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非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part35

1 :創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 20:38:47.20 ID:Gga0V1+J
1999年刑行された小説「バトル・ロワイアル」

現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。

基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前の登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などの発表は書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!

前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part33
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1360577722/

非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html

296 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/14(土) 21:19:07.40 ID:rpbx/3Q3
投下終了です。

297 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:02:12.60 ID:WJOgwNGx
投下します。

298 :その行方、徒に想う…… ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:06:40.53 ID:WJOgwNGx
78話 その行方、徒に想う……

放送の時刻が差し迫っていた。
この殺し合いにおいて二回目となる定時放送。

不動産屋の応接スペース、そのソファーに座る野原ひろし。
北沢樹里は事務机の上を漁り、ラトは閉められたブラインドの隙間から外を監視していた。
ひろしは樹里から話を聞いて程無くみさえを探しに行くと言い出したが、放送が近いとラトに止められてしまった。

(もうすぐ二回目の放送……今、どれくらい生き残ってるんだろ)

殺し合いが始まって早12時間、つまり半日が経とうとしている。
第二放送では何人呼ばれるのか、今、生存者はどれだけ居るのか、樹里は気になった。
思えば前回の殺し合いでは第二放送は迎えられなかったな、と思い出したりもした。

「はぁ」

溜息をつき、ソファーの背もたれに背中を預けて天井を見上げるひろし。
放送を待つこの時間がとてももどかしく感じる。
もしかしたら殺し合いに乗ってしまっているかもしれない愛妻、みさえは今どこで何をしているのか。
そもそもまだ生きているのか。
樹里の話の通り、本当にやる気になっているのか。
憂慮する事が多過ぎて、辟易としてしまう。それが溜息として外に出た形であった。

◆◆◆

「ハァ、ハァ……」

傷の痛みに顔を歪め息を荒くしながら、みさえは通りを歩いていた。
ふと空を見上げれば、太陽が真上に近付いており、昼の12時、つまり第二回定時放送の時間が迫っている事を示している。
どこかで落ち着いて、放送を聞かなければならない。

「どこか……有るかしら」

身を潜められそうな場所を探し始めるみさえ。
周りには民家の他に、幾つかの商店や飲食店、会社事務所が見えた。
その中でみさえが目を付けたのは、とある不動産会社の事務所。

「あそこで良いかしらね……」

みさえは不動産会社に向かって歩いて行った。
事務所の窓は入口に至るまでブラインドが下りていて内部の様子は外からでは窺い知る事は出来ない。
内部に誰か居る可能性も有り、みさえは右手に持つ拳銃の引き金に人差し指を添える。
そして入口のドアのノブに手を掛けた。

「……」

駄目であった。
入口はしっかりと施錠されていて開かない。
なら仕方無い、この不動産屋に拘る必要も無い、別の場所を探そうと、
みさえは早々に見切りを付けて不動産屋から離れ、先へと進んだ。

299 :その行方、徒に想う…… ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:07:15.08 ID:WJOgwNGx
しかし、十数メートル歩いた所で、背後から物音が聞こえた。
扉の鍵が外される音と、扉が開く音、何やら揉めるような声。
みさえは背後を振り向いた。
開け放たれた不動産屋の扉、その前で慌てた表情を浮かべている黒猫のような頭をした少年と、見た目普通の人間の少女、
そして、良く見知った、濃い髭に角ばった顔の男性。

「みさえ!!」
「……あなた」

紛れも無く、自分の夫、野原みさえその人であった。
とても嬉しそうな表情で、目を潤ませながら、ひろしはみさえの事を見据えていた。
その様子から、自分の事を心の底から心配していたのだろうとみさえは思う。
自分がひまわりを生き返らせる為に殺し合いに乗っている事など露程も知らずに。

「生きてたんだな! って、怪我してるじゃねえか!」

自分とは違い、この絶望的な殺し合いの中でも「野原ひろし」は「野原ひろし」で在り続けていたようだ。
みさえは自分でも知らぬ内に安堵していた。

だが、その安堵にいつまでも浸っている事は出来ない。

「野原さん! 待って!!」

ひろしの背後に居る少女が叫んだ。
そう言えば、あの少女は図書館で殺した二人の仲間ではなかったか。
自分の事をひろしに伝えようとしているのか、別に伝わっても構わないが、さっさと済ませてしまうに越した事は無い。

みさえは右手のスコアマスターをひろしの胸に向けた。

「みさえ?」

ひろしの表情が凍り付く、当然だろう。
何、心配無い。しばし別れるだけ。
優勝して、ひまわりも、貴方も、どこかに居るだろうけどいずれ死ぬであろうしんのすけとシロも、生き返らせて、
また皆で一緒に暮らそうね――――。


ダァン!!


銃声が響いた。


◆◆◆

300 :その行方、徒に想う…… ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:07:54.34 ID:WJOgwNGx
目の前で、ひろしが自分の妻に撃たれ、俯せに崩れ落ちるのをラトと樹里は目の当たりにした。
直後にひろしの妻、みさえはもう一発を発砲した。

「ぐぁっ……」
「ラト!」

ラトが腹の辺りを押さえて蹲る。
押さえる手の指の間から赤い液体が滲む。

「野原……みさえさん!!」

樹里はみさえに向かって大声を張り上げた。

「どうして、こんな事を!?」

きっとみさえを見据えながら、樹里は彼女を問い質す。
図書館で彼女に襲われ、二人の同行者を亡き者にされた時点で分かってはいたが、
みさえはやはり殺し合いに乗っている。
今、自分の夫すらも躊躇する事無く撃った事からも明らか、だが、その理由を知りたい。
その理由については予想はしていたが、あくまで予想だ。だから本人の口から聞きたかった。

「ひまを生き返らせるのよ」
「……!」

果たして、その予想通りの答えがみさえの口から語られる。

「夫も、しんのすけも、シロも、同じように生き返らせて、また皆一緒に暮らすのよ」
「貴方は、一回目の放送を聞いていないんですか?
息子さんも、飼い犬も、死んでしまったんですよ! この殺し合いのせいで!」

息子と飼い犬が死んだ事を知らぬのではと思い、樹里は事実を伝えた。
みさえは一瞬だけ表情を変えはしたものの、すぐにまた狂気を湛えた笑みに戻って応答する。

「そうだったの、でも大丈夫よ! ちょっとだけのお別れだもの。
私が優勝して皆生き返らせるから、大丈夫なのよ……!」

「狂ってる」、喜々と語るみさえを見て、樹里が抱いた感想だ。
しんのすけが死の間際まで案じていた母親がこの有様、どうしようも無く怒りと悲しみが湧いてくる。
横っ面を引っぱたいてやりたかったがそれよりも前に撃たれるのが落ちだ。

「だから、貴方達も、ひま、いや、私達の為に! 死んッ……」

不意に、みさえが台詞を途中で切った。

「がっ、あ……?」

そして突然、口から血を吐き出し、その場に倒れた。
困惑するラトと樹里が見た物は、コンバットナイフを手にして立ったひろしの姿。
穴が空いた胸元と同じように、コンバットナイフの刃は赤く染まっている。

301 :その行方、徒に想う…… ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:08:28.05 ID:WJOgwNGx
「みさえ……もう、やめろ」

そう言った直後、ひろしもまた、みさえに覆い被さるようにして崩れ落ちた。


◆◆◆


ラトから可能性を指摘され、樹里から図書館での出来事を話され、
ひろしはみさえが殺し合いに乗っている可能性を考慮するようになった。
しかし、心のどこかでは、希望を捨てきれずに居た。みさえが殺し合いに乗っているなんて何かの間違いだと。
だがその希望は、みさえに胸を撃たれた事によって脆くも崩れ去った。
胸が痛い、苦しい。心情的な物では無く物理的、肉体的な意味。
意識が揺らぎ、何とも形容し難い気持ち悪さと寒さが襲う。ああ、もう駄目だ、自分は死ぬ。
本能的にひろしはそう感じた。

あの時、不動産屋の中に三人で身を潜めていた時、ブラインドの隙間から外を見張っていたラトが、
「誰か来る、静かにして隠れろ」と自分と樹里に言い、三人共カウンターの陰に隠れた。
そして、外の誰かは、事務所入口扉を開けようとしたが、ラトが事前に鍵を内側から閉めていた為開かず、
その誰かは入口が開けられぬと見るや否や、去って行った。
ひろしはラトに小声でどんな姿だったか訊いた。
ラトは何故か答えづらそうにしていた。その時ひろしは直感的に何かを感じ、ブラインドに向かって小走りで近付き外の「誰か」を確認する。
ラトと樹里の制止の声が聞こえたが、そっちのけであった。
そしてひろしは、不動産屋から離れて行く、良く見覚えの有る後ろ姿を見付ける。
そこからのひろしの行動は最早、反射神経のようで、鍵を開けて外に飛び出し、愛妻の名前を呼ぶまで、ラトと樹里が止める間すら無かった。

ついに、愛妻のみさえと再会したひろし。

結果、彼女に致命傷を負わされた。

二人の制止も聞かず、感情に任せた結果がこれだ。
自分の愚かさをひろしは憎む。
霞む視界、定まらぬ意識の中、ひろしが見た物は腹を抑えて蹲るラトと、みさえと樹里が対峙する姿。
樹里はみさえを問い質す。何故こんな事をするのかと。
みさえは答える。ひまわりを生き返らせて、死んだ他の家族も生き返らせ、また家族全員で一緒に暮らす為だと。
ラトの危惧は当たっていた。樹里の話の通りだった。
おまけにみさえは、一回目の放送を聞いておらず、今の今までしんのすけとシロが死んだ事も知らなかったらしい。

(馬鹿だよ、お前は、馬鹿だよ、みさえ……!)

みさえの後ろ姿を睨み付けて心の中で彼女を叱り飛ばすひろし。

そんな事をして、ひまわりが、しんのすけが、シロが、自分が、喜ぶ訳が無い。
他人の、大勢の犠牲の上で蘇らせた幸せなんて偽物に決まっている。
そんな事も分からないのか。分からなくなってしまったのかお前は。

ひろしの心の中で怒りと悲しみが綯交ぜになった激情が渦巻き、その目から涙が零れ落ちる。
みさえは目の前で更なる凶行を犯そうとしている。
ラトが撃たれ、樹里もまた殺されようとしていた。
止めなければ、何としても。
樹里の話からして、みさえは既に何人も手に掛けているのだろう。
ならもうこれ以上、みさえに罪を重ねさせる訳には行かない。
もうすぐ自分は死ぬ。みさえは説得に耳を貸す気配は無い――――なら、方法は一つだけ。

302 :その行方、徒に想う…… ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:09:16.92 ID:WJOgwNGx
最期の力を振り絞り、ひろしは立ち上がり、装備していたコンバットナイフを、みさえの背中に突き刺した。

みさえの凶行は止まった。
彼女の命の鼓動も、もうすぐ止まるであろう。

「みさえ……もう、やめろ」

倒れたみさえに向かって、ひろしは優しく語り掛け、彼もまた、みさえに覆い被さるように崩れ落ちた。
必死に、みさえの顔が見える位置まで、自分の顔を持っていくひろし。

「あな、た……」

口元を赤く染めている以外は、いつもと変わらぬ愛する妻の顔がはっきりと見えた。

「みさえ……」

そっと、ひろしはみさえの頬に血塗れの手を添えた。

「もう、頑張らなくて良い。もう、良いんだよ……一緒に、し、しんのすけ達の、と、所……に、い、行こ……う」

自分は、みさえを殺した。みさえも、自分や大勢殺した。自分達は子供達と同じ所には行けぬかもしれない。
それでも、ひろしは、みさえにそう言う事しか出来なかった。
理由はどうあれ、みさえは家族の事を思って己の手を汚したのだから。
許されぬ、分不相応な願いだとしても、ひろしはみさえと一緒に、子供達の所へ行きたいと思った。

みさえが、ふっと微笑んで、言った。

「また、みんな、で……一緒、に……――――――」

言葉は最後まで紡がれる事は無く、みさえの目から光が消えた。
だが、ひろしにはそれは見えなかった。声が途切れた事が何を意味するかは分かったけれど。

視界が霞んでいる上に、大粒の涙が両目を覆い尽くし、もう、何も見えなかった。

「ああ……ああ……! 一緒に、皆で、一緒に……暮らそう、な……!」

その言葉を最後に、ひろしの意識も遂に終わりを迎える。

日本の埼玉県、春日部市に住む、平和な一家であった野原家は、
突如巻き込まれた理不尽な殺し合いゲームによって、一家全滅と言う末路を辿った。


【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん  死亡】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん  死亡】
【残り  15人】


◆◆◆

303 :その行方、徒に想う…… ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:09:50.93 ID:WJOgwNGx
寄り添うようにして永遠の眠りについた野原夫妻を呆然と見下ろす、樹里とラト。

「……野原さん……」
「うっ……ぐ……」
「! ラト!」

苦しみ出すラトを気遣う樹里。
腹部の傷は、それ程出血はしていないように見えるが、腹を銃撃されたのだから軽傷の筈は無い。

「大丈夫……急所は、外れているみたいだから……それより、銃声が響いた。
ここから離れよう……野原さん達を、このままにしておくのは気が引けるけど……」
「歩けるの……?」
「ああ、何とかね」

銃声が響いた故に、殺し合いに乗った者がやって来る可能性が有った為、
樹里とラトはひろしとみさえの武器を回収した上で、その場を後にした。

(ラト、本当に大丈夫かな……)

やはりラトの傷の具合が気になる樹里であったが当人が大丈夫だと言っている以上、
現時点ではラトの言う通りに野原夫妻が横たわる場所から離れるしか無かった。

太陽はほぼ会場の真上に来ている。
第二回目の放送はもうすぐだった。


【昼/D-4市街地】
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腹部に盲管銃創(出血有、現時点では命の危険が有るかどうかは不明、行動には今の所支障無し)
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)、デトニクス スコアマスター(6/7)@現実、スコアマスターの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:北沢さんと行動。野原さん達の所から離れる。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※北沢樹里の話を聞いてクラスメイトのシルヴィアの死を知っています。

【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、悲しみ
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、
     モンキーレンチ、コンバットナイフ@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:ラト、大丈夫かな?
        2:野原さんが……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。

304 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/16(月) 23:11:13.97 ID:WJOgwNGx
投下終了です。次第二回放送の予定です
そろそろオリキャラロワやりたいと思ってる今日この頃

305 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/18(水) 20:40:19.64 ID:Iy4DGv/z
投下します。

306 :第二放送 ◆ymCx/I3enU :2015/02/18(水) 20:40:55.96 ID:Iy4DGv/z
79話 第二放送

「あーあ、野原ひろしと野原みさえも死んじまったなァ、これで野原一家は全滅って訳だ」

どこに有るとも知れない、バトルロワイアルの運営本部。
参加者達の生存状況を知らせる確認用モニターを見て、じゅんぺいがせせら笑う。
開催式の時や、第一放送の時には見せなかった凶悪そうな笑みである。

「資料によれば今まで数々の冒険を繰り広げ、危険を乗り越えてきたようですが……今回は駄目だったみたいですね」

じゅんぺいに対し、まひろは何ら変わらず礼儀正しい振る舞いだ。

「しかし平野さんも良くこんなゲーム思い付くよな」
「そうですね……でも、確か、昔出版された小説を元にした、と言っていましたよ」
「マジか、あの人以外にもこんな事考える奴居んだな」
「とは言っても、それを実行してしまうのが流石平野さん、と言いますか……。
そろそろ、二回目の放送の時間ですね。次は私の担当ですので、準備をしてきます」
「おお、分かった」

第二回目の放送の準備を行う為、まひろは席を外す。

◆◆◆

正午。
バトルロワイアルの会場に、二回目となる定刻放送が鳴り響く。
生存者達の耳に届くのは、高めの礼儀正しい男の声。

『えー、テスト、テスト……。

現在生き残っている方々、お久しぶりでございます。まひろでございます。
お昼の12時となりました。第二回目の定時放送を始めます。

まずは禁止エリアから。
午後1時より、D-1、E-4、E-6、F-2。
繰り返します。午後1時より、D-1、E-4、E-6、F-2です。

では続きまして、新たな脱落者の発表です。

307 :第二放送 ◆ymCx/I3enU :2015/02/18(水) 20:41:24.57 ID:Iy4DGv/z
稲葉憲悦
太田太郎丸忠信
小崎史哉
柏木寛子
ガルルモン
KMR
虐待おじさん
銀鏖院水晶
コーディ
シルヴィア
ソフィア
テト
野原ひろし
野原みさえ
春巻龍
フラウ
野獣先輩
呂車

以上18人となっております。残りは15人です。

次の放送は夕方6時となります。
それではこれにして、第二回目の放送を終了させて頂きます。ご健闘をお祈り申し上げます……』

慇懃な締めの後、二回目の放送は終わりを告げた。

◆◆◆

「ご苦労だった、まひろ君」

放送を終えたまひろを平野源五郎が労う。

「残り15人か。予想以上のペースだ。次の放送を迎える前に、決着が着いてしまうかもしれないな」
「そうですね……ですが、殺し合いに乗っている参加者はめっきり少なくなってしまいました。
一固まりになって動かない人達も居ます」
「ああ、だが、ひで君だったかな? 異世界の寄生虫に身体を乗っ取られた彼が、良い働きをしてくれると思っているよ」

これからが楽しみだ、とでも言うように、平野は不気味に笑う。


【残り  15人】

308 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/18(水) 20:42:30.89 ID:Iy4DGv/z
投下終了です。

309 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/22(日) 21:57:41.09 ID:uGBYrucg
投下します

310 :滲み続ける絵画 ◆ymCx/I3enU :2015/02/22(日) 22:12:21.24 ID:uGBYrucg
80話 滲み続ける絵画

古めかしい佇まいのうどん屋の中。
ノーチラス、君塚沙也の二人と、サーシャ、大沢木小鉄の二人は、お互いに持っている情報を出し合った。

「仁だ」
「え?」

沙也から警察署で見付けた少年の死体の事を聞かされ、小鉄が応答する。

「坊主頭でおでこに星印が有ったんだろ? なら、間違いねぇよ。
そいつは、俺の友達の、土井津仁だ」
「そ、そうなんだ……」
「くそっ、仁……一体何が有ったってんだよ……!」

聞けば、仁は警察署の、散らかった宿直室の中で、片手首を失い血塗れになって死んでいたと言う。
彼の死そのものは既に第一放送にて知っていた小鉄であったが、その死に様を聞かされて、
一体彼の身に何が起きたのだと嘆いた。
よもや、自分や、仁の担任である男によって殺されたなど小鉄は知る由も無い。

「……触手の怪物に、襲われたのよね?」

小鉄の事を気に掛けつつも、サーシャがノーチラスに訊く。
警察署にて、仁の死体を発見した後に、ノーチラスと沙也は全身から触手が生えたリカオン獣人少年の襲撃を受けた、
と、サーシャと小鉄は二人から聞かされていた。
その触手の怪物は、特徴等から、サーシャと小鉄、テトを襲い、テトを死に至らしめた怪物と同一であると、サーシャと小鉄は確信していた。

「ああ」
「私達も襲われたわ……多分と言うか間違い無くノーチラスと君塚さんが戦ったのと同じ奴だと思う」
「そうだ、その化物に、テトのねーちゃんも……あ、俺、あの化物の服に付いてた名前、見たぞ」
「本当か? 何て書いてあったんだ?」

ノーチラスが小鉄に怪物の衣服に着いていた名札の名前について尋ねる。
難しい漢字は読めなかった小鉄は辛うじて分かる「小」と「史」の二文字をノーチラスに伝えた。
ノーチラスは名簿を開いてその二文字が入っている名前を探し、結果、該当するのは「小崎史哉」と言う名前のみ。

「確か、こんな漢字だった」
「それじゃ、間違い無さそうだな。あの触手野郎の名前は『小崎史哉』だ」
「何者なのかなあいつ、元々は普通の人間、と言うか獣人だったと思うけど……この殺し合いの中でああなったのかな」
「別に、正体なんてどうでも良いじゃん。間違い無いのはあれは話も通じない超危険人物だって事。
オマケにめっちゃ頑丈みたいだしさ、ノーチラスがライフルぶち込んでも効かなかったし」
「テトが、大きな氷柱を飛ばしたりもしたけど、それでも倒れなかったし……まだどこかに居るのかしら……」

四人はしばらく触手の怪物について話していたが、やがて第二回目の放送の時間になった為、
全員が会話を切り上げて放送を傾聴する。
今度の放送主は、開催式にて司会を務めた二人の片割れ、まひろであった。

……

……

311 :滲み続ける絵画 ◆ymCx/I3enU :2015/02/22(日) 22:12:59.23 ID:uGBYrucg
放送が終わる。

まず、指定された禁止エリアはD-1、E-4、E-6、F-2。
その内、重要だったのはE-4エリア。
ノーチラスと沙也が会場中央部の市街地に進入する時、東側より入った。
その町の入口はE-4エリアに有り、そこから現在位置のうどん屋はそう離れてはいない。
つまり自分達はE-4エリアに居る事はほぼ間違い無く、早急に退避する必要が有った。
さもなければ首輪が作動し、開催式での野原ひまわりと同じ運命を辿る事になってしまう。

死者の発表では18人の名前が呼ばれた。
サーシャ、ノーチラスのクラスメイトも数人、無論、テトの名前も含まれていたが、サーシャが気に掛けていた、
シルヴィアの名前も呼ばれた。

「また会えなかったな、シルビー……」
「サーシャ……?」
「前の時も一回も会えなかったから、気になってたんだけど……」

以前の殺し合いに続き、今回もまた再会は果たせなかったとサーシャは無念に思う。
また、小鉄の担任教師である春巻龍の名前も呼ばれる。

「春巻も死んじまったのか……」

小鉄は、悲しみこそしなかったが、全く無関心でも無い。
教師の癖をして、教師らしさなど皆無で、生徒達に舐められ知能も低く数々の奇行や騒動、
異常なマイペース振りで煙たがられ、小鉄自身も多分に漏れず彼を邪険にする事が多かったが、
何だかんだで本気で嫌っては居なかったのだろうと思っていた。
本気で嫌っていたなら少しも気にならないだろうから。
もう振り回されなくて清々する、と心の中で吐き捨てたものの、小鉄の気分は晴れなかった。

「放送の前に私達を襲った、野原みさえの名前も呼ばれたねぇ、夫と一緒に」
「そうね……腕に弾が当たったと思うけど、あれで死んだのかな……」

野原夫妻の名前も呼ばれた。これで野原一家は全滅した事になる。
野原みさえは放送前にノーチラスと沙也、そしてサーシャと交戦し、サーシャが撃退したが、あの時はまだ生きていた。
自分の銃撃で負った傷が元で死亡したとも考えられたが。

「私の撃った傷のせいかな」
「あの状況では何も悪くはない、気にするな。お前は俺達の事を助けてくれたんだから」

ノーチラスが気遣い、サーシャは「ありがとう」と返した。
その様子を見て、性行為の時とは大違いだと心の中で沙也はノーチラスを再評価する。

「しかし……だ、小崎史哉の名前も呼ばれるとは」
「あれ、本当に死んだのかなあ」

312 :滲み続ける絵画 ◆ymCx/I3enU :2015/02/22(日) 22:13:45.61 ID:uGBYrucg
ノーチラスと沙也が言及するのは、放送前に議題に上がっていた「小崎史哉」の名前が呼ばれた事。
無論、サーシャと小鉄もそれについては気になった。
あの触手の怪物が死んだのか、本当に? と、四人全員俄かには信じられなかった。
既に話したように、銃弾で穴を空けても氷柱を打ち込んでも動きを止められなかったと言うのに。
しかし放送が嘘偽りとも思えない、ので、触手の怪物こと小崎史哉は本当に死んだのだろう。
活動を止められなかったとは言えテトの氷柱で大きく損傷を与えられていた為、それが元で死んだのか、
それとも誰かが撃破したのか、興味は有ったものの。

「とにかく、色々考えたい事は有るとは思うが……まずはE-4から避難する方が先決、だと思う」
「そうだね」
「うん」
「おう、分かった」

四人共一先ずE-4からの避難を優先する。
それぞれ荷物を纏めると、うどん屋より出発した。


【日中/E-4市街地うどん屋周辺】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、ジュースやお菓子(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。フグオ、金子先生を捜す。
       1:サーシャのねーちゃん達と一緒に行動。E-4エリアから避難する。
       2:春巻……。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。

【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ローバーR9(3/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)、???(武器になる物では無い)
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:ノーチラス、君塚さん、小鉄君と行動。E-4エリアから避難する。
        2:シルビー……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※テトから「以前の殺し合い」の真相を聞きました。まだノーチラスには話していません。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。

313 :滲み続ける絵画 ◆ymCx/I3enU :2015/02/22(日) 22:15:39.95 ID:uGBYrucg
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラス、サーシャさん、小鉄君と行動。E-4エリアから避難する。
        2:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて発見した死体が土井津仁である事を確認しました。

【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(1/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(7)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也、サーシャ、小鉄と行動。E-4エリアから避難する。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
        3:しばらくは市街地を回る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて発見した死体が土井津仁である事を確認しました。

314 : ◆ymCx/I3enU :2015/02/22(日) 22:22:04.18 ID:uGBYrucg
投下終了です

315 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/01(日) 16:10:17.10 ID:tzE+ndgp
投下します

316 :いいひと ◆ymCx/I3enU :2015/03/01(日) 16:11:49.48 ID:tzE+ndgp
81話 いいひと

ぽっかりと心に穴が空いてしまったような気分で、遠野は街中を歩いていた。
先刻、怪物と化したひでに襲われ、同行者である野獣先輩こと田所浩二、稲葉憲悦、柏木寛子の三人を殺されてしまった。
三人の死を悼んだ後、野獣と寛子の持っていた拳銃と予備弾薬を少々気が引けながらも回収し、
遠野は傷心したまま三人の元を離れ現在に至る。
特に、遠野に喪失感をもたらしていたのは、敬愛していた野獣の死である。

「先輩……僕はこれからどうすれば……」

遠野はすっかり希望を見失ってしまっていた。
先程行われた第二放送では、虐待おじさんこと葛城蓮、KMRの名前が死者として呼ばれたが、
先輩を喪った悲しみが強過ぎたのか、余り感じる所は無かった。
薄情な奴だ、と、自分で思いはしたが。

「いっその事、僕も……」

手にしているモーゼルKar98Kを見詰め、遠野は良からぬ事を考える。
最愛の人の後を追うか?
野獣先輩が居ないこの世界に何の未練が有ろうか、ならばいっその事自分も――――そこまで考えて、
遠野は静かに首を横に振り、その考えを止める。

(駄目だ、そんな事しちゃ……先輩が僕を助けてくれた意味が無くなってしまう)

野獣は自分が重傷を負った身であるのにも関わらずひでの攻撃から遠野を庇い、結果、致命傷を負い死んだ。
つまり、野獣は結果的に自分の命と引換に遠野を助けたのだ。
それを思い出し、自死を思い止まった遠野。
もし、自分がここで命を絶てば、野獣は無駄死にになってしまうではないか。

「まだMURさん、拓也さんが生きている。捜さなきゃ……(使命感)」

俯き加減だった顔を上げて前を見据える遠野。
先輩に救われた命を無駄にしてはならない。
先輩達の死を無駄にはすまい。
MURやKBTITこと拓也、その他、殺し合いに乗っていない参加者を捜そうと遠野は決意を新たにする。

だが、道程は平坦では無い。
先程の放送で、生存者は自分を入れて、たったの15人にまで減ってしまった。
最初52人も居たと言うのに、半日足らずで淘汰され、15人となった。
その中で自分以外の殺し合いに乗っていない参加者など見付かるのだろうか。
先述したMUR、KBTITも殺し合いに乗っていないとは限らない。

「いや、希望を持つんだ……持たなきゃいけない(戒め)」

MURとKBTITが殺し合いに乗っていない事、殺し合いに反抗する者が見付かる事を遠野は祈るしか無かった。

兎にも角にも、心機一転した遠野が町を歩いていると、二人の参加者と鉢合わせた。
互いに銃を向け合い、警戒態勢を取る。
二人組は、片方は黒猫の獣人の少年、もう片方は茶髪の美少女であった。
黒猫少年の方は腹に傷を負っているようだ。

「待って下さい、僕は殺し合う気は有りません」

317 :いいひと ◆ymCx/I3enU :2015/03/01(日) 16:12:27.48 ID:tzE+ndgp
戦意の無い事を二人に伝える遠野。
ゆっくりとKar98Kの銃口を下ろして発言に説得力を持たせる。

「本当ですか?」
「本当です!」
「……私達も、乗っていないよ」

二人の方も、戦う意志は無いと言い、銃を下ろした。
殺し合いに乗っていない参加者はまだ居たのだと、遠野は安堵した。
そして互いに名前を名乗る。黒猫少年は「ラト」、少女は「北沢樹里」と名乗った。
遠野もまた自分の名前を告げる。
そして、二人の名前に覚えが有る事を思い出した。

「フラウさんのクラスメイトですね?」
「そうですが……彼女をご存知で?」
「途中まで一緒でした。目の前で殺されてしまいましたが……」
「そうですか……ん……確か、遠野さんでした、よね? と言う事は、MURさんのクラスメイトですね?」

今度はラトの口からMURの名前が出て、遠野が強く反応を示す。

「MURさんを知っているんですか!?」
「ここでは目立ちますから、近くの建物の中で話しましょう」
「分かりました……」

ラトに促され、遠野はラト、樹里と共に近くの建物の中へと入った。

◆◆◆

野原夫妻の遺体の有る場所から離れた後、ラトと樹里は第二放送を市街地で聞いた。
禁止エリアに関しては、指定された四つの内、現在位置(と思われる)D-4エリアのすぐ隣、E-4エリアが一番近く、
取り敢えずはこの一つを注意するべしと二人は考える。
死者の発表で新たに名前を呼ばれたのは18人。
その内、虐待おじさんこと葛城蓮、シルヴィア、ガルルモンに樹里が、銀鏖院水晶とテトにラトが、
野原夫妻には二人共が、反応を示す。

(シルヴィアが言っていたサーシャはまだどこかで生きているのね)

当人より遺言を伝えてくれと頼まれている相手のサーシャは、放送では呼ばれなかった。
なので今の所はまだどこかで生きているであろう。
しっかり伝えてやらなければ、と樹里は思う。

(銀鏖院さん、それにテト……)

ラトは、銀鏖院水晶とはA-6エリアの建設現場にて一度交戦してそれっきりだ。
彼女は結局、死ぬまで殺し合いを止めなかったのだろうか。
また、テトとは是非再会して、以前の殺し合いについて聞きたい事が有ったが、最早それも叶わなくなった。
残念だ、とラトは溜息をついた。

318 :いいひと ◆ymCx/I3enU :2015/03/01(日) 16:13:13.41 ID:tzE+ndgp
そして放送後、再び町を歩いていた二人は、一人の青年と遭遇する。
一時の緊張の後、互いに殺し合いに乗っていない事を確認し合って警戒を解いた。
青年は「遠野」と名乗った。
ラトはその名前に聞き覚えが有った。
確かイベントホールにて出会ったMURのクラスメイトの一人では無かったか――――そう思って遠野に尋ねると、正解であった。
外では目立つ為、近くの建物の中に入り、ラトはそこで遠野に詳しい事を話し始めた。

「MURさんとは、D-5エリアに有るイベントホールで会いました。
そこを拠点にして居ると話していたので恐らく今もイベントホールに居ると思います。
僕と北沢さんのクラスメイトである貝町さんと、鈴木フグオと言う少年と一緒に居ました」
「つまり、MURさんは殺し合いには……」
「はい、乗っていません」
「良かった……」

少なくとも、MURは殺し合いには乗っていない、それが分かり安心する遠野。

(あの事も伝えておいた方が良いんじゃない? ほら……)

ラトに樹里が耳打ちする。
「あの事」と聞いて、ラトはすぐに何の事か察し、勿論だと言うように樹里に目で合図すると、
自分のデイパックからノートと鉛筆を取り出し文章を書き出した。

「?」

急にノートに何か書き出したラトに遠野は目を白黒させる。
やがて、書き終えた物をラトは遠野に見せた。

〈伝えたい事が有ります。ですがこれは声に出して言うとまずい事ですので筆談をお願い出来ますか〉

「??」

やはり何事か遠野は分からない様子だったが、筆談が必要だと言う事は分かったようで、
大人しく自分のデイパックからラトと同じようにノートと鉛筆を取り出し、返事を書いた。

〈分かりました。でも、何で筆談する必要なんか有るんですか?〉
〈先程話した、MURさんと一緒に居る貝町さんは、首輪を解析して外す方法を調べています〉
〈本当ですか!?〉
〈本当です。但し、貝町さんの言によれば、首輪の中に盗聴器が仕掛けられているとの事。
運営が参加者間の会話を盗み聞きしていると見て間違い無いかと〉
〈だから筆談を〉
〈そうです。詳しい事が運営に知られれば最悪遠隔操作で首輪を爆破される危険が有りますから、
これから先も首輪の事に関しては筆談でお願いします〉
〈分かりました〉

遠野が、MURと共に居る貝町ト子が首輪の解除を目指している一連の流れを一通り知った所で筆談は終了となった。

◆◆◆

MURは殺し合いに乗っておらず、また、彼と共に居る一人が首輪を調べている。
野獣達を喪って気分が落ち込んでいた遠野にとって嬉しい朗報の数々であった。
ただ、首輪の事に関しては、期待を持ち過ぎるのは良くないと自制もした。
今は調べている段階で、確実に外せるかどうかはまだ分からないのだから。

319 :いいひと ◆ymCx/I3enU :2015/03/01(日) 16:14:13.48 ID:tzE+ndgp
「ラトさん、北沢さんは、これからどうするんですか?」

遠野が二人に尋ねる。

「イベントホールに向かってMURさん達と合流しようと思ってます。
もう一度会うと約束しましたからね」
「なら、僕も一緒に行かせて下さい! お願いします! 何でもしますから!」

必死に二人に頼み込む遠野。
知人が居る場所へこれから向かうと言うのだからこれを逃す訳には行かない。

「勿論です、一緒に行きましょう」
「宜しくね」
「ありがとうございます!」

ラトと樹里は快諾し、遠野は笑顔を浮かべ礼を述べた。
しかしここで、ラトが腹を押さえて苦しみ出す。

「ラトさん!?」
「ラト! そうだ傷……」
「傷の事を忘れていた……」
「作者がですか?」
「何を言ってるんですか」

突飛な事を言い出す遠野に苦しみながらも突っ込みを入れるラト。
結局、MUR達の元へ向かうのはラトの手当をしてからと言う事になった。


【日中/D-4市街地】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]精神的疲労(大)
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(5)、TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ、
     コルト ポリスポジティブ(5/6)@現実、.32コルトニューポリス弾(12)、オートマグ(3/7)@現実、オートマグの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:ラトさん、北沢さんと行動。MURさんの元へ向かう。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでが触手の怪物になった事を知りました。
    ※フラウのクラスメイトの情報を当人より得ています。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

320 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/01(日) 16:15:29.78 ID:tzE+ndgp
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腹部に盲管銃創(出血有、現時点では命の危険が有るかどうかは不明、現在処置中)
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)、デトニクス スコアマスター(6/7)@現実、スコアマスターの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:北沢さんと行動。遠野さんを連れ、自分の怪我の処置後、イベントホールへ向かう。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、
     モンキーレンチ、コンバットナイフ@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:ラト、遠野さんと行動。
        2:サーシャに会ったらシルヴィアの遺言を伝える。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。
    ※首輪からの盗聴の可能性についてはラトから伝えられています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です
所持品の状況とか銃器の残弾数とかの把握がしんどい、はっきり分かんだね(疲弊)

321 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:16:19.70 ID:LdWbKHw8
ym氏投下乙です!
アイテムの把握ってめんどいですよね…
さて、四字熟語ロワを投下します。
レス規制があるのでキリいいところまでちょびっとづつ投下していく感じで!

322 :44◇遊戯終了(1/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:17:50.76 ID:LdWbKHw8
 
「……なんだか、不思議な感じですね」
「え?」
「さっきまで殺し合ってたのに、また手を繋いで歩いて。すごくへんな気分、です」
「……そうだね」
「紆余さんは、優柔不断さんを殺して……わたしも殺そうとしたのに」
「……」
「それ以上のことが起こりすぎて、恨む暇がないですよ。ある意味、卑怯なくらいです」
「……そうだね。きっと優柔不断さんには、めちゃくちゃ恨まれてると思う。
 僕が一生償っても足りないくらい」
「……」
「殺されても、仕方ないくらいのことをした。
 というか……今ここで凛々ちゃんに殺されても、文句は言えないよ」
「……そんな報復じみたこと、わたしはできません」
「……」
「わたしは、絶対に。そんなことはしませんよ」
「……そうだね。たぶん優柔不断さんも、そんなことは望んでないと、思うけどさ」
「いやそれを紆余さんが言うのは……それこそちょっと変な感じですけどね」
「……そっか……そう、だね」
「いえ……しょうがないんですけど。
 だって……わたしを除けばもう、ここでそれを言える人は紆余さんしかいないから」
「……」
「……みんな、いなくなった、から」
「……」
「……」
「……」
「……色んなことが、ありました」
「……だね」
「色んな人が、色んな思いを抱えて、殺し合わされて……わたしたちが、残った。
 なんでだと、思います?」
「……」
「……」
「凛々ちゃんが残ったのは、」
「傍若無人と、一刀両断さんのおかげ。ですか」
「……うん」
「わたしはまだ……把握しきれてないですが、たしかに、ある意味ではそうなのかもしれません」
「……」
「けど、それだって……その作戦だって、成功しなかったかもしれないですよね」
「……」
「優柔不断さんが傍若無人からわたしを助けられなかったり。
 紆余さんが、一刀両断さんの真意に気づけなかったり。
 心機一転や、洒々落々……今と違う展開になる分岐点なんて、いくらでもあったと思います」
「それは、……可能性の話だよ、凛々ちゃん。実際こうなってしまったわけだし……」
「じゃあ紆余さんは、自分が生き残ったのはなんでだと思ってるんですか?」
「……」
「偶然、だとか。運が良かった、だとか。
 そういう話で済ませてしまったら……いけない気がするんです……わたしは」
「……」
「わたしは自分が生き残ったことに、理由が欲しいんですよ」
「理、由」
「そうです。理由、です」
「……」
「……」
「わたしは、わたしが生き残るのにふさわしい人間だったとは、やっぱりどうしても思えません」
「……」
「いっぱい、いっぱい考えました。紆余さんが、一刀両断さんとケリをつけてる間にも。
 スナック菓子を噛みながらわたし、沢山考えたんです」
「……」
「でも、どうしてわたしが生き残ったのか……答えは、出ませんでした」

323 :44◇遊戯終了(1/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:19:27.15 ID:LdWbKHw8
「……」
「紆余さんは、どうですか?」
「……」
「……紆余さんは……どうして自分が生き残れたと、思いますか?」
「……」
「……」
「……そう、だね……」
「……」
「それは……きっと、確かな答えは出ない問題だと、思う」
「……」
「タクマさんが、最終戦の前に言ってたんだ。
 もしかしたら自分は、殺す側に回っていたかもしれないって」
「……」
「戦った凛々ちゃんなら、分かるよね。
 タクマさんは四字熟語になって、善悪より闘いを優先するようになっていた。
 それが曲がりなりにも善い方向に向かっていたのは、老師……東奔西走さんのおかげだ」
「はい」
「偶然の出会いが、それを生んだ。凛々ちゃんに分岐点があったように、
 タクマさんにも、分岐点はあって……奇跡的な偶然が、重なって今がある」
「……」
「そしてもちろん、僕もそう。みんなに分岐点はあった。全部……いろんなことの、積み重ねだ」
「……だから……偶然で、運。ですか?」
「うん。……。
 それも、あるのは。間違いない」
「……も?」
「少なくとも僕は、僕が生き残ったことに関しては……運の要素が大きいと、そう思う。
 ……でも、……僕は、僕と凛々ちゃんには、運が良かったっていうこと以外にも、共通点がある」
「……?」
「……」
「……」
「凛々ちゃんがまだ、なぜそうなったかまでは知らないこと……だよ」
「……ああ」
「……」
「守られていたこと……ですか」
「……そう。僕たちは、守られていた」
「……」
「僕はリョーコさんに。自分を守らせていた。凛々ちゃんは傍若無人に、その命を守られていた。
 命に換えてでも、生き延びさせるって意思を……僕らは誰かから向けられていた」
「……」
「それが、僕らが生き残る展開になった理由……要因のひとつだってことは、疑いようのないことだ」
「……要因」
「……うん」
「守られてたから、生き延びた……」
「……うん」
「それじゃあ……守られていた理由が。伏せられてる、わたしは……?」
「まだ答えを出せない、ってことになる」
「……」
「……」
「…………そう、ですよね……」
「……」
「……分かりました」
「……」
「今の話は……忘れてください。
 また後で考え直します。それよりも、さっきするって決めた話を……」
「……でも」
「……?」
「でも……ええとね、凛々ちゃん。僕から言葉にできることは、まだ……あるよ」
「……」
「……まだ、言わなきゃいけないことが……ある」

324 :44◇遊戯終了(1/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:21:15.99 ID:LdWbKHw8
「……何ですか?」
「それは……」

 紆余さんは、そこで少し口を閉ざして、どう言えばいいのかを考え始めました。
 言いたいことはあるけれど、言葉にしづらいものだった、ということでしょう。
 ゆったりと歩く速度を遅め、わたしは紆余さんを待ちます。でも、そんなには待ちませんでした。
 紆余さんは、
 どこか悲しそうな、どこか寂しそうな声で、言いました。


「僕たちは」
「……」
「僕たちは。弱かったって、ことだ」
「……!」


「僕たちは、誰かに守られなきゃいけないくらい、……弱かったってことだ。
 強かったから生き残ったんじゃない、弱かったから、生き残ってしまったんだ。
 心も、体も。弱かったから何も出来なくて。真正面からじゃ闘えなくて。いろんな人に助けられて、
 生き延びて……ううん、そうじゃないな。死にぞこなって。……その結果として、今がある」
「……死にぞこなった……」
「うん。だからさ……それを忘れちゃ、いけないんだ。
 弱い僕たちがこうして生き残れるくらいに。真っ直ぐで優しい人たちに、囲まれていたことも。
 それに甘んじた、自分の弱さも。全部、呑み込んで……強くならなきゃいけない」

 強く成らなきゃ、いけない。それも、切磋琢磨のような数値上の強さじゃない。
 気の遠くなるような数十年後、寿命で死んでいくその時に、
 僕たちが殺してきた人たち、僕たちを生き残らせてくれた人たちに、胸を張って、
 「僕たちが生き残るべきだったんだ」って――そう、いつか言えるような。強い心と、強い生き方。
 最高の人生を。最高の未来を。


「生き残るのにふさわしい人間を。僕たちは、今から目指すんだ」


 と。紆余さんは最後にそう締めくくって、言葉を閉じました。
 わたしは……言葉を全て受け止めつつも。
 どこかで、それは答えにはなってない、はぐらかしだと、思ってもいました。
 ただ弱いから、というだけなら、他にもわたしたちと同じくらい未熟な人はいたかもしれないし、
 弱さを利用していくことを覚悟した紆余さんなんかは、わたしから見たら強い人だったとも思います。
 だから今の答えは……テストの答案なんかに書いてしまったら、きっと大きなバツを貰うでしょう。
 ……でも。

「理由は、後からもぎ取れ、ですか……」
「……だめかな」
「いえ。……いいと思いますよ。すっごい大変で――やりがいのある話、です」

 でもそれと同じくらいにわたしは、いいな、とも思って。
 ただの励ましでもあるだろうその言葉に、実際になんだか、励まされてしまいました。
 完璧じゃない答えでも。間違いな答えでも、それが正解ってこともある。
 わたしは分からないことだらけで俯いていた顔を……少しだけ、上に向けました。

「要は、過去も忘れないけれど、未来に目を向けようって……そういうことですよね?」
「そういうこと……うん、そうだ。大変なのはここからだってことだよ、凛々ちゃん。
 僕たちはここで終わりじゃないんだ」
「……ええ。脱出して、それで終わり……元の暮らしに戻れるだなんて、わたしも思ってないです。
 むしろ、これが始まりだったってくらいの長い戦いが、わたしには降り注ぐのだと、思います」
「……」

325 :44◇遊戯終了(1/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:22:44.62 ID:LdWbKHw8
「わたしは……戦い、ますよ」
「僕も……そのつもりだよ。まあ、正直言うと、怖いけどね」
「……怖いのはわたしもです」
「あはは。いやさ、リョーコさんには、頑張るって言ったけど。
 頑張れることも示したつもりだけど。やっぱりどうにも、弱いんだ。
 実際ここから脱出して、その先で……頑張れるのかって考えると、不安で仕方がない」
「……じゃあ……」
「……」
「じゃあ、わたしは、こう言わなきゃいけないですね」
「……?」
「許しませんよ、紆余さん」
「えっ」
「あなたは優柔不断さんを、殺したんですから。
 あなたの辞書にはもう――優柔不断はないはずですよ」
「……あー」

 それは一本取られたな、と、紆余さんは笑って。

「そう言われちゃ、逃げられない。……分かった、もう逃げないし泣かないよ。弱音も吐かない」
「ええ。どんな紆余曲折があろうと。最期は笑って死にましょう」
「うん。約束だ」

 先ほど小さな女の子と紆余さんがそうしていたように。
 わたしと紆余さんもまた、小指と小指を絡ませて、
 何十年もの期限がある誓い(ルール)を、固く固く……取り決めました。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 こうして、こんにちは、が正しいのかもわからない、薄曇りの空の下。
 たくさんの車が並ぶ駐車場の景色の中を、わたしと紆余曲折さんは歩き続けました。
 並ぶ車は赤、青、白、黒、カラーリングに富んでお花畑のようです。
 ハリボテの鉄板だけで作られたそのお花畑には、温度も優しさもありませんが、
 生きることを、戦うことを、望むことを止めないと決めたわたしたちの、
 その周りだけはきっと、暖かかったと思います。


 ◆ 44 ◆

 
 そうして、気持ちを改めて固めたあと、僕はこの寂れた娯楽施設を、
 凛々ちゃんの歩幅に合わせて歩きながら、時間ある限り、喋れるだけのことを喋った。
 一人で歩いたあのスロープ。リョーコさんと過ごしてきた時間。タクマさんと戦ってきた時間。
 優柔不断さんこそ本当のヒーローだとリョーコさんが言っていたことや。
 そのリョーコさんが最後に僕とどんな会話をして、どんな顔で死んでいったのかを、
 全部、伝えた。――最後の場所にたどり着くまでのその回想会話は、長いようで、短かったと思う。


 ◇ ◇ ◇ ◇

326 :44◇遊戯終了(1/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:23:45.20 ID:LdWbKHw8
 



 そして僕ら(わたしたち)はたどり着いて。
 そして、そこにあったものを見る(見ます)。
 それは。
 みんなが最初に見たもの。

 □と、/。

 真っ白な紙と、虹色のインクのペンだった(でした)。



.

327 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/01(日) 21:25:30.42 ID:LdWbKHw8
投下終了です。
この長さのひたすら会話パートを書くのは初めてかも…

次は明後日投下します。

328 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/03(火) 21:44:38.36 ID:IZg3dRvr
続きを投下します。

329 :44◇遊戯終了(2/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/03(火) 21:47:12.35 ID:IZg3dRvr
 ◇ ◇ ◇ ◇


 駐車場の端の茂みの前に、オーケストラの楽譜立てのようなスタンドが立っていて。
 真四角の紙はスタンドの真ん中に貼りつけられるようにして存在していて、ペンはそのすぐ下にあった。
 紆余曲折が進み出て、そのペンを手に取る。

「何を描くんですか?」
「ちょっとした四字熟語……かな」

 後ろからの質問に、彼は端的な答えを返す。

「なるほど、脱出口は自分で開けってことらしいね。
 悪い夢から醒めるためには、夢と現実の壁を壊す呪文を――って言葉だけは、
 傍若無人のガイドにも書いてあったけど。たぶん、これがそれなんだ」
「夢と現実の、壁を、壊す……」

 勇気凛々は茂みの奥を見る。そう言えば、洒々楽々と娯楽施設を回っていたときに試したことがある。
 この娯楽施設と、その外の街の間には、見えない壁があるのだ。
 その時は単に、ここから自分たちを逃がさないために壁が作られているのだと思っていた。
 しかし、ここが先ほど会った小さな女の子の夢の中だと知った今、
 茂みの奥の壁は、「夢と現実の境界線」という新たな意味を持っていた。
 そして、夢と現実の境界線を、あやふやにする言葉。
 ここが四字熟語バトルロワイヤルの会場だと言うことを踏まえれば、自然と答えは限定される。
 幸いにもその四文字は――教科書で習う、こともある。

「……“わたしは夢の中で、文字になって殺し合いをしていた”。ですか」
「そういうこと。”ふと目覚めてみると、文字じゃない自分がいる”」
「“わたしは文字になった夢を見ていたのか、それとも今の自分は、文字が見ている夢なのか”?」
「今回に限っては、“どちらにしても自分は自分”なんて言いたくないけどね」

 小話の間に、たった四文字の言葉は紆余曲折の手によって、さらさらと描かれていった。


 胡蝶之夢。


 夢と現実の境が曖昧になる四字熟語で、物語。


「よし」

 七色に輝くその文字を、紆余曲折は壁に貼りつける。
 すると壁は波打った。
 はたはたと揺らいで、シャボン玉の表面の乱反射みたいな鮮やかな虹色がくらり廻った。
 不思議と落ち着いた心で、勇気凛々はその現象を見ながら、綺麗だな、と思った。
 儚いくらいに綺麗な夢だ。
 紆余曲折が、こちらを向いて言った。

「じゃあ、ここで出来る最後の謎解きをしようか、凛々ちゃん」
「2人生き残る方法……ですね」
「うん。といっても、単純な言葉の綾なんだ。ルールの紙を見れば、すぐ分かることだよ」

 簡単な話なんだ、と紆余曲折は言い直す。
 デイパックから取り出したルール用紙の冒頭に、それは書いてある。

330 :44◇遊戯終了(2/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/03(火) 21:49:43.22 ID:IZg3dRvr
 
 『〇、”終了条件”
  この実験の終了条件は、「娯楽施設の中において、最後の一人の生者となること」です。
  最後の一人になった参加者は実験から解放され、後述の記憶操作で失った記憶を取り戻します。』

「この終了条件には、……他の参加者を全員殺せとは書いてない」
「あ……」

 言われてみたら腑に落ちた。
 最初に勇気凛々も、ルール用紙は隅々まで確認していた。
 紆余曲折が指差した冒頭のルールも目を通したことがある。けれどその時は、
 「最後の一人の生者となること」は「他の参加者を全員殺すこと」とイコールで結ばれていた。
 でも、今は違う。ふたりいて、一人だけ脱出できるのなら、
 残った一人が優勝者になって、それで終わりだ。

「もっと言うなら、禁止エリアのルールも、娯楽施設の外が禁止エリアだとは書かれていない。
 首輪が爆発する条件(ルール)にも、娯楽施設から外に出ることは書かれていない。
 だからたぶん、首輪が付いたまま脱出しても、これは爆発しないんだ」
「ルールの裏を掻いた、文字通りの抜け道ってわけ、ですか……
 いえ、その表現は少し的確じゃないかもですが」
「そうだね。なにせ、傍若無人が知ってるということは……、すでにこの方法は、
 前回で思いつかれた突破法ってことだろうし。穴があることは向こうも承知の上なんだろうね。
 ルール自体に穴があることに気付けるかまでが、実験の範疇なのかもしれない。
 あるいは、楽しみを残すためにあえて穴を作っている。……そっちのほうが本命、かな……」

 先程の放送を思い出しながら紆余曲折は述懐した。
 ただ、浮かぶ疑問はそれだけではない。

「ところで、さっきの女の子の話も踏まえると。わたしたちは夢の中にいる、ってことでいいんですか?
 言われてみれば、わたしの記憶も寝る直前で途切れていましたけど……」
「……うん。僕も言われて、その可能性を見落としてたことに驚いたんだけど、そうらしい。
 ここはあの子の夢の中……で確定だよ。夢の中で寝たり気絶してたり、
 痛みを感じたり殺しあったりできるなんて、なんだか腑に落ちない話だけどね」
「ここが夢の中なら……夢から醒めたら、ベッドで起き上がる? んでしょうか。
 記憶はどうなるんでしょう?
 胡蝶之夢の主人公みたいに、起きた瞬間に自分本来の姿を取り戻す……?」
「おそらくは、そうなると思う」
「この実験で死んでしまった人達は。どうなるんですか? ここが夢なら、身体は生きている?
 それとも現実の身体が夢の中に連れてこられている? いえ、よしんば身体が生きていたとして、意識は……」
「……それは、傍若無人はたぶん、知っていたんだろうと思う。けど、教えてくれなかったよ」
「じゃあ、優勝者としてここに残った人は……?」

 と、そこまで言って、少し矢継ぎ早に質問しすぎたのを自覚したのか、勇気凛々が申し訳なさそうに目線を下げた。
 紆余曲折は気にしないでいいよ、と言ってからその質問に答える。

「それは教えてくれたよ。優勝者は、――主催の所に連れて行かれる、らしい」
「! ……それなら」

 瞬間、ぴり、と空気が張った。
 勇気凛々が紆余曲折を見上げて、二人は目を合わせる。

「そういう話なら、わたしが残ります」
「いや、――残るのは僕だ」
「――《りんりんソード》!」

 動いた。

331 :44◇遊戯終了(2/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/03(火) 21:51:57.45 ID:IZg3dRvr
 
 駆け出しながら《りんりんソード》を取り出した勇気凛々は、それを盾として押し込むような動きを取った。
 質量をぶつけることで紆余曲折を脱出口へと押し込もうという狙いだ。
 対する紆余曲折は、どうするか。
 おそらく避けるだろうというのが勇気凛々の読みだった。
 向こうからすれば、《死に急がば回れ》にてこの突進を迂回させ、その間に背後へ回り込み背中を推すだけでいい。
 と思っているはずだ。
 だから、勇気凛々はあえて直前で止まり、その後はただ歩くことにする。
 攻撃ではないから迂回されない。そしてゼロ距離攻撃ならば紆余曲折は迂回させることができない。
 十分に近寄ってから、ゼロ距離で《りんりんソードを柄から顕現させ》、顕現の勢いで紆余曲折の身体を押す。
 そうすれば紆余曲折を後ろに押し出して――。

 しかし、勇気凛々の推測は外れた。
 紆余曲折は勇気凛々の突進に対し、逃げずにただ手を伸ばした。
 ある意味で先の会話での約束の有言実行。
 彼は勇気凛々に向かって、ただ、真っ直ぐに、手を伸ばした。

「……!?」

 次の瞬間、《勇気凛々は、服を掴まれていた》。

「ごめんね。でも。“こっちの戦い”は、僕が貰うよ、凛々ちゃん」
「きゃっ」

 そのくらいは格好つけさせて欲しいんだ、と続けたあと、
 抵抗を試みた勇気凛々のすべての動作を《迂回》で後回しにしながら、
 紆余曲折は小さくあまりにも軽い少女の身体を、力任せに放り投げた。
 あまりにも簡単に、勇気凛々は脱出口へと投げ込まれる。

「う、紆余、さ……」
「大丈夫。傍若無人の書くことには、死ぬことはたぷんないらしいから」
「……わた、しは……こんな……」
「そんな幕切れは望んでない、よね。でも、それも大丈夫だよ。
 僕の推測が正しければだけど――そっちはそっちで、戦うことになるような気がするから」
「……」
「だから……“自分を責めるな、勇気凛々”」
「――?」
「だよ」

 紆余曲折は消えゆく勇気凛々に向かって、これまでとは違う声のトーンで言った。
 誰の言葉なんだ――と聞き返す言葉は、すでに現実へと消えていった口からは発されなかった。
 ゆらゆらと揺れる透明な壁が再び静かに固定されたときにはもう、勇気凛々の姿は無く。

 娯楽施設には一人の生者だけが残った。


                          『――――――ジジジジジ』
「……ふぅ」


 放送が始まる前の、静電気みたいなノイズが彼の耳を突く。
 気にせず、ぐるぐる目の少年はデイパックから、一枚の紙を取り出す。
 今回の実験の、後半の展開を左右したその紙には、
 これから少年がどんな存在に出会うかが……書かれていない。

 傍若無人は、主催については何も記さなかった。
 実験の本意やら、その主催者(奇々怪々は進行役だ)については、ここでも伏せられている。
 おそらくは、記すことが禁じられていたのだろう。
 書かれていたのは盤外のルールについてや、勇気凛々、そして奇々怪々のことについてのみだ。

332 :44◇遊戯終了(2/2) ◆YOtBuxuP4U :2015/03/03(火) 21:54:03.15 ID:IZg3dRvr
 
 主催については、ただ一言――優勝者は主催に引き合わされる、とだけ。
 それだけが書かれている。
 紆余曲折はひとつだけ嘘をついた。
 主催に会っても死なないだろうなんて文言は、実は書かれていないのである。
 さらに言えば、こうも書いてあった。

 “勇気凛々を優勝させ、紆余曲折は脱出しろ”
 “そうすれば紆余曲折だけは、すべての因果から逃れられるはずだ”
 “脱出者には逃げる権利がある”
 “少なくとも――己のようには、ならない”

「さて。どうなるかな……」

 紆余曲折は、立ち向かうことを、選んだのだ。 





『ぴーんぽーんぱーんぽーん、っと。
 さあて、ルール通り娯楽施設の生者が一人になったので、実験を終了しますよ♪
 およそ13時間にわたる実験プログラムの遂行、まことにお疲れさまでした。
 さて。優勝者、紆余曲折さんには。エクストラプログラムとして。
 本実験の主催者である、“天飼千世”様との、――おはなしの時間を、設けます♪』



 こうして、数々の「紆余曲折」を経て。
 四字熟語バトルロワイアルは、終了した。



【四字熟語ロワ Test Finish】

 
【勇気凛々、脱出――残り人数が一名となったことにより】

【紆余曲折、優勝】

333 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/03(火) 21:56:16.21 ID:IZg3dRvr
投下終了です。
ついに実験が終わった…
次は明日、「実験結果報告書」を避難所のほうに投下予定です。

334 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:04:40.91 ID:aR4xSp54
投下乙です
ああ、終わったのか……一応、二人共生きているのか、お疲れ様です!

自分も投下します

335 :しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜 ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:08:55.00 ID:aR4xSp54
82話 しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜

図書館にて獣人の少女と色黒の男をやり過ごした後、金子翼は会場中央の市街地へ到達し、そこで第二放送を聞く。
大沢木小鉄の名前は、今度も無事呼ばれる事は無く、翼は安堵した。
代わりに担任教師の春巻龍が呼ばれたものの、それについては「ああそう」程度にしか思わなかった。

「良かった、小鉄っちゃん流石、まだ生きてるなんて」

殺し合いに放り込まれても半日以上生き延びているのは流石大沢木小鉄だと翼は改めて感心した。
自分自身も同じように生き延びていたのだが。

「禁止エリアは、一番近いのはE-4……今居るのがD-4かE-4か判断が付けられないなぁ」

新しく指定された四つの禁止エリアの内、最も近いと思われるのは、会場中央市街地の東のほぼ全域を飲み込むE-4エリア。
何しろ、現在位置が、安全なD-4エリアか禁止エリア予定のE-4エリアのどちらなのか断定出来る材料が無い。

「西の方に行けば……」

西、D-4方面に向かえば、一先ずは安全の筈、そう考えた翼はコンパスで方角を確かめて西を目指し歩き始める。

◆◆◆

「ウッソだろお前、信じらんねぇ……蓮の奴が死んじまったなんてよぉ」

市街地にて第二放送を聞いた、原小宮巴、KBTITこと拓也、油谷眞人。
その内、KBTITが大きくショックを受けた様子で言葉を吐き出す。
彼のクラスメイトであり仲の良かった虐待おじさんこと葛城蓮の名前が、先の放送で死者として呼ばれたのだ。

「仲良かったんだっけ? タクヤさんその蓮って人と」
「ああ、缶ビール飲んだり、捕獲したての二十歳の少年を一から調教したり……くっ……」
「……」

涙混じりに蓮との思い出を語るKBTITに「色々突っ込みたいが突っ込んだら負けだろうな」といった視線を送る眞人。
確かこの男は中学生だと言っていなかっただろうか、二十歳は少年では無いだろ、と、やはり心の中で突っ込まずには居られない。

「悲しむ気持ちも分かるけど、今は西の方に行かないと……この辺もE-4かもしれないし」
「ああ、分かってる……」

珍しく巴が優しい口調でKBTITを励ました上で、行動を促す。
現在位置が禁止エリアに指定されたE-4である可能性も否定出来なかった為、急ぐ必要が有った為。

「首輪が爆発して死んじまったら、あの世で蓮に顔向け出来ねぇな……行こうぜ」
「立ち直るの早ぇなおっさん、あっ」
「また言いやがったな、もう許せるぞオイ!」
「許してくれんのかよ(困惑)」
「はいはい、行くよー」

小競り合いしかけたKBTITと眞人を適当に巴があしらう。
そして三人はE-4エリアから遠ざかる為に歩き出した。

◆◆◆

336 :しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜 ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:09:41.13 ID:aR4xSp54
西へ向かうとは言ったものの、事はそう単純では無い。
市街地の道はいざ目的を持って歩いてみると突き当たりや曲がり角等が多く意外と複雑な構造になっており、
翼は思い通りに西へ進む事が出来ず、少し焦り始めていた。

(今僕はどこに居るんだ? まだE-4なのかそれとも……分からない、もっと西へ……)

もっと西へ行かなければ。
翼は我武者羅に歩き続けた。焦りから碌に辺りを警戒する事もせずに。
それが災いしたのかどうかは分からないが、彼は三人の参加者と遭遇してしまう。

「あら〜君は」
「お? お前……あん時の眼鏡小僧じゃねーかオオン?」
「何だ、知り合いか?」
「!」

しかも翼にとって悪い事に、三人の内二人は、レジャー施設で初遭遇し、図書館でやり過ごした、あの二人。

「逃げんじゃねぇよ!」

色黒の男が逃げる素振りを見せた翼に短機関銃を向けて脅し付ける。
翼はどうする事も出来ず、言う通りにするしか無かった。

「また会えて嬉しいなーボク」
「う……」
「色々聞きたい事は有るんだけど、今はちょっと時間が無いんだよねぇ」

獣人少女の話の内容から察するにこの三人も禁止エリアから避難しようとしているようだ。
なら今すぐ何かされる事は無いかと翼は予測し、そしてそれは当たった。

「だからお姉さん達と一緒に来てくれるかな?」

笑顔でそう言いながらも、散弾銃の銃口をちらつかせ、言う事聞かなければ殺すと暗示する獣人少女。
今すぐ何かはされないにしても自分にとって全く良い方向では無い、翼はそう思った。
今まで上手くやってきたがいよいよ年貢の納め時らしい、そう諦観する翼。

「い、言う事聞きます。聞きますから、撃たないで下さい」
「よーし、言う事聞くんだな? それじゃあ……」

色黒男が何かを言おうとしたが、何故か途中で言葉を切った。
目の前の三人の表情が、どんどん強ばった物になっていく。
自分に対して、では無く、自分の背後を見てそうなっているように見える――――翼は後ろを振り向いた。

「……ア゛ア゛ア゛……」

路地裏からゆっくりと通りに出てくる、全身から触手らしき物が生えた小男の姿が有った。
未知の異形を前に、翼は口をパクパクさせ、悲鳴は疎か言葉すら出てこない。
一体こいつは? どうして全身から触手のような物が?
この時にさっさと逃げてしまえば良かったのかもしれないがこの時の翼はその判断を下す事が出来なかった。
そしてそれが彼の命運を決めてしまう。

「ヴガアアアアア!!!」

触手男が咆哮と共に、右手の触手の束、丸太の如く太い束を凄まじい勢いで翼目掛けて振り下ろす。

337 :しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜 ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:10:23.81 ID:aR4xSp54
ぶちっ。

縦方向にぺしゃんこに潰され、周囲に赤い液体を飛び散らせて、翼はただの肉の塊になった。
赤くなって、アレになって、ゴミになった。
大切な友人の為にその手を汚す事を決意し戦ってきた老け顔の、やや歪んでいるながらも友達思いの優しい少年、
金子翼は、思い人の大沢木小鉄への別れの言葉を述べる暇すら与えられず、その生涯を終えた。

小鉄と再会しないまま死ねたのは、彼にとって幸か不幸か、もう誰にも分からない。

【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  14人】


◆◆◆


再び遭遇した老け顔少年とのやり取りの途中、少年の背後の裏路地入口から現れた異形の存在。
全身から触手が蠢く小男――――それに、老け顔少年は文字通り「叩き潰され」、只の肉塊にされてしまった。
突然現れた未知の存在に、KBTITと眞人のみならずさしもの巴も絶句する。
三人が正気に戻ったのは叩き潰された少年の血のシャワーを浴びてからだった。

「な、何だよ、コイツ……」
「眼鏡小僧……潰されちまったぜオイ……ん? ああ? ひ、ひで!?」
「え? ひで? タクヤさんのクラスメイトの?」

触手男の顔に、KBTITは見覚えが有った。
間違い無く、クラスメイトのひでだ。親友の蓮が良く虐めていたのを覚えている。だがこんな全身から触手など生えていなかった筈だが。

「風変わりな格好だねえ」
「こんな触手なんか生えてなかったっての!」
「おい、そんな事より、どうすんだこいつ」
「決まってるでしょそんなの」
「ひで、何か知らねぇけど、ここで落ちろ!」

巴とKBTITがひでに向けて銃撃を始める。
問答無用で人を殺害している時点で友好的な要素は皆無である事は明白、しかも明確な殺意を抱いている。
なぜひでがこのような状態になっているのかは分からないが、ここでひでを倒さなければ自分達が殺される事は三人共分かっていた。

「であイダいイイ゛!!」

銃弾の雨を浴び、悲鳴を上げて仰け反るひで。
しかし動きを止める気配は無い。
血をアスファルトに撒き散らしながら、ひでは三人目掛け触手を振る。

ビュンッ!!

異様に重い風切り音を立てて振るわれる触手の束。
三人は間一髪でそれを回避する。当たればほぼ確実に骨が持っていかれる、そんな勢いである。

「調子に、乗んな!」
「油谷!」

338 :しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜 ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:11:38.64 ID:aR4xSp54
眞人が古びたショートソードを構えてひでに向かって行った。
KBTITが制止の声を上げるも、彼は無視した。
こいつを倒さなければ進む事は出来ないだろう、それに自分はどんな相手だろうと退かないと決めたのだ――――そんな思いが、
眞人を未知の触手怪物に立ち向かわせた。

「らあああああっ!」

威勢の良い掛け声と共に、眞人がひで目掛けてショートソードを渾身の力で振った。

ドカッ!!

「ア゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!」

古びているとは言え、相応の力で振られたショートソードの刃は、ひでの右腕を見事に斬り飛ばした。
触手の束ごと、地面に落ちるひでの右腕。
断面から、全身に空いた穴から、夥しい量の血液がアスファルトに流れ落ちる。
しかし、まだひでは倒れない。身体中の血液を殆ど失っている筈なのに、肉体が限界まで損傷していると言うのに。

「まだ死なねぇのかよ、いい加減くたばれ!!」

止めを刺すべく眞人がショートソードを大きく振りかぶった。

次の瞬間、ひでの口から鋭い触手が伸び、眞人の胸を刺し貫く。

彼が、虐待おじさんこと葛城蓮を葬り去ったのと同じ方法で、眞人は致命傷を負った。

「……そんなの、アリか、よ」

倒せると思ったのに。いけると思ったのに。結局、また死ぬのか。
何の因果か二度目の生を与えられたと言うのに、結局自分は――――。

口の端から血の筋を垂らし、自嘲気味の笑みを浮かべ、眞人の意識はゆっくりと遠のいて行った。

【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター  死亡】
【残り  13人】

そして、眞人の殺害がひでの最後の抵抗のようだった。
ひでもまた、眞人と同じくアスファルトの上に倒れ、それっきり立ち上がる事は無かった。

【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  12人】

「油谷……くそっ」
「あらあら油谷君……でもこの化物も死んだみたいだねぇ」

生き残った巴とKBTIT。
KBTITは眞人の死を多少なりとも悼んでいる様子だが巴は特にそんな素振りも見せず、散弾銃に弾を補充する。
一応巴も、眞人の死は残念には思っていたが、あくまで労働力、いざと言う時の盾が無くなってしまった、と言った意味合いでだ。
元々何か妙な真似をすれば即座に殺そうと考えていたので、その程度の認識である。

「この化物、死んだかな、本当に」
「死んだと思うけどな……」

巴とKBTITはひでの死体へとゆっくり近付く。
近付きながらKBTITは短機関銃のマガジンを交換した。

339 :しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜 ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:12:18.08 ID:aR4xSp54
「ヴォエ!」
「大丈夫?」
「何とか……」

辺りにはかなりきつい血の臭いが漂い、獣の血を引く巴は平気だったものの普通の人間のKBTITは、
時折込み上げる吐き気を必死に我慢しながら進む事を余儀無くされる。
どうにかひでの死体の元に辿り着き、二人はその身体を軽く蹴ってみたり銃口で啄いてみたりした。
反応は何も無い。

「落ちたな(死亡確認)」
「大丈夫みたいだねぇ」

完全にひでが息絶えていると見て安心する二人。
何故ひでがこのような怪物と化したのかは分からなかったが、放置しておけば間違い無く脅威となっていた事だろう。

「油谷が命と引換に倒してくれて良かったぜ」
「感謝しなきゃねぇ、ありがとうね油谷君」

物言わぬ屍と化した眞人に二人は礼を述べた。
眞人を脅し付けて無理矢理仲間にしたのは無駄では無かったと巴は思う。

◆◆◆

眞人の死体の方へ向き、ひでの死体に背を向けていた二人は気付かない。
ひでの死体から、大きな百足のような血塗れの虫らしき生き物が這い出てくるのに。
「ひで」そのものは確かに死んだ。だが、ひでに巣喰い、彼を怪物へと変貌させた「寄生虫」は、しぶとくも生きていた。

――――この宿主ももう駄目だ、早く次の宿主に移らなければ。

――――こいつで良いか。

「寄生虫」は、次の「宿主」となる者を見定める。

KBTITの太腿の裏へと、跳び付いた。

◆◆◆

「うわ!? 何だオイ!」
「どうし、うわ、デカイ虫」

突然の太腿裏の感触に驚いたKBTIT、そして彼の太腿裏に血塗れの大きな百足のような虫が張り付いているのを確認して顔を顰める巴。
当然、その虫をKBTITはさっさと引き剥がそうとした、が。

「すわわっ!?」

虫は突然凄まじい早さでKBTITの身体を上り、そして。

「エ゛ッ!?」
「あっ」

彼の口をこじ開けたかと思うと、そのまま体内へと消えて行ってしまった。

「ヴォエエエエ!! ヴォエエ!!」
「あらら、大丈夫?」
「ハァ、ハァ……マジかよぉ、あの虫俺の胃袋に入っちまったぜぇ……」

百足(少なくとも二人はそう判断した)が体内に侵入したと言う事実にかなり困惑し、嫌悪感を示すKBTIT。
しかしいくら吐き出そうとしても全く出てくる気配が無かった。
まさか腹をかっ捌いて取り出す訳にも行かず、結局KBTITは自分の胃液が殺虫してくれる事を祈るしか出来なかった。
百足は有毒でありそれが消化吸収されるような事になればただでは済まない筈だがその事に関しては二人共考えは及ばない。

340 :しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜 ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:14:43.98 ID:aR4xSp54
「頼むから大人しく腹ん中で死んでくれよ……クソッ、何だって人間の身体ん中に」
「虫も人の温もりが恋しかったんじゃない?」
「虫にモテたって嬉しくねぇよ」
「ま、それはそれとして、この、ひで君だっけ? デイパック持ってるし、漁らせて貰おうかな」
「畜生、他人事だと思いやがって……」

所詮他人事だと思って適当に返事をする巴に対しKBTITは恨み言を言う。
それも気にせず巴はひでの持っていたデイパックの中身を漁る。
すると、P90短機関銃と予備弾倉、56式突撃歩槍と予備弾倉、サーベルと、宝の山の如くの内容であった。

「わー大量。ほらほらタクヤさんこれあげるから機嫌直して」
「お前のじゃないだろ、まあ貰うけどな……」

短機関銃は巴、突撃銃とサーベルはKBTITが持った。
眞人の持っていた古びたショートソードも、彼の衣服で血を拭った上で巴が回収する。

「すっかり予定が狂っちゃった……そろそろ行こうか」
「ああ、そうだな」

当初の予定を思い出し、巴とKBTITは再び西方向へ歩き出した。

◆◆◆

「寄生虫」はKBTITの体内に痛みも無く根付き、ゆっくりと侵蝕を開始する。
だが、ひでの時や、その前の宿主、小崎史哉の時のようにすぐには完了しなかった。

――支配に時間が掛かる? どう言う事だ。
――この男は耐性でも持っているのか?

軍事目的で極秘に開発された寄生虫の侵蝕を遅らせるある種の耐性を、KBTITは持っていたらしい。
尤もそのような事は、本人は気付く筈も無い。
それにあくまで「遅らせている」だけだ。

――まあ良い、時間が掛かるだけで、この男もいずれは木偶人形だ。

KBTITの肉体と精神は、ゆっくりと確実に寄生虫によって蝕まれていく。
当人も、同行者の巴も、今はまだ何も気付かない。

気付いた時には、もう手後れ。

341 : ◆ymCx/I3enU :2015/03/04(水) 23:15:37.03 ID:aR4xSp54
【日中/D-4市街地】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤と血で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、FN P90(0/50)@現実、FN P90の弾倉(4)、古びたショートソード
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。西方向へ向かう。と言うよりE-4から離れられればそれで良い。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。

【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤と血で汚れている、「寄生虫」に寄生されている(現段階ではまだ影響無し)
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(3)、56式自動歩槍(25/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター、
     56式自動歩槍の弾倉(4)、 サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴と行動。
        2:残りのクラスメイト、殺し合いに乗っていない参加者を探す。
        3:くっそ、蓮……。
        4:さっきの虫本当に大丈夫か?
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※「寄生虫」に寄生されています。現段階では異常は有りません。しかしその内に重大な事が起こります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。次スレがそろそろ必要か

342 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/05(木) 01:15:57.66 ID:Wob/LOal
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part36 [転載禁止]©2ch.net
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1425485657/

立てておきました!2chなんか専ブラ?だっけかのルールが変わるらしいけど
ここに問題は発生したりするのかな

343 :44.5 ◆nrTo9z2uOk7l :2015/03/05(木) 01:19:56.52 ID:Wob/LOal
 

「よし、あとは……バックアップ、っと」


---- 


実験結果報告書
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13720/1332255203/695-700

サーバーにアップロードしますか?

 →はい
  いいえ


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 研究用のバックアップサーバーに仮報告書を入れ終わると、白衣の女は一つ伸びをした。
 実験の最終盤、生き残りの被験者たちが休憩と最終戦を行っている時間を利用して
 報告書を先にまとめてしまう試みはギリギリ成功といったところだ。

「……ふう。なんとか間に合いましたかね」
「あれ、雷鳥さん。半分寝ながら報告書も書いたんですか?」

 背伸びと欠伸を終えたところで、
 日も蛍光灯の光も指さぬ暗中の研究室扉がガチャリと開かれ、研究院生の大崎が入ってくる。
 大崎は雷鳥を慕う気持ちは強いが、ずけずけと踏み込んで来る人柄なので、
 基本的に研究者肌な雷鳥は少々苦手にしている。

「ええ」
「さすがです、すごいです。さすが私と以心伝心な雷鳥さんです」
「君と以心伝心にはこれまでもこれからもなりません」
「今、実験中なんでしょう? なのに夢と現実を同時に見れるだなんて……。
 私だったら興奮して夢に没頭しちゃいますのに! 本当にすごいですよ〜」
「半分はしっかり没頭しています。それにかなり神経を使いますから、あまり刺激しないでくださいね。
 予想以上に……疲れがきました……。まだメインイベントが残っているから気力は持っているものの、
 実験全行程を1人で制御するのは、少々骨が折れますね。次はもう少し、監視人員を増やして……」
「あ、それですけど」
「?」
「教授が次は大規模実験にするって言ってたじゃないですか」
「……? ええ、そうですね」
「あれ、めちゃくちゃ大規模らしいですよ」

 机に突っ伏した雷鳥の元にたたたたと近寄りつつ、大崎が弾んだ声で話す。
 めちゃくちゃ大規模、とは研究者らしくないアバウトな言い方で、少し気に障った。 

「五十人程度だと思っていましたが……」
「街一つを貸し切るらしいです! もう充分データは取れたから、実践に移るって……。
 私、そこにいる障害因子への宣戦布告の役を任されてしまいました! すごく楽しみですよ〜」
「……本当(マジ)ですか?」

 大崎の発言に、雷鳥も思わず言葉を崩して驚く。
 基本的に今までの実験は十六人〜二十人で行ってきた。
 次が大規模であるという話は聞いていたが、せいぜい倍か、行って百人だろうという予測だった。
 それが……街一つ? いったい、何人になるというのか?

「――うん。本当だよ。おそらく二千人規模になる」

344 :44.5 ◆nrTo9z2uOk7l :2015/03/05(木) 01:20:26.71 ID:Wob/LOal
 
 疑問への回答はすぐに出た。天飼教授が、部屋の電気を付けながら答えてくれたからだ。
 《どこにでも現れることができる》教授が突然そこにいることには、大崎も雷鳥ももう驚かない。
 ただ、雷鳥はそれでも疑問を重ねずにはいられなかった。

「に、せんにん……ですか? また急に何で」
「前からしようと思ってはいたこと、なんだ。条件がそろわなかったから見送っていたけどね。
 今回の因子の中に、丁度いい紐付けができる因子が居たんだよ。それを使う」
「街一つとなると――隠し通せなくなりませんか?」
「山の中のニュータウンだ。交通の便は電車一線といくつかの舗装山道で確保されているけど、
 密閉はしやすい環境にある。実験後は、有毒ガス発生による集団死で偽装するよ」
「……それで完全に塞げるとは」
「ならない方が、現実的だろうね。《千世の観測》でも良い未来になる確率は2割程度だ」

 博打さ、と教授は笑った。

「もちろん手は打つけど。次が分水嶺だと思ってくれていい。
 成功すれば、一気に理想の未来は近づく。失敗すれば全て終わり。
 それくらいの気持ちでやるつもりだよ――雷鳥もそのほうがやりやすいだろう?」
「何が。教授には何が《見えている》んですか。まさか、教授の未来に……」
「さあ……なんだと思う?」

 早くも大崎は蚊帳の外で、スマホをいじって遊んでいる。
 問いかけるだけ問いかけて、天飼教授もそこでスマホを取り出して時間を確認した。
 雷鳥は何も答えを返せていない。その代わり脳内は非常に早く回転していた。
 そういえば。
 実験開始の直前、流言飛語が仕事をお上に奪われたと漏らしていたのを思い出す。
 最後に彼女が確認しに行く予定だった参加者は。
 そして今回の、最終的な結果。・……なぜ? 《見えていた》のか?
 いや違う。《天飼千世》にそこまでの力はない。確定していないものは、可能性だけ。
 バトルロワイアルは、確定しないものに入る。ならば……。

「時間だ。“送る”よ、雷鳥」
「……ええ」

 思考は打ち切られた。
 どのみち思考しても答えは出ないだろうと、雷鳥はそこで考えるのを止めた。 
 なにぶん、今回の実験までで雷鳥の望みは半分以上もう叶ってしまったことが、
 彼女の追及欲を減退させる一因となっていた。
 そう、メインイベントがまだ終わっていない。
 最後の最後、種明かしの“おはなし”。
 主催と優勝者の”おはなし”の裏で行われる、彼女の最上の望み。

「あの子のベッドのある部屋まで、お願いします」

 それこそが、今回の実験を彼女が進行した理由なのだから。

「――いいや、その前に、先に行く場所があるだろう」
「え?」

 しかし、意気揚々と告げた場所は教授に否定された。
 ワンテンポ遅れて、後ろで大崎が「あ、レアカードゲット〜」と声を震わせた。
 不思議がる雷鳥に向かって、教授はその特徴のない顔の、目の下部分を指差す。
 
「洗面台だよ。お色直し」

 ずいぶん見れない顔になっているからね。と、そう告げて。
 肩を叩いて、“文字”は“ヒト”をねぎらった。

「大詰めだろう、綺麗な顔で行こうじゃないか。……実験監督、お疲れ様」

345 : ◆YOtBuxuP4U :2015/03/05(木) 01:21:27.79 ID:Wob/LOal
あ、タイトルに#を使ったからトリップが変わってしまった
けど投下終了です。意外とまだいけた
エピローグは書け次第……!

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