぜ」

そう言うとユージーンと名乗ったユニコーンはミーウの元を去って行った。

「ゲイのユニコーンなんて初めて見たわ……まあ、お好きにどうぞ」

ミーウもまたユージーンを特に追い掛けたりはしない。
追い掛けた所でどうにもならないだろうし、正直な所、生きる事を諦めている者を仲間にしてもメリットが薄い。

「私は私の目的を果たさないと」

椿を見付ける為、殺し合いから脱出する方法を見付ける為、ミーウは歩き出す。

◆◆◆

処女にしか心を開かないと言われているユニコーン種だが、やはり「例外」は生まれてくる。
ユージーンは正にそれで、彼は生まれながらにして同性にしか性的な興味を抱けない生粋のゲイであった。
周囲には気味悪がられ、虐めを受け、両親は何とか息子の性癖を矯正しようとしたが、無駄に終わる。
差別と無理解に耐えられなくなったユージーンは早い内に故郷を捨て独立。
それ以来、大好きな、大好きな、オスの世界を思う存分に堪能する生活を送ってきたのである。

「死ぬ前に男と、オスとヤらなきゃ、死んでも死に切れない……」

この殺し合い、自分はもう生きて帰る事は叶わないだろう。なら命有る限り自分の欲望のままに生きよう。
ユージーンは決心した。

「男は、オスはどこだ!」

鼻息を荒くしながらユージーンは同性の参加者を捜す。

204 :最悪過ぎる景色なら何も見えないでOK ◆ymCx/I3enU :2015/08/01(土) 21:19:29.21 ID:dlg6OkVL
【明朝/F-3廃遊園地】
【修明院美宇】
状態:健康
装備:グロック19(15/15)
持物:基本支給品一式、グロック19の弾倉(3)
現状:殺し合いには乗らない。椿及び殺し合いに乗っておらず役に立ちそうな参加者の捜索。殺し合いからの脱出方法を探す
備考:特に無し

【明朝/F-3廃遊園地】
【ユージーン】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:命果てるその時まで自分の欲望の為に行動する。男や♂を捜す。女は無視
備考:特に無し


----
《キャラ紹介》
【修明院美宇】
読み:しゅうみょういん みう
年齢:17
性別:女
種族:狐獣人
特徴:黄色い狐の獣人。スタイルは抜群。学校制服のブレザー着用
職業:高校生
備考:愛称「ミーウ」。「頭がバグっている」と言われる程羞恥心の無い変態。但し成績そのものは優秀な部類。
幼馴染の伊藤椿に恋愛感情にも似た物を抱いているが当の本人からは鬱陶しがられている。でも諦めない。
男性経験は有るが本人は女性の方が良いらしい。つまりレズ。早脱ぎが得意。
基本的に変態である事を除けば善人だが、時折妙にドライであったり、好戦的な一面を見せる。
過去に存在した「オリジナルキャラ・バトルロワイアル」の登場人物・ミーウがモデルのキャラクター

【ユージーン】
年齢:31
性別:♂
種族:ユニコーン
特徴:白い身体に赤いタテガミのユニコーン
職業:無職
備考:同性愛者のユニコーン。ユニコーンは処女にしか懐かないと言う定説を完全に覆している。女に全く興味が無い。
同種のみならず人間の男もイケる口。掘るのも掘られるのも好き。
女に対しては素っ気無い態度を取りがち


《支給品紹介》
【グロック19】
支給者:修明院美宇
分類:銃火器
説明:オーストリアのグロック社の自動拳銃、グロック17のコンパクトモデル。
手頃なサイズで扱いやすい。9mmパラべラム弾使用。
「オリジナルキャラ・バトルロワイアル」にて修明院美宇の元ネタのキャラであるミーウが使っていた拳銃でもある。
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205 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/01(土) 21:21:28.22 ID:dlg6OkVL
投下終了です

先に投下された◆84AHk0CknU氏の二話の内最初の話の簡単な感想を
二話目感想は避難所に書いてあります

>その 名 は ひで
BARエアガン持ってた事あるけどクソデカな上クソ重たかったんだよなぁ…
でもひでなら容易に扱えそう(小並)
おじさんは虐待した後からの参戦で、ひでは虐待される前からの参戦なのか

206 : ◆84AHk0CknU :2015/08/01(土) 21:27:56.34 ID:XyzVKjpx
>>199からの続き投下します)

「どうしよう…このままじゃゼロさんが…!」

今外へ飛び出しても間に合いそうに無い。大声で危険を知らせようにもこの戦闘音では聞こえるかどうか怪しい。
焦りが募る中ふと支給品の存在を思い出した。
バッグから蝶ネクタイを取り出すと、音量のダイヤルを最大まで上げる。
そして息をすぅと吸い込み叫んだ。

『ゼロさん上です!逃げて!!』





ゼロとAKYSが見上げる先に居る謎の赤い怪物。

「ウェイ!」

そいつはこちら目掛けて、奇妙な声を発しながら光弾を撃ってきた。
ゼロはすかさず、羽ばたく鳥のような紋章を右手に光らせ、それを光弾へと向ける。
すると光が当たった瞬間光弾は消失した。
傍に居たAKYSも攻撃を免れる形となったが、別に意図してやった訳ではない。偶然だ。
怪物が一瞬驚いたような仕草を見せるが、直ぐにまた連続して光弾を発射する。
しかしまたしても、ゼロの掌から発せられる光に当たると全て消え失せる。
埒が明かないと判断したのか、怪物は標的をガソリンスタンドの方へと変える。
ゼロもそれを察し己の能力を発動する。

「っ!?え、え?」
「話は後だ。行くぞ」

外に居た筈のゼロが突然目の前に現れたため、雪華綺晶目を白黒させる。

「エ゛エ゛ーイ!」

だが移動する暇は無い。掛け声と共に無数の光弾がこちらへ発射された。

ドッゴォォォン!!

発射された光弾は給油機やハードボイルダーに着弾、大爆発を起こす。

「きゃっ」
「チィッ!」

雪華綺晶とゼロの姿は爆風に包まれ、あっという間に見えなくなった。


…………


燃え盛るガソリンスタンドを暫し見つめていた怪物だったが、やがて視線をAKYSの方へ移す。
しかし、既にAKYSの姿はどこにも無い。
ドサクサに紛れて逃げたか。短時間でそこまで遠くに行けるとは思えないが、何か支給品を使ったのだろうか。
まぁいい、次に会ったら確実に息の根を止めてやる。
浮遊していた異形は道路へ静かに降り立つと変身を解く。

207 : ◆84AHk0CknU :2015/08/01(土) 21:31:13.04 ID:XyzVKjpx
「結構使えるな、これ」

その言葉と共に現れたのは青い服を着た茶髪の美少年。
彼の名は星君。
チャージマン研こと泉研の学校に転校してきたスポーツ万能の少年…というのは表向きの話で、その正体は地球侵略を目的とした宇宙人、ジュラル星人の一派である。
人気の無い場所に研を呼び出し抹殺しようと正体を明かした直後、この殺し合いに拉致された。
とりあえず現状把握に努めようと名簿を確認したところ、知っている名は宿敵の泉研ただ一人。
ジュラルの同胞が呼ばれていないのならば、優勝を目指すのに抵抗は無い。
それにあのロン毛はどんな願いも叶えてくれるらしい。正直半信半疑だがもし本当ならばその力で地球の完全征服も夢ではないかもしれない。

「早速二人殺せたし、幸先良いスタートだな」

星君に配られたタブーメモリという名の支給品。
これを使い変身したタブードーパントという異形の力は、ジュラル本来の姿の時よりも強力な力を持っていた
星君は知らない事だがタブーメモリはゴールドメモリと呼ばれる特別な代物であり、通常のメモリとは一線を画する力を秘めている。
想像以上のアタリ武器を手に入れられた事に星君はほくそ笑む。
とはいえいつまでもここでのんびりしているわけにもいかない。

「さぁ出発DA☆」

爆発に気付いた参加者が集まってくる可能性は十分にある。
やや駆け足気味で星君はその場から離れていった。


【星君@チャージマン研!】
[状態]:健康
[装備]:ガイアドライバー+タブーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:優勝する
1:この場から離れる
2:参加者を全て殺す
3:チャージマン研は優先的に殺す
4:胴着の男は次に会ったら確実に仕留める
[備考]
※参戦時期は研に正体を知られた後





「……そろそろいいか」

星君が去り、バチバチという燃え盛る音のみに支配されたガソリンスタンド付近。
蚊の鳴くような声がしたと同時にAKYSが姿を現す。
AKYSは逃げてはおらず、ずっと燃えるスタンドの付近にずっと居た。
手甲の他にもう一つバッグに入っていたもの。
とある世界の魔法少女が自分の体の大きさを変化させる際に用いたステッキ。
AKYSはあの怪物からは逃げ切れないと判断し、ステッキで体を小さくし、息を潜め星君が去るのを待っていたのだ。

「あいつらは死んだのか?」

自分を追い詰めた仮面の魔人と一緒に居た白い少女。
爆発に巻き込まれ死んだのだろうか。とてもじゃないがあの爆発で生き残れるとは思えない。

208 : ◆84AHk0CknU :2015/08/01(土) 21:36:49.38 ID:XyzVKjpx
「…」

負けるつもりは無かったがかなり苦戦を強いられた。
気味の悪い怪物に横槍を入れられ、無様に隠れる羽目になった。
自分自身を守るだけでも命がけなこの状況で、本当にあいつらを生き残らせることができるのだろうか。

「…チッ」

つい情けないことを考えてしまった自分に舌打ちをする。
そんな姿勢では教え子たちを守るなど無理に決まっている。
相手が誰だろうと関係ない。たとえどんな化け物がいようと全てを叩き潰す。
今一度決意を固めるように拳を握り締めると、激しく燃える建物を背にAKYSもその場を離れていった。


【AKYS@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、両腕に若干の痺れ(徐々に回復)
[装備]:徳川家康の手甲@戦国BASARA
[道具]:共通支給品一式、スモーラージ・Mのステッキ@魔法少女オブ・ジ・エンド(体を小さくする魔法2時間使用不能)
[思考]
基本:野獣、MUR、KMRの三人を生き残らせる
1:ガソリンスタンドから離れる
2:誰が相手だろうと容赦せずに殺す
3:野獣たちには会いたくない
[備考]
※迫真空手部の師範代をしている設定です。遠野とも面識があります

※ガソリンスタンドで火災が発生中です
※ハードボイルダー@仮面ライダーWは大破しました





会場北部にある園咲邸。だがそれとはまた違う豪邸が、この会場には存在する。
日焼けをするには持って来いの屋上や、後輩を昏睡レイプするのに最適な地下室を兼ね備えた快適な空間。
「はえ^〜」と思わず感嘆の声を出してしまいそうなその豪邸、名を野獣邸という。
本来ならばクッソ汚い野獣一家の住まいである場所だが、この地では会場にある一施設でしかない。
ひっそりと静まり返っている野獣邸だが、静寂を破るように玄関の扉が乱暴に開けられ、黒尽くめの男が押し入る。
男は邸内に人が居ないのを確認すると、抱きかかえていた少女をリビングのソファーに寝かせ、自分も近くの椅子に腰を落ち着ける。

「…散々だな」

男――ゼロはため息を吐くと、視線を天井へ浮かべつつ先程のガソリンスタンドでの一件を思い出す。
赤い怪物が攻撃の対象をガソリンスタンドへ変えた時、すぐさま瞬間移動で雪華綺晶の元へと移動。
給油機の爆発に巻き込まれる直前再び瞬間移動を使い、隣のエリアへと跳んだ。
本当はもう少し遠くへ移動しようとしたのだが、何故か隣のエリアで強制的に瞬間移動が解除されてしまった。
身体能力の不調といいつくづく面倒なことに巻き込まれたな思い、同時にあのロン毛が一筋縄ではいかない相手だと再認識する。

(ゲームに乗った者を二人、取り逃がしてしまったか)

優れた戦闘力を持つ胴着の男と赤い怪物。
元々の能力か支給品の効果かは不明だが、奴らを仕留めることはできなかった。
とはいえ、雪華綺晶を守りながら二人を同時に相手にしては流石にこちらが不利なので、撤退せざるを得なかったが。
だがバイクという貴重な移動手段を失ってしまったのは痛い。

209 : ◆84AHk0CknU :2015/08/01(土) 21:42:13.48 ID:XyzVKjpx
「ん…」

と、雪華綺晶が小さく寝息を立てたのを聞き、ゼロは顔をそちらに向ける。
エリアを移動した時には彼女は気を失っていた。
一般人が現実離れした戦闘を間近で目の当たりにし、そのうえ爆発で死に掛けては無理も無い。
一先ず彼女を寝かせられる場所を探すことにしたゼロは周囲を探索し、野獣邸に辿り着いた。
眠り続ける雪華綺晶を見ながらゼロは今後の事考える。

このまま雪華綺晶を守り続ける義理など自分には無い――が、同時に見捨てる理由も無い。
会場に居る間は彼女に同行し、知人を探すのにある程度協力してやってもいい。
こんな選択をするのは魔王となった今でも良心を捨て切れていないからだろうか。

「ふん…」

浮かび上がった疑問を打ち消すように鼻を鳴らすと、雪華綺晶が目を覚ますまで一階の探索でもしようかと思い立ち上がった。


【雪華綺晶@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(中)、気絶
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@現実、予備マガジン×4
[思考]
思考:姉さんとやる夫さんに会いたい
0:気絶中
1:姉さんたちを探す
2:胴着の男(AKYS)と赤い怪物(星君)に恐怖
[備考]
※以下本ロワでの設定
・人間の女子高生で一般人
・水銀燈→雪華綺晶たち7人姉妹の長女
・やる夫→二つ上の学年で幼い時から姉妹とは親交がある
・伊藤誠→二つ上の学年。面識は無いが悪い噂は時々耳にする

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、両手に鈍い痛み、回復中
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、篠崎咲世子のクナイ×10@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:野獣邸一階を探索する
2:雪華綺晶と行動し、互いの知り合いを探す
3:他の参加者を探し情報を集める
4:胴着男(AKYS)、赤い異形(星君)は殺す
5:首輪と能力の不調をどうにかしたい
[備考]
※参戦時期はLAST CODE『ゼロの魔王』終了時
※瞬間移動は最大で隣のエリアまで。また連続使用や移動距離が遠いほど疲労増加

210 : ◆84AHk0CknU :2015/08/01(土) 21:55:26.81 ID:XyzVKjpx
投下終了です。遅れてしまい申し訳ありませんでした。

◆ymCx/l3enU氏投下乙です
ミーウちゃんが普通の女の子だと思ってたらキャラ紹介見て草。やっぱり変態じゃないか(憤怒)
ホモのユニコーンとか斬新すぎるんだよなぁ…

あっそうだ(唐突)名簿に一部変更を

【真夏の夜の淫夢】
○KBTIT
【やる夫スレ】
○備府出やらない夫/○翠星石

を追加します

211 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/07(金) 22:19:40.47 ID:cl08BYuO
投下乙です
基本自分のオリロワは変態が多数を占めるのでお兄さん許して!

自分も投下します

212 :林檎花火とソーダの海 ◆ymCx/I3enU :2015/08/07(金) 22:20:11.30 ID:cl08BYuO
8話 林檎花火とソーダの海

D-2エリア草原地帯、大きな岩の陰で、鉤丸聖人は自分のデイパックを確認する。
出てきた物は古めかしい中折れ式のリボルバー拳銃。
二十六年式拳銃と言う旧式リボルバーで、骨董品と呼べる代物であった。
予備の弾薬もセットで入っていたがこちらは当時物では無く新造された物のようだった。

「当たりだな……良かった」

当たりの支給品を引き喜ぶ聖人。そしてこれからの行動を考え始める。
特に知り合いも居ないようなので、殺し合いに乗ってしまっても別に構わない。
ただ、積極的に攻撃を仕掛けるとなるとそれだけ危険に晒される事も多くなるだろう。
多少は運動神経に自信は有った聖人だがそれでもどんな攻撃も回避出来ると思う程自信過剰では無かったし、
武器である二十六年式拳銃の残弾にも限りが有る。
それに、最後の一人になれば優勝なのだから、無理して他者を殺す必要も無い筈。
殺し合いに乗っている者は一人や二人では無いであろうから。

「まずは他の、乗ってなさそうな奴見付けて……仲間にして貰うか……」

この殺し合いに乗っていない者を捜す事に決める聖人。無論、共に殺し合いを打破しようなどと言う考えでは無い。
一人よりも誰かと一緒に居た方が都合が良い。
的が増えればそれだけ生存率も上がる。いざとなれば武器を奪ったり、盾にする事も出来る。
とにかく生き残り、なるべく直接の戦闘は避けて優勝を狙う気で居た。

「反則は無しだもんな? こういうプレイ方法だってアリだろ」

ここには居ない殺し合いの進行役、柴田行隆に弁解するかのような台詞を言うと、
聖人は右手に二十六年式拳銃を装備して利用出来そうな参加者を捜し始めた。

◆◆◆

「絶対死んでたまるか! 生き残ってやる!」

草原で何やら宣言しているのは若い人間の女性、六浦春部。
フリーターをしながら漫画家デビューを目指し日々原稿執筆に勤しむ21歳。
「普通に働け」と言う両親を「将来ビッグになるんだ!!」と黙らせる位に彼女の意思は強い。

「こんな殺し合いなんかでね、私のこの情熱を叩き潰せると思ったらそりゃ大間違いで……」

何としてでも生きて帰り、現在執筆中の原稿を完成させなければならない。
春部は意気込んでいた。

ドゴオオオオン!!!

その意気込みは無駄になった。
彼女の死角から投げ込まれた手榴弾は、そのすぐ近くで炸裂し、六浦春部の肉体は四散し、彼女は呆気無く死んだ。
ぐちゃぐちゃの肉塊と化した身体の中、奇跡的に頭部は綺麗に残った。それが一層悲惨さを際立たせる。
目を開いたままの彼女の表情は自分に何が起きたのか理解する間も無く逝った事を示していた。

もし彼女がこの殺し合いに巻き込まれていなければ、完成させる予定だった原稿が元で見事にデビューを果たしていたのだが。
今となっては平行世界の与太話に過ぎなくなった。

◆◆◆

「これは凄いわね……」

自分の支給品である旧式の手榴弾、九八式柄付手榴弾の威力を目の当たりに感嘆の声を漏らす、
スーツを着た黒豹獣人の美女、北宇智恭世。
警戒しつつ爆心地に向かう。火薬と肉の焼ける臭いが漂っていた。

213 :林檎花火とソーダの海 ◆ymCx/I3enU :2015/08/07(金) 22:20:40.82 ID:cl08BYuO
「うわ、グロい」

当然爆心地にはたった今爆殺した人間女性の四散した死体が転がっている。
肉塊同然となり飛び散っていたが顔だけは綺麗なのが不気味だった。
顔を余り見ないようにしつつ、恭世は女性のデイパックに近付く。
デイパックも焼けてはいたが、中身がばらけていないので中身は恐らく無事のようである。
中身を漁ると、基本支給品に混じって、子供用の彫刻刀セットが出てきた。

「武器としてはあれだけど、無いよりマシか」

心許無いと思いつつ、彫刻刀を手に入れる恭世。
支給された手榴弾が有るだろ、いい加減にしろ! と思われるだろうが、
五個しか支給されていない上今一個使って残り四個だから多少はね?
恭世は彫刻刀を自分のデイパックに突っ込み、その場から去る。
彼女の目的はただ一つ、この殺し合いに優勝し生きて帰る事であった。

◆◆◆

遠目から、聖人は草原の真ん中で爆発が起きるのを目撃した。
爆発音が聞こえた直後に音の方を向き爆発が起きたのを確認したので、
最初の時点では誰かが巻き込まれたのかどうかは分からなかった。
身を伏せて暫く様子を見ると、爆発地点に一人の参加者が近付き何か物色したかと思うと去って行ってしまった。
その参加者は、遠目からではあったがどうも獣人の女性のようだった。
女性が去ってから聖人が爆発現場に近付くと、肉の焼け焦げる臭いが硝煙の臭いに混ざり鼻腔を刺激する。

「ひでぇなこりゃ……」

草原に小さなクレーターが出来、バラバラになった人間女性の死体が転がっていた。
いつかネット上で見た砲撃で死亡した兵士の画像を彷彿とさせるその有様にさしもの聖人も少し気分が悪くなる。
女性の物と思われる焦げたデイパックは漁られた形跡が有る。
漁ったのも、この女性を殺したのも、先程の獣人の女性であろう。聖人は思った。

「爆弾支給されてる奴も居るんだな、気を付けよ」

爆発物を支給された参加者と相対はしたくないと思いながら、聖人は先程の女性とは別方向に歩き去る。


【六浦春部  死亡】
【残り49人】


【明朝/D-2草原】
【鉤丸聖人】
状態:健康
装備:二十六年式拳銃(6/6)
持物:基本支給品一式、二十六年式拳銃実包(12)
現状:他者を利用し生き残って優勝を狙う。積極的に戦う事はしないつもりだが必要あらばその限りでは無い
備考:獣人女性(北宇智恭世)の特徴を朧げながら記憶、彼女とは違う方向へ歩いている

【明朝/D-2草原】
【北宇智恭世】
状態:健康
装備:九八式柄付手榴弾(4)
持物:基本支給品一式、小学生用彫刻刀セット
現状:殺し合いに乗り優勝を目指す。もっと武器が欲しい
備考:特に無し

214 :林檎花火とソーダの海 ◆ymCx/I3enU :2015/08/07(金) 22:21:20.25 ID:cl08BYuO
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《キャラ紹介》
【鉤丸聖人】
読み:かぎまる せいと
年齢:16
性別:男
種族:人間
特徴:黒髪の顔立ちの整った少年、学校制服の学ラン着用
職業:高校生
備考:成績優秀、容姿端麗、しかし性格はかなり腹黒く利己的。
気に入らない先輩、同級生、後輩、教師を陰湿な嫌がらせで追い詰めたりしていた。
但し気に入った者に対してはそれなりに優しく対応しているようで仲間や子分は多い

【六浦春部】
読み:むつうら はるべ
年齢:21
性別:女
種族:人間
特徴:淡い水色っぽい髪、目つき悪し、身体付きはそこそこ。私服姿
職業:フリーター兼漫画家志望
備考:バイトしつつ漫画家を目指している夢見る21歳女子。
友人や両親から「普通に働け」と言われても突っ撥ねている。そのガッツだけは認められている。
基本的に唯我独尊的で、他者とのコミュニケーションは得意では無い

【北宇智恭世】
読み:きたうち やすよ
年齢:37
性別:女
種族:豹獣人
特徴:黒豹の獣人。長身でスタイルは良い。会社のスーツに通勤ブーツ姿
職業:ビジネスマン
備考:有能な女性ビジネスマン。性格は無愛想だが仕事面では右に出る者が居ない故信頼されている。
しかし実はゲーマーであり、自宅はネット、テレビ、パソコン各種のゲームが溢れオフの時は殆どゲームばかりしている。


《支給品紹介》
【二十六年式拳銃】
支給者:鉤丸聖人
分類:銃火器
説明:1890年代初期に開発・採用された大日本帝国陸軍のリボルバー拳銃。
ダブルアクション専用として設計されている。しばしば威力不足であると指摘される。
9mmx22R「二十六年式実包」使用。

【小学生用彫刻刀セット】
支給者:六浦春部
分類:その他
説明:小学生の子供向けに作られた彫刻刀一式セット。本ロワの物は右手用で男の子向け。
滑り難いカラフルなラバーグリップ、スタンドとして使えるケース等使い易いよう様々な工夫がされている。

【九八式柄付手榴弾】
支給者:北宇智恭世
分類:爆発物
説明:1939年(昭和14年)に日本陸軍で開発された手榴弾。
日中戦争時に中国軍から鹵獲したドイツ製柄付手榴弾を元に開発されたと言われる。
柄付の為投げやすいが、大きく嵩張る。本ロワの物はオリジナルなのか復元品なのか不明。
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215 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/07(金) 22:22:09.19 ID:cl08BYuO
投下終了です

216 :創る名無しに見る名無し:2015/08/14(金) 16:47:01.38 ID:aH22+9NR
乙です。

高校バトルロイアルに来てください。

217 : ◆84AHk0CknU :2015/08/16(日) 22:05:33.24 ID:HX4JUt5p
投下乙です

聖人みたいなキャラは惨い死に方をしそうな気がする
自分も投下します

218 : ◆84AHk0CknU :2015/08/16(日) 22:10:28.99 ID:HX4JUt5p
月の光だけが照らす森の中。そこが小太りの少年、入速出やる夫のスタート地点だった。
普段はお調子者で、底抜けの明るい性格であるやる夫。だが今はその明るさなど皆無に近く、自分の身に降りかかった惨劇にただ怯え続けていた。

(わけが分からねーお。何でやる夫がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだお…)

もしも二次元の世界に行けたら、と他愛ない妄想は何度もしてきた。
大好きなアニメやライトノベルの主人公のようになれたらと思うこともあった。
自分を主人公にした、スリル溢れる冒険活劇を、ありえないとは思いつつも夢見てきた。
だが、こんな血に塗れた悪趣味なゲームに参加したいと思ったことは一度も無い。

(やる夫は一体どうすればいいんだお……)

あの薄気味悪い男の言いなりになって、殺し合いに乗るか?
そんなのできる訳が無い。ここにはやらない夫、翠星石、雪華綺晶、水銀燈、伊藤誠も連れて来られている。
大切な人たちを手に掛け、自分だけ生き残るなど真っ平御免だ。
伊藤誠とは険悪な関係であり正直全く会いたくは無いが、だからといって殺そうなどとは考えていない。
ならば殺し合いには断固として反対する道を選ぶのか?

(でももし逆らったらあの男の人みたいに…)

最初の場所で、首輪の爆発により死んだ青年。
下手に逆らったりすれば自分もあの青年と同じ末路を辿ることになる。
何とかして首輪を外したいが、やる夫にそんな技術は無い。
だがもし仮にそんな技術を持っていたとしても、そう簡単に外せるような構造ではないだろう。

死にたくない。けれど殺し合いもしたくない。
う〜と小さく唸りながら頭を悩ますやる夫だが、全く解決策が思いつかないので思考を放棄した。

「ええいこうなりゃ難しい事は後回しだお!まずはやらない夫達を探すお」

やる夫一人じゃどうにもできないなら、考え続けても時間の無駄ではいか。
だったらここは、知り合いの捜索を優先しようとやる夫は決断した。
それに連れて来られた4人は皆やる夫よりも頭が良いのだ。やる夫一人では無理でも、皆となら何か良い案が出るかもしれない。
きっとどうにかなると、恐怖を打ち消すように自分に言い聞かせる。
方針を決めると、やる夫はまずは森から出るために移動を開始した。

「危ない奴は出てこないでくれお〜」

おっかなびっくり歩くやる夫の手には懐中電灯と拳銃が握られている。
ズッシリとした重さと金属の冷たさが銃が本物である事を、手から伝わってくる。
危険人物と出会わないことを祈りながら歩を進めるやる夫。

だがその歩みは背後から聞こえてくる足音によって止められた。
足音は徐々にこちらに近付き、背後の人物がこちらに走って来ていることが理解できた。
全身を恐怖と緊張で震わせながら、やる夫は銃の引き金に指を掛けたまま後ろを振り返った。

「ヒィッ!だっ、誰だお!?そこで止まる「やる夫ー!無事だったですか〜!」っえ?」

駆け寄って来る者が自分の友人だと認識するのと、極度の緊張状態で振り返った反動により誤って引き金を引いたのはほぼ同時だった。

森に銃声が木霊した。

219 : ◆84AHk0CknU :2015/08/16(日) 22:15:03.81 ID:HX4JUt5p



オッドアイでアンティーク人形のようなドレスを着た少女――翠星石は理不尽なゲームに対し、ただ泣き続けていた。

意味不明の殺し合い、初めてその目で見る人が殺される瞬間、気が付けば真っ暗な森に一人ぼっち。
僅か数分の間に起こったこれらの出来事は、翠星石に計り知れない恐怖を与えていた。

「うぅ……」

あのチャラけたロン毛男の笑み。思い出すだけで怖気が走る不気味さだ。
首から上が吹き飛んだ青年。むせ返る血の臭いと飛び散った肉片のグロテスクさに吐き気がする。
誰も居ない森に一人で立っている。怖くて震えが止まらない。一人にしないで。

涙を流しその場に蹲った時、小さな物音が聞こえた。
ヒッと小さく悲鳴を漏らし、大木の裏に隠れながら音のした方を覗き込む。
ハッキリとは見えないが、人影のようなものが動いてるのが確認できた。
じっとしながら聞き耳を立てると、翠星石のよく知る人物の声が聞こえた。

(この声……ひょっとしてやる夫ですか!?)

泣き顔から一変、パァっと明るい笑顔になる翠星石。
一人ぼっちで、不安と恐怖に押し潰されそうになっていた所に知った声が聞こえたのだ、喜ぶのは当然だろう。
お調子者で情けないやつだが、とても優しい大好きな幼馴染。
そんな彼が直ぐ傍に居ると知り、居ても立ってもいられなくなり駆け出した。

木々の間を駆け抜けていくと、見慣れた後ろ姿が目に入った。
まだこちらには気付いていない様子のやる夫に声を掛ける。

「やる夫ー!無事だったですか〜!」

そのまま笑顔で駆け寄ろうとした翠星石が見たのは、呆気に取られた顔でこちらを見るやる夫。
そして次の瞬間、鈍い銃声が彼女の耳に響いた。

「…………え?」

何が起こったのか分からず、その場で硬まる。
おそるおそる横を見ると、隣の木の幹に穴が開いていた。
どうやら銃弾は運良く翠星石を外れ、隣にあった木へ命中したようだ。
だがそれも今の翠星石にとっては幸運でも何でもない。
青ざめたやる夫の顔と、その手に握られている黒いモノを見比べ、段々と何が起きたのか理解が追い付いてきた。

「やる、夫……?やる夫は、す、すいせい、せきを……」
「ち、ちが…」

口に出すたびに顔がどんどん青ざめていく。
あんなに会えて嬉しかった筈のやる夫が、今はとても恐ろしく見える。

「い、イヤァァァァァァァァ!!」

悲鳴を上げ、顔をクシャクシャに歪ませながら翠星石は森の奥へと逃げ去った。

「あっ、ま、待つお!翠星石!」

呆然としていたやる夫も我に返り、慌てて翠星石の後を追う。

悪を打ち砕くヒーローでもなく、ニードレスやギアスユーザーのような異能の持ち主でもない。
特別な運命や血筋も存在しない、どこにでもいる平凡な高校生の少年。
そんなやる夫はこのバトルロワイヤルにおいて、大切な人を殺しかけてしまうという最悪のスタートを切ってしまった。

220 : ◆84AHk0CknU :2015/08/16(日) 22:18:22.40 ID:HX4JUt5p
【翠星石@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(大)、錯乱中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:死にたくない
1:やる夫から逃げる。
[備考]
※本ロワでの設定
・人間の女子高生
・水銀燈&雪華綺晶→姉と妹。大切な家族
・やる夫→幼馴染。密かに想っている
・やらない夫→やる夫を通じて中学生時代に友達となった
・伊藤誠→一度乱暴されかけたため、嫌悪と恐怖を抱いている

【入速出やる夫@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(中)
[装備]:TNOKの拳銃(5/6)@真夏の夜の淫夢
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いはしない
1:翠星石を追いかける
2:やらない夫たちを探す
3:伊藤誠には会いたくない
[備考]
※本ロワでの設定
・人間の男子高校生。外見は太った少年。
・水銀燈、翠星石、雪華綺晶→幼少時から親交のある姉妹。翠星石とは同じクラス
・やらない夫→中学時代にできた親友。不良に絡まれていた所を助けてくれた
・伊藤誠→翠星石に手を出そうとしたのをやる夫とやらない夫、他の姉妹達に阻止される。以来険悪な関係

221 : ◆84AHk0CknU :2015/08/16(日) 22:21:31.83 ID:HX4JUt5p
投下終了です
タイトルは『やる夫がバトルロワイアルで最悪のスタートを切ってしまったようです』で

222 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/17(月) 10:32:36.25 ID:x3GlgyAq
投下乙です。
暴発からの誤解、ロワでは普通だな!
そして備考欄から読み取れる伊藤誠のクズ具合

自分も投下します

223 :完全感覚Dreamer ◆ymCx/I3enU :2015/08/17(月) 10:33:15.71 ID:x3GlgyAq
9話 完全感覚Dreamer

殺し合いに巻き込まれうんざりとしていたが、スタート地点のすぐ近くに酒場が有ったのは不幸中の幸いだったと、
中年の食堂店主、川田喜雄は思った。酒好きの彼にとってはこの不安な状況では尚更酒は有難い物だったからだ。

(店の奴には悪ぃけど幾つか貰ってくか)

棚に並べられている酒瓶の中で好きな酒を幾つか自分のデイパックに放り込む喜雄。
飲めば少しは気も紛れるだろう。無論飲み過ぎて動けなくなっては元も子も無いのでそれは注意しなければならないが。
無断で持っていく事に少しは抵抗も有ったがこの酒場の店主は今はどこにも居らず咎める者など居まい。

「こんなもんで良いか……これからどうすっかな……」

喜雄はこれからの事を考える。人を殺すだけの度胸など無い故に殺し合いには乗りたくは無かった。
知り合いは一応、店の常連客である女子高生志水セナが居るが特に仲が良い訳では無く進んで捜索するつもりは無い。
まずは己の身の安全を最優先し、生き残る事を考えなければならない。

「奥は家になってんのか……ならここで隠れっか?」

酒場には平屋の住居が併設されており、そこでしばらく隠れていようか喜雄が考えていた時、酒場出入口の扉が開いた。

「! 誰だ!」

驚き、自分に支給されていた封筒を開封するのに使う金属製のペーパーナイフを構える喜雄。
事務用品だが突き刺す位には使える代物である。

「待て、殺し合いには乗っていない」

酒場に入ってきた男は戦意を否定した。
灰色か銀色の髪、紫色の余り趣味の良いとは言えないシャツと茶色いズボン姿の、恐らく30代位と思われる人間の男。

「本当か?」
「本当だ……信じてくれって言っても、無理かもしれないが」
「……」

一先ず信じる事にして構えていたペーパーナイフを下ろす喜雄。
男は倉持忠敏と名乗った。

「俺は馬を捜してるんだ。もっと正確に言えば、開催式の時に見た、白いユニコーンのオスを……見てないか?」
「いや、あんたが初めて会った奴だ……知り合いか何かなのか?」
「違う」
「あ? 知り合いでも無いのに捜すのか?」
「うーんと、なぁ」

喜雄の疑問に答えづらそうな素振りを見せる忠敏だったが、結局答えた。

「尻をな、掘って貰いたいんだ」
「は?」
「だから牡馬にケツを掘って貰いたいんだよ」
「え、何それは……(ドン引き)」

忠敏が話す所によれば彼はオス馬とのア*ルセックスを趣味としているとの事。
趣味と言うよりライフワーク、生き甲斐となっているとも話した。
オス馬の激しい腰使いで根元まで突き込まれれば感じ過ぎていてもたってもい居られないと、喜雄が完全に引いているにも関わらず熱っぽく語った。
喜雄自身はそう言う趣味は全く無かったが、忠敏のような趣味を持つ者が居ると言う事自体は関知はしていた。
関知はしていたがだからと言ってそういう趣味はとても彼には理解出来る物では無かったし、
いざその趣味の者を前にすると最早対応に困る事この上無い。

224 :完全感覚Dreamer ◆ymCx/I3enU :2015/08/17(月) 10:34:03.29 ID:x3GlgyAq
「俺は死ぬ前に馬にケツを犯して貰わないと死んでも死に切れない!」
「そう……(無関心)」
「ただ、俺、武器になるような物が何も支給されなかったんだ。
丸腰のままじゃいざって時危ない、ここで武器になるような物を探させてくれないか?」
「ああ、好きにしろよ」

呆れた様子で喜雄が許可を出す。
まだ自分が探索していないので待ったをかけたい所だったがさっさと用事を済ませて出て行って欲しいと言う気持ちの方が勝った。
結局忠敏は台所で文化包丁を一振り手に入れる。

「ありがとう、それじゃ俺は行くよ……あっ、そうだ、あんたの名前は」
「川田喜雄。食堂やってる」
「そうか……お互い、死なないよう頑張ろう」
「ああ、いいからさっさと行けよ」

一応気遣いを見せる忠敏に対し鬱陶しげに突き放す喜雄。
忠敏は苦笑いしつつ、酒場を後にした。

「アイツ、馬がその趣味無かったらどうする気なんだ? ……俺が気にする事じゃねぇやな」

忠敏が居なくなった後、少しだけ彼の行く末が気になった喜雄が独りごちる。

◆◆◆

倉持忠敏と言う男が馬に掘られる快感に目覚めたのは高校生の時。
たまたま見付けたその手の外国アダルト動画に衝撃を受け、訓練と拡張を進め、
当時住んでいた場所から自転車で行ける距離に有った牧場に深夜忍び込み、初体験を果たした。
それ以来今日に至るまで馬に掘られる快楽を貪り続けてきた忠敏。
何度か内出血等危険な目にも遭い、理解してくれる数少ない友人から「もうやめた方が」と忠告された事も有った。
実際腸を破られ死亡する事故の実例も多数存在する。
が、それを遥かに上回る数の愛好家、馬に掘られる事に対する熱意・覚悟が存在し、忠敏もまたその一人。
最早ライフワークと化したその行為を辞めるつもりは更々無く、むしろそれで死ぬのなら本望とまで本気で思っていた。
腕程も有る頂戴かつ太い牡馬の肉の槍に、馬の猛烈な腰使いで一気に根元まで貫かれ腸内を掻き回される、
激痛と紙一重の快楽は何物にも代え難い物。辞めてなる物か。
その思いは殺し合いに巻き込まれてからも変わらなかった。

酒場から出て後、忠敏は次にどこに行くか考える。
南に行けば教会、北に行けば廃墟の遊園地が有る。

ダァァン……。

「!」

遠くから銃声が聞こえ身構える忠敏。
殺し合いは確実に始まっているようだ。
急がなければあのオスのユニコーンが死んでしまうかもしれない。
ただもし見付けたとして、ユニコーンが自分の趣味に応じてくれるかどうかそれが問題であった。少なくとも忠敏の中では。
一般的にユニコーンは処女にしか心を開かないと言われている。

(その時はこいつを使って無理矢理にでも)

自分のデイパックから、ピンク色の液体が入った香水の瓶のような物を取り出す忠敏。
それは彼の支給品――――催淫剤である。
説明書には「イライアス・ウィズダム特製催淫剤 効き目抜群」などと書かれていた。
名簿に同姓同名の名前が有り恐らく同一人物であろうが、そんな事はどうでも良い。
この薬の効き目が本物かどうかはさておき、薬物やそれに準ずる物で無理に興奮させ行為に及ぶと言う事は今までも忠敏は何度か行ってきた。
時には完全に理性を失わせてしまい殺されるかもしれないと言う位に腰を振られるのだがそれによる快感もまた凄まじかった。
催淫剤は霧吹きのように吹き付けるタイプの為こっそり仕込むような手間も要らない。

225 :完全感覚Dreamer ◆ymCx/I3enU :2015/08/17(月) 10:34:29.24 ID:x3GlgyAq
自分はもうこの殺し合いから生きて帰れる事はあるまい。
兎にも角にも、命果てる前に何としてでもユニコーンを見付け、何としてでも尻を掘って貰わなければ死んでも死にきれぬ。
死ぬならば馬に掘られ腸を破って貰って死のう。
壮絶な決意(少なくとも本人の中では)を胸に、倉持忠敏はユニコーン捜しを始めた。


【明朝/F-4酒場】
【川田喜雄】
状態:健康
装備:ペーパーナイフ
持物:基本支給品一式、調達した酒複数本
現状:死にたくない。自分が生き残る事を優先する。志水セナは取り敢えず放っておく
備考:倉持忠敏を追う気は無し

【明朝/F-4酒場周辺】
【倉持忠敏】
状態:健康
装備:調達した文化包丁
持物:基本支給品一式、ウィズダム商店謹製催淫剤
現状:死ぬ前にユニコーン(ユージーン)を捜し出し、掘って貰う。殺し合う気は無いが行く手を阻む者が居ればそれなりの対応はする
備考:催淫剤の効能については未確認

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《キャラ紹介》
【川田喜雄】
読み:かわだ よしお
年齢:55
性別:男
種族:人間
特徴:色黒の短髪の中年男。黒いシャツにジーパン、エプロンにバンダナ姿(厨房での服装)
職業:食堂経営者
備考:「川田屋」と言う食堂を経営している通称「川田屋のオヤジ」。
がさつな性格だが料理の腕は良く、店の常連客は多い。
煙草、パチンコ、酒を愛する。本ロワの参加者の一人、志水セナは店の常連客の一人。

【倉持忠敏】
読み:くらもち ただとし
年齢:31
性別:男
種族:人間
特徴:暗い銀色或いは灰色の髪の毛、中肉中背だがお尻がお*んこみたいになってる、紫色のシャツに茶色のズボン姿
職業:牧場作業員
備考:牡馬に尻を犯される事を趣味と言うか生き甲斐にしてしまっている男。
普段はそれなりに大人しいが牡馬の事となるとかなり熱っぽくなる。ドン引きされる。
腸を破られて死ぬ事になっても本望だと本気で言っている。だが彼の腸は非常に頑丈の様子。

《支給品紹介》
【ペーパーナイフ】
支給者:川田喜雄
分類:刃物
説明:便箋や書類袋等を開封する時に使うナイフの一種。
一応刃は付いているが鋭利では無い。但し尖端は普通に突き刺す位は出来る。

【ウィズダム商店謹製催淫剤】
支給者:倉持忠敏
分類:薬物
説明:本ロワの参加者でもあるイライアス・ウィズダム特製の催淫剤。
外見はピンク色の香水のような感じ。霧吹きのように相手の顔に吹き掛ければ良い。
どんな清楚な者でもたちまち淫乱になる。
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226 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/17(月) 10:36:57.31 ID:x3GlgyAq
投下終了です
読み返してみると汚いSSだなぁ……
ちなみに2005年に「イーナムクロー馬姦事件」と言うのが起きてるから
興味有る人はWikipediaをどうぞ

227 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/24(月) 00:17:13.69 ID:Zv6Pty69
投下します

228 :おおかみのおまわりさんとおんなのこ ◆ymCx/I3enU :2015/08/24(月) 00:17:49.68 ID:Zv6Pty69
10話 おおかみのおまわりさんとおんなのこ

とある地方都市で警官の職に就いている狼獣人の男、須牙襲禅。
しかし彼は警官とは大凡思えぬ程、粗野で好戦的な性格をしていた。
勤務態度も凄まじい物で、容疑者に対する度を超えた発砲や暴力行為、押収物の私物化、パトカーの無断改造等。
ならず者が警官の制服を着ているだけと言っても過言では無いような人物である。
ここまで来ると普通は懲戒免職されてもおかしく無いのだが、性格や言動はともかく警官としての能力は高く、
また、彼の所属する警察署が、彼のような癖の強い警官を大量に受け入れている場所と言う事も有り、
襲禅は警官で居続ける事が出来ていた。もっとも、襲禅自身、警官になった理由が「一般より自由に銃を使えるから」と言う理由で、
警官と言う職業にそこまで情熱も執着心も有る訳では無かったが。

そんな彼が、今回、殺し合いゲーム――バトルロワイアルに参加させられた。

「チッ、ったくよぉ……何だってんだ、こりゃ」

A-6エリアの港。運営側が撤去したのか船が一艘も見当たらない船着場。
倉庫の壁に背をもたれて水平線を見詰めながら、襲禅は不機嫌そうな表情を浮かべる。
突然殺人ゲームに巻き込まれた事、どこの誰かも知れない男に命を握られていると言う事実に憤りを隠せなかった。

「柴田とか言ったか? あの野郎、絶対ェ後悔させてやる。クソ生意気なツラに風穴空けてやっからな」
「襲禅」
「!」

不意に聞こえた女性の声に、襲禅は右手に持っていた自分の支給品、コルトガバメントを声のした方向に向ける。

「うわっ、ちょっと待ってよ」
「んだよ、真紀じゃねぇか」

そこに居たのは、襲禅の知人である少女、新藤真紀。
仲が良い訳では無いが、しばしば行動を共にする、所謂「腐れ縁」の間柄であった。

「何か声聞こえて聞き覚え有るなーと思ったら案の定だったわ」
「おっ、何だよ俺が近くに居て嬉しいのかぁ?」
「別に……」

からかう襲禅に対し素っ気無く返す真紀。この二人の日常風景だ。

「ここで立ち話も何だ、倉庫ん中にでも入ろうぜ」
「変な事しないでよ?」
「しねぇよ!」

外で立ち止まって話をするのは危険な為、二人は倉庫の中に入る。
荷物の乗せられた木製のパレットが高く積まれ、フォークリフトが無造作に停められていた。
二階部分に有る事務所内に入って、椅子に座る二人。

「ねぇ襲禅、アンタはこのゲームどうするの?」
「乗る気は無ぇよ」
「へぇ。意外。アンタこういうの好きそうな気がしてたんだけど」
「あんな誰とも分からねぇ奴の言いなりは御免だって話だ……って言うかお前、俺が乗ってないと思って話し掛けたんじゃねぇのかよ」
「いや、居たから何となく声掛けちゃったって言うか」
「お前なぁ……」

229 :おおかみのおまわりさんとおんなのこ ◆ymCx/I3enU :2015/08/24(月) 00:18:16.63 ID:Zv6Pty69
警戒心が薄いと言わざるをえない真紀に呆れる襲禅。
今度は襲禅が真紀に聞き返す。

「まぁ良いや。んで、そう言うお前はどうなんだよ、真紀」

真紀は殺し合いに乗るつもりが有るのか否か。もし肯定する言葉を述べたらその時は――――そこまで襲禅が考えた時、真紀が返答した。

「乗ってないよ。アンタと大体同じ理由」
「……そうか」

真紀が出した答えは否定。
襲禅の漏らす声に僅かに安堵の色が滲む。

その後、二人はお互いの支給品を見せ合った。
自身のコルトガバメントを自慢気に見せ付ける襲禅にジト目を向けながら、真紀が自分のデイパックから取り出した物は。

「おっ、ワルサーP38じゃねぇか」
「……に見えるでしょ? でもこれ……」

そう言って真紀は銃口を天井に向けて引き金を引いた。
銃口からは弾丸では無く、小さな火が噴き出した。

「……ああ、拳銃型のライターか、それ」
「そうなの……最初本物だと思ったんだけどねぇ……」

真紀に支給されたのは拳銃の形を模したライターであった。
非常に精巧に作られており外見だけなら実銃と見紛う程である。だがライターである。
殺し合いと言う状況の中で銃が支給されたと喜んだのも束の間、ただのライターであると判明した時の真紀の落胆は大きかったし、
襲禅にもそれは容易に想像する事が出来た。

「脅し位には使えんだろ。多分」
「そうかな?」
「……取り敢えずは、もうちっとしたらこの辺に人居ねぇか見てみっか」

真紀に対し一応フォローを入れた後、襲禅は当面の行動指針を定めた。

230 :おおかみのおまわりさんとおんなのこ ◆ymCx/I3enU :2015/08/24(月) 00:19:00.47 ID:Zv6Pty69
【明朝/A-6港倉庫】
【須牙襲禅】
状態:健康
装備:コルト ガバメント(7/7)
持物:基本支給品一式、コルト ガバメントの弾倉(3)
現状:殺し合う気は無いが必要有らば戦う。真紀と行動。港一帯を探索してみる
備考:特に無し

【新藤真紀】
状態:健康
装備:拳銃型ライター
持物:基本支給品一式
現状:殺し合う気は無い。武器が欲しい。襲禅と行動する
備考:特に無し


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《キャラ紹介》
【須牙襲禅】
読み:すが しゅうぜん
年齢:28
性別:男
種族:狼獣人
特徴:茶色と白の体格の良い狼獣人。目の下に赤い紋様が有る。警官の制服を少し着崩している
職業:警察官
備考:銃好きな不良警官。銃の腕前はピカイチで、格闘技にも通じている。
警官とは思えないようなDQNな性格だが、所属している署の性質や警官としての能力そのものは高い事から職に留まる事が出来ている。
女子大生、新藤真紀とは腐れ縁でしばしば行動を共にしている。たまに肉体関係も持っている

【新藤真紀】
読み:しんどう まき
年齢:18
性別:女
種族:人間
特徴:セミロングの美少女。身体付きは中の上位。白いシャツにスカートの私服姿
職業:大学生
備考:どことなく陰を感じさせる印象の女子大生。
大人しいが歯に衣着せぬ物言いや皮肉が多い。余り性格は良いとは言えない。でも優しい所も有る。
町の警官、須牙襲禅と腐れ縁の仲。しばしば行動を共にし、たまに肉体関係も持っている


《支給品紹介》
【コルト ガバメント】
支給者:須牙襲禅
分類:銃火器
説明:1911年にアメリカ陸軍に採用され70年近く使われた大型自動拳銃。「M1911」とも。
現代の自動拳銃の祖と言える名銃で誕生から100年以上経った現在でも愛好家は多く、
様々な会社がクローンモデルを発売している。.45ACP弾使用。

【拳銃型ライター】
支給者:新藤真紀
分類:その他
説明:ワルサーP38の外見を模したライター。引き金を引けば着火する。
外見は非常に精巧に作られており、脅し程度には使えるかもしれない。
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231 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/24(月) 00:19:41.86 ID:Zv6Pty69
投下終了です

232 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/31(月) 21:41:24.23 ID:bL+/99Sy
投下します

233 :いとも簡単に切り刻んでは素知らぬ顔 ◆ymCx/I3enU :2015/08/31(月) 21:42:52.43 ID:bL+/99Sy
11話 いとも簡単に切り刻んでは素知らぬ顔

淡い緑の獣竜種の青年、鳴海竜也。
普段は真面目で優しい会社員。しかし、一旦スイッチが入ると涎を垂らしながら目星い女を強引に犯す非道強姦魔ドラゴンに大変身!

毛皮の色を変えられる魔法を習得しており、獲物を捜す時は毛皮を黒く変色させていた。人間で言う変装である。
それに加え、普段の彼が好青年を実に巧く装っていた事も有り誰もが竜也が強姦魔だとは思いもしなかった。

そんな彼が殺し合いに巻き込まれ、考えるのは。

「結構良い女の子が一杯居たな……見付けたら片っ端から、襲ってやる。ついでに、優勝も狙ってやる」

欲望に忠実になりながらも、優勝し生きて帰る事であった。

「どうせ、一人しか生き残れないのなら、毛皮の色を変える必要も無いな……。
警察だって居ない。いつも以上にやりたい放題出来るって事だね……ふぅ、いやらしい事を考えると、
すぐに勃ってしまう。待っていな息子、獲物を見付けるまで我慢だ」

股間のスリットから顔を出している己自身に語り掛けた後、竜也は近くに有った武器屋へと入った。
様々な銃火器や、近接武器、爆薬等、兵器類が棚に並んでいた。
「おお」と思わず声を漏らす竜也。自分の支給品は、武器になるような物では無かったので、
スタート地点から程近い場所にこうした施設が有ったのは幸運だと思った。
金など持ってはいないが、店主の姿も無いので遠慮無く貰っていこう、と、竜也は武器を吟味する。

「どれにしよう……あんまり欲張っても仕方無いし……」

迷っていた竜也だったが、結局、ZB26軽機関銃と予備の弾倉5個、及び、青龍刀を手に入れた。

「武器は手に入れた……これからどこへ行こうか」

行き先を考える竜也。どうするかでは無く行き先を考えると言う事が彼の基本的行動指針が既に定まっている事を示している。

「やっぱり街の方かな」

注目したのは会場中央部の湖(大きさ的に池か沼だが地図には「湖」と書かれている)を中心に広がる市街地エリア。
建物や物資が多い市街地は人も集まり易いだろうと竜也は想像した。

「よし行くか」

荷物を纏め、竜也は武器屋を後にし、会場中央部に広がる市街地目指し歩き出した。

当面の彼の目的は、好みの女性を捜し出し、見付け次第自分の欲望の「贄」になって貰う事と、
好みに合わないまたは用済みになった女性、及び男を殺害し、自分が優勝する事への架橋とする事である。
正しく人間、いや、ドラゴンの屑である。

234 :いとも簡単に切り刻んでは素知らぬ顔 ◆ymCx/I3enU :2015/08/31(月) 21:43:05.45 ID:bL+/99Sy
【明朝/C-3武器屋】
【鳴海竜也】
状態:健康
装備:調達したZB26(30/30)
持物:基本支給品一式、調達したZB26の弾倉(5)、調達した青龍刀、不明支給品
現状:優勝狙い。好みの女性は性的に食べたい。好みじゃない女性、用済みの女性、男は始末する。市街地へ向かう。
備考:特に無し。


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《キャラ紹介》
【鳴海竜也】
読み:なるみ たつや
年齢:25
性別:♂
種族:獣竜
特徴:緑と白の毛皮を持つ獣竜(ファードラゴン)。大柄な人間サイズで二足歩行。服を着なくて良い種族。美形
職業:サラリーマン/強姦魔
備考:普段は真面目で優しいサラリーマンの好青年に見えるが、本性は自分の性欲を連続強姦と言う手口で満たす屑。
毛皮の色を変えられる都合の良い魔法を習得しており獲物を捜す時は夜中に毛皮を黒くしている。
守備範囲は10代後半〜20代前半。人間の方が好みだとか。
また行為の時の様子を写真や動画に収めてコレクションしている。
基本的に優しい風に装うが、その実利己的で他人を傷付ける事に躊躇は無い
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235 : ◆ymCx/I3enU :2015/08/31(月) 21:43:55.95 ID:bL+/99Sy
投下終了です

236 : ◆ymCx/I3enU :2015/09/09(水) 13:39:57.45 ID:eBPNdKDp
投下します

237 :ケダモノゴコロ ◆ymCx/I3enU :2015/09/09(水) 13:44:26.84 ID:eBPNdKDp
12話 ケダモノゴコロ

「アッ、ア゛ァーッ! ア゛ーッ、イク! イク、イク……あぁ……はああ……」

森の中に存在する軍事施設の遺構、その中の発電施設跡。
獣の如き男の嬌声が響く。
全裸の狼獣人の男が、同じく全裸の半獣人の女性の顔目掛け、己の種液を撒き散らす。
女性は長時間暴行を受けた形跡が有り、猿轡をされ、目からは涙を流していた。

狼獣人の名はウォラゴ。とある犯罪組織の構成員。
この殺し合いゲームに、同僚のレカと共に巻き込まれた。
しかし元々死と隣り合わせの日々を送っていたウォラゴは特に動じる事も無く、あっさり殺し合いに乗る事に決める。
スタート地点の軍事施設跡にて見付けた、白い髪の半獣人女性、ゼンルを引っ捕え、性的暴行を加えた。

「ああ、気持ち良かったぜぇ」
「うっ……うっ……汚い、臭い」

嗚咽を漏らすゼンル。全身、ウォラゴの体液と唾液に塗れ、嫌悪感と悪臭を彼女にもたらしていた。
そんなゼンルの泣き言には構わず、ウォラゴはその辺の床に放ってあった自分のベルトを手に取ると、ゼンルの首に巻き付けて絞め上げる。

「あぐぁ!?」
「気持ち良くしてくれてありがとうな……じゃあな」
「い、嫌! やめて、死にたくな……げほっ、あっ、ア」

ゼンルは必死にもがいたが、どうする事も出来ず、やがて口から泡を吹き、目から光が消え、ビクビクと痙攣した後、動かなくなった。
動かなくなった後も、ウォラゴは念を入れて三分程思い切りゼンルの首を絞め、股間からアンモニア臭のする液体が染み出した辺りでようやく絞めるのを止める。
ゼンルとの行為で汚れた自分の身体を彼女の衣服で拭くと、ウォラゴは自分の衣服を着た。

「えがったえがった。これで精気、じゃねぇ、鋭気を養う事が出来たな。女とはヤれる時にヤっておかねぇとなぁ」

身勝手な理屈を口に出しながらゼンルの持っていたハンティングナイフを回収するウォラゴ。
彼自身の支給品は消毒用エタノールであった為、ゼンルを捕まえたのは暴行目的の他に武器の入手と言う目的もあった。
性欲も満たし、武器も入手したウォラゴは荷物を纏めて発電施設跡から外に出る。

蔦や草木に侵食され朽ちたコンクリートの遺構が建ち並ぶ。
監視塔と思しき倒壊した鉄骨の残骸も見受けられた。
地図とコンパスを取り出し、どの方向へ進めば内陸方面に抜けられるかを確認し、ウォラゴは歩き出した。

(レカの奴は、放っておくか)

同僚であるレカに関しては、特に仲が良い訳でも無い為放置する事に決め、
当面は他参加者の排除、及び、好みの女性を漁る事を基本行動指針と定めてウォラゴは行動を開始する。


【ゼンル  死亡】
【残り48人】

238 :ケダモノゴコロ ◆ymCx/I3enU :2015/09/09(水) 13:44:56.77 ID:eBPNdKDp
【明朝/B-2軍事施設跡】
【ウォラゴ】
状態:やや疲労
装備:ハンティングナイフ
持物:基本支給品一式、消毒用エタノール(500ml)
現状:優勝狙い。好みの女は犯す。好みじゃない女、用済みの女、男はさっさと始末する。レカは放置。
備考:特に無し。


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《キャラ紹介》
【ウォラゴ】
年齢:20
性別:男
種族:狼獣人
特徴:濃淡の青色の毛皮を持つ狼獣人。引き締まった身体付き。黒い半袖シャツに灰色のズボン、軍用ブーツ着用。手甲やスリングベルト装備
職業:犯罪組織構成員
備考:とある犯罪組織に属し略奪、暴行、殺人等悪事を働いている。享楽的かつ残忍な性格。
高い身体能力を誇り、戦闘スキルもかなりの物。
ロワ参加者の一人、レカは同僚。しかし仲が良い訳では無い

【ゼンル】
年齢:22
性別:女
種族:半犬獣人
特徴:犬耳と尻尾を持つ銀髪の女性。スタイルは良い。露出の多い軽装
職業:トレジャーハンター
備考:明るい性格。トレジャーハンターとして遺跡や洞窟を回っている。
戦闘になる事も多いのである程度格闘技や武器の扱いに通じているがはっきり言って弱い

《支給品紹介》
【ハンティングナイフ】
支給者:ゼンル
分類:刃物
説明:狩猟用の頑丈で切れ味の鋭い大型ナイフ。

【消毒用エタノール】
支給者:ウォラゴ
分類:その他
説明:消毒用の医療用アルコール。揮発性、引火性が強い。
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239 : ◆ymCx/I3enU :2015/09/09(水) 13:45:30.97 ID:eBPNdKDp
投下終了です。

240 : ◆84AHk0CknU :2015/09/22(火) 00:16:58.07 ID:o+OqkZ6f
投下乙です
最近投下できなくてセンセンシャル!
某ロワで自分の書いた文章が丸パクリされてて困惑したゾ…

241 : ◆84AHk0CknU :2015/09/24(木) 07:30:25.87 ID:kBQLu32e
投下します

242 : ◆84AHk0CknU :2015/09/24(木) 07:33:11.33 ID:kBQLu32e
「殺し合い…か。ふざけた真似をする男だ」

暗黒のような海が広がる真夜中の海岸。
赤いジャケットの青年が憤りを帯びた言葉を吐き捨てる。
端正な顔は殺し合いを命じた男への怒りで、不愉快気に歪んでいる

(これだけの人数を一度に拉致し、こんな首輪まで……やはりミュージアムが絡んでいるのか?)

先程確認した名簿には50人以上の名前が載っていた。
これだけの人間を一度に拉致するなど、とても一人の犯行とは思えない。
ならばこれまで幾度も戦ってきたあの組織が、バックに付いている可能性が高いと彼は考える。

(もし奴らが背後に居るのだとしたら、殺し合いというのは建前で実際は、メモリを使った実験という可能性もあるな…)

彼の腰にはバイクのハンドルのようなものが付いた奇妙なベルトが巻かれている。
一見玩具のように見えるこれは、彼にとって非常に重要な物である。
上着の内ポケットに入れてある『メモリ』を挿入することで、彼のもう一つの姿に変身するアイテム。
そして件の組織はこの『メモリ』が関わる事件を、何度も裏で操ってきた。
そう、今回もまた“あの男”のように人を人とも思わぬ実験を―――

「……井坂」

ポツリと呟いた名前。
それは自分の家族を皆殺しにした宿敵であり、激闘の末に全てを振り切りこの手で倒した筈の男の名。
何故目の前で死んだ男の名が名簿に載っていたのだろうか。
最初に現れたロン毛の言うとおり、殺し合いの運営者は本当に死者を蘇らせる力を持っているとでもいうのか。
或いはついこの間戦ったNEVERのように、ネクロ・オーバー技術が施されたという可能性もある。

「…もし仮にそうだとしても、俺のやる事は変わらん」

本当に井坂が生き返ったのだとしても、また己の手で倒すだけだ。
家族を殺した男を許せないというのは当然あるが、倒す理由はそれだけではない。
少し前の自分ならそれで十分だったろうが、今は違う。
自身の住まう『風都』の人間を、そしてこの場に連れて来られた戦う術を持たない人々を守る為に倒すのだ。
だが井坂は紛れもない強敵。一度倒したとはいえ、苦戦は免れないだろう。

(左達とも何とか連絡を取れるといいのだが…)

243 : ◆84AHk0CknU :2015/09/24(木) 07:39:19.36 ID:kBQLu32e
この場には居ない仲間たち。
自分に街の流儀を教え、衝突を繰り返しながらも今では戦友となった“二人で一人の探偵”
この異常な事件を解決する為にも彼らに情報を伝える必要がある。
尤も外部との接触は当然できないよう運営側が目を光らせているだろうが。

「…そろそろ行くか」

罪無き人々を守り、宿敵をもう一度倒す決意を固めると男は移動を開始した。
彼の名は照井竜。
風都署超常犯罪捜査課に所属する若きエリート刑事。
またの名を『仮面ライダーアクセル』

復讐心を振り切り、“切り札”、“疾風”と肩を並べる“加速”の戦士が新たな戦いに挑もうとしていた。


【照井竜@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:アクセルドライバー+アクセルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:共通支給品一式、エンジンブレード@仮面ライダーW、トライアルメモリ@仮面ライダーW
[思考]
基本:打倒主催者
1:一般人の保護及び殺し合いに反対する者の捜索
2:井坂は自分の手で再び倒す
3:外部との連絡手段を探す
[備考]
※劇場版『AtoZ 運命のガイアメモリ』終了後からの参戦
※殺し合いにミュージアムが関わっていると考えています

244 : ◆84AHk0CknU :2015/09/24(木) 07:41:47.83 ID:kBQLu32e
投下終了。タイトルはwiki収録の時に

245 : ◆ymCx/I3enU :2015/10/05(月) 00:29:08.04 ID:wrNuCBsX
投下乙です
こちらこそ最近全く投下出来てなくてすみません許して下さい! 一話書き上げますから!
……と思って書いていたらうっかり保存するの忘れて全部消えたゾ
あーあもう一からやり直しだよ

あああああああああああああああああああああああ!!!!(発狂)

246 : ◆84AHk0CknU :2015/10/05(月) 03:06:43.36 ID:8Hwo4XeB
お、大丈夫か大丈夫か(迫真)
焦らず自分のペースで進めてくれていいから(良心)

247 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:12:12.43 ID:qMT4NXAP
某所の某企画に触発されたので、こちらでひっそりと。
バトロワもののライトノベル作品「魔法少女育成計画」を元ネタとした非公式非リレー企画です。

何事もやるという意識が大切だと思うで、とりあえず予告編がてらにあらすじとお馴染みのキャラ紹介を投下します

248 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:13:18.38 ID:qMT4NXAP
◆あらすじ

 「『子供達』が、非合法な『試験』を主催しようとしている」

  北の港町、H市の魔法少女達のもとにある日届けられたそんな伝令。
  過去に撃破された犯罪者、フレイム・フレイミィの『子供達』が、魔法の国より離反し逃亡しているのだという。
  魔法少女の階段を登り始めた少女達。そして、試験を止めるべく乗り込んだ『魔法の国』のエージェント達。

 「どういうことだ――此処は、本当に人間の街なのか……!?」

  炎と、嘘と、星と、記憶――あらゆる輝きに彩られたこの街で、起こる筈のない『試験』が幕を開ける。

249 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:14:21.63 ID:qMT4NXAP
魔法少女名       魔法  
                      
☆めるくりっぷ     剣から魔法の雷を出せるよ              
☆Pleiades       星のささやきを聴くことができるよ          
☆サクラ        相手の持っている能力がわかるよ          
☆クロックシルク    とても立派な家を作ることができるよ         
☆魔法名医シャルル   みんなとお医者さんごっこをして遊べるよ       
☆ひーたん       どこまでも自由に飛んでいく紙飛行機を折れるよ    
☆うるる        シャボン玉を思い通りに操ることができるよ      
☆ハニーシュガー    眠る度にどこまでも強くなれるよ           
☆リンカーペル     頭の中で会議をすることができるよ          
☆レオーネ       自分のことを絶対に無視させないよ          
☆スモーキン・ハリィ  魔法の葉巻で煙の魔法が使えるよ           
☆ウェンディゴ     格下の相手には負けないよ       
☆バースデイ・リック  持っているものを絶対に壊れなくするよ   
☆にゃんぴぃ      人や物を鈴の音で引き寄せるよ     
☆クールマリン     機械の中に入ることができるよ 
☆シアンハット     どんなものにでも取り付けられる魔法のドアが使えるよ

★コロ             

250 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:15:10.83 ID:qMT4NXAP
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「私の剣は聖なる稲妻……さぁ、浴びたい奴から前に出なさい!」

 ある時代、日本は行き過ぎた科学の発展によって管理社会と化した。
 戸籍や家計、配偶者すらコンピューターに管理され、刃向かえば手痛い罰が待ち受ける人間の鳥カゴ。
 しかしそんな国にも一人、立ち込めた闇を晴らさんと邁進する正義の反逆者があった!
 纏う衣装は海の如く澄んでいて、一度微笑めばエサを抜かれた猛犬だって尻尾を振る。
 立てば芍薬、座れば牡丹、戦う姿はめるくりっぷ!
 これは一人の小さな想いで、日の丸を取り戻す物語!

 新番組!『めるく☆うぉーず』
 第一話「極めて物理的な手段によるメモリクラッシュ」
 どんな機械も、電気一発ぶっ飛ばす!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「命短し恋せよ乙女とはよく言いますが。
 ……私のような身分の娘は、果たして誰を真に愛するべきなのでしょうか」

 ここは華の街、宴と恋情の逆巻く街。
 そんな街が誇る高嶺の花は、まだうら若い少女だった。
 彼女は思う。抱かれ、愛され、身を委ね。
 惰性で続くこの緩慢な日々から、自分を連れ出してくれる者はいないものかと。
 けれどそれは叶わぬ夢。
 そして叶えてはならない夢だと知っているから、サクラは今日も涙を流した。
 だって、自分にはもっと大きな夢があるから。だから、この街を出るわけにはいかないのだ。

 新番組!『花は咲けども蜜は実らず』
 第一話「嘘も方便」
 華の香りは、時にせつない。


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「はいはーい! 時計ですね。ちょっと待っててください〜!」

 時計屋『クロックシルク』では、不思議な時計を売っている。
 腕時計、柱時計、懐中時計におもちゃの時計。
 変哲もないそのどれもが、持ち主が本当に強く願った時だけ、
 一番戻りたい時間へと時を巻き戻してくれる力を持っているのだ。
 けれど店主、白鳥萌衣はそのことを知らない。萌衣はただ、その人に一番合った時計を真心こめて売っているだけ。
 今日も今日とて迷える子羊が、奇跡を求めてやってくる――

 新番組!『アンティーク・メモリアル』
 第一話「ハト時計と夏の日の記憶」
 巻き戻りたい日にち、覚えてますか? 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)


251 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:15:56.29 ID:qMT4NXAP
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「なにっ、急患!? 
 すぐに受け入れろ! お茶とお菓子も忘れるな!!」
 
 シャルル診療所は客入りが少ない。
 医者の正しい信念はどこへやら、今やたまの急患搬入でぬか喜び。
 看護師には愛想を尽かされ窓ガラスは穴だらけ、
 床にはカップ麺の残骸が積み重なって足の踏み場もありゃしない。
 「命の価値に貴賎はない……それが分からない内は、どれだけ腕が良かろうが三流だよ」
 メスが錆びてても腕は確か、心意気も超一流! 今日も元気にオペ開始!
 
 新番組!『シャルル先生は苦悩する』
 第一話「恋の悩みは専門外」
 これで医師免許があれば完璧なんだけどなあ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
「やだやだー! 私、絶対パイロットになるんだから〜っ!!」

 槇村比那は、子供の頃から飛行機のパイロットに憧れていた。
 だがしかし、比那の夢を阻んだのは過酷な現実。
 なんと彼女は乗り物酔いが生まれつき激しく、
 長距離移動ともなれば梅干しを一パック食べ尽くしてしまうほどだったのだ。
 親は鼻で笑い同級生も鼻で笑い、ペットのうさぎには耳で笑われた。
 そんな彼女はある日、乗り物に乗れなくても、飛行機を飛ばすことのできる方法を発見する。
 「紙飛行機……そっか、これなら!」

 新番組!『飛べ! ペーパーエアプレーン』
 第一話「はじめてのフライト」
 紙だって飛行機は飛行機だもん!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「雨の日が好きなんだ。だって、綺麗でしょ?」

 うるるは雨降りが好きだった。
 しとしと降り注ぐ水滴が奏でる音は、まるで自然のバラードだ。
 どこか切ない気分になるけれど、こうしていれば一人でも退屈になることがない。
 そうしてうるるは今日もまた、雨降りのバス停で雨の音色を聞く。
 そんな時。傘も差さずに立ち尽くしている彼女へ、不思議そうに誰かが話しかけた。
 「……おめー、何してんの?」
 これは、雨の日から始まるジュブナイル。

 新番組!『うるるの雨降り日記帳』
 第一話「出会いの音色はクレッシェンド」
 どうやら明日も雨みたい。 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)


252 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:16:57.04 ID:qMT4NXAP
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……ぐぅ」

 魔法の国の学校へ通う、ハニーシュガーは居眠り少女だ。
 国語も数学も理科も社会も、英語はおろか体育ですらぐっすり眠る。
 しかし、彼女の快適睡眠ライフは残酷にも終わりを告げた。
 あまりの授業態度の悪さにより、あと一度でも居眠りをすれば退学処分だというのだ!
 鬼! 悪魔! 少女の声は誰も聞いちゃくれない。
 皆がいい気味だとせせら笑う教室で、ハニーシュガーが打ち出した打開策とは!?

 新番組!『寝る子は育ちすぎた』
 第一話「決めた、世界を滅ぼそう」
 眠れる獅子だと思ったな? 残念私はドラゴンだ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「どうすんのよこれ!
 あーもうっ、自分会議開始ー!!」

 リンカーペルには奇妙な特技があった。
 困った時、どうしようもない時、
 迷っている時、難しい問題を出された時。
 頭の中に住んでいるもうひとりの自分と、すごく濃密な相談をすることが出来るのだ。
 「うーん、いや、こりゃちょっとどうしようもないっしょ」
 「えぇっ!? そこをなんとか!」
 「君さ、僕をドラえもんかなんかと勘違いしてない?」
 ……役に立つかどうかは別として。

 新番組!『どっぺるどっぺる』
 第一話「会社の金をヤギに食われた時の対処法」
 この後こってり絞られました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「は? いや、こんなレベルでこのクエ来んなよ」

 大人気MMORPG『マジカルクエスト』。
 江戸澤露子もまた、このゲームに心血を注ぐ廃人プレイヤーの一人だった。
 身の程を弁えない地雷と利益だけこそげ取っていく寄生プレイヤーに怒りを燃やしつつ、
 毎日いつドロップするかも分からぬレア武器を求めて同じクエストをひたすら巡回する日々。
 そんなある日彼女は、目を覚ますとゲームの中の世界に居た。
 冴えない大学生、江戸澤露子ではなく……狙撃手『レオーネ』としての過酷な日々が、今幕を開ける!

 新番組!『マジカルクエスト』
 第一話「周回作業をやってみた」
 体感してみて一層わかった! やっぱこいつらクソだ! 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)


253 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:19:15.90 ID:qMT4NXAP


「なに? リューコが隣町の奴らにやられただと?
 こうしちゃいられねえ! 行くぞお前らァ!!」

 ごっつい葉巻を口端に、バイクをかっ飛ばして今日も喧嘩三昧。
 いついかなる時も煙の出るものを咥えている彼女は、伝説の女番長だ。
 葉巻咥えてヤクザを蹴散らし、警察相手にカーチェイスを繰り広げ、
 ついたアダ名が『スモーキン・ハリィ』。今や泣く子も黙るし先公も逃げる。
 そんな彼女は確かに悪魔。だが、悪魔は悪魔でも友情を知った悪魔だ。
 どんなに使えない奴だろうと仲間は仲間。
 それに手を出したってんなら遠慮はしねえ、全軍突撃で片付けるのがハリィの流儀!

 新番組!『ハリィ猛将伝』
 第一話「氷砂糖のヤナセ」
 アタシの葉巻はフィリピン産だよ。





「今日はお月様も見ていないようだ」

 霧の出る、月の出ない夜には悪者が影を潜める。
 何故ならそういう日は、悪を成敗し夜の静けさを守るダークヒーローが現れるからだ。
 ウェンディゴに出会った悪人はこう語る。
 もう悪事は懲り懲りだ。――大手企業の敏腕セールスマンだった彼は、次の日から炊き出しに並んでいた。
 ウェンディゴに出会った善人はこう語る。
 ヒーローなんて懲り懲りだ。――やっとこさ稼いだ一月分の給料が、全部見知らぬ口座に振り込まれていた。
 ダークヒーロー、ウェンディゴはこう語る。
 「ヒーローにも色々な形があるということです」

 新番組!『ミスト・ザ・ヒーロー』
 第一話「夜道でやたらに振り返れ」
 そんなウェンディゴにも秘密があるとかないとか。





「お母様、見ていてください!」

 リックは幼くして母親と生き別れた。
 どこにいるのかも分からない、そもそも顔も覚えていない。
 それでもただ一つ、彼女はバレエを見るのが好きだったことだけは覚えていた。
 だからリックはバレリーナを目指す。
 手始めに養成校へ通おうと思ったリックだったが……
 「ちょっ!? 養成校ってこんなにお金かかるんですか!?」

 新番組!『貧乏少女がバレリーナになるまで』
 第一話「自販機ミッション」
 舞踏王に私はなる!

254 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 02:20:09.94 ID:qMT4NXAP



「にゃ、ん、ぴぃ。
 そうそう、にゃんぴぃ。えへへ、えらいね〜」

 猫の集会には謎が多い。
 しかしこの魔法少女だけはその真相を知っていた。
 彼女は魔法少女にゃんぴぃ。
 すべての猫の友達であり、人間社会よりも猫社会で生きている時間の方が長い異端児である。
 奇妙ながら平穏な日常を送っていたにゃんぴぃだったが、
 それはある三毛猫が運んできた情報を聞くなり一変することになる。
 なんとゴルフ場の建設で、おなじみの集会所がなくなってしまうというのだ……!

 新番組!『ねこデモ』
 第一話「初めてのデモ行進」
 行政の横暴を許すな!





「バグだって生きてるんだよ」

 精密機械に携わる者なら、誰もが知っている噂話がある。
 なんでもどんな欠陥を抱えた機械だろうと、
 彼女に預けてしまえば必ずとんでもない高性能になって帰ってくるというのだ。
 曰く伝説のメカニック。人々は彼女に憧れ、そして探し求めた。
 しかし彼女はそんなことどこ吹く風で、今日も気ままに、迷えるエンジニアの前へ現れる。
 「どしたの。何か困ってる?」
 「あ……実はこのソフト、どっかバグってるらしくて……」
 「ふーん、貸してみな。ちょっと注意してくるから」
 「へ?」

 新番組!『クールマリンの気ままなおさんぽ』
 第一話「時には力づくで」
 外的損傷は専門外だよ!





「はははっ! いっただきぃ!」

 巷を騒がす大怪盗が、今日も夜の街を暗躍する。
 シアンの帽子だから、シアンハット。
 怪盗シアンハットは現代のアルセーヌ・ルパンだ。
 ビルの間なんてひとっ飛び、警備なんて特製迷彩服でまるっと欺く。
 コンクリの壁も無駄無駄無駄無駄!
 ガチャリと正々堂々ドアを付けて、ドアを開けて、閉めればはい侵入完了ってね!
 さてさて肝心のお宝は〜……
 ――ええっ!? 小さい女の子!?

 新番組!「怪盗親子は夜更かしがお好き」
 第一話「閻魔の舌」
 どこでもドアじゃないっつーの。

255 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/14(水) 21:03:38.08 ID:qMT4NXAP



「ある魔法少女を探してる」

 日本中を渡り歩いた。
 星が導くままに、街の隅々を探し求めた。
 けれどあの子はいなかった。
 やがて、あの子がもうどこにもいないことを知った。
 でも、人探しが終わったわけじゃない。
 あの子の代わりになった、どこかの女の子を探している。聞きたいことがある。
 だから、私はその魔法少女に会わなきゃならない。
 そうしなきゃ――終われないんだ。

 新番組!『星に引かれてPleiades』
 最終話「流れ星」
 なあ、キミはあの時――





規制解除されたのでひとまずこちらに。
本編は今週中に……できたらいいなあ。

256 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 01:56:02.50 ID:3eyR0qZU
プロローグ投下します。

257 :プロローグ ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 01:56:51.74 ID:3eyR0qZU
☆???


 届かないからこそ美しいものがある。
 例えば、花畑を自由に舞う綺麗な蝶々を追い回した経験は誰にでもあるだろう。
 虫取り網を片手に、あの綺麗な羽を間近で観察し、あわよくば虫籠で飼ってやろうと欲を抱いて草原を駆け回る。
 けれど、いざ捕まえてみて――間近で眺める蝶々が、所詮はただの虫だということに気付かされる。
 逃れようともがく六本の足、昆虫特有のお世辞にも可愛らしいとは言い難い腹部や眼。
 美しい羽は触れる度に鱗粉を散らし、花畑を悠々と飛び回っていた姿とは大分見劣りする。
 それでもせっかく捕まえたのだからと飼育したところで、寿命なんてたかが知れている。

 ある日、何となしに籠の中を見て、地べたに横たわって息絶えている蝶を発見する。
 羽は心なしか萎れて見え、命をなくした複眼はただただ不気味にしか見えず、時には体液さえ出しているかもしれない。
 その時、思う。――なんでこんなのを、綺麗だなんて思ったんだろう、と。
 
「要はルービックキューブだと思うの」

 どこかの屋上。
 熟れた林檎のような赤い夕焼けを背に、煤けた座椅子へ腰掛けて、ルービックキューブをがしゃがしゃ回す。
 少女は綺麗だった。背負った赤色にほんのり染め上げられた髪の毛は、一本一本がまるで絹糸のように艷やかだ。肌には年頃の吹き出物一つなく、知的玩具を弄ぶ手元を見つめる瞳は硝子球のように透き通っている。
 しかしそう見えるのはきっと、我々が彼女と同じ土俵に未だ届いていないからに違いない。
 少女は綺麗ではない。見た目をどれだけ取り繕おうとも、その中身は熟れて地に墜ちた林檎の如く膿んでいる。

「遠目に見たら綺麗だった。けどいざ近付いてみたら色合いはバラバラで、お世辞にも出来がいいものじゃなかった。
 だったら簡単、『組み直す』。ねえコロ、私は思うよ」

 がしゃん。
 ルービックキューブが、完成した。
 あるべき場所にあるべき色を。
 微塵のズレもなく、あるべき美しさが完成した。
 それを思い切り、渾身の力で柵の向こうに放り投げて。

「私なら、『魔法少女』――組み直せるって」

 少女は笑った。
 華が咲くように笑った。
 贋作の魔法少女を眺めて、笑っていた。

258 :プロローグ ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 01:57:49.85 ID:3eyR0qZU
☆ウェンディゴ

 帰ってきた答案用紙には、赤い丸が所狭しと犇めいていた。
 点数欄には他の生徒より一個桁の多い点数。
 遠慮がちに答案を覗き込んでは、クラスメイト達が感心の声を漏らして自分の席へと戻っていく。
 いつからだろうか、こういう結果に対して素直に喜びを示せなくなったのは。
 贅沢で中学二年生じみた悩みだと自分でも思うが、感動できないのだから仕方がない。

 木野七代はエリートだ。
 文武両道、才色兼備。
 厳格な両親の教育方針もあって、習い事の類は概ね修めさせられた。
 あれをやりなさいこれをやりなさい。言われるままに七代はやった。こなした。両親はすごく喜んだ。
 周りはここぞとばかりに七代を褒めた。家が金持ちだからという理由もあって、周囲から人が絶えたことはない。
 別に金を持っていても使い道はないので、七代はとにかく気前がよかった。
 級友の誕生日会に呼ばれれば流行りのゲームソフトを買っていく、皆で外食すれば進んで金を出す。
 そんなことをしているのに、彼を金づるとして利用しようとする輩がいないのは――ひとえに、やはり日頃の行いというやつだろうと七代は思う。

 七代は苛めには加担しなかった。
 かと言って、悪事を見つけたから密告するほど正義感に溢れてもいなかった。
 自分に実害が及ぶなら流石に行動するが、それ以外は基本好きにさせておけばいいと思っている。
 要は分け隔てがない。いつしか、不良と呼ばれる連中は七代を飯に誘うようになった。クラスの隅で小声で語り合っているサブカル愛好者達は、七代に一押しのアニメDVDを貸してくれた。頼んでもいないのに。
 女子にももてた。教師には贔屓された。親は七代を一度も叱ったことがない。七代に苦言を呈した新任教師は陰口と嫌がらせに堪えられなくなって着任から一ヶ月で出勤拒否になった。

 彼は高嶺の花だった。
 ただ、誰もが彼を人だと思っていなかった。
 何をやらせても完璧にこなす、非の打ち所がない「そういうもの」と認識していた。
 それに七代がある時気付いた。その日、彼は初めて友人との約束をすっぽかした。仮病を使った。
 
 七代は化け物じゃない。ましてや機械でもない。
 人並みの感性を、周りの評価と自身の才能で麻痺させて騙し騙し生きてきた、十五歳の少年だ。
 カルーアミルクのように甘ったるい酩酊した毎日は、皮肉にもアルコールの役割を果たす周囲の評価が終わらせた。
 確かめてみようと思った。
 生徒会選挙に出馬した。
 選挙活動なんてせず、ただ黙って結果を待っていた。演説でも何も喋らない。

 ――当選発表の日、でかでかと掲示板に張り出された名前の羅列。そこにあった自分の名前の下に、紙で出来た花飾りが付いているのを見て……木野七代は、「人間」になった。

 別に何かが変わったわけじゃない。
 ただ、少し彼は無遠慮になった。
 クラスメイトに、親に、教師に。
 危害を加えるわけではないし冷たく当たるわけでもなく、ただ、心の中で見下した。
 最初はただ、普段より少し高い目線を持っただけだった。
 そして、周囲のあまりの体たらくに愕然とした。
 どいつもこいつも、ただ縋り付くだけ。
 小難しい言葉は思いつかなかったけれど、なんだか胸の中がぐずぐずに荒れているような感覚を覚えた。
 しばらく考えて、多分嫌悪感ってやつなんだろうなと納得した。

259 :プロローグ ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 01:58:45.62 ID:3eyR0qZU
「やあやあやあやあ! どうしたのさウェンちゃん! いつにもまして不機嫌そうだね!!」
「……そう分かっているなら騒がないでくれないかな、うるる」

 外は雨がしとしとと降り注いでいる。時刻が夕暮れ時なこともあって街は薄暗く、裏通りともなれば人通りは皆無だ。
 そんな場所だから、魔法少女が活動するにはまさにうってつけである。
 魔法少女には規則がある。なるだけ人目を憚って行動する、というのもその一つだ。
 魔法少女はみだりに人前へ姿を晒してはならない。ましてや、その正体が明らかになるなど以ての外だ。
 人間に正体を知られた魔法少女は魔法少女ではなくなり、記憶を奪われる――そう、あの妖精が口を酸っぱくして言っていたからよく覚えている。第一、そうでなくとも進んで人前へこの姿で出ようなどとは思わないが。

 魔法少女「ウェンディゴ」は、見た目に苦労させられている不運な魔法少女だった。
 怪しげな紫色のアンティークドレスを纏い、髪は現実離れした緑色をしている。
 肌の色合いもどちらかと言えば蒼白に近く、おまけにその身体からは常に薄い霧のようなヴェールが漂っているのだ。
 魔法少女には欠かせない職務である人助けを行おうにも、まずこの見た目の時点で敬遠される。
 というか、逃げられる。素直に感謝された試しなんて本当に数えるほどしかなく、ひどい時は助けようとした相手がウェンディゴを悪霊のたぐいと勘違いし、騒いで別な魔法少女がやって来てあわや戦闘になりかけたこともあった。
 その時はどうにか事情を説明して事なきを得たのだが、このままでは魔法少女の本業を続けるのは難しいという結論に辿り着くまでそう時間はかからなかった。
 
 そこでウェンディゴは、その時トラブルになった魔法少女の提案を受諾することにしたのだ。
 即ち、二人一組(ツーマンセル)。
 お互いにお互いを手助けし、より円滑に人助けを行えるようにと結成した「魔法少女同盟」。
 センセーショナルなネーミングセンスはウェンディゴのものではなかったが、彼女としてもこれは願ってもない申し出だった。断る理由も見当たらない。――判断を早まったかなと思い始めたのは、それからすぐのことだったが。

 魔法少女「うるる」。
 つややかな黒髪は特に前髪が長く、両目を隠してしまっている。
 全体的にこじんまりとした体格が否応なく見る者の庇護欲を掻き立て、薄手の白いワンピースはその印象をどこか儚げなものにまでしていた。 
 早い話が、ウェンディゴと正反対に、見た目で得をするタイプの魔法少女。
 しかもおまけにこのうるる、実際の性格は大人しさとは無縁であるから質が悪い。

「なに、学校うまく行ってないの? それとも魔法少女のことバレちゃったとか?」
「だったら僕は今ここにいないよ。それに学校だって今まで通りだ。
 ……大体、君にそこまで踏み込まれる理由はないだろう。あくまで魔法少女という、仕事上の関係なのに」
「つーれーなーいーなー。ボクとウェンちゃんの仲なのに?」

 傘をくるくる回して、水が跳ねるのを厭うこともなく水溜りにジャンプで飛び込みはしゃぐ姿はまるで小学生だ。
 うるるの実年齢がどの程度かウェンディゴは知らないが、話していて、少なくとも中学生未満ということはないだろうと感じた。同年代とするには、少し言動が幼いような気もしたが。
 ウェンディゴはうるるのことを何も知らない。
 なのにうるるは、ウェンディゴの秘密を知っていた。
 もちろん自分から話したわけではない。ないのに、いつの間にか知られていた。
 問い質すと、どうやら彼女の魔法を使われたようだと分かり……ウェンディゴ、もとい木野七代は、何年ぶりかの心からの溜息を吐き出すことになった。


「――あ! 子猫、いた! そこの角を曲がってすぐにある、青いゴミ箱の影!!」


 うるるの魔法は、「シャボン玉を思い通りに操る」というものだ。
 最初はどんな魔法だよと思ったが、しかしこれが意外なほどの応用性を持っている。

260 :プロローグ ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 01:59:21.90 ID:3eyR0qZU
 まず、シャボン液はなんでもいい。彼女がいつもポケットに忍ばせている小瓶に、水だろうが油だろうが、なんでもいいので液体を入れれば、素材の性質はそのまま保持したシャボン玉が出来上がる。
 おまけに数も自由自在だ。この前は、逃げ回るひったくり犯にシャボン玉を止むことなく叩きつけ、強引に足止めしたこともあった。そして何より厄介なのが、ウェンディゴの秘密を暴いた――シャボン玉をいわゆる偵察機として扱う使い方だ。
 飛ばしたシャボン玉のそれぞれが見ている映像を、うるるは自由に自分の視界と共有することが出来る。
 ストーキングから今回のような探しものの場合まで、実に幅広く、傍迷惑に使うことの出来る彼女の技の一つである。

 指示通りに曲がり角を右折して、ゴミ箱を持ち上げた。
 するとすっかりずぶ濡れになった黒猫が、上目遣いでウェンディゴを見上げている。
 ウェンディゴはそれをゆっくり抱き上げて、今日の人助けもばっちり終了した。


 うるるが子猫を飼い主のもとまで届け、帰途に着く頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。
 まだ時間的にはそう遅くもない筈だが、やはり雨降りの黄昏時というのは気分的にも風景的にも仄暗く陰鬱だ。
 うるるの住処がどこなのかは知らないし興味もない。ただ、途中までは同じ方向らしいことは知っていた。だからウェンディゴとうるるは、肩を並べて何を話すでもなく一緒に歩いていた。
 衣装の様子は違えども、絶世といっていい美少女二人が並んでいる姿は相当絵になる。
 誰かに見られた日には写真を取られるか、最悪怠い絡みを持ちかけられても不思議ではないだろう。
 そんな中、ぼうっと口を開いたのはウェンディゴの方だった。
 うるるに話しかけたというよりかは、本当にただ呟いたような感じで。

「しかし、今回も魔法を使わなかったな」

 ウェンディゴは、自身の魔法を使ったことが殆どない。
 魔法少女になりたての頃に数度実験的に使っただけで、しかもそれも一般人相手の実験だったから此処にはいない妖精から苦言を呈される結果に終わってしまった。
 
「ウェンちゃんのは使い所限られるもんね。魔法少女って、何かと万能すぎるとこあるし……
 例えば今日の猫ちゃんに走って逃げられても、そんなに運動の得意じゃないボクだって簡単に追いつけるんだから。格が上だとか下だとか、勝ち負けだとか。そういう話になることってまずないと思う」
「丁寧な分析ありがとう。まったく、こればかりはどうにも困りものだな」

 せめて空を飛べるだとか、そういう方がまだマシだ。
 ぼやくとウェンディゴは、自分の右手へ視線を落とした。
 ――彼女の魔法は、「格下の相手には絶対に負けない」というものだ。
 実験をした時にはジャンケンやギャンブルなど様々な勝負を試してみたが、一度も負けたことはなかった。ちなみに相手に使ったのは炊き出しに並んでいるホームレス達である。
 特に見下しているつもりなどなかったのだが、いざという時の実験体として真っ先に浮かんだ上に、ちゃんと魔法も発動していた辺り、やはり無意識に彼らを格下だと決め付けていたらしい。
 ……我ながら、格の基準が自分の認識にあるというのは恐ろしい魔法だと思うのだが――人助けを生業とする魔法少女にとってはどうも、使い所のない魔法だと言わざるを得ない。
 それこそ、勝負に発展すれば大半のことは魔法少女の地力でどうにかしてしまえるのだ。
 相手が同じ魔法少女でもない限りは、使う機会はそうないといっていいだろう。

「けど、こういうのも面白いよ」
「? どういうこと?」
「いや、こっちの話だ」

 格がどうこうというのは、いかにも自分らしい魔法だと思う。
 だが魔法少女としての仕事では使い所に欠け、こうして悩ましさを感じている。
 それが、ウェンディゴには新鮮だった。
 それと同時に、やはり魔法少女になったのは間違いじゃなかった――と、改めて実感する。
 ……無論、こんなことは誰にも言えない。未来永劫、自分から誰かへ話すことはないはずだ。

 ウェンディゴが魔法少女になったきっかけは、別に運命的な偶然じゃない。
 シアンハットという先輩魔法少女がある日突然七代の前に現れ、彼女の連れていた妖精が七代の素質を見出した。
 そもそも少女ではないし、大体何の話をしているのかさっぱり分からない。

261 :プロローグ ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 01:59:56.70 ID:3eyR0qZU
 抗議は意にも介されず、半ば強引に七代は魔法少女「ウェンディゴ」にされた。後から聞いた話だが、男性が魔法少女に変身した例も数こそ多くはないものの存在するという。
 それどころか動物など、人間以外の生物が魔法少女をしている場合もあるというのだから、何でもありだなと思う。

 シアンハットは決して頼れる先輩ではなかった。
 いつもけらけら楽しげに笑っていて、一応物事は教えてくれるが放任主義のきらいが強すぎる。
 妖精のコロは質問すれば説明してくれたが、それでもやはり常に呼び出せるわけではなく、結果としてウェンディゴは魔法少女の身体について、魔法についてを自分で勉強する羽目になった。
 ただ、それは彼にとって楽しいことだった。
 ゲームをしたことは人並みにある。けれど、自分がゲームの登場人物のような力を手に入れたことはない。
 鬱屈とした「リアル」の問題にぶち当たっていた彼が、非現実的な魔法少女の仕事に没頭するようになるまで、そう時間はかからなかった。
 うまくいかないことの楽しさを、初めて知った。
 
 雨が強くなってきた。
 うるるの傘に入れてもらいながら、二人で歩いた。
 しばらく歩いて、ちょうど別れる地点に差し掛かった頃。
 彼女が不意に足を止め、前方を指差した。
 その方向へ視線を向ける。――そこには、奇妙な少女が居た。

 衣装の至る所に星の飾りを散りばめて、背中には棍棒ほどはあろうかという大きな天体望遠鏡を背負っている。
 傘など差していないから濡れ鼠になっているが、それが彼女の美しさをより助長していた。
 一度見れば忘れられない美貌。隔絶した雰囲気。……彼女が何者であるか、推察するのに時間はかからなかった。
 
「こんにちはっ!」

 うるるが元気に挨拶し、傘から外れてとてとてという足取りで駆け寄って行く。
 
「ねえ、あなたも――」

 魔法少女なのかな、という台詞を最後まで言い終わる前に。
 星の少女は、彼女の台詞を遮って言葉を挟んだ。
 
「……"料理人"」
「へ?」
「料理人の、魔法少女」

 ……料理人の、魔法少女?

 ウェンディゴもうるるも、そういった存在に覚えはない。
 この街にいる魔法少女を全て知っているわけではないが、少なくとも知っている中には居なかった筈だ。
 星の少女はまっすぐにうるるの目を見据えて、もう一度問う。
 どこか機械的なほどの冷たい雰囲気を孕んだ声で、しかしそれとは裏腹の必死さを滲ませて。

「料理人の魔法少女を、知らないか」

 雷鳴が鳴った。
 だから一瞬、気付かなかった。
 懐に入れた「魔法の端末」が、耳障りな着信音を鳴らしていた。
 電源を入れた端末には、無機質なメッセージが躍っていた。

262 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/10/16(金) 02:02:17.79 ID:3eyR0qZU
以上で投下終了です。
原作を最新刊まで追っている方は「?」と疑問符を浮かべる箇所があるかと思いますが、仕様です。(?)
ちなみにウェンディゴは応募した魔法少女のひとりでした。

263 : ◆ymCx/I3enU :2015/10/18(日) 21:53:00.07 ID:+Y3pevJe
投下乙です
これだけの「魔法少女」の設定を考えられるのは凄い

(最近筆が進まずネタが思いつか)ないです
思っていた以上に軽いノリに出来てないんすよねぇ
なのでリスタートも視野に入れてます

264 : ◆YOtBuxuP4U :2015/10/19(月) 20:18:23.24 ID:a6kj7Brz
投下乙ですちょっと見ぬまに非リレー勢が増えてる…!ym氏のも含めて読むぞ読むぞ
まほいく原作を最新刊まで最近追いきったのでtwilightに困惑と期待が隠せない
自企画も今月中にはなんとかしたいなあ…!

265 : ◆ymCx/I3enU :2015/10/22(木) 22:09:57.43 ID:MfQDEbHL
リスタートしようと思ったが結局続ける事にしてやっと一話書いた
ぬわああああん疲れたもおおおおおおおん
てなわけで投下ァ!!

266 :揺れながら… ◆ymCx/I3enU :2015/10/22(木) 22:10:47.14 ID:MfQDEbHL
13話 揺れながら…

伊藤椿は小中学校二階の理科室にて目を覚ました。
そして程無く、自分が殺し合いの場に居る事を思い出す。

「殺し合いなんて無理、出来る訳無い」

心情を吐露する椿。人を殺してまで生き残ろうと言う勇気は彼女には無い。
また、この殺し合いには幼馴染であり大切な友人である修明院美宇、愛称ミーウも居た。尚更殺し合う事など出来ない。
デイパックを開けて中身を確認すると、基本支給品一式の他にスタンガンが出てくる。
セロハンテープで貼り付けられていた説明書には、改造して威力が強くなっていると書かれていた。
どれ程強くなっているのかは分からないが護身用としてなら役立つだろうと椿はスタンガンを装備する。
そして一先ず、校内を歩いてみる事にした。

◆◆◆

白虎獣人の青年が、小中学校の教室内で椅子に座って考え事をしていた。
彼の名はトロフィム・マラートヴィチ・クルトィフ。
休暇で日本(と呼称される国)に旅行に来ていた矢先、今回の殺し合いに巻き込まれた。
全くついていない、と溜息を漏らすトロフィム。
しかし巻き込まれてしまったものは仕方が無い。このゲームの中での立ち振る舞いを考えなくては。
自分に支給されたヌンチャクを見ながら思案するトロフィム。

「!」

その時、廊下の方から足音が聞こえトロフィムの耳がぴくりと動いた。
自分以外にもこの学校には人が居たようだ。
トロフィムは隠れもせず、その足音の人物が姿を現すのを待つ。
やがて、可愛らしい顔の美少女が現れた。ブレザーを着ているので学生らしい。

「あっ」

少女もトロフィムに気付いたようで、廊下からトロフィムの方に顔を向けた。

◆◆◆

校内を探索中、椿は白虎獣人の青年と遭遇する。
目が合い、動きを止める椿。勿論、校内に他の人間が居る可能性は視野に入れていたがいざ出会うと対応に困ってしまう。

「あ、あの」

声を掛けた直後、椿の頭に不安が過る。この白虎の男は安全なのか、と。
もしこの男が殺し合いに乗っていたら――――。

「日本人の方デスカ」
「え?」

思考を必死に巡らせていた椿に白虎青年が声を掛けた。
日本語なのだが片言である。外国人のようだ。獣人種は見た目では国籍が判断しにくい。

「はいそうです、失礼ですが、外国の方ですか?」
「ハイ、ロシアから来ましタ。トロフィムと言います」
「私は伊藤椿、と言います」

自己紹介を受け自身も自己紹介する椿。

「自分は殺し合ウ気ハ有りマセン。と言ってモ、スグニハ信じテ貰えナイでしょうガ」
「本当に乗ってないの?」

267 :揺れながら… ◆ymCx/I3enU :2015/10/22(木) 22:11:14.37 ID:MfQDEbHL
殺し合いには乗っていないとトロフィムは言う。
無論はいそうですかと鵜呑みには出来ない。しかし証拠を出せと言った所でどうにもならないだろう。

「分かりました、信じます……」
「アりがとウございマス」

結局トロフィムの言を椿は信じる事にした。

「あの、トロフィムさん、私と同じ制服を着た狐の女の子を見ませんでしたか?」
「いえ……伊藤サンがこの殺シ合イで、初めて会った人デシテ。ご友人、ですか?」
「はい……」

ミーウの事を知らないか尋ねてみるが、トロフィムからは否定が返ってきた。
少し残念そうにする椿だったがそう簡単に手掛かりは得られまいと思いすぐに気持ちを切り替える。
それに、ミーウはかなりしぶとい一面が有るのできっと大丈夫だろう、とも椿は思っていた。
具体例をあげると軽トラックに撥ねられても自力で立ち上がり病院に向かった逸話が有る程である(軽い打撲と切り傷で済んだ)。

「伊藤さんハこれカラどうされるおつもりですか?」
「うーん、取り敢えずこの学校の中を見て回ろうと思って……ミーウも捜さないといけないし……ああ、具体的には何も決めてない」
「良ければご一緒シテモ、宜しイデショウカ」
「え? でも、どうして?」
「この殺し合イの中、女性一人ハ危険だと思っテ、デモ無理にとは言いませン。何シロ自分もまだ伊藤さんと出会ったバカリデスシ、信用シロと言う方が無理ですヨネ」
「……」

考える椿。トロフィムの言う通り、死と隣り合わせのこの状況で欲望に首をもたげ、女相手に凶行に及ぶ男が居ないとは考えにくい。
勿論それも有るのだが単純に心細いと言う理由も有ってこの先一人で行動するのは正直不安である。
ここまで会話して、このトロフィムと言う白虎の青年は少なくとも自分に危害を加えるつもりは無いようだし信じても良さそう――――椿はそう判断した。
何だよお前の安全意識ガバガバじゃねえかよ

「分かりました、一緒に行きましょう」
「宜しくお願イしまス」

何はともあれ、椿はトロフィムを同行させる事にした。

◆◆◆

トロフィムは伊藤椿の事を隙を見て性的に襲おうというつもりは一切無い。
だからと言って邪な気持ちが無いとは言っていない。彼は椿の身を案じている「振り」をしているだけ。

(〈この子は僕の事を信用してくれたみたいだ。うん、好都合だな〉)

彼が椿と共に行こうと決めたのはひとえに都合良く利用する為にほかならない。
一人で行動するよりも二人で行動した方が、いざと言う時盾にも出来るし、他の参加者と会った時女の子を信用させ連れていると言う事で油断もさせやすい、
色々と便利なのである。椿は警戒していたようだが結局は自分を信じてくれたようだ、とトロフィムは思う。
この殺し合いにおいてトロフィムは自分の生存を第一に考えると決めていた。
積極的に他人を殺害し数を減らすのも良いがそうなると当然自分もリスクを背負わなければならない。
参加者は50人以上居る。自分以上の実力者が居る可能性も有る。長期戦は必至であり、出来るだけリスクの少ない方法を選ぶ必要が有る。

268 :揺れながら… ◆ymCx/I3enU :2015/10/22(木) 22:11:51.44 ID:MfQDEbHL
(〈上手く利用させて貰うよ伊藤椿さん。場合によっては君には死んで貰う事にもなりそうだけどね〉)

トロフィムが心中でそんな事を考えているなど、椿は分かる筈も無かった。


【明朝/D-4小中学校】
【伊藤椿】
状態:健康
装備:改造スタンガン(バッテリー残り100%)
持物:基本支給品一式
現状:死にたくない。殺し合いはしたくない。ミーウ(修明院美宇)と合流したい。トロフィムさんと行動する
備考:取り敢えずトロフィムは安全と結論付けましたが心のどこかでは少し不安に思っている

【トロフィム・クルトィフ】
状態:健康
装備:ヌンチャク
持物:基本支給品一式
現状:自分の生存が第一。その為に利用出来る物は利用していく。伊藤椿と行動しいざと言う時は盾にする
備考:修明院美宇の事を伊藤椿から聞いている

----
《キャラ紹介》
【伊藤椿】
読み:いとう つばき
年齢:17
性別:女
種族:人間
特徴:幼い顔つきのグラマラスな美少女。学校制服のブレザー着用
職業:高校生
備考:美少女である事以外は特に目立った特徴は無い普通の少女。
同じロワ参加者である修明院美宇(通称ミーウ)は幼馴染の友人であり、過去に痴漢被害に遭った所を救われた事も有る。
過去に存在した「オリジナルキャラ・バトルロワイアル」の登場人物・周参見椿がモデルのキャラクター

【トロフィム・クルトィフ】
年齢:26
性別:男
種族:虎獣人
特徴:白虎の獣人。長身かつ引き締まった肉体。赤い瞳。グレーのジャケットとズボンを着用
職業:国家特務執行部隊隊員
備考:フルネームは「トロフィム・マラートヴィチ・クルトィフ」。
ロシア風異世界国家に於いて反体制派、危険人物の抹殺や監視を任務とする特務機関に所属する一人。
戦闘能力と身体能力は一級品。普段は温厚だが、他人の命を平気で奪える程には非情であり冷徹。
旅行が趣味で休暇の際は良く出掛けている。日本語他数カ国語を片言ながら喋れる

《支給品紹介》
【改造スタンガン】
支給者:伊藤椿
分類:補助
説明:無茶な改造を施し威力を上げたスタンガン。かなり強力な電流が流せるが反動で壊れてしまうかもしれない。

【ヌンチャク】
支給者:トロフィム・クルトィフ
分類:鈍器
説明:琉球古武術の武器の一つで、二本の堅い樫の棒を鎖で連結した物。
某アクションスターが「ほぁたー」などと声を発しながら振り回していたあれ。
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269 : ◆ymCx/I3enU :2015/10/22(木) 22:12:52.42 ID:MfQDEbHL
投下終了です
二人でいる事のメリット書いている部分ガバガバですが気にしないで下さい
やっとモチベが復活してきた

270 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/11/01(日) 18:35:18.93 ID:UUITB5og
投下乙です!

自分の企画ですが、遅くとも今週中には投下しようと思っていますので、今しばらくお待ち下さい。

271 : ◆ymCx/I3enU :2015/11/01(日) 20:38:28.46 ID:qJN6w9GE
投下します
タイトル:INTERFACE
登場人物:布川小春、藤堂リフィア、志水セナ

272 :INTERFACE ◆ymCx/I3enU :2015/11/01(日) 20:38:54.34 ID:qJN6w9GE
14話 INTERFACE

布川小春14歳はとある神社の巫女。と言っても別段特別な能力が有る訳でも無い。
強いて言うなら年の割に大人びた魅力的な身体付きと言うだけ。
神社兼自宅で訳有って一人暮らしをしていた。一応たまに親戚が様子を見に来てはいたが。
ある時神社に汚いオスの野良犬が住み着いた。妖犬か魔犬の類のようだったが毛皮はボサボサで何とも言えない異臭を放ち、
常に涎を垂らしていて目にも知性は無かった。知能も低いようで片言しか言葉を発せないようでもあった。
そんな野良犬に、小春は「惚れた」。何故かは不明であるが一目惚れした。
「タロー」と言う名前を付け、普段一人暮らしで少し寂しかった小春にとっての交流相手になったのだ。タローも小春には懐いたようで、よく甘えた。
そんな彼女だが更にタローに惚れる切欠になったのは、タローが軒下で自慰をしているのを目撃した時。
タローの陰部は何らかの性病によって幾つものイボが出来て真珠を幾つも埋め込んだようになっていた、それを見て小春はある種の感動を覚えてしまう。
自分はどうやら「汚いモノ」に興奮してしまう性癖らしい、と、小春は考えた。
そしてある日、小春はタローと「交わる」。汚れを知らぬ少女の身体は薄汚い野良犬によって存分に蹂躙され、小春はこの上無い至福を感じた。
以来小春とタローはより親密になり、毎日のように行為を楽しんでいた。

のだが。

気付けば二人一緒に殺し合いゲームの中。

「タローを探さないと」

巫女服を着た小春は、B-5の草原地帯の草むらにて、支給された大昔の小銃であるスペンサーM1860カービンを手にしながら今後の指針を口にしていた。
スペンサーカービンはフルサイズよりも軽いとは言え銃など扱った事も無い小春にとっては十分に重い。
かといって身を守る現在唯一の手段をデイパックの中にしまいっ放しにしておく訳にもいかない。

「かゆいなぁ」

巫女服の上から己の股間辺りを軽く?く小春。
タローと交わるようになって何ヶ月か経ち、恐らく病気を移されたのだろう、最近秘部に痒みを感じるようになった。
だが小春は後悔はしていない。むしろ「タローとの情事の証」として喜ばしく思う有様。

「あっ誰か居る」

少し歩いていると狼獣人の少女を発見する。自分より少し年上に見えた。

「あのー」
「!」

話し掛けると狼少女は少し驚いた様子で小春を見る。

「大丈夫です。私は殺し合いには乗っていません」
「本当……? それなら私も乗っていないんだけど」
「それは良かった。あの、何か、きったない大きな犬を見ませんでしたか? 知り合いなんですけど」
「犬? ごめんなさい、見てないわ」
「うーん、そうですか……あ、私は布川小春って言います。見ての通り、巫女です。コスプレじゃないです」
「私は藤堂リフィア、巫女さんなのねー」

友人のコスプレ好きが良く巫女の格好をしていたなと、ふとリフィアは思い出す。もしかしたらその友人とは二度と会えないかもしれぬとも。

「あ、そうだ。小春ちゃん、で良い? 小春ちゃんもし良ければ一緒に……」

一緒に行かないかと持ち掛けようとしたその時、リフィアは首に衝撃を感じた。
喉の奥から鉄錆の味のする温い液体が込み上げてくる。一気に意識が遠のいていく。
意識が消える寸前、リフィアの視界に呆然とした様子の小春の顔が映った。

「えっ」

目の前でリフィアの首に銀色の矢が刺さり、リフィアは崩れ落ちて血溜りを作り動かなくなった。
何が起きたのか分からず困惑する小春であったが、左上腕に衝撃を感じ、更に激痛が小春を襲い、彼女は我に返る。

273 :INTERFACE ◆ymCx/I3enU :2015/11/01(日) 20:39:35.24 ID:qJN6w9GE
「いった、あ、う、うわあああああああ!!?」

絶叫し取り乱す。
とにかく襲撃されてると言う事だけは辛うじて理解出来た為、脇目も振らず逃げ出した。

(痛い! 痛い! こ、殺される! 逃げなきゃ!)

リフィアはもう死んだと小春は思った。
首に矢が刺さって大量に血を流して生きているとは思えない。まだ生きていたとしてももう助かるまい。
それ以前に今は自分の事だけで精一杯だ。

痛みを耐えながら涙を流しながら小春は只管走った。

気がつくと小春は港の倉庫群のすぐ近くに立っていた。周囲を見回すが誰も居ない。先程の襲撃者は撒いたか、追ってきていないようであった。
だからと言って安堵も出来ないのだが。左上腕には矢が刺さったままで、ドクドクと流血し激痛を小春にもたらしていたのだから。

「うぐうう、痛いよぉ……」

呻く小春。痛みで定まらぬ思考の中、その足は港へと向かっていた。

◆◆◆

競技用のクロスボウを携えた、眼鏡を掛けた狐耳の少女が、つい今し方射殺した狼の少女の死体に近付く。
もう一人には逃げられたが特に問題は無かろう。

「こんな開けた場所で立ち話してるからよ……」

己の迂闊さを呪えと言わんばかりの台詞を発しながら少女、志水セナは狼少女のデイパックを漁ろうとした。

ガシッ。

そんなセナの左手が掴まれる。
誰に? 殺した筈の狼少女に。

「ナ、に、じてる、の」

喉の奥に何か詰まったようなくぐもった声で狼少女ことリフィアがセナに問い掛ける。
睨み付ける相貌は怒りに満ちていた。

「嘘、何で」

何故生きている、と言おうとしたセナの顔面に強烈な殴打が入った。
軽く1メートル程後ろに吹き飛ばされ、悶絶するセナ。その際眼鏡を落とすがそれに構っている余裕など無い。

「何しテるって、聞いてんダよォ!!」

牙を剥き出して怒鳴るリフィア。たった今セナを殴打するのに使った右手の拳を血が出る位固く握り締める。
首に刺さった矢を引き抜き、乱暴に放り投げた。
傷口から再び血が噴き出すが意に介さない。

「ひ、ひいい、ま、待って、いや、あの」

鼻血が噴き出る鼻の辺りを押さえ涙目になりながら、セナが弁解しようとした。
眼鏡を無くし狼少女の表情は良く見えなかったものの怒り心頭だと言う事はすぐに理解した。
何故相手が生きているのかよりもこの場を乗り切る方法を考えなければ、そう思うセナではあったが、
この場を何事も無かったかのように切り抜けられる言い訳は全く思い浮かばない。

274 :INTERFACE ◆ymCx/I3enU :2015/11/01(日) 20:40:01.78 ID:qJN6w9GE
「お前か? 私と、小春ちゃん、射ったの?」

射たれる前とはまるで別人のようなドスの利いた声と乱暴な口調でリフィアがセナに訊く。

「あ、う」
「おい」
「わ、訳が、これには訳がっ」
「射ったんだな!?」
「ひいぃ! ま、待っ……」

状況と当人の態度からして目の前の狐耳少女が自分と小春を射った張本人だと断定したリフィアは最早弁明には全く耳を貸さず、
狼狽するセナの顔面に渾身の力で蹴りを入れた。
倒れたセナの頭部を何度も何度も踏み付ける。不快害虫を踏み潰す時の如く。
断続的にセナの命乞いの声が響いたが、全て無視された。

ようやくリフィアの足が止まったのは、靴の裏も真っ赤に染まり、セナの頭部が直視出来ない程破壊されただの大きな肉の塊と化した頃だった。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……あっ……あ……やっちゃった……うえ」

ようやく怒りが収まり我に返るリフィア。自分が生み出した惨状を見て吐き気を催す。
いくら自分を殺そうとした相手とは言えここまでする必要は無かったかもしれない。そう思える位狐耳少女の頭部は酷い事になっている。

リフィアは不死体質であった。
頭部を完全に破壊されたり首を切断されたり身体を木っ端微塵にされたり全焼させられたりしなければ、
頚動脈を切ろうが心臓を刺されようが首を吊ろうが絶対に死なず一時仮死状態になるだけ。
クロスボウの矢で首を射抜かれた程度では死なない。
そして仮死状態から復活すると一時的にかなり凶暴になる。専門家曰く「防衛本能」との事。
元々のリフィアは心優しい少女である。

「……小春ちゃん、逃げたみたい……大丈夫かな」

一人逃げたらしい小春の事を気に掛けるリフィア。
自分を置いて逃げた事を責めるつもりは全く無い。あの状況では自分は死んだと思われただろう。
意識を失う直前、矢を受けていたのを見ていた為、尚更心配であった。

「いたた……折角殺し合いに乗ってない人と、出会えたのに……また会えると良いけど」

首の痛みを気にしつつ、リフィアは自分の荷物と、セナの持っていたクロスボウとその予備矢を回収し、歩き出した。


【志水セナ  死亡】
【残り47人】

275 :INTERFACE ◆ymCx/I3enU :2015/11/01(日) 20:41:12.64 ID:qJN6w9GE
【明朝/B-6港周辺】
【布川小春】
状態:左上腕に矢が刺さっている(出血微量だが矢を抜くと増える恐れ有り)、秘部が少し痒い
装備:スペンサーM1860カービン(7/7)
持物:基本支給品一式、.56-56スペンサー弾(14)
現状:殺し合いには乗らない。タローを捜す。傷を何とかしたい
備考:藤堂リフィアは死んだと思っている。襲撃者(志水セナ)の容姿は把握していない

【藤堂リフィア】
状態:首に矢傷(貫通している)、出血多し(命に別状は無し)
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品、競技用クロスボウ(0/1)、クロスボウの矢(9)
現状:殺し合いには乗らない。但し襲われたらそれなりに対処はする
備考:布川小春の事は気に掛けているが今の所追う予定は無い

----
《キャラ紹介》
【布川小春】
読み:ふかわ こはる
年齢:14
性別:女
種族:人間
特徴:黒髪。年不相応に大人びた魅力的な身体。巫女服姿
職業:中学生兼巫女
備考:とある神社の巫女をしている。訳有って一人暮らし。
いつも家で一人で退屈していたところへオスの野良犬が神社に住み着き一目惚れし「タロー」と名付け親密になる。
その際自分が「汚い物」「汚される事」に興奮を覚える性癖の持ち主であると自覚。
タローと一線を超え、病みつきになっている。最近タローに性病を移されたようで秘部が痒くなってきているがさほど気にしていない。
巫女ではあるが特殊能力が有る訳では無い、と思う

【藤堂リフィア】
読み:とうどう-
年齢:18
性別:女
種族:狼獣人
特徴:銀と白の毛皮の狼獣人。巨乳で金色の瞳。学校制服のシャツとスカートにベストを着用
職業:高校生
備考:愛称「リフィー」。不死体質を持った少女。
首を切断される、頭部を粉々にされる、身体を全焼されたり木っ端微塵にされるなどしなければ致命傷を負っても仮死状態になるだけで死なない。
但し仮死状態から復活すると一時的に非常に凶暴になり普段の彼女から想像もつかない程攻撃的になる。
基本的には心優しい性格である

276 : ◆ymCx/I3enU :2015/11/01(日) 20:42:28.38 ID:qJN6w9GE
【志水セナ】
読み:しすい-
年齢:17
性別:女
種族:半狐獣人
特徴:金髪の狐耳、尻尾の少女。眼鏡を掛けている。体つきは普通。学校制服のセーラー服着用
職業:高校生
備考:愛想が悪く、打算的。そのせいで友達は少ない。
近所の食堂「川田屋」に良く食べに行っておりそこの主人であり本ロワの参加者の一人である川田喜雄とは知り合い


《支給品紹介》
【スペンサーM1860カービン】
支給者:布川小春
分類:銃火器
説明:1860年にアメリカのクリストファー・スペンサーが設計したレバーアクションライフル。
レバーを操作して排莢、次弾装填を行いハンマーは手動で起こすという方式。
南北戦争で北軍に使用され幕末の日本でも輸入され使用された。本ロワ登場のカービンは八重の桜の山本八重が使用していた奴である。

【競技用クロスボウ】
支給者:志水セナ
分類:その他
説明:競技用に設計されたクロスボウ(ボウガン)。本来は戦闘用では無いが十分殺傷能力は有る。
本ロワに登場する物はオーストリア製のコンテンダーと言う物。安価で購入しやすいらしい。
----
・・・・・・・・・・・・・・・

投下終了です

277 :魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa. :2015/11/02(月) 01:37:29.14 ID:5VoQ3bQB
投下乙です
意外とノッてしまったので、まほいくtwilight、書けた分を投下します。

278 :フレイム・フレイミィの子供達(1) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/02(月) 01:39:38.50 ID:5VoQ3bQB
◆ ◆ ◆


 第一章 《 フレイム・フレイミィの子供達 》 


◆ ◆ ◆


☆魔法名医シャルル

「いやー、だるいっすねェセンセー」

 助手の魔法少女「バースデイ・リック」がだらしなく伸びをしながらそんな台詞を吐いた。
 普段は勤務態度がなっていないと窘めるところだが、今回ばかりはシャルルも同意見である。
 夕暮れに沈む雨の町並みをビジネスホテルの最上階から眺める度、どうせならもっと都会の街に行きたかったと思う。
 ずっと魔法の国に居を構えていたから、こっちへ戻ってくるのも随分久しぶりだ。
 休暇を取って戻ってきたとしても、大概が貯金を崩して海外旅行と洒落込んでいたものだから、尚更この言っては悪いが地味で、特に見所もない町に退屈なものを感じさせられてしまう。
 
 魔法少女は基本的に健康体だ。
 人間用の毒やウイルスでは害せないし、生半可なことじゃそもそも怪我すらしない。
 食事や睡眠も不要で排泄などは以ての外。そんな存在を相手に医師を営んでいるのが、このシャルルという魔法少女だった。 
 シャルルの経営する診療所は、人間社会でいう所の闇医者に近い。
 一つ違うところがあるとすれば、その活動が公的に認められ、それどころか評価されているところだろう。
 シャルルの患者は魔法少女同士の戦闘や諍い、謀殺紛いの事案に巻き込まれて負傷を被った魔法少女である。
 患者は昼夜時間を問わずに診療所の門扉を叩く。
 シャルルの仕事は、そんな彼女達へ事情を聞かず、何も言わず、ただ施せる最上の治療を提供すること。

 彼女の魔法は「みんなとお医者さんごっこをして遊べる」というものだ。
 響きだけを聞けば間抜けなことこの上ないと自分でも思うが、しかしこの間抜けな響きこそが、シャルルが「魔法名医」の二つ名を賜るに至った最大の理由であったといってもいい。
 要は、シャルルの施す医術は全てごっこ遊びなのだ。
 診療所を開設してからもう大分経つが、未だにシャルルは正しいメスの握り方さえ知らない。
 傷口の縫合のやり方も、昔家庭科の授業で習った布の縫い方をそのまま流用している。薬の調合は適当な雑草に水や紅茶をかけて混ぜているだけだし、PTSDを取り除くための話術なんて、ただ適当な絵本を読み聞かせてやるだけだ。
 信用問題になってくるからこのことは絶対に他言するなと助手や関係者に口を酸っぱくして念押しされる毎日だが、それでもシャルルの診療所を訪れた患者は九割以上が完治して社会へ復帰していく。
 助けられないケースもたまにはあるものの、それは大概既に死んだ状態で担ぎ込まれてきた場合だ。
 さすがのシャルルでも、失われた命までは治せない。それはごっこ遊びの範疇を過ぎている。
 とはいえ、それだけの人命救助率を誇る魔法少女なのだ。
 自ずと名前は知れ渡り、いつしかシャルルは魔法名医などという大層な名前で呼ばれるようになっていった。
 あまり目立つのが好きでないシャルルとしては、普通に「シャルル」のままでよかったが、彼女が無名だった頃から助手をやっていたリックは実に誇らしげだった。
 でも彼女も、今となってはシャルルの名が知れてしまったことを悔いているだろう。
 まさかよりにもよって、こんな面倒事に駆り出されるとは思ってもいなかった――と。

 その仕事が舞い込んだのは一昨日の晩のことだった。
 
 特に患者が来ることもなく、リックと暇潰しに二人でトランプなどして遊んでいた所にやって来た来客。
 見るからに上層部からの使いといった風体の魔法少女は、たかだか使い走りの分際でやけに偉そうだった。
 リックがいつ食ってかかるかとヒヤヒヤしながら見守っていたのだが、話の雲行きが怪しくなってきたのは――シャルルの旧知であった、とある魔法少女の名前が出たところからだった。
 
――フレイム・フレイミィ。

 懐かしい名前だった。
 そして、もう二度と関わることがないであろうと思っていた名前でもある。
 今思えばシャルルは友人だと思っていたが、あっちはきっと体のいい舎弟程度にしか思っていなかったのではないだろうか。そう思うと、割とドライな思考回路の持ち主と自負しているシャルルも流石に悲しくなる。
 魔法少女になりたての頃は、派手で分かりやすく強い彼女の魔法へ真剣に憧れたものだった。

279 :フレイム・フレイミィの子供達(1) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/02(月) 01:40:10.90 ID:5VoQ3bQB
 違えた道は、もう二度と同じになることはなかった。
 少し思う所があったが、医者という職業をしていると人の生死や運命を割り切れるようになる。
 たとえごっこ遊びの延長線であろうと、それは同じだ。
 フレイミィにはフレイミィの、自分には自分の生きる道がある。
 あいつは失敗して、私は成功した。それだけのことで、どこまでいってもそれ以上にはなりはしない。

 そのはずだった。
 なのにその態度の大きな来訪者は、事もあろうにこんなことを言ってのけたのだ。


  ――北の港町、H市。
  ――そこへ、かつてフレイム・フレイミィの『試験』を乗り越えた『子供達』が逃亡、潜伏している。
  ――人事部門の同僚三名を惨殺し逃亡していることから、魔法の国への離反意思があることはほぼ明白。
  ――恐らく目的は、『試験』の実施。形式は言うに及ばず、『森の音楽家』が用いたものである。


 勘弁してくれと思った。なまじ医師として精神分野に精通しているから、その先何を言いたいかが分かってしまったのだ。
 そして予想は的中した。どうやら上層部は、この魔法名医とその助手リックに、渦中のH市へ向かって欲しいらしい。
 リックが待ったをかけた。問い質してみるとその理由は――あまりにも馬鹿げたものであった。

 上層部は、未だに自分がフレイム・フレイミィの『試験』へ関与していたと思い込んでいるというのだ。
 
 その件に関しては、事が明るみに出た頃に散々事情聴取をされた。
 最終的には心理干渉系の魔法の使い手まで出てきて、それでやっと解放された苦い思い出だ。
 それでてっきり疑いは晴れたと思っていた。現に魔法のパティシエが作ったという菓子折りも送られてきた。しかしこんな無理難題が舞い込んでくるということは――

「お上にはまだ、センセーのこと疑ってる連中がいるってことかあ」
「面倒な話だが、そうらしい」

 バカな連中だねぇ、嫌になるねぇ。
 明らかに不貞腐れた調子で唇を尖らせるリックの姿に、シャルルは口元を緩める。
 バースデイ・リックとの付き合いは長い。彼女は小手と一体化した盾を両手に備えた、どこか騎士のような魔法少女だ。
 しかしこの通り言動は軽薄で、人懐っこいように見えて意外と人見知りが激しい。最初の頃はちょっとした意志疎通にも結構な手間を掛けさせられたものだったが、今ではこの通り、すっかり懐いてくれている。
 きっとリックは、シャルルがありもしない疑いをかけられているのが腹立たしいのだろう。

「でもちょっと今回のコトは無能すぎません? 
 いくらフレイミィとの繋がりが過去にあったからって、それでセンセーに試験止めてこいとか、無理言うなよハゲって感じなんですけど」
「そうだね。更に言うなら、おかしいことはもう一つある」

 シャルルは指を一本立てた。

280 :フレイム・フレイミィの子供達(1) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/02(月) 01:40:58.83 ID:5VoQ3bQB
「何より不可解なのは、疑うべき対象である私をみすみすフレイミィの『子供達』と引き合わせるところだよ」
「あー、確かに。それで二人揃ってトンズラでもし始めたらどうするつもりなんでしょーね」
「まあ、どちらにせよ今回の指示は疑問が残ると言わざるを得ないな。それを受けてしまう我々も我々だが」

 魔法名医シャルルと助手、バースデイ・リックの二人が今回命ぜられたのは、先ほどリックが述べた通り、「フレイム・フレイミィの『子供達』による非合法試験の破壊」である。
 ……まず間違いなく、何度聞いても、医師に任せる仕事ではない。
 当然断ろうと思ったが、あの伝令役は明らかにこちらの足下を見ていた。
 シャルル診療所が如何に名を馳せているとはいっても、時には犯罪者とすら癒着する運営方針を「魔法の国」が黙って看過するかと問われれば否である。
 医術を用いて「魔法の国」の運営へ貢献している働きを鑑み、これまでは活動を容認こそされねど、黙認はされていたのだったが――これを断れば、いよいよこれまで通りとはいかないぞ、と。
 闇に片足を突っ込んだ職業の宿命だ。
 お上に目を付けられてはのっぴきならなくなる。
 後はもうなし崩しだった。つい数時間前にシャルルとリックはH市へと到着を果たし、こうして雨降りの黄昏時を惰性で過ごしている。

「……とりあえず、もう少し休んだら町へ出て、先遣隊の魔法少女と合流することにしようか」
「そーっすねェ。あー、あたし仲良くできるかなあ」
「毎度仲を取り持つために奔走する私の身にもなってほしいところだよ」
「だってこういうワケの分かんねー仕事押し付けてくるクソ上層部と同じ穴の狢な連中ですよぅ?
 どうせとんでもねークソ女とかメンヘラとかが来るのが見えてますもん。あーやだやだ……」

 これは、今回も苦労させられそうだ。
 多難な前途を想いながら何度目かの嘆息をして、魔法名医シャルルは身をベッドへ横たえた。

281 :フレイム・フレイミィの子供達(1) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/02(月) 01:41:52.52 ID:5VoQ3bQB
投下終了です。
次回は魔法名医シャルル、バースデイ・リック、にゃんぴぃ、リンカーペル、クロックシルクを出す予定です。
今週中には投下します

282 :フレイム・フレイミィの子供達(2) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/12(木) 01:24:17.68 ID:Xiw5a8mJ
少し遅れましたが投下します。
多分連投規制を食らうと思うので、その時は
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/4255.html
こちらへ直接続きを収録しますから、ぜひ続きはそちらで御覧ください。

283 :フレイム・フレイミィの子供達(2) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/12(木) 01:25:03.50 ID:Xiw5a8mJ
☆リンカーペル

 時刻が午後六時を回った頃だった。
 秋も深まったこの時期は、この時間ともなれば既に辺りは真っ暗闇だ。
 寒空の下、星の瞬く夜空を見上げながら帰途に着くのもまた乙なものだが、しかしそれだけに危険も多い季節である。
 変質者、足元を疎かにしての転倒、交通事故。考えられる危険は他にも数ほどある。
 そういうものから善良な市民を守る為に、魔法少女達は陰ながら奔走し、本当にささやかな正義の達成感に浸るのだ。
 このH市における魔法少女とは、特にこれと言って何かノルマの類を持っているわけではない。
 ペルを魔法少女にしてくれた「タウンズマスター」もそう言ってくれたし、実際、最初にちょっとした研修のような指導があった以外にペルは何も彼女やそのマスコットキャラクターから干渉を受けていない。
 勿論、魔法少女の力を悪用しようと目論めば彼女達はすっ飛んで来て、引っ叩いてでも止めただろうが、ペルはそんなことは一度も考えなかったし、そういう行動に走る輩がいるという話も聞いた覚えはなかった。
 この街と、この街を守る魔法少女の暮らしは、真実平和そのものだった。

 四葉蜜柑は、人生のあらゆる場面で「使えない」と謗られてきた。
 何かの行事に携わったり、役割を任されたり、果てには互いに顔の見えないネットゲームの世界ですら蜜柑が誰かの役に立てる場面はなかったように思う。
 正確には、役に立てないわけじゃない。単純作業のように何も考えないで行える作業なら淡々と正確に続けることができるし、学生時代には陸上部に所属して県内大会の上位にまで上り詰めたこともある。
 一人で何かをする分には、蜜柑は強い。自分のすべきことを的確に見つめ、それに向けて邁進できる。
 学問だってそうだ。高校の頃には日が変わるくらいまで知人の経営する学習塾に毎日のようにぶち込まれていて、そこで不満一つ漏らすことなく延々と勉強に明け暮れていた。その結果は蜜柑を確実に強くしてくれ、無事難関の第一志望校への合格という成果をもたらしてくれた。
 しかし複数人で何かをする場面になると、途端に蜜柑は弱くなる。使い物にならなくなる。
 一人なら出来ることが出来なくなって、やることなすことがとことん裏目に出て、最後には普段絶対しないような凡ミスから大ポカをやらかし、周りから怒りや失望を買って見放されるまでがワンセットだ。

 要するに、彼女は人と何かをする協調性が皆無に等しかった。
 あの子は何を考えているからこうしてほしい筈で、でもこの子もこう考えていると思うからきっとああしてほしい筈。
 そんな調子で両立できない事柄を両立させようとする余りに要領の悪さを発揮し、最後は無能と罵られる。
 大学までは行事などへの参加を極力避ける、そういう役割を請け負わないなどして自衛することでどうにか切り抜けていたが、社会人として働き始めてからは、毎日が苦労と疲弊の連続だった。
 仕事はワンマンプレーでは成り立たない。オフィス内の人間関係や連携を疎かにすれば必ず致命的な綻びが生まれる。
 そこは蜜柑の最も苦手とする環境で、彼女の不安はものの見事に的中した。
 出勤初日で部長に怒鳴られた。二日目に取り寄せる品物の数を一桁間違えた。三日目に散々テンパッて混乱、迷走を重ねた挙句共同プレゼンのデータを吹き飛ばし、同じグループの面々に大恥をかかせてしまった。
 
 もしも蜜柑に失敗して何が悪い、カバーできないお前らが悪いんだろうと開き直れる図太さがあったなら、彼女はきっと魔法少女に選ばれることすらありはしなかっただろう。
 蜜柑はずっとこんな自分が嫌いだった。
 皆に迷惑をかける度に消えてしまいたいくらいの申し訳なさに押し潰されそうになっていたし、陰口を叩かれているのを知るたびに当然だと納得して、だからこそ誰にも相談できないまま、一人心の傷ばかりを募らせていった。
 そして蜜柑の心は、大人になって社会の厳しさを思い知った頃、遂に破傷風を発症した。
 消えてしまいたい、ではなく、消えよう、と思うようになった。
 出来心で手首に刻んだ赤い線は、日に日にその数を増やしていった。

284 :フレイム・フレイミィの子供達(2) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/12(木) 01:25:41.81 ID:Xiw5a8mJ
 母からは精神科への通院を打診された。
 それからは週三回、意味があるのかどうかも定かじゃない問診を終えて、処方された精神安定剤の袋を握り締めながら、蜜柑は街の真ん中を貫いている大きな川を見つめていた。
 
 ――やあ。

 その時だった。
 蜜柑は気さくな声に振り返り、……思わず、息を呑んだ。
 そこに立っていたのは、一言「異様」な人物だった。
 顔を狐のお面で覆い隠し、白いドレスを乱れなく着こなした少女。
 お面のせいで人相は確認できないのに、醸すどこか浮世離れした雰囲気が、仮面の下の素顔の美しさを保障しているように思える。鬱屈とした感情など吹き飛ばしてしまうほど、その出会いは衝撃的だった。

 ――きみは、可愛いね。

 誰なの、そうか細い問いかけを漏らすのが精一杯だった。
 仮面の彼女はくすりと笑って、「タウンズマスター」と名乗った。
 明らかな偽名、コードネームのたぐいであったことに少しだけ不信感を抱いたが、それも彼女が次に口にした言葉の前に容易くかき消されてしまう。
 
 ――ねえ、きみは。

 夏がまた来年と去って行き、秋が久し振りだねとやって来る、そんな狭間の季節に現れた彼女は、四葉蜜柑の何もかもを変えてくれた。冗談抜きで人生のどん底にいた彼女を、薔薇色の日々へと引き上げてくれた。
 
 ――魔法少女に、興味はある?

 それに何と答えたのかはよく覚えていない。
 ただ、気付けば蜜柑は魔法少女「リンカーペル」に変身して、夜の町並みを自由自在に駆け回っていた。
 ビルの壁と壁の間、数メートルはくだらない距離をぴょんぴょんとスキップ気分で飛び越える。歩き慣れた散歩コースを全力で走ってみた時の感動と来たら、とても言葉には言い表せない。
 高校時代に出場した県大会で蜜柑がどうしても追い付けなかった他校のスプリンターなど最早目ではない。
 それどころかレーシングカーにだって引けを取らない速度で、蜜柑は――いや、リンカーペルは走ることが出来た。
 ペルはずいぶん久しぶりに心の底から笑った。それから夜が明けるまで、魔法少女の力をとことん試して試して、人生で初めての朝帰りをした。
 母にはこっぴどく叱られたが、蜜柑は嬉しくて嬉しくて堪らなかった。あの興奮は今も覚めやらぬままで、胸のどきどきと高揚感を抑えながら会社へ出勤して――その日から、蜜柑は一度も誰かに怒られていない。ミスもしていない。

 ペルの魔法は『頭の中で会議をすることができる』というものだ。
 決して派手なものじゃない。ペルが好きだったマジカルデイジーのように見栄えのいい魔法でもない。
 しかしこの魔法は、ペルを二十年以上も悩ませ続けてきた欠点を克服させてくれた。
 ペルは人と協力して作業したり、何かを任されると途端に駄目になる。けれどペル自身は決して人が嫌いなわけではなかったし、失敗の原因はいつも、ただ考えすぎて裏目に出てしまうだけであった。
 今、ペルの頭の中には五人の『リンカーペル』がいる。
 魔法少女になっていない時でも彼女達はいつも頭の中に住んでいて、ペルが助言を求めると脳内会議を始め、彼女一人では到底思いつかないような結論を弾き出してくれるのだ。
 「私」と「僕」と「俺」と「儂」と「ウチ」。そして、彼女達にいつも助けを求める「ペル」。
 三人寄れば文殊の知恵とはいうが、ペルの場合は六人だ。二倍の人数で臨むのだから、まず今までのようなポカをやらかすことはなくなる。そしてそれだけで、ペルの人生は光に満たされた。

285 :フレイム・フレイミィの子供達(2) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/12(木) 01:26:19.24 ID:Xiw5a8mJ
 それからペルは頑張った。
 仕事の合間や休み時間、帰り道から休日まで、とにかく頑張って人助けに精を出した。
 タウンズマスターは数ほどいる人間の中から、わざわざ自分を選んでくれたのだ。
 タウンズマスターがいなければ、「四葉蜜柑」は今頃押し潰されていただろう。彼女がリンカーペルというもう一つの顔をくれたから、蜜柑は蜜柑でいられる。ペルも、ペルでいられる。
 だからせめてもの恩返しに、彼女からもらったこの力を正しく使い、みんなに笑顔をあげようと思った。
 魔法少女は人目をなるだけ避けなければならない。その大原則を守りながら街を練り歩き、トラブルの解決に勤しむのはなかなかに骨の折れる作業だったが、それだけに楽しかった。
 人生でこれほど楽しいと思ったことはないかもしれない。誇張抜きにそう思わせてくれるほどの有意義な時間。これが永遠に続いてくれれば、それに優る幸せはないとペルは本気で思っていた。


「ひーたんからの連絡。
 七階の、左から四番目――あそこに、二人組の魔法少女が宿泊してるってさ。
 完全に油断しきってるっぽいから、一撃でぶっ潰すにはちょうどいい。幸先イイね」

 
 なのに、どうしてこんなことになってしまったんだろうか。
 ペルは、魔法の端末での通話を打ち切ると、冷淡に魔法少女のあるべき姿とかけ離れた言葉を口にした猫の少女を見て静かに唇を噛んだ。ふと視線をずらせば、懐中時計を首から提げた魔法少女も同じように浮かない顔をしているのが目に入った。
 その姿に「自分だけじゃないんだ」などと安堵を覚えてしまう自分の存在が恥ずかしい。
 
「あ、あの……本当にやるんですか、にゃんぴぃさん……?」
「殺るよ。ぶっ殺す。コロの話通りなら、それでとりあえず一週間は保つんでしょ。
 それに、もし二人ともぶっ殺せたらアイツに交渉できるかもしんないし。
 『死人が二人出たんだから、これで二週間分の死人ってことにしろ』とかサ――って、クロックシルク、お前」

 猫の魔法少女「にゃんぴぃ」の顔に、見る見る血が上っていくのが分かった。
 
『止めに入った方がいいのではないか?』
『僕も「儂」に同じく。にゃんぴぃはキレると見境なくなるタイプだからね』
『下手に指咥えて見てりゃ、クロックシルクが殺されちまうかもしんねえしな! かっはっは!!』
『口は悪いけど、「俺」の言う通りだとウチも思う。勇気を出して、「ペル」』

(みんな――うん、分かった。「ペル」、頑張る)

 時計の魔法少女「クロックシルク」は争いごと向きの性格をしていない。
 一方でにゃんぴぃは名前と可愛らしいコスチュームに反して、性格も魔法もバリバリの武闘派だ。
 そんな二人がぶつかればどうなるかなど、想像に難くない。
 そしてそうなることだけは絶対に避けなければならなかった。
 ここにいない「ひーたん」も、そう思うはずだ。

「待って。今は喧嘩してる場合じゃない。そうでしょ」
「あたしだってそう思ってるよ……けどこいつ、この期に及んでまだこんな腑抜けたこと言うもんだからさ」
「クロックシルクは優しい子だから。納得出来ないかもしれないけど、分かってあげて。
 にゃんぴぃだって、クロックシルクに死んでほしいなんて思ってないでしょ?」
「それは……そうだけど」

286 :フレイム・フレイミィの子供達(2) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/12(木) 01:27:15.49 ID:Xiw5a8mJ
 ばつが悪そうに目を逸らす辺り、にゃんぴぃが心根から腐りきった暴力主義者でないことがよく分かる。
 彼女も悪くない。勿論、クロックシルクだって悪くない。
 ひーたんも、そしてリンカーペルも、誰も悪くなんてない。
 きっと――あの部屋にいる、二人の魔法少女も。誰も悪くない。

「……はぁ。ごめん、クロックシルク。ちょっと頭に血ィ昇った」
「いえ……私の方こそごめんなさい。あれほどみんなで話し合って、決めたことなのに」

 クロックシルクもばつが悪そうにしている。
 それを見て、ペルの頭の中の声がまた会議を始めた。

『よくない兆候ねぇ。「ペル」、ひとつ諭してあげなさいな』
『クロックシルクは優しいが、それだけでは今後を生き抜くにはちと厳しいからのう』

 「私」と「儂」の助言を受け、その通りだと思う。
 ペルだって、本当はこんなことはしたくない。
 誰かを助ける魔法少女が、別の誰かを傷つけるなんて――ましてや、同じ魔法少女を殺そうとするなんて、断じてあってはならないことだと思う。
 それでも――それでも。やらなきゃいけないことなのだ。やらなきゃ、誰も助からない。誰も幸せになれない。

「大丈夫。あなたは私たちが守るし、あなたには誰も殺させない」
「ペル……」
「……友達、だし。守るよ。だから、安心して」

 そう言って、クロックシルクの白髪を撫でた。
 こんなことをした経験は生まれてこの方本当に一度もないものだから、合っているか不安だったが、やがて彼女は小さく微笑んでくれたから、成功なのだと思うことにしよう。
 四人で生き残ると決めたんだ――ひとりだって欠けてはならないと思うし、みんなもそう思ってると信じている。
 ドクンドクンと心臓の高鳴りを感じる。
 にゃんぴぃがハンドベルを構えていた。これを鳴らせば、後戻りはできなくなる。人助けを生業としてきた魔法少女を廃業して、生きるために他の誰かを殺す魔法少女として生まれ変わることになる。
 クロックシルクは震えていた。
 覚悟を決めた物言いをしていたにゃんぴぃさえ、唇をがりりと噛み締めている。
 ペルは――黙ってそれを見ていた。いざとなったら、この中で一番「判断力」に優れている自分が司令塔となって皆を統率しなければならない。だから、怖がっている暇はないのだ。

「やるよ」
「うん」


 しゃりん――ハンドベルをにゃんぴぃが縦に振るった。
 その刹那、ホテルの駐車場に停めてあった観光バスの一台が重力を無視してふわりと浮き上がり、ミサイル弾もかくやといった勢いで目標の部屋をぶち抜いた。

287 :フレイム・フレイミィの子供達(2) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/12(木) 01:29:05.75 ID:Xiw5a8mJ
 あまりにも呆気ない一瞬で行われた超人技。まず間違いなく、普通の人間ならこれで死ぬ。それどころか、リンカーペルが仮にこれを受ける側だったなら、同じく即死に終わるだろう。
 時速百キロ以上で鉄の塊が炸裂するのだから、言わずもがな室内全域が攻撃範囲となる。
 偵察係のひーたんによって、同フロアは貸切状態にあると調べが着いていたからこそ遠慮することなく取れる策だった。
 バスは窓から入って部屋を突き抜け、廊下の向こう側に飛び出て漸く静止したらしい。
 壁にぽっかりと大穴が空き、そこからコンクリートの粉塵が止め処なく漏れ出ている。
 獲ったか――そう思った矢先。

「だめ! ペル、にゃんぴぃさん、殺せてません!」

 大穴の向こうから、二人の人影が此方を覗くのが見えた。
 魔法少女の強化された視力であれば、その人相や姿、状態をこの間合からでも正確に確認することが出来る。
 
「嘘……」

 相手は、無傷だった。
 粉塵で少し煤けてこそいるものの、掠り傷一つとして負っていない。
 下手な爆弾の炸裂より威力のある一発を不意討ちでぶちかましてやったのにも関わらず、である。
 茫然とする二人を尻目に、ペルは叫んだ。
 脳内の五人がやかましく叫び合っている。
 走れ。
 とりあえずそこから離れろ。
 危険だ。
 ――そんなこと、言われなくても分かってる!


「走って、クロックシルク、にゃんぴぃ! 一旦体勢を立て直す!」




――――

意外と投下いけました。
次回は引き続き今回のメンバーとひーたんで書く予定です。

288 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:51:51.68 ID:Ka3SalQC
投下します。
今回こそ連投規制を食らうと思うので、その時は
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/4255.html
こちらへ直接続きを収録しますから、ぜひ続きはそちらで御覧ください。

289 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:52:18.32 ID:Ka3SalQC
☆魔法名医シャルル

 シャルルは決して、強い魔法少女ではない。
 むしろ肉体スペックだけで見ればその真逆だ。
 力もスピードも、いわゆる武闘派の魔法少女からすれば論外と言っていいだろう。
 その分魔法の有用性で釣り合いが取れているとこれまでシャルルは思ってきたが、こういう局面に立たされるとそれが強がりのたぐいだったのだと痛感させられる。
 
 突如ビル壁をぶち抜いて現れた鉄塊に、シャルルだけでは反応することさえ叶わなかったに違いない。
 よしんば察知できていたとしても無理がある。あんな超重量が投擲物として襲ってくれば、魔法少女とてまず即死だ。それがシャルルのようなもやしっ子であれば尚更。
 シャルルの魔法では、そういう攻撃、現象にまず絶対に対処できない。
 何故なら、医療の介入する余地がないからだ。少なくとも、シャルルの考える医療とはそういうものではない。
 シャルルにできることはあくまで「お医者さんごっこ」であって、血湧き肉躍る能力者バトルではない。
 ままならないものだと、助手の少女の後ろに隠れながらシャルルは思う。

 下手人の魔法少女達が瞠目した、シャルルたちの生き延びた手段とはこうである。
 事態をいち早く察知したリックが立ち上がり、シャルルを庇うように立った。その次の瞬間にはリックが持つ大きな盾を中心として、投げ込まれた鉄塊――かつてバス車両だったものは真っ二つに裂けていった。
 彼女たちの失敗は、相手が必ずしも無抵抗で殺される獲物ではないという当然の道理を失念していたことにある。
 魔法少女の戦いにおける基礎だ。
 我も魔法少女ならば、彼もまた魔法少女。
 故に対等。こちらが殺し札を持つのと同じ理屈で、相手もそれを防ぐカードを持っていることを念頭に置いて動くべきだ。

 リックが盾を真横に動かすと、がごんがごんと歪な音を立ててスクラップとなった観光バスが道を開けた。
 後始末をさせられる者は大変だろうな、とシャルルは少しだけ同情する。
 まるで裂けるチーズのようになってしまった鉄の塊を見て、駆けつけた警察などは混乱を露わにするに違いない。
 全く派手にやらかしてくれたものだ。だが、おかげさまで探す手間も省けた。

「試験官か、それともこちらを蹴落とすべき敵と勘違いした被害者達か……どう見る?」
「分かんないけど、三人組ってとこを見ると後者じゃないかなーと」
「一番面倒なパターンだね」

 枠ごとぶち抜いてくれたおかげで見晴らしがよくなった窓から、脱兎の如く逃げ去る下手人たちを見据えて嘆息した。
 いっそのこと、「魔法の国」からの刺客が派遣されたことに焦った黒幕が直接赴いてくれれば話は早かった。
 しかし、流石に相手は「魔法の国」相手に大立ち回りを演じた魔法少女だ。
 これで本当に試験官が自らやって来たというなら、あからさま過ぎて逆に怪しむところである。

「追い掛けよう、リック。おんぶしてくれ」
「センセーって、毎回思うんですけどプライドとかないんです?」
「仕方がないだろう。いくら魔法少女の体だからって、この高さから翔ぶのはちょっと憚られる。
 それに第一、私じゃどう頑張っても走っている君に追い付けない。何なら抱っこでもいいが、どうする」
「ハイハイ、いいからとっととおぶさりやがれです」

 遠慮することなく、シャルルはリックにおんぶされながら、自由落下の浮遊感に背筋を粟立たせた。
 魔法少女になれば精神性は自ずと強化されるが、それでもやはりインドア派の彼女には慣れない感覚だ。
 なあやっぱりちょっと待ってくれないか。そう言おうとしたのを遮るように、リックが全速力で走り出す。
 言動は頭が悪そうに見えるし、実際脳筋のきらいがあるリックだが、それでも伊達に魔法名医の助手をしてはいない。
 根本がダメ人間であるシャルルの扱い方ならば、誰よりも彼女が心得ていた。

290 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:53:09.33 ID:Ka3SalQC
 時速三桁に達して余りある速度で、右手に大盾、背中にシャルルを背負ってリックは走る。
 程なくして、追われる者達も普通にやっているだけでは振り切れないと判断したのか、迎撃を試み始めた。
 しゃりんしゃりんしゃりん。
 鈴の音が鳴り響く。それと同時に、前方から猛スピードで軽自動車が飛んできた。
 それをリックは右手の大盾で防ぐ。この盾自体は彼女のコスチュームであって、大した力やいわくのある代物ではなかったが、しかしリックが使えばどんな魔法だろうと防ぐ無敵の盾になる。
 バースデイ・リックが持ったものは、何があろうと壊れないし壊せない。

 しゃりんしゃりんしゃりん。
 鈴の音に連れられて、色んなものが飛んでくる。
 しかしリックの盾は破れない。
 途中からは飛ばすものの数を増やすことで防御を掻い潜ろうとする工夫が見られたが、生憎と「なりたて」の魔法少女が編み出したちっぽけな作戦で遅れを取るほど、バースデイ・リックは未熟者ではなかった。
 盾を曲芸のように器用に踊らせながら何もかも防いで猛追する。
 シャルルは、この世でリックの後ろほど安心できる場所はないと割合本気で考えている。
 こういう剣呑な場面に立たされれば、尚更だ。

 四度目の曲がり角を曲がった時、三度目の鈴の音が響いた。
 しゃりんしゃりんしゃりん――今度は何も飛んでくる様子はない。
 ハッタリかと思った矢先、それはどうかな、と言わんばかりに異変が起きた。

「うお」

 シャルルをおぶったまま、盾を構えるリックの体が、急激に加速して逃亡者たる少女達へと近付いていく。
 まるで強力な磁石でもそこにあるかのようだった。リックが力づくで踏み止まろうとしても、さっぱり止まる気配がない。
 結果からすれば早く追い縋ることが出来るのだから何も悪いことはないように思えるが、敵にそれをお膳立てされるというのは不気味以外の何物でもない。というか、十中八九罠だ。
 
「どう見ます、センセー」
「どうやら、「ものを飛ばす」のではなくて「引き寄せる」魔法みたいだね。
 さっきのバスや車は、きっと自分めがけて引き寄せてからそれを避けることで擬似的な砲弾としたんだろう。
 そして私達は今、まんまとその子に引き寄せられている。
 飛んでくるものを相手するなら余裕だけれど、君自身が引き寄せられているとなると厳しいかな」
「なーるほど。でも、多分合図は鈴の音ですよね? さっきから魔法が使われる度に鳴ってますし」
「それは間違いないだろうね」

 了解、わかりやすくて助かります。
 言ってニヤリと好戦的に笑むリックの顔を見て、シャルルはこの助手が何をしようとしているのかを理解した。
 要は、引き寄せられること自体は仕方ないと諦める。
 その代わり、結果として接近したところで勝負を決める算段でいるのだ。
 魔法の発動体となる鈴を全て壊してしまえば、とりあえず主戦力であろう「引き寄せる」魔法少女は鎮圧できる。
 敵だとて馬鹿ではあるまい。アタッカーを落とされれば勝ち目がないと悟り、降伏する筈だ。そう思いたい。 

 景色が目まぐるしく変わっていく。
 魔法少女の脚力と比較してなお速い。
 すさまじい吸引力に、シャルルは自分の人相が大丈夫か少し心配になった。
 色気はない方だと自負しているし、そういうものに気を配っているつもりもない。
 けれども、女として最低限守らなければならないラインというのは承知している。
 自分の顔を触って何事も起きていないことを確認しようとした矢先に、その余裕は、前方から突撃してくる猫耳の魔法少女を前に潰えて消え去った。

291 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:54:09.03 ID:Ka3SalQC
「死ねっ!」

 物騒な掛け声と共に拳が振りかぶられる。
 なるほど、吸引によってこちらに突撃を余儀なくさせ、速度を増して迫る敵手を最大威力で殴り殺す魂胆らしい。
 なかなか的を射た作戦だとは思うが、しかし相手は無敵の盾、バースデイ・リックだ。
 たとえ核爆弾が落ちようと、リックの盾を破ることは誰にもできない。
 そう高を括っていた魔法名医は、次の瞬間、自らがやはり戦闘の素人なのだということを思い知らされる羽目になった。
 
 猫娘の拳がリックの盾に衝突する寸前、突如彼女はにやりと笑ってその身を翻した。
 晴れた視界に、リングのような飾りが特徴的な衣装に身を包んだ魔法少女が何かを投擲する動作が写る。
 ――しゃりんしゃりんしゃりん。鈴の音が鳴り響くや否や、投擲物は数倍の速度に加速して殺到した。
 植木鉢だ。どこかの民家の軒先からくすねたものだろう。
 魔法少女の力で投じられただけでも即席の凶器としては十分であるにも関わらず、そこに鈴の魔法が上乗せされている。
 間違いない。当たれば即死だ。あんなものを受ければ魔法少女だろうと肉体をごっそり持っていかれる。
 なまじ重量が車両や人に比べて軽いものだから、必然的に加速の度合いは最も高くなっているのが最悪だった。
 舐めんなよ――リックが咆える。彼女の盾はこれさえ防いだ。さりとて、ここまで来れば本当の狙いはシャルルにも解る。

 植木鉢をデコイに背後へと回っていた猫娘が、痛烈な回し蹴りでリックとシャルルを纏めて吹き飛ばした。
 幸い命までは持っていかれなかったが、地面をごろごろと転がって肺の空気が抜けていく。
 
「ペルぅッ!」
「わかった……!」

 飛び込んできたのは、植木鉢を投げたリングの少女だった。
 彼女は一瞬だけ躊躇したように見えたが、それでも仲間と共に生き残ることに比べればそれは軽いものだったらしい。
 未だ完全に体勢を立て直せていないリックへと、不格好ながらも威力の伴ったサッカーボールキックを繰り出す。

「あんまりバカにしてんじゃねーっての、チビども!」
「っ!?」

 リックがそれを片手で受け止めた。
 そのまま少女の矮躯を足を起点にして、近くのブロック塀へと投げ付ける。
 受け身も取れずにそこへ衝突した少女は、声を振り絞って「にゃんぴぃ!」と叫んだ。
 それを聞いた猫娘は「上出来!」と叫び返せば、しゃりんしゃりんしゃりんしゃりん、またあの鈴を鳴らした。
 今度吸引の憂き目に遭ったのはリックでもシャルルでもなく、リックが持つ盾だった。
 完全無敵の盾とはいえども、それはあくまで攻撃に対してのみだ。
 盾の面を介さずに奪い取りに掛かられては型なし。
 相性の問題があるとはいえ、この短時間で相手の少女達はリックの弱点を見抜いてみせたことになる。

 ――強いな。シャルルはそう思った。そう思ったが、同時に惜しいとも思う。

「な!?」
「……別に『盾』じゃなくてもいいんスよ。それこそ、手に持てるものならなぁんでも」

 勝ちを確信した猫娘の鉄拳がリックの頭目掛けて放たれたが、彼女はそれを苦もなく受け止めてみせる。
 その手に収まっているのは、先程あちらがデコイとして利用した植木鉢の破片だ。
 魔法少女の力を止められるはずもない陶器の欠片だが、リックの魔法にかかればこれもまた無敵の盾として機能する。
 彼女の魔法は「持ったものを壊れなくする」力だ。盾でなくとも、極論は障子紙だって、彼女が持てば絶対防御だ。

292 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:56:02.84 ID:Ka3SalQC
「こっちとしちゃ、まず一旦穏便に話を聞いてほしいんですけどね。どうです?」
「……寝言は寝て言いなよ。生憎あたしは――あたしたちは、あんたが思うようなバカじゃない」

 上等。
 盾を拾いに行こうとはせずに、リックは代わりに拳を構えた。
 いけないな。スイッチが入ってしまったらしい。
 塀に身を凭れかけて、魔法名医は他人事のように嘆息する。
 正直こうなると、リックを止めるのはシャルルには無理だ。喧嘩の仲裁は医師の仕事ではない。

 早速殴り合い、蹴り合いを始めた助手と猫娘を横目に、シャルルはちら、とリックに投げられたリングの少女を見やる。
 少女は視線に気付くとびくりと震えた。本来、あまり度胸のある性格ではないのだろうか。
 少女の手は自身の脇腹をぎゅっと抑えている。あれは癖だとかそういうものではなく、痛みを堪えている動作だ。
 幸い、彼女との距離はそれほど離れていない。鈴の彼女も、まさかリックと戦っている最中によそ見は出来まい。

「……!」

 警戒を露わにしつつも、向かってこようとはしない。
 シャルルはその痛んでいるであろう腹へそっと手を当てると、とん、と軽く押した。
 今施したのは魔法の指圧だ。魔法少女の強い力で加えられる指圧は骨を砕くが、そこに生ずる微弱な魔法のエネルギーで砕いた骨を瞬時に癒着させ、元の形へと整形し直してくれる。
 勿論全部嘘っぱちだが、要するに理屈があると形だけでも唱えることが大事なのだ。
 現実を知ってしまったうえでごっこ遊びを続けるには、とにかく想像力が必要になってくる。
 フレイミィには電波女とバカにされたが、それで成り上がったのだからどんなものだと今では胸を張ってやれる。

「あれ……え? え?」
「初診だから、特別に診察料は取らないであげよう。
 その代わり、事が済んだらシャルル診療所を是非ご贔屓にしてくれ」

 体勢を元に戻して、困惑するリング少女からリックと猫娘へ視線を戻す。
 戦況は八割ほど予想通りで、二割ほど予想外だった。

 猫娘は所々に擦過傷や殴られた痕を刻まれており、一目でわかる劣勢にあった。
 対するリックは未だ余裕。だが、彼女も彼女で無傷というわけじゃない。
 天晴なことに、あの猫娘はリックとの戦いの中で自分の魔法の使い方を分析、実践しているのだ。
 例えば今などは無敵の盾を掻い潜ることの出来る、小さな石ころの弾丸でリックの腕を撃ち抜いた。
 このまま戦い続ければ当然リックが勝つだろうが、しかしもう少しは猫娘が粘るだろう。
 となると、そろそろドクターストップをかけるべき頃合いかもしれない。
 
 いや、やはりもう少しは殴り合わせておこうか?
 ある程度勝敗を決させておいた方が、戦意喪失に繋がってくれるのではないだろうか?
 でもそれで重傷など負われては困るし、どうしたものか。
 こういう時にこそ助手の判断が欲しいというのに、当の彼女は今戦闘民族の血を滾らせている。
 おいおい相手は新米だぞ。あまりムキになってやるな――と。

 やはりストップをかけさせて貰おうと口を開きかけたその時、猫娘が勢いよく飛び退いた。
 リックは追撃を試みるが、それは叶わない。
 彼女を取り込むようにして地面が盛り上がり、道路の真ん中に窓とドアのないコンクリートの塔が聳え立っていた。
 シャルルが眉を顰める。呆気に取られた思考を平常へ戻させるのは、鳩尾に打ち込まれた猫娘の拳だった。

293 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:56:48.91 ID:Ka3SalQC
☆リンカーペル

 
 クロックシルクの魔法が発動した。
 彼女は肉体スペックで言うなら、ペルよりも更に下だ。
 多分、魔法少女全体で見ても下の下に部類されるくらいだと失礼ながらペルは思っている。
 しかし、彼女の魔法はペルの「脳内会議」に比べて遥かに凄い。見た目も、その効果も。
 聳え立つコンクリートの塔。道路の真ん中に突如生まれた異物、これこそがクロックシルクの魔法だ。
 「とても立派な家を作ることができる」。いわば彼女は、思い通りの建造物を自在かつ即座に建築できる魔法を使う。
 最小ではハムスターの小屋程度から、最大ではそれこそ高層ビルくらいのサイズまで。
 とは言ってもペルが彼女の建造物をそこまでしか見たことがないからで、本当はもっと大きなものも作れるのかもしれない。
 
 盾の魔法少女と医者の魔法少女を分断する作戦は、ペルが脳内会議で考え出し、発案したものだ。
 にゃんぴぃが敵を引き寄せ、それを迎撃すると見せかけて囮を使い盾の防御範囲外に回り、無防備な本体を叩く。
 ここまではリンカーペルとにゃんぴぃが、逃げながら即興で考えた作戦だ。
 ただしその先、「にゃんぴぃが盾の少女を引き受け、隙を見て隠れていたクロックシルクが分断する」というのは、ペルの脳内に居座る五人が考え出してくれた手である。
 ものの見事に嵌ってくれはしたが、しかしそれに満足している暇はない。
 建物の中ではクロックシルクが盾の少女を単身引き受けている。
 この高さだから中はそれなりに広いのだろうが、それでもクロックシルクほどの非力な魔法少女があんな武闘派にもし見つかってしまえば、どうなってしまうかは想像に難くない。
 早々にこちらの仕事を片付けて、三人で盾使いを袋叩きにする必要がある。
 ペルとにゃんぴぃの視線は今、やる気なさげに塀へ凭れた白衣の魔法少女に集中していた。

「……やられたな。君達、本当に新人かい?」
「そりゃ、ペルはあたしらのブレインなんでね。足元掬われたじゃん、先輩さん」

 肩を竦める医師少女へ不敵に微笑みながら、にゃんぴぃがぽきぽきと拳を鳴らす。
 ペルもにゃんぴぃも、彼女が非戦闘員だということは一連の流れで既に把握していた。
 にゃんぴぃはともかく、ペルは武闘派ではなかったが、それでも二人がかりなら簡単に殺せるはずだ。
 
『でも……本当にこれでいいのかしら、「ペル」。「ウチ」は、ちょっとこの流れには賛成しかねるかな』
『フム……殺すならば確かにここを逃す手はないがのう』
『「僕」も見てたけど、彼女はさっき「ペル」の傷を治したね』
『まどろっこしいなァオイ。単に試験反対派の日和見ヤローってことじゃねェのか?』

 頭の中に響く議論の声に、ペルは唇を噛んだ。
 彼女たちの意思は形はどうあれリンカーペルの意思の一部だ。
 その通り、自分は今、このまま彼女を嬲り殺していいかどうか迷っている。
 「俺」の言う通り、ただの日和見だという可能性もある。であれば、容赦はしないと事前に決めてあった。
 人情に絆されていては生き残れない。
 そういう覚悟を決めていなければ、まずこうやって殺し屋の真似事なんてしていない。

「……僕らは「魔法の国」の魔法少女だ。
 この町で行われている『試験』を中止させ、試験官の魔法少女を拘束することを目的にしている。
 どうか信じてくれ。僕もリックも、君らを助けに来たんだ」
「寝言は寝て言いなよ、先輩さん。言うに事欠いて、「魔法の国」の刺客だって?
 「魔法の国」ってのはあのタウンズマスターを送り込んだ連中なんだろ?
 そんな奴らがあたしたちを助ける? はっ、小学生でももちっとマシな嘘つくよ」

294 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 20:58:50.72 ID:Ka3SalQC
「にゃ……にゃんぴぃ。ちょっと待って」
「はぁ? ペル、こんな奴の嘘を信じるつもり!?」
「そうじゃない! でも……その人、さっき……私の怪我、治してくれた」
「……こいつが?」

 こくり、とペルは首肯する。
 にゃんぴぃはペルと医者の魔法少女を交互に見て、怪訝な顔をした。
 魔法少女はそもそもが人助けを生業とする存在だ。
 だから助けてくれた、というだけならば、試験に反対する日和見という可能性だってある。
 しかし、ここで重要になってくるのは彼女が「魔法の国」から遣わされたと自称していることだ。
 非戦派の魔法少女が、わざわざそんな自分を不利にするような嘘を果たして吐くだろうか?
 命乞いの悪足掻きにしたって、もう少しマシな理屈を捏ねるだろうとペルは思う。

「だから、話だけでも聞いてみたらどうかな……」
「…………」

 にゃんぴぃは握った拳を開いた。
 分かってくれた。
 ペルはそう思って表情を綻ばせかけたが。

「ごめん、ペル。やっぱりあたしは――」

 ぎりりと歯を噛み締めて、再び拳を固く握るのが見えた。
 止める間もなく、それは後ろへ引かれる。
 医者の魔法少女は避けようとしない。いや、仮にそうしたとしても遅いだろう。
 にゃんぴぃに躊躇いはない。迷わず頭を狙って、彼女はこの魔法少女を殺してしまう。
 ペルは意見を出すことは出来る。六人分の頭で考えた意見で、状況を良い方に導くことは出来る。
 けれど、意見を無視されたらどうしようもない。口先以外で、リンカーペルは輝けない。
 医者の脳漿が飛び散る瞬間を幻視して、ペルはぎゅっと固く目を瞑った。

 ステージフォー
「第四段階」

 医者の呟きが耳に入った。
 肉を打つ音の代わりに、にゃんぴぃの呻き声と、彼女が倒れ臥す音が聞こえて目を開いた。
 医者は無傷だ。にゃんぴぃは倒れ、苦しそうな息遣いをしながら、親の仇でも見るように強く彼女を睨みつけている。
 堪らずにゃんぴぃへ駆け寄って、ペルも医者を睨んだ。
 すると彼女はばつが悪そうに目をそらして、言った。

「あのまま殴られたら、流石に死んでしまいそうだったからね……
 医者として褒められた行為じゃないが、少し腫瘍を作らせてもらった。
 でも……大丈夫。僕のは所詮ごっこ遊びだ。多分三十分もすれば元の健康体に戻れるよ」

 ペルは知らないことだが、魔法名医と呼ばれたこの少女の魔法は「お医者さんごっこ」である。
 決して医術を行い、癒やすことだけが彼女の魔法ではない。
 お医者さんごっこの一環として、簡易的に病巣を作り出し、植え付けることも可能なのだ。
 もっともこちらにはいくつか発病させるための条件がある上、永くとも一時間しか病巣は維持できないと欠陥だらけ。
 それ以前に、医者の端くれとしてもあまり使いたい手段ではなかった。
 
『むぅ……どうやらこれは、本当に「魔法の国」から遣わされた者なのかもしれんのう』
『だから言ったじゃん。第一、こんな方法を最初から取られてたら、本当に全員壊滅してたわよ?』
『殺す気があるならいつでも殺すことはできた――なのに彼女はそれをしなかった』
『「私」も信じていいと思うわぁ。予期せぬところで希望が見えたわね』

 うん。
 ペルは脳裏に響く声へ頷くと、ぺこりと医者の少女へ頭を下げた。

295 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/16(月) 21:00:22.00 ID:Ka3SalQC
「ごめんなさい。私たち、あなたたちにひどい失礼を……」
「あー……いや、いいよ。僕の方こそ、リックが手荒をして済まなかった。
 あれには後できつく言い聞かせておくから、できれば彼女をその建物から出してやってくれないかな」
「は……はいっ。クロッ――」

「おぉぉい、クロックシルク! もういい、やめろ!!」

 ペルの声を遮って、にゃんぴぃが叫んだ。
 ペルとシャルルの視線が注がれると、彼女もまたばつが悪そうに目を背ける。
 さんざっぱら暴力を働いたものだから、流石に申し訳なく感じているのだろう。
 かと言って、にゃんぴぃは素直に謝れる性格はしていない。
 リーダーシップを発揮していた彼女だが、その年齢はペルたちの中でも最年少だ。
 くすりとペルは笑った。シャルルは肩を竦めて笑った。
 
 コンクリートの塔が消えると、リックにつまみ上げられてじたばたとしているクロックシルクの姿が露わとなる。
 コミカルなその絵面に、ペルとシャルルはまた笑った。
 その後、全員まとめてリックに正座をさせられた。


☆魔法名医シャルル


 ひとしきり説教された後、ペルたちは事のあらましを知ることになった。
 タウンズマスターも以前、「フレイム・フレイミィ」という魔法少女の『試験』に参加させられていたこと。
 いわば今回、ペルたちが巻き込まれているのはその焼き直しであるということ。
 「魔法の国」が行う選抜試験は本来こんな形のものではなく、もっと穏便な形であること。
 そして魔法名医シャルルとバースデイ・リックは、本当にタウンズマスターを捕らえるためにやって来たのだということ。
 信じられないような内容の連続だったが、魔法少女なんてものが実在していて、自分たちはそれに変身しているのだ。
 信じる以外にはない。クロックシルクも、ペルも、そしてにゃんぴぃもそういう結論に落ち着いた。
 斯くして、新人魔法少女たちの殺人計画は頓挫し、絶望の『試験』の中には一縷の希望が射し込んだ。
 とはいえ、問題が解決したかといえばそんなことは全くない。

「……ってことは、そっちもタウンズマスターの魔法がどういうものかは知らないと」
「はい…… タウンズマスターはいつも私たちに助言してくれましたけど、それ以上は……」
「分別を弁えた魔法少女だったってことか……ちゃっかりしてますねぇ」

 シャルルとリックは、タウンズマスターの魔法について知らないのだという。
 そしてそれはペルたちも同じだった。
 それぞれまったく別の形でタウンズマスターに出会い、育てられてきたが、彼女の魔法を使っている姿を見たことがある者は誰もいない。その事実は不気味に、皆の心をじくじくと苛んだ。

「にしても不親切なんだね、「魔法の国」ってのも。
 フツー、ターゲットのデータってのはきっちり調べて渡すもんでしょ」
「私もそう思います……失礼ですけど、無責任……ですね」
「いいや、僕もそう思うよ。だが」

 それ以上に、ここまで来ると不自然だな。
 シャルルは自分の顎に手を当てて、表情は変えずにそう呟く。
 
「いくら何でも手際が悪すぎる。
 お上の話によれば、詳しい話は現地に着いてから連絡、もしくは先遣隊から聞けということだったが……」
「お役所仕事って次元じゃないッスよねェ、ちょっと」
「フレイミィと繋がりのあった魔法少女の厄介払いのつもりなのか、それとも……
 ……そもそもお役所の魔法少女ですらなかった――のか」

296 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/17(火) 00:58:09.65 ID:UEuSUq5b
 だとすると、いよいよ妙なことになってきた。
 もとい、暗雲が立ち込めてきたと言うべきだろうか。
 シャルルの脳裏には既に、この状況を説明できる答えがある。
 しかしそれを口にすることはしなかった。これを言えば、きっとこの三人の心を更なる不安と恐怖に追いやってしまう。
 
 ――フレイム・フレイミィの『子供達』タウンズマスターが、自分達を誘い出した。
 ――もしそうであれば、いよいよもって厄介なことになったと言わざるを得ない。
 
「……一応聞かせてもらいたいんだけど、君達は『Pleiades』という魔法少女を知っているかい?」
「ぷれ、あです?」
「知らないな……少なくともH市に、そういう名前の魔法少女はいないはずだ」
「…………」

 Pleiades。
 星の魔法少女。
 それが先遣隊として送り込まれた魔法少女の名前だった。
 兎にも角にも、まずは彼女を探してみる必要があるだろう。
 その存在が真実ならば情報の共有と、彼女もまた自分たちと同じなのかを問わねばならない。
 虚偽ならば自分たちが謀られたということでほぼ間違いないが、Pleiadesが実在していたとしても油断は禁物だ。
 彼女が『子供達』であり、タウンズマスターである可能性も十二分にある。
 疑ってかからなければ、最悪『試験』の犠牲者として名を連ねることにも繋がりかねない。

「あ……そうだ。ひーたんにもこのこと伝えないと」
「ひーたん?」
「あたしらの仲間の一人だよ。魔法的に前線には出られないから、遠くでサポートを頼んでたんだ」

 にゃんぴぃは魔法の端末を取り出すと、慣れた手つきでひーたんの端末へと発信する。
 通話はすぐに繋がったようだ。
 にゃんぴぃはシャルルたちに背を向けて、話し始める。

「もしもし? ひーたん?
 ……ごめん。心配かけたね。でも大丈夫だよ、今「魔法の国」の魔法少女と――え?
 ああ、うん。そうそう。タウンズマスターをひっ捕らえて試験を終わらせ……は? いや、ちょっと。落ち着けって」

 ……どうしたことだろうか。
 にゃんぴぃは彼女らしくもない困惑した様子で、電話の向こうの「ひーたん」を宥めようとしているようだ。


「いや、だからタウンズマスターを倒せば試験が終わるんだぞ?
 待てって、相手はほんとに「魔法の国」の――――」


 からん。
 にゃんぴぃの手から端末が地面に落下し、一回バウンドした。

297 :フレイム・フレイミィの子供達(3) ◆TOWNwDBZa. :2015/11/17(火) 00:59:56.36 ID:UEuSUq5b
 彼女がそれを拾い上げる気配はない。
 ……今度こそ、本当にどうしたことだろう。
 にゃんぴぃくん、と呼びかけると、彼女はふらふらと体を揺らし、振り返ろうとした。

 違う。
 振り返ろうとしているのではない。
 これは。
 この動きは――

「にゃん、ぴぃ?」

 倒れようとしている動きだ。
 そう気付いた時、猫耳の魔法少女はばたんと仰向けに倒れた。
 目は開いたまま、口も半開きで、信じられないとばかりに困惑を顔へ浮かべたまま事切れている。
 その証拠が、彼女の喉元にあった。
 穴が開いている。これは手刀の傷跡だ。
 魔法少女同士の殺し合いで診療所へ運ばれてきた患者がよく作っている傷の一つでもあったから覚えていた。
 治療を施そうと屈み込んで、無理だとすぐに悟った。
 恐らく、この傷は見た目より遥かに深い。
 脈を寸断して首の骨を砕き、文字通り何もわからない内ににゃんぴぃは死んだのだろう。
 
「え? え? にゃんぴぃさん? え?」

 魔法名医シャルルに治せない病はない。
 ただし、なくした命を戻すことだけは出来ない。
 既に真っ暗になった町に、リンカーペルとクロックシルクの悲痛な泣き声が木霊していた。



――――

時間がかかりましたが一応投下終了です。
次回はひーたん、レオーネで。
多分そんなに間は空かないと思います

298 : ◆ymCx/I3enU :2015/11/22(日) 18:16:41.46 ID:gmGLMpng
投下乙です
すごい文章密度…自分のはスカスカなんすよねぇ

ようやく一話出来たので投下します
モチベ復活したと言うのは何だったのか

299 :危険な領域 ◆ymCx/I3enU :2015/11/22(日) 18:17:25.59 ID:gmGLMpng
15話 危険な領域

スィヴレバルは人食いの人虎(ワータイガー)であり、同性愛者(ゲイ)であった。
ある時「ハッテン場」なる物の存在を知りそこへ向かうも、人食い虎である事が知れ渡っていた為に全員に逃げられてしまう。

「自分のした事のせいとは言えこれじゃ愉しめんなぁ……」

何とかしなければと思ったスィヴレバルが閃いたのは自分の事が知られていないであろう異世界のハッテン場に行く事であった。
そして紆余曲折を経て辿り着いた「日本」のとあるハッテン場。
彼はそこでようやく自分の欲望を満たす事が出来た。
黛康裕や、沼倉勇喜など一部のハッテン場仲間には自分が異世界で人食い虎として恐れられている事を知られてしまったが、
それでも彼らはスィヴレバルを受け入れてくれた。

「何て優しい奴らだ。俺、人食いやめて『日本』に住もうかなぁ」

人食いをやめ「日本」に移住してしまおうかともスィヴレバルは考えるようになっていた。

現在。
スィヴレバルは前述の二人と共に殺し合いに巻き込まれていた。
E-4エリアの駐在所付近を歩くスィヴレバル。

「むぅ、ヤスとユウキはどこに居るんだ」

ハッテン場にてしゃぶり合い掘り合った仲である黛康裕と沼倉勇喜を捜す。
自分を受け入れてくれた彼らを殺してしまうなど忍びない。つまり殺し合いにも乗るつもりは無い。
但し彼が二人の事を捜すのは心配なのが半々と、性欲が半々である。
地図を見る限りでは殺し合いの舞台となっている島は中々に広く二人がどこに居るのか見当も付かない。

「死ぬつもりなんて無いけど、無ぇけどな。万一の時の為に一発ヤりてぇなー」

股間にぶら下がる巨大な、自慢の逸物をさすりながら舌なめずりして妄想するスィヴレバル。
危うく扱きそうになって自制する。
殺し合いの最中でこうもマイペースを保っていられるのは単に性欲が強いと言うのも有るだろうが、
人食い虎として生きて幾つもの死線を潜り抜け相応の実力を持っていると言う事も有った。

そんな彼に忍び寄る一人の人間の青年。

「ん? 誰だ」

スィヴレバルが気配に気付き振り向く。
青年は、外見だけならば特に目立った所は無いように見えた。ただ、問題は彼の双眸。
暗く淀み、感情が読み取れない。ただならぬ何かをスィヴレバルは感じる。

(何だこいつ、寒気が)

悪寒のような物を感じ始めたその時青年の姿が視界から消えた。

「っ」

胸元に違和感。
その違和感は熱となり、激痛と化す。
青年が胸元に潜り込み、何かをスィヴレバルの心臓付近に深く突き刺していた。

「ガアアアア!?」

苦痛に叫ぶスィヴレバル。
人虎故の生命力の強さか、心臓を刺されてもまだ彼は死ななかった。

300 :危険な領域 ◆ymCx/I3enU :2015/11/22(日) 18:17:48.25 ID:gmGLMpng
「すげぇ、まだ生きてんだ」
「ッグ!?」

刺していた物を引き抜き距離を取る青年。
右手には血塗れになったマイナスドライバーが握られている。

「う、グ、う」
「強そうだと思ったのにそうでもねぇなぁ」
「こ、の、野郎!」

牙を剥き出し獣の形相を浮かべスィヴレバルは青年に向かって鋭い爪のついた右手を振った。
まともに当たれば人間の柔らかい身体など簡単に切り裂いてしまっただろうが。

「甘ぇよ」

当たらなければ無意味。
難無く青年は人食い虎の爪による斬撃を身を屈めて回避した。そして再びスィヴレバルの懐に潜り込み、マイナスドライバーを真上に突き上げた。
マイナスドライバーはスィヴレバルの喉元から、彼の脳幹までを一気に刺し貫いて、壊す。
その瞬間、スィヴレバルは白目を剥き、口から赤の混じった泡を噴き出し、鼻と両目から赤い液体を垂れ流し、絶命した。
ドサ、と重たい音を立て虎はアスファルトの上に崩れ落ちる。
青年――伏島茂晴は屍と化した虎の所持品を物色し、手鉤を入手した。

この伏島茂晴なる青年、何をしている人物なのかと言えば「殺し屋」である。
依頼を受けて標的を殺害するのが彼の仕事であるがその際、標的の雇った用心棒や私兵、同業者との交戦に発展する時が有った。
「最初」こそただ何も考えずにその交戦相手達を撃退或いは始末するのみであったが次第に強者と戦う事に愉しみを覚えるようになる。
今回のゲームに巻き込まれ、茂晴が主な目的とするのは強そうな参加者との交戦。
そして最初に出会ったのがいかにも獰猛そうな大きな虎だったので期待していたのだがいとも簡単に倒せてしまい、茂晴としては肩透かしを食らった気分である。

「見た目で期待したんだけど、あっさりやられてくれちゃってまぁ」

落胆の色をその目に滲ませ虎の死体を一瞥し、その後はもう虎には何の興味も無くなったようで、茂晴はさっさとその場を去ってしまった。


【スィヴレバル  死亡】
【残り46人】


【明朝/E-4駐在所付近】
【伏島茂晴】
状態:健康
装備:マイナスドライバー
持物:基本支給品一式、手鉤
現状:強そうな奴と戦いたい。優勝については今の所保留
備考:特に無し

301 :危険な領域 ◆ymCx/I3enU :2015/11/22(日) 18:18:27.13 ID:gmGLMpng
----
《キャラ紹介》
【スィヴレバル】
年齢:35
性別:♂
種族:ワータイガー
特徴:二足歩行の筋肉質な虎。獣足の獣人。巨根で全裸
職業:人食い虎
備考:異世界にて人食い虎として恐れられていた。同性愛者でもありハッテン場の存在を知ってそこへ向かうも、
人食い虎である事が知られていた為悉く怖がられ逃げられてしまい、わざわざ別世界の「日本」のハッテン場までやってきた変種。
本ロワ参加者である黛康裕と沼倉勇喜はハッテン場仲間であり、彼が人食い虎である事実を知っても受け入れてくれた数少ない友人でもある。
人食い虎として生きてきただけに戦闘能力は高め

【伏島茂晴】
読み:ふせじま しげはる
年齢:20代前半
性別:男
種族:人間
特徴:黒髪。澱んだ目付き。黒っぽいジャケットとジーパン姿で見た感じは普通の青年
職業:殺し屋
備考:殺し屋稼業をしている青年。依頼はそつなくこなす。
強者との戦いを好む好戦的な一面も有る。主にナイフなど小さな近接武器を使った戦い方が主。
不遜かつだるそうな話し方をする


《支給品紹介》
【マイナスドライバー】
支給者:伏島茂晴
分類:その他
説明:マイナス溝のネジを回すのに使われる工具。緊急用としてプラス溝にも使える。

【手鉤】
支給者:スィヴレバル
分類:その他
説明:荷物を手繰り寄せるのに使われる道具。金属製の穂先が有り一応武器にもなる。
----

302 : ◆ymCx/I3enU :2015/11/22(日) 18:20:40.92 ID:gmGLMpng
投下終了です
年末で繁忙で体力がきついってそれ一番言われてるから
土曜日まで出勤ってふざけんな!(声だけ迫真)

303 : ◆ymCx/I3enU :2015/11/24(火) 22:47:22.54 ID:i7O76hMb
16話目投下しやす
キーレンと霧島弥生です

304 :神聖な場所で何て事を… ◆ymCx/I3enU :2015/11/24(火) 22:48:10.79 ID:i7O76hMb
16話 神聖な場所で何て事を…

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

協会へと辿り着いた白山羊少年のキーレン。
恐怖に駆られながら必死に走ってきたせいで汗まみれになり息切れを起こしていた。
呼吸を整えながら、後ろを振り向く。

「お、追ってきてないよね……うん、追ってきてない……」

先程自分を襲った少女が追ってきていない事を確認し一先ずキーレンは安心した。
目の前に視線を戻すと、教会の正面玄関がキーレンを出迎えている。
大きな木製の立派な両開きの扉であった。

「ここに隠れてよう」

扉のノブに手を掛けるキーレン。
鍵等は掛かっておらず、すんなりと扉は開き、キーレンは広い礼拝堂の中に足を踏み入れた。
気休め程度に支給された園芸用シャベルを右手に持ち、礼拝堂の奥へ警戒しつつ進んで行く。
自分の他にもこの教会には人が居るかもしれない。先程の少女のように殺し合いに乗っている者が潜んでいる可能性も有る。

「!」

キーレンはある物を見付け足を止めた。
牧師が説教を行う講壇、その裏から尻尾と思しきふさふさした物が少しだけはみ出ている。
つまり講壇の裏に、獣人種か獣種が隠れている。
どうも自分の尻尾が少しはみ出している事に気付いていないらしい。

(うーん)

声を掛けてみようか、とキーレンは迷う。
わざわざ隠れておまけに尻尾をはみ出させているような人物が殺し合いに乗っているとは彼には考え難かった。
勿論確証など何も無い為実際は乗っている可能性だって有るのだが。
迷った末キーレンは。

「あの」

結局声を掛けてみる事にした。はみ出た尻尾が声が掛かった瞬間ビクッと動く。

「尻尾、見えてますよ?」
「……え、まじ?」

返事は若い女性の声。

「まじです。あの、僕は殺し合う気は有りません。出てきて貰えませんか」
「乗ってないの? 本当?」
「本当です」
「……それなら私と同じね。待って、今出るから」

講壇の裏から出てきたのは、白髪を持った狐獣人の女性だった。

「うわ」

キーレンのほぼ全裸と言う出で立ちを見て驚く女性。
さっとキーレンは股間を隠すがはっきり言って余り意味は無い。

305 :神聖な場所で何て事を… ◆ymCx/I3enU :2015/11/24(火) 22:48:55.46 ID:i7O76hMb
「何故に裸」
「僕にも分からないんです……この殺し合いが始まった時からこんな格好で、仕事先ではいつもこんな感じなんですけど」
「仕事? ……まぁ、いいや。私は霧島弥生。貴方は?」
「僕は、キーレンって言います」
「取り敢えず奥行って話しない?」
「はい」

キーレンと霧島弥生と名乗った狐の女性は教会正面口に施錠し、礼拝堂奥の扉へと向かう。

◆◆◆

とあるカフェにてウェイトレスとして働く霧島弥生。
美貌と明るい性格で男性客からの人気は高かった。しかし彼女は計算高く、明るい性格は男の人気を得て取り入り貢いでもらう為の演技による所が大きい。
上手く口車に乗せ、ベッドを共にし、男から金品やブランド物を大量に貢がせていた。
そんな弥生のゲームスタートの場所は教会の礼拝堂。
自分には縁の無い場所だと思いつつ、弥生は自分のデイパックを開け支給品を確認した。
出てきた物は小型の拳銃、デリンジャーと呼ばれるタイプの物であった。
デリンジャーに分類される拳銃は幾つか有るが今回弥生に支給された物はレミントン・デリンジャーと言う物。
小型で装弾数も2発しか無く威力もそれ程無い。バックアップや護身用向けの拳銃である。

(ちっさ……まぁ私銃なんて扱った事無いしこれ位で丁度良いかしら)

小さいとは言え本物の銃である事に変わり無く、銃の経験がまるで無い自分にとってはこれでも丁度良いだろうと結論付け、
弥生はデリンジャーを上着のポケットに入れた。
その後教会内の探索でもしようかと思っていた時に玄関扉が突然開いた為慌てて講壇の裏に隠れる。
隠れた後で「逃げ場が無い」と後悔したが後の祭りで、近付いてくる足音に怯えながら思い付きもしない打開策を考えていた。
自分の尻尾が講壇からはみ出ていた事には足音の主に指摘されるまで気付いていなかった。
足音の主、キーレンは殺し合う気が無かったのが幸いだったと言える。

協会奥には寝室が有り弥生とキーレンはテーブルの椅子に腰掛けた。

「仕事先で全裸ってどういう仕事……?」
「娼夫なんです僕……少年娼夫です」
「あっ……そうなんだ」

見た目、中々に可愛らしい美少年である白山羊の少年キーレン。
成程確かにこの容姿であればそういった趣味の有る者から人気は高いであろう。
後ろから欲望に貫かれ喘いでいる姿を想像すると弥生は少し顔が赤くなった。
その後しばらくこの殺し合いでの知り合いの有無、支給品について、キーレンが先程とある少女に襲われた事など、
当たり障りの無い会話が続いた。しかしその内弥生の心中に不穏な考えが浮かぶ。

(この子食べちゃおうかなあ)

キーレンを「性的に」食べてしまいたいという欲求。
弥生自身は普段そこまで性に貪欲と言う訳でも無いのだが、殺し合いといういつ死ぬか分からない状況と言う事と、
キーレンの可愛らしく扇情的な容姿のせいで欲望が首をもたげつつあったとでも言うべきだろうか。

そして弥生は早々に実行に移す。

「キーレン君」
「はい?」
「ちょっと立って」
「……?」
「あ、股間隠さなくて良いよ」

いきなりの事に不思議に思いつつ、キーレンは弥生に言われた通り股間を隠さずに椅子から立ち上がる。
ただ不思議に思っていたのは最初だけですぐに弥生の真意に気付いてしまう。

306 :神聖な場所で何て事を… ◆ymCx/I3enU :2015/11/24(火) 22:49:22.56 ID:i7O76hMb
(この人僕を食べる気だ、性的に……でもまあ良いか……)

男性に弄ばれた経験は豊富なキーレンだが女性との「普通の」交わりは殆ど経験が無く、
弥生が今から自分にしようとしている事に対し拒否する気は無くむしろ期待している位である。
一方の弥生はキーレンの股間のそれを興味深そうに観察していた。
女性的なラインを持つ美しい身体に似合わぬ皮が中程まで剥けた生々しいそれはほんの少し起き上がっているように見えた。

「あらー、ちょっとおっきくなってるじゃないの」
「うっ、見られてますし……」
「私が何したいのか、多分察してると思うけど……」
「まあ何となく……」
「なら話は早い……布団に行こう、な?」

興奮抑えきれぬといった様子で、弥生は寝室のベッドを指差して言った。

それから数十分位、寝室の中からアッフンアッフンと少年と女性の喘ぎ声が響いた。

数十分後。
服を着直して椅子に座り休む弥生とベッドにうつぶせに横たわりぐったりしているキーレンの姿が。

「あー、えがったえがった。中々良いモノ持ってるわね……」

満足気な表情を浮かべつつどこかから見付けてきた煙草で一服し、
ぐったりとしているキーレンを弥生は見詰める。



【明朝/G-5教会寝室】
【キーレン】
状態:肉体的疲労(大)
装備:園芸用シャベル
持物:基本支給品一式
現状:死にたくない。気持ち良かったけど疲れた……。
備考:スカーレット・ガードナーを殺し合いに乗った危険人物と判断。霧島弥生にスカーレットについて話している。

307 :神聖な場所で何て事を… ◆ymCx/I3enU :2015/11/24(火) 22:50:27.67 ID:i7O76hMb
【霧島弥生】
状態:肉体的疲労(小)
装備:レミントン デリンジャー(2/2)
持物:基本支給品一式、.41リムファイア弾(10)
現状:殺し合いには今のところ乗る気は無い。キーレン君と行動する?
備考:スカーレット・ガードナーが危険人物である事をキーレンから聞いている。

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《キャラ紹介》
【霧島弥生】
読み:きりしま やよい
年齢:20
性別:女
種族:狐獣人
特徴:白髪を持った黄色の狐獣人。スタイルは良い。私服姿
職業:カフェのウェイトレス
備考:明るい性格と美貌で男性客に人気が高いが、本性は計算高く強か。
明るい性格も演技によるところが大きく、美貌と一緒に活かし男と肉体関係を持ち貢がせる事が多い。
一応ある程度面倒見の良い部分も有り一概に悪人でも無い

《支給品紹介》
【レミントン デリンジャー】
支給者:霧島弥生
分類:銃火器
説明:1864年にレミントン社で設計された中折れ上下二連式のデリンジャー(ポケットサイズの単発もしくは2連発の拳銃)。
携帯性や秘匿性に優れ女性の護身用やガンマンのバックアップピストルとして使われたと言う。.41リムファイア弾使用。
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308 : ◆ymCx/I3enU :2015/11/24(火) 22:51:13.82 ID:i7O76hMb
投下終了です。
ちょっとやらしいです今回

309 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/03(木) 05:34:12.89 ID:heQsxNvr
投下します
登場人物は北原大和と沼倉勇喜

310 :否定のレクイエム ◆ymCx/I3enU :2015/12/03(木) 05:34:51.00 ID:heQsxNvr
17話 否定のレクイエム

周囲を林に囲まれた、草がぼうぼうとしている荒地に銃声が響く。

「待て! 待てって!」

陸軍の兵卒の制服に身を包んだ灰色の狼獣人青年、北原大和は自分を銃撃するシェパード種犬獣人青年を説得する。
大和も武器は持っていたが、古いサーベルであり銃相手には不利であった。
余程の実力者であれば銃相手に正面から挑んで勝利出来るらしいが大和は刀剣に関してそこまでの腕前は無い。

「当たらない……」

大和に対して手にした自動拳銃を発砲する犬青年は思ったように当たらない事に苛立ちの言葉を吐く。

「やめろって! こんなゲームに乗るなんて馬鹿げてる、落ち着けよ!」

訴える大和。彼はこの殺し合いゲームに反抗し、仲間を募りどうにかしてゲームからの脱出を試みようとしていた。
しかし犬青年は大和の言に耳を貸すつもりは無いようだ。

「うるせぇ! 最後の一人にならなきゃ生きて帰れないんだろ! だったら俺は死ぬのは嫌だ!」

ゲームに巻き込まれ精神的余裕を失っているのか声を荒げ、再び銃を乱射し始めた。
一発が大和の耳元を掠め彼の肝を冷やさせる。

(駄目だ、まともに会話出来る状態じゃない)

大和は説得を諦め全速力で逃走した。
無論犬青年が黙って見送る筈も無く背後から発砲を受けるも、幸いにも当たる事は無かった。

走り続けた大和は、息切れを感じゆっくりと立ち止まる。
息を整えながら辺りを見ると、風景は林に囲まれた荒地から市街地に変わっていた。
犬青年の姿は見えず、振り切る事に成功したと判断した大和は一先ず安堵する。

「振り切った……でもこれだと先が思いやられる」

自分の目的を考えると幸先の悪いスタートだと言わざるをえない。
だがまだへこたれるには早いと自分を奮い立たせ、自分と同じく殺し合いに乗っていない参加者を見付けるべく大和は歩き出す。

◆◆◆

「逃げられたか、まぁいいや……」

シェパード犬獣人の青年、沼倉勇喜は逃走した狼兵士の追撃を早々に諦める。別段狼兵士に拘る必要も無い。
ハッテン場通いが趣味のゲイと言う点を除き普通のフリーターである勇喜は、自分が生き延びる為に殺し合いに乗った。
この殺し合いにはハッテン場仲間である黛康裕とスィヴレバルも居たが、例え会ったとしても構わず襲うつもりで居た。
普段しゃぶり合い、突き合い、かけ合った仲間。しかし結局は自分の命には代え難い。
実際に二人と相対してもその決意が揺るがないかどうかは別として。

311 :否定のレクイエム ◆ymCx/I3enU :2015/12/03(木) 05:35:20.50 ID:heQsxNvr
【明朝/E-5市街地】
【北原大和】
状態:健康
装備:三十二年式軍刀
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いはしない。仲間を集めて脱出を目指す。
備考:沼倉勇喜(名前未確認)を危険人物と判断。

【明朝/E-5荒地】
【沼倉勇喜】
状態:健康
装備:スタームルガーP85(7/15)
持物:基本支給品一式、スタームルガーP85の弾倉(3)
現状:殺し合いに乗り優勝を目指す。知り合いに会っても容赦しない。
備考:北原大和の容姿のみ記憶。

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《キャラ紹介》
【北原大和】
読み:きたはら やまと
年齢:20
性別:男
種族:狼獣人
特徴:灰色の毛皮に赤い瞳。引き締まった長身の身体。緑色の戦闘服姿
職業:陸軍兵士
備考:暑苦しいと言う訳では無いが正義感の強い熱血漢。但し一歩引いて思考出来る程度の冷静さも有る。
兵士である為銃火器、刀剣類の扱いとある程度の格闘技に通じ、戦闘能力と身体能力は高い。
地味にエレキギターが演奏出来る、が最近は余りやっていない

【沼倉勇喜】
読み:ぬまくら ゆうき
年齢:19
性別:男
種族:犬獣人
特徴:ジャーマンシェパード種犬獣人。普通の身体だが逸物はそこそこ大きい
職業:フリーター(現在はカフェのバーテンダー)
備考:ハッテン場通いが趣味のゲイ。普段はフリーターとして色々なバイトをしている。
中学の時思い切って先輩の男子生徒に告白するも「俺猫好きなんだ」とフラれしばらく鬱状態になったほろ苦い思い出あり。
基本的に人当たりは良いが、緊急時となると感情的になる傾向である。
ロワ参加者の黛康裕、スィヴレバルはハッテン場仲間



《支給品紹介》
【三十二年式軍刀】
支給者:北原大和
分類:刃物
説明:明治32年に制定された旧日本陸軍の官給下士官刀。本ロワに登場するのは騎兵用の「甲」である。

【スタームルガーP85】
支給者:沼倉勇喜
分類:銃火器
説明:アメリカのスタームルガー社が1987年に発売した自動拳銃。
堅牢かつ安価で、本国では人気があり、幾つかの法執行機関に制式採用もされている。9mmパラべラム弾使用。
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312 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/03(木) 05:36:20.04 ID:heQsxNvr
投下終了です。
マーダーが男に偏ってると知った今日この頃

313 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/06(日) 23:12:30.22 ID:95xwDa6x
投下します。
登場は末盛眸美とザスキア・フェルカーです

314 :その行為は嘘をつかない ◆ymCx/I3enU :2015/12/06(日) 23:13:30.40 ID:95xwDa6x
18話 その行為は嘘をつかない

畑が広がり農家が点在するC-6エリア。農業用の小道をとぼとぼと歩く、裸Yシャツ姿の犬獣人の女性・末盛眸美。
無理矢理犯されるのが大好きな程にマゾヒストであり変態な彼女はこれからどうしようと思案していた。
死ぬ前に一度でも良いので行為がしたいとは思ってはいたのだが。

「その辺の家にでも落ち着こうか……」

適当な農家を見付け敷地内に入る。
平屋の母屋と農機具倉庫の有る恐らく一般的な農家。
母屋の玄関を開けた時だった。

「誰だ」
「ヒィー!」

玄関の戸を開けるなりライフルの銃口を向けられ硬直する眸美。耳を伏せて両手を挙げホールドアップの姿勢を取る。
彼女にライフルを向けているのは、鳥の翼と獣の手足、尻尾と耳を持った半獣の女性。
鋭い目で眸美を睨めつけていた。

「変態か?」
「ひ、否定はしないけどその物騒なモノ下ろしてよ……! 殺し合う気は無いから……!」
「ほう、証拠は有るのか?」
「証拠ォ!?」

殺し合いに乗っていないという事を証明出来る証拠など出しようが無いのだが、焦った眸美は彼女なりの答えを出す。

「これで勘弁して下さい!」

その場に座り込んだかと思うと脚を広げその部分をくぱぁと開き、奥まで見せ付けた。
「M字に開脚しくぱぁしてる」とでも書けば分かりやすいだろうか。
有翼の女性は思わぬ眸美の行動に引いてしまう。

「お前頭おかしいだろ……」
「自覚はしてる」
「まあいい、そんな事までするのだからお前は乗っていないんだろう、信じてやる」
「ホントォ?」

眸美の懸命()なアピールも有ってか有翼女性は信じた様子。
自分に向けられていたライフルが下ろされるのを見ると眸美は安堵し、立ち上がる。

「私はザスキア・フェルカー……お前は?」
「末盛眸美……」
「ヒトミか。取り敢えず上がれ。奥で話そう」
「ここ貴方の家じゃないでしょ」
「ん?」
「ヒィーゴメンナサイゴメンナサイ銃向けないで!」

眸美はザスキアと名乗った女性と共に家の奥へと向かう。

「何か服でも探したらどうだ?」
「いやいい」
「男に見付かったら乱暴されるかもしれないぞ」
「私そーいうの、大好き!」
「変態め……もういい」
「そんな事よりザスキアさんは……」
「呼び捨てで構わんよ」
「あー、ザスキアは乗ってないんだよね?」
「何にだ」
「いや、殺し合い」

315 :その行為は嘘をつかない ◆ymCx/I3enU :2015/12/06(日) 23:14:03.81 ID:95xwDa6x
こうは質問したものの眸美はザスキアは殺し合いには乗っていないだろうと踏んでいた。
乗っていない自分を割とあっさり受け入れてくれたと言うのがそう思う理由であったのだが。
しかし、ザスキアの返答は彼女の予想とは余りに反する物であった。

「乗っているが?」
「は?」
「聞こえなかったのか、乗っているぞ私は。このゲームにな」
「えっ、え?」

ザスキアは殺し合いに乗っていると言う。冗談の類では無いと言う事はすぐに察せた。
しかしそれならば何故自分をさっき殺さなかったのか? ガクガク震えながら眸美はザスキアに疑問を投げかける。

「え、いや、じゃあ何でさっき、私の事さっさと殺さなかったの? 乗ってるなら私、別に受け入れる必要、なくない……?」
「まぁ聞け。優勝を狙っているんだがな、一人より二人の方が何かと都合が良い。私の事を手伝ってくれる手駒が欲しいのだよ」
「まさか……」
「そうだ。お前には私の手駒として働いて貰う」
「えええええ!?」

殺し合いの片棒を担げと完全に命令してくるザスキアに抗議の色を含んだ叫びを上げる眸美。
眸美自身は殺し合いに加担する気など全く無かったのだから当然の反応であるのだが、ザスキアは当然、彼女の拒絶を許しはしない。
再びライフルの銃口を彼女に向け脅しを掛ける。

「嫌なら良いぞ? 他の候補を探すまで。お前にはここで死んで貰う事になるがな……」
「うあ、あ、あ」

ここで先程の衣類の件のように拒否すれば間違い無くライフルの銃弾が自分の脳天を貫くだろう。
眸美は殺し合いの片棒は担ぎたくなかったが死にたくも無い。
ここで断れば殺される、だが、命令を聞けば取り敢えずは生かして貰える。そうすればこの女から逃げるチャンスも来るだろう。
優先されるべきはやはり命。命に代えられる物は無い。

「……ワカリマシタ……」

涙目になりながら、眸美はザスキアに隷属する事を決意した。

「聞き分けの良いのは感心するな。お前は長生き出来るぞ」

笑みを浮かべながら言うザスキア。中々に可愛い部類の笑顔だったが今の眸美には悪魔の笑みにしか見えない。
とんでもない人物に出会ってしまったと心の中で眸美は思っていた。

◆◆◆

316 :その行為は嘘をつかない ◆ymCx/I3enU :2015/12/06(日) 23:14:38.93 ID:95xwDa6x
ザスキア・フェルカーはとある旅団ギルドに所属する冒険者である。
唯我独尊気質の強い彼女――ギルド内では一応仲間意識は持っていたようだが――が殺し合いゲームに放り込まれ、
自身の生存の為、即ち殺し合いに乗り優勝を目指すのはある意味当然の流れだったと言える。
彼女はそれなりに知恵も有り、単独より誰かと行動した方が、索敵や警戒、いざと言う時の盾等有利な事が多いと早めに察する。

そんな彼女の前に現れたのが、裸Yシャツに靴下と靴と言う変態犬獣人の女、末盛眸美。
殺し合いに乗っていないアピールを自身の性器をおっ広げると言う手段で行う、男に暴行される事が喜ばしいと言う等、
これだけでは奇行の多い痴女でしか無いが、それを除けば割合話の通じる良識的な人物とも言える。
脅せば素直に言う事を聞くので手駒としては丁度良いとザスキアは思う。
自分に支給された骨董品レベルの古い軍用ライフル、マルティニ・ヘンリー銃で圧力をかけつつ、眸美を隷属させる事に成功した。

(役立たずになればさっさと捨てるがな……こいつが反逆する事も有るかもしれんが……とにかく精々働いて貰うぞヒトミ)

自分と出会った事を後悔しているのだろう、俯き加減になっている眸美を横目で見ながらザスキアはほくそ笑んだ。

【明朝/C-6畑地帯野田家】
【末盛眸美】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:殺し合いはしたくないが殺されたくないのでザスキアの手伝いをする。隙が有れば逃げたい。
備考:ザスキアを危険人物と判断。

【ザスキア・フェルカー】
状態:健康
装備:マルティニ・ヘンリー銃(1/1)
持物:基本支給品一式、.577/450マルティニ・ヘンリー弾(10)
現状:殺し合いに乗り優勝を目指す。ヒトミ(末盛眸美)には精々働いて貰う。反逆したり使えなくなったりすれば始末する。
備考:特に無し。

《キャラ紹介》
【末盛眸美】
読み:すえもり ひとみ
年齢:20代前半
性別:女
種族:犬獣人
特徴:茶色と白の毛皮。巨乳でスタイル抜群。裸Yシャツに靴下と靴のみの姿
職業:不明
備考:マゾヒストで淫乱な犬獣人女性。露出狂でもある。
本人曰く中学生の時に実父に強姦されたのが切欠で性癖に目覚めたとの事。
自分の痴態を「極マゾめすいぬ」なる直球過ぎるHNでネットに動画投稿したり、
わざと治安の悪い場所に行って進んで集団に犯されたりするなど奇行が著しい。
但し淫乱な事を除けば割と良識的。一応働いてはいるらしい。

【ザスキア・フェルカー】
年齢:18
性別:女
種族:鳥人と獅子獣人の混血児
特徴:黒っぽいメッシュの入った金髪、鳥の翼を持ち両手の肘から先、両足の膝から先が獣。巨乳
職業:冒険者
備考:RPGファンタジー風世界のとある旅団ギルド所属の冒険者。
剣術と格闘技に通じ戦闘能力と身体能力は高い。銃の腕前は普通。頭は悪くは無い。
唯我独尊の気が有り偉そうな口調で喋るが、仲間と認めた者に対してはそれなりに付き合いは良くなる。

《支給品紹介》
【マルティニ・ヘンリー銃】
支給者:ザスキア・フェルカー
分類:銃火器
説明:1871年頃にイギリス軍に採用された後装式の単発レバーアクションライフル。
日本でも明治時代に海軍の海兵隊において使用されている。威力は高い。.577/450マルティニ・ヘンリー弾使用。

317 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/06(日) 23:15:25.14 ID:95xwDa6x
投下終了です。

318 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/18(金) 22:14:22.59 ID:naPmwH1B
投下します
登場:長嶺和歌子、タロー、ウラジーミル・コスイギン

319 :異国の空から届けられたモノ ◆ymCx/I3enU :2015/12/18(金) 22:15:18.52 ID:naPmwH1B
19話 異国の空から届けられたモノ

長嶺和歌子は小学生でありながら、犬科の獣との姦淫や露出行為に耽る、少し困った子であった。
友人の籠彩愛も巻き込んで日々快楽を愉しんでいた彼女は、彩愛と共に殺し合いゲームに巻き込まれてしまう。

「ちょっと待ってよぉ!」

廃村、その中に有るとある廃屋の中。
壁際に和歌子は追い詰められていた。相手は、かなり薄汚いオス犬。妖犬か魔犬の類であろう。
首輪をしておりデイパックも所持していたので参加者の一人のようだが、目の焦点は合っていない上ダラダラ涎を垂らし息を荒げているその様からは、
まるで知性を感じさせずまともに会話が通じそうには見えない。
その上、和歌子を憂慮させている事象が有った。

「何で発情してんの……」

オス犬は和歌子に欲情していた。
いきり立つ股間のそれがチラチラと見えていた。

「ウーッ! ウーッ! ***とっオシッコのニオイィ、した! ハァハァヤりたいー!」
「あっ……」

オス犬の言葉に、和歌子は先程その辺りで用を足した事を思い出す。どうやらその時の臭いを嗅ぎ付けたらしい。

「いやえーと待って下さい、あの、ちょっと今、そういう気分じゃないんで」

慌ててオス犬に訴える和歌子。
もしオス犬が小奇麗でまともに会話出来そうであったのなら割とあっさり行為に及んでいただろうが、
今目の前に居るオス犬はとにかく汚く何とも言えぬ悪臭を放ち、無理矢理「する」気も満々のようで、それよりも何よりも。

(何あれ、何か病気持ってるって! あんなの無理! あんなの入れられたら病気移されちゃう!)

オス犬のそれは幾つものイボが出来、明らかに何かの性病を患っているのが見て取れた。
そんな物を受け入れる勇気など和歌子には無い。いつも犬を相手にする時は清潔にしてから臨んでいたのだから。

「ガマンれきなぃいー」
「うわああ!」

逃げ出す間も無くオス犬が和歌子に飛び掛かる。
もう駄目だと和歌子は諦観した。

「〈〜〜〜〜〜〜〜〜!!〉」

その時突如響く青年の怒声。

「ギャンッ!?」

和歌子の身体に覆い被さっていたオス犬が引き剥がされ、2メートル程離れた壁に叩き付けられた。
建物が老朽化していたせいか壁には大きなヒビが入り建物が揺れ埃が天井から舞い落ちる。
何が起きたのか分からず目を白黒させる和歌子の視界に映ったのは、獣足の有翼獅子獣人の青年。
服を着ない種族なのか、ほぼ全裸の格好だった。

320 :異国の空から届けられたモノ ◆ymCx/I3enU :2015/12/18(金) 22:15:42.32 ID:naPmwH1B
「いっだぁあ、ナンだよおまえっ!」
「ガアアアアアア!!」
「ヒッ……!」

牙を剥き出し獣の形相で威嚇する獅子青年。オス犬は耳を伏せ怯える。この時点で勝負はついたと言って良い。
負けを認めたオス犬は脱兎の如く逃げて行った。

「た、助かった……」
「〈〜〜〜?〉」
「え、あの、何語……?」

話しかけてくる獅子青年であったが和歌子には理解出来ない言語であった。
察したのか青年は一度咳払いをして、流暢な日本語で喋り始めた。

「ごめん、大丈夫? 怪我してない?」
「あ、日本語出来るんですね……はい、何とか」

一先ず危機が去った事で安心しながら、和歌子は自分を助けてくれたらしい獅子青年と対話する。

◆◆◆

裸族でもある有翼獅子獣人種の青年、ウラジーミル・イリイチ・コスイギン。
ロリコンである彼は良質なロリ系のアダルト雑誌や漫画、ゲームやAV等を求めて来日していた。
その矢先に今回の殺し合いゲームに拉致され参加させられた。

ロリコンである事以外は基本的に善人である彼はj殺し合いには乗らず、
スタート地点近くの廃村を探索しようとしていたのだが、その時少女の悲鳴を聞く。
駆け付けてみると、汚い巨躯のオス犬に犯されそうになっている彼好みの小学校高学年位の人間少女が居た。
助けなければ、そう思いウラジーミルは飛び込み、オス犬を撃退し彼女を救助した。

断っておくが少女を助けた行動自体は純粋な気持ちからであり邪な意図は一切無い。

(〈……可愛い〉)

ただ、助けた後、落ち着いた上で改めて少女の事を見ると、本当に自分好みの可愛らしい子だと言う事を認識してしまい、
ほんの少しだけ、ほんの少しだけ、欲望が湧き出てしまっていた。
自制しつつ、ウラジーミルは長嶺和歌子と名乗った少女と対話を始めた。

◆◆◆

薄汚いオスの妖犬、タローは逃走の末、廃村の隅にある防火倉庫跡に隠れる。
人間の可愛い少女を欲望のまま犯そうとした時、突如現れた有翼獅子獣人の青年に邪魔され壁に叩き付けられた。
その時の身体の痛みがまだ残っている。

「ウッ、ウーッ、いてぇ……あの、ライオンやろう、めっ……コハル、どこぉ? ウーッ……」

自分をいつも優しく受け入れてくれた、神社の巫女の少女、布川小春の名前を呼ぶタロー。
タローと言う名前も小春が名付けてくれた物だ。
汚く、臭く、性病も抱え、知能も低い自分の事を受け止め、毎日のように肉体を交えていた小春。
彼女も自分と同じくこの殺し合いに巻き込まれており何とか再会したいとタローは願う。

「コハルとヤりたいよぉ! ハァハァハァハァ!」

己の股間のイボだらけの逸物をまさぐり息を荒くするタロー。
小春と再会したいという気持ちには、純粋に彼女を慕っていると言うのも有るのだが、性欲の方が微かに勝ってしまっていた。

321 :異国の空から届けられたモノ ◆ymCx/I3enU :2015/12/18(金) 22:16:34.53 ID:naPmwH1B
【明朝/C-2廃村戸川家】
【長嶺和歌子】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:死にたくない。あやちゃん(籠彩愛)と会いたい。助けてくれた人(ウラジーミル)と話をする。
備考:タロー(名前は未確認)を危険人物と判断。

【ウラジーミル・コスイギン】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:殺し合いには乗らない。助けた少女(長嶺和歌子)と話をする。
備考:タロー(名前は未確認)を危険人物と判断。


【明朝/C-2廃村防火倉庫跡】
【タロー】
状態:身体に痛み
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:コハル(布川小春)と会いたい。交尾したい。
備考:長嶺和歌子、ウラジーミル・コスイギンの外見のみ記憶。


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《キャラ紹介》
【長嶺和歌子】
読み:ながみね わかこ
年齢:11
性別:女
種族:人間
特徴:黒髪セミロング。年相応ながら魅力的な身体
職業:小学生
備考:犬科獣とのいやらしい行為や露出が趣味。
それを除けば明るく優しい少女。あまり頭は良くないらしく家庭科以外は軒並み成績が悪い。
友人の籠彩愛を自分と同じ道に巻き込みしょっちゅう一緒に犬科獣との遊びを愉しんでいる。
彩愛の事は「あやちゃん」と呼んでいる。

【タロー】
年齢:不明(おっさんらしい)
性別:♂
種族:妖犬
特徴:茶色と白のボサボサで薄汚れた悪臭を放つ毛皮、痩せ気味。いつも涎を垂らし知性が感じられない瞳。性病に罹患し陰茎に多数のイボ有り
職業:無職
備考:とある神社に住み着く汚い野良犬のオス。
その神社の巫女である布川小春と親密になり毎日のように交わり餌を貰い暮らしていた。
知能は低く欲望に忠実。小春の事は性欲の発散相手にしか見ていない、ようにしか見えないが一応慕っている。

【ウラジーミル・コスイギン】
年齢:21
性別:男
種族:有翼獣足型獅子獣人種
特徴:茶色い毛皮。ライオンを二足歩行にして少し人間寄りの体型にした上で竜のような翼が背中に生えたような外見。裸族
職業:不明(相当の収入は有る様子)
備考:ロシア風国家より日本風国家への旅行途中に今回のロワに巻き込まれる。
重度のロリコンであり、日本にやってきたのも良質なロリ系エログッズを集める為。ロリコンである事を除けば善良。
裸族である為服は基本的に着ない。母国語の他に日本語や英語が出来る。
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322 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/18(金) 22:17:23.56 ID:naPmwH1B
投下終了です。

323 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/29(火) 23:28:14.11 ID:9ruV2jqp
投下します、もう年末じゃねえかよ……

324 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/29(火) 23:29:03.20 ID:9ruV2jqp
20話 ホテルの中の憲兵さん

ホテルへと到着した竜人少年・本庄忠朝と、バニーガール・伊藤文子。
フロント係も誰も居ない静まり返ったロビーが二人を出迎えた。

「誰も居ない……? 静かだなぁ」
「結構広い建物っぽいし、他にも人居るんじゃないかな」
「見て回りますか? 流石に全部隅々まで回るのは無理でしょうけど」

ホテル内に他の参加者が居る可能性を考え、二人は探索する事にする。
二人の内、辛うじて武器となりそうな物であるモンキーレンチを支給された忠朝がそれを右手に持ち先頭になった。
一方の文子には薬品の瓶が支給されていた。
説明書を読む限り、強力な麻酔薬のようで、一瓶丸ごと飲むか投与すれば致死量という代物。
だが直接的な武器では無い為、今の所はやはり多少なりとも戦力足り得るのは忠朝の方と言えた。

◆◆◆

ホテル一階に有るレストランに一人の客が居た。
否、客などでは無く殺し合いの参加者の一人、女性憲兵隊長の松宮深澄。

「さてと、これからどうするか」

椅子に座り思考を巡らせる深澄。テーブルの上には彼女の支給品であるサバイバルナイフが置かれている。

(まずは首輪をどうにかしなければな)

最大の問題と言えるのは首にはめられた首輪。
爆弾内蔵の、参加者達を殺し合いに縛る枷。参加者一人一人のモニタも首輪を通して行っていると思われる。
首輪を無効化しなければ脱出は不可能だろう。

(まずは首輪の内部構造を調べる、その為の首輪のサンプルの入手……その為には……ん?)

色々と考えていた時、人の気配を感じ、深澄はナイフを持って物陰に隠れる。
レストラン入口の扉が開き、入ってきたのはブレザー姿の竜人少年と、バニーガール姿の女性。

「レストランか」
「誰か居る?」

二人はまだ深澄の存在には気付いていないが時間の問題だろう。
一人しか優勝出来ないこのゲームにおいて複数で行動しているのであれば殺し合いに乗っている可能性は低いと考えて良い。

「レストランね〜こんな状況でなければ食事していきたいけど」
「従業員も居ませんけど……この前行ったレストラン美味しかったですよね」
「ああ、あれねぇ」

呑気な会話が聞こえてくる。ますます殺し合いには乗っていなさそうだと深澄は思う。
二人と接触を試みた。

「おい」
「う!」
「わ!」
「騒ぐな。私はゲームには乗っていない」

驚きと恐怖の混じった表情を浮かべる竜人少年とバニーガールに深澄は戦意が無い事を伝えた。

325 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/29(火) 23:29:28.36 ID:9ruV2jqp
「あ、貴方は?」
「私は松宮深澄。**基地憲兵部隊の隊長を務めている。名前は何と言う? 二人共」
「わ、私は伊藤文子」
「僕は本庄忠朝と言います」
「だいぶ呑気な会話が聞こえたがお前達は殺し合いには乗っていないのか?」

深澄の問いに二人は頷く。

「そうか。それは良かった。乗っているのならこの場で始末していた所だ」
「「えっ」」
「それはそうと、お前達二人だけか? 他に仲間は居ないか?」
「はい、僕と伊藤さんだけです。今からこのホテルの中を見て回ろうと思っていたんですけど……」
「このホテルの中は私が既に見回った。特に誰も居なかったぞ」
「本当ですか?」
「疑うか?」
「あ、いえ」

深澄はレストランにやってくる直前までホテル内部を見て回っていた。
結果的に誰も人の姿は見掛けず、文子と忠朝が彼女にとってこの殺し合いで初めて遭遇した参加者となる。
とは言え深澄も徹底的に探索した訳では無かったのだがそれでも文子と忠朝は納得したようだった。

「私は殺し合いからの脱出手段を探しているんだが、一緒に来るか?」

二人に自分と行動するかどうか尋ねる深澄。
正直言って文子も忠朝も余り役に立ちそうには見えなかったものの、ここで会ったのも何かの縁、と思い深澄は二人に訊いた。
二人は少し顔を見合わせ、その後深澄の提案を受け入れる。

「脱出出来る可能性が少しでも有るならそれに賭けたいと思います」
「貴方と一緒に行くわ! えーと松宮、さん?」
「分かった。生き残る為に力を合わせよう」

松宮、伊藤、本庄の三人による反主催グループが結成された。

「そう言えば松宮さんは、このゲームに知り合いは呼ばれていないの?」
「ん? ああ……」

文子の質問に深澄は少し間を置いてから答えた。

「部下が一人居る。山津有岐と言うんだが」
「そうなんですか……」

「早く見付けたいでしょう」と訊く忠朝に「いやそうでも無い」とあっさりと深澄は返した。
山津有岐と言う彼女の部下は、何かとドジをやらかし深澄や同じ隊の隊員を悩ませていた問題人物であり、
開催式の時に山津の姿を見付けた深澄は「よりによってこいつか」と嘆息を漏らした程である。
そんな人物を進んで探す気にはなれない。かと言って別に死ねば良いなどとも思わないが。

「まあ、会えたなら会えたでそれで良いがな」
「はぁ」

適当に締め括り深澄は山津について考えるのを一旦止めた。

326 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/29(火) 23:30:48.65 ID:9ruV2jqp
◆◆◆

図らずも反主催の有力(そうに見える)人物に出会えた文子と忠朝。
生還への希望が少しながらも見えてきた事で二人の表情に明るさが少し増す。無論期待し過ぎも良くないとは分かっていたが。

「あっ」
「? どうしました? 伊藤さん」
「いや、何でも」
「?」

こっそり忠朝と行為に及びたいと思っていた文子は深澄と一緒に居たらそのチャンスが激減するとたった今悟ったが、後の祭りであった。


【明朝/E-2ホテル一階レストラン】
【本庄忠朝】
状態:健康
装備:モンキーレンチ
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いはしない。伊藤さんと共に松宮さんに付いて行く。休みたいけど……。
備考:伊藤文子と共に松宮深澄と行動。

【伊藤文子】
状態:健康
装備:無し
持物:基本支給品一式、麻酔薬
現状:殺し合いはしない。忠朝君と一緒に松宮さんに付いて行く。休みたいけど……。
備考:本庄忠朝と共に松宮深澄と行動。

【松宮深澄】
状態:健康
装備:サバイバルナイフ
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いからの脱出手段を探す。首輪のサンプルが欲しい。
備考:伊藤文子と本庄忠朝には山津有岐と言う部下がこの殺し合いに呼ばれている事しか話していない。

327 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/29(火) 23:31:08.44 ID:9ruV2jqp
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《キャラ紹介》
【松宮深澄】
読み:まつみや みすみ
年齢:28
性別:女
種族:人間
特徴:紫がかった髪、目付きが鋭い美女。憲兵隊の制服姿
職業:憲兵
備考:とある軍基地において憲兵隊を率いる女性憲兵。
機械工学や電子工学に通じており、基地のコンピューターの管理も任されている。
戦闘能力も高く、銃や刀剣の扱いに長けている。
冷徹な性格で同僚や部下からは信頼されると同時に恐れられているが、実は可愛い物が好きだったりする。
本ロワの参加者の一人、山津有岐は部下の一人だが、色々問題を起こされ頭を悩ませている。

《支給品紹介》
【モンキーレンチ】
支給者:本庄忠朝
分類:その他
説明:ボルトを掴む部分を調節出来るレンチの一種。

【麻酔薬】
支給者:伊藤文子
分類:薬物
説明:瓶に入った麻酔薬。種類は「チオペンタール」。アメリカの薬殺死刑に用いられる三種類の薬の一つでもある。

【サバイバルナイフ】
支給者:松宮深澄
分類:刃物
説明:文字通りサバイバル目的に作られた大型のシースナイフ。
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328 : ◆ymCx/I3enU :2015/12/29(火) 23:32:50.68 ID:9ruV2jqp
投下終了です。寒い

329 : ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:22:05.77 ID:k0nxr2YO
明けましておめでとうございます
一話投下しやす

330 :置き忘れたアスファルト〜 ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:23:08.73 ID:k0nxr2YO
21話 置き忘れたアスファルト、染めていく陰鬱のニオイ

その展望台はとうの昔に閉鎖され、もう使われていないようだった。
駐車場はアスファルトがひび割れ雑草が伸び荒れ放題、建物も窓ガラスが割られ外壁の化粧板が剥がれ落ちていたりと廃墟の様相を呈している。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

息を切らせながら、年に不釣り合いな巨乳を揺らし展望台の入口に辿り着く籠彩愛。

「はぁ、はぁ……ここは、展望台? ……廃墟みたい」

上を見上げると展望室が有るのが見える。やはりガラスが幾つも割られている。
目の前にはドアが破壊された展望台の正面玄関が彩愛を出迎えていた。
警戒しながら、彩愛は展望台の中へ足を踏み入れる。先程のナイフを持った男が追い掛けて来ているかもしれない。

――その男は全く彩愛に危害を加えるつもりは無く彼女の思い込みで危険人物と判断していただけなのだが彩愛はそれに気付く由は無い。

古びた螺旋階段を、彩愛は恐る恐る上り始めた。

◆◆◆

黒豹獣人の男、シャーガはとある闘技場で見世物の為に対戦を繰り広げる格闘家。剣こそ使わないが剣奴のようなものである。
雇い主の言われた通りに戦い、時には八百長にも加担し、生計を立てている。
「格闘家としての誇りは無いのか」などと非難される事も有るが彼は全く気にしていない。
必要が有れば、用心棒的な役割も果たす為、一概に見世物の為だけに戦っているとも言い切れない。

展望台最上部の展望室。備え付けられていた望遠鏡を、腰布姿の引き締まった肉体を持つ黒豹の男が覗き込む。
しかし、何も見えない。望遠鏡は有料だった為小銭を入れなければ作動しない。

(やっぱ駄目か。どうせ壊れてるだろうからお金有っても無駄だろうけどな)

望遠鏡から顔を離すシャーガ。
展望室は360度見渡せる円形で、望遠鏡無しでもある程度は殺し合いの会場となっている島を見渡す事が出来た。
時折銃声が聞こえ、その度に誰かが撃たれて死んだのかとシャーガは思う。
海の方に目をやると、遠方に客船らしき船が航行しているのが見えた。
客船の乗員乗客は自分達のすぐ傍に有る島で殺し合いが催されている等とは思いも寄らないであろう。

カツン、カツン……。

「ん」

階段を上ってくる足音を聞き、シャーガの耳が動いた。誰か来るようだ。
展望室には逃げる場所も隠れる場所も無い。それ以前にシャーガは別に逃げるつもりも隠れるつもりも無かったが。
死角になる位置で待ち構えていると、現れたのは金髪をツインテールに纏めた幼い人間の少女。
年は10歳かそこらであろうが年に不釣り合いなたわわに実った乳房が揺れ動いているのが分かった。

「可愛いな」
「ひっ!?」

シャーガの存在に気付き驚く少女。
かなりの美少女で身体付きも良い。シャーガはいやらしい考えを起こし嬉々とした様子で少女に近付く。

「な、何ですか?」
「取り敢えず悪戯させてくれよ」
「えっ!? い、嫌!」

当然少女は逃げようとするのだが気が動転していたのか階段では無くベランダの方に向かおうとした。
結果、床に落ちていた空き瓶を踏み盛大に転んでしまう。

331 :置き忘れたアスファルト〜 ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:23:40.73 ID:k0nxr2YO
「いったぁい……」
「捕まえた」
「あっ!」
「君、子供みたいだけど、おっぱいでかいなぁ、いやらしい身体」
「あっ、ひっ、やめて」

少女の乳房を服の上から揉みしだくシャーガ、その腰布の股間部分が大きく膨らんでいる。
必死に逃れようとする少女だったが「静かにしろ」と平手打ちを食らわされ、痛みと恐怖で大人しくなってしまった。
そしてあっと言う間に衣服を破かれて全裸にされ、シャーガは少女のその部分を押し広げ観察する。

「君、ヤってるんだ? 処女じゃないよな」
「……っ……と、友達と、一緒に、犬、と……」
「へぇ、そういう趣味か……なら俺の入れても大丈夫だよな?」
「あああああ」

腰布を外し、猛々しいそれを見せ付けるシャーガ。絶望した様子の少女。

「あ、あ、わかちゃん助けてぇ……わかちゃん」
「ん? 友達の名前? この殺し合いに呼ばれてるの? まあいいや、さっさと愉しませて貰うよ」
「あ、やああああーーー……」

少女に覆い被さるシャーガ。
展望室一杯に、男の荒い息遣いと少女の嗚咽と喘ぎが響く。

◆◆◆

逃げ去った少女を追い掛けて展望台にやって来た大崎年光。
走って行った方角からして、展望台に入った可能性が高かった。
遠目からでも寂れている雰囲気は分かったものの、近くまで来て見ると完全に廃墟化しているのが明確となる。
壊された出入口を潜って中に入る。

「あ……あ……いやあ……」
「!!」

建物上部、展望室から微かに聞こえた、少女らしき声。
助けを求めるような、喘いでいるような、どちらにしても尋常な様子では無さそうである。
そしてその声には年光は聞き覚えが有った。

(さっきの子……!?)

自分が追い掛けていた少女だと直感的に年光は思い、そう思った時には目の前の螺旋階段を駆け上っていた。
嫌な予感がした。もしや。

彼にとって、少女は全く縁も所縁も無い言ってしまえば「赤の他人」だったが、それでも彼は放っておけなかった。
突然殺し合いに巻き込まれ、恐怖で路頭に迷っているであろう名前も分からぬ少女の事を。
自分の不用意な行動のせいで誤解させ、怯えさせてしまったのなら尚更、と、一種の責任も感じていたのも有るだろう。

「……なっ」

そして展望室まで上った年光が見た物は。
全裸でぐったりしている、あの時の少女と、その顔に自分の種液を撒き散らしている黒豹獣人の男だった。
辺りには破かれ無残な有様の少女の衣類が散らばる。
ここで何が起きたかは明白。年光の心に沸々と怒りが込み上げる。

332 :置き忘れたアスファルト〜 ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:24:43.07 ID:k0nxr2YO
「あー気持ち良かったぁ」
「お前、何してんだ!!」
「あ?」

年光の怒声が響き、黒豹の男が年光の方に顔を向ける。

「見りゃ分かるだろ……アンタも混ざる?」
「この野郎、その子から離れろ!!」

黒豹の男に突進する年光。怒りの余り冷静さを欠いていた。
とにかく少女から男を離す事しか頭に無かった。

ガスッ

「――!!?」

左頬に凄まじい衝撃、そして視界が大きく揺らぎ、気付いた時には吹き飛ばされ数メートル後ろに倒れていた。
顔面や身体の痛み、そして脳震盪が年光を襲う。

「がっ……あ」
「邪魔するなよな、良い所だったのに。無粋な奴だ」
「や、ろう……!」
「寝てろ!」

起き上がる間も無く、年光は再び顔面に衝撃を受け、意識が途絶えてしまった。

◆◆◆

邪魔に入った人間の男に殴打一撃、足蹴り一撃を加えた所、気絶してしまった。

(結構手加減したつもりなんだけど、ま、鍛えてない一般人みたいだしこんなもんか……。
たく愉しんでいたのに……二回イけたし、良いか)

完全に伸びている男から、呆然としている全裸の少女に目を移し、満足気な表情を浮かべるシャーガ。
破いた少女の衣類で自分のモノの後始末を済ませ腰布を巻き直す。

「気持ち良かった〜ありがとうな、あやめちゃん」
「……?」
「何で名前知ってるかって? 服に名前、書いてあったからな。おっぱいも良い触り心地だった。それじゃ、俺は失礼するよ」
「うっ……うっ……」

嗚咽を漏らす少女を尻目にシャーガは自分の荷物を持って階段へと向かった。
気絶させた男の事は一瞥しただけでそれ以上はもう何もする気は無かった。

シャーガは殺し合いを進んで行うつもりは無かったものの、自分の好きなようにして行動する事にしていた。
いつ死ぬか分からぬのだから欲望のままにしてやろうと。
必要有らば戦うつもりでは居たし、優勝出来るのなら優勝したいと思っていたので自棄になっている訳では決して無かったのだが。

「次はどうするかなあ」

階段を下りながら次の指針を考えるシャーガ。
そして一階まで下りて、出入口から外に出た辺りで、上の方から少女の大声らしき物が聞こえ、数秒後に重い音が響いた。

「……」

何が起きたのか大凡察したものの、少し足を止めた程度で、そのままシャーガは展望台を後にした。

◆◆◆

333 :置き忘れたアスファルト〜 ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:25:25.61 ID:k0nxr2YO
「うう……汚されちゃったよぉ」

しくしくと泣く彩愛。裸体は黒豹獣人の体液によって酷く汚れ悪臭を放っていた。
その部分から容赦無く放出された黒豹の男の精が溢れ出る。

「もう嫌だ、もう……」

突然殺し合いに放り込まれた挙句見知らぬ獣人の男に強姦された。
衣服もズタボロにされ、身体は獣人男の体液塗れで身動きもままならぬ。
友達の和歌子もどこにいるのか今生きているのかも分からない。
急速に彩愛の心を絶望が支配してゆく。ゲーム開始から二時間も経たないと言うのに彼女の心はもう限界であった。

「……あの人……あの時の」

自分を助けてくれようとして、返り討ちに遭い気絶してしまった男性。
それは、殺し合いが始まった直後に遭遇し、襲われると誤解して逃げてしまった時の男性であった。
見ず知らずの自分の事を助けようとしてくれたこの男性の事を疑ってしまうとは。

「……ごめんなさい……ありがとうございました……」

気絶しているので聞こえないであろうが、謝罪と礼を言う彩愛。

「……身体も心も醜い……私……もういいや……あははは……」

乾いた笑いを浮かべて、彩愛はふらふらと展望室外周のベランダへと歩く。
ポタポタと、その部分から黒豹の男の精が垂れ落ちるが最早構う事も無い。
錆びたベランダの手摺から下を覗き込めば遥か下に荒れ果てた駐車場。

「わかちゃん……ごめんね、私はこのゲーム、もう無理だよ。生き残れないよ……。
また一緒に犬と遊びたかったね……わかちゃんは生き延びてぇええ!!」

一気に手摺から身を乗り出し、少女は己の身体を空中へと投げ出す。
最後に大きく叫んだのは友人へのエールかそれとも行き着く結末への恐怖を掻き消す為か。
真っ逆様に彩愛は数十メートル下へと落ちて行き、硬いアスファルトに叩き付けられ、脳漿を撒き散らして散華した。

◆◆◆

少女の大声で気絶から年光は覚醒する。
顔面と身体の痛みを我慢しつつ身体を起こし、状況を整理する。

(確か俺は……そうだ、あの子は)

黒豹の男に犯されていた少女の事を思い出すのとほぼ同時に、階下からどんっと言う重い音が響く。
何事かと辺りを見回す年光、そして少女の姿が消えている事に気付く。
まさか、と、嫌な予感がした年光はベランダに向かい、地上を見下ろした。
そして予感は的中してしまっていた。
遥か下の地上、アスファルトにピンク色の脳漿と血液を撒き散らした、あの少女が横たわっている。
ベランダから飛び降りたらしい、飛び降りた理由は十分過ぎる程察せた。

334 :置き忘れたアスファルト〜 ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:26:46.14 ID:k0nxr2YO
「そんな……マジかよ……」

少女が自殺してしまった事に年光はショックを受ける。
自分がもっと早く来ていれば、いや、最初出会った時に上手く誤解を解く事が出来ていればこのような結末にはならなかったかもしれないのに。

「くそっ……何てこった……」

ただただ、年光は自分の不甲斐なさ、無力さを呪った。


【籠彩愛  死亡】
【残り45人】


【明朝/B-4展望台付近】
【シャーガ】
状態:健康
装備:不明
持物:基本支給品一式、不明支給品
現状:欲望のままに好きにする。必要有らば戦う。
備考:大崎年光の外見のみ記憶。籠彩愛の名前及び「わかちゃん(長嶺和歌子)」の名前を把握。

【明朝/B-4展望台展望室ベランダ】
【大崎年光】
状態:顔面打撲、身体全体に痛み(行動に支障は無し)、悔恨
装備:コンバットナイフ
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いには乗る気は無い。少女(籠彩愛)を助けられなかった……。
備考:シャーガの外見のみ記憶し彼を危険人物と認定。

----
《キャラ紹介》
【シャーガ】
年齢:30
性別:男
種族:豹獣人
特徴:黒豹獣人。長身かつ引き締まった筋肉質の身体。ほぼ全裸だが腰布を巻いている。巨根
職業:格闘家
備考:とある闘技場に雇われ見世物の試合に出場している。
格闘家としての実力はかなりの物。とぼけたような印象だが自分の欲求の為なら良心の呵責を平気で捨てる。
金の為なら八百長にも加担するので正統派気取りの格闘家からは蔑まれているが当人は気にしていない。
一応、格闘家としての矜持なのか己の肉体以外の武器はまず使う事は無い。
その肉体と逸物故に結構男女共にモテる様子。両刀である。
----

335 : ◆ymCx/I3enU :2016/01/05(火) 00:28:41.75 ID:k0nxr2YO
投下終了

シャーガはFEDAというレトロゲームに出てくるアービーというキャラのような見た目

336 : ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 03:48:07.47 ID:1O0rDYPP
あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いしますYOtです!
四字熟語投下します……紆余くん編は終わりです!

《簡易あらすじ》

バトロワ終了!凛々ちゃんは現世へ行ったが、紆余くんは主催戦を選んだ

最初の場所に戻る途中に銀髪メガネ無しの男に出会って首輪の真実が明かされる
主催はすべての文字の始まり「天飼千世」!

彼女は自分の死の未来が見える能力と
ルール能力を作り出す(こっちは人間に協力させないといけない)能力を持っていたので
死なないために人間を殺し合わせていっぱいルール能力を作ったのだった

天飼千世「でもそしたら今度は世界滅びちゃうし寂しいし、紆余くん勇者になって私と永遠に殺し合いしよ」
紆余くん「タイプじゃないんでお断りします」
天飼千世「ひどい」
紆余くん「勝手に死んでくれれば一番良かった」

とはいえ天飼千世は世界を滅ぼすほど強いし、いろいろ能力があるので殺せない
ここから一体どうやって天飼千世を殺す結末に持っていくのか、考えた結果がこちらです

337 :46◇おはなし(終) ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 03:53:38.78 ID:1O0rDYPP
 





「そろそろ、まとめてもいいですか?」

 と、紆余曲折は言った。
 長く身の上を喋っていた天飼千世に対して、ずっと興味なさそうな顔で話を聞いていたが、
 ここでついに言葉を差し挟んだ。
 
「ん? ああ、いいよ? 長話してすまなかったね、しかも一方的に。そうだなあ、アナタの意見も聞きたいかな。
 今の話、まあすべて本当な訳だけどさ――どう思った?」
「そりゃあもうあれですよ」

 それが当たり前だという風に、紆余曲折は斬って捨てる。

「うだうだ言って周りに迷惑かけてないで勝手に死ねとしか言いようがありません」
「あー……あははは! 言うねえ!」
「だってなんか、色々語ってましたけど、それ結局あなたが死ねば早い話ですよね。
 千個の未来すべてで惨たらしく死んじゃうことが確定してるなんて、世界に嫌われてるとしか思えませんよ。
 実際に所業も最悪だし、救いようがないです。僕から言わせれば――あなたは欲張りすぎる」

 欲張りだと。
 業突く張りの、欲の塊であると断じた。
 天飼千代はふふ、と笑うと、楽しそうに言葉を返す。

「でも、これはアナタと同じですよ?
 いえもっと言うなら、一般的な人間となんら変わりはありません。生きたいから生きる術を探している。それだけなんですよ。
 死ぬのなんて嫌に決まってるじゃないですか? 殺されるなんてもっとまっぴら御免だ。
 ひとりで生きていくことならできるかもしれないけど、そんなのは楽しくない。それだったら死んだほうがまし。
 だったら答えは一つでしょう? それ以外に方法なんてない。生まれた時点で決まってたこと……」

 そらぞらしく言い振る舞う天飼千世に、冷たい目線を向ける。 
 ふと言葉を思い出す。紆余曲折にとってかけがえのない存在となった、ある恩人の、剣であり盾でもある彼女の言葉。
 生きているっていうのは――誇りを持っている間の事を言うんだ。
 生きたいって思ってない奴は――死んでいるのと同じだ。
 じゃあ、何を犠牲にしてでも楽しく生きたいと思うのは――。

「違う」

 紆余曲折は言う。

「生きるっていうのは」

 紆余曲折は、結論を言う。

「死から逃げるって、ことじゃない。辛いことから逃げて、楽しさだけを追い求めることでもない。
 いつか死ぬってことも、目の前に辛いことがあるってことも、全部全部飲みこんで、呑みこんで、体中にそれを浸透させて、
 何度でも嫌な気分になって、何度だって負けそうになって、何度だって諦めそうになって、何度だってそういうことを繰り返して、
 それでも、それでも……それでも前に進むのが。傷だらけで進むのが。生きるって、ことなんだ。
 ずっと楽しく生き続けようだなんて欲張りもいいところだ。
 良い未来だけ、おいしいところだけ食べて生きて、それで生きたつもりになってるなら――大間違いだ」
「たかが十数年しか生きてない君が、人生を説いてくれるの? 面白いね」
「一度も辛い選択肢を選ぼうとしなかったあなたよりは生きてるんじゃないですか?」
「ははは……アナタから見た天飼千世は、人を殺すのが辛くないんだね」

338 :46◇おはなし(終) ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 03:55:22.57 ID:1O0rDYPP
 
 天飼千世が笑う。

「もう、そういう風に見られちゃうんだよね。まあ、仕方ない、かあ。麻痺、しちゃってるもんな」
「……」
「うん。そうだ。辛いことは起きる前に回避してきたからね。辛いことは経験していない。
 経験していないんだから、辛いと感じたことだってもちろんない。天飼千世は、そういう存在さ――。
 ふふ、やっぱりアナタは素晴らしいよ、紆余曲折。アナタみたいな勇者を、天飼千世は望んでた」

 酔ったような表情で紆余曲折を見る。

「アナタはアナタがアナタらしく生きるため……“それだけのために”こちらを殺しにきてくれる。
 復讐や夢を叶えるために動くようなのは、それが達成しちゃった瞬間に終わってしまうけれど、アナタは終わらない。
 いつまでも相手をしてくれる。いつまでだって遊んでくれる。
 ふふ、そろそろ、元の世界に“還す”けど……ホントならずっとここでこうやっておはなししていたいくらいだよ?」
「そうですか」
「そうです」
「じゃあ、よかったですね」

 ?
 天飼千世は頭の上にハテナマークを浮かべた。
 いま、紆余曲折は「よかった」と言った。
 どうしてこの流れで、自分のほうがよかったと言われなければならない?

「ん? どういうこと?」
「だから、よかったじゃないですか。死ぬまでおはなしできるんですから」
「……何を言ってるのかな」
「もうおはなしは充分聞いた、ということです」

 紆余曲折はふう、と短く息を吐いた。
 そして、着ている学生服のポケットに手を入れた。

 ポケットに、手を入れた。

 天飼千世は考える。なにかがそこにある? では、何がでてくる。
 《百発百中》の銃は、こちらが取ってしまっている。紆余曲折は見た限りでは他に武器を使っていない。
 首輪は回収させた。首輪の中に入っていた《紆余曲折》の紙か? だがそれでなにができる。

 何が出てくる?
 ――いや、何が出てこようと問題はないはずだ。
 天飼千世は手札を見せている。
 天飼千世という存在を守る文字の盾は三つある。

 一つ、《八方美人》を使う限り、天飼千世と喋ったことのあるものは天飼千世を殺せない。
 一つ、《高論卓説》を使う限り、天飼千世が喋っている間、紆余曲折は席から動けない。
 一つ、《生殺与奪》を使う限り、天飼千世は紆余曲折の所有物の所有権を握る。
 
 これらの文字がこの場の絶対のルールだ。
 これは覆せない。
 覆せない、はずだ。

「あなたは覆されることを望んでる。だからそう、これはあなたの……望み通りなんじゃないでしょうか」

339 :46◇おはなし(終) ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 03:57:11.87 ID:1O0rDYPP
 
 紆余曲折はつまらなさそうに、見透かしたことを言ってくる。
 いや、それは当たりだった。
 なぜなら、万全を期すならば、紆余曲折が紙を取り出そうとした時点で《生殺与奪》によりその紙を奪うべきだからだ。
 しかし天飼千世はそれをしない。ぎりぎりのぎりぎりまでスリルを味わいに行く。
 どうあがいても覆せないはずの仕組み(ルール)だからこそ――それをどう覆してくるのかに、興味が行ってしまう。
 それは認めよう。

「望み、ですか」
「そうなんでしょう。そうとしか思えない。そうじゃなきゃ、僕はこんなに反抗的な態度を取らせてもらえない。
 さきの狂乱を思うに、“僕”は、あなたが見通す未来に居ないんでしょう?
 【どうしてきみが世界を変えうるかだけは、最後まで見えなかった。】
 僕があなたの邪魔になることまでは探し当てたのに、どう邪魔するかまでは見えなかったんでしょう」
「……ふふ、そうだね」

 そしてこれを語る時、紆余曲折という存在自体がイレギュラーな勇者候補だったことにも言及せざるを得ない。
 「天飼千世にとって障害となる沢山の因子、および因子へ影響を与えることができる周囲の人物」のリストに、紆余曲折は「いない」のだ。
 他の因子は、1000あるうちのいずれかの結末に登場する。あるいは結末を導く立場にいる。あるいは結末から逆算してその存在の重要性を確認できる。
 どうして天飼千世の敗北に彼または彼女が関わるのか、という問いに、理由をつけることができる。
 例えば傍若無人であれば軍人として相対してくる。例えば一刀両断であれば弁護士として相対してくる。例えば切磋琢磨であれば武人として相対してくる。
 優柔不断などは関わりを調査するのに少々時間が掛かったが、彼がとある日にとある女の子をナンパしようとして出来ずに逃げたことが巡り巡って面倒な事態を引き起こすことを導いた。

 しかし紆余曲折と言う少年は、どの結末にも登場しない。
 1000あるどの結末をどれだけ推察しても、紆余曲折はそれに関わっていないし、紆余曲折の周りの人物も関わっていない。
 世界の終焉――天飼千世以外が全て死んでしまう可能性線では、彼はいち一般人としてゴミのように死んでいる。
 そもそも彼の将来を見ても、どう転がしたとしてもせいぜいがゲームの世界大会で優勝する程度の存在でしかなく、
 世界を相手に阿呆な大立ち回りをしようとしている天飼千世からすれば、あまりにもちっぽけな存在であるはずだった。

 それでも彼は天飼千世の敵だと、四字熟語は導き出した。
 危険な敵を知らせてくれる四字熟語を使って洗い出した【天飼千世の敵】の中に、彼は名を連ねていた。
 不一致。
 1000の未来に登場しない、敵。
 完全な勝利を必須条件にしている天飼千世にとってそれは、看過できない不整合性だった。

「そうそう。だから天飼千世は、アナタのことを隅々まで調べ上げて、様々なことを確かめようとした。
 アナタは覚えていないだろうけど、天飼千世はこの世界に来る前のアナタに、ほんの少しだけ接触していて、気に入っていたんだ」
「そうなんですか。それは残念ですね。
 ちょっとだけ期待してたんですが――記憶を失う前の僕も、やっぱり貴女に気に入られてしまうような人間だったんだ」
「名誉だと思ってくださいよ。勇者に選ばれるに足る精神性を持っているんですから」
「僕みたいな人なんてどこにでもいると思いますよ」

 それこそ、どこにでも。と言ってから。
 紆余曲折がいよいよ、ポケットから手を取り出し始める。
 
「ところで。まだ、《見えて》いませんか?」

 そして、質問をしてきた。
 《天飼千世》は返す言葉の前に確認する。1000の未来を。
 正確には、ここまでの足掻きによって400パターン程度まで減じた、敗北の未来世界可能線を。
 ――変化は、ない。
 天飼千世が見る未来に変化はない。

340 :46◇おはなし(終) ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 03:58:51.68 ID:1O0rDYPP
 
「見えないな。アナタはいったい、何をしてくれるのかな?
 こちらには《八方美人》があるのだけれど。天飼千世とおはなしをしてしまった状態から。どうやって、天飼千世を殺すのかな?」
「そうですか。見えていないんですね。
 可哀想なくらいです。あなたは、肝心なことが、見えなくなっている」
「……?」
「だから、なんで僕がこんなに怒っているのかにも、あなたは気付くことができない。
 そしてあなたは、あなたがもう詰んでいて、もう未来が訪れないことにだって――気づくことは無い」
「何を言っているのか、やっぱり分からないなあ。
 分からない――分からないよ、分からない……うふふ、未来が見える天飼千世が、アナタのことだけはこんなにも分からない……」
「では、ひとつだけヒントをあげましょう」

 紆余曲折はポケットから手を引き抜く。

「あなたの失点はただ一つ。僕がリョーコさんをなぜ殺せたのかを、見ていなかったことだ」

 引き抜いたそれを両手で持って、天飼千世の前に広げる。

「見ていないんだ。自分で開いた殺し合いの一部始終を。
 奇々怪々に任せて、経過を報告させるだけで、あなたは何も見ていない。
 今から僕を現世へ送り返した後に、ゆっくりと楽しむつもりだったのかもしれませんが、ふざけてる。
 人を殺し合わせておいて、その観測すらせずに、ただ優勝者が決まるのだけを待つ、そんな人に、そんな文字に、
 ごちゃごちゃごちゃごちゃ身の上の悲劇を言われたところで――何が心に響くんでしょうか!」
「あ……」
「僕はあなたを殺しに来た、そう最初に言いましたよね。“これ”が答えです」
「アナ……タ……」

 天飼千世は目を見開いた。
 
「僕があなたを殺す未来が見えない? 当たり前です。僕は、あなたの未来ごと殺しに来たんだ」

 紆余曲折が取り出したのは、四角い紙。
 娯楽施設からの脱出に使われた、《胡蝶之夢》が描かれた紙。
 その裏に。裏側に。
 ここに来る前に、彼はもう一つ、七色のペンで文字を書いていた。

「おはなしはもう充分聞きました。あなたを殺せない僕に、たくさんのご教授をありがとうございます。
 今度は――あなたを殺せる僕と、殺し合いをしましょうか」

 ――《原点回帰》。

 それは天飼千世が見ることのできない、千一個目の《結末》への切符。
 おはなしを、ふりだしにもどす、四字熟語。

 いくら《結末》が見えようと、《結末》にたどり着く前にその未来を過去に接続されてしまえば――その行為は、観測できない。

341 :47◇殺し合い ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:01:37.44 ID:1O0rDYPP
 

 そして、殺し合いの時間。


◆◆◆◆


 まばたきを一つして、目を開くとそこは廊下だった。
 コンクリートの床は灰色で、中央に白のライン。
 壁は上下に黒のラインが入った白壁で、等間隔に四角窓が空いている。
 窓の外は雑木で遮られ、明かりは天井からの蛍光灯。それも等間隔。
 少年が抱いた第二印象は、やはりここからか、というものだった。
 蛍光灯によって照らされた廊下の奥には、洋風の大きな木扉がある。
 大きな部屋があの奥にある。ここは最初に集められた講義室のような場所に続く廊下だ。

「ええっと……これは、夢から醒めたって、ことなのかな?」
「いえ、まだ夢の中ですよ」

 とぼけた声を出すと、後方から声がした。
 振り向くと、長く続く廊下の少し離れた場所に、一人の男が立っていた。
 少年は水色のシャツを着たその男の姿を見て少しだけ安堵を覚えた。

「……え?」

 だが、まだ変えてはいけない。殺し合いを始めるには、扉を開けるまでは“なぞらなければ”ならない。
 少年はそこにいるはずがないと思い込んでいた男に対して、やはりとぼけた演技をした。
 銀の髪を横に撫でつけた男は、いつか聞いたものと同じ、キザな口調で話し始める。

 大丈夫、演技は得意だ。それで殺し合いを勝ち抜いたのだから。

「お久しぶりです、紆余曲折くん。
 優勝……おめでとう、というべきなんですかね……」
「……えっと……すいません、……まさかあなたが、“主催”ですか?」
「いいえ、違います」
「でも……じゃあ……まさか、爆発が……」
「ええ、フェイクだったんですよ」

 男が少年の解答を先回りするのを見越して、少年は話がスムーズに進むように、かつ違和感がないように話を進めた。

「あのときボクの首輪は確かに爆発したけれど、それはボクを殺すようなものではなかった。
 爆発音が大きく聞こえたのは、内蔵スピーカーによるもの、だそうです。
 そしてボクは、……「先手必勝」は、“文字だけ死亡扱いになって”、あの場から退場させられた」
「首輪がないのは、そういうことですか。……メガネもないですけど」
「そうですね……あのメガネが、ボクの遺品ということになるんでしょうね……」

 銀髪の男はほんの少し目を伏せる。
 流れは未だに変わっていない。問題はなし。少年は次の言葉を吐く。

「遺品って。あなたはまだ、生きてるじゃないですか」
「いいえ、死んだんですよ。「先手必勝」はあそこで。生きているのは紆余曲折くん、君だけです」
「リョーコさんみたいなことを言わないでください……大体、」
「一刀両断に会いたいですか?」
「……会いたいですね」

 二度目の少年は、素直に答えてしまった。

342 :47◇殺し合い ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:02:53.24 ID:1O0rDYPP
 
「会いたいです。話し足りないし、見足りないし、触れ足りないし、足りないことだらけです。でも、会えない」 
「会えますよ。あの扉の向こうに、彼女は居ます」
「……つまり、そういうことですか」
「……さすがに回転が早いですね。……気付いて、いたんですか? 首輪の仕様に」
「いえ。まさか。どこかでおはなしを聞いたわけでもあるまいし。
 でも、殺すための爆発を抑え目にするということは――要するに、それくらい首輪が大事、ということでしょう?
 そしてなぜ首輪が大事なのかを考えれば、おのずと可能性は絞れてきます」
「……驚きました」

 かつて先手必勝だった男は、少年の物わかりのよさに驚いた。
 そりゃあもう、予習を散々したようなものなのだから、驚いてくれなければ困る。
 大丈夫だ。この程度の思考の短縮であれば、彼が思う紆余曲折というキャラクターの頭の良さの範囲を逸脱していないはずだ。

「とりあえず……ここに貴方がいるということは、外してくれるんでしょうか、これを」
 
 変えないように振る舞おうとしすぎるのは逆にボロを出す。
 演技くさい態度になってしまうからだ。相手をよく見て先回りができる彼ほどの人物の前では、それはボロが出てしまうやり方だ。
 だから少年は、前回は少年の先回りをしていた男に対し、さらに先回りをする。
 気づかれないように。

「……そうですね。それが今回の、ボクの役目です。ちょっと待ってください……すぐに、外しますから……」

 こちらに近寄ってくる男の手に握られた鍵を使って、首輪は半円二つが連なった鉄の輪になる。
 その裏側――首に触れていた部分に、さらに男は鍵のようなものを当てる。
 するとさらに筒がズレて、中身が露出した……いや、開かれて、落ちてきた……。

「そう。首輪こそが、大事だったんです。なぜなら、首輪それ自体が――実験の“参加者”の、本体だからです」

 男は紙を開く。
 四角い紙を、巻物を垂らすようにゆっくりと開く。
 首輪の筒の中に入っていたのは、「紆余曲折」の文字紙だ。

「これが、“君”です。大事に持っておいてください」
 
 男は少年に文字紙を押し付けると、扉へ向かってすたすたと歩き出した。
 少年は文字紙に目を軽く見開いた演技をしたあと、すたすたとそれに付いていく。
 扉の前に、たどり着く。

「ボクから伝えられるのはここまでです。
 ボクは結局、エスコート役。ボクから得られるものは、多くは望めません。
 どうせ扉の向こうには、全てを知る者がいるんです。そちらに聞いてみればどうでしょう。
 あるいは、扉をくぐる前に推理してみても面白いでしょうね。どちらを選ぶかは君に任せます」

 たたたたたたんと勢いよく歩いていた男の足は、
 そこまで言い切ると扉の直前で、ピタリ、と止まる。

「ボクは。この扉の向こうには行きたくないので、ここで、終わりです」
「分かりました」
「分かりましたか」
「はい。何が起きているのかは、大体」

 少年は扉の取っ手に手をかけた。

「さすが、いい察しの早さです。もしかしたら、君なら……」
「褒められるような話じゃないですよ。場合によっては、
 あなたが会いたくないその人にひどいこともするかもしれないですし。
 それに、まだ完璧じゃないかもしれない。何もできずに終わる可能性が、まだまだ高いです」
「いいんですよ」

343 :47◇殺し合い ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:03:41.02 ID:1O0rDYPP
 
 銀髪の男は、卑屈にも聞こえる言葉を吐いた少年の肩を、やはりぽんと叩いてくれた。
 冷え切った場所で戦った彼からのエールは、やはり暖かい。
 こんな言葉を掛けてくれるのならば、あと何度だって殺し合って見せる。
 いや――今回で、終わらせる。

「ダメだったら、次の作戦を考えればいい。
 君は優勝した。“負けたボクと違って”、実験からの解放を約束された存在だ。
 今、全世界で君以上に、主催と対等な存在は居ない。驕らず、焦らず、無理せず戦って下さい」
「……」

 少年は扉を押し込みながら、男に前回掛け損ねた言葉を掛けるか迷った。
 だけどその動作よりも、男が少年を扉の奥へと押し込む動きの方が早かった。少年はその動きを止めなかった。
 だから少年は今回も、男の顔を見ずに行く。
 負けたがゆえに、実験からいつまでも解放されない、永久凍土の中の化石のような、
 永久の冷たい夢の中へ閉じ込められた男の姿は、もう心が熱くなるほどに焼き付けたから。

「だから――頼みましたよ」

 ええ。頼まれました。

 ・
 ・
 ・
 ・

 広がった視界の先。

 扉が閉じる音と共に、少年は光景を見る。

 ・
 ・
 ・
 ・

344 :47◇殺し合い ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:06:41.18 ID:1O0rDYPP
 
「ねえ――どういうことかな?」

 そこは、大学の講義部屋のようなところだった。ただし机はなくて、イスがある。
 何もない白い空間の中、前方のステージに大きなイスがひとつあった。
 その上にちょこんと、椅子の大きさに不釣り合いな小ささで、天飼千世は座っている。

「はじめまして、は微妙にニアイコールって感じだけど……本当に、はじめましてなのかな?」

 天飼千世は愕然としていた。
 文字が人間の真似事をしているようなその表情は、やはり少年には人間には思えなかった。

「待ってたんだ。おはなしをしようと思って。楽しい、おはなしを、しようって、ねえ。
 ああ、君と話すのを、ずっと前から楽しみにしていたような気さえするのに……
 対等な会話は、久しぶりなんだ。他の実験仲間は慕ってしかくれないし、“ひとりあそび”は楽しくなくて――」

 実験で死んだはずの十四人が人形みたいに扱われ、人形みたいに置かれているその光景の中で。
 おもちゃ箱をひっくり返して遊んでいたら親に見つかった、王様気取りだった子供のように、天飼千世は呆然と呟いた。

「あたしの名前は、「天飼千世」。
 文字を愛して文字になった、最初の幻想言語学者。
 ねえ、紆余曲折(ゆうしょうしゃ)くん、どうして? どうして――」

 言葉は返さない。《八方美人》がある以上、天飼千世と会話をしてはいけないからだ。
 もし返せるとしたら、こう言っている。

「どうしてアナタが私を殺す未来しか《見えない》の」


 ――そうなるように、一つ一つ丁寧に、潰していったからに決まってる。


 一つ、《八方美人》を使う限り、天飼千世と喋ったことのあるものは天飼千世を殺せない。
 一つ、《高論卓説》を使う限り、天飼千世が喋っている間、紆余曲折は席から動けない。
 一つ、《生殺与奪》を使う限り、天飼千世は紆余曲折の所有物の所有権を握る。
 もうこれらの文字を使われるようなことは、させない。

 少年は《百発百中》の銃を取り出す。
 まず、おはなしが始まらない以上、天飼千世に《八方美人》を行使することは出来ない。
 だから天飼千世が取れる選択肢は、《高論卓説》か《生殺与奪》の二者択一だ。
 あるいは他の何かを持っているかもしれないが、少なくとも前回の《百発百中》への対処はこの三つの熟語だけで行われている。

 天飼千世は言っていた。《千世の読み》が見るのは《1000の結末》だと。
 口ぶりからその《結末》は、《致命傷を得た時点からの未来映像》であると推測できた。
 だから天飼千世は、《どうやって致命傷を受けるのかまでは、推測しか出来ない》。
 おそらく今回も、《百発百中》への対処をまずはこの三つの熟語で行おうとするだろう。おそらくは《生殺与奪》で。

 だが、少年は《紆余曲折》を持ってきている。前回はあえて一回も使わなかったが、
 これをこのタイミングで発動させれば、《4秒間だけ、あらゆる四字熟語の効果(攻撃)を、曲げる》ことが可能だ。
 四秒あれば、銃は撃てる。
 撃鉄は起きている。――ためらいなく、引く。

 もっとも怖かったのは、「なんらかの四字熟語か、あるいは彼女の一存で、この空間から追い出される」ことだったが、それはなかった。
 おそらく《1000の未来》がすべて少年に殺される未来に変わってしまった恐怖が、
 彼女に「ここで対処しなければならない」強迫観念を植え付けたのだろう。
 《1000の未来》が全て変わってしまったのは自分がべらべらとお喋りをしてしまったからなのに。自業自得だ。

345 :47◇殺し合い ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:08:25.86 ID:1O0rDYPP
「――ッ!!」

 二次の策として天飼千世は何らかの《文字》を使おうとする。だけど、もう未来は決まっている。
 紆余曲折が一刀両断を殺す瞬間を見ていなかったのが天飼千世の敗北の導線だ。
 だって、それを見ていたのならば、
 前回で少年が「ただ単に《百発百中》の引き金を引いただけ」であったことに、おかしいと思わなければいけなかった。

 紆余曲折のルール能力は。
 《攻撃を4秒間迂回させることができる》というものだ。
 自分からの《攻撃》に、
 それはもちろん、適用できる。

 あのときまで。
 一刀両断と殺し合い、最後のボウガンを撃つあの瞬間まで――
 自分からのまともな《攻撃》なんて、したことがなかっただけだ。
 リョーコさんは、もしなにもしなければ、僕のボウガンの矢なんて、斬ってしまっていただろう。

「《××××》……!?」

 《天飼千世の発動したあらゆる四字熟語の効果を、迂回して。銃弾は天飼千世の心臓を貫く》。
 天飼千世は言っていた。こうなると知らなかった天飼千世が言っていた。
 例え天飼千世であろうとも、文字の始祖であろうとも。その心臓を貫かれれば……人間の身体と同じように、死んでしまうのだと。
 だから。これで、結末だ。

・   そして1秒。天飼千世は未だに信じられないと言ったような顔をしながら、七色の血をまき散らし床に倒れていく。
・   そして2秒。紆余曲折は終りを祈りながら目を閉じる。
・   そして3秒。天飼千世が床に倒れ、夢が揺らぎ、世界は終わる。
・   そして4秒。《紆余曲折》が迂回していた四字熟語の効果は――もちろん発動者が死んだところで止まらない。

 リョーコさん。
 どうでしょうか。

 少年は人形のように動かない、かつて殺したパートナーに語りかけた。

 僕は――逃げずに、やれましたよ。

 こうして、すべての因果は収束した。

346 :47◇殺し合い ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:11:41.46 ID:1O0rDYPP
 

【紆余曲折、勝利】

.

347 : ◆YOtBuxuP4U :2016/01/10(日) 04:13:01.97 ID:1O0rDYPP
投下終了です。

エピローグである凛々ちゃんパートに続きます。

348 :創る名無しに見る名無し:2016/01/11(月) 17:20:33.67 ID:+bMOoscQ
投下乙です
終わりが無いのが終わり……終わりが見えるなら延々とループに巻き込めばいいとは……。
結末からの逆算による1000パターンなら、止めを百発百中で固定すれば最大でも1000回すれば相手の見た1000への未来の対処も見破れるものな。
無限ループならぬ有限ループだからこその攻略法か。
しかし紆余曲折、4秒限定とはいえどんな攻撃も逸らす盾とどんな盾も避けて当たる剣を両立するに至っていたとは。
解釈や進化という現象を理解していながらも、自身が戦場で戦っていたわけではなく真に分かってなかった学者らしい敗北でもあった。

349 : ◆ymCx/I3enU :2016/01/12(火) 00:02:26.77 ID:Tf6AlFiL
投下乙です
何だろう…初代SIRENのジェノサイドエンドを思い出した
(気の利いた感想が出てこなくてすみません)

自分も一話投下します

350 :転がる石になれ ◆ymCx/I3enU :2016/01/12(火) 00:03:18.95 ID:Tf6AlFiL
22話 転がる石になれ

B-7エリアに存在する灯台に、犬獣人の学生服姿の少年、久保永悠歩が近づいて行く。
殺し合いが始まってからと言うもの、彼は特に宛も無く、時折どこかから聞こえてくる銃声や爆発音に怯えながら歩いていた。

「変態な事ばかりやってたからバチでも当たったのかなぁ」

悠歩は「変態」であった。
学校の変態仲間である舩田勝隆らと共に教室で全裸になって自慰ショーを行ったり、
深夜の露出徘徊、舩田の他、友人の碑文谷直紀らも交えて乱交を行ったりとかなり爛れている。
そう言った行為を行ってきた事への天罰なのかとも悠歩は思っていた。

「灯台に来てみたは良いけど、来たってどうすんだよ僕……隠れられそうでも無いし」

灯台は必要最低限の作りの小規模な物で灯台守の為の簡易宿泊所のような物すら無い。
比較的市街地が近いせいであろうか。

「ん……?」

灯台の裏から一人の女性が出てくる。
黒髪に猫の耳と尻尾を持った、半獣の女性。胸元を覆うシャツと、ホットパンツと言う、露出の多い格好。
大きな乳房が揺れ動いていたが、悠歩はそれよりも彼女が両手に持つ物に目を引かれていた。
右手に金属バット、左手に拳銃。
金属バットは凹みが有り赤い液体が付着していた。

「あっ……」

女性が何をしたのか悠歩は察する。察するのとほぼ同時か直後位であろうか。女性が左手に持っていた拳銃を悠歩に向け発砲した。
悠歩の胸元から血が噴き出す。今まで感じた事の無い衝撃、激痛。悠歩が胸元を押さえ呻いた。
ああ、しまった。察した時にすぐに逃げて居れば、いや、灯台なんかに来なければ――――。

後悔している時、更にもう一発の発砲音が響き、頭部に衝撃を感じた悠歩は直後に意識がブラックアウトし、それで彼の人生は幕引きとなった。

◆◆◆

情報屋の少女、ハレナは、まず灯台裏にて一人の女性を金属バットで襲い殺害した。
女性は自分に支給されたらしいリボルバー拳銃を見て喜んでいた。

「銃を引くなんて運が良いわ私」
「良い武器持ってますね」
「ん?」
「ころしてでも うばいとる」
「な、なにをするきさまー!」

この会話の後女性はあっさり殴り殺される事となり、リボルバー拳銃、S&WM10とその予備弾薬はハレナの物となった。
その後、灯台に近付いて来ていた犬の少年を殺害し現在に至る。

「ハァ、ハァ、ああ心臓が凄いドキドキしてきた……落ち着いて落ち着いて私……」

深呼吸しつつ自分に言い聞かせるようにぶつぶつと呟くハレナ。
情報屋と言う職業柄、命の危機に晒される事も一度や二度では無く、その度上手く切り抜けてきたが、
怪我は負わせこそすれ、他人の命を奪う事は無かった。灯台の裏で女性を殺害するまでは。
人生で初めて他人の命を奪った事はハレナの精神に大きなショックを与えたのだ。
無論、彼女自身は覚悟はしていた、が、完全には覚悟し切れていなかったと言う事なのだろう。

本当なら他人を殺したくなんてなかったのだが、今回は今までとは違い殺さなければならない状況になっている。
殺し合わなければ結局命を落とすそう言うシステムになっているのだ。
どこかに隠れて最後の一人になるまで只管待っていようとも考えたが現実的では無いしそんな幸運はまず有り得ないとすぐに諦めた。

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