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あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part327 [転載禁止]©2ch.net

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/16(火) 12:49:00.28 ID:w78UIyRQ
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part326
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1425841742/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.shitaraba.net/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'    ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/16(火) 12:49:27.66 ID:w78UIyRQ
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし    内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ     ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l     ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/16(火) 12:50:10.38 ID:w78UIyRQ
.   ,ィ =个=、     ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉    ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|       ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ     ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
                 ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
               SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
               レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/16(火) 12:51:39.36 ID:w78UIyRQ
エラーが出るのでテンプレを三分割しています。

こっちがPart327でお願いします。

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/17(水) 05:29:28.05 ID:D2Vzf+c7
どうすれば、まとめwikiの目次に書いたのを載せれますか?それだけが分からないんです…

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/17(水) 20:41:33.58 ID:OHilytSD
まとめwikiになんか見たことない作品が載ってるが……
ちゃんとスレか避難所に投下したのか?

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/17(水) 22:13:56.08 ID:OHpfcggt
完結作でお勧め教えてチョモランマ

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/17(水) 22:34:54.01 ID:3EN6wCtC
前もカービィの奴がまとめwikiに直接投下された事あったな

9 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:10:12.07 ID:xAbSIw75
こんばんは、暗の使い魔です。
都合が良ければ、15分頃から投下させてください。

10 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:15:06.50 ID:xAbSIw75
ルイズ達がフーケを捕まえた晩の翌朝である。学院内はある二つの要因でちょっとした騒ぎになっていた。
まず一つは、シエスタが学院に戻ってきた事である。給仕する平民達は、誰もが彼女の復帰を驚き喜んだ。
中でも最も喜んだのはマルトーである。彼はシエスタから官兵衛の活躍を聞くと、自分の事のように喜んだ、そして。
「カンベエ!カンベエ!お前がシエスタを取り戻してくれたんだって!オマケにどデカイゴーレムをぶっ飛ばしたとか!
もう我慢ならねぇ!接吻させろい!」
「接吻は勘弁してくれ!小生にそっちの趣味は無い!」
と、こんな感じである。またもや官兵衛は厨房中の英雄として祭り上げられてしまった。
そして二つ目はルイズ達の活躍である。
昨晩、学院に彼女達が引っ張ってきたのは、なんと土くれのフーケ本人と破壊の杖ではないか。
もう二度と捕まらないか、王宮衛士隊が何とかすると思っていた教師陣は、その出来事に目をむいて驚いた。
しかし、オスマンとコルベールだけは何やら納得したように、笑いながら頷いていた。
 
暗の使い魔 第十二話 『動き出す物語』

朝早く、学院長室にはオスマンとコルベールと、ルイズら4人の姿があった。
ルイズ達は、フーケを捕まえた一部始終をオスマンに報告していた。
「ふむ、まさかミス・ロングビルがフーケじゃったとはな。美人だったものでなんの疑いもせずに秘書に採用してしまった」
「おいおい」
官兵衛が呆れた声を上げた。
隣に控えたコルベールがオスマンに問う。
「一体どこで採用されたんですか?」
「街の居酒屋じゃ。彼女は給仕をしておっての。ついついこの手がお尻を撫でてしまってな。
それでも怒らないので秘書にならないかと、言ってしまった」
「まさか、それだけですか?」
コルベールがそう呟くと、オスマンは目を見開いてカァ――――ッと怒鳴った。
年寄りとは思えない迫力だが、この状況ではなんとも間が抜けていた。
「だって魔法が使えるというんじゃぞ?その上わしを男前だのなんだの媚を売り売り。惚れてる?とか思うじゃろ?」
「死んだほうが良いのでは?」
コルベールはボソリと呟く。オスマンは重々しく咳をして誤魔化した。
しかし不意に何かを思い出したのか、コルベールは手をポンと打ちあからさまにオスマンに同調し始めた。
「(この先生もダマされて何か喋ったな?)」
美人はただそれだけでいけない魔法使いですな!と冷や汗を垂らしながら笑うコルベール。
そんな彼を官兵衛はじっとみていた。オスマンとコルベールの誤魔化しに全員がジトッと白い目を向けていた。
「さてと、君たちはよくぞフーケを捕らえ、破壊の杖を取り戻してくれた。
そのテンカイとやらは気になるが、君達の活躍は十分に目覚ましいものじゃ!」
オスマンがニッコリと笑うと、官兵衛を除く三人が恭しく礼をした。
天海は現在手配の真っ只中であるそうだ。フーケは衛士に引き渡され、破壊の杖も元通りということである。
うんうんとオスマンが頷く。
その後オスマンは、ルイズとキュルケに『シュヴァリエ』の爵位申請を。
タバサには『精霊勲章』の授与申請を王宮にしておいた、と伝えた。三人の顔が輝く。
しかしルイズはその後浮かない顔をすると。
「オールド・オスマン。その、カンベエには何も無いんですか?」
官兵衛をちらりと見ながらそう言った。
「残念ながら彼は貴族ではない」
「別に構わんよ」
官兵衛が拘った様子も無くそう言い放つ。
ルイズはなにやら納得が行かない様子だったが、官兵衛のさっぱりとした様子を見て思いなおしたようであった。
そして、オスマンはぽんぽんと手を打つと一向に向き直り。
「さてと、今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。『破壊の杖』も元に戻ったことじゃし、心置きなく執り行えるの」
そう言った。キュルケが嬉しそうに表情を輝かせた。
「今夜の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」
三人は礼をしてドアへ向かう。しかし官兵衛は立ち止まり、オスマンに向き合ったままだ。
ルイズが心配そうに見るが、官兵衛が大丈夫だと小さく頷くのを見ると、静かに退室した。

11 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:16:06.06 ID:xAbSIw75
オスマンが官兵衛に向き合う。
「何か、私に聞きたいことがおありのようじゃな」
「ああ、差し支えなければ。色々とお願いしたい事もある」
「言ってごらんなさい。出来るだけ力になろう。君に爵位は授けられんが、せめてものお礼じゃ」
そういうと、オスマンはコルベールに退室を促した。
コルベールは、何やらワクワクと官兵衛の話に期待の色を輝かしていたようだが、そう言われると渋々退室した。
それを確認すると、官兵衛は口を開いた。
「まずは小生から一つ詫びがある。勝手に学院の名を使わせてもらったことだ。」
官兵衛はまずモット伯との交渉のことについて詳しく話した。
勝手に自分を使者と名乗らせてもらった事である。
オスマンはただただそれを静かに聞いていたが、やがて重々しく咳をすると、口を開いた。
「うむ。ミス・ヴァリエールから話は聞いておるよ。あの娘を助けてくれたんじゃろう?」
オスマンは穏やかに言う。
「確かに学院の名を騙ったのはいただけん。相手は王宮の勅使じゃ。もしもの事があれば君にも君の主人にも類が及ぶ。
そうじゃろう?」
オスマンは諭すように官兵衛に言った。まあな、と官兵衛は頭を掻く。
しかしオスマンはじゃが、と付け加えるとニッコリ微笑み。
「あの娘を救い出してくれてありがとう、カンベエ殿」
そう言った。意外な言葉に官兵衛は少々驚いた。
まさか貴族にとってなんでもない平民の娘を救い出して、礼を言われるとは思いもよらなかったのだ。
「実はモット伯には私も困っておった。若い娘を好き勝手に引き抜いては傍に仕えさせる。
何を言おうにも相手は王宮勅使じゃ。中々手が出しづらい。」
オスマンが辛そうに言う。
「それをお主は救い出してくれた。平民とはいえ、学院の者をむざむざ差し出してしまった私らの過ちを、
見事お主が体を張って正してくれたのじゃ。これに礼をいわずしてなんとする」
そういうとオスマンは立ち上がり、官兵衛の手を握った。
「重ね重ね礼を言うぞい。ありがとうカンベエ殿」
驚いていた官兵衛だが、すぐにオスマンに微笑み返した。
「礼といえばもう一つあったな。破壊の杖を取り戻してくれた件についてじゃ」
「ああ、小生もアレについて聞きたい。オスマン殿、アレは一体何処で手に入れたんだ?なぜ学院の宝物庫に?」
「ふむ、あれは今から30年程前のことじゃ」
そういうと、オスマンは目を閉じ、懐かしむようにそれを語りだした。
「30年前、森を散策していた私はワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのがあの杖の持ち主じゃった。
年若い青年じゃった。彼は見たことも無い数々の武器であっというまにワイバーンを倒してしまったんじゃ。
宙を舞う数多の武器が猛烈に火を噴いた。私は呆気にとられたよ。その彼が持っていた武器の一つが……」
「破壊の杖か……」
官兵衛の言葉にオスマンは静かに頷いた。
「その後、私は彼を命の恩人として迎え入れた。すぐに仲良くなっての。その際彼から破壊の杖を譲り受けたんじゃ。」
「成程な、でソイツは今どこに?」
「それがの、彼はある日旅にでると言い出し、それっきりなんじゃ。元の居場所に帰ると言っておった。」
オスマンが残念そうに呟いた。そうか、と官兵衛が頷く。そして官兵衛はもっとも重要な事をオスマンに尋ねた。
「で、そいつの名前は?」
「名前か。珍しい名前じゃった。確か……」
オスマンが記憶を探るように、ゆっくりと言葉を口にした。
「マゴイチ、サイカ・マゴイチじゃ」
官兵衛は、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。彼は静かに言葉を紡ぐ。
「間違い、ないんだな?」
オスマンが真剣な顔つきで、うむと頷いた。官兵衛は冷静に心を落ち着けると、オスマンに言った。
「そいつは、小生の元いた世界からやってきたんだ。雑賀孫市、そいつは無事小生の世界に戻ってる。
現雑賀衆の、恐らく先代をつとめていた頭領だ」
「サイカシュウ。先代頭領じゃと。そして今君は元いた世界といったかね?」
「ああ、信じてはもらえないかも知れないが、小生はこことは全く違う世界から来たんだ」
「何と」
オスマンは目を細めると、真剣な眼差しで官兵衛を見つめた。

12 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:17:16.71 ID:xAbSIw75
じっくりと見据え、それを終えると成程な、と呟いた。
「彼も同じじゃった。その出で立ち、立ち振る舞い。そしてその眼。
ここハルケギニアの理とは違う、どこか違う世界から来た者のものじゃったのか」
オスマンは納得したように頷いた。そして、次に官兵衛の手に浮かんだルーンを指差した。
「これはの。ガンダールヴのルーン。かつて始祖ブリミルが使役した伝説の使い魔のルーンじゃ」
「伝説だと?」
官兵衛が目を丸くする。
「そうじゃ。伝説では、ガンダールヴはありとあらゆる武器を使いこなしたそうじゃ。心当たりはあるかね?」
そういえば、と官兵衛がある出来事を反芻する。破壊の杖、狙弾カワセミを持った時だ。
その使い方や名称、さらには予備弾の有無まで容易く理解できた。あの時カワセミに煙幕弾を細工出来たのもその為だ。
官兵衛はその事をオスマンに話した。するとオスマンはゆっくりと首を振った。
「やはりそうか……」
「どうして小生がそんな大それたものに。やはり小生がそれだけ大物で――」
「それは私にもわからん、何かの気まぐれか、或いはなにか特別な理由があるのかもしれん。お主がその別の世界から
呼び出されたようにな。」
官兵衛の言葉をスルーして言葉を続けるオスマン。
「とにかく、私たちはお主の味方じゃ。ガンダールヴよ」
オスマンは何か言いたげな官兵衛を抱きしめた。
「お主がどういう理屈でこちらに呼び出されたか。私なりに調べるつもりじゃ。でも何もわからなくても恨まんでくれよ?
何、こっちの世界も住めば都じゃ。嫁さんだって探してやるぞい」
「いや、嫁さんもいいが。どっちかと言うと小生こいつをなんとかして欲しいんだが」
そういうと官兵衛は己の手枷をスッとオスマンに差し出した。それを見てオスマンは怪訝な顔をした。
「なんじゃ?好きで付けとるんじゃあないのか?」
「そんな訳あるかっ。だれが好きでこんな鉄球に名前なんか付け……いいや違う。好きで手枷なんか付けてるんだっ」
官兵衛がオスマンに食って掛かる。まあまあとオスマンが宥めると。
オスマンはふむ、と少々考える素振りをした後、こう言った。
「んじゃあそんな物騒なもん外してしまえ」
「出来たらとっくにやってるわ!全く、鍵を自由に外せる魔法でもあればいいんだがな!」
「あるぞい」
「そうだろう!そんな都合のいい魔法……って、何だって?」
官兵衛の時間と思考が一瞬停止した。
「だから。あるぞい。鍵を外す魔法」
オスマンが耳元でそっと呟いた。
官兵衛の思考が、ゆっくりゆっくりと動いた。ある?何が?マホウ。カギハズスマホウ。アル。
その瞬間、官兵衛は叫んだ。
「なっ何だってェ――――――――――ッ!?」
学院中に響きそうな大声で、官兵衛は驚愕の叫び声をあげた。
「落ち着くんじゃカンベエ殿」
「マホウ!カギ!ハヤク!」
なぜか片言になりながら、官兵衛はズイズイと枷をオスマンに差し出した。
興奮で汗が噴出する。官兵衛はただただ必死だった。そんな官兵衛の勢いに引きながら、オスマンは杖を取り出す。
「ほれ。じゃあ今かけるぞい」
「おう!」
オスマンが短くルーンを唱える。『アンロック』。鍵を外す魔法を唱え、杖をふるった。
瞬間、ガチャリと音が鳴り、官兵衛の手枷がガランガランと床に転がり、はしなかった。
そのまま変わらずであった。アレ?とオスマンが首をひょいと傾げる。
「えーっと……ちょっと待ってて」
オスマンがそそくさと部屋の扉に近づく。と、静かにある人物の名を呼んだ。
「ゴホン!コッパゲ君、いるんじゃろ?おーいコッパゲ君」
「だーれがコッパゲですか!このセクハラ学院長!」
バンと扉が開かれる。とそこには退室したはずのコルベールが青筋を浮かべながら立っていた。
「ほれ、やっぱりいた」
コルベールがあっと言いながら顔を伏せる。どうやら会話を盗み聞きしていたようだ。
「オ、オールド・オスマン?これは……」
「そんな細かい事は良いから!ほれ、早くこっちに来ておくれ!」
盗み聞きを弁明しようとするコルベールを、オスマンは無理やり連れてきて官兵衛の前に立たせた。

13 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:18:33.54 ID:xAbSIw75
「ホレ!やってくれ」
「?何をですか?」
疑問符を浮かべながらコルベールは首を傾げる。
「『アンロック』じゃよ!失敗しちゃったから!ハヤク!」
「ははあ成程。学院長も御年ですかな。」
ハハハと笑いながら、コルベールは意識を官兵衛の枷に集中させルーンを唱える。真剣な眼差しと手つきで杖を振るった。
次の瞬間!何も起こらなかった。
「お、おい?」
官兵衛がフルフル震えながら、二人を交互に見やった。
コルベールが冷や汗をかきながら、あれおっかしーなーと頭を掻いた。
「ミ、ミセスシュヴルーズあたりに頼みましょう!彼女は確か『アンロック』得意だったような、そうでないような……」
「う、うむ。っていうかこの枷。うちの宝物庫より頑強なんじゃあ……」
「シッ!」
しかし官兵衛はその言葉を聞き逃さなかった。
「ほ、宝物庫より頑丈……?」
希望が絶望へと変わる。そして、それ程強固な封印を施した人物に官兵衛は心当たりがあった。忘れもしないあの面構え。
自分をいつも面白がり、全力で嫌がらせしてくるあの人物。
「ぎょ、刑部めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
官兵衛は歯軋りした。あの空の向こうで誰かがヒヒヒと笑った気がした。畜生と官兵衛は枷をガチャガチャ動かす。
しかしそんな事で外れるわけが無い。官兵衛は手を下に下げ、ゆっくり天井を仰ぐと。
「何ァ故じゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
肺の空気が続く限り、お決まりの台詞を叫んだ。
 
所変わり、ここは日ノ本・大阪城。
分厚い雲が天を覆い、風が吹き荒れる。
そんな気候の中、天守に続く門扉の前にある二人の男が居た。
「なんだ刑部。妙に機嫌がいいな」
前髪を鋭角に尖らせた、銀髪の青年が、傍に控える男に尋ねた。
「いやなに。今どこぞで誰かが不幸を味わっておるのが感じられてな。ヒヒヒッ!」
浮遊する輿に座りながら、刑部こと大谷吉継は心底楽しそうに笑った。
大谷吉継。豊臣軍内で、軍師・竹中半兵衛に次ぐほどの知恵者である男だ。
彼は、その実力と信頼から、豊臣のあらゆる実務を一手に引き受ける。
そんな常に多忙な彼が、珍しくのんびり空を見上げて笑っている。
その様子を、青年が怪訝そうな顔で見ていた。
「……まあいい、それよりも行くぞ」
「どこぞへ遠出か?三成」
三成と呼ばれた前髪の青年。彼は豊臣秀吉の左腕をつとめる武将。秀吉の忠実なる懐刀、石田三成であった。
「少し気になる事案が発生した」
「ほう、左様か。してそれは?」
三成の言葉に、刑部はとぼけたような口調で問いかける。
それを気にした素振りも見せず、三成は続ける。
「貴様も耳にはしている筈だ。あの男に、異変が起きた」
「ほう?アレにか」
刑部は口調を変えず、心底愉快そうに言った。
三成は、苦虫を噛み潰したような表情で、続けた。
「あれは、あの男は、非常に不快だ。必要以上に私に関わり、常にこの魂《こころ》を苛む。だが!」
鞘におさめた刀を翻し、三成は言い放つ。
「決して、不要ではない……!」
やや昂ぶりを抑えながらの声色だった。
それを聞き、刑部は珍しく口を閉ざす。
「勘違いするな!あくまで秀吉様の天下泰平の為に必要なだけだ!私にとっては煩わしい悪鬼に他ならん!」
「あいわかった、わかったァ」
三成をまあまあと宥める刑部。
彼は輿の上から、その黒い眼で静かに三成を見つめた。

14 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:19:44.66 ID:xAbSIw75
「ならば行こう。あやつの治める地、四国へな」
刑部の言葉に三成が、弾丸の如き勢いで飛び出した。
門扉をくぐって彼方へ消える三成。
やれやれと肩を落とし、刑部は輿をふわりと高く浮かび上がらせる。
そして三成の後を追うように、ジェット機もかくやという勢いで、空を疾走した。
「ふむ、暗に続きあやつもか……。どうにもコウニモ、不幸の星流れよの。ヒヒヒヒヒッ」
刑部は、疾空しながら口元を緩めた。引きつるような笑い声が、包帯の奥から漏れ出る。
大谷がやがて、空の彼方に米粒のように消え去ると、後には誰も残らなかった。
そこには天高く聳える権力と力の象徴、大阪の巨城がどっしりと佇んでいた。
 
「まあ、そう落ち込むなって相棒!」
「これが落ち込まずにいられるか……。畜生、なんで小生はいつもこうなんだ」
官兵衛は、アルヴィーズの食堂の上にある大ホール、そこのバルコニーの枠にもたれながらワインをかっくらっていた。
あの後、学院長の命で多くのメイジが官兵衛の手枷を外そうと、手を尽くした。
度重なるアンロックの試行、しかし誰も外す事は出来ない。
次に、錬金を駆使して鍵を作り、こじ開けようとした。
しかしこれも無駄。不思議な呪いによって鍵がボロボロに崩れ落ち、鍵穴に入りすらしなかった。
官兵衛の手枷は、対になった鍵でしか解除出来ないよう、大谷吉継の渾身の呪いが掛かっていたのだ。
官兵衛は気落ちしたまま、フリッグの舞踏会に出席したのだった。
話し相手にデルフリンガーを肩に担ぎながら、官兵衛はぼんやりとホール内を眺める。
そこでは、煌びやかな衣装に身を包んだ貴族達が、優雅にダンスを楽しんでいる。
全く人の気も知れずに、と官兵衛はごちた。
そんな官兵衛だが、この時の彼は身なりが整っていた。
見ると、服装の汚れが取り除かれ、着込んだ甲冑も綺麗に磨かれている。
髪の毛も最低限短く整えられ、長かった前髪がこころなしか短くなっている。後ろで束ねていた髪の毛もなくなっていた。
官兵衛は平民が使う風呂――といってもサウナに近いものだったが、そこを利用して身体の汚れを綺麗さっぱり洗い流したのだ。
枷のせいもあり、あまり満足に服や体を洗うことは出来なかったが、それでも幾分かマシにはなった。
枷さえなければ、少なくとも奴隷に間違われる事はないだろう。
髪の毛を整えてくれたのはシエスタだった。
彼女は帰って来たばかりで忙しいにも関わらず、官兵衛の為に散髪を請け負ってくれた。
曰く、お世話になったことで少しでも何らかのお手伝いをしたい、との事であり、彼はそれを快く受け入れた。
結果として官兵衛は見違えるほどの格好になった。
そんな官兵衛の傍には、先程まで派手なドレスを着たキュルケがいた。
整った官兵衛の姿を見るなり、これでもかというほどのアプローチをかけてきたキュルケ。
しかしパーティが始まると、すぐにホールの中へと引っ込んだ。今では多数の男子生徒に囲まれ、談笑を楽しんでいる。
タバサは黒いドレス姿で、机の上の料理と格闘している真っ最中であった。
幼いながらもその整った顔立ちは、普段ないドレス姿と相まって周囲の目を引いた。
しかし、ひたすら食べ物に集中するその姿勢が、それらをなんとも台無しにしていた。
そんな風に皆が思い思いのパーティを楽しんでいた、その時であった。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜り〜!」
突如、扉に控えた衛士がルイズの到着を告げる。ゆっくりと重厚な扉が開き、ルイズが姿を現す。
純白のドレスに身を包み、桃色の髪をバレッタで纏め上げた姿であった。
肘までの長手袋が良く似合う、いかにも名家の令嬢といった面立ちであった。
楽師が、主役が揃うのを見届けると、一斉に演奏を始める。ホールでは皆々が優雅に踊りを楽しみ始めた。
そんな雰囲気の中、ルイズの美貌に見せられた男子生徒達が彼女に群がった。
次々とルイズにダンスの申し入れをする生徒らだったが、ルイズはそれらの全てを断る。
そして、バルコニーにて寂しく食事をとる官兵衛を見つけると、ゆっくりと歩み寄ってきた。
落ち込み気味の官兵衛の前に立ち、腰に手をあてながらルイズは首をかしげる。
「楽しんでるみたいね」
「とんでもない、ヤケ酒だ」
官兵衛がつまらなそうに返す。
ルイズの姿を見て、デルフリンガーがかちゃかちゃと。「馬子にも衣装じゃねえか」とのたまった。
ルイズが剣をキッと睨むと、デルフは独りでに鞘に収まり、口を閉ざした。

15 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:20:58.61 ID:xAbSIw75
「なるほど、身なりを整えれば結構ましになるじゃないか」
「何よそれっ」
「冗談だ冗談。そう怒るなご主人様」
官兵衛が笑って言う。ルイズは頬を膨らませた。
腕を組んだそんなルイズの容姿は、怒っていても気品に溢れている。
さしずめ女神様だな、と官兵衛は考えたところで彼は頭を振った。
「(いやいや、女神様にしちゃ小さすぎるな。うん)」
勿論年齢の話である。口が裂けても胸について言及してはいけない。
官兵衛はなにやら気恥ずかしくなって、持っていたワインをぐいっと仰いだ。
「で、お前さんこんな所で油売ってていいのか?」
「何よ?」
「さっき随分とお誘い受けてたじゃあないか。踊ってきたらどうだ?」
官兵衛が顎でホールの中をしゃくりながら言った。しかしルイズは答えずに、官兵衛にすっと手を差し出した、そして。
「踊ってあげてもよくてよ?」
目を逸らしながら、気恥ずかしそうにルイズが言った。そんな態度のルイズに一瞬官兵衛は固まった。
「おいおい。どうした急に」
しかしルイズは答えず、目を逸らしたままだった。
「小生のこの枷で、あそこに入れるもんなのか?」
明らかに足に引っかかりそうな鉄球をみて言う。
「大丈夫よ、私がフォローするわ」
「いやしかしだな……」
そんな煮え切らない態度を見かねて、ルイズが口調を強くした。
「もう!ここまで言わせないでよ」
やや怒ったように言うルイズ。彼女は仕方無しに一歩下がり、官兵衛に向き合うと。
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」
ドレスの裾を恭しく両手で持ち上げ、膝を曲げて一礼した。
「相棒」
いつの間にか鞘から顔を出したデルフリンガーが官兵衛に促す。
呆気に取られていた官兵衛だったが、照れ隠しにやれやれと肩をすくめると。
「喜んで、だ」
静かにルイズの手をとってダンスの輪へと向かった。
 
「異国の踊りは初めてだ」
「私に合わせて」
官兵衛は両腕でルイズの手を握り、ルイズはもう片手を官兵衛の肩に。
足元に転がる鉄球を上手く足で動かしながら、官兵衛とルイズは器用にステップを踏んだ。
ぎこちないが初めて踊る異国のダンスは、官兵衛にとって中々悪い物ではなかった。
ルイズもそんな官兵衛の心情を悟ったのか、なにやら居心地良さげに、澄ました顔でステップを踏む。
周囲とは全く違った様相の踊りだったが、不思議と様になっていた。
「カンベエ、信じてあげるわ」
「何をだ?」
「あんたが別の世界から来たって事」
軽やかにステップを踏みながらルイズが言った。
やっぱり信じてなかったのか、と官兵衛は内心思った。
しかしそんなルイズに、そうか、と官兵衛も優雅にステップを踏みながら短く返した。
「ねぇ、やっぱり元の世界に帰りたい?」
「そうだな。何としてでも」
「そう、そうよね。その……テンカが懸かってるんだものね」
ルイズがやや俯きながら言う。官兵衛はそんなルイズの言葉に目を丸くしながら続けた。
「まあ天下も大事だが、何より残してきた連中も多い。大事な部下も、友人もな。それに……」
官兵衛はそこまで言うと、一瞬顔を伏せた。

16 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/18(木) 00:28:42.87 ID:xAbSIw75
その言葉にハッと官兵衛を見やるルイズ。見ると官兵衛はどことなく寂しそうに遠くを見やっていた。
若干心ここにあらずといった様子である。そんな官兵衛の様子を見ていると、ルイズは官兵衛が異様に遠くに感じられて。
「カンベエ」
知らず知らずの内に声をかけていた。
「あん?」
官兵衛がじっとルイズを見つめる。いつもより短く切り詰められた前髪。その隙間から、知的な眼差しと、精悍な造りの顔が見えた。
ルイズは慌てて目を逸らした。自分の心臓が高鳴るのを感じる。
普段とは違う使い魔の表情にルイズはどう答えたらいいかわからず、気がつけば。
「あ、ありがとう」
知らず知らずの内にそんな言葉を口にしていた。
「……? 何がだ?」
「あ、えっとその……ゴ、ゴーレム退治の時。助けてくれて、ありがとう」
頬をうっすらと染めながら、ルイズはしどろもどろになりながら言った。
「なんだそんな事か。気にするな」
官兵衛は薄っすらと笑いかけると。
「まあどうしても小生に礼をしたいっていうのなら、食事の量をもっと多くしてもらいたいがなっ」
恥ずかしがっていたルイズが、それを聞いてフッと笑う。官兵衛もそれにつられてニッと笑った。
いつしかテンポの速くなった曲の中、二人は楽しげに踊りを楽しんでいた。
バルコニーに立てかけられたデルフリンガーが、騒がしく声を上げた。
「おでれーた!主人のダンスをここまでつとめる使い魔なんてそういねーや!」
しかも枷つきで、と感心しながら。デルフは、今度のガンダールヴはとんでもねえと思いながら、同じ言葉を繰り返す。
この日、官兵衛は鉄球につまずく事も、鎖に絡まる事も無く楽しい時間を過ごし続けた。
彼の持つ不運も、この日だけは彼の楽しいひと時を許してくれた。そう思える時間であった。
夜空に浮かぶ月がいつまでも美しく、ホールで踊る二人を照らしていた。

第一章 完


以上で投下完了になります。これにて一巻完結です。
それと、お知らせなのですが。
実は結構早くから、pixivとハーメルンさんの方でもこのssを投稿させていただいておりました。
もっと早くお知らせするべきでしたが、中々言う機会がありませんでした。申し訳ない。
拙いssですが、今後ともよろしくお願い致します。それでは、失礼します。

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/18(木) 00:37:40.79 ID:vqxC35rb
支援……遅かったか

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/19(金) 10:38:52.04 ID:GQsXQSKQ
ん?

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/19(金) 22:47:41.39 ID:SqzdLwHE
>>5
このスレに投下してない作品を直接まとめサイトに乗せるのは禁止されている行為ですよ?
まとめサイトへの登録の前に、ちゃんと投下しましたか?

20 :ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2015/06/20(土) 09:39:03.31 ID:dDY7osGp
こんにちは、避難所のほうに新作を投下してきましたのでよろしくお願いします

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/20(土) 17:54:03.31 ID:jwiczWM7
乙です
次はギーシュとかの水精霊騎士団の面々サイドか?

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/21(日) 19:19:00.74 ID:4xPn2LOa


23 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/21(日) 22:12:14.58 ID:2X4UBRd5
毒きのこは嘘つき。
『ウルトラマンゼロの使い魔』はまだ続きます。新しい話、投下します。開始は22:15からで。

そうそう、酉つけ忘れましたが、>>1〜4は私です。

24 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/21(日) 22:15:37.17 ID:2X4UBRd5
ウルトラマンゼロの使い魔
幕間その五「その時ウルトラセブンは」
宇宙斬鉄怪獣ディノゾール
宇宙斬鉄怪獣ディノゾールリバース 登場

 M78ワールド。それは皆ももうよく知っている、我らがウルトラマンゼロの故郷。M78星雲の存在する、
数多のウルトラ戦士の宇宙である。
 その宇宙の一画で現在、赤い流れ星が青い流れ星を追いかけ、広大な宇宙を横断していた。
「キャァ――――――――!」
 青い方の正体は、青みの掛かった外骨格に全身を包んだ大怪獣。日本の尻尾をたなびかせ、
四つもある眼をギラギラと光らせる。下顎は左右に二つに分かれ、金属音に似た甲高い雄叫びを上げる。
 この怪獣の名はディノゾール。驚くほどに長い歯舌を振り回し、あらゆるものを両断してしまう
恐ろしい攻撃力を持った宇宙怪獣だ。
 そしてそれを追跡する赤い流れ星の正体は、銀と赤のボディの中央に菱形の青いカラータイマーを
輝かせる、我らのウルトラ戦士だ!
「セアァッ!」
 ウルトラ戦士は十字に組んだ腕から黄金色の光線を発射! その光線はディノゾールの首に見事命中!
 首から上が丸ごと爆散したディノゾールは高度を落としていき、宇宙に漂う小惑星の表面上へと
墜落していった。ウルトラ戦士もその後を追い続け、小惑星上に飛び込んでいく。
「タァッ!」
 ダァンッ! と土煙を巻き上げて着陸した、若々しくも雄々しい雰囲気を纏った勇姿。
彼の名は、ウルトラマンメビウス!
 一方、首を失い上下逆さまに地面に刺さったディノゾールだが、命が失われたはずの肉体が
突如として不気味にうごめき出した。二本の尾が引っ込んだかと思えば、二つの新しい頭部を
持った首へと変形。手足もメキメキと形を変え、腕は脚部に、脚は背面を覆う装甲と化す。
首のあった部分からは新たな尾が伸び、上下反転した姿勢のまま別の怪獣へと生まれ変わった!
「キャァ――――――――! カァァァァァァッ!」
 この姿は通称ディノゾールリバース。肉体の極性を反転させて復活するという、数いる怪獣の中でも
他に類を見ない極めて特異な性質を持っているのだ。最大の武器の歯舌が二本となることで戦闘力は
増大するが、宇宙怪獣に最も大事な飛行能力は失われる。そのため、群れを作るディノゾールに
強大な外敵が現れた時、一匹が犠牲となって群れ全体を逃がす生存本能の発展した末に生じた
特殊な再生能力と囁かれている。
「セアッ!」
 復活したディノゾールリバースに、メビウスは勇敢に立ち向かっていく。しかし接近しようと
駆け出したその時に、ディノゾールリバースが先手を取って双頭から歯舌、断層スクープテイザーを伸ばした。
 シュンシュンッ、と線が宙を舞い踊った、かと思われた次の瞬間、メビウスの身体を恐ろしく速い斬撃が襲う!
「ウワァッ!」
 ダメージをもらうメビウスの後方で、小惑星の岩山の先端が綺麗に切断され、地面へと滑り落ちていった。
 ディノゾールの歯舌は最長百万メートルにも及ぶ長さに対して、直径はわずか一オングストロームしかない。
そのため、ウルトラ戦士の視力を以てしても見切るのは困難。しかもそれが二本となっては、メビウスの苦戦は
むしろ当然といったところだ。
「キャァ――――――――! カァァァァァァッ!」
 ディノゾールリバースは凶刃の舌の二刀流を存分に振るい、メビウスをもてあそぶように苦しませる。
メビウスは相手の猛撃に、なかなか反撃に出ることが出来ない。
 しかしメビウスも立派な勇士の一人。このくらいでは参らなかった!
「シャッ!」
 左腕に装着したメビウスブレスから引き出したエネルギーを両手に宿らせることで、手刀を文字通りの
光刃と化す。ライトニングスラッシャーだ!
「ハッ! タッ! セアァッ!」

25 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/21(日) 22:18:48.59 ID:2X4UBRd5
 そして猛然と前へ駆け出すメビウス。断層スクープテイザーが飛んでくるが、メビウスは恐るべき
凶器を見事に見切り、手刀でぶつ切りにしていく!
 自身の一番の武器を切り落としながら接近してくるメビウスにディノゾールリバースは
恐れおののいた。しかし行動を取ろうとした時にはメビウスは肉薄し切り、すれ違いざまに
相手の胴体を水平に切り裂く!
「キャァ――――――――! カァァァァァァッ!」
 大ダメージをもらったディノゾールリバースの動きが大幅に鈍る。一方で振り返ったメビウスは、
再びメビウスブレスに沿えた右手を走らせてエネルギーを引き出す。両手を頭上へ持っていくと、
輝く光の帯が無限を示すメビウスの輪を作り上げる!
「セアァーッ!」
 そして発射する、必殺のメビュームシュート! その一撃は、ディノゾールリバースを
跡形もなく吹き飛ばした!
 逆転勝利を飾ったメビウス。そんな彼から少し離れた二か所の地点に、ウルトラ戦士と
別のディノゾールが一対ずつ着陸する。
「キャァ――――――――!」
 二体の別個体のディノゾールに相対しているのは、紅蓮の鋭き眼差しの戦士と荒々しくも
女性的な柔和さを面影に両立した不思議な戦士。
 偉大なる先輩戦士、ウルトラセブン! そしてウルトラマンエース!
「キャァ――――――――!」
 ディノゾール二体は彼らに歯舌の斬撃を繰り出す。だがさすがは歴戦の勇士たち。ほぼ不可視の
攻撃を見切り、難なく回避した。
「ジュワッ!」
 セブンは頭部のアイスラッガーを投擲。ゼロスラッガーの元祖とも言える宇宙ブーメランは素早く
断層スクープテイザーを根本から切断し、ディノゾールから武器を奪った。
「キャァ――――――――!?」
「ジュワーッ!」
 ひるむディノゾールにセブンは右腕を脇に、左腕を胸の前に置いた姿勢を取り、額のビームランプから
緑色のレーザー光線を照射! これぞ必殺のエメリウム光線だ!
「キャァ――――――――!!」
 エメリウム光線の一撃はディノゾールを一瞬で爆裂させた!
「トアァーッ!」
 エースの方もディノゾールへ必殺の光線技を放とうとしていた。両手にエネルギーを溜めると
それを額のランプまで持っていき、更に増幅して集中。最後に両手から赤色光線として発射。
パンチレーザーの強化版、パンチレーザースペシャルだ!
 その攻撃により、最後のディノゾールも粉々に粉砕された。三体の怪獣を倒すと、メビウスが
二人の戦士の元まで歩み寄って話し掛ける。
『セブン兄さん、エース兄さん、この宙域の怪獣は全て倒したみたいです』
『うむ、これでひと安心だな。しかし、他の場所ではまだまだ怪獣が暴れていることだろう。
ひと息ついている暇はない』
 セブンがうなずきながらもそう語った。
 ゼロがハルケギニアに赴いた頃と前後して、M78スペース全体で怪獣が凶暴化し、各地で多大な
被害を出す事態が相次いでいた。そのため宇宙警備隊は宇宙のあらゆる場所にウルトラ戦士を
向かわせ、事態の鎮静化を図っているのだ。しかし未だにその目途は立っていない。
 メビウス、セブン、エースの三戦士も、群れから離れて人の住む惑星を襲撃しようとしていた
ディノゾールたちを発見し、被害を未然に防ぐためにやっつけたのであった。
『80によると、宇宙全体のマイナスエネルギーが増大傾向にあります。原因を突き止めねば、
どれだけ怪獣と戦ったところで事態の解決にはならないでしょう』
 とエースが意見する。
『しかし、その原因が一向に掴めないのがもどかしいところだ。私たちはその時まで、怪獣の被害を
食い止めねばならない』
 セブンがそう言い、新しい現場に向かおうとしたその時、不意に星空の彼方を見上げた。

26 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/21(日) 22:21:23.67 ID:2X4UBRd5
『む……!』
『セブン兄さん、どうしましたか?』
 メビウスが怪訝そうに尋ねると、セブンは二人に向けて告げた。
『……次元の彼方から、ゼロの気配が途絶えた』
『えぇッ!?』
 この時、ハルケギニアではちょうどゼロが、己の命を引き替えにしてヤプールの膨大な闇を
祓ったところであった。セブンは親子の絆といえる超感覚により、その事態をキャッチしたのだった。
 エースとメビウスは泡を食う。
『大変なことではないですか! まさかヤプールに……!』
『セブン兄さん! やっぱり、あなただけでもゼロの元へ向かうべきですよ!』
 メビウスはそう意見したが、それを却下する声が降ってきた。
『いや、その必要はない』
『! ゾフィー兄さん!』
 見上げると、ウルトラマンによく似た容姿の戦士が彼らの元に降りてくるところだった。
胸と両肩には、点の列が飾られている。
 彼の名前はゾフィー。偉大なウルトラ兄弟の長男にして、宇宙警備隊の隊長を務める、
ウルトラの星でも特に重要なポストの戦士なのだ。
 そのゾフィーが語る。
『意識を集中すればわかるだろう。一時は異次元から強烈に感じられた、ヤプールの闇の波動が
なくなっていることに。ゼロはヤプールに勝ったに違いない』
『しかし、ゼロは相討ちになったみたいです! 彼の生存も危うい状況ですよ! ゼロの命を助けなければ……!』
 メビウスが反論するが、肝心のセブンがそれをさえぎった。
『いや、ゼロなら大丈夫のはずだ』
『セブン兄さん……!?』
『ゼロも今や立派なウルトラ戦士だ。ウルトラ戦士は、そう簡単に死んだりはしない。ここにいる全員が、
そのことを分かっているはずだ』
 どのウルトラ戦士も、楽に戦いを終わらせた経験などほとんどない。誰もが厳しい戦いをくぐり抜け、
死の淵に瀕することもあった。しかし、彼らは悪にどれほど追い詰められようとも、最後には復活して
逆転を果たした。セブンもメビウスもエースも、そんな経験をしている。
『その理由は、守るべき人たちの声が私たちの命を支えてくれたから。ゼロだって、今は気配が
感じられなくとも、助けを求める声があれば必ず再び立ち上がるだろう。私はそれを信じている』
 父親であるセブンがそう言う以上は、エースとメビウスに異論はなかった。
『セブン兄さんが信じるのでしたら、俺も信じますよ。ゼロの復活を!』
『はい! ゼロが帰ってくる日を僕も待ちます!』
 四人のウルトラマンは、宇宙の果ての更に先、ハルケギニアの宇宙のどこかにいるはずのゼロに思いを馳せた。
『ゼロ……お前の光は不滅だということを、この父に示してくれ!』
 セブンは、今はどこにいるか分からないゼロに向けて、願いを込めた。

 ……その頃の、惑星ハルケギニア。シティオブサウスゴータから南西に百五十リーグ近くも
離れた森の中に、突如として一人の少年の姿が虚空から飛び出すように出現し、そのまま地面に
うつ伏せに倒れ伏した。
 少年の背負う剣が声を発する。
「どうにか成功か……。まったく……、“使い手”を動かすなんざ何千年ぶりだ? しかもこんな
やり方は初めてだぜ……」
 嘆息したのはデルフリンガー。彼を背負う少年はもちろん、才人である。

27 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/21(日) 22:22:37.51 ID:2X4UBRd5
 デルフリンガーはヤプールの闇をかき消すゼロの光が消えかけた正にその瞬間、吸い込んだ魔法の分だけ
ガンダールヴの肉体を動かす能力の応用で、ゼロのテレポーテーション能力を使ってゼロ=才人を脱出させたのであった。
「相棒、滅茶苦茶まずい状態だぜ……。俺っちももう魔法が切れちまったし、どうしようもできねえ。
近くに人がいればいいんだが……そもそもここはどこだ……」
 デルフリンガーは自分たちがどこへ飛んだのかも知らなかった。しかしそれは無理のないことだろう。
試したこともない手法をぶっつけ本番で実践した上に、テレポートの瞬間がわずかにも早かったら
ヤプールを倒し切れず、わずかにも遅かったらゼロと才人は消滅していたというシビアすぎる
タイミングだったのだ。転移先を選ぶ余裕があるはずがない。無事に着地できただけでも奇跡のようなものだ。
 それは非常に分の悪い賭けであった。しかもその賭けはまだ続いている。ここで才人が助からなければ、
結局は何の意味もないのだ。
「相棒、お前さんの運が『虚無』の魔法並みに強けりゃ、まだ助かる道があるんだがな……」
 ともかく、もうデルフリンガーは一歩も動けない。才人が助かるか否かは、天命に預けるしかない。
 ……その時、彼らの近くの樹の陰から、ガサガサと物音が立った。
「お?」
 目はないが、視線を向けるデルフリンガー。どうやら近づいてくる気配は、獣のものではないようだ。
「……へへッ。相棒、お前さんはツキに見放されてないみてえだな」
 倒れ伏す才人の元へと、人影がそっと近づいてきた。
 流れるような美しい金の髪から覗く耳は――人間ではありえないほどにとがっていた。

28 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/21(日) 22:23:44.91 ID:2X4UBRd5
今回はここまでです。
次回からあの子の登場です。

29 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/22(月) 22:16:40.55 ID:ZzTYk0HW
ウルゼロの方、乙です。
よろしければ22:20あたりから続きを投下させてください。

30 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/22(月) 22:24:08.86 ID:ZzTYk0HW
 
「ウーン……、」

深夜のトリステイン魔法学院、本塔上部の外壁。
ディーキンは窓枠に腰かけて、先程ミス・ロングビルが応急処置として『錬金』で穴を塞いだ宝物庫の壁のあたりを見つめながら、物思いにふけっていた。

宝物庫を襲った巨大ゴーレムをキュルケらが破壊した、あの後。
コルベールとロングビルに合流して事情を聴き、皆で宝物庫の確認に向かったところ、残念ながらすでに宝物が盗まれていることが判明した。
また、残されていたサインから、大方の推測通り犯人は近頃世間を騒がせている『土くれ』のフーケという盗賊らしいことも分かった。

手分けして周囲を捜索しては見たものの、既に夜とあって暗闇に紛れて逃走したと思われる犯人を見つけ出すことはできず……。
これ以上捜索しても無駄だと判断したコルベールが、学院長に報告して翌朝緊急対策会議を開くということで方針をまとめ、ひとまず解散となったのだ。

その際にディーキンは、自分は夜目が利くから念の為に宝物庫の見張りをしよう、と申し出たのである。

当然のようにルイズも、使い魔にだけ頑張らせるわけにはいかないと一緒に見張りをすることを主張した。
しかし、実際問題としてルイズがいても役に立つわけではないので、十分睡眠をとって翌日に備えた方が有益だと説き伏せて休んでもらった。
ディーキン自身は、短時間の睡眠でもしっかりとリフレッシュできる魔法の寝袋を持っているので問題はない。
一応、朝日の上る少し前あたりの時間にはコルベールが見張りを交代してくれることになっているので、それから休めば十分だろう。

さて、申し出はしたものの、ディーキンは別に、盗賊が今更また戻って来るだろうなどと思っているわけではない。
翌朝の会議までにいろいろと考えをまとめて行動の方針を決め、必要な準備などを済ませておきたかったのである。
見張りは一人で静かに考えをまとめる、そのついでのようなものだ。

「ンー……、一体、そのフーケって人は、どうやって逃げたのかな?」

あの時は巨大なゴーレムに注意が引きつけられてしまい、本来ならばより重要な犯人の捕縛よりもそちらの破壊を優先してしまった。
それについては、自分たちの失態だったと思う。

しかし、一応宝物庫の方にも常に注意はしていたつもりなのだ。
自分たちが学院に戻ってきた時、ちょうどゴーレムが宝物庫の壁を殴り抜いたのが見えた。
理屈から考えれば、犯人が宝物庫に入り込み、宝を持って逃げ去ったのはその後のはずだ。

だが、自分はそういった不審な人影にはまるで気付かなかった。
現場の回りを後で調べてみたが、足跡などの痕跡は近くには見当たらなかった。
空を飛んである程度離れた場所まで逃げたとすれば、その様子が目に付かなかったというのは不自然だろう。
遥か高空から獲物の姿を捉える優れた視覚を持つシルフィードにも聞いてみたが、やはり不審な人影などには全く気付かなかったという。

犯人は一体、どんな方法で気付かれずに宝物庫に入り込み、そして逃げ出したのだろうか?

透明化の呪文?
いや、ハルケギニアではその手の呪文は一般に知られていないようだ。
第一、仮に特殊なマジックアイテムなどで透明化していたとしても、自分にはちゃんと見える。
ハルケギニアでは簡単な変装の呪文でさえ極めて高度な代物で、幻覚を作る魔法は殆ど知られていないようだから透明化も含めて幻術の線はまずあるまい。

変身の呪文は、ハルケギニアでは先住魔法にしかないようだ。
そうなると、フーケの正体が亜人かなにかでない限りは小さな動物などに変身して逃げたというのもありそうにない。

瞬間移動……これもハルケギニアでは遺失しているようだ。
そもそも瞬間移動が使えるなら、壁に穴を開ける必要自体あるまい。
エーテル界に移動しての壁抜けも、それと同じ理由からまずありえないだろう。

そうすると、他にはいったいどんな手が考えられるだろうか?

「ええと、ディーキンなら……?」

試しに、フーケという盗賊の立場に立って考えてみる。
もし仮に、自分がこの宝物庫から盗むとしたなら、どんな手を使うだろうか?

31 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/22(月) 22:26:00.92 ID:ZzTYk0HW
 
まあ普通に考えれば、おそらく《次元扉(ディメンジョン・ドア)》のような呪文で宝物庫の中へ直接瞬間移動するか。
あるいは《明滅(ブリンク)》のような呪文で宝物庫の壁を抜けるか。
いずれにせよ、そもそも穴など開けずに密かに侵入するだろう。

ただ丈夫な壁で囲ってあるだけで瞬間移動やエーテル界を利用しての侵入等に対する備えのまったくない宝物庫など、フェイルーンではナンセンスである。
少しばかり気の利いた術者にとっては、そんなものは何の障害にもなりはしないのだ。

無論、こちらの世界ではそういった呪文が知られていない以上、それは仕方のないことではある。
フーケが取った手段もそのようなものではないだろうから、今はそういった方法を考えても仕方がないだろう。

「じゃあ、もしも穴を開けて盗み出すとしたら……、」

実際にはフーケは宝物庫に穴を開けたのだから、穴を開けて盗む場合を考えよう。
ディーキンはそう呟きながら、翼を羽ばたかせて宝物庫の傍へ移動する。
そして、まだ崩れていない外壁をじっと眺めたり、こんこんと叩いたりして検分してみた。

見たところ、ただ分厚いだけでごく普通の石材でできた壁だ。
内部には金属なども入れられているかもしれないが、いずれにせよ破壊できないようなものではない。
先程ミス・ロングビルが壁を修繕する前に見て大体の壁の分厚さも把握している。

この程度の分厚さなら、エンセリックのようなアダマンティン製の武器を使って、出せる全力で叩きまくれば、おそらく1分と経たずに破壊できるはずだ。
人が寝静まった夜を狙って、《静寂(サイレンス)》の呪文で音を消して手早く作業すればどうとでもなるだろう。

いや、しかし、ハルケギニアにはアダマンティン製の武器はないかもしれない。
まあその場合には少々余計に時間がかかるだろうが、せいぜい十数秒程度壊れるのが遅くなるだけで大差はないだろう。

とはいえ、フーケのように巨大なゴーレムを使うとなるとそうもいくまい。
物凄く目立つし音や地響きの起こる範囲も大きくなり過ぎるので、たとえ深夜でも隠密な作業は不可能だろう。
まあそれでも、1分以内で作業を終えられれば、余程警戒が厳しいか運が悪くない限りはどうにか……。

(……ン? そういえば、あのゴーレムは壊すのにどのくらいかかってたのかな?)

あのゴーレムにはどのくらいの力があったのだろうかと、ディーキンはふと考えた。

自分がサポートしたとはいえ、キュルケの呪文とタバサの竜巻の連発であっけなく壊れたところを見ると、そんなにすごい強さがあったとも思えない。
仮に超巨大サイズのアニメイテッド・オブジェクトと同程度のパワーだったすると、数十回は殴らなければならなかったはずだ。
それだと、壊すのに数分はかかる。下手をしたら、十分以上かかるかもしれない。

だがコルベールによれば、彼はゴーレムの出現に気が付いてすぐに飛び出したものの、宝物庫を破られるのには間に合わなかったという。
正確なところはわからないが、その話からすればあのゴーレムは1分と経たずに宝物庫の壁を殴り壊したのではないだろうか?

そうすると、あのゴーレムは強さの割に異様にパワーに特化していたのか……。
あるいはフーケが事前に密かに学院に忍び込んで、人目を盗んで壁に細工でもして脆くしていたのか……。

「……ンー、わかんないね」

様々に可能性は考えられるが、今は当て推量しかできないし、あまり深く詮索してみてもしょうがないだろう。
ディーキンは頭を振って、その考えを一旦脇へ追いやった。

それよりも今、大事なのはフーケがどうやって逃げたかだろう。
それがわかれば、足取りを追う手掛かりになるかも知れないのだから。

ディーキンは頑張って、それについて色々と考えてみた。

この世界にどんな魔法があるのかについては、ここしばらく本を頑張って読んだりして、大体学んだつもりだ。
それらの魔法をあれこれ頭の中で組み合わせてみて、自分やシルフィードに気付かれずに手早く作業を終えて逃げ去る方法を模索する。

32 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/22(月) 22:28:33.38 ID:ZzTYk0HW
 
「ウウ〜ン……、」

しかし、どうにもピンとこなかった。

風の奥義である『偏在』とやらだろうか?
いや、フーケは巨大ゴーレムを使うところからして『土』のメイジらしい。『風』のスクウェアスペルが使えるとは思えない。
それに第一、偏在では見つからずに跡形もなく消えることはできても、それでは宝を盗み出すことはできないではないか。

逃げたふりをして宝物庫のどこかに隠れ、ほとぼりが冷めてから立ち去るという手も考えてはみたが、まず無理だろう。
先程宝物庫に入った時、中に隠れている者がいる様子はなかった。みんなで手分けしてちゃんと調べたので、見落としがあったとは思えない。
扉には外から閂が掛けてあったから、内側から扉を開いて逃げることはできないし……。

あるいは、例えば一回限り瞬間移動ができる使い捨てのマジックアイテムとかを持っていて、宝を手にした後の帰りにはそれを使ったのだろうか?
ありえなくはないが、そういった希少なマジックアイテムの可能性まで考慮し出すと、きりがなくなってくる。
それではどうとでも考えられすぎて、調査の手掛かりにはならない。

「……ダメだね、やっぱり」

ディーキンはしばらくあれこれと考えた後、ついに諦めてそう結論した。

これはやはり、推測だけでは如何ともしがたい。
信頼できる結果を得るには、呪文を使って調べるべきだろう。

そうなると、どんな呪文を使うのがよいか?

真っ先に考えられるのは、《念視(スクライング)》ないしはその上位版である《上級念視(グレーター・スクライング)》であろう。
実際、ディーキンは宝物が盗まれていることが判明した際、すぐにフーケに対してそれを用いることを考えた。
フーケの姿を捉えられれば、その場に直接瞬間移動して彼または彼女を叩きのめし、宝を取り戻すことさえも可能なのだから。

しかし、冷静に思案した結果、それを試してみるのは翌朝以降でもよいだろうと結論したのである。

念視系の魔法は目標のことを詳しく知らない場合、抵抗されやすくなる。
今の場合、ディーキンはフーケのことを噂程度しか知らず、姿も見ていないので、抵抗される可能性はかなりあるだろう。
そしてもし抵抗されれば、この呪文の性質上、24時間の間は再び念視を試みることはできない。
そうでなくとも自力修得していない呪文なので、発動はマジックアイテムに頼らねばならず、そうそう何度もやり直してみるというわけにはいかないのだ。

そのような不確実な呪文に頼るのは、他に手がないと分かった時の最後の手段にしたい。
今は深夜なのだし、フーケだって手に入れた宝をすぐに換金するというわけにはいかないだろう。しばらくは手元に持っているはずだ。
それならば、翌朝の会議とやらの結果を待ってからでも遅くはあるまい。

もし、宝物の杖を事前に見たことがあれば、《物体定位(ロケート・オブジェクト)》の呪文も使えたのだが……。
見たことがない物は探せないので、どうしようもない。

そうなると、他には何があるか……。

「……ウーン。あの呪文が使えれば、間違いないんだけど……、」

今頭に思い描いている、あの呪文さえ使えれば。
フーケの正体も、宝物をいかにして盗み出しそして逃げたのかも、間違いなく明らかになるはずだ。

唯一の問題は、ディーキンは今のところその呪文を習得しておらず、発動可能なマジックアイテムも持っていないということだが……。
そうすると、ここは。

33 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/22(月) 22:30:35.54 ID:ZzTYk0HW
 
「……よし。ディーキンはこの機会に、ボスに連絡を取るの」

そろそろ落ち着いて、この世界のこともだいぶわかって来たことだし。
いい加減にボスに連絡を取り、事情を説明して協力を求め、こちらで不足したものがあれば最低限は調達できるようにもしておかねば。
翌朝の会議までに調達が間に合うかは、少し怪しいが……。

ディーキンはそう決心すると、本塔の最上部、誰にも見られない屋上の片隅にまで、翼を広げて飛んで行った。
そして、スクロールケースの中から一枚の巻物を取り出す。

「ええっと……、よし。これを使えばいいね」

そうひとりごちると、ディーキンは《他次元界の友(プレイナー・アライ)》の巻物を広げて、ひとつ咳払いをする。
この呪文は本来バードの用いられるものではないが、<魔法装置使用>の技能によって、いわば気合いで無理矢理使うことは可能だ。

ディーキンは気を引き締めると、普段に似合わぬ厳かな声で、長い詠唱を開始した。

「《アーケイニス・ヴル…… ビアー・ケムセオー……  ア・フ・ラ、マ・ズ・ダ……》」

最初はゆっくりとした低い声で、歌うように。
それから進むにつれて次第にトーンが上がり、詠唱には熱が篭っていく。

合わせて、ディーキンの目の前の床に仄かに白く輝く召喚の魔方陣が浮かび上がり、詠唱が進むにつれて輝きを増していった。

「――――― 来たれ、次元の果て、永遠の楽土から! 星幽界のデーヴァ、我が友ラヴォエラ、ジラメシアよ!!」

10分にも及ぶ長い詠唱の果てに、叫ぶようにして最後の言葉が紡ぎだされた。
その声に呼応するように、魔方陣は眩い光を噴き上げ、その光が輝く純白の羽根の渦になって、天界からの召喚の門を形作る。
その位相門を通って、自身の名を呼ばれた眩く輝く神々しい存在が、この世界へと近づいてきた。

やがて姿を現したのは、身の丈2メイルを優に超える、非常に長身の美しい女性だった。
羽毛のある純白の翼を持ち、柔軟でしなやかそうなその体は、内なる力によって仄かに光り輝いている。

「……ディーキン? ディーキンよね、私を呼び出したのは?」

「オオ、そうだよ。お久し振りだね、ラヴォエラ。翼は、ちゃんと直ったの?」

「ええ、もうすっかりね。また会えて嬉しいわ、ディーキン。
 なんだかここは、ずいぶんと……、変わった世界みたいね。私は天界とレルムの物質界以外の世界には、あんまり行った経験がないけど……」

その女性は微笑んでディーキンの傍に歩み寄ると、膝をついて彼と握手をした。

彼女の名はラヴォエラ。
ディーキンがボスと共にアンダーダークを旅していた途中に出会った天使……、天上世界に住まうアストラル・デーヴァ(星幽界の天人)である。

34 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/22(月) 22:32:13.00 ID:ZzTYk0HW
短めですが、今回は以上です。
ディーキンが色々と呪文等について言及したりしていますが、解説はまだ無くても大丈夫かな……?

それでは、また早めに続きを書いていきたいと思います。
次の機会にもまた、どうぞよろしくお願いいたします……(御辞儀)

35 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 04:58:33.39 ID:xxcbJs5H
皆さん、投下お疲れ様です。
おはようございます、諸事情により早朝に失礼します。
よろしければ、五時二分頃から投下させてください。それでは。

36 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:02:18.33 ID:xxcbJs5H
夜空に煌々と双月が輝く頃。ルイズは自室のベッドで夢を見ていた。
それは、幼い自分が懐かしきヴァリエールの領地にいる夢。
「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの?まだお説教は終わっていませんよ!」
ルイズの母が、そんな事を言いながら彼女を探し回る。姉たちと比べて出来の悪い自分を叱る為だ。
夢の中でルイズは、そんな自分を叱る母から逃げまわっていた。
召使達が、ルイズの事をひそひそと噂しながら通り過ぎる。
「ルイズお嬢様は難儀だねぇ。上のお姉さま方はあんなに魔法がおできになるっていうのに」
庭園の中庭で茂みに隠れながら、ルイズはそんな噂話を悲しい思いで聞いていた。
だれも自分の事を分かってくれない。そう思うと居ても立ってもいられなくなって、ルイズは彼女が『秘密の場所』と呼ぶある場所へと行くのだ。
そこは、ルイズが唯一安心できる場所。人の寄り付かない、うらぶれた中庭の池。
季節の花々が咲き乱れ、池のほとりには小さな白い石で作られたあずまやが建っている。
見るものが息をつくようなのどかな風景である。そして池には小さなボートが一艘。
ルイズは何かあると、決まってそのボートの中に逃げ込むのだ。
ルイズは用意していた毛布に包まりながら、ぐすぐすと泣き出した。
と、そんな時、霧の中からマントを羽織った立派な貴族が現れるのをルイズは見た。
年の程は十六歳ほどであろう。つばの広い羽根突きの帽子をかぶり、その顔は窺えない。
しかし、ルイズにはそれが誰であるかわかった。
幼い夢の中のルイズは、その白い小さな頬を染める。
そして、身を起こしその立派な貴族を恥ずかしそうに見つめるのだ。
「ルイズ、泣いているのかい?」
「子爵さま……。いらしてたの?」
ルイズは泣き顔を見られまいとふと顔を背ける。しかし、彼女の胸の高ぶりはおさまらない。
憧れの人に、自分の恥ずかしいところを見られた。それにも関わらず、彼女の顔は熱をもったままだった。
「今日は君のお父上に呼ばれたのさ。あのお話のことでね」
ルイズはさらに頬を染めて俯いた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。僕の小さなルイズ。君は僕の事が嫌いかい?」
子爵がおどけた調子で言う。それに対してルイズは一生懸命首を横に振りながら言う。
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
ルイズははにかんで言った。帽子の下で、優しげな顔がにっこりと微笑み。
「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」
そういって手が差し伸べられた。
「子爵さま……」
ルイズは小さく頷くと、立ち上がりその大きな手をとろうとした。しかしその時、彼女はあることに気がついた。
「あれ?何これ」
みるとそれは子爵の手ではなかった。煤に汚れた逞しい腕に、枷が嵌っている。その手が伸びる腕は筋骨隆々である。
バッと見上げるとそこにあったのは。
「さっさと行くぞお前さん」
使い魔の官兵衛の顔であった。
「な、なによあんた!」
官兵衛がぐいとルイズの腕を掴む。
「ちょ、ちょっと何するのよ!」
見ると夢の中のルイズは十六歳の彼女に戻っている。官兵衛の強引な態度にルイズは思わず声をあげる。
「何って、これから晩餐会だろう?エスコートしてやるからさっさと来い」
「な、なによその言い方。レディに対して!」
あまりの言い草にルイズは抗議した。しかしそんなルイズの態度に官兵衛は。
「ああもう、まどろっこしい!」
そういってルイズを軽々と抱き上げた。
「きゃっ!ちょ、ちょっと!」
いきなりの事にルイズは顔を赤らめた、そして。

37 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:03:44.12 ID:xxcbJs5H
「ルイズ。お前さんは小生のものだ。一緒に天下を取ろう」
「なっ!」
ルイズの顔から火が出そうな台詞を、官兵衛は平然と口にした。
いつになく真剣な表情の官兵衛。精悍な顔立ちが、その雰囲気をより一層際立たせる。
そんな官兵衛に、魚のように口をぱくぱくさせながらルイズは。
「い、いいいやよ……。ばっかじゃない?なんであんたなんかと」
声を震わせ、顔を俯かせながらそう呟いた。
「ルイズ」
官兵衛が今度は優しげにルイズに言う。「なによ」とルイズが顔を上げると。
息の掛かりそうな程近くに、官兵衛の顔があった。知的な瞳にルイズの表情が写る。その中のルイズの顔は――
「やや、やだそんな……」
まるで幼子のようにしおらしい表情をしていた。そのまま官兵衛の瞳が閉じられ、顔が近づいてくる。
ルイズはハッと息をのみ、固く目を閉じた。ルイズの唇に官兵衛のそれが重なろうとした、その瞬間。
「なあぁぁぁぁぁぜじゃあああああっ!!」
「きゃあ!」
ルイズは現実にたたき起こされた。夜中にも関わらず、響き渡るみっともない叫び声に。
 
暗の使い魔 第十三話 『異国の男』 

「よう相棒!随分と騒がしい目覚めだなっ」
壁に立てかけられたデルフリンガーが、カチャカチャと喧しく喋る。
「ハッ!ゆ、夢か……!ちくしょう刑部め!」
官兵衛は、藁のベッドから飛び起きるなり、そう呟いた。
忌々しそうに枷を振りかざしながら、官兵衛は悔しげに歯を食いしばった。
「一体全体どうしたってんだ?ニワトリだってもう少し遅起きだぜ」
「ああ、不快な夢を見た」
いつもに比べ落ち着かない様子で、官兵衛はその場に足を投げ出した。
しばしの間、沈黙していた官兵衛も、やがて落ち着くと。ゆっくり口を開いた。
「……もう大丈夫だ。気にするな」
「気にするな、じゃあないでしょうが!」
その時、ポカンと、官兵衛の頭に調度品が飛んできた。
見事にクリーンヒットしたそれがガランガランと床に転がり、官兵衛は頭を抑えた。
「毎回毎回、よくも人が気持ちよく寝ている所を起こしてくれたわね!」
見ると腰に両手を当て、ルイズが険しい形相でそこに立っていた。
ルイズ自身まだ眠いらしく、眼を時折手で擦りながらも官兵衛を睨みつける。
「いてて!何しやがる!」
ぶつけた箇所を擦りながら官兵衛が言う。それに対してルイズは。
「だって何度目かしら?こうして起こされるのは。この前は地震のオマケ付きだったわね!」
ルイズが近くにあった乗馬用の鞭を手に持った。そして官兵衛にツカツカと近づくと。
「ばかばか!ばか!」
頬を真っ赤にしながら彼を叩きだした。
「痛っ!何だ急に?」
「うるさい!いつでもどこでも!ご主人様を何だと思ってるの!」
ルイズの止まらない癇癪を身に受けながら、官兵衛はげんなりした。
起こしてしまっただけで、なぜこうも怒られにゃあならんのか。年頃の娘の扱い、というのはどうにも苦手な官兵衛だ。
まったく自分なんて久々に目覚めの悪い夢を見たというのに、この娘っ子は。
そこまで考えた時、官兵衛はピーンと閃いた。
「(ははあん。さてはこの娘っ子!)」
官兵衛は、真っ赤な顔で怒るルイズを見て何かに気がついたようだ。
「おい……」
「あによ!」
官兵衛が、嵐の如く唸るルイズの腕を、ガシッと掴む。鞭が彼の顔寸前で止まった。
そのまま壁際に押しやる官兵衛。
「はなして!はなしなさい!この大型犬!」
「もういいルイズ。安心しろ」
官兵衛が珍しく、静かな声色でルイズに語りかける。その普段ない官兵衛の様に、おもわずルイズはドキッとした。
「(な、なによコイツ……)」
先程夢で見た官兵衛の様子と、目の前の彼が不意に重なる。それを感じて、ルイズはさらに頬を赤らめた。

38 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:04:48.20 ID:xxcbJs5H
官兵衛は満足げに頷くと、こういった。
「見たんだろう?(怖い)夢を……」
「は、はあ!?」
ルイズは、先程自分が見た内容の夢を反芻する。
そうだ、自分は夢を見た。自分の使い魔が生意気にも私に想いを告げ、あろうことか口付けを。くくく口付けを……。
そこまで考えて、羞恥で顔が沸騰しそうになる。
「な、なによ!私がどんな夢をみようと勝手でしょう!?」
そんな様子を見て官兵衛は、ルイズが悪夢にうなされ、それを看破されて恥ずかしがっている、と踏んだ。
口調を変えず官兵衛が言う。
「小生も見たんだ、夢を……。いまだに鼓動がおさまらん(恐ろしくて)」
「はえ!?」
思わず口が開きっぱなしになるルイズ。
「(官兵衛も見ていた?同じような夢を?そそそそれに、ドキドキしている!?)」
その言葉に、甘ったるいものを感じ、脳内が麻痺する。
官兵衛の足りない言葉が誤解を生んでいるのだが、そんなことは露知らず。
「小生だってそうなる事くらいあるんだぞ?恥ずかしいが、仕方無い」
官兵衛はポリポリと頭を掻きながら、笑みを浮かべた。満更でもなさそうな表情であった。
ルイズの胸が早鐘のように鳴る。
「(ななな何ときめいてるのよ、こんな大男に!だいたいコイツは使い魔じゃない!
なによ!ご主人さまの夢見てドキドキするなんて!身の程知らず!生意気!ばかうつけ!)」
心の中で、そんな言葉を繰り返しながらも、ルイズは官兵衛と目をあわせられなかった。
官兵衛が顔を覗き込んでくる。まるでこちらの感情を窺うかのように。
「ルイズ」
夢の中と同じように、官兵衛が真剣な声色で名前を呼んだ。
その言葉に俯いていた顔を上げ、彼の瞳を見やるとそこには。
「(やだ……!)」
夢の中とまるっきり同じ、幼子のようなしおらしい表情のルイズが写りこんだ。
ぎゅうっと目を瞑る。きっとこれから夢の中と同じように……。そう思うと身構えずにはいられなかった。
「(なによ、舞踏会で踊っただけじゃない。
そりゃあ私も少し、すこ〜しだけ!頼もしいとか思ったり、守られて嬉しいとか思ったりしたわ!
でもそれだけでこんな、ああこんな!どうしよう!こんな使い魔に!)」
ルイズは熱く熱せられた頭で、その瞬間をいまかいまかと待った。
時間にして数秒にも数分にも感じられた。長いのか短いのかわからない。
その時間が、沈黙が、何よりも心地よかった。ある一言でブチ壊されるまでは。


「漏らしてないな?」


「………………は?」
ピキーンと空気が固まる。
甘ったるかったルイズの桃色の空気が、風に吹かれてすっ飛んだ。
場違いな、肌寒い風に。
「……なんですって?」
「だから漏らしてないか聞いたんだ。怖い夢を見たんだろう?」
その言葉が耳から入り、神経に伝わり、大脳に入って情報に変換され、理解に至るのに、ルイズは果てしなく長い時間を費やした。
理解した途端、彼女の幸せな想像が、繊細なガラス細工の様な心情が、無造作に打ち砕かれたのだ。
ルイズの全身が小刻みに震えだす。
そんな様子を気にもとめず、官兵衛は続けた。
「小生もな。ガキの頃は悪夢でよく漏らしたもんだ。その度に父上に呆れられたもんだが――」
得意げに言いながら、官兵衛はルイズの震える肩をポンポンと叩いた。ルイズの拳が固く握られる。
そして官兵衛は、まずは深呼吸!気を落ち着けるのが一番だ!などとのたまいながら胸を張ったのだった。
それを聞いてか聞かずか、ルイズは深呼吸を始める。すうはあと、目を瞑り呼吸を整えた。
そして次の瞬間であった。ルイズの怒りのオーラを纏った鋼の拳が、官兵衛の鼻っ面に叩き込まれたのは。
「ぶべらっ!!」
圧倒的運動量を秘めた物体が、顔面に激突する。
情けない声とともに、官兵衛の巨体が部屋の端から端まで吹き飛んだ。

39 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:05:57.74 ID:xxcbJs5H
そのまま、反対の壁際に置かれた高価なアンティークの机に頭を叩きつける。
衝撃で机上に飾られた花瓶が落ちてきて、官兵衛の頭にヒットしかち割れた。
三連コンボを喰らった官兵衛は、鼻から一筋の血を垂らし、ふらつく頭を押さえながら目前を見やった。
見るとそこにいたのは、桃色の頭髪を逆立たせながら屹立する一匹のオーク鬼。
それが、手にした杖先から赤黒いオーラをたぎらせ、徐々にこちらに近づいてくる。
「……ゲホッ!ちょ、ちょっと、待て、お前さん。」
そのあまりの圧力に咳き込みながら、官兵衛は口を開いた。
近づいたルイズがこちらを見下ろす。
「ねえ?デカ犬?」
「デ、刑事?」
官兵衛は、花瓶から降りかかった水を払うように首を振る。視界が良好になり彼女の表情が窺える。
その顔は無表情だったが、目は伝説のオロチのように血走り、爛々と輝いていた。マグマのような怒りをたたえて。
「な、なんでそんなに怒るんだ?一応、いちおう、小生は心配して――」
「黙れい」
ルイズが低い声色でうなる。
「今度と言う今度は許さないわ。ご主人さまを前にして、始祖ブリミルをも恐れぬ不敬の数々……」
ルイズが杖を掲げる。
その先端に光が収束していく。
その失敗爆発の前兆に顔を照らされ、ルイズは言い放った。
「死をもって償うがいいわ……!」
杖が振り下ろされた。
目前に集中するエネルギーを感じながら、官兵衛は思った。また眠れない日々がやってきた、と。

そんな頃、トリステイン城下町の一角に聳え立つ、チェルノボーグの監獄内。
その人物は静かに、鉄格子入りの窓から覗く双月を眺めていた。
「全く、とんだ災難だったよ」
土くれのフーケは杖を取り上げられ、ここチェルノボーグの狭い独房内に身柄を拘束されていた。
逃亡の際、天海からつけられた傷は、水のメイジの手によって綺麗に元通りになっている。
しかし傷はなくなったが、フーケはあの長髪の男を未だ苦々しく思っていた。
自分が杖を持たない人間に遅れを取った事、容易く裏切られ捕まってしまった事。
彼女のプライドを傷つけるには十分であった。
だがそれに加えて、自分を捕まえたあの黒田官兵衛という男。
「大したもんじゃないの!あいつらは!」
彼女は、彼らには素直に賞賛の意を示していた。
あの時彼らが破壊の杖に細工をしていなかったら。あそこに駆けつけていなかったら。
自分はあの天海に始末されていただろう。
結果として捕まってしまったが、自分の命を救ってくれた彼らには感謝していた。
「クロダカンベエ……。妙な名前だけど中々面白い奴だったね」
フーケは独房の天井を見上げながら、向かいの独房の男に向かってそんな話をしていた。
「そうかい……」
男は少し考える素振りを見せた後、静かにそう呟いた。歳若い男の声だった。
「と、こんな所かね。私を捕まえた連中の話は」
「おお、ありがとうよ。」
語り終えたフーケに静かに礼を述べる男。そしてしばらくの後に、そっと呟いた。
「こっちに来てる奴が、俺以外にもいやがるとはな」
男の言葉にフーケは首を傾げた。フーケが思わず聞き返す。
「……?どういうことだい」
「いいや、こっちの話だ」
フーケは男の答えに興味を惹かれた。「へぇ」と短く呟きながら、彼女は男に言った。
「じゃあさ、あんたのことを教えておくれよ」
「何?」
今度は男が怪訝な様子でフーケに聞き返す。フーケは構わずに続けた。
「いいだろう?私はあんたの聞きたいことを話したんだ。あんたも色々と教えてくれても罰は当たらないんじゃない?」
「そりゃそうか?まあいいぜ、ここで会ったのも何かの縁だしな」
男の答えに表情を明るくしながら、フーケは鉄格子越しに身を乗り出した。と、その時であった。

40 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:07:05.03 ID:xxcbJs5H
「待ちな。だれか来る」
男が低い声でフーケを制した。聞けば、拍車の音の混じった足音が、コツコツと階段を下りてくるのが聞こえた。
看守ではない。看守であれば足音に拍車の音が混じろう筈はなかった。
「気いつけな」
「ああ」
男の言葉にフーケが身構える。すると、鉄格子の向こうに白い仮面をつけたマントの男が姿を現した。
マントの影から長い杖が覗いている。どうやらメイジであるらしかった。
「おや!こんな夜更けにお客さんなんて珍しいわね」
フーケはおどけた調子で目の前の男に言う。仮面の男は答えず、さっと杖を引き抜いた。フーケは思わず後ずさる。
しかし、仮面の男はくるりと反対側の独房に杖を向けると、杖を中の男に向けた。そして短く呪文を呟き杖を振るった、瞬間。
ばちんと周囲の空気が弾けて、仮面の周囲から、電流が牢の男に一直線に伸びた。
「ぐあっ!」
電流が胴体に命中し、男は力なく床に崩れ落ちる。バチバチと男の体中を強力な電気がほとばしった。
「野郎ッ……!」
男は力を振り絞り立ち上がろうとしたが、ガクリと倒れ伏す。
ぴくりとも動かなくなる男を、フーケは青ざめた顔でじっと見ていた。
牢の男を邪魔そうに見やった仮面の男は、くるりとフーケに向き直り、口を開いた。
「そう怯えるな土くれ。話をしに来ただけだ」
「話?」
牢の奥でフーケは油断無く身構えながら、仮面を睨みつけた。
「随分と物騒な挨拶だけど、私にどんな話があるっていうんだい?」
「まあ聞け土くれ。それともこちらで呼んだほうがいいか?マチルダ・オブ・サウスゴータ」
フーケの顔が強張る。それは自分が捨てる事を強いられた過去の名前だった。なぜそれをこの男は知っているのか。
ますます警戒を強めるフーケ。
「あんた、一体何者?」
震える声を隠す事もできずに、フーケは男に問うた。しかしそれに答える素振りも見せず、男は笑いながら言う。
「単刀直入に言おう。我々と一緒に来い。マチルダ」
「何だって?」
「我々は一人でも優秀なメイジが必要だ。聖地奪還の為にな。」
男の言葉にフーケは、フンと鼻を鳴らした。男は静かな口調で続ける。
「まずはアルビオンだ。アルビオンの王朝は近いうちに倒れる。我々貴族派の手によってな。
そして無能な王族に代わり我々が政を行った暁には、ハルケギニア全土を統一する。
我らの手で聖地を奪還するのだ。」
「ちょっと待ちな、聖地を取り戻すだって?あの屈強なエルフ共から?夢幻もいいところだよ」
フーケが呆れたように男の言葉を遮った。かつてハルケギニア中の王達が幾度と無く兵を送り、失敗してきた聖地奪還。
強力な先住魔法を扱うエルフの恐ろしさは彼らも良く知っているはずだ。それをあろう事か目的の一つとして掲げているのだ。
馬鹿馬鹿しい。フーケは心底そう思った。
「生憎だけど、そんな絵空事に付き合うつもりはさらさら無いね。」
「ほう、たとえ死んでもか?」
杖の切っ先が静かに、しかし無駄の無い動きでフーケを捉える。
それを見て、フーケは観念したかのように構えていた腕を下ろした。仮面の男が続ける。
「お前は選択する事が出来る。我々『レコン・キスタ』の同志となるか、或いは――」
「ここで死ぬか。でしょ?」
「そういう事だ。先程の男のようになりたくなければな」
男は満足げに頷いた。と、その時であった。仮面の男のマントが突如としてごう!と燃え上がった。
「何!?」
フーケも仮面も目を疑った。見ると仮面の足元に、赤々と燃え盛る一本のナイフが突き立てられているではないか。
咄嗟にマントを脱ぎさる仮面の男。そして目を向けた先には。
「あ、あんた!」
フーケは向かいの独房をみて叫んだ。
「やってくれるじゃねぇか」
燃え盛る炎に照らされ、その男は何事も無かったかのようにそこに佇んでいた。

41 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:08:09.52 ID:xxcbJs5H
男の鍛え上げられた上半身が、赤々と輝く。仮面の男が短く舌打ちし、再び杖を構えた。
「仕損じたか」
再び呪文を唱えようとする仮面。しかしその詠唱は、檻の中から投下された一本のナイフで遮られた。
まるで矢のような速度で迫る飛来物を、サーベルのような杖で叩き落す仮面。
しかしどこに仕込んでいたのか、無数のナイフが檻の中から次々と飛んでくる。
そして次の瞬間、何とそれら全ての物が赤熱し炎を発したではないか。
「ぐおおっ!」
その内の一本を捌ききれずに、再び仮面の衣服に火が燃え移った。
狭い通路内で逃げ場も無く、仮面の男は炎に包まれる。そして次の瞬間、男は燃え盛るマントを残して霞のように姿を消した。
チャリンと、金属音が廊下に響き渡る。みるとそれは独房の鍵の束であった。
仮面が消え去るのを見ると、独房の男はフゥと息を吐いた。
そして向かいの独房で唖然と一部始終を見ていたフーケを見ると。
「大丈夫かよ?」
そういって歯を覗かせ笑った。フーケがハッと我に帰り、手を伸ばし鍵を拾う。
そしてガチャリと独房の扉を開け外にでると、鉄格子越しに男に近寄った。
「あんた、なんで生きてるんだい?」
「あぁ?随分じゃあねぇか」
男が眉をひそめながら言う。
「さっき喰らったやつならよ、この通りだ」
男が自分の胸を指差す。そこには先程の電撃で出来たであろう火傷の跡が出来ていた。しかし程度は見た目程に酷くはない。
あれほどの魔法を受けておいて、軽い火傷で済むとはどんな身体だろう。フーケは呆れてため息をついた。
「全く、でもありがとう。助かったよ」
フーケは廊下に残されたマントの燃えカスを見ながら、男に言った。
「いいってことよ。俺もいきなり訳分からんもん喰らって、頭にきた所だしよ。それよりも――」
「ああ」
フーケは男の独房に鍵を差し込んだ。ガチャリと鍵が開き、重い音と共に鍵が開かれる。
中から長身の男が、背負った上着をたなびかせながら悠々と歩き出てきた。
「いいのかい?そんな簡単に逃がしちまって。俺が極悪人だったらどうするつもりだい」
「極悪人は見ず知らずの私を助けたりしないだろう?それに――」
フーケはニヤリと笑い、男の目を見据えた。
「目を見ればあんたがどんな人間かわかるよ。長年盗賊やってないからね」
フーケの言葉に一瞬戸惑いの表情を見せた男だったが、すぐに口を空けると。
「ハハッ!アンタおもしれえな!気に入ったぜ」
そういって、声をあげて笑い出した。
トリスタニアで最も堅牢な筈のチェルノボーグの最下層に、豪快な笑い声が響き渡る。
そして、騒がしく牢獄を駆け抜けるのは二人の賊。
一人は、貴族の金銀財宝を根こそぎ奪い、トリステイン中を掻き乱した世紀の大盗賊、土くれのフーケ。
そしてもう一人――
「あったぜ!やっぱりこいつがなきゃあ締まらねえ!」
囚人の持ち物を保管する倉庫から出てきた男は、手にした得物を得意げに振り回した。
風を払い、地面に突き立て、鋼の音を響かせる。その豪快な様におお、とフーケは感嘆の声を漏らす。
それは長さ三メイル以上はあろう豪槍。荒々しく鎖が巻かれたそれの穂先には、さらに巨大な白銀の碇。
それを男は、軽々と片手で取り回して見せた。
「いくぜぇ!こんなしみったれた場所からはおさらばだぜ!ハッハ!」
瞬間、男の手にした豪槍が赤熱して炎を吹き出した。
炎の槍が、男の頭上で旋回する。
振りかぶられた槍が男の手を離れ、吸い込まれるように塀に激突した。
どおん!と地響きが鳴り響く。

42 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/06/23(火) 05:14:39.54 ID:xxcbJs5H
その瞬間、生じたのは閃光と爆音。
厚さ数メイルにも及ぶ石壁が弾け飛び、さらに業火に焼き尽くされて消滅した。
それを見て、彼女は声ひとつ出なかった。あらゆる砲撃もかなわぬ堅牢の防壁を、いとも容易く砕いた目の前の男に。
フーケは目を見張って、男を見つめた。
そこに立つのは異国の男。
逆立つ銀髪、紫色《しいろ》の眼帯。
同じ紫色の衣を纏い、大海制すは七の海。
男がいた乱世では、彼を指してこう呼ぶ。
四国の主。
海賊の長。
西海の鬼神。その名は――

天衣無縫
    長曾我部元親
           進撃

暗の使い魔 第二章 『繚乱!乱世より吹き荒れる風』



今回は以上で投下完了になります。
何?官兵衛さんが原作以上に口下手で空気読めなくなってるって?
まあいいんじゃないでしょうか、官兵衛さんだし(
早朝の投下で失礼しました。
それでは、また。

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/23(火) 07:37:47.45 ID:6UPepKc3
up乙、なんと言う投下ラッシュ

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/25(木) 21:18:46.14 ID:88txMWs2


45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/25(木) 22:12:30.18 ID:09Au+wAy
ゼロの使い魔続巻刊行決定だと

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/25(木) 22:25:03.58 ID:pbm2V5UL
まあ新刊つっても公式アンソロだろ

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/25(木) 22:57:59.42 ID:2Zdn8RBO
ttp://www.zero-tsukaima.com/

ヤマグチノボルがプロット残したんだから期待しようぜ、な?

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/25(木) 23:23:23.08 ID:hsRqos6D
復活と聞いて久々に来てしまった
やっぱりどんな形だろうと完結するのは嬉しいよ

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 00:34:37.55 ID:QIqV4rOP
不覚にも泣きそうになった。だがこんなに嬉しいことはない

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 04:07:24.95 ID:ezKUtkwj
誰がそのプロットを元に書くかによるな
虚淵玄なら安心できるが

51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 04:48:50.13 ID:LutDl/Fv
よかった……あと少し! ってとこで氏が召されてしまったからなあ……
これを気にこの界隈もにぎわってくれるといいんだが。

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 07:28:04.85 ID:oTTMx5v2
いらん子もプロット残してないかな…

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 10:55:41.47 ID:Z9Jo5VjE
>>50
血と硝煙の匂いに塗れたハルケギニアか……胸熱だな

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 17:07:12.10 ID:PhQFfMbe
ウロブチサンはな・・・
ティファがマミッたり、ブリミルの遺体が起きあがってラスボス化して襲い掛かってきたりしそうで
ルイズがなんか高次元の方に召されたりしそうだな・・・

だがよかった
これでサイトは家に帰れるんだな・・・

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 17:43:43.81 ID:Z9Jo5VjE
アルビオン7万と戦い瀕死の重傷を負って記憶を失うがマチルダに紙とペンを渡され
(ペンを握った途端、ペン先は滑るように動き出した。平賀才人、平賀才人、平賀才人……手は、指は、憶えていたのだ。)

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 19:28:27.03 ID:VanTVjED
>>53
そしてまた誰かが呟く、たまには火薬の匂いを嗅ぐのも悪くない…

こんな感じっすか?

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 22:56:10.63 ID:eRu3lHZi
どんな形でもいい
また見ることができる
こんなにうれしいことはない

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/26(金) 23:38:24.05 ID:DfLXRj8H
マジか
これマジか

エタらせてたの続き書こうかな…

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/27(土) 00:00:49.36 ID:AqIhQdAt
俺もせっかくだから書こうと思う

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/27(土) 00:47:30.75 ID:kL/Sfxwm
そして完全原作準拠の完全版アニメを希望するッ!

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/27(土) 01:30:45.26 ID:9HO9FD8n
今度はヒロイン全員参加での水着回OVAも希望する

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/27(土) 09:39:27.20 ID:k3DkPSPO
虚淵が続きを書いたらサイトとルイズが神様になっちまうだろ

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/27(土) 10:28:19.26 ID:B7xqrR/H
虚淵が続きとかいうネタはネタならネタらしくもうちょっとネタらしいネタネタな文体にするべきだと思うの

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/27(土) 16:51:42.62 ID:Vmt01cTa
というかスレがスレだしソレっぽく単発ネタで書いてみるといいと思うの

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 01:26:23.74 ID:SZNu0X5Q
ゼロの使い魔続刊決定と聞いて戻ってきたけど、本スレがまだ続いてて良かった…

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 08:16:19.16 ID:mSIL7Jhe
嬉しいですね
エタッテタ人たちもどって来てくれるかな

67 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:17:58.83 ID:VZOUBpaM
おはようございます。
大変すばらしいニュースがありまして、嬉しい限りですね。
これを機に、また二次創作に懐かしい方、新しい方が来られるとよいのですが。

よろしければまずは私から、10:30頃より続きを投下させてください。

68 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:33:45.45 ID:VZOUBpaM
 
トリステイン魔法学院で『土くれ』のフーケによる盗難事件が発覚した、その翌朝。

緊急会議が招集されて宝物庫に集まった教師たちは、呆然としたり、慌てふためいたり、憤慨したりと、今更のように大騒ぎしていた。
犯行が休日の夜に、それもごく短時間のうちに行われたために騒動に気付かず、今朝まで事件のことを知らなかった教師も多いようだ。

「『土くれ』のフーケだと……。
 ええい、下賤な盗賊風情が、魔法学院にまで手を出すとは! 我々をナメくさりおってッ!」

「衛兵は何をしていたのだ、むざむざと賊を侵入させて、職務怠慢ではないか!」

「いいや、賊とはいえメイジ相手では平民の衛兵などではどうにもならんのは仕方あるまい。
 それよりも当直だ、当直の貴族は誰だったのだね?」

「そうだ! ……ミセス・シュヴルーズ!
 勤務表によれば、当直はあなただったのではありませんかな?」

皆、宝物の奪還や犯人の捕縛に向けて建設的な意見を出すでもなく、責任の所在ばかりを追求している。
その槍玉に挙げられたシュヴルーズは、青くなって震え上がった。
メイジだらけの学院に押し入る賊などいるはずがないからと当直をサボり、宝物庫が破られた時には自室でぐっすり寝ていたのである。

もっとも、それはたまたま昨夜が彼女の当番だったというだけの話である。
貴族である自分たちが来るはずもない賊のために夜通し窮屈で居心地の悪い詰所にいる必要などないと、大概の教師が日常的にサボっていたのだ。
その事を学院長のオールド・オスマンから指摘されると、皆きまり悪そうに押し黙った。

「ごほん……、まあ、そういうことじゃよ。責任の所在など追及しておっても埒が明かん。
 わしも含め、油断しておった皆の責任であるとしか言いようがないからのう。
 それよりも今話し合うべきは、フーケとやらをいかにして捕え、奪われた宝物を取り戻すかじゃよ」

教師たちは皆、顔を見合わせて頷くと、真剣な表情で学院長の次の言葉を待った。
オスマンは窮状を救われて感激のあまり抱きついてきたシュヴルーズをやんわりと引きはがしつつ、コルベールの方に顔を向ける。

「ではまず、犯行の現場に居合わせたという者たちに話を聞こうかの。
 コルベール君と……、他にも何名かが、一緒に目撃したと聞いておるが?」

コルベールは頷いて前に進み出ると、自分の後ろにいる者たちを示し、彼女らにも前へ出るように促した。

彼の後ろには、ルイズ、キュルケ、タバサが大人しく控えていた。
その更に後ろの隅っこの方では、ディーキンが宝物庫の中の品々を興味深げに端から順に眺めている。
それにシエスタも、ディーキンの隣で畏まっていた。

「はい。目撃したのは私と、この5名です」

もちろん、コルベールは平民を人間扱いしないような、傲慢で偏狭な思想の持ち主ではない。
使い魔で亜人の身であるディーキンも数に入っているのは、これまでにディーキンがコルベールに与えた印象がそれだけ強かったからであろう。

「それと……、ここにはおられませんが、ミス・ロングビルも一緒でした」

「うむ」

オスマンは思案気に髭を撫でながら頷いた。

彼の秘書であるミス・ロングビルは自発的に志願して、夜も明けきらぬうちから本件に関する聞き込み調査に出てくれているのだ。
残念ながらフーケの姿は誰も見ていないが、盗み出したお宝の奇妙な杖を2本も持っているはずだから、それは人目についているかもしれない。
そのあたりを手掛かりに、近隣の農家などを回って情報を集めよう、というのである。

そんな彼女の機知と行動力とには、オスマンやコルベールらも感心していた。

69 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:36:39.25 ID:VZOUBpaM
 
「彼女はこのような非常時でも実に仕事が的確で、行動も早いのう……。
 まだ若くて経験も浅いというのに、まったく感心なことじゃ。
 わしら教師陣も、少しは見習わねばなるまいぞ?」

オスマンは改めてそんな訓戒めいたことを言っておいてから、ルイズらのほうに視線を移した。
特に、ディーキンをじっと興味深げに見つめている。
その視線に気が付いたディーキンは、軽く首を傾げて曖昧な微笑みを返した。

「……さて。では、君らの中から誰か、詳しく説明してくれるかね?」

ルイズら女子生徒たちは互いに顔を見合わせると、促すようにコルベールのほうを見た。
目撃者の中には教師がいるのだから、普通に考えて彼が説明するのが一番いいのではないだろうか。

しかし、コルベールは肩を竦めて、小さく首を振った。

「いや。君たちのほうが現場により近かったし、上空から見ていたから私よりもよく分かっているだろう。
 実際のところ、私は君たちがどうやってあの巨大なゴーレムを倒したのかも、まだよくわかっていないんだよ」

巷で有名な盗賊の、堅固な学院の宝物庫を殴り抜いたほどのゴーレムを学生が倒したという話に、他の教師たちがざわめきだす。
オスマンも、やや意外そうに眼をしばたたかせた。

「……なんと。あの宝物庫を破るほどのゴーレムを、倒したというのかね。
 それは確かに、君らの方から詳しい話を聞きたいものじゃな」

教師一同から注目を浴びたルイズらは、しかしきまりの悪そうな様子で、また顔を見合わせた。

実際のところ、自分たちはたまたま学校外から帰ってきたところで事件現場に出くわしただけで、フーケの姿を見たわけでも何でもない。
こんな事態だから、正直に説明しても遅くまで夜遊びしていた件で強く咎められることはあるまいが、特に有用な情報が提供できるとも思えない。
それに、ゴーレムをどうやって破壊したのかといわれても、正確なことは……。

3人がそんな風に困っていると、それまで首をかしげて様子を静観していたディーキンがつと進み出た。

「アー、もしよかったら、ディーキンがご説明するよ」

一部の教師から、使い魔風情がでしゃばるな、といった非難の声が、ディーキンとその『主人』であるルイズとに向けられる。
しかし、他の教師らからこの非常時にそんなことにこだわっている場合ではないと批判されて、それらの教師たちは居心地悪そうに押し黙った。

ディーキンはここ数日でいろいろな教師の下へ挨拶に回ったし、授業中も他のどの生徒にも劣らず真面目に勉強していた。
また、中庭や食堂などで休み時間に演奏をしたりして、大いに人気を博してもいた。
そのため、教師らの中にもディーキンに好意的な者がすでに大勢いるのだ。

キュルケやタバサもまた、それに賛同する声を上げる。

「そうね、ディー君ならお喋りも上手だし。うまく説明してくれると思うわ」

「適任」

ゴーレムを破壊するにあたって重要なサポートをしてくれたディーキンなら、一番よくことの成り行きを把握していることだろう。
ルイズやシエスタは、立場上みだりな発言は控えているようだが、表情を見る限りではやはり賛同しているようだ。

「ふむ……。君たちがそう言うのなら、わしは一向に構わんよ。
 では話を頼もうかの、ディーキン君」

ディーキンは嬉しそうにこくこくと頷いた。
それから少しばかり芝居がかったお辞儀をすると、胸を張って、自分たちと巨大なゴーレムとの遭遇と戦闘とを、活き活きと語り始める。

70 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:38:39.46 ID:VZOUBpaM
 
ディーキンの言葉はただの説明に留まらず、とても鮮明なイメージと叙事詩めいた臨場感を持っていた。
ごく短い話ではあったが、皆それに惹き込まれて、熱心に聞き入っている。
腕利きのバードは、優れた記憶力と素晴らしい表現力とを兼ね備えているのだ。

もちろん、話の中心となるのはキュルけやタバサらの活躍である。
詩人は自分自身のことを歌うのではなく、自分が見た英雄の武勲を歌うのだから。
まあ、今は説明のために話しているのだから、自分の使った《調和の合唱(ハーモニック・コーラス)》に関しても軽くは触れたが。

ディーキンがその技量を揮ってキュルケやタバサらとゴーレムとの戦いを語る間、聴衆は皆、実際にその場に立っているかのような錯覚を覚えた。
彼らは風竜の背に乗って飛びまわり、巨大なゴーレムによる地面や空気の振動を感じ、その体から発する土の匂いを嗅ぐことさえできた。
吟遊詩人がその魅惑的な語りを終えると、やっと周囲に薄暗い宝物庫の壁が戻ってくる。
それでもしばらくの間は、誰もが幻想の世界の余韻に浸っているようで、しんと静まっていた。

ややあって、オスマンが重々しく口を開く。

「……うむ。大変よく分かった」

その途端、ようやく歌の魔力から解放されたように、皆が顔を見合わせてざわめきだした。
オスマンは顔を綻ばせて、ディーキンとルイズらの顔を順に見つめていった。

「いや、よいものを聞かせてもらったわい。
 昨夜の君たちの格別の働きぶりが、実によくわかった。大手柄じゃ。
 教師一同、君たちに感謝し、大変誇りに思っておるぞ」

「いえ、ミス・ヴァリエールの使い魔のお蔭ですわ。
 さっきの話ではずいぶん控えめでしたけど、この子がいなければどうにもならなかったんですから」

キュルケは誇らしげに胸を張って髪をかき上げながらも、ディーキンの手柄にも言及するのを忘れなかった。
目を細めて屈みこむと、前に立っているディーキンの頭を撫でる。
同じく先ほどの話で主役であったタバサはといえば、キュルケの言葉に同意するように小さくひとつ頷いただけで、あとは無反応であった。

シエスタは大人しくしながらも、自分のことのように嬉しそうに顔を輝かせている。
ルイズの方は、何とも微妙な顔をしていた。
自分の使い魔が手柄を立てたのは誇らしいが、自分はろくに役に立てなかったので、やや嫉妬めいた悔しい思いも持っているのだ。

当のディーキンは、褒められたり撫でられたりには目を細めてくすぐったそうにしながらも、素直に喜んでいた。
その一方で、手柄云々に関しては、申し訳なさそうに肩をすくめてはっきりと首を横に振った。

「いや……、ディーキンは、何も手柄は立ててないと思うの。
 みんなで頑張って戦ったのは確かだけど、フーケっていう人には逃げられたし、手がかりも何も見つけられなかったからね」

ゴーレムを壊したところで、術者に逃げられてしまっては何の意味もない。
昨日の戦いは確かにちょっとした物語のタネにもできるような華々しいものではあったが、実際上は完全な失敗だったと言わざるを得まい。

「いやいや、咄嗟の状況で最前の判断などはできなくても仕方あるまい。逃げられてしまったというのは結果論じゃ。
 思いがけず出くわした危険な賊に恐れず立ち向かった、その勇気だけでも大したものじゃよ」

オスマンはそう労いながらも、改めて現状を顧みて、小さく溜息を吐いた。

「……とはいえ、確かに今の話の中にはフーケを捕える手掛かりになりそうなものはなかったのう。
 後は、ミス・ロングビルの調査の結果を待つしかないか……」

(ウーン……、どうしようかな?)

ディーキンは教師たちが打つ手がなく困っている様子を見て、はたして今、この時点で何かするべきだろうかと考え込んだ。

71 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:40:41.57 ID:VZOUBpaM
 
昨夜招請して頼みごとの内容を伝え、送り出したラヴォエラはまだ戻ってはいない。
そんなに早く用件を終えて戻れるとはディーキンも思っていないし、おそらくまだ時間がかかるだろう。

彼女が用件を終えて戻って来てさえくれれば、間違いなく真相を明らかにして犯人を見つけ出してみせるだけの自信はある。
しかし、あまり遅くなると宝物を売却処分されてしまったりして面倒なことになるかもしれない。
成功の確証はないが、昨日検討していた《念視(スクライング)》などの手段を試してみることをここで申し出るべきだろうか……。

そんな風に思案を巡らしているところへ、ちょうどよくミス・ロングビルが戻ってきた。

「ただいま戻りましたわ」

「おお。ちょうど良いところに戻って来たのう、ミス・ロングビル。
 思ったより早かったが、調査はもう済んだのかね?」

「いえ、予定していたすべての聞き込みを終えたというわけではありませんわ。
 ですが、有力そうな情報が入りましたので、早急にお知らせしようと調査を切り上げて戻って参りましたの」

皆の注目が集まる中、ロングビルはその有力情報について簡潔に説明していく。

何でも、ここ最近、近くの森の廃屋に怪しげな人物が出入りするのを見かけたという樵がいたらしい。
その男はいつも人目をはばかるようにローブなどを着込んで顔や姿を隠しており、頻繁に小屋へ大荷物を運びいれたり、運び出したりする。
そしてそういった荷物の中には、何やら高価そうな絵画やワイン、宝飾品らしきものなどがちらりと見えたこともあった……、と。

「……おそらくその不審人物はフーケで、件の廃屋は一時的に盗品を隠しておくための彼の隠れ家なのではないかと。
 もしそうであれば、そこに盗み出された杖が運び込まれた可能性は高いと思いますわ」

「ふむ……」

ロングビルの話が終わると、オスマンはしばしの間、じっとその情報を検討してみた。

確かに、その人物は不審だ。
フーケの可能性は、かなりありそうに思える。
たとえそうではなかったとしても、別の犯罪者かも知れない。

(なんにせよ、調査してみるだけの価値はあるかの)

そう結論すると、オスマンは目を鋭くしてロングビルに尋ねた。

「……その場所は、ここから近いのかね?
 君か、君が話を聞いたというその樵に、そこへ案内してもらうことはできるかの?」

「はい、馬を飛ばせば2、3時間程度の距離かと思いますわ。
 場所は聞いておきましたので、私が案内できます」

「よし、それだけわかれば十分に調査できますぞ!
 学院長、すぐに王室へ報告しましょう。その場所へ衛士隊を差し向けてもらわなくては!」

オスマンはそう提案したコルベールに顔を向けると、目を剥いて一喝した。

「馬鹿者奴! 王室なぞに報告して決定を待っておっては時間がかかり過ぎるわ、その間にフーケに逃げられたらなんとする気じゃ。
 仮に助力を仰ぐにしても、せめてその場所が本当にフーケの隠れ家かどうかくらい確かめてからでなくては話にもならんわ!
 ……第一、これは魔法学院の問題じゃ。当然我らの手で解決せねばならぬ。
 身にかかる火の粉も振り払えず、安易に王室に解決を丸投げしておるようでは、貴族として面目が立たんではないか!」

普段の好々爺然とした姿からは想像もつかないような迫力と威厳であった。

72 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:43:38.86 ID:VZOUBpaM
 
学院長の宣言に教師たちが困ったように顔を見合わせたり、恥ずかしげに俯いたりする中、ルイズとシエスタは力強く頷いていた。
キュルケは少しばかり肩を竦めてから頷き、タバサは無関心そうにしながらもこくりと小さく頷く。
情報をもたらした当のロングビルは、学院長の宣言になにやら満足げに微笑んでいた。

ディーキンはというと、そんな皆の様子を順に見つめながらどこか楽しそうにウンウンと頷きつつ、羊皮紙にメモなどを取っていた。
後でまた、この件を歌や物語の題材にしようと思っているのであろう。

オスマンはひとつ咳払いをすると、皆を見渡す。

「……では、調査に赴く有志を募るとしよう。我こそはと思う者は、杖を掲げよ」

そういわれて、教師たちが困ったように顔を見合わせる中……。

「はいは〜い、ディーキンは冒険者なの! こういうのはディーキンが行くよ!
 ええと、杖は……、これでいい? 他にも杖っぽいのは、いろいろ持ってるけど……」

真っ先にどこからともなく取り出した杖を目いっぱい背伸びして掲げたのは、当然のごとくディーキンであった。

いきなり亜人の使い魔が立候補したことに周囲の教師達が驚き、ざわめく。
中には使い魔の分際でと思っているのか、明らかに不快そうな様子の教師もいるが、先程の話の件があるので口には出さなかった。

そうなると当然、使い魔だけを行かせるわけにはいかぬとルイズも杖を掲げ、続いてキュルケやタバサも同行を申し出る。
さらにはシエスタも、恐縮そうにしながらも進み出て、どうか同行させてくださいと頼み込んだ。

そこまで話が進むと、ようやく教師の中からも声を上げる者が出てきた。

「あ、あなたたちは生徒ではありませんか!
 これ以上、危険なことに首を突っ込むのは止めて、教師に任せなさい!」

「平民が同行して何の役に立つというのかね!
 生徒や平民に任せるくらいならば、私が行こうではないか!」

亜人の使い魔から始まって、生徒や平民までが手を上げるのを見て、教師としての義務感に駆られたものか。
あるいは、単に参加者の数が増えてきたのでそれに勇気を得て同調したものか。
先程のディーキンの話を聞いて、魔力を増幅できるという彼の能力をあてにしている者もいるかもしれない。

一人、また一人と声を上げる者が増えてくるが、そこでオスマンが口を挟んだ。

「待ちなさい、そんなに大勢で行っても埒が明かん。
 必要以上の多人数でゾロゾロ移動しておっては何かと時間もかかり、フーケにも気取られやすくなろう。
 ここは、最初の方で名乗り出た君らに頼むこととしよう。昨夜の襲撃に居合わせた顔ぶれでもあることじゃ、丁度よかろう」

オスマンはそう言って、ディーキン、ルイズ、キュルケ、タバサ、シエスタ、それに案内役のロングビルの6人を指名した。

「馬鹿な! 平民などよりも、教師を加えるべきではありませんか!」

そう不平の声を上げた教師を、オスマンがじろりと睨む。

「そう思うならば、率先して平民よりも先に手を上げるべきではなかったかね、ギトー君?
 人の尻馬に乗って名誉のおこぼれにあずかろうなどという発想の者では、凶賊を捕縛するにあたってはいささか頼りないのう」

「な……、私は決して、そのような気など……!」

「そうかの? では、君の主張するように生徒や平民や使い魔などには任せず、一人で行ってくれるかね?」

そういわれると、ギトーはぐっと言葉に詰まってしまった。

73 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:46:45.38 ID:VZOUBpaM
 
普段教壇では『風』のスクウェアメイジとしての力量を誇り、風こそは最強の属性だと自負しているが、理論と実戦との違いくらいはわかっている。
ましてや世間を騒がす凶悪な盗賊と、実際に渡り合ってみせる自信など無かった。
実のところ、彼はオスマンの指摘したとおり、実際にフーケの巨大ゴーレムを破壊した実績のある生徒や使い魔の能力をあてにしていたのだ。

オスマンは鼻白んだ様子でそんなギトーから視線を外すと、ディーキンらの方に顔を向けた。

「我々は皆、犯罪者の捕縛などに関しては専門外じゃ。このような状況下では、教師も生徒も大して変わるまい。
 ましてや君たちは取り逃がしたとはいえ、昨夜既に賊を一度撃退しておる。後れを取ることはあるまい」

それからオスマンは、彼女らの能力の高さについて順番に評価していった。

「まず、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士である」

この言葉には教師たちも、また彼女の親友であるキュルケも初耳だったらしく、驚いていた。
シュヴァリエは貴族の称号としては最下位だが、金では買えず、世襲もできないだけに、純粋な実力の証となるのである。
タバサ自身は特に反応もせず、無感動そうにしている。

「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出じゃ。
 彼女自身も炎の魔法の優れた使い手であることは、昨夜の活躍で十二分に証明されておるな」

キュルケが得意気に髪をかきあげる。
ルイズも負けじと胸を張った。

「ミス・ヴァリエールは、名門ヴァリエール公爵家の令嬢じゃ。
 昨夜の襲撃に際しては真っ先にゴーレムを止めようとしてくれたと聞いておる。貴族の誉れじゃ。
 しかも、その使い魔は―――」

それからオスマンは、ディーキンとシエスタの方に視線を移す。

「……もちろん、素晴らしい能力の持ち主であることは先程の話で証明されておるな。
 それにもまして、我らの誰よりも早く杖を掲げ、助力を申し出てくれた高貴な精神の持ち主であることを忘れてはならん」

「ンー……、エヘヘ……」

ディーキンは場を弁えて口は挟まないでいるものの、ベタ誉めされてもじもじと照れている。
オスマンは最後に、ディーキンの後ろの方で畏まっているシエスタに目をやった。

「彼女は、シエスタという名の学院のメイドじゃ。
 先日グラモン家のギーシュと決闘をして引き分けたほどの剣の使い手であることは、覚えている者もいよう。
 その時の態度も名誉に悖らぬ、実に見事なものであった。
 万が一にも生徒らの身に危険が及んだ時には、必ずや彼女らを守ってくれるものと期待しておる」

シエスタはそれを聞くと、ハッと顔を上げて、驚いたようにオスマンの顔を見つめた。
まさか、学院長ほどの人物が、自分のような平民の使用人の名を覚えていてくれたとは……。

「異論のある者、この5名よりも優れた働きができると主張する者は、前に出たまえ」

しばらく待って誰も名乗り出ないのを確認すると、オスマンは改めて選ばれた5人に向き直った。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族としての義務に期待する」

74 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 10:49:39.47 ID:VZOUBpaM
 
ルイズとタバサとキュルケは、真顔になって直立すると、杖にかけて誓ってから恭しく一礼した。貴族の作法なのであろう。
ディーキンは少し首を傾げたが、自分も手にした杖でその動作を真似すると、竜族の守護神であるイオに誓った。
シエスタは使用人としての作法でスカートの裾をつまんで御辞儀をすると、自分の祖先にかけて誓った。

オスマンはそれを見て満足そうに頷くと、ミス・ロングビルに軽く頭を下げる。

「では、ミス・ロングビル。この子らの案内を、よろしくお願いしよう」

「はい、お任せください。ところで……」

ミス・ロングビルこと『土くれ』のフーケは、御辞儀を返すと上目遣いにオスマンを見つめた。
心の中で、舌なめずりをしながら。

「ん、何かね?」

「いえ、出かける前に宝物の杖の使用法をお聞きできないかと思いまして。
 宝物は強力なマジックアイテムなのでしょう?
 もしフーケがその場にいて、杖を使って来たら危険ですから、使うための手順などを判別できるようにしておくべきかと。
 それに、私たちが取り戻せれば、フーケを捕縛する際に杖を役立てることもできますわ」

フーケはそういい終えると、期待に胸を膨らませてオスマンの返事を待った。

意気込んでいるガキどもには悪いが、それさえ聞き出せれば今回の仕込みの目的はこの場で達せられるのだ。
もし今この場で杖の使い方を聞き出せたなら、後はこいつらをまったく無関係の廃屋に案内して、自分の見込み違いだったということにするまでだ。
お宝はほとぼりが冷めてからゆっくりと隠し場所から回収して、換金するなり、自分の手元に置いて使うなりすればよい。

本物の杖は一応、事前に見繕っておいたそれとは別の小屋に隠してある。
もし仮に本命のあるそちらに案内した方が都合が良さそうな話の流れになったとしても、臨機応変に対応できる。
昨夜はゴーレムをあっさり倒されたとはいえ、それはあのゴーレムが攻撃にまったく対応も再生もできない自動操縦だったからだ。
ちゃんと自分が操作をして対応したり、不意を打ったりすれば、たかが生徒や小柄な亜人ごときを自分が始末できないはずがあるまい。
無論、自分は殺人鬼ではないから、こいつらを始末しなくても済む状況なら無理に戦うまでもない。

万が一話がまずい方向に進んでどうにもならなさそうになったなら、最悪、実際に一旦杖を返してやってもいいのだ。
フーケは十分すぎるほどの余裕を持って、そう考えていた。
せっかく盗み出した杖は惜しいが、自分の正体さえばれなければ大事はない。

(なあに、自分はまだまったく疑われちゃいないんだ。
 一度返して警戒が厳しくなったとしても、また盗み出す機会くらいどうとでもして見つけてやるさ!)

「うーむ……、そうじゃな……」

オスマンはしばし躊躇ったが、確かに杖に関する情報の有無は大きいだろう。
生徒らの身の安全が掛かっているとあっては是非もない。
じきに重々しく頷くと、口を開いて杖に関する説明を始めた……。

75 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 11:58:54.53 ID:VZOUBpaM
 




(よしよし……、これだけわかりゃあ、十分売り物になる。
 感謝するよ、エロジジイ!)

オスマンの説明を聞き終えたフーケは、内心で快哉の叫びをあげた。

『破壊の杖』の方は、杖のあちこちを変形させて、銃のようにして使うらしいということだった。
そうするとやはりコルベールの考えた通り、マジックアイテムではない武器の一種なのかもしれない。

詳細は自分にも自信が無く、危険なので、緊急事態にならない限り絶対に使おうとはしないようにと念を押されたが……。
言われずとも、フーケにも実際に使う気はない。
買い手の前で扱い方を軽く説明できる程度にだけわかれば、それで十分なのだ。

そして『守護の杖』の方は、なんと手に持っているだけで自分に掛けられた大概の呪文の効果を防げるのだという。
絶対に防げるわけではなく、特に腕の立つメイジの呪文は防げない事もしばしばあるらしいが、それでも十分素晴らしい能力だろう。
必ずや素晴らしい高値で売れる……、いや、自分の手元において使ってもいいかもしれない。

ただ残念なことには、杖には他にも何か能力があるのだがその使い方はオスマンも知らず、本来の持ち主である友人しかわからないという話だった。
その能力もわかれば天井知らずの値が付くかもしれないのに、何とも口惜しい。

(まあ、このエロジジイにもわからないってんじゃあ、仕方がないね……)

とにかく聞くべきことはこれで聞き出せたのだ、もう用は無い。
あとはこいつらを何もない偽の廃屋に案内して、結局フーケの手掛かりは掴めなかった、ということにすれば……。

フーケがそう考えていたところに、横合いから生徒の使い魔だという妙な亜人が口を挟んだ。

「ええと、宝物の使い方がわからないの?
 それだったら、もしその宝物を取り戻せたら、ディーキンが使い方を調べてあげるよ――」

76 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/06/28(日) 12:00:14.50 ID:VZOUBpaM
今回は以上になります。

また、できるだけ早いうちに続きを書いていきますので、次回もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、失礼しました……(御辞儀)

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 16:33:36.82 ID:GsDIdSBN
おつ
活気でればいいな

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 18:34:19.98 ID:aAX2Wyaq
>>76


まさかこのスレがまだ生き残ってるとは…
ゼロ魔続刊出ると聞いて覗いて見たらちょくちょく投下もあるみたいだし

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 18:51:19.64 ID:UCp5a9gZ


80 :るろうに使い魔:2015/06/28(日) 21:08:42.16 ID:CAKWsINe
ディーキンの人さんお疲れ様です。そしてお久しぶりです。
新作決定と聞いて、すっ飛んでやって来ました。

もし大丈夫でしたら9時10分頃より投下開始します。

81 :るろうに使い魔:2015/06/28(日) 21:11:12.11 ID:CAKWsINe
それでは、始めます。

 トリステイン国内、チクトンネ街の中央広場のすぐ近くに『タニアリージュ・ロワイヤル座』はあった。
 豪華絢爛、煌びやかな様相を呈していたこの劇場に老若男女が集い、そして一つの劇が始まろうとしていた。
 タイトルは『トリスタニアの休日』。別々の国の王子と王女が恋に落ちるという、在り来りなストーリー。しかし若い女の人には人気とのことであり、
なるほど場内を占めるのはほとんどが女性であった。
 始まりを告げる音楽が奏でられ、皆が舞台の方を注目する中、それに紛れて二人の客が何やら話し込んでいた。
 一人は初老の男性。身なりからして貴族な彼の様子は、周りが女性だらけの部屋で少し浮いているような気がしないでもないが、
今は始まった劇の真っ最中。誰も気に留める人などいなかった。
 老人の貴族は、形だけでも劇を見ながら、呟くような声で隣の人物に言った。
「ウドウ・ジンエがしくじったそうですな」
 鵜堂刃衛…今トリステインに潜む、闇に蠢く暗殺者の名前…それを口にした老人は、どこか焦ったような感じで続けた。
「この失敗でまさか、私が裏で手びきしたことがバレるなんてことは……」
「それはありませんよ。ジャックがちゃんと証拠になるものは片付けたそうですから」
 そう答えるのは、まだあどけなさが残る、十歳にも満たなさそうな少年だった。少年は老人とは対照的な、どこか悪戯好きそうな笑みをしていた。
「だといいのだが…、まあ私も君たちの腕は買っている。特に奴…魔法も使えぬ雇われ傭兵の身分のくせに、中々どうして、強いのは確かだからな」
 老人は、刃衛のことを知っていた。この少年の正体も。そしてトリステインで起こっている、暗殺の真実のことも…。
「でも貴方が狩るべき標的の情報をこちらにリークしてくれたおかげで、随分やりやすい環境になっていたのも事実です」
 そんな、会話の応酬が、この劇場の広場にて堂々と行われていた。
 成程木を隠すなら森の中、人を隠すのも人混みの中に限る。ここでなら、余程のことがない限り目をつけられるような事はないと言えた。
「でもそれもここまで。『本当の標的』が見つかった今、この失敗が潮時と言えるでしょう」
「…というと、例の『人斬り』かね…?」
 老人が尋ねた事柄に、少年は軽く頷く。
「ええ。ですからこの暗殺劇も一旦中止。これからその『人斬り』を仕留めるのに力を注ぐ方針です」
「これで障壁はなくなるという訳ですな。まあ、あんなか弱い『お姫様』に、この国を引っ張っていけるとはとても思えませんからな。早く侵略でも何でもして欲しいものです」
 老人のその言葉を聞いた少年は、可笑しそうな感じで小さく笑った。
「貴方もどうして、中々に外道ですね。愛国心とかないんですか?」
「愛国心でお金は賄えませんよ。これから倒れる国にいつまでも媚を売っても仕方ありますまい」
 老人はそう言って、劇の様子を見やる。既に話の大半は終わりを告げ、今まさにクライマックスの場面であった。
「何せ、いずれこの国も『アルビオン』と呼ばれるようになるのですからな…」



            第四十五幕 『高貴な迷い猫 前編』



 その日は雨だった。雲一帯がトリステインの上空を覆い、その上からたくさんの水滴を街に向かって流していく。
 雲が厚かったのは朝からであったが、何しろ急に降り出してきたものだから、外に出ていた人々は、どこか雨をしのげる所はないかを探しているようだった。
「ホラ、何をボーッとしておる。早く注がんか」
「あ、はいはいただいま」
 そんな季節の雨を店の中で見やりながら、ルイズは今日も酔っ払いの男共相手にあくせくと働いていた。
 あの日以来、ジェシカに説教を受けたルイズは、まだどこか粗野な部分はあるものの、それなりの事には我慢するようになった。
 愛嬌はないから相変わらずチップは貰えないものの、それでも大事を起こすようなことはあまりしなくなったのだ。
「しかし、こう雨が続くと気が滅入りますわよねぇ」
「全くだ。まるで今の政治を体現するかのようだな」
 段々とコツも掴むようになり、それなりに働けるようにはなったルイズは、降りしきる雨の様子を見ながら、どこか呆けた感じで給仕をしていた。
(あれから何日経つんだろ…)
 気が付けば、あっという間だったなあ…とルイズは思った。

82 :るろうに使い魔:2015/06/28(日) 21:14:58.66 ID:CAKWsINe
 姫さまから連絡が入り、身分を隠してこのトリスタニアに来た日に全財産を失くして、この『魅惑の妖精』亭で働くことになって…。
 こうやってメイド服を着て給仕を始めたあの頃から、剣心とも離れ離れになって。イヤな事が余りにも多かったけど、まあそれなりに良い経験だったかなあ…と思ったりもした。
 だけど、いつまでもずっとこうしている訳にはいかない。今は戦の真っ只中なのだ。
 こうやって仕事で色々な客を相手にすると、否応にも戦争の話が耳に入ってくる。
 中には姫さまに対する誹謗中傷もあったりしたが、そう言った客の「生の声」もちゃんと、ルイズは報告に出していた。
 姫さまには辛いだろうが、任務だから仕方がないのだ。ルイズも少し辛かった。
 だがその話によれば、もうアルビオンに戦争を仕掛ける気なのだという事はほぼ確定のようであった。そんな時ルイズは思う。自分は「伝説の虚無の担い手」ということを。
 この力を姫さまに捧げると決心した今、自分もいずれは戦争の中に放り込まれるのだろう。死は怖くない。怖いとしたら役に立てずに死んでしまうかどうかだった。
 そんなことを考えてたルイズの前に、突如外から慌ただしい声が聞こえて来た。
「何、なんなの?」
「衛兵がたくさん来てるよ。怖〜い」
「またあの時の事かな?」
 と口々に話し合っている給仕達を尻目に、ルイズは窓から馬を走らせる兵隊たちの喧騒を見ていた。どうやら何かを探しているようだった。
 またタバサの事について聞きにでも来たのだろうか? ルイズは一瞬そう思ったが、それにしては尋常じゃないくらい騒がしい。余程のことがあったと見るべきだった。
「何があったんだろう…?」
 気になったルイズは、好奇心を抑えられずにスカロンと衛兵達の会話を聞きに行った。そして次の瞬間、とんでもない言葉がルイズの耳に飛び込んできた。
「姫さまが…行方不明……?」
 ルイズは居てもたってもいられず雨の中、外へと駆け出した。
「ちょっと、ルイズちゃん!!?」
「ルイズ! あんたどこ行くのよ!!」
慌てふためくスカロンとジェシカの声を、置き去りにしながら。
 そこにいる衛兵に事情を求めようとした矢先、その前を立ちはだかるように一人の少女が塞いだ。
「っ! あんたは…」
「お久しぶり、じゃなくて一日ぶりかしらね」
 そう、昨日の夜、ルイズを助けた少女…ジャネットだった。


 同じように、いつものように偵察に回っていた剣心もまた、急に降り出した雨の中を走っていた。ようやくそれらしい街路樹で、雨をしのげる場所を見つけると、そこで剣心は一息ついた。
「いきなり降り出したでござるな」
「そうだな」
 濡れた服の袖を叩いて水しぶきを落としながら、剣心はパラパラと降る雨雲を見上げて考えていた。
これからが本格的になってくるであろう、奴との戦いの事を。…正直あの刃衛相手に、どれだけ被害を出させずにいられるか…。
 一度剣を交えてみて、まだ実力は断然こちらに分があるのは分った。だが…今は街中。ここを戦の地にしてしまえば、それだけ多くの人を巻き込む結果になってしまう。
…いや、それだけならまだ良い方だった。
「……………」
剣心は、己の左手に刻まれているルーンを見る。その表情は普段ルイズ達には決して見せないだろう、深刻な様子だった。
 見かねたデルフが口を開く。
「相棒、そのルーンが気になるか?」
「…少し…」
「そのルーン、『ガンダールヴ』ってのはな…まあ相棒も知ってはいると思うが、どんな武器をも操り、達人のように振る舞えるよう強い力が刻まれている。
それは内なる想いが強ければ強いほど更なる高みに押し上げようとする効果もあるんだ」
 ここでデルフが、今まで口にしなかった疑問…背負われて少しだけでも振るわれて感じた疑問を剣心にぶつけた。
「お前さん…そのルーンの力を無理矢理抑え込んでいるだろ?」
「………」
 黙したまま、剣心は語ろうとはしない。それを代弁するかのようにデルフは続ける。
「俺が見た感じ、相棒がまともにルーンを開放したのは、アルビオンの時と姫さまん時だけだ。後は『土くれ』の時に一瞬位…か? 
何にせよそれ以外は相棒、今の今まで力の底上げを拒否するかのように抑えていたみたいだな。俺には分かるぜ」
 デルフの言葉に、剣心は少し考え込んでいると、不意に雨をしのいでいた屋根から出、それから少し歩いた。
「…? どうした相棒?」
 剣心は答えず、しばらく歩き続ける。

83 :るろうに使い魔:2015/06/28(日) 21:19:19.26 ID:CAKWsINe
 ここら辺りは、人気が少なく、廃れた店等が多い。
 その誰もいない廃墟の壁を前に立つと、剣心は腰を落とし、柄に手を添える。
「――――…」
 刹那、鞘走りで加速した『神速』の抜刀術―――それを壁の手前一寸で止めるようにして放った。
 その瞬間、壁に触れてはいない寸止めの状態にも関わらず、壁には亀裂が走り、その次には音をがなり立てながら壁が粉微塵に砕け散った。
 それを冷静に見据える剣心…その左手には、使い魔の証たる『ガンダールヴ』の文字が紅く光輝いていた。
 逆刃を返さないでこの威力…正直な所、剣心はこの与えられた強力な力を完全に持て余していたのだった。
剣心はルーンを使った記憶を振り返った。ギーシュの時の決闘、フーケの時の戦闘…あれは皆ルイズが絡んでいたからこそ、
この力は『ルイズ限定』で作用するものかとずっと考えていた。…けどそれは違った。
 全てはアルビオンでの時…ワルドと戦う最中、ウェールズを殺された瞬間…自分は確かに『戻って』いた。

 新たに決意し、もう二度と戻らないと思っていただろう『あの頃』に…ほんの一瞬だったが…間違いなく…。

 あれが、剣心の中でずっと気になっていた。
そして気づく。もしかして、このルーンは…。
「主を守るために、更なる力を与え続けようと働きかける効果があるようでござるな」
「何だ、そこまで分かってたのか」
 所謂『洗脳』の一種。常にルイズを守らせるよう作用し、その為にまだ伸びしろがあるなら、どんなことをしてでも上げてやろうと働きかける。
 それは怒り、そして悲しみなどが強ければ強いほど起こりうる現象だった。
 そしてその過程に、剣心は密かに一つの不安を覚えた。即ち……。


 これが原因で、また自分が『人斬り抜刀斎』に立ち戻ってしまうのではないのか。


 ルーンが光れば光るほど、『ガンダールヴ』は何故か剣心を『人斬り』の過去に戻らせようと働きかける。またいつ『あの頃』に戻ってしまうのか…それが剣心の中での大きな不安材料になっていた。
ここに来てから、ルイズを無意識に避けるようになったのも、これが原因だった。
「過去や因縁というのは…どうあっても…切っては切れぬものなのでござろうな」
 空に投げかける様に、剣心はその言葉を吐いた。壁にもたれかかり、これからどうするかを思案していた…その時だった。
 ピチャピチャと、水溜りの地面を走る足音が聞こえて来た。それは段々と大きくなり、こちらに向かってきている。
 剣心がそちらの方へ顔を向けると…フードを被った人が一人、まるで何かから逃げるような感じでやって来た。
「…どうしたでござるか?」
 何となく気になった剣心は、そのフードの人に声をかけた。その人は、息を切らしたような様子で剣心の声を聞くと、ゆっくりとこちらの方を向いた。
「…良かった。運良く会えたみたいですわね」
 安心したように言ったその声は、剣心も聞き覚えがある声だった。まさか…いやでもこの声は…。
「……陛下殿?」
「今はアンとお呼びくださいな。ケンシン殿」
 声の主…アンリエッタはそう言ってフードを取ると、端正な笑みを剣心に向けた。



 その同時刻。アニエスはある一人の貴族を訪ねていた。
 高等法院のリッシュモンという男…国の法を扱う機関を動かす立場にいる男の屋敷にやって来たアニエスは、門を叩いて来訪を告げた。
 扉を開けた小姓に、アニエスはこう言った。
「女王陛下の銃士隊、アニエスが参ったとリッシュモン殿にお伝えください」
 小姓は、疑問に思いながらも急いでリッシュモンを呼び出しに行った。それから数分経って、小姓がアニエスを屋敷に招き入れた。
「全く…一体何事だ?」
 突然の急報に、不機嫌な様子を露わにしながらリッシュモンはアニエスを睨んだ。
 アニエスは、依然無骨な表情を変えることなく、急報の内容を知らせる。
「…単刀直入に言います。陛下がお消えになられました」
「何!? かどわかされたのか!!」
 表情を一変させ、食ってかかるリッシュモンを、アニエスは宥めた。
「落ち着いてください。只今総力を挙げて調査中です。つきましては戒厳令の許可を」

84 :るろうに使い魔:2015/06/28(日) 21:23:40.18 ID:CAKWsINe
「一体君らは何をしていたんだ? 前にもこんなことがあったじゃないか!! 君らは無能を証明するために新設されたのかね!?」
 声を震わせて、リッシュモンはアニエスに怒鳴り込んだ。それでもアニエスは淡々した口調で話を進める。
「必ずや、陛下を探し出してみせます。この汚名をすすぐべく、このアニエス、命をかける所存です」
「ならば絶対に見つけ出せ!! でなければ全員縛り首だとそう思え!!」
 リッシュモンは仕方なく、戒厳令の許可書をアニエスに渡した。
 アニエスは帰る間際…ここで初めて怒気を含んなような声で、リッシュモンに一つ尋ねた。
「そう言えば…『ダングルテールの虐殺』は、閣下が立件なさったと仄聞したのですが…」
「ふん、それがどうしたというのだ? それにあれは正当防衛だ。虐殺などと人聞きの悪い言葉を使うな」
 何を言い出すんだ、といった感じでリッシュモンは睨めつける。
「……いえ、何も」
 後ろ姿だったアニエスは…ほんの一瞬だけ殺気と恨みを篭った目をして、そのまま静かに屋敷を出た。


「…ふん、あの成り上がりが」
 アニエスが帰った後、しばらくの間その扉を睨みながらリッシュモンは呟いた。
「それで、どうなのだ? 本当に陛下はかどわかされたのか?」
 独り言のように喋るリッシュモンに向かって、今度は別の声が聞こえてきた。
「いや、ジンエはまだ動いてませんし、僕達の標的はあくまで抜刀斎ですからね」
 それは、いつぞや劇場でリッシュモンと話していた、あの少年だった。
「成程、ではこの騒動は…」
「大胆なことをしますね。この国の姫さまは」
 クスクスと笑いながら、少年はいつの間にかリッシュモンの隣に立つ。
 リッシュモンも、最初こそ焦ったような様子だったが、この状況の真意を理解すると、鋭く歪んだように口元を広げた。
「姫さまも大きくなられて…まさかこの私にペテンをかける程に成長されるとは…」
 そして直ぐ様頭の中を整理する。わざわざこのことを知らせに来たということは、既に向こう側は自分が『内通者』だという証拠でも掴んでいる筈だ。
 ふむ…。としばらく考え込んでいたリッシュモンは、ふと少年の方を向いて尋ねた。
「つきましてはダミアン殿。ここは一つ私の依頼を受けて頂くということはできないだろうか?」
「別に構いませんよ。料金はその分貰いますが」
 金の高が多ければ、その分有利な方へつく。二重依頼されれば、どちらも最低限の事はこなす。今のところダミアンという少年はそう考えていた。
「何…そんな難しいことでも今の依頼をひっくり返すようなことでもありませぬ」
 そう前置きしながら、リッシュモンは話を続ける。
「私の悪事が露見した以上、もうこの国に私の居場所は無いでしょう。元よりこの国を捨てるつもりでしたのでその事に未練はありませんが…。
しかしこの屈辱を晴らせぬままおめおめと引き下がるというのも些か不愉快というもの」
 凶悪な笑みをリッシュモンは浮かべながら、ダミアンに告げた。
「そこで、アルビオンが失敗した誘拐事件というのを…いっその事私の手で叶えてあげようと考えましてね」
「まあ、それくらいなら構いませんよ。しかし貴方はつくづく外道ですね」
 最期の最期でこの国の女王を拉致するといった言動を聞いて、ダミアンが可笑しそうに笑ったが、リッシュモンはいえいえ、とばかりに手を振った。
「最後に姫さまには痛い目に遭ってもらおうと思うのですよ。世の中そうそう自分の思い通りにはならない、ということを身をもって教えてあげようと…ね。これも親心というものです」

85 :るろうに使い魔:2015/06/28(日) 21:29:23.13 ID:CAKWsINe
今回は以上です。ちょっと短めで済みません。
後編はなるたけ早く上げますのでもう少しお待ち下さい。

それではまた、これを機にまたここも活発になるといいですね。

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 21:56:30.75 ID:Q9NX5M/2
乙です。
原作よりリッシュモンが上手か、ここからどう話が転ぶのか期待

87 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:07:33.01 ID:ytScShEQ
ゼロの使い魔の続刊決定、とても嬉しいニュースです。
最後までのプロットは遺されているとは聞いてましたが、遂にこの時が来たという感じですね。
俄然やる気が出る中で、投下させてもらいます。開始は20:10からで。

88 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:10:41.34 ID:ytScShEQ
ウルトラマンゼロの使い魔
第六十六話「よみがえれ才人」
凶剣怪獣カネドラス
隕石小珍獣ミーニン 登場

「ゲエエオオオオオオ!」
 トリスタニアは、今まさに、またも怪獣に狙われる危機の真っ只中にあった。
 今度の怪獣は、前に湾曲した長い一本角から危険な輝きを放つ、見るからに恐ろしげな怪獣。
その名はカネドラス。宇宙を渡り歩き、生命のある星を見境なく襲撃する、外見に負けないほどの
凶悪怪獣である。それがトリスタニアに入り込んだら、世にもおぞましい惨劇が発生するだろう。
 しかしカネドラスは、トリスタニアを囲む平原で立ち往生していた。その理由は、彼の前に
精悍なる勇士が立ちはだかっていてそれ以上進めないからである。
 銀色と緑の輝きを反射する巨躯の勇士は、もう皆さんご存知のミラーナイト!
「ゲエエオオオオオオ!」
 カネドラスはハルケギニア侵攻を邪魔するミラーナイトを排除しようと、猛然と突っ込んでいく。
しかし力任せの突進など、流麗なる技の使い手であるミラーナイトの前では無謀無策でしかない。
『はぁッ!』
 事実、ミラーナイトはカネドラスの突進の軌道を見切り、相手の喉に手刀を入れて弾き返した。
急所に鋭い一撃をもらったカネドラスはむせながらよろよろ後退する。
「ゲエエオオオオオオ!」
 接近戦が駄目ならとばかりに、カネドラスは怪獣らしく口から高熱火炎を吐き出した。
大地も焦がしそうな灼熱の炎が迫る!
 しかしミラーナイトは防御にも優れる。己の前にディフェンスミラーを展開し、火炎を易々と
受け止める。カネドラスの攻撃は、これも通用しない。
「ゲエエオオオオオオ!」
 ここに至り、とうとうカネドラスは自身の最大の武器の使用にふん切った。フック状の両手を、
頭頂部の一本角に沿える。
 すると、角がカネドラスの頭から離れて回転しながら宙を飛び始めた!
 このアイスラッガーよろしく空を飛ぶ角こそが、カネドラスの一番の武器、ドラスカッター。
切れ味はビルも簡単に真っ二つにするほど鋭く、かつ速い上に自動でカネドラスまで戻るので
何回でも使用できる、殺人ブーメラン。かつてウルトラマンレオは自力での攻略が難しく、
専用の特訓を行ったことがある。それほど危険な武器なのだ。
『むッ!』
 ドラスカッターはディフェンスミラーをも切断する。ミラーナイトも危険を感じ、咄嗟にジャンプして
カッターをかわした。だがドラスカッターはカネドラスの頭に戻り、カネドラスはもう一度投げつける。
 この間髪を入れない連続攻撃で敵を消耗させていき、最後にはとどめを刺すのだ! ミラーナイト、危うし!
 が、ミラーナイトの実力はドラスカッターをも超えるものであった!
『やッ!』
 ミラーナイトは宙返りしながらカッターをキャッチ! 真剣白刃取りだ! 武器を奪われた
カネドラスは慌てふためく。
『とぁッ!』
 しかもミラーナイトは宙返りの勢いを活かしながらカッターを投げ返した。軌道の変わった
カッターは、カネドラスの眉間に突き刺さる!
「ゲエエッ!」
『シルバークロス!』
 着地したミラーナイトはすかさず必殺のシルバークロス。その攻撃により、カネドラスの方が
四つに切断されて絶命した。
 今日も見事凶悪怪獣をやっつけて、帰還していくミラーナイト。それをトリステインの
魔法衛士隊が見送っている。
「今回もウルティメイトフォースゼロに助けられましたね」
「うむ。我らがあの怪獣の相手をしていたら、多大な被害が出ていたことだろう。彼らには
真に世話になっている」

89 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:13:26.72 ID:ytScShEQ
 部下の一人の言葉に、隊長がうなずいた。カネドラスのカッターブーメランは実際、脅威であった。
仮にミラーナイトが来なければ、恐ろしい数の死人が出ていたことだろう。皆、ウルティメイトフォースゼロの
活躍に感謝している。
 ……だが、誰かが不意にこんなことを漏らした。
「けど、今日もウルトラマンゼロじゃなかったな……」
 その一言で、騎士たちは一様に重い空気に包まれた。
「……ゼロは、やはりあの戦いで死んでしまったのだろうか……」
「そうなら、ゼロを殺したのは俺たちだ……」
「俺たちが愚かだったから……大恩人のゼロが……」
 次々に後悔の言葉をつぶやく部下たちを、隊長が一喝する。
「やめんか! 今更悔やんだところで何も始まらんだろうが!」
「しかし、隊長……」
「……心苦しいのは私とて同じだ。しかし、我らはこのトリステインの民の盾。やるべきことは
命を守ることだけ。くよくよして、腕を鈍らせる訳にはいかん」
 部下を諭した隊長は、もうひと言つけ加える。
「それに、ゼロが死んだとは決まっておらん。あれほどの戦いだったのだ。負傷が激しく、
どこかで休息を取り続けているだけかもしれん。……それを始祖ブリミルに祈ろうではないか」
「そ、そうですね……!」
「始祖ブリミルなら、俺たちの願いを聞き届けてゼロをお救いくださるかもしれない……!」
 魔法衛士隊はどうにか一抹の希望を抱き、トリステインの王城へと帰投していった。
 ……アルビオンとの戦争……いや、降臨祭の惨劇から既に二週間が経過している。その間、
ウルトラマンゼロの姿を見た者は一人もいない……。

 ヤプールとゼロキラーザウルスの消滅後、トリステイン・ゲルマニア連合と神聖アルビオン共和国との
戦争は、意外な形で幕を閉じた。
 陣営の双方ともに戦い気力など残っておらず、途方に暮れていたところ……突如ガリアの大艦隊が
アルビオンに上陸。その圧倒的武力を背景に、アルビオン軍を瞬く間に制圧。戦争の終結を宣言した。
それまで一切の動向を見せなかったガリア軍が「勝者」となったのである。
 ガリア軍はそのままロサイスに駐屯、戦争の後始末を開始した。そして二週間経った現在、
臨時の調停のテーブルを開こうとしていた。当然アンリエッタもそれに出席する。
 時代がそうやって動いていく中、ルイズは……魔法学院にも帰っていなかった。

 ルイズはあれ以来、ロサイスの宿の一室にずっと閉じこもっていた。本当なら、最後に才人といた
シティオブサウスゴータがよかったのだが、サウスゴータはゼロキラーザウルスに破壊し尽くされて、
街中の店が未だ閉店していて、復旧の目途も立っていないのだ。
 ルイズは二週間経った今も、トリステインに帰国しようともしない。学友らや、実家、
ミラーナイトらからの説得にも全く耳を貸さず、ふさぎ込んだままだ。ここで帰ったら、
才人を置いていってしまうとでも言うかのように……。
 今のルイズの心にあるのは、後悔。それだけだ。どうして戦争をしてしまったのか。どうして父の
忠告に耳を貸さず、参戦したのか。どうしてつまらないことで意地を張り続けたのか……。自分が
積み重ねてきたこと全てが、ここに才人がいないことにつながっているように思えて、ずっと暗い
気分の中にあり続けている。せめて何か一つだけでも違っていれば、こんなことには……。
 ゼロが、才人が死んだなどと……信じられない、いや信じたくない。しかし完全に否定することが
出来ない。生きているのなら、いつものようにすぐに自分の元へ帰ってくるのではないか。
それがないということは……。絶対に認めたくないことだが、その考えを追い払うことが出来ないことが、
余計に暗い気持ちに拍車をかける。
「ばか。あんなに、名誉のために死ぬのはバカらしいなんて言ってたくせに……、自分でやってちゃ
世話ないじゃないの」

90 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:16:38.15 ID:ytScShEQ
 ルイズが今日も陰鬱として、ベッドの上に座り込んでいると……不意に、部屋の扉がノックされた。
 いつもはノックなど無視するルイズだが、今回は違った。初めに長く二回、それから短く三回……。
それは古くからの友の合図だった。
 ずっと絶望の淵にあったルイズは一瞬我に返り、扉に駆け寄って開ける。そこに立っていたのは、
果たしてアンリエッタ。
「ルイズ、二週間ぶりですね……」
「姫さま!? ど、どうしてこんなところに……」
 驚いたルイズは、はっと自分の状態に気がつく。丸二週間、ろくに身だしなみをしていないので
髪はぼさぼさだ。
「い、嫌だ。わたし、こんなひどい姿で……」
「どんな姿だろうと、構いませんわ。わたくしとあなたの仲ではありませんか」
 部屋の中に入ってきたアンリエッタは、誰の聞き耳もないことを確かめながら語る。
「戦争を収めたガリアが、各国の代表を招いて調停の会議を開くのです。それに出席するついでに、
あなたがアルビオンに留まっていると聞いて、こうして訪ねました」
 確認が終わると、アンリエッタは……バッとルイズに泣きついた。
「ああ、ルイズ! わたくしのお友達! わたくしは……何と恐ろしいことをしてしまったのでしょうか!」
「えッ!? ひ、姫さま……?」
 突然のことに面食らうルイズ。だがアンリエッタは構わずに、己の悲しみを吐露する。
「戦争の終結後……枢機卿にある書類を見せられました。それは……わたくしの推し進めた戦争で、
戦死した者たちの名簿です」
 戦死、と聞いて、ルイズは息を呑んだ。
「枢機卿は、わかる限りの者の名前を記してあると申しました。……あまりにも多くの人の名前が、
そこにありました……。全ての名前を読み終わった時には、夜が明けていたほど……。そこで愚かな
わたくしは、ようやく己のしでかしたことの重さに気づいたのです……取り返しのつかないことをした、と……!」
 アンリエッタは押し殺した声で、その人生の中で一番嘆く。
「わたくしが、彼らの命を奪ったのです……!  ああ、わたくしは何度地獄の業火で焼かれれば
足りるのでしょうか……」
「し、しかし姫さま……姫さまがアルビオン進撃をお決めになったことで、悪しき侵略者を
このハルケギニアより追い出すことに成功したではありませんか」
 アンリエッタがあまりに嘆き悲しむので、ルイズは自分の心情を抑え、彼女を励ました。
 しかし、アンリエッタは首を横に振る。
「それは間違いです。ヴァリエール公爵……あなたのお父上から呈された苦言の通り、専守防衛に
努めていても、それは出来たはずなのです。それなのに侵攻を押し通したのは、ウェールズさまを
利用した者たちへの報復……たったそれだけの理由でしかなかったのです。己のちっぽけな
感情一つのために……君主として守らなければならない民たちを、最もやってはいけない、
怪獣たちの犠牲にしてしまいました……」
 ひたすら自分を責めるアンリエッタを慰めようと思ったルイズだが、何の言葉も出てこなかった。
民が超獣に殺される様を、彼女自身の目で見ているはず。何を言ったところで、その悪夢の記憶を
紛らわすことなど出来まい。
「……名簿の最後には、あなたの使い魔さんの名前もありました。彼までも犠牲にするなんて……
ずっと、ゼロとしてわたくしたちを助けて下さっていたお方を……」
 そのひと言を聞き、ルイズは唖然とする。
「姫さま……サイトのことに気がついていらっしゃったのですか!?」
「グレンという、異世界からのウェールズさまの救世主と非常に親しいあなたたちを見ていれば、
そのくらいは予想がつきます。……ああ、わたくしははるばる異世界からわたくしたちのために
戦ってくださった彼らまでも、復讐の道具にしてました……。その罪を贖う方法すら、わたくしには
見当がつきません……」
 アンリエッタはひたすら泣き続ける。彼女が抑え切れない感情を吐き出す様子を、ルイズはただ見守り続けた。

91 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:19:55.86 ID:ytScShEQ
 やがて涙腺が枯れ果てると、アンリエッタはようやく落ち着いて顔を上げる。
「……失われた命は、もう戻りません。それだけは、この底なしの愚か者のわたくしでもわかります。
その贖罪になるとは思えませんが……わたくしは、王宮中の王家の財産を処分してお金に換え、
戦死者の遺族への弔意にあてました」
 それを聞いて、再度驚愕するルイズ。
「お、王家の財産を!? 真ですか!?」
「当然です。それでも飽き足らないことを、わたくしはしたのだもの……。残したのはこの王冠だけよ。
これがないと、誰もこんな愚かなわたくしを、王とは認めてくださらないでしょうから」
 アンリエッタの言葉に嘘など一つもないことを感じ取って、ルイズは恐れおののいた。
戦没者のために、そこまでする王など歴史上一人もいない。命を奪う意味をまるで理解しない者たちばかりだ。
 その中でただ一人、命の重みを知る彼女こそが、真の王……。ルイズはそう感じた。
「このあとの会議でも、わたくしはトリステインの利益を最大限に得ようと思ってます。
今日はあなたと話せてよかった……。そのための気力が湧いてきましたわ」
「ひ、姫さまのお役に立てたのならば、幸いです……」
 若干気圧されつつも頭を垂れるルイズ。そんな彼女に、アンリエッタは指摘した。
「ねぇ、ルイズ……あなたは、いつまでここに留まっているのかしら?」
「え?」
「わたくしが偉そうに言えたことではありませんが……いつまでも同じ場所で立ち止まってても、
何も始まらないわ。悲しみに押し潰されてしまいそうで、気持ちを整理する時間も必要だけれど……
いずれは、人はまた一歩を歩み出さないといけないものよ。わたくしは、グレンたちからそのことを教わったわ」
 グレン……ウルティメイトフォースゼロの仲間たち。彼らはどんな暗闇の中にいようとも、
その先に光があることを信じて、歩き続けている。ヤプールという絶望に打ち勝ったのも、
それが主たる理由だ。
「彼らはゼロが死んだとあきらめずに、彼の行方を今も探し続けていると聞いてます。わたくしも……
ゼロと、使い魔さんが死んだとは信じ切れませんわ。確証なんてないけれど、どこかで生きている、そんな気がします」
 と語ったアンリエッタは、ルイズの瞳を覗き込む。
「ルイズ、あなたはどう思うかしら。そして……自分はどうすべきと考えるかしら?」
「わ、わたしは……」
 今のルイズには、何も答えられなかった。頭の中がごちゃごちゃで、考えが纏まらない。
「……すぐにどうこうしろ、とはわたくしは言いません。あなたのことは、あなた自身で決めるものだもの。
でも……早い内に、あなたが一歩を踏み出すことをお祈りしてます」
 時間が来たのか、その言葉を最後にアンリエッタは退出していった。
 後には、座ったまま途方に暮れるルイズだけが残された。

 ……ルイズの前から姿をくらました才人。その才人は今、不思議な空間の中にいた。
『……あれ? ここは……』
 気がついた才人の視界に、まるでテレビの画面が映し出されるように、ある光景が展開される。
『こ、これは……』
『キャ――――――――オォォウ!』
『ぐッ……ぐぅぅッ……!』
 それは、ゼロが怪獣アントラーの突進を真正面から食い止めている様子。彼のカラータイマーは
ピコンピコン、と赤く点滅している。エネルギーが尽きかけている証だ。
 そして才人は、この光景に見覚えがあった。ハルケギニアの大地に召喚されたばかりの頃……
フーケを追いかけて、アントラーが出現した時のものだ。
『どうして、今になってこんな昔のことを……』
 才人は過去の記憶が目の前で展開されていることで、これが何か一つの考えに至った。
『これが、走馬灯って奴かな……』
 意識が途切れる前、何をやっていたかを思い出す。大いなる絶望、ゼロキラーザウルスを倒すために……
ルイズたちを助けるために……命を犠牲にしたのだった。
 あれで自分が生き残れるはずがない……。つまり今見ているのは、今際の走馬灯に違いない。

92 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:22:21.55 ID:ytScShEQ
『うわあああああああああああああああああああああああッ!!』
 目の前の光景が切り替わる。今度は、最初にアルビオンに赴いた時のこと……ガッツ星人、
テンペラー星人、ナックル星人の三宇宙人の集中砲火をゼロが食らって苦しんでいる。
『ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 また光景が変わった。今度はタルブ村での決戦。ゼロがブラックキングとキングジョーに
締め上げられている。
『ぐうおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
 その次は、円盤生物軍団に袋叩きにされているところ。
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――!!』
 その次は、デスフェイサーのネオマキシマ砲に押し切られて、壮絶な爆発に呑まれるところ。
『くっそぉッ! あんな奴らの好きにさせたままだなんて! このッ! このぉッ!』
 その次は、ヒッポリト星人の罠にかかって屈辱を味わわされながら固められそうになっているところ。
『うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 その次は、カブトザキラーのM87光線を食らって追い詰められているところ。
 全て、ハルケギニアに来てからの戦いの中での出来事だ。彼と一心同体の才人も当然経験してきたこと。
 これらを目の当たりにした才人がつぶやく。
『こうして見てみると……俺たちの戦いって、苦戦の連続だったなぁ……』
 ウルトラマンゼロはあのウルトラセブンの血を受け継ぐ、若いながらも凄まじい力を秘めた大いなる戦士。
しかし、実際の戦いはこのように、何度も敵に追い詰められてばかりだった。やはり実戦というものは、
ゼロほどの力があっても楽なものではないのか。
 そう考えた才人の前に、この記憶がよみがえる。
『くぅッ……一体どうなってるんだ……? 身体が重すぎる……!』
『! これは……!』
 雪山の中で、ゼロがアイスロンとスノーギランの二大超獣に追い詰められている。……いや、
ただ追い詰められているだけでなく、ゼロはこの時、明らかに不調だった。
 動きは非常に鈍く、技のキレはなく、光線技は相手まで届かない。いつもなら考えられないくらいに
力が弱っていた。
 そして、その原因というのは……。
『俺には何の異常もない。異常があるのは……才人、お前の方にだよ』
 そうなのだ。この時、ゼロには何も問題がなかった。問題があったのは、才人の方である。
才人が戦いに積極的でなくなっていたから、ゼロがそれに引っ張られて、力が出せなくなったのだった。
 そしてこれを思い出した才人は……ある一つの考えに至ってしまった。
『まさか……これまでのゼロの苦戦は……俺と合体したから……?』
 ゼロは非常に腕の立つ戦士。それがこうも何度も苦しめられたのは……自分が弱かったからではないのか? 
雪山の時だけでなく、本当は最初から……自分はゼロの足枷になっていたのではないか?
『そ、そんな! 俺のせいで、ゼロが苦しみ続けたなんてこと……そんなことはないはずだッ! 
誰か、誰か否定してくれッ!』
 その考えを振り払おうとする才人だが、その時……真っ暗闇の中に、ゼロの背中が浮かび上がった。
『ゼロ……?』
 その背中は……どんどんと才人から遠ざかって、小さくなっていく。
『待ってくれ! ゼロ、行かないでくれぇッ! お前がいなくなっちまったら、俺は、俺はどうしたら……! 
ゼロぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――――――――!!』
 必死に手を伸ばそうとした才人だが、身体が動かない。いや、身体の感覚もない。
 その間に無情にも、ゼロの背中は離れていき……闇の中に消えてしまった……。
 そして……。

「ゼロぉぉぉぉぉッ!!」
 目を覚ました才人は絶叫した。

93 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:24:16.36 ID:ytScShEQ
 ぜぇぜぇ、と荒い息をついて、ひと言発する。
「夢かぁ……」
 寝ぼけ眼から覚め、今自分の置かれている状況を把握しようとする。
 ここはどこだ? 見たことのない場所だ。こぢんまりとした部屋の中で、自分は粗末だが
清潔なベッドの上で寝ていたようだ。
 どうしてこんなところにいるのかは皆目見当がつかないが、一つだけわかったことがある。
「……俺、助かったのか……」
 自分は絶対に死んだものだと思っていた。が、しかし、こうして生きている。ここが死後の
世界という訳でもなさそうだ。
 安堵していると……目の前にいきなり、赤い何かがぬっと顔を出してきた。
「キュー?」
「……うわぁぁぁッ!?」
 ギョッと驚く才人。赤い何かは、全身赤いヒレみたいなものに覆われた厳つい顔つきの、
けれど鳴き声は小動物のような不思議な生物だった。
「ぴ、ピグモン!?」
 才人は思わずそう叫んだ。この生き物は、地球で人気の高い小怪獣、ピグモンによく似ているのだ。
しかしよく見ると、ピグモンよりもガタイがいい。近縁種か何かだろうか?
 そして気がつけば、近くにいるのは赤い生き物だけではない。周りには、大小男女取り混ぜた
子供たちが自分をじっと見つめている。どの子も薄汚れた服装だが、目はいきいきと輝いている。
「変な人だ! 怪しい人だ!」
「ミーニン、行こう!」
「キュッ、キュッ」
 子供たちは才人の奇声に驚いたのか、赤い生物を連れてあっという間に隣の部屋に逃げていく。
「お、おい……、誤解だ誤解!」
「変人だ! 近づいちゃダメな種類の人だ!」
 才人は言い訳しようとしたが、子供たちは止まらずに全員部屋を去っていった。
「なんなんだよ、あいつら……。それにしても、ここはどこなんだろう」
 はぁとため息を吐きつつも、今の自分の状態を確認する才人。確実に死んだと思われた自分が
生きていることが一番の疑問だったが、そこは魔法使いの世界だから、何が起きても不思議ではないと
適当に解釈した。
 それから自身の身体を確かめると……とんでもない変化に気がついた。
「な、ない!? ガンダールヴのルーンが……!?」
 左手の甲に、ルイズと契約してからずっと刻まれていたルーンが、綺麗さっぱりなくなっているのだ。
最初から何もなかったかのように。
「ゼロ、大変だ! 俺のルーンが……ゼロッ!?」
 咄嗟に手首のウルティメイトブレスレットに視線を移したが、更に驚くべきことに気がついた。
 ブレスレットのランプに、光が灯っていないのだ。これはゼロの命の輝きも示している。
それが消えているということは……まさか!?
「う、嘘だろゼロ!? 俺たち、一心同体じゃないのかよ! 俺だけ助かって、お前は助からなかったなんて
ことはありえないだろ! 何とか言ってくれよ、ゼロぉぉぉッ!」
「あ、あの……大丈夫?」
 腕のブレスレットに必死で呼びかけていたら、子供が逃げていったドアから、涼しげな美声が聞こえた。
 はっ、とそちらへ振り向くと、ドアから流れる星の川のような金髪の娘が現れた。
 その娘は、非常に胸が大きかった。

94 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/06/30(火) 20:25:00.33 ID:ytScShEQ
今回は以上です。
そのバストは豊満だった。

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/30(火) 22:48:27.56 ID:d9xQhQYE


96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/30(火) 22:53:21.51 ID:fvqfF4L6
オツカレサマドスエ!(違)

97 :ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2015/06/30(火) 22:54:40.37 ID:LafQ6gZv
ウルゼロの人、乙でした。
私のほうも、先ほど28話を避難所のほうに投下してきましたのでよろしくお願いします。

それにしてもめでたいですね。21巻が、私も楽しみです

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/30(火) 23:32:20.68 ID:pYA6nAI4
乙です
まさかここでエルザがロマリア側の手下で出てくるとは、このリハクの目を(ry
というかこの世界だと、吸血鬼は元々は別の星から移住してきた宇宙人という設定もありそうな…

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/30(火) 23:32:26.03 ID:fvqfF4L6
おお、ウルトラダブル投下とは

ウル魔の人も乙です

100 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:21:09.30 ID:P++0Xa9N
夜分遅くに、失礼いたします。
よろしければ、2:30頃から続きを投下させてください。

101 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:30:01.29 ID:P++0Xa9N
 
先程編成されたばかりの対フーケ調査隊は、早速ロングビルの案内の下、件の小屋へ赴くことになった。

目的はその小屋を調べ、そこが確かにフーケの隠れ家であったなら、魔法学院より奪われた2振りの杖を捜索して奪還すること。
その上でもし可能であれば、フーケを捕縛することである。

魔法は目的地まで温存するべきだということで、一行はオスマンが用意してくれた馬車に乗った。
万が一の際にはすぐに外に飛び出せるよう、屋根の無い荷車のような馬車である。
御者は当然、平民であり学院の使用人でもあるシエスタが進んで引き受け、他の者は荷台に揺られている。

早く調査を行うためにも馬車よりシルフィードに乗っていく方がいいのではという案も出たが、ロングビルはいろいろと理由を挙げてそれに反対した。

自分も始めて行く場所なので、ちゃんと地上から道筋に沿って辿っていかないと迷うかもしれない。
竜、特に風竜が空を飛んでいると目立つので、フーケに警戒されかねない。
ミス・タバサの風竜は幼生なので、6人もの大人数では無理ではないまでも大変だろう。
どうせ既に一晩明けているのだから今さら少しばかり急いでも大差はないだろうし、心の準備をしながらゆっくり行った方がいい……。

その結果、彼女の意見ももっともだということで、馬車でのんびりと行くことに決定したのだ。
ディーキン以外の使い魔は小屋の調査や盗賊の捕縛、巨大ゴーレムの相手等、想定される事態には大して役に立たないだろうということで留守番となった。

もちろん、学院長秘書ミス・ロングビルこと『土くれ』のフーケの本当の思惑は、説明した内容とは別のところにある。

最初は、学院長から杖の使い方を聞き出せさえすれば、こいつらを本物の杖の隠し場所に案内する気などなかった。
ところが学院長自身にも、杖の使い方は一部分しかわからないという。
その時奇妙な亜人の使い魔が、自分なら杖の使い方を調べられると言い出したのだ。

最初はこんなガキにできるわけがないと思ったが、その後の話の流れで、こいつが先日インテリジェンス・ソードの素性を調べたとかいう話が出た。
今同行している平民のメイドが持っている剣が、そのインテリジェンス・ソードだということだった。

よく考えてみれば、こいつはガキとはいえ未知の亜人なのだ。
ハルケギニアのメイジでは調べられない、異国から持ち込まれたと思しき杖の正体を調べることができてもおかしくはない。
そう判断したフーケは、予定を変更して、一行を本物の隠し場所へ案内することにしたのである。

結論から言えば、その考え正しい。
少なくとも、ディーキンなら使用法を突き止められるだろうという点においては。
現物が手元にありさえすれば、たとえアーティファクトだとしても《伝説知識(レジェンド・ローア)》の呪文を使ってほぼ確実に使用法を判別できる。

(試させてみる価値はあるだろうさ……。
 なあに、杖が見つかったらうまいことその場で調べさせて、学院へ帰る前にまた奪いかえしゃあいいんだ!)

とはいえ、この選択によってある程度リスクが増すことは、フーケも認識している。

自動操縦に過ぎなかったとはいえ、昨晩自分の巨大ゴーレムを破壊してのけた連中と、下手をすれば戦いになるかもしれないのだ。
その時に備えて、馬車でゆっくりと向かう間に手の内を探ったり、打ち解けて油断を誘ったりしておくほうがいいだろう。

さらに、一番最悪なのは、こいつらに自分の正体を悟られた上に逃げられ、それを広められてしまうことだ。
そんな事態を避けるためにも、風竜という手強い上にいざという時には優秀な足にもなり得る使い魔には、なるべく同行してもらいたくない。

そういったもろもろの考えからの、この提案であった。

特に疑われる事も反論される事もなく、すんなりと通ったことにフーケはいささか気を良くしていた。
馬車の荷台に揺られながらそのことを思い返して、密かにほくそ笑む。

(ふふん……、こんなヤバい仕事を引き受けといて、ろくに危機感もない楽天的なガキどもを言いくるめるのなんざ、ちょろいもんだね。
 ま、私にとっちゃあ、いい年こいた純情ハゲや偉ぶったエロボケジジイだって大差無いんだけどさ!)

102 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:32:03.66 ID:P++0Xa9N
 
実際には、タバサがシルフィードを置いていくことにさほど難色を示さなかったのは、危機感の欠如からではない。
ディーキンがいれば、いざという時にはシルフィード以上に速い足を用意できることを知っていたからである。
となると、戦力にはなるが目立ちやすい巨体のシルフィードには、確かに来てもらわないほうがいいかもしれないという判断なのだ。
もちろんフーケには、そんなことは知る由もなかったが。

フーケは皆がくつろいだのを見計らってから、まずはしばらくの間、とりとめのない雑談をする。
その際には自分が貴族の名を無くした者であることなどもさらりと明かして、打ち解けた雰囲気を作った。
それからいよいよ、探りを入れるための本命の話を振る。

「……それにしても、昨夜の炎は見事なものでしたわね。
 ミス・ツェルプストーは、その若さでスクウェアクラスのメイジでいらっしゃるのですか?」

「えっ? ……ああ。
 ミス・ロングビルは、ディー君が話してたときには、まだ戻ってなかったんでしたっけ」

頭の後ろで腕を組んで外の景色などぼんやりと眺めていたキュルケは、一瞬きょとんとした後、納得がいったように頷く。
それから、悪戯っぽくディーキンの方に目をやった。

「ねえ、ディー君。悪いけどもう一度、ミス・ロングビルにも説明をお願いできないかしら?」

「オオ、お姉さんにも? もちろん、ディーキンはいつだってお話しするよ」

ディーキンは張り切って、もう一度昨夜の出来事を説明する。
今度は正式な会議の場ではないので、リュートの演奏なども交えて、より叙事詩めいた仕立てにしていた。
先程のもの以上に臨場感のある素晴らしい表現力の物語に、初見のロングビルはもちろんのこと、キュルケらも引き込まれて、うっとりと聞き入っていた。

「ミス・ヴァリエールの使い魔は、素晴らしくお話が上手ですわね。
 おかげで、よくわかりましたわ」

説明を聞き終えたロングビルは、他の面子と一緒に微笑んで拍手など送りながら、頭の中で考えをまとめていた。

なるほど、最近この使い魔が作った歌が人気だとか聞いていたが、実際にこの耳で聞いてみて納得がいった。
これほどの表現力なら、詩歌を歌わせればさぞ熱狂を呼ぶことだろう。
ぜひ聞いてみたいところではあるが……、

(この状況じゃ、そうもいかないね)

今の話によれば、優秀とはいえたかが生徒どもの攻撃が不可解にも自分のゴーレムを破壊できたのは、こいつのサポートのおかげだということだった。
おそらくは知能の高い亜人どもの使う、恐るべき『先住魔法』の一種か。なるほど、厄介なものだ。

だが、この亜人には杖の使い方を調べてもらわなくてはならない。
その後で杖を学院へ着くまでの間に穏便に奪い返すのは、かなり難しいだろう。
一旦返した後でまた盗み出すというのも、不可能とは思わないがまた色々と工夫せねばならず、危険で面倒だ。

自分は殺人鬼ではないが、こいつらを始末してお宝を確保するのが一番手っ取り早くて簡単そうなら、そうするまでのこと。
そうなると、まずはこの亜人を最初に仕留めることになるだろう。
最初にゴーレムへ有効打を与える手段を奪い、その後は自分自身がやられぬよう、また逃がさぬようにだけ気を付けて、全員始末するのだ。
自分の正体はなるべく明かさず奇襲で仕留めていきたいが、露見しても逃がさなければ問題はない……。

「……なあ、亜人の坊主よお。今日は、エン公はどうしたんでえ?
 おめえのしょってる、その荷物袋の中とかか?」

フーケが考えをまとめているところへ、シエスタの背負ったデルフリンガーが刃元の金具部分をかちゃかちゃと鳴らして口を挟んだ。

ルイズらはそう言われて初めて気が付いたように、ディーキンの腰を見た。確かに、彼は今、エンセリックを提げていない。
エンセリックとデルフリンガーは最近はよく一緒に置かれてお互いを話し相手にしているので、ディーキンが持ち運んでいないこともちょくちょくある。
しかし、見たところディーキンの腰だけではなく、馬車のどこにもエンセリックの姿はないようだった。

103 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:34:01.73 ID:P++0Xa9N
 
「ン……、ああ、エンセリックはちょっと……、その、他に用事があってね。
 今は、別の人について行ってるんだよ」

「あん?」

ディーキンが言ったことは、嘘ではない。
昨夜ラヴォエラに《次元界転移(プレイン・シフト)》でフェイルーンへ向かってもらった際、彼女に渡しておいたのである。
ラヴォエラに一通りの説明はしたものの、彼女一人でボスたちに十分な説明ができるかが不安だったからだ。

それに、彼女ではフェイルーンで万が一トラブルに巻き込まれたりした場合に、一人でうまく対応できるかも多少心配だった。
ラヴォエラはもちろん賢いし強いが、まだ経験の浅い若いデーヴァで、定命の者の世界には不慣れな面がある。
実際、ディーキンが最初に彼女と出会った時、彼女は初めての物質界での重要な任務に失敗して、アンダーダークのカルト教団に捕まっていたのだ。

まあ彼女らが出かけたすぐ後に、《送信(センディング)》でボスに彼女が行ったことを伝えて出迎えを頼んでおいたから、まず大丈夫だとは思うが。
とりあえず《送信》の呪文はちゃんと届いたし、ボスからの了解の返事も受け取った。

エンセリックの先日の予想が正しければ、この世界を他の世界と隔てる壁には一方通行のような性質があるのかもしれない。
その場合、出ていくことやこちらから呼ぶことはできても、外から入っては来られないという可能性もある。
だから、定期的にラヴォエラに《送信》を送り、向こうの返事を確認して、必要ならこちらから彼女を呼び戻すという段取りもしてある。
その《送信》は、アンダーダークで手に入れた一日一回限りのマジックアイテムで行っている。
したがって、もし向こうからすんなりと戻ってこられなければ、彼女に確認をとってこちらから呼び戻すのは、最短でも今日の深夜ということになる。
そういった点を考えると、残念ながら今回の探索には彼女の帰還が間に合う可能性は低いだろう。その間はエンセリックの助言も求められないわけだ。

(ナシーラみたいに、自分で準備して何回も唱えられれば楽だったんだけど……)

昨夜から、ディーキンは自分の能力の限界を痛感させられていた。

もし自分がナシーラのような熟達したウィザードであれば、手持ちを駆使してあれこれ工夫や手回しをするまでもなかっただろう。
ただ呪文書から必要な呪文を選び出して準備さえすれば、朝の段階でフーケの捕縛も宝の奪還も済ませてしまえたはずだ。
ボスへの連絡だって、マジックアイテムに頼ったりしなくてもどうとでもなった。

だが、バードには《送信》のような呪文は覚えられない。
たとえ覚えられたとしても、限られた習得枠の中で、そんな普段あまり使わないものを覚えている余裕はないだろう。

これまではボスなどの頼もしい仲間たちと共に行動していて、役割分担で自分に向いたことをしていたから、そう不便を覚えはしなかったのだが……。
しかし、こうして一人で何もかもやろうとすると、バードの能力の限界をまざまざと感じずにはいられなかった。
バードがいかに万能多芸だとは言っても、練達のウィザードの強大な魔法の力に比べれば、小賢しい器用貧乏の輩の域を出ない。

とはいえ、ディーキンは些か不便を感じはしても、とりたてて不満や不安は感じていなかった。

昨夜既にゴーレムを撃退したために、敵の脅威をさほど高いものとは思っていないというのもある。
だが何よりも、ボスやヴァレンらがいないとはいえ、自分の傍にはまだ頼もしい仲間たちが、英雄がいてくれるのだ。

ルイズやシエスタらの能力が自分自身や今までの仲間とは比較にならないほど低くて頼りにならないなどとは、ディーキンは考えない。
そんなことは、彼女らが確かに英雄の素質を持っているということに比べたら、何ら大した問題ではない。
偉大な英雄の素質こそは、どんなに強大なウィザードの魔法にも勝るものだ。

別に、ディーキンに客観的に他人の能力や状況を分析することができないわけではない。
ただ単に、これは彼にとっては明々白々な事実であるに過ぎない。

だって、英雄が盗賊に出し抜かれてそれでおしまいだなんて、そんな“偉大な物語”があるわけがないだろう?

「ちょっと、他の人って誰よ? あんたはまた、私に内緒で何か……、」

「アー……、その、ルイズには何も言ってなくて悪かったの。
 ちょっと急ぎだったから。けど、その人のことは、後で紹介できると思う」

104 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:36:04.28 ID:P++0Xa9N
 
昨夜、既にルイズが寝ている時に行ったので、話す暇がなかったというのは本当のことだ。
ラヴォエラのこととか、彼女に頼んでやってもらおうとしていることとか、詳しく説明し出せば長くなりそうだし。

それとは別に、エンターティナーとしてはサッと説明して終わりではなく、後でゆっくり楽しんでもらいたいから、というのもある。
本物の天使であるラヴォエラに会えれば、シエスタはきっと喜ぶだろうし。
ハルケギニアでは天使は伝説上の存在とされているようだから、ルイズらだって驚いてくれることだろう。

だから別に、ずっと秘密にしておく気はない。ちょっと後回しにしようと思っただけである。

「ふうん。でもディー君、これからフーケとまた戦うかもしれないのに、武器を持ってなくて大丈夫なの?
 まあ、武器なんてものがなくても、ディー君には魔法があるでしょうけど」

「うーん、ディーキンは、魔法だけでいいとは思ってないけど……。
 エンセリックの他にも武器はいろいろ持ってるからね。大丈夫だと思うの」

ディーキンは延々細かい説明をするのは避けて大まかな説明だけで話を切り上げると、目的地に着くまでリュートの演奏でも披露しようと申し出た。
この後には大事な調査があるのだ、今は英気を養うためにも、少しばかりリラックスしておいた方がよいだろう。

それからしばらく、ガタゴトと揺れる馬車の荷台の上で、ディーキンの演奏する澄んだリュートの音色が心地よく響く。
皆はしばしくつろいだ気分で風景など楽しみながら、それに耳を傾けていた……。





昼間だというのに薄暗い、鬱蒼と茂った森の入り口に差し掛かったあたりで、一行は馬車を降りた。
馬を繋ぐと、小道を分け入って森の奥の方へと進んでいく。

危険があるかも知れないので、夜目の利くディーキンが案内役のロングビルの隣に進み出て、周囲を警戒していた。
だが、特に何事もなく、しばらく歩いた後に、一行の目の前にやや開けた場所が見えてきた。

魔法学院の中庭ほどの広さがある、森の中の空き地といった風情の場所で、その真ん中のあたりにぽつんと廃屋があった。
元は樵小屋か何かだったらしく、朽ち果てた炭焼き用らしき窯と、壁板が外れた物置とが隣に並んでいる。
持ち主に放棄されてから、ずいぶんと時間が経っているようだ。

六人は空き地に進み出たりはせず、茂みに姿を隠したまま遠目にその廃屋の様子を伺った。

「ンー……? なんだか、もう長いこと、誰も使ってなさそうに見えるけど……」

ディーキンは小声でそう呟くと、首を傾げて、小屋の周囲の地面を遠目にじーっと眺めてみた。

情報が正しければ、あそこはただの宝の隠し場所であって、フーケが住んでいるというわけではないのだろうが……。
それにしても、小屋の回りにも、これまで通ってきた小道にも、頻繁に人が往来しているような様子は全然見えなかった。
しかし、情報提供者である樵の話によれば、フーケかどうかは別にしても、この小屋には割と頻繁に人が出入りしているはずだ。
それに、そのことに気が付いたという目撃者である樵自身も、この周囲に頻繁に来て木を切ったりしているはずなのではないか?

とはいえ自分は、一月前に歩いて行ったゴブリンの後を昨日振った新雪が上に積もった状態でも辿っていけるような、並外れたレンジャーとかではない。
別に《追跡》の専門家でも何でもないのだから、ただ単に足跡などの痕跡に気が付けなかっただけなのかもしれない。

だが、それにしても……。

そもそも、樵がしょっちゅう出入りしていて頻繁に目撃されるような場所なら、仮にも世間を騒がす大怪盗が宝の隠し場所に選ぶものだろうか?
それにフーケ自身は、何度も目撃されておいて、その事に気が付いていなかったのだろうか?

105 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:38:03.29 ID:P++0Xa9N
 
(……ウーン……、もしかして、秘書のお姉さんは騙されたのかも?)

ここに着く前にはあまり深く考えていなかったが、今にして思うと何だか不自然な話だ。
もしかすると彼女は、フーケ自身が故意に流した偽情報か、もしくは単なるガセネタを掴まされたのかも知れない。

(でも、もう来ちゃったんだから、とりあえず調べてみるしかないね……)

ディーキンは自分のそんな疑問を、口には出さなかった。

今更この場でそんなことをああだこうだと話し合ってみても、もう手遅れだ。
この上は情報が正しいことを祈って、とにかくあの小屋を調べてみるしかないだろう。
もしガセだとわかったら、すぐに引き返してもう一度情報収集をし直すのだ。

とはいえ、これだけ時間が経っては、フーケはもうとっくに普通の手段では手の届かない場所に行ってしまっているかも知れない。
その場合はやはり、ラヴォエラの帰還を待つか、《念視(スクライング)》などの手を試してみるしかないか……。

「計画を立てる」

タバサがそう言ったので、ディーキンはその思案を一旦打ち切って気持ちを切り替えた。
そして、他の五人と一緒にあの小屋を調査する算段を立てはじめる。

「基本的には、あの中に宝があるかないかを調べるだけ。
 問題はフーケがあの中にいた場合と、調査中に戻ってきた場合」

タバサはちょこんと地面に正座すると、枝を使って地面に絵を描いて、自分の考えている案を説明していった。

まず、誰かが偵察役兼囮となり、小屋のそばに赴いて中の様子を確認する。
大勢で近づいても気取られる危険が増すだけなので、一人でよい。
その間、他の面子はサポートのために待機しつつ、外から小屋に近づいてくるものがいないかを警戒する、というものだ。

「もし中にフーケがいれば、状況に応じて対応する。
 奇襲して倒せそうな状況ならそうして。
 無理そうなら、うまく誘導して外に出させてから、みんなで一斉に魔法攻撃する。
 小屋の中にゴーレムを作り出せるほどの土はないから、向こうも外に出て応戦したいはず」

仮に巨大ゴーレムが出てきても協力して破壊できることは昨夜既に証明済みとはいえ、出させずに片を付ける方が安全だ。

「そうね……、単純だけど、いいんじゃないかしら。
 で、誰が偵察役をするの?」

「すばしっこいのがいい」

キュルケの問いに、タバサがそう答えた。

この中ですばしっこそうなのと言えば、ディーキンとタバサか。
それに、先日の決闘ではシエスタの剣さばきもなかなか鋭かったが……。

さて誰にするのがいいだろうかと、皆で相談を始める。

「それなら、ディーキンが行くよ。
 ディーキンは使い魔だし、こういうのは男が率先して引き受けるものだって、よく言うからね」

透明化でもしてこっそり近づけば、透明化呪文が一般的ではなく、したがってそれを看破する手段にも乏しいこの世界では、まず気取られないだろう。
そう考えての申し出だったが、タバサは首を横に振る。

「あなたは、フーケのゴーレムが出てきたときにそれに対抗するために必要。
 みんなから離れて偵察に行かれるのは困る」

106 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:40:03.86 ID:P++0Xa9N
 
「ンー……、そう?」

正直なところ、別に今回は、ゴーレムを倒すのが目的というわけではないし……。
何も昨夜のようにキュルケをサポートして壊してもらわなくても、あの程度の強さなら倒す方法は他にいくらでもあるだろうが……。
まあ、この一行には身体的に弱いメイジが多いのだし、確かに自分は皆から無闇に離れない方が、危険な時に助けに行けて安全かもしれない。
どうしても行きたいわけではないし、他にいい案が出れば、特に反論しなくてもよいだろう。

そう結論して、ディーキンはとりあえず頷いた。

「じゃ、じゃあ、私が行きます。
 私は平民ですし、ゴーレムが出てきても魔法で攻撃とかはできないですから……」

次にシエスタがそう言って立候補したが、今度はディーキンが首を横に振った。

「シエスタ一人だと、フーケが中にいた時に危ないと思うの。
 それに、ゴーレムは倒せなくても、みんなの護衛とか、フーケを見つけて狙撃とかしてもらうことはできるでしょ?
 シエスタは暗くても見えるんだし、隠れてるフーケを見つけるのには向いてると思うよ」

正直なところ、今のシエスタの力では単独行動でメイジと戦うことになるかもしれない役目は危険だとディーキンは考えていた。
今は隠密に調査をしようとしているのだから、呪歌を歌ってサポートするというわけにもいかない。

「私が行く」

続いてタバサがそう言ったが、これにはキュルケが難色を示す。

「待って。昨日も私一人の炎じゃゴーレムを倒し切れなかったわ、最後にあなたが竜巻で止めを刺してくれたでしょ?
 それにあなたは風メイジで、空気の動きに敏感なんだから。フーケの接近を見張る役の方が適任よ」

……まともに呪文が使えないルイズでは、シエスタと同様フーケに出くわした場合に危ない。
かといってまさか、進んで任務を引き受けた自分たちが、案内役として同行してもらっただけのミス・ロングビルに任せるわけにもいかない……。

なかなか話がまとまらず、皆が困ったように顔を見合わせる。
ディーキンはちょっと考えをまとめると、軽く手を上げて皆の注意を引いた。

「ええと、ちょっといい?」

「何よ?」

「ディーキンは閃いたの。
 ディーキンは自分が行けばいいとは思うけど、確かにみんなの傍を離れないで守るのも大事だね。
 なら、小屋を調べてくれる別の人手を用意すればいいんだよ」

皆がそれを聞いて首を傾げる。

「……その、それは、ゴーレムなどを使って、ということでしょうか?
 残念ですがゴーレムでは宝物を識別できませんし、密かに調査などをするのにも向いていませんから……」

「人手って、まさか、誰かを雇ってやらせるとかいうんじゃないでしょうね?
 これは私たちが引き受けた仕事なのよ、無関係の誰かに危険を押し付けるなんて、!」
冗談じゃないわ
ロングビルとルイズの反論に、ディーキンは首を振った。

「ゴーレムを使うわけじゃないの。
 その、他の人に任せるっていうのはそうだけど、無関係な人に危ないことをやらせようっていうわけじゃないよ。
 ディーキンはそんなことをするつもりはないの」

ディーキンはそういうと、万が一にも小屋から見られたり聞かれたりしないよう、不審そうに顔を見合わせる皆を連れて、少し離れた場所に移動した。
それから、呪文構成要素ポーチの中から小さな鞄とろうそくを取り出してしっかりと片手に握ると、朗々と響く声で呪文の詠唱を始める。

107 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/05(日) 02:42:07.71 ID:P++0Xa9N
 
内心ではこの後の仲間たちの反応を予想して、少しわくわくしていた。
別に真面目な探索でお遊びをしようというわけではなく、実際に有効だと信じているからこの呪文を使うのだが……、でもきっと、皆驚くに違いない。
楽しくやることと真面目にやることとは、必ずしも相反するものではないのだ。

「《サーリル、ベンスヴェルク・アイスク――――》」

詠唱と共に、鞄とろうそくを握ったままの手を、複雑に宙に踊らせる。
それに伴い、火のついていないはずのろうそくからは幻のような炎が、鞄からは鱗粉のような輝く粉が舞い散り、魔方陣のようなものを形作っていく。

ルイズらはただじっと、それに見入っていた。

「《……ビアー・ケムセオー……、アシアー! クア・エラドリン!》」

数秒間の詠唱の後に最後の一言、招来したい存在の種族名を唱えて、焦点具を持った手を高く掲げる。
同時に《怪物招来(サモン・モンスター)》の呪文が完成し、ディーキンの目の前に魔方陣が浮かび上がった。
そこへきらめく燐光と共に理想郷の高貴な存在のエネルギーが招来され、瞬時に実体化する。
しかも、同時に3体も。

別に1体だけでもよかったのだが、使用した呪文のレベルの都合上、数が多くなったのである。

「……よ、妖精!?」

その姿を見たルイズが、思わずそう叫ぶ。
他の皆も、呆気にとられたり驚いたりした様子で、食い入るように招来された存在たちを見つめていた。

招来された3体は、すべて同種の存在であった。
それらは、ややいかがわしい趣の色鮮やかな衣類に身を包んだ、優雅で愛らしい女性の姿をしていた。
そのほっそりとした、尖った長い耳を持つ姿は、ハルケギニアで最も恐れられる亜人であるエルフにも似ている。

だが、エルフであろうはずはなかった。

その背丈はディーキンよりもなお小さく、僅かに60サントほどしかないのだ。
それに何よりも、肩からは蜻蛉と蝶の特徴を混ぜ合わせたような、透き通って煌めく、薄く長い翼が生えている。

その姿は、まさしく御伽噺に出てくるような妖精の類としか思えない。
しかるにハルケギニアでは、精霊は存在するが、妖精は伝説上の存在とされているのだ。
ルイズらが驚くのも無理はなかった。

ディーキンは皆の反応を一通り眺めて、くっくっと、満足そうに含み笑いをした。

「違うの、この人たちは――」

「あら私たちは妖精(フェイ)じゃないわ」
「もちろんエルフでもないわよ?」
「私たちはクア、エラドリンなの。よろしくね!」

ディーキンの紹介を待たずに、その妖精のような女性、クア・エラドリンたちは、楽しげな笑みを浮かべて口々にそう自己紹介をした。
そうして、きらきら輝くぼさぼさの短い銀髪を指で弄くりながら、くるくると落ち着きなく皆の間を飛び回っている。

「……アー、ウン。そうなんだよ……」

最後に胸を張って紹介しようとしたところで本人たちに先を越され、少しばかり当ての外れたディーキンは、ちょっと残念そうに肩を竦めた……。

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/05(日) 02:47:18.61 ID:3TuyH0Nb
支援

109 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/05(日) 03:07:16.38 ID:P++0Xa9N
 
プレイン・シフト
Plane Shift /次元界転移
系統:召喚術(瞬間移動); 7レベル呪文
構成要素:音声、動作、焦点具(対応する次元界毎に決まった種類や形の、小さな二股の金属棒)
距離:接触
持続時間:瞬間
 術者は自分自身や、互いに手をつないだ同意するクリーチャー8体までを、他の次元界へ転移させる。
この呪文では到着地点を正確に定めることはできず、意図した目的地から5〜500(5d100)マイル離れた地点へ現れることになる。
なお、この呪文はクレリックにとっては5レベルだが、ウィザードやソーサラーにとっては7レベルの呪文である。
 アストラル・デーヴァはこの呪文と同等の効果の疑似呪文能力を回数無制限で使用できるため、本編でディーキンはラヴォエラを連絡役に立てた。
疑似呪文能力には焦点具も不要なため、ハルケギニアに対応する金属棒を彼女のために用意してやる必要もない。
ただし、この呪文だけでは目的地からは外れるし、またアストラル・デーヴァには人探しをしたり瞬間移動をしたりする能力はない。
そのため、同時に後述の《送信(センディング)》で仲間に彼女の出迎えを頼んだのである。

センディング
Sending /送信
系統:力術; 5レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(短い良質の銅線1本)
距離:本文参照
持続時間:本文参照
 術者は自分のよく知っている特定のクリーチャーに、相手がどこに居ようとも日本語にして75字以内の伝言を送り、即座に返信を受け取る。
対象は術者のことを知っていれば、誰がメッセージを送ってきたのかに気が付く。
対象のクリーチャーが術者と同じ次元界にいない場合にはメッセージが届かないことがあるが、その可能性は通常は5%だけである。
ただし、その次元界の局地的な状況によっては、その確率が更に悪化する可能性もある。
なお、この呪文はクレリックにとっては4レベルだが、ウィザードやソーサラーにとっては5レベルの呪文である。
 ディーキンがボスに連絡を取るだけならこの呪文ですぐに可能なのだが、短いメッセージしか送れないため、詳しい状況の説明には向いていない。
また、マジックアイテム頼りでしか使用できないので、続けて何度も発動することもできない。
そのため、この呪文はラヴォエラを使者に立てる際の簡易連絡に使用し、詳細説明は彼女とエンセリックに任せたのである。
 なお、本作のディーキンは一日一回この呪文を発動できる、メッセンジャー・メダリオンと呼ばれる魔法のネックレスを持っている設定になっている。
これはサプリメント「アンダーダーク」に掲載されているマジックアイテムで、価格は10,000gp(金貨1万枚)である。

サモン・モンスターT〜\
Summon Monster T〜\ /怪物招来1〜9
系統:召喚術(招来)[可変(本文参照)]; 1〜9レベル呪文
構成要素:音声、動作、焦点具(小さな鞄と小さなろうそく)
距離:近距離(25フィート+2術者レベル毎に5フィート)
持続時間:術者レベル毎に1ラウンド(解除可)
 術者は他次元界のクリーチャーを1体招来する。そのクリーチャーは術者の指定した地点に現れ、術者の命令に従って即座に行動する。
招来されたクリーチャーは、特に指示が無ければ術者の敵を最善を尽くして攻撃する。意志疎通が図れるなら、他の行動を指示することもできる。
なお、この呪文によって呼び出されるのはクリーチャーのエネルギーが実体化したもので、殺されてもそのクリーチャーの本体が実際に死ぬわけではない。
ハルケギニアの呪文でいえば偏在のようなものであり、たとえ殺されても本体はまったくの無傷である(多少の不快感は感じるだろうが)。
 この呪文には1レベル〜9レベルまでのバージョンがあり、それぞれのレベル毎に招来可能なクリーチャーのリストがある。
また、本来のリストより1レベル低いリストのクリーチャーを1d3体招来するか、それより低いリストのクリーチャーを1d4+1体招来することも選択できる。
本編でディーキンが呼び出したクア・エラドリンは3レベルのリストにあるクリーチャーで、より高レベルの呪文で招来したので複数体出現したのである。
 この呪文を[悪][善][秩序][混沌][地][水][火][風]のクリーチャーを招来するために使用すると、招来呪文はそのタイプの呪文になる。
例えば、クア・エラドリンは[善][混沌]のクリーチャーなので、それを招来したサモン・モンスターは[善、混沌]の副種別の呪文である。

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/05(日) 03:10:53.38 ID:3TuyH0Nb
手遅れかな?

111 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/05(日) 03:37:47.93 ID:P++0Xa9N
今回は以上になります。
またなるべく早く続きを書いていきたいと思いますので、次回もどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、失礼します……(御辞儀)

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/05(日) 11:05:37.15 ID:S7HWzP2H
ディーキン読んだおかげで久々にNWNやり直してるわ
脳筋パラディンなんで宝箱殴って壊しまくり

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/06(月) 22:40:09.53 ID:fqi2We8E
ディーキンのひとの元ネタすごい気になってんだけど
避難所の元ネタ質問スレってまだ生きてるの?

114 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/06(月) 23:52:17.62 ID:L1ntsP6l
>>112
自分の作品がきっかけでやり直していただけているというのはとても嬉しいですね。
NWNは罠を解除できなくても宝箱は適当に壊せば済むんですよねえ。
ダメージ受けても休息は取り放題だし。

>>113
元ネタ等に興味を持っていただけるのは大変に嬉しいです。
この場ででも避難所ででも、質問を頂ければ可能な限りお答えしたいと思います。
避難所の元ネタ質問スレは最後の書き込みが4年くらい前みたいですが、一応まだ生きているのではないでしょうか?

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/06(月) 23:57:47.22 ID:T9ALH+Eh
上げないと質問しても気づいてもらえないかもしれないよ

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/07(火) 07:42:44.05 ID:/6xR7HX9
ディーキンレベルの「バードの知識」なら、「フーケの正体」達成値40ぐらいでわかるんじゃないかしら。

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/07(火) 22:06:08.91 ID:LLf4jSYV
『バードの知識』達成値30で『邪悪な魔導師の子供時代の綽名』が判るレベルなので、
現在活躍中の盗賊の正体だと達成値20でいけそうな気がする。

118 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/07(火) 22:18:39.81 ID:6GMtzGmc
>>116 >>117
うーむ、なるほど。そういった解釈もあるかもしれませんね。

しかし、『邪悪な魔導師の子供時代の綽名』はトリビアルな知識とはいえ、秘密でもなんでもなく知っている人は知っていることです。
一方でフーケは現在活動中の盗賊とはいえ、その正体は現時点では本人以外誰も知らないことです。
まったく知る者がおらず、一切世間に出回っていない情報をバードの知識で得るのは不可能か、そうでなくとも極めて難しいことだと考えています。
ロングビルの本名がマチルダで元アルビオンの貴族である、という情報ならバードの知識でわかるかも知れませんが。

まあ、納得がいかなければディーキンがデメイチだったのだという解釈でもよいかと思いますw

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/08(水) 04:50:58.31 ID:zrymrlLj
世界完全に違っちゃうとバードの知識の判定自体許可しないんじゃないかなぁ
異世界の伝承やらってバードの知識の範疇外な気がするけど

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/08(水) 07:00:28.97 ID:EChpMMzJ
エピックってウォールオブフォースの「隙間」を探してすり抜けるような奴らだから、
異世界からの断片的な知識を拾い集めるとかしてても不思議じゃないと思うけど。
プレーンシフトしたからバードの知識使用不可ね、って裁定はバードに厳しすぎると思う。

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/08(水) 08:15:36.63 ID:zrymrlLj
シナリオの根幹にかかわるとこだしこの場合
完全別世界ってのも確かにそうだからGMにそう言われてもしゃあないかなぁ、と
まあシエスタいる時点でちょっとあれなんだけど

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/08(水) 21:05:04.53 ID:OVBDE15c
>>120
異世界はともかくバードの知識はなんでも知れちゃう万能スキルってわけでもないしな
情報収集や知識判定で入手出来る情報なら場所を問わず入手出来るという感じ

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/09(木) 07:41:44.32 ID:dHv67DVs
続きはこっちでやろうぜ

【D&D】ダンジョンズ&ドラゴンズ167【3版系】 [転載禁止](c)2ch.net
http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1434221360/

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/09(木) 09:28:38.13 ID:twDyo2eZ
俺も書きたいんだけど、もしもしやスマホじゃなあ……
ルイズに若い姿に戻った大ニース様が召喚されたらって話と、暗黒皇帝ベルドが召喚されたらって話、ノートになら書いてるんだけど、PCじゃないとしんど過ぎる

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/09(木) 12:29:04.90 ID:SIt9oALu
>>124
懐かしいな、ロードスか
個人的にロードス好きだし、面白そうだから頑張って書くんだ

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/09(木) 13:21:27.90 ID:twDyo2eZ
>>125
無茶言うなw
それに大ニースの話も暗黒皇帝ベルドの話も、黒歴史ノートに平行して書いてはいるが、まだノート十ページずつくらいしか書けてないし
追加どナシェルとかウォートも書きたくなっちゃったから、更に話を書くのが遅れるし
そもそももしもしだと、PCより文字数制限厳しいんだけよ……

127 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:43:57.36 ID:4bnpOPl8
こんにちは、暗の使い魔です。
遅くなりましたが、ゼロの使い魔続編決定おめでとうございます。
もう続きが読めないと諦めていた矢先の吉報、とても嬉しく思います。
ノボル先生の原作には及びもつきませんが、これからもss投稿の方、頑張っていきたいと思います。

よろしければ18時50分から投稿させてください。

128 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:50:03.64 ID:4bnpOPl8
その日の朝、教室に集まったルイズのクラスメイト達は、目を丸くしてそれを見ていた。
「いでっ!いでででっ!オイ、引き摺るなクソッタレ!オイ!あだあっ!」
床に全身を擦りつけ、段差にゴトゴトとぶつかりながら、黒田官兵衛は目前を歩む主人に抗議の声を上げていた。
官兵衛の手枷に繋がれた鎖を引っつかみ、ツカツカと教室内を突き進むのは、全身から不機嫌のオーラを発する少女ルイズ。
そして犬の散歩よりもむごい体勢で、その後を引き摺られる官兵衛。
みると官兵衛は、髪の毛は焦げてちぢれており、顔や肌は煤で汚れていた。
ルイズは、そんな官兵衛に目もくれず、不機嫌そうにドスンと席についた。
「ちょっ……何やってるのルイズ?」
美しくロールした金髪の少女、香水のモンモランシーがルイズに尋ねた。それにルイズは前を向いたまま答える。
「しつけよ」
「しつけって、何したの彼?」
モンモランシーの言葉に、代わりに官兵衛が答える。
「ああ、この娘っ子は昨晩夢見が悪かったらしく、小生の所へ――」
「おだまりっ!!」
ルイズが鎖を強く引くと、官兵衛が机横の階段から転げ落ちた。
ウゲとかゴゲとか叫びながら、官兵衛は教卓の方へ転がり落ちていく。
キュルケが面白そうにルイズに話しかけた。
「あらなに?怖くなってダーリンのベッドにでも忍び込んだの?」
「ンなわけないでしょうが!こいつが私をたたき起こして、挙句の果てに品の無い言葉で侮辱したのよ!」
「品の無い言葉?」
キュルケが首を傾げた。
いったいどんな言葉なのだろうか、と興味をもったキュルケが、下の方で転がってる官兵衛にしなだれかかった。
「ねえダーリン、貴方も大変ね。気性の荒いヴァリエールに理不尽にも虐げられて。
良かったらこの微熱に胸の内を明かしてみない?」
「お、おう」
二つのメロンを押し当てられながら頬を染め、官兵衛は喋りだす。
「昨晩あの娘っ子が怒り出したから、よっぽど夢見が悪かったと思い、シモの心配を――」
その瞬間、官兵衛の目前が爆発した。キュルケはそれを読んでいたらしく、とっさに机の陰に隠れる。
「なぜじゃあああああああっ!!」
放物線を描いて官兵衛が飛ぶ。そして頭を黒板に叩きつけられ、その場でうずくまった。
見ると、ルイズが顔を蒼白にし、震えながら杖をこちらに向けていた。どうやら彼女が口封じに爆発を放ったようだった。
ルイズはダンダン!と乱暴に階段を駆け下り、助走をつけると跳躍。
動けない官兵衛に、華麗に、軽やかなるドロップキックを見舞った。
「ぶぎゅっ!」
官兵衛の頬に二つの靴裏が激突する。壁と靴裏に挟まれ、官兵衛の顔がゴム鞠のように変形した。
「こんの……!無駄にデカイ図体の大馬鹿犬ッ!」
しゅたっ、と華麗に床に着地し、膝立ちでキメるルイズ。官兵衛の頭の周りに、黄色いヒヨコが舞った。
彼女は狩人が矢をつがえるが如き速度で、かばんから鞭を取り出すと、散々に官兵衛に打ち下ろした。
「犬ッ!ばか大型犬!なにツェルプストーに喋ろうとしてるのよッ!あんたはワンとでも喋っておけばいいのよ!コラ!」
彼は朦朧とする意識の中、そんな凶暴な主人から四つんばいになって逃げ惑った。
それを追い掛け回し、散々に叩くルイズ。
「いだっ!やめろお前さん!降参!降参といえばわかるか!?」
そんな二人を、クラスの皆は唖然として見つめていた。
その時だった。
「ゴホン……授業を始めてもよろしいかな?ミス・ヴァリエール」
官兵衛を踏みつけるルイズの前に呆れた表情で、ミスタ・ギトーが立っていた。

暗の使い魔 第十四話 『アンリエッタ現る』

「いたたたた。畜生あの娘っ子、絶対許さんっ」
官兵衛は教室の隅にある彼の定位置に座り込みながら、授業を受けるルイズを睨んでいた。
今教室では、『疾風』の名を持つ風メイジ、ミスタ・ギトーの講義が始まっている。
長い黒髪に漆黒のマントを纏った、冷たい雰囲気のギトーは、若いのになぜか生徒達から人気がない。
前述した不気味な雰囲気もあるが、その主な理由は彼自身の性格にあった。

129 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:52:01.08 ID:4bnpOPl8
ギトー曰く、最強の系統、それは風に他ならない。
風は全てをなぎ払う。火も水も土も、そしておそらく虚無でさえも、烈風の前では立つことすら適わない。
それが彼の持論であるのだが――
「ミス・ツェルプストー。君の得意な炎を私に放ってみたまえ」
彼は、座席に座るキュルケを指すと言った。
「後悔しますわよ?」
「構わん。全力で来たまえ。そのツェルプストー家の赤毛が飾りでないのならな」
ギトーが挑発すると、キュルケの表情から小バカにしたような笑みが消えた。
キュルケが胸元から杖を引き抜いて目の前にかざす。瞬間、ぶわっと彼女から熱気がほとばしり、真紅の長髪が逆立った。
官兵衛はその様に、ほうと思わず感嘆の色を示した。
遠目からでもわかるその熱の凄まじさ。それはかつて戦国の世でも目にした、炎を扱う武将達。
その彼らの放つ熱気に勝らぬとも劣らぬ代物であった。
天海との戦いでは遅れをとったが、それでも戦場では一線級で活躍できるであろう。
そんな彼女の実力を垣間見た官兵衛であった。
キュルケが詠唱をすると、右手に灯った炎が一気に1メイル程の大きさに膨れ上がる。
手首を軽く胸元に引き寄せ、それを押し出すように膨れ上がった火球をはじき出す。
見るも巨大な燃え盛る炎が、ギトーに絡みつかんとした。
だがギトーはそれを避ける素振りも見せず、剣のように杖をなぎ払う。
瞬間、勢いを持った炎がいともたやすく掻き消え、烈風が吹き荒れた。
そして、炎の向こう側に居たキュルケはその風を喰らい、吹き飛ばされてしまった。
それを冷ややかに見つめながら、ギトーは言い放つ。
「理解したかね諸君、これが風だ。全てをなぎ払い、また悪しきものから身を守る盾ともなる」
生徒を犠牲にしてまでその己の系統の力強さを説く。
それがギトーのやり方であり、また彼が生徒達からの人気が無い理由であった。
「そしてもう一つ。風が最強たる所以は……」
ギトーが杖を掲げ、低く呪文を詠唱し始める。
「ユビキタス・デル・ウィンデ――」
しかしその時……。教室の扉がガラッと開け放たれ、珍妙ななりをしたコルベールが現れた。
頭には馬鹿でかいロールした金髪のカツラ。胸元にレースやら刺繍が施されたローブと、やたらとめかしこんだ格好であった。
「ミスタ?」
ギトーが怪訝な顔でコルベールを見つめる。
「あややや、ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!」
「授業中です」
ギトーがコルベールを睨みながらそういうも、コルベールは続ける。
「えー!今日の授業は全て中止です」
すると、その言葉に教室中から歓声が上がった。
コルベールが、お静かにとばかりに両手で騒ぎを制し、もったいぶった調子で言う。
「皆さんにお知らせですぞ」
仰け反りながらコルベールが続けようとする。
しかし仰け反った瞬間、彼の頭の上のカツラがずるりと滑り、床に落ちた。
あ、と口を空けてその様を眺める官兵衛。
禿げ上がった頭部が光り、どこと無く哀愁漂わせるのを見て、官兵衛は切ない気分になった。
そんな空気に、所々からくすくす笑いが起こる。
一番前の座席に座っていたタバサが立ち上がり、コルベールの頭部を指差し一言。
「滑りやすい」
その瞬間教室は爆笑の渦に包まれた。こらえきれなくなった生徒達が腹を抱える。
「あなた、たまに口を開くと、言うわね」
キュルケが笑いながらタバサの肩を叩いた。コルベールが顔を真っ赤にして怒鳴る。
「ええい!黙らっしゃい!小童どもが!貴族はおかしい時はこっそり下を向いて笑うものですぞ!」
コルベールあまりの剣幕に、教室はひとまずおさまった。
「おほん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、よき日であります。恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、
我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、
この魔法学院にご行幸なされます」
その言葉に隣に座っていたルイズがハッとなったのを、官兵衛は見逃さなかった。
コルベールは、アンリエッタ姫殿下歓迎の式典を催す事、生徒らに正装を促し、門に整列する事を告げると、うんうんと頷いた。

130 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:53:19.35 ID:4bnpOPl8
「(姫殿下ね……)」
官兵衛は、門前に整列した生徒達に混じりながら、その様子をどこか他人事のように眺めていた。
官兵衛の戦国の世でも、姫という身分は民衆にも多少の人気がある。
例えば伊予河野の隠し巫女・鶴姫は姫御前と呼ばれ、民衆並びに兵士達から絶大な人気を誇っている。
生まれつき、未来を見通す不思議な力を持っており、伊予河野の象徴としても崇拝されている。
また、かつての魔王・織田信長の妹君であるお市も、その容姿から虜にされる者々も多い。
妖しくもこの世のものとは思えないその美貌は、鶴姫とは別の方向で、純粋に兵士達の尊敬と畏怖を集めていた。
その様に、ひとえに姫といってもその支持され方は様々である。
官兵衛は、この世界では初めて目にする姫殿下とやらが、どのように扱われているのか興味があった。
最も、日ノ本地方の姫君と、一国の姫ではそのありようは大分差があるであろうが。
アンリエッタとやらはこの大層な歓迎式典を見れば、その人気のありようは一目瞭然である。
金銀プラチナのレリーフがかたどられた豪奢な装飾の馬車が敷地内に入ってくるのを見て、官兵衛はそれに注目した。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーーーりーーーーっ!」
衛士の合図とともにガチャリと扉が開いた。白髪の丸帽をかぶった男性があらわれ、王女の手をとる。
王女の登場に生徒達は一斉に沸き立った。王女の可憐な花のような笑顔に、周囲の生徒らからため息が漏れるのが聞こえる。
成程確かに美しい、と官兵衛は柄にも無く素直にそう思った。
しかし、官兵衛が気になったのは王女の手をとった白髪の男性、マザリーニ枢機卿であった。
彼こそが、トリステインの政治と実務を一手に引き受ける人物。
平民の血が混じっていると噂され、『鳥の骨』と揶揄されるてはいるが、実質的なトリステインの指導者は彼であった。
時々平民の間でも話題に上がる為、官兵衛もその名前は知っている。
「(奴さんが恐らくマザリーニだな……)」
成程、年老いてはいるがその眼光はまったく衰えてはいない。
そして一身で政治の修羅場を執持ってきたことが、それ相応の雰囲気を醸し出していた。
このトリステインを落とす計略をする上で最も邪魔になるのがあの男だろう。官兵衛は無意識にそう考えた。
最も、今の官兵衛にはそれを行う力も理由もないのだが。
官兵衛は緋毛氈のじゅうたんの上を歩むアンリエッタとマザリーニ、その周囲に目を凝らした。
後方をグリフォンに跨った、つば広帽子の貴族が続く。王宮直属の魔法衛士隊の隊長である。
「(あの男を片付けるには、こいつ等が一番厄介かもな……)」
一糸乱れず整列行進する魔法衛士隊の様を見て、官兵衛は物騒にもそう思った。官兵衛はふと周りを見回す。
貴族の生徒らは憧れの表情で、その魔法衛士隊の行進を見守っている。
特に女子生徒などは、隊の先頭を歩くつば広帽の男が気になる様子で、皆一様に頬を染めていた。
成程、確かに男前といえば男前だが……。
「(何かムカツクな!)」
官兵衛はそう思った。彼は自分の境遇と比べると、格段に華やかで恵まれている魔法衛士隊の面々が気に入らなかった。
「(畜生、小生だって天下取ればこんなもんじゃないぞ。お前さんらなんかよりもずっと高みだ!)」
そう思いながら、悔しげに枷を見やるのだった。
「おいお前さん」
なんだかイライラしてきた官兵衛は、ルイズに話しかける。しかし……ルイズは答えない。
なにやらぽ〜っと頬を染めながらある一方向を凝視している。
官兵衛がその方を見やると、やはりその方向には魔法衛士隊の隊長の姿が。
「(こいつもそのクチか!畜生!)」
ますます気に入らない。どいつもこいつも華やかな方に行きやがって、と官兵衛は歯軋りした。
この時のルイズの様子が、他の女子生徒のそれとは微妙に違う事に気付かずに。
 
その夜、官兵衛は自分の寝床の上で、ボロ布を手に一生懸命あるものを磨いていた。
ごしごしと、両手で丹念に汚れを落とす。黒く光るそれは擦るたびに輝きを増し、見る見るうちに姿を変えた。
「よし!できたぁっ!」
パシンと手を打ち、官兵衛はふぅと息をつく。
官兵衛の鉄球が嬉しそうにキュインと光沢を放った。
綺麗になった鉄球を愛おしそうになでる官兵衛を見て、壁に立てかけられた一振りの剣が愚痴をこぼす。
「あ〜いいよなぁソイツは。俺様もそんくらい丁寧に磨かれたいぜ」
「お前さんだっていつも磨いてるだろうが。それなのになんで錆び錆びのままなんだ」
官兵衛は深くため息をつきながらデルフリンガーを眺めた。
「それより相棒、ほっといていいのか?あの娘っ子」

131 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:54:27.71 ID:4bnpOPl8
「ああ?あいつがどうしたって?」
「昼ごろからずっとあの調子じゃねぇかよ」
デルフリンガーの言葉に、官兵衛はふとベットに腰掛けたルイズを見やった。
そこには、なにやら虚ろな表情でぼけっとしているルイズがいた。
時折立ち上がっては部屋の中をウロウロと歩き回り、またベットに座りこむ。
そして、官兵衛が妙に思い声を掛けても、一向に反応しないのである。
落ち着きが無いその様は、昼間のアンリエッタ歓迎式典の時から続いていた。
「はっ、知った事か!」
鼻を鳴らしながら官兵衛は言う。
官兵衛は昼間の騒ぎのせいかほぼ今日一日、ルイズと口を利いていなかった。
わけもわからず怒りを買い、散々犬呼ばわりされて虐げられたのだ。内に怒りを秘めた官兵衛は、無視を決め込んでいた。
そんな官兵衛を見かねてデルフリンガーは言う。
「いいのかい、一応主人だろ?こういう時は声の一つでもかけてやらにゃあ」
「お断りだ。またなんの因縁ふっかけられるかわからんからな」
「そうかい」
そんな官兵衛に、デルフは何も言わなかった。
官兵衛はやる事が無いのか、暇そうにあくびをしながら寝る体制を整えている。
と、その時だった。ルイズの部屋のドアが不意にノックされた。
それもただのノックでは無い。初めに長く二回、次に短く三回。規則正しいノックであった。
官兵衛が妙に思い身を起こす。ルイズが我に返り、トトト、とドアに駆け寄った。
そしてドアを開くとそこに立っていたのは、真っ黒な頭巾を深く被った一人の少女であった。
少女はあたりを見回した。そして自分ら以外に人の気配が無い事を確認すると、さっと部屋に入りドアを閉めた。
「あなたは……?」
ルイズが驚いた顔で少女に問いかける。頭巾の少女は鼻先で指を立てると、静かに持っていた杖を振った。
すると、杖から光の粉が舞い上がり、部屋の隅々を駆け巡った。
「ディティクトマジック(探知)?」
「どこに耳や、目が光っているかわかりませんからね」
そういうと少女は頭巾を取った。頭巾のしたから現れたのは……
「姫殿下!」
そう、今トリステイン学院に行幸中のアンリエッタ王女その人であった。
ルイズが慌てて膝をつく。思わぬ人物の登場に、官兵衛は目を丸くした。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
アンリエッタは、涼しげな心地よい声で言った。

「ああ、ルイズ!ルイズ!何て懐かしいの!」
膝をつくルイズを、アンリエッタは駆け寄って抱きしめた。
「姫殿下いけません。こんな下賎な場所へお越しになられるなんて……」
「ああルイズ!そんな堅苦しい行儀はやめて頂戴!貴方とわたくしはおともだちじゃないの!」
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」
ルイズが固い面持ちで緊張したように言う。
「そんな言い方はやめて!あなたはこの世で唯一気を許せるおともだち!
上っ面だけの宮廷貴族達とは似てもにつかない、心よりの理解者!
そんな貴方まで、よそよそしい態度を取らないでちょうだい!息が詰まって死んでしまうわ!」
「姫殿下……」
ルイズが顔を上げる。と、その視線がアンリエッタのそれと合わさった。
間を置かずして、くすくすと笑いあう二人。
それから、二人の緊張がほぐれるのに時間は要さなかった。
どうやらルイズは、幼少のみぎりアンリエッタの遊び相手をつとめていたのだそうだ。
昔なじみ同士、宮廷など様々な場所で遊んだ思い出。遠い日の記憶。
それらが、二人を姫や貴族といった肩書きとは無縁の、無邪気な少女達に変えていた。
官兵衛は、彼女らが楽しそうにはしゃぐさまを、ただ静かに眺めていた。
ややあってそんな官兵衛に、アンリエッタが気付いた。
「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」
「お邪魔?どうして?」
官兵衛の存在を見るなり、王女は口元に手を当て恥ずかしそうに笑った。
「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?嫌だわ。わたくしったら……」

132 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:56:03.86 ID:4bnpOPl8
と、そこまで言いかけてアンリエッタは固まった。
そして、官兵衛と部屋のクローゼットを見比べ、急にオロオロしだした。
「いかがいたしました?姫殿下?」
ルイズがアンリエッタの視線を追う。するとそこには、クローゼットの傍の乗馬鞭、ここまではまだ良かった。
だが、問題はもう一つの物である。官兵衛の腕には、手枷と鎖が、ずっしりとその存在を誇示してるではないか。
「ひ、姫殿下これは――!」
違うんですと弁解しようとするルイズ。しかし、アンリエッタはカ〜ッと顔を赤くすると。
「ご、ごめんなさい本当に!わたくしったら何ていう時に!」
とんでもなく誤解をしている言葉を口にした。
アンリエッタの脳内にあらぬ妄想が浮かび上がる。
「ち、違います!コレとアレは決してそのような下賎な行為を行った跡ではっ!」
「い、いいのですよ!ルイズ!愛というものは様々な形があってこその……!」
「ですから違うんです!本当に!!」
きゃあきゃあとわめく二人の乙女を前にして、官兵衛は頭に疑問符を浮かべた。
「おいデルフ。どういう騒ぎだ?こりゃあ……」
「相棒は思ってたよりずっとピュアだあね」
デルフリンガーは呆れたように、鈍い自分の持ち主を眺めていた。

とりあえずルイズは、官兵衛が使い魔であること。そして事情あって手枷をつけている事を、時間をかけて説明した。
時間はかかったが、そんなこんなでようやくアンリエッタの誤解を解いたルイズであった。
アンリエッタがため息をつきながら言う。
「貴方が羨ましいわ。自由ってなんて素敵なのかしら。」
それに対して、何をおっしゃるのかとルイズが口にする。
アンリエッタは窓の外に浮かぶ月を眺め、その後にっこりと笑いながらルイズに向き合った。
「結婚するのよ。この度わたくし」
「……おめでとうございます」
その言葉に悲しいものを感じ、ルイズは沈んだ調子でそう返す。
アンリエッタの笑顔もどこか無理をしている様子が見て取れた。
その結婚が本人の望まぬものであるということが、官兵衛には良く分かった。
政略結婚か、とどこの世界でも同じような事がある、と考える官兵衛。
と、そうしているとアンリエッタが再び深いため息をついた。
「姫様、どうなさったんですか?」
アンリエッタのその様子に何かを感じたルイズは、即座に尋ねる。
しかし、アンリエッタは何かを隠すようにかぶりを振った。もの悲しげな表情を浮かべ、アンリエッタはルイズに言う。
「なんでもないのよ、ルイズ・フランソワーズ。お気になさらないで?」
それを聞いてルイズがアンリエッタに詰め寄る。
「姫様、わたくしにはわかります。そのご様子、なにかとんでもないお悩みがあるのでしょう?」
あの明るかった姫様がそんな物憂げな表情でため息をつくなど、それ以外考えられない。ルイズはそうまくし立てた。
それでも、アンリエッタは言う。とても貴方に話せる内容ではない、と。
ルイズはとうとう我慢出来なくなって、アンリエッタの瞳をぐっと見据えて言った。
「姫様?姫様はこの私を、友達、とおっしゃってくださいましたね?
幼い頃から魔法の才能が無いと言われていたこの私を、恐れ多くもお遊び相手にお選び下さり」
その言葉に、アンリエッタは思わず目の前の少女と視線を交わす。
「あの懐かしい日々より数多の月日が過ぎました。目を閉じれば思い出します。
宮廷で、庭園で、そしてラグドリアンの湖で、幾度と無く過ごした楽しい日々を。
恐れ多い言葉になるでしょうが。今でも、私にとっても姫様はかけがえのない『お友達』でございます」
王女のブルーの瞳がわずかにゆれた。
「そんな私に、お悩みを打ち明けて下さらないのですか?
私は私を思ってくださる、そして私が友誼を捧げるお方の憂う姿を、見過ごす事など出来ません。」
「おお、ルイズ……。ルイズ・フランソワーズ……」
アンリエッタはその言葉に感極まり、ルイズを抱きしめた。
「ありがとう、ありがとうルイズ。わたくしのおともだち……」
二人の美少女が抱き合う。少しの時間をおいて二人は離れた。
やがてアンリエッタは、決心したように言葉を紡ぎ出す。
「今から話す事は、決して口外してはなりません」
瞳に強い意志を宿し、アンリエッタは親友とその使い魔を見た。
まずいな、と官兵衛は思った。
官兵衛は背を向け、そそくさと扉に駆け寄る。
「ちょっと、どこ行くつもり?」

133 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:57:33.10 ID:4bnpOPl8
そんな官兵衛の背中を、ルイズはギロリと睨んだ。官兵衛は冷や汗をかきながら、自分の主人と王女に言う。
「いや、厠《かわや》だ」
官兵衛は、何がなんでもこの部屋からおさらばしたい所であった。
こういった場所で夜更けにこっそり行われる会話。おおよそ内容は想像がついた。
王女が抱えている悩みというのは、おおかた大っぴらにできない面倒ごとだろう。それも政治的要素をふんだんに含んだ。
そしてそれを自分が耳にするという事は、その面倒ごとに丸々巻き込まれるということである。
「待ちなさい。これから姫様と大事な話が……」
「そうかい。大事な話なら小生がいないほうが都合がいいだろう?」
そういって強引に逃げようとする官兵衛に、アンリエッタからダメ押しの一言が。
「いや、メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由がありません」
いやいや!どうしてそうなる?冗談ではない!
官兵衛は心の内で、盛大に舌打ちをした。
「いやいやいやっ!小生、実はもう限界でね!頼む!早いとこトンズ……いやいや、厠にいかせてくれ!」
「あんた今トンズラって言いかけたでしょっ!」
「気のせいだ、キノセイ!そんじゃあな!」
そういって官兵衛はドアノブをガチャリと捻った。その瞬間である。
「おわあぁぁぁっ!?」
一人の少年が情けない声を上げて部屋の中に倒れこんできたのだ。
突如現れた金髪の少年を見て、ルイズは声を上げた。
「ギーシュ!」
そう、そこに居たのはルイズのクラスメイト、ギーシュ・ド・グラモンであった。
「……はっ。こ、これは――」
ギーシュは、自分がルイズの部屋の中に居る事に気がつくと、即座にアンリエッタにひざまづいた。
「ギーシュ!あんた!立ち聞きしてたの?」
「ち、違うんだ!ふと気配を感じ、薔薇のように見目麗しい姫様を見つけて。で、ついつい後をつけてみればこんな所に」
「何が違うのよ!」
ルイズが、凄まじい剣幕でギーシュを怒鳴りつけた。だが、ギーシュは怯まずに立ち上がると、アンリエッタに向き直り。
「姫殿下!このギーシュ・ド・グラモンにも是非とも!そのお悩み、打ち明けてはいただけませんか!」
きりりっ、と言い放った。
「グラモン?あの、グラモン元帥の?」
アンリエッタが、きょとんとしてギーシュを見つめた。恭しく一礼しながら、ギーシュが言う。
「息子でございます。姫殿下」
「あなたも、わたくしの力に?」
「姫殿下のお役に立てるというのであれば、これはもう、望外の幸せにございます」
熱っぽい口調で語るギーシュに、アンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族で、この私に良く尽くしてくれました、あなたもその血を受け継いでいるのね。
ではお願いしますわ。ギーシュさん」
ハイィ!と感極まった様子になるギーシュ。
よし!今のうちだっ!と、外へ出る官兵衛、すると。
「カ〜ン〜ベ〜エ〜?」
威圧感たっぷりの声とともに自分の肩がつかまれた。
万力のような握力に肩を締め上げられて、官兵衛は思わずうめいた。
ルイズが口角を引きつらせ、官兵衛を部屋の中へと引きずり込んでいった。

「で、では改めて……」
地面に這いつくばった官兵衛。その上に腰掛けたルイズに、アンリエッタは戸惑いを見せながら話を始めた。
アルビオンという王国で反乱軍が蜂起し、今にも王室が倒れそうなこと。
そしてハルケギニア統一を目論む反乱軍は、革命成立の暁にはトリステインに進行してくること。
小国であるトリステインは、隣国のゲルマニアと同盟を組み、それを迎え撃たなければならないこと。
そのために、アンリエッタがゲルマニア皇室に嫁ぐこと。
そしてあろうことか、その婚姻を阻止する材料がアルビオン王室にあることだった。
予想以上に深刻な国家間の情勢の話を耳にして、官兵衛はやっぱりか、といった顔つきになった。
「姫様!姫様のご婚姻を妨げる材料って一体なんなのですか?」
ルイズが真剣な表情でまくしたてる。アンリエッタは、それに対して苦しそうに呟く。
「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」
「手紙?」
「そうです。それがアルビオンの貴族達の手に渡ったら、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう」
「どんな内容の手紙なのですか?」
「それは言えません。でも、それを読んだら、ゲルマニアの皇帝は、このわたくしを赦さないでしょう。」

134 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 18:58:49.77 ID:4bnpOPl8
成程、と官兵衛は思った。
婚姻を妨げる内容が書かれた手紙。それも、アンリエッタが直々にしたためたもの。
そしてアンリエッタの表情から、官兵衛は内容の想像がついた。
「相手は?」
「はい?」
「その手紙を送った相手は、どこの誰だ?」
いつの間にか立ち上がっていた官兵衛が、唐突にアンリエッタに問いかけた。
ルイズがムッとして官兵衛に突っ掛かろうとするのを、アンリエッタが静かに制した。そしてゆっくりと口を開いた。
「反乱勢力と骨肉の争いを繰り広げている、アルビオン王国の皇太子ウェールズさまに……」
「……成程」
それを聞くと、官兵衛は静かに頷いた。
「ああ、破滅です!ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ反乱勢に囚われてしまいます!
そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまいます!そうすれば、同盟ならずしてトリステインは一国でアルビオンと戦わねば……ああっ!どうしましょう!」
アンリエッタは大層に声を張り上げ、のけぞってみせた。
「では姫様、私に頼みたい事というのは……」
「いえ!無理よ無理無理!混乱しているんだわ!あろうことか、貴族と王党派が争いを繰り広げている
アルビオンに赴いて手紙を回収するなんて!とてもお願いすることはできないわ!」
しかしルイズとギーシュは、興奮した様子で言う。
「なにをおっしゃられますか!姫様の御為とあらば、例え火の中・水の中・草の中ッッ!私達は何処なりと向かいますわ!
ヴァリエール公爵家の三女としてッ!」
「このギーシュ・ド・グラモンも!グラモン家のにゃにきゃけて!」
盛大にかんだ。
ギーシュはしばらく固まっていたが、ややすると落ち着き、渋い声色――でも上ずっってる。彼の精一杯――で言い直した。
アンリエッタはそれを気にした風もなく微笑を浮かべる。
「このわたくしの力になってくれるというの?」
「もちろんですわ!姫様!」
「この命にかえてでも!」
ルイズはアンリエッタの手を取り、熱した口調で言う。ギーシュは直立不動になりながら、言い放った。
アンリエッタがぼろぼろと泣き出す。
「ああ、忠誠!これが誠の友情と忠誠です!何よりも尊きその想い!わたくしは、あなた方の友情と忠誠を一生忘れません!」
「ゆ、友情だって!?姫殿下が僕に友情とおっしゃってくださった!姫殿下とおともだち……!ぶはあっ!」
ギーシュが息を吐きながらぶっ倒れる。そんな三人の様子を見て官兵衛は、心底ついていけない、そう思った。
「王党派は、度重なる戦いの末、国の端まで追い詰められている聞き及びます。敗北も時間の問題でしょう」
ルイズは真顔になると頷いた。
「早速明日の朝にでも、ここを出発いたします」
アンリエッタは官兵衛に向き直ると。
「頼もしい使い魔さん。わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」
すっと左手を差し出した。ルイズが驚き声を上げる。
「いけません!姫様!このような汚らわしい使い魔にお手を――」
「あのなぁ」
官兵衛がこめかみに青筋を浮かべながら言った。汚らわしいとはなんたる言い草か。
「いいのですよ。忠誠には報いるところがなければなりません」
アンリエッタは官兵衛にニッコリと笑いかけて見せた。
もっとも官兵衛はまだ一言も、行くとも働くとも言っていないのだが。もはや彼が同行するのは確定事項らしい。
官兵衛は取り合えずアンリエッタの手の甲に口付けをすると、静かに心の内でひとりごちる。
だから嫌だったんだよ、と。
しかし、いまさら拒んでも詮無き事。
自分と、学生二人というなんとも頼りない面子での旅ではあるが、王女直々の依頼だ。やるしかない。
何より、ルイズを放っておくわけにもいかない。彼女は大事な、帰る手がかり足がかりなのだ。

135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/09(木) 19:00:14.77 ID:fxgzUTMM
支援

136 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/09(木) 19:01:18.66 ID:4bnpOPl8
官兵衛は、アンリエッタから必要最低限の情報を仕入れる。
皇太子らはアルビオンのニューカッスル付近に陣を構えている事。アルビオンへ行く経路。日数等々。
そして、アンリエッタは机に座ると、ルイズの羽根ペンと羊皮紙を使って手紙をしたためた。
アンリエッタは途中なにやら思いつめた様子で懺悔し、最後の一文を手紙に書き加える。
「始祖ブリミルよ……。この自分勝手な姫をお許しください。でも、国を憂いても、わたくしはやはり、この一文を
書かざるを得ないのです。自分の気持ちに、嘘をつくことは出来ないのです。」
その様はまるで恋文でもしたためたかのようであった。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙をお渡しして。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」
魔法で封蝋と花押が押された手紙をルイズに手渡しながら、アンリエッタは言った。
それから、右手の薬指の指輪を引き抜くと、ルイズに手渡した。
「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りに。必要とあらば売り払って旅の資金にあててください」
ルイズははじめは驚いた様子だったが、やがて感動した面持ちになり、深々と頭を下げた。
「この任務にはトリステインの、いえハルケギニアの未来がかかっています。どうか、アルビオンの猛き風にうち勝てるように。」
官兵衛たちの予想だにしない旅が、今この時より始まったのだった。


以上で投下完了になります。
それでは、また。

137 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 20:46:07.15 ID:pXVGJ2oo
暗の使い魔の方、乙です。

皆様、お久し振りです。
よろしければ、また20:50頃から続きを投下させてください。

138 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 20:50:03.06 ID:pXVGJ2oo
 
「待って。……それじゃあ、あの小屋をこっそり調べてきてもらえる?
 中に誰かいるかどうかと、その人が悪者かどうか、あと宝物みたいなのや魔法の品物がないかとか……」

ディーキンは、口々に質問を浴びせて来ようとする仲間たちとはしゃぎまわるクア・エラドリンたちとを手で制すと、そう指示を出した。

《怪物招来(サモン・モンスター)》の持続時間は短いのだ。
もたもたしていたら、何もしてもらわないうちに効果が切れてしまう。

「ははあ、偵察ね。オーケー、任せて!」
「こっそり……ってことは、みんなとお喋りできないのね。つまんないな〜」
「なになに、あなたたちって義賊? それとも悪者退治の最中とか?」

妖精めいた少女たちは、無邪気に笑ってはしゃぎ続けながらも従順に指示に従い、早速偵察の準備を始めた。
くるくると飛び回る彼女たちの体が仄かに発光し始めたかと思うと、瞬く間に透き通った色とりどりの光の球体状に、その姿を変える。

『偵察だから、もっと光の量を落とさなきゃね』
『向こうに付いたら役割分担しましょ、私は魔法の品物を探すわ』
『みんな、しーっ! 静かにしなきゃ、こっそり探せないでしょ』

そんなことを話しながら体から発する光の量を落していくと、非実体の形態に変化した彼女らはほとんど目に見えなくなった。
おしゃべりを中断すると、そのまま音もなく飛行して、小屋の方へと向かって行く。

ディーキンはその様子を見守りながら、満足そうに頷いた。

クア・エラドリンにはさほどの強さはないが、無邪気でおしゃべり好きな性格に反して、非常に優れた隠密性を有している。
彼女らは非実体の光球形態をとることができ、その状態ではほとんど目には見えないし、音も立てない。
それでいて馬と同じくらい速く、完璧な飛行機動性で飛び回って移動し、壁などの固体を自由に通り抜けて進むこともできるのだ。

しかも《魔法の感知(ディテクト・マジック)》や《悪の感知(ディテクト・イーヴル)》の疑似呪文能力を自在に使える。
それらの能力で、小屋に入る前に中の様子をある程度探ることもできるだろう。

よって偵察役には、まさにうってつけの人材であるといえよう。
召喚しておける時間は3分ほどだが、3人がかりで小屋ひとつざっと調べる程度ならそれで十分に過ぎるはずだ。

「ちょ……、ちょっとディーキン、あの子たちは一体……、」

「待ってルイズ、今は調査の時間なの。お話は後だよ。
 偵察役が行ったの。みんな打ち合わせ通り、周りを警戒して!」

ディーキンが小さいが鋭い声でそう注意すると、みんなはっと我に返った。
慌てて散開すると、めいめい小屋の様子を伺いやすい茂みに身を隠しながら、周囲を警戒する。

ディーキンは仲間たちが散らばっていく前に、抜け目なく全員に対して《伝言(メッセージ)》の呪文を発動しておいた。
これがあれば、離れて散開していても密かに連絡を取り合うことができる。



適当な茂みに身を隠しながら、フーケはいささか混乱気味の頭で思い悩んでいた。

学生どもなど、トライアングルだろうがシュヴァリエだろうが百戦錬磨のメイジである自分の敵ではない。
この間はドットクラスの学生相手に決闘で勝ったようだが、平民の使用人など問題外である。

亜人の使い魔は風変りな先住魔法を使ったり、詩歌や器楽の優れた才能を持っていたりはするようだが、所詮はガキだろう。
他の奴らと連携したり小細工をしたりする暇もなく叩き潰せば、どうとでもなる。

―――ついさっきまでは、確かにそう思っていたのだが。

あの亜人、今度はこともなげに、伝説の妖精みたいな連中を召喚して使役するわけのわからない呪文を使って見せやがった。
ただのガキにしては、いくら何でも並外れた技や呪文が次々に飛び出してきすぎてやしないだろうか?

139 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 20:52:02.39 ID:pXVGJ2oo
 
(もしかしてあの亜人、下手に手出ししたらヤバい奴なんじゃないだろうね)

エルフや吸血鬼のように、見た目によらない強さや危険さを持つ亜人というのはいるものだ。
本人はコボルドだといっているそうだがこちらで見られるコボルドとは明らかに別の種族だし、強さも同程度とは限らない。

とはいえ、どんな変わった技や魔法を持ち合わせていようが、使う間もなく叩き潰せば問題ないはずだ。

その考えは変わってはいない、変わってはいないが……。
相手があまりに予測し難い存在で、正体や手の内がまるで見通せないことが、フーケの胸中に一抹の不安を生じさせていた。

(……この場でこいつらを始末するほうが楽か、それとも一旦返して盗み直すほうが安全か……)

実に難しくかつ重要な問題で、悩ましい。

とはいえ、今の段階ではいくら考えてみても、正確なところがわかるはずもないのも確かだ。
今後の状況の推移を見て臨機応変に対応するしかないと腹をくくって、フーケは気を引き締め直した。

(なあに、腕が立とうがなんだろうが、結局このガキどもはみんな私を疑っちゃいない。
 ちょろい連中さ、ヘタを踏まなきゃなんとでもなるよ!)

とにかく今は、あの亜人のガキが宝物の使い道をちゃんと調べられることを祈っておこう。
ここまで面倒なことをしておいて、結局収穫なしだったというのではたまらない……。



(もしフーケがいたら、今度こそ私が捕まえてやるわ!)

小屋に比較的近い茂みに隠れながら、ルイズはその胸の内で熱意の火をめらめらと燃やしていた。
彼女は正直なところ、昨夜からいささかフラストレーションが溜まっているのだ。

フーケの巨大ゴーレムを撃退するのに、自分がまるで役に立てなかったことは悔しかった。
そのゴーレムを破壊するのに、まがりなりにも自分の使い魔であるディーキンが主人を差し置いてキュルケと協力したことも不満だった。
今朝の会議でも、自分よりディーキンのほうが断然目立っていたし、有力な情報を持ってきたのはミス・ロングビルだった。

ルイズは何も、ことさらに他人の功績を妬んだり、僻んだりしているわけではない。
ただ、メイジなのに魔法が使えないという劣等感はある。
ディーキンやエンセリックの助力によって自分の力の性質はある程度分かってきたとはいえ、長年抱いてきたその思いはやはり根強く残っているのだ。
だからこそ、自分も貴族らしく働きたい、周囲の者の役に立って認めらるようになりたいという気持ちは人一倍強かった。

それにディーキンによれば、彼の慕う“ボス”という男は、偉大な業績を遺した英雄なのだという。

そんなに詳しく聞いたわけではないが、今まで聞いた限りの話では、その人物は平民の戦士なのだろう。
平民の戦士に一体どれほどの力があるというのか、そんなに大きな功績がたてられるものなのかと、いささか胡散臭くも思った。
でも、少なくとも人格的には、きっと尊敬できるような人物なのだろう。
その人の話をする時、ディーキンはいつも、心底憧れているといった様子で目を煌めかせているから。

(私だって、やってみせるんだから……)

ルイズには、今でもディーキンが自分にちゃんと敬意を払って、尊重してくれていることはわかっている。
今回の件で役に立てなかっただとか、そんなことでディーキンが失望したりしないのも理解している。
だが主人としては、その男には負けたくない、自分の使い魔から自分もそれ以上に認められたい、という気持ちは当然ある。

そうでなくとも、貴族としては、力や働きにおいても、精神性の面においても、平民に劣るわけにはいかない。
何も平民を見下しているからではなく、それが貴族として、高貴な地位に立ち他人を導いていくべき者としての、当然の義務だと彼女は信じている。

ましてや、自分の両親は……、特に母親は、生ける伝説とまで謳われたほどの力を持ち、数々の偉大な功績を遺した英雄なのだ。
その両親の名にかけても、平民の英雄に後れを取るわけにはいかないと息巻いていた。

(あんたの“ボス”がどれほどの人なのかは知らないけど、私だって……!)

140 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 20:55:06.84 ID:pXVGJ2oo
 
自分の価値を証明する機会を渇望するルイズは、フーケがここに姿を現してくれることを期待していた。



しばし緊張した時間が流れたが、それもそう長くは続かなかった。
ものの1分も経つか経たないかのうちに、小屋へ向かったクア・エラドリンたちがディーキンの下へ戻ってくる。
そうして、口々に報告した。

『中には、だぁれもいないわよ?』
『全然使ってる様子が無いの。あ、でも、一度くらいは誰か入ったみたいね』
『そうそう、すごい宝物が置いてあったものね!』

「オオ……、そうなの?」

とディーキンは意外さ半分、喜び半分のといった感じの声を上げた。
てっきりこの小屋は外れかと思っていたが、どうやら本当にフーケの宝の隠し場所だったらしい。

「ええと、じゃあもう少し詳しく話してくれる?」

ディーキンがそう促すと、3人はまた口々に、思いつくままにいろいろな報告を始めた。

『チェストの中に杖があって、魔力を感知したらすごい眩しかったのよ! あんなのは初めてだわ』
『それに、魔力はなかったけど、なんだか変な形の珍しい金属の棒みたいなのもあったわね』
『他にはガラクタばっかり! ぜんぜん手入れされて無いし。本当、ほこりがついて洋服が汚れちゃうような格好で入らなくてよかった!』

「ふうん……?」

ディーキンはそれを聞いて、不思議そうに首を傾げた。
その杖と金属の棒みたいなものは、おそらく学院から盗み出されたというお宝だろう。
しかし、ミス・ロングビルが樵から聞いた話によれば、フーケは日常的にこの小屋に盗んだ宝物を隠しているらしいとのことだったが……。

(他の宝物は、もうみんな売りに出しちゃったのかな?)

だとしても、ろくに出入りした様子がなかったというのはやはり妙な話だ。

あるいはフーケはこの小屋を利用していることを悟られないために、毎回巧みに痕跡を消しているのだろうか?
それほど用心深い者が、樵に何度も目撃されたことに気が付かないなんてあり得るのだろうか?

「ンー……、ねえ、小屋の中には何か罠みたいなものはなかった?
 扉とか、床とか、杖の置き場所とかに……」

なんだかよくわからないがとにかく不審な状況なので、念を入れてそう質問してみる。

『ええ? さあ……、私、罠には詳しくないから』
『私たち、この格好だと扉とか箱とか通り抜けちゃうから、普通の罠はあっても引っかからないもんね』
『まあ、魔法の罠はないんじゃない? あの杖以外からは魔力とか感じなかったし』

「うーん、そうだよね……」

ディーキンは顔をしかめて、ちょっと頬を掻きながら考え込んだ。
何か不自然なのは間違いないが、どうにもよくわからない。

自分たちは、何か大事なことを見落としてでもいるのだろうか。
だとしたら、本当は一体何に警戒するべきなのか?

『―――調査の結果は?』

その時、やや離れた茂みに隠れていたタバサから、風に乗せてそんな質問の言葉が運ばれてきた。

141 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 20:57:42.14 ID:pXVGJ2oo
 
ディーキンははっとなって、少し首を振ると思案を打ち切った。

とにかく、お宝は見つかったのだ。
あれこれ細かいことを考えるのは、回収を済ませてからでもいいだろう。

念のため、罠がないかなどはこちらでも調べてからにするとして……。
その前に、ひとまずこのおしゃべりで陽気な少女たちには、もう帰ってもらってもいいだろう。
どうせ持続時間もそろそろ切れるのだし、これ以上いてもらう用事もあるまい。

そう考え、丁重にお辞儀をして礼を言うと、彼女らに別れを告げた。

「アア、ディーキンはあんたたちに感謝するよ。
 来てくれてありがとう。もう、帰ってもらっても大丈夫なの」

『あらもう? せっかく物質界に来たのに、残念ね〜』
『また呼んでね、きっとよ!』
『じゃ、バ〜イ!』

少女たちは口々に別れを告げると、ぱあっと細かな光の粒子状になって、跡形もなく消え去った。

「もちろんなの。じゃあね、お姉さんたち」

まあ彼女たちのほうがディーキンより年下という可能性も微粒子レベルで存在しているかもしれないが、こまけぇこたぁいいんだよ。

ディーキンはそうしてクア・エラドリンたちを帰還させると、ひとまず全員に、彼女らの調査結果を説明することにした。
小さな声で囁き、先程かけた《伝言》の呪文を介して仲間たちにメッセージを送る。

「―――ええと、みんな聞こえる?
 とられた宝物は中にあったみたいだよ。でも、フーケはいないみたいだね。
 ディーキンが罠がないか確かめてから小屋の中の宝物を回収するから、みんなはそのまま見張りを続けていてほしいの。
 ……聞こえてたら、小さい声で返事をして。ディーキンには、それでわかるからね」

『……あなたは、罠を調べることもできるの?』

他の面々からはすぐに了解の返事が返ってきたが、タバサだけは好奇心をそそられたのか、そう質問してきた。

「もちろん。ディーキンには自信が……、まあ、その、ちょっとはあるの、たぶん。
 なんせコボルドは、罠に詳しい種族だからね!」

『……そう。じゃあ、任せる』

コボルドが罠に詳しい種族だというのは、本当のことである。

腕力と耐久力に劣る小柄なコボルドは、身を守るのには主に姑息な策略や、数の力、魔法の力、そして罠の力に頼るのだ。
種族の守り神であるカートゥルマクも罠を好み、それを使うことを大いに奨励している。
だから、コボルドの部族には罠作りを専門にするエキスパートが大勢いるし、その洞窟は大抵、大量のトラップで守られている。
特にガラクタ同然の材料から罠を組み上げる手腕においては、おそらくコボルドに勝る種族はないだろう。

もっとも、ディーキンは特に罠作りや罠外しの専門家というわけではない。
前の主人の下では最初コボルドの族長になるための教育を受けていたから、いちおう若干の知識や訓練は与えられてはいる。
待ち伏せを仕掛けたり、防御陣地を築いたり、的確に罠を張ったりしてコボルドの民を守る方法は、族長が知っておかなければならないことなのだ。
とはいえ、それは随分と昔のことだし、当時は族長になどなりたくもなかったから、やる気もさっぱり起きなかった。
純粋に技量だけを頼りに罠を見つけようとするには、自分の力量は何とも頼りないものでしかない。

だがそれは、様々な工夫や魔法の力で、ある程度は補うことができよう。
罠の有無を確認する手順については、コボルドの洞窟で学んだことのほかに、冒険者としての活動中にも色々と先人の知恵的なものを学習しているのだ。
ディーキンは一応周囲を警戒しながら茂みから出て、ささっと素早く小屋の傍へ近づいた。

142 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 21:00:02.01 ID:pXVGJ2oo
 
まず、小屋の外周をぐるっと回って角度を変えながら、《魔法の感知》で内部の魔力をくまなく確認してみる。
結果は先程のクアたちの報告にあったとおり、強烈な魔力の反応がひとつあっただけで、その他の魔力源はなかった。

これでひとまず、魔法的な罠が無いことは確かめられたわけだ。
それにしても、この反応からすると『守護の杖』とやらはデルフリンガーと同じで、エピック級のマジックアイテムかアーティファクトらしい。
まあ、相当な伝統のある魔法学院の秘宝だというのだから、そのくらいな物であってもおかしくはないだろうが。

次に、機械的な罠の有無を調べにかかろう。
荷物袋から変わったデザインのコンパスを取り出すと、合言葉を唱えて起動させる。
針がくるくると回転し始めると同時に体に魔法的な力が浸透してきて、ディーキンは自分の中である種の感覚が冴え渡っていくのを感じた。

これでディーキンは、しばらくの間は本職のローグにも引けを取らないほどに確かな精度で罠を発見できるようになった。

この『商人のコンパス』は、アンダーダークで呪いに囚われたアヴァリエル(有翼エルフ)の国を探索したときに手に入れた、ユニークな魔法の品である。
合言葉を唱えて起動させることで、一日に数回、使用者に《罠発見(ファインド・トラップス)》の呪文と同様の恩恵を与えてくれるという優れ物なのだ。

これは、本来は強欲だったのが呪いにかかって性格が反転し、財産をすべて手放そうとしていたアヴァリエルの商人から譲り受けた貴重な品だ。
後にその呪いは解けたものの、彼らはすぐにアンダーダークを去っていってしまったため、今日まで返却の機会が無かった。
そのため、今でもディーキンが預かって有効に活用している。

ディーキンは早速荷物袋からレンズを取り出すと、それを使って注意深く扉の周囲を調べ始めた。

十分な時間をかけて小屋の周辺や扉に罠が無さそうなのを確認すると、念には念を入れて扉からいったん離れる。
それから、毎朝影術の《従者の群れ(サーヴァント・ホード)》で作成している『見えざる従者』たちのうちの一体に命じて、扉を開けさせた。

これなら、万が一見落としがあって何か罠が発動しても、まず自分は巻き込まれずに済むわけだ。

幸い見落としは無かったようで、何事もなく扉が開いた。
さらに続けて、従者たちに命じてそこらに転がっている手頃な大きさの岩を小屋の中まで押して運ばせ、一通り中を転がして回らせる。

人間の体重と同じくらいの重量の岩を小屋の中に転がさせても、何も罠が発動しないことを確かめてから、ディーキンはようやく小屋の中に入った。



「………」

タバサは、ディーキンが入念な調査をしている様子を、やや離れた場所からじっと観察していた。

彼が何をしているのかすべてわかったわけではないが、どうやら自分の技術と魔法と、それにいろいろな道具などを組み合わせて活用しているようだ。
しかもそれを過信せずに、たとえ見落としがあっても可能な限りリスクを避けられるような工夫もしているらしい。
その姿は慎重だが自信にあふれていて、こうした仕事に手慣れていることを感じさせた。

(私には、あんなことはできない)

魔法の罠の有無を『ディテクト・マジック』で調べることはできる。
だが、機械的な罠に関する知識や経験はほとんどない。
以前にある任務で、狩人の作った罠を少し見たりいじったりしたことがある程度だ。
せいぜい、不自然な様子が無いどうかをざっと目で見て、素人判断するくらいしかできまい。
しかも自分は視力が悪いので、細かい部分を目視で詳しく調べるのは得意とは言えない。

何分、命がけの戦いにいつ身を投じねばならないかわからないような生活をしているのだ、限られた時間で学べることには限界がある。
自分はメイジだから、強くなる上では魔法の力とそれを活用する腕とを磨く方が賢明で、そういったことに詳しくないのは仕方がない。
別に出来ないからと言って何でもないし、これまでは意識したことさえなかったのだが……。

(どうして、あの子には……)

タバサはまた、自分の心に何か暗く不快な感情が滲み出してくるのを感じていた。

(……いけない)

143 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 21:02:03.12 ID:pXVGJ2oo
 
だが、それに深く身を委ねるほど彼女は衝動的でも賤しくもない。
すぐにそんな考えを振り払って、気持ちを切り替える。

今は、目の前の任務に集中しよう。
自分はいつも、そうして生き抜いてきたのだから。



「あらあら、タバサったら、こんな時でも熱心にディー君を見つめて……」
「ミ、ミス・タバサは、先生をそういう意味で見ているのではないと思います、けど……」

キュルケとシエスタは、小声でそんなことを言いながら、少し大きめの茂みに2人で揃って身を隠していた。
ちなみにこの2人が一緒なのは、ある程度小屋の傍にあって身を隠すのに適当な茂みの数が足りなかったからである。

キュルケは小屋の中にフーケがいないと聞いて少し気が抜けたのか、のんびりした様子でタバサの方など微笑ましく見つめている。
シエスタは生真面目にクロスボウなど構えて周囲を警戒し続けていたのだが、そう言われると気になるのかタバサやディーキンの方に目が行っていた。

確かに、さっきからタバサはじいっとディーキンが作業する様子を見つめている。
なにかに執心しているようにも、見えなくはない。

(ま、まさか本当に、ミス・タバサは、先生に……?)

別に、ミス・タバサが先生に対してどんな感情を持っていようと、自分が口を挟む筋合いではない。
自分はあくまで彼に敬慕の念を抱いているのであって、交際に口出しなど畏れ多いことである。
そう思ってはいるのだが、何故かどうにも気持ちがそわそわして、落ち着かなかった。

キュルケはそんなシエスタの様子を、タバサの方を見つめながらも楽しそうに横目で伺う。

(この子も面白い子よねえ。平民なのにギーシュと決闘をして勝っちゃうし。
 かと思ったら、ディー君を先生とか言って、こんなところにまでついて回って……。
 一体、何の先生だっていうのかしら?)

こんな任務の最中に緊張感のない態度だと怒ったり呆れたりする者もいるだろうが、キュルケは自分の感情に素直なだけなのである。
ルイズやシエスタのように常に生真面目に堅苦しい態度をとってことに当たるのは、彼女の性に合わない。
命のかかった任務であろうと余裕を持って楽しんでこなす方が性に合っているし、リラックスして臨んだ方が実力も発揮できるタイプなのだ。

キュルケはこれで、キュルケなりに真面目にやっているつもりなのであった。
まあ、既にフーケやお宝のことよりも、自分の好きな色恋沙汰の話の方に主要な関心が移っているのは否定できなかったが。

(実際のところ、この子はディー君と、どういう関係なのかしらね?)



ディーキンは小屋に入ると、内部を念入りにレンズで調べて、チェストなどに罠が無いことを確認していった。
ついでに、誰かが頻繁にここに出入りした形跡があるかどうかも、注意して見ていく。

(ウーン……、やっぱり、よく使われてるような様子はないね)

情報通りに宝物がこの小屋に隠されていた一方で、情報とは違って最近頻繁に小屋が使用されていると思しき形跡はなかった。

何とも奇妙な話だが、それにどういう意味があるのかはさっぱりわからない。
まあひとまず、今はおいておいて、後でルイズたちにも意見を求めてみよう。

そうして、いよいよ宝物を回収するべくチェストを順に開いてみた。

最初に見つけたのは、奇妙な形をした、杖なのかどうかもよく分からない棒状の代物だった。
来る前に聞いた話からすると、きっとこれが『破壊の杖』なのだろう。
チェストから取り出してみたとき、予想したよりずっと軽くて少し驚いた。

144 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 21:05:01.47 ID:pXVGJ2oo
 
宝のひとつを回収したことを《伝言》で皆に伝えると、続けてもう片方の杖が入っていると思しきチェストを開いてみる。

その中には、印形やルーンが無数に彫り込まれた、木製の長杖が入っていた。
おそらくこれが『守護の杖』なのだろう。
そしてまず間違いなく、これが強烈な魔力の発生源だ。

(……ンン? なんか、どこかで見たか聞いたかしたような杖だけど……)

ディーキンは首を傾げると、杖をひっくり返して調べ回しながら、少しの間記憶を探ってみた。
じきに思い当たって、はっと目を見開く。

「オオ……!?」

まさか、これは名高い『あの』杖か?

いや、間違いあるまい。
見た目は自分が知っている通りだし、魔力の強さも本物だ。

しかしなぜ、この杖がこんなところに……?

(確かおじいさんは、友だちが置いていったって言ってたけど……)

そうするとその人物は、自分と同じようにレルムの世界から来た者なのだろうか?
それとも、たまたま太古の昔にこの世界にもたらされたか何かしたこの杖を持っていただけなのだろうか……?

そんな風にあれこれ考え込んでいた時、小屋の入り口に誰か人の来た気配がした。

「! ……誰?」

外でみんなが見張っているからまさかフーケではないとは思うが、一応警戒して扉の方から飛び退いて身構えると、外の人物を誰何した。
同時に『見えざる従者』たちに指示を出し、扉に内側からつっかい棒をかませて押さえておかせる。

「私ですわ。宝が見つかったと聞いて、学院長秘書として確認に参りましたの」

その声を聞いたディーキンは小さく息を吐いて緊張を解くと、従者たちに扉を開けさせて彼女を迎え入れた。
そして、先程見つけた2本の杖を差し出す。

「どうも、ロングビルお姉さん。
 宝物の杖は、ほら、両方ともここにあるよ」

杖をちらりと見て、ロングビルはにっこりと微笑んだ。

「まあ、無事に見つかってよかったわ」

「………? そうだね」

ディーキンは、そんな彼女の態度に妙な違和感を感じて、不思議そうに首をひねった。

昨夜からの彼女の苦労が報われて、こうして無事に目的の宝物を発見できたのだ。
これで学院長秘書としての面目も立つし、格段の働きを認められて、おそらく褒章も出るだろう。

それにしては、なんだか興奮とか喜びとかの反応が薄すぎやしないか?

こういう場合、歓喜して杖に飛びついて、確かに本物かどうかをひっくり返して念入りに調べ回すというのが普通の反応じゃないだろうか。
なのに彼女はちらっと見ただけで、杖に手を伸ばそうともしないのだ。

(お姉さんは見つかった杖が本物かどうか、確認しにここに入って来たんじゃないの?)

145 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 21:36:40.48 ID:pXVGJ2oo
 
杖をちらりと見ただけで、本物かどうかわかるとでもいうのだろうか。
それとも、ただ事務的にやっているだけで実はこの探索にあんまり気のりもしていなかったのだろうか。
これまではあまりそんな風には見えなかったが……。

そんなディーキンの疑念をよそに、ロングビルが彼を促す。

「さあ、使い魔さん。あなたにはその杖の使い方を調べられるのでしょう?
 さっそく、やってみてくださいな」

「えっ?」

それを聞いて、ディーキンはますます困惑した。

確かにさっき調べようとは申し出たが、こんな場所で今発見したばかりの杖をいきなり調べ始めろというのか?
冒険者なら、手に入れた宝物の鑑定などは冒険が終わってからゆっくりとやるのが普通なのだが……。

「……ええと、ロングビルお姉さん?
 学院に持って帰ってからでもいいんじゃないかな、調べてる間にフーケが戻ってくるかもしれないよ?」

「いえ、いえ。確かに、フーケがいつここに戻ってくるかもしれませんわね。
 だからこそ、今すぐに調べるべきなのですわ。疲れているでしょうし、申し訳ありませんけれど」

それからロングビルは、順を追って自分の考えを説明していった。

宝はこうして回収できたが、もうひとつの目的であるフーケの捕縛も果たしたい。
今学院に帰ったら、フーケを待ち伏せしてとらえる絶好の機会を逸してしまうかもしれない。
なぜなら、ここは宝の隠し場所なのだから、いずれ遠からずフーケは戻ってくるだろう。
その時に宝がなくなっているのに気が付いたら、隠し場所が露見したとわかって、ここには二度と戻ってこなくなるはずだ。

「……ですから、このままこの周辺に網を張って、フーケが現れるまで待ち伏せしましょう。
 その時に、杖の使い方が分かっていれば頼もしい戦力になります。
 実はさっき外で軽い打ち合わせをしまして、すでにあなたの主人であるミス・ヴァリエールたちも賛成してくれているのです。
 杖を調べている間は、彼女たちがフーケの接近を見張っていてくれますわ」

「アア、なるほど。そうだね……」

ディーキンはあいまいな返事を返しつつ、いろいろと考えを巡らした。

確かに、今の話は筋が通っているようには思える。
しかし、さっき彼女が宝を見たときの不自然な反応がどうにも引っかかった。

この小屋の状況が、情報提供者である樵の話とは不自然に食い違っているという件もそうだ。
そういえば、その樵とやらの話を持ってきたのも、このミス・ロングビルだったか……。

(まさか、この人が……?)

彼女がフーケ、もしくはその内通者ということはありえないか?
ディーキンは、昨夜の襲撃から始まるこれまでの経緯を今一度を思い返してみた。

(……うーん)

ひとたび疑念を持って考え始めてみると、その可能性は十分にあるということがすぐにわかった。

昨夜、巨大ゴーレムによって宝物庫の壁が不自然なほどの短時間のうちに崩されたこと。
内部に入り込んでいた彼女なら、壁に細工をすることは容易かっただろう。
宝物庫内のメッセージは、事件後宝物庫内に調べに入った時に人目を盗んで書いたか、あるいは事前にもう書いてあったのかもしれない。

146 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/11(土) 21:40:15.75 ID:pXVGJ2oo
 
彼女が巨大ゴーレムが宝物庫を襲ったときにコルベールと一緒にいたという事実は、完全なアリバイとはいいがたい。
ディーキンが現在までに知る限りの知識でも、この世界の魔法やマジックアイテムをうまく組み合わせて事前に細工をしておけば何とかできるだろう。
冒険者は、往々にしてそういった類の工夫を凝らすやり方には詳しい。メイジの怪盗も、大概そうだろう。
それに、たとえ彼女自身のアリバイが本物だったとしても、彼女がフーケ本人ではなく内通者なのだという可能性は依然として残っている。

彼女はいろいろと理屈をこねて、ここにシルフィードに乗って来るのを渋っていた。
あの時は彼女の意見にも一理あると思って特に疑念も持たなかったが、疑ってかかるのならば戦力や機動力を削ぐためとみることも可能だろう。

目撃者の樵の話とこの小屋の様子には、いささかつじつまの合わない部分があるという点。
実はそんな目撃者など最初からいなくて、話がまったくのでっち上げだったと考えればおかしくはなくなる。

宝を発見した時の反応が薄かったのは、最初からそこにあることを知っていたから。
相手がたかが使い魔、亜人の子ども(実際はそうではないけれど)だと思って、つい芝居が手抜きになっていたのかもしれない。

わざわざ盗み出した杖のある場所に案内したのは……、
今の彼女の要求や先ほどの会議で彼女の質問した内容から考えると、杖の完全な使い方を調べさせるためか?

(ウーン、でも、そうだとは限らないし……)

確かに彼女を疑う要素は十分にあるが、それは彼女が犯人だという証拠ではない。
疑い始めれば誰でも怪しく思えてくるものだし、それらは単なる偶然、自分の邪推で、実は潔白なのかもしれない。

調べようと思えば、たとえばシエスタに頼んで、あるいは自分で、彼女に《悪の感知》を試してみることはできる。
しかし悪だからと言って必ずしも犯罪者だということにはならないし、逆に悪ではない犯罪者などもいる。
この状況では、やってみたところであまり役には立たないだろう。

《思考の感知(ディテクト・ソウツ)》で彼女の思考を読んでみれば、あるいはわかるかもしれない。
だが、もしも呪文が抵抗されたら、問題が起きるだろう。
思考を探る魔法はハルケギニアでは知られていないようだが、抵抗されれば少なくとも、何か魔法を掛けられたくらいのことはわかるはずだ。

そうでなくとも、罪があると確定しているわけでもない相手の思考をむやみに探るのは、あまり褒められたことではあるまい。
相手の目の前で悪意だの思考だのを探る呪文を唱えるというのは、お前を疑っているぞと宣言するようなものだ。
疑って調べ回しておいて、もしも相手が潔白だったら、大変な失礼にあたる。

なによりも、疑わしい態度はあるにせよ、ディーキンの目にはロングビルがそれほど悪い人物のようには見えなかった。
少なくとも、今の時点では嫌いな人だとはいえない。そして、この冒険に同行してくれた大切な仲間でもある。
無闇に嫌疑をかけて問い詰めたり、疑って調べ回したりは、感情的にもあまりしたくはない。

「……どうしました?」

「……アア、いや。ディーキンは、ちょっと別のどうでもいい考え事をしてたんだよ。
 ずいぶん待たせたみたいだね、ディーキンはあんたにお詫びするよ」

ロングビルがなかなか動かないディーキンをいぶかしんで声をかけてきたので、すぐにそう返事をすると無邪気そうな微笑みを取り繕った。

ルイズらに自分の考えを伝えて相談したいとも思ったが、この状況ではちょっと難しそうである。
何か理由をでっち上げてこの場を離れるのは疑われる危険があるし、《伝言》の呪文ではロングビル自身にも話が伝わってしまう。
それにルイズやシエスタは隠し事が下手そうだ、教えたらきっと顔や態度に出るだろう。

本当なら慎重に考えてから行動を決めたいところではあるが、ロングビルに自分の疑念を悟られてはまずい。
もし本当に彼女が犯人だとすると、提案をむやみに拒絶したりあまり長々と考え込む様子を見せたりすれば、警戒を強められてしまう。

ディーキンは、こちらでは『守護の杖』と呼ばれている『魔道師の杖(スタッフ・オヴ・ザ・マギ)』にちらりと目をやった。

この強力なアーティファクトの使い方を彼女に教えるべきか否か。
この場で彼女を問い詰めたり調べたりするべきか否か。

エンセリックも今はいないし、ここは自分の判断でどうするかを早急に決断しなければ……。

147 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/11(土) 21:42:06.62 ID:pXVGJ2oo
 
エラドリン:
 善の副種別を持つ来訪者たちの総称をセレスチャルといい、その中でも「混沌にして善」の属性を代表するセレスチャルがエラドリンである。
彼らは高貴で情熱的、自由奔放で陽気であり、全次元界で歓びを広めるとともに、悪、特に圧政には断固として立ち向かっている。
エラドリンは他のセレスチャルに負けず劣らず美しいが、秩序にして善のアルコンのような荘厳な美しさと比べると、いささか野性味を帯びている。
多くの種があり、その外見は概して定命のエルフや妖精(フェイ)に似ているが、そういった種族よりもずっと逞しく見える。
 エラドリンにはモーウェルという名の女王がおり、彼女は“星界の宮廷”と呼ばれる疑似次元界から臣下のエラドリンたちを統括している。
彼女には複数の男女から成る愛する配偶者たちがおり、それらの配偶者たちが評議員として彼女をサポートしている。
 すべてのエラドリンは電気や石化の効果に対して完全な耐性があり、火や冷気による攻撃に対してもかなりの抵抗力を持っている。
また、言語を持つすべてのクリーチャーの言葉を理解し、対話することができる生来の超常能力を常時稼働で身に帯びている。

クア・エラドリン:
 最も小さなエラドリンであるクアは、スプライト(小妖精)に似ている。
クアは笑うために存在しているかのようで、星空の下で楽しく踊り、戯れ、暢気に浮かれ騒ぐ放浪生活を体現している。
その終わりのない戯れと常軌を逸したユーモアを容認できるのであれば、彼女らは優れた斥候といえる。
 クアは非実体状態の光の球の形態をとることができる。この形態では魔力を帯びていない通常の物理攻撃を受け付けず、物質を透過する。
また、[力場]以外による攻撃であれば、たとえ魔法や魔力を帯びた武器などによるものであっても50%の確率でダメージを無視できる。
 クアは自身やその周囲にいる者に対する精神への制御や憑依の試みを妨げ、悪の存在の攻撃を逸らす防護の場を常に体から発散している。
いざという時には、必中の魔法の矢を放ったり、弱い相手を眠らせるなどの疑似呪文能力を使って戦うこともできる。
その他、悪の存在や魔力源を感知したり、自在に動かせる光源を飛ばしたり、不可視状態の相手を幻の炎で縁取ったりといった小細工も駆使できる。
しかし肉体的には大変脆弱なので、可能な限り物理戦闘は避けて、もっと大きくて強いセレスチャルを探し出して友人になろうと試みる方が好みである。

ファインド・トラップス
Find Traps /罠発見
系統:占術; 3レベル呪文
構成要素:音声、動作
距離:自身
持続時間:術者レベル毎に1分
 術者は罠の働きに関する直観的な洞察力を得て、まるでローグ(盗賊)ででもあるかのように<捜索>判定で罠を発見することができるようになる。
加えて、術者は呪文の効果中に罠を発見するために行なった<捜索>判定に、術者レベルの半分(最大+10)に等しい洞察ボーナスを得る。
ただしこの呪文では発見した罠を無力化するための能力は得られないので、そのためには別に方法を考える必要がある。
この呪文は本来はクレリックが使用するもので、バードの呪文ではない。
 ディーキンが作中で使用した『商人のコンパス』はNWNに登場したアイテムで、起動するとこの呪文の効果を使用者に与えてくれるというものである。
なお、NWNではファインド・トラップスは自分の近くにある罠を自動的に解除するという呪文になっているが、本作ではD&D3.5版の効果に合わせている。

148 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/11(土) 21:44:28.88 ID:pXVGJ2oo
今回は以上になります。
大分長くなりましたが、ぼつぼつフーケの事件も真相が見えてきて、片が付き始めるでしょう。

それでは、またできるだけ早く続きを書いていきたいと思います。
次の機会にも、どうぞよろしくお願いいたします(御辞儀)

149 :ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2015/07/13(月) 18:55:05.68 ID:H9FmAhRz
皆さんこんにちは、ウル魔の30話を避難所のほうに投稿してきましたので、よろしければどうぞ。
ゼロ魔続巻の次報、待ち遠しいですね。ヤマグチノボル先生の夢の遺産がどう花開いていくのか、ファンとして最後まで見届けたいと願っています。

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/13(月) 20:32:11.57 ID:IZbPHyqi
投下乙です
モルフォ蝶ってウルトラQのあの話に出てきた奴か…
となるとまさか"例の沼"も存在してる?
これはサービス展開が期待できるかもしれない

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/14(火) 17:54:36.09 ID:VUYhvte0
>>150
モルフォ蝶はわかるがサービス展開ってなんぞや?

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/14(火) 18:53:55.14 ID:K8o8Gshq
モルフォ蝶の毒鱗粉を浴びた人間はある条件で巨大化するんだが
当然服は大きくならないから……後は分かるな?

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/14(火) 21:38:53.89 ID:TGQzSnM0
エレンですね、わかります

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/14(火) 23:09:22.11 ID:BnHwV9IP
つまりギーシュのフルティン回か。まさにダークファンタジーだな

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/14(火) 23:33:45.08 ID:VUYhvte0
>>152
なるほどね
で、君は誰のサービス展開が見たいの?

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/15(水) 16:37:36.20 ID:yDjhZx8/
まあ順当に考えてマリコルヌ

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/15(水) 17:05:28.20 ID:M10iu2jQ
>>156
あの場面にいねーよ

158 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:26:15.48 ID:q+189RFb
ウル魔の方、乙です。
私も投下したいと思います。開始は21:30からで。

159 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:30:10.81 ID:q+189RFb
ウルトラマンゼロの使い魔
第六十七話「ハーフエルフの娘」
隕石小珍獣ミーニン
悪質宇宙人レギュラン星人 登場

 入室してきた金髪の少女へと顔を上げた才人は、途端に硬直した。彼女の美貌に……容姿に、
思わず心を奪われてしまったのであった。少女の顔立ちは、宇宙一美しいと言われる
怪獣ローランもかくやというほどだった。
 しかしそれ以上に目を引くところが、胸であった。何という大きさであろうか! 才人は生涯に
これほど大きな女性の胸というのは見たことがなかった。魔法学院一と謳われるキュルケ以上。
たとえばルイズとは、最早比べることすらおこがましい。これぞ大怪獣サイズだ。
「ば……バスト・レヴォリューション!?」
 才人はそんなことまで無意識下に叫んでいた。だがそれで少女がビクリと震え上がった。
怖がらせてしまったか。
「ほ、本当に大丈夫? さっきから変なこと言ってるけど……」
「あ、ああいや、大丈夫だよ。今直面してる現実に色々と驚いただけだから」
 適当にごまかした才人はベッドから起き上がろうとする。しかし大分長いこと眠っていて、
身体がなまったからか、ふらついて倒れそうになる。
「わわッ……!?」
「あ、危ない!」
 傾いた身体を、少女が受け止めてくれた。その際の衝撃で、少女の金色の髪がはだけて、
隠れていた耳が露わになった。
 ツンと尖っていて、見慣れない形だ。物珍しさから才人が凝視すると、少女は慌てて自分の耳を両手で隠した。
「ご、ごめんなさい」
「え?」
「でも、安心して。危害をくわえたり、しないから」
 何を言われているのかよく分からなかった。もしかして、自分が怖がっているとでも思われたか。
「違う違う。あまり見ない形の耳だから、つい見つめちゃって」
 その言葉で、少女は何故か呆気にとられる。
「……ほんとうに、驚いていないの? 恐くないの?」
 聞き返され、才人は肯定する。少し耳が尖っているから、何だというのか。様々な異形の
宇宙人を見てきた身からしたら、そんなのは誤差みたいなものだ。
 少女はほっとしたような顔になった。
「エルフを恐がらない人なんて、珍しいわ」
「エルフ?」
 聞いたことのある名前だった。確か、ハルケギニアの“東方”に住むという種族の名前だったはずだ。
凶暴で、それこそ怪獣と同じくらいに恐れられているということだったが……それと目の前の少女は
とてもではないが結びつかない。
「そう、エルフ。わたしは“混じりもの”だけど……」
 自嘲気味につぶやく少女。何やら複雑な事情を抱えているみたいだが、初対面でいきなり
根掘り葉掘り聞くのは図々しい。
 そこで才人は、まず自己紹介する。
「礼が遅くなったけれど、助けてくれてありがとう。俺の名前は平賀才人。君は?」
「わたしはティファニア。呼びにくかったら、テファでかまわないわ」
 お互い名乗ったところで、さっきの小怪獣が舞い戻ってきた。
「キューキュウー」
「おいおい、もっと優しく運んでくれよ。折れたりはしねえけど、振り落とされるのは気分が
いいもんじゃねえからな」
 小怪獣はデルフリンガーを抱えていた。
「デルフ!」
「いよぉ相棒……。やっと目が覚めたか。よかったよかった」
「ミーニン、サイトの剣を持ってきてくれたのね。ありがとう」

160 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:32:45.68 ID:q+189RFb
「キュー」
 小怪獣の頭をなでるティファニアに、才人はその怪獣について尋ねる。
「そのミーニンっていう生き物は、ここで飼ってるの?」
「ええ。最近、近くの森の中でうろうろしてるのを子供たちが見つけて、連れてきてね。
見たこともない生き物だから初めはビックリしたけれど、すごく大人しいからそのまま置いてるの。
今では子供たちの良いお友達よ」
「キュッ」
 ティファニアはミーニンをそう紹介した。
 それからデルフリンガーとティファニアが、才人が意識を失っている間のことを説明してくれた。
限りなく死んでいた才人をデルフリンガーが能力で運び、そこを偶然ティファニアが発見。
先住魔法の力が込められた指輪の最後の一回を使い、才人の命をギリギリのところで復活させたこと。
そのことに才人は、心の底から感謝しきりだった。
 しかし、何かお礼がしたいところだが……その前に、自分はとんでもない問題にぶつかっているのであった。
「デルフ、大変なんだよ! 左手のルーンが消えちまってるんだ! これってどういうことなんだ!?」
 先ほど確認した通り、左手の甲には確かにあったはずのルーンが、跡形もなく消えている。
それについてデルフリンガーは、こう説明した。
「使い魔の契約が外れちまった理由……そいつはやっぱ、相棒が一度死んだからだろうさね。
使い魔は死ぬとルーンは消えるんだ」
「でも、俺は生き返ったんだぜ。ルーンも復活しないのか?」
「先住の魔法のことは、メイジの扱う魔法じゃ想定外だ。そういう機能はないんだろうね」
「自動で戻ったりはしないってことか。それじゃあ……もう一度契約したらいいんじゃないか?」
「おすすめはしないね。メイジは使い魔が死ねば、次の使い魔を召喚できるが……使い魔にとって、
“契約”は一生もんだ。生きてる状態で“契約が外れる”ってことがまずありえねえ。そんなわけで、
メイジと二回目の契約をした使い魔の存在なんか聞いたことねえし、やっちまったら、そいつの身体に
何が起こるかわからねえよ」
 思った以上に難しい問題のようだ……。サイトが重い顔をしていると、二人の話を端から
聞いていたティファニアが目をパチクリさせた。
「人が、使い魔……? そんな話、聞いたこともないわ。サイト、どういうことなの?」
「あッ……」
 回答に窮する才人。そのことを説明しようとすれば、話が『虚無』に行き着く恐れが大だ。
さすがにティファニアを自分たちの事情には巻き込めない。
「えっと、その……色々込み入ったことがあってさ……おいそれと教えられることじゃないんだよ。ごめんな……」
 仕方なく、無難にごまかすことにした。幸い、ティファニアはそれ以上突っ込んでこなかった。
「そう……仕方ないわよね。人には秘密の一つや二つ、あるものだもの。……わたしには
聞かせられらいことがあるのなら、しばらく席を外すから、その間に話し合ってちょうだい」
 それどころか気を利かせて、ミーニンを連れて退室していった。才人は彼女の後ろ姿へ、
小さくお礼を言った。
「それでなんだけど、デルフ……もう一つ、大変なことがあるんだ……」
「わかってるぜ。その左腕の腕輪……もう一人の相棒のことだろ」
 力なくうなずく才人。正直、ガンダールヴのルーンが消えたことよりも衝撃の大きなことであった。
 ゼロが、目を覚ます気配がないのだ。
「ゼロ、どうしちまったんだろう……。どうして俺が目覚めたのに、ゼロは眠ったままなんだ? 
おかしいじゃないか……」
「さすがにそこまではわからんね。ただ……」
「ただ?」
「……あの嬢ちゃんの指輪に残ってた魔力は、一人分だけだった。だから下手したら……」
 デルフリンガーの言葉の先を、才人は青い顔でさえぎる。

161 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:35:15.65 ID:q+189RFb
「そんな馬鹿な! 俺とゼロは一心同体なんだ! 他ならぬゼロがそう言ったんだ! だから……
俺だけが助かったなんてこと、あるもんか!」
「だから、もしかしたらって話だよ。単にもう一人の相棒は、まだ力が戻ってねえだけってことも
考えられらぁ。何せすげえ決着のつけ方だったからな。あんなん、誰にも真似できねえや」
「……ゼロ……」
 才人はひたすらに、ゼロの身を案じる。
 偉大なる勇士、ウルトラマンゼロ。思えば、自分が勇気を持って戦えたのは、ずっと彼が
側にいたからかもしれない。自分が見守られていることを実感していることで、ただの高校生だった
自分が戦場に立てたのかも……。そのゼロがいない今……ガンダールヴでもなくなった自分に、
どれだけの価値があるのだろうか。
 一人で暗い気分になっていると、窓の方から聞き覚えのある声が聞こえた。
『ああ……! やっと見つけました……!』
 よく聞き慣れた、爽やかな雰囲気の声音。振り返れば、窓のガラスに銀色の戦士の姿が映っている。
「ミラーナイト!」
 言うまでもなく、ミラーナイトだ。彼は才人の姿を確かめ、非常に安堵している様子であった。
『よかった……本当によかった……! ずっと捜してたのですよ……! サイト、あなたが
生きてて何よりです……。本当に犠牲になってたなら、私たちはどう償えばよかったのか……』
 かなり興奮しているようだったが、ミラーナイトは呼吸を整えて落ち着く。それから、才人へ呼びかけた。
『さぁ、サイト、皆の元まで帰りましょう。皆、あなたが死んでしまったのではないかと心配してるんですよ。
特にルイズがひどく落ち込んでて……。しかし、あなたが見つかった以上はそれも終わりです。
皆を安心させてあげましょう』
 だが、才人はそれに応じることが出来なかった。
「ミラーナイト、ごめん……。わざわざ捜してもらったのに……今は、それは出来ないよ……」
『え? ど、どうしてです? そういえば、何やら様子がおかしいですが、もしかして何かあったのでしょうか……?』
 心配して尋ねるミラーナイトに、才人は今の自分の状態を打ち明けた。そしてうつむき気味に
なりながらつぶやく。
「今の俺が帰ったところで、何が出来る? 何も出来ない……。俺はもうガンダールヴでも、
ウルトラマンでもない、ただの人間に逆戻りしたんだ……。こんなんじゃ、また敵が現れた時に
誰も守れない。帰っても、ルイズをガッカリさせるだけだよ……」
『……』
 ミラーナイトは何か言いかけたが、今の才人には何を言い聞かせてもどうしようもないと
判じたのか、口に出すことはなかった。
『……分かりました。サイト、あなたにはしばらく気持ちを整理する時間が必要みたいですね。
では今日は、私はこのまま引き上げます。ルイズたちにも、あなたを見つけたということは話しません』
 でも、とつけ加えるミラーナイト。
『ジャンボットやグレンファイヤーには伝えますよ。あの二人も私と同じように、あなたのことを
捜し続けてますので』
「うん、分かった。無理言ってすまないな……」
『……ゼロが目覚める時、そしてあなたが本当の意味で元気になる時が早く来ることを、祈ってますよ』
 その言葉を最後に、ガラスからミラーナイトの顔が消え失せた。
「……」
 残された才人は、じっと無言のまま立ち尽くした。その背中からは、あまりにも大きな悲痛さが
にじみ出ていた。

 その翌日、才人は肉体的には完全に復調した。元々、命自体が消えかけていた状態で特に目立った
外傷はもらっていない。そのため回復が早かった。

162 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:37:53.63 ID:q+189RFb
 世話にばかりなることに引け目を感じた才人は、何か出来ることをしようと手伝いを申し出た。
遠慮するティファニアを半ば強引に押し通して、今は薪割りを行っている。
「はぁ……」
 しかし薪割りを行う才人は、ため息を吐いてばかりでかなりブルーだった。薪を割る手つきも、
かなりもたついている。斧を振り下ろしても、ガスッ、ガスッ、と薪に食い込んでばかりで、綺麗に割れない。
 その手際の悪さも、彼が落ち込んでいる要因の一つだった。ガンダールヴのルーンがある状態で
斧を握れば、薪を割るくらいハイスピードでやってのけるはず。本当にその力を失ってしまったのだと
いうことを実感してしまった。
「ほんとに、何の力もないただの人間に逆戻りしちまったんだな……」
「そうしょげるなよ、相棒。伝説じゃなくなっちまっても、相棒は相棒に変わりねえだろ? 
少なくとも、俺にとっちゃそうだよ」
 ため息を吐いてばかりの才人を、近くに立てかけたデルフリンガーが慰めた。すると才人が聞き返す。
「俺が、ガンダールヴじゃなくなっても、お前はいいのか? お前はガンダールヴの剣なんだろ?」
「いいさ。六千年も生きてきたんだ。俺にとっちゃあ、相棒との時間なんて一瞬みてえなもんさ」
「でも、ルイズはそうじゃねえんだよな」
「まあね。それにあの娘ッ子は現役の『虚無』の担い手だ。また何か問題が降りかかるってのは、
十分に考えられる」
「そういう時に、戦える力のない奴がいたって、邪魔なだけだよな……」
「まあ、間違っちゃあいねえな」
 ヤプールは倒れた。しかしこのハルケギニアから悪の芽がなくなった訳ではない。別の魔の手が
ルイズに目をつけることはあり得る話。その時に、ガンダールヴでもない自分が側にいたら
むしろ足手纏いだ。それは忍びなさすぎる。
 しかしルイズのところへ帰らないとしても、これからどうするべきか。時が来れば、地球には
いつでも帰れるという心積もりでいたのだが、ゼロが目覚めない以上は帰る手段がない。
まさかこんなことになるなんて夢にも思っていなかったので、才人はすっかり途方に暮れていた。
「ゼロも一緒に目覚めてくれたら、少なくともこんな思いはしなくて済んだのに……って、
俺は本当にゼロ頼みだな、はは……」
 自分一人では一歩も踏み出すことが出来ないことを自嘲しながら、次の薪を割ろうとする。
 だが……切り株の上に置いたはずの薪が、綺麗さっぱりとなくなっていた。
「あれ?」
 どこかに転がっていったか? と思って周りを見回すが、それらしいものはどこにもなかった。訝しむ才人。
「デルフ、確かに俺、ここに薪を置いたよな。どこに行ったか知らないか?」
「いや。見てなかった」
 大層不思議がる才人だが、何かの記憶違いだと思い、気を取り直して次の薪へ手を伸ばす。
 しかしその時、才人が掴もうとした薪にどこからか飛んできた光弾が当たり、一瞬にして
跡形もなく燃やし尽くした!
「!? 誰だッ!」
 明確な異常事態だ。才人が振り返って叫ぶと、光弾の飛んできた方向の森の陰から、異形の
シルエットが姿を現した。
『フハハハハハ! 貴様はウルトラマンゼロの変身者だなぁ〜! こんなところで発見するとは
思わなかった!』
 首があるべきところが三角錐になっているような、鈍色と紫色ののっぺらぼうの怪人。
ハルケギニアの生命体ではないとひと目で分かる容姿であった。
「宇宙人か!」
『如何にも! 私はレギュラン星人ヅヴォーカァ! 宇宙一の嫌われ者だぁ! ウルトラマンゼロの首は、
この私が頂く!』

163 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:40:32.43 ID:q+189RFb
 レギュラン星人と名乗る宇宙人は堂々と宣言した。まさか今、宇宙人に狙われるとは思っていなかった
才人は激しく動揺するが、それを相手に悟られないようにするかのように身体の震えを抑え込んだ。
「ヤプールは倒れた! それなのに、まだハルケギニアを狙うつもりなのかよ!」
『当然だぁ! ヤプールが死に、宇宙人連合もまた分解したが、私はそんなものがなくともこの美しい星を
我が物にするつもりだった! むしろ競争相手が勝手にいなくなってラッキーというところだ!』
 レギュラン星人は根っからの侵略者。ヤプールとは関係なしに、ハルケギニアを狙っているという。
しかもこんな時に限って、自分が狙われてしまうとは、と才人は己の不運を呪った。
『こんなに接近しても、ウルトラマンゼロの気配は微塵も感じられない。どうやら、お前だけが起きてて
ゼロは力を取り戻していないようだな! ますます僥倖! ゼロが復活する前に、息の根を止めてくれよう! 
どうだぁ、私の悪賢さはぁ!』
 しかも、ゼロが目覚めていないことまで知られてしまった。これでレギュラン星人は何があっても退いたりはしないだろう。
 焦る才人。ミラーナイトたちを呼ぼうとしても、この距離だ。どう考えても相手の攻撃する方が早い。
カプセル怪獣も、先の戦いでの負傷があまりにも大きく、まだカプセルから出せない状態。丸裸も同然である。
 いや、まだ己の肉体が残っている! 自分はともかく、せめてゼロの命は何としてでも守ろうと、
才人は自分の力で立ち向かう覚悟を固めた。
「おい、あんまり馬鹿にするなよ、レギュラン星人。ゼロの前に、この俺がいるぜ!」
 精一杯の見得を切るが、レギュラン星人はむしろ大笑いした。
『グッハッハッハッハッ! ただの地球人風情が、このヅヴォーカァ様に勝てると思ってるのか? 
思い上がりも甚だしいわ! グハハハハハ!』
「思い上がりかどうか……今に分からせてやるぜ!」
 斧を投げ捨てた才人は、デルフリンガーへと持ち替える。しかしやはり、デルフリンガーを握っても
ルーンがあった時のように身体はちっとも軽くならなかった。
「……相棒、無茶だ。今の相棒じゃ、勝ち目はねえよ。力の限り逃げる方がまだ助かる目がある」
 デルフリンガーが警告する。しかし才人は引けなかった。
「ここで逃げたらテファたちが危ない。ゼロが起きてるなら……同じことを言うはずだぜ」
「相棒……」
「何。俺だって今までの戦いの間中、寝てた訳じゃないさ。宇宙最高の戦士の戦いぶりを、
すぐ側から見てきた。だから俺だって、いざとなりゃ戦えるはずだ!」
 と、己に言い聞かせる才人。そう思わないことには、絶望で押し潰されてしまいそうだ。
「行くぞッ! うおおおぉぉぉぉぉぉッ!」
 気合い一閃、才人が遮二無二突っ込んでいくが、
『ふんッ!』
 レギュラン星人の放った光弾によって、デルフリンガーはあっさりと弾き飛ばされてしまった。
続く二発目が才人の足元に当たり、才人は衝撃で転倒してしまう。
「ぐぁッ!」
『口ほどにもない。想像したよりもはるかに弱いぞ。笑いすら起きんわ』
 レギュラン星人は、嘲るを通り越して呆れ返っていた。
「く、くそぉ……」
 仰向けに倒れたまま、悔しさに打ち震える才人。予想していなかった訳ではないが、本当に全く歯が立たない。
ゼロの力も、ガンダールヴの力もない自分が、本当にただの軟弱な高校生だという決定的な証拠を見せつけられた。
 ガクガクと身を起こそうとする才人の腹を、レギュラン星人が踏みつける。
「がはッ!」
『あまりに張り合いのない終わり方だが、容赦はせん! 貴様はあの世でウルトラマンゼロに、
自分の弱さのせいで道連れにしたことを謝っておくんだな!』
 押さえつけた才人を粉々にするだけの威力の光弾を、手の平に作り出すレギュラン星人。才人は最早逃げることも叶わない。
 ああ、才人よ! そしてウルトラマンゼロよ! せっかく死の淵から生還する奇跡を手にしたというのに、
こんなにも早く死の世界へと押し戻されてしまうのか! だが、才人が助かる道はもうどこにも見当たらない!
 才人の最期の瞬間が、もうすぐそこに迫ってきた!

164 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/15(水) 21:41:19.54 ID:q+189RFb
今回は以上です。
うわー、才人はもうおしまいだー(棒)

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/15(水) 22:08:07.64 ID:r5bQwyOq
将軍ktkr
いったいどうなってしまうんだー(棒)

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/17(金) 11:57:15.53 ID:cO8d1bQw
ディーキンはいい冒険者だなぁ
うちの冒険者どもは疑わしきはすぐディテクトイービル悪を討つ一撃だ

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/17(金) 20:21:21.50 ID:QRTzN+yC
だめなの?基本じゃんw

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/17(金) 20:26:53.65 ID:cO8d1bQw
>>167
そうだけどさ!w
今回のフーケみたいに大体大当たりなんだけどさ!w

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/17(金) 20:51:50.97 ID:5LlzHjBK
今のルールは知らんのだがディテクトイービルだとフーケ抜けるんじゃねえかな
あれ悪意感知とか敵対感知じゃなくて邪悪な生き物かどうか判定する魔法でしょ?
フーケってすっぱり悪って断定できるようなキャラじゃないし普通に通りそうな気がするけどどうなん?

俺がGMやるなら邪悪ではないことにするな、そっちの方がシナリオとして面白くなりそうだし

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/18(土) 00:17:56.79 ID:rfMEypH3
フーケは原作でもためらうことなくゴーレムやロケランで殺人をやろうとしているからなあ
身内を養うために盗みをしているにせよ、そのために他人を殺すことに呵責を覚えない時点でD&D基準ではおそらく悪かと
悪人だってよっぽどでない限り身内や友人ならある程度大事にするのは当然だし
好意的に解釈するとすれば、かなり無慈悲な傾向の中立と見れないことも無いけどさ

まあ問題はそこじゃなくて、ディーキンも言ってるけど悪だったからと言ってフーケだと決まるわけじゃないって事だな
悪だからって証拠もないのに問答無用で殴れば罪に問われるのは殴った方よ

171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/18(土) 19:17:44.63 ID:rjNdNZgA
ウルゼロの人乙
才人まだ居眠りでもしてんじゃないのか

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/18(土) 23:59:00.34 ID:Pd6lkNkQ
なんか巨大ロボットが出てきそうな予感・・・

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/19(日) 12:37:16.76 ID:Whs1rH3b
そういえばローランか、マグマ星人の美的感覚はさっぱりわからん

174 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/20(月) 13:11:15.28 ID:6B7jbryC
失礼します。
他に予約などなければ、13:20頃からまた続きを投下させてください。

175 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/20(月) 13:20:23.02 ID:6B7jbryC
 
「ええと、この……『守護の杖』、っていうのの使い方だったね。
 この杖はディーキンがいた所ではすごく有名だから、調べなくてもちゃんと知ってるよ」

ディーキンは方針を決めると、こちらでは呼び名の違う『魔道師の杖(スタッフ・オヴ・ザ・マギ)』を手に取ってしげしげと眺めながらそう伝えた。
それを聞いたロングビルは驚いたような様子を見せながらも、ならば早く使い方をと急かす。

「いいよ。じゃあ、上手くいくかわからないけど、ちょっと使ってみるね……」

他人の物をやたらに使っていいものかとも思ったが、この杖の機能はすべて使っても減らないものか、再チャージが可能なものだ。
ひとつだけ使うと取り返しのつかない機能があるが、それ以外ならまあ構うまい。

とはいえ今のところは、彼女にすべての機能を教えるつもりもないが。

ディーキンはこほん、と咳払いをすると、偉大な魔道師になったつもりで厳かに杖を掲げた。
精神を集中し、自分にはこの杖を使いこなす能力があるのだということを、自分自身に強く言い聞かせる。

この『魔道師の杖』は定命の存在には作成することのできないアーティファクトであるが、呪文解放型のアイテムであるスタッフの一種でもある。
そして呪文解放型のアイテムから呪文を解き放つには、その中に蓄えられている呪文を発動可能なクラスを持つ者でなくてはならないのだ。

しかるに今ディーキンが使用しようと試みている呪文は、本来のバードの呪文リストの中には無い。
そこでディーキンは、<魔法装置使用>の技能を用いて杖に呪文を解放させようとしているのである。
これは運と強固な人格だけを頼りにして魔法の品をいわば騙し、強引にその力を引き出させるための技術だ。
ハルケギニアでは知られていないようだが、フェイルーンにおいては主にローグやバードなどがこの技能を習得していることが多い。

それにしても……。

この希少な杖は、今やマギ(魔道師)は愚かアークマギ(大魔道師)でさえ、所有することを生涯夢見てついに叶わぬ者が多いのだという。
それをよりにもよって専業のメイジですらないバードなどが手にし、こんな乱暴な方法で使うとは、何とも言えぬ話である。
フェイルーンのメイジがこのことを知ったら、いったい何というだろうか。

ディーキンはふとそんなことを考えて、少し苦笑してしまった。
が、気が散っていては成功が覚束ないので、すぐに気を取り直して杖の使用に集中する。

まずは、チャージを消費しない比較的弱い能力から。

「《リトリックス》!」

コマンドワードを唱えて杖の先端をロングビルに差し向けると、一瞬だけ白い光の帯が輪を描くようにして彼女の周りを包み、そして消えた。

「……い、今のは、一体?
 何も、変わったところは、ないみたいですけど……、」

何が起こったのかわからず、戸惑った様子で自分の体を見回すロングビル。
ディーキンはにっと微笑むと、懐から普段は羊皮紙を削るために使っている小さなナイフを取り出した。

「ええと、今のは《魔道師の鎧(メイジ・アーマー)》っていう呪文なの。
 目に見えないヨロイで、体を守るんだよ」

この呪文は不可視だが実体をもつ力場の鎧で対象のクリーチャーを包み込み、守るというものだ。

ごく初級の呪文であり、防御効果も平凡なチェイン・シャツやハイドアーマーと同程度で、そこまで高くはない。
しかし重量が皆無で体の動きを一切妨げず、持続時間も長いので、動作要素を妨げてしまう鎧を着込めない多くのメイジに常用されている。
モンクのように鎧を着られない戦闘者にとっても有用であり、鎧の着用が不適切な場所での護身用等で普通の戦士にも利用されることはしばしばある。

このようにフェイルーンでは広く普及している防御用の呪文なのだが、どうもハルケギニアには類似の呪文はないようだ。
ハルケギニアのメイジは事前に防御や強化の呪文をかけておくのではなく、主にその場で風の防壁を張ったり体を硬化させたりして攻撃を防ぐらしい。

ディーキンは軽い説明を終えると、ロングビルにナイフを手渡して、自分で確かめてみるように促した。

176 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/20(月) 13:22:46.51 ID:6B7jbryC
 
「身を守る呪文……、ですか?」

ロングビルは少し躊躇したが、恐る恐るナイフの刃を自分の肌にあてて、ゆっくりと力を込めて押してみる。
だが、まるで硬くなめした分厚い革鎧を押しているかのような感覚に遮られて刃が沈まず、肌を傷つけることはなかった。
素手で刃をぎゅっと握ってみたり、少し勢いをつけて振り下ろしてみたり、包丁のように引いてみたりもしたが、やはり傷はつかない。

「ね、大丈夫でしょ?」

「……本当……。これは、確かに『守護の杖』ですわね」

オスマンが言及していた呪文を防ぐ効果に加えて、武器を防ぐ鎧のようなものを生み出す力もあるとは。
確かに“守護”の名にふさわしい逸品だ。

ロングビルの嬉しそうな表情をちらりと観察してから、ディーキンは咳払いをした。

「オホン。じゃあ、次の効果を説明するよ」

「え? ……ま、まだ何かあるのですか?」

「そうだよ。この杖はすごくいろいろなことができるからね」

ロングビルの驚き半分、喜び半分といった表情を密かに伺いながら、ディーキンはまた杖を掲げた。
今度は、チャージを消費する呪文をひとつ、使用してみせよう。

「《ドルラス》!」

コマンドワードを唱えると同時に、小屋の側面の壁に向けて杖を振る。
途端に、壁が音もなくぱっくりと開き、瞬時に外に通じる通路が出来上がった。

学院長秘書ミス・ロングビルこと『土くれ』のフーケは、驚きに目を見張った。

壁に穴を開けるだけなら自分も得意だが、これは明らかに『錬金』ではない。
壁を別の材質に変えて崩したのではなく、どうやったのかはわからないが、壁を消滅させてきれいな出口を作りやがった。

(こ、これは……!)

これはもしや、今後の仕事にものすごく便利な能力なのじゃないだろうか?
フーケは、思いがけぬ朗報で期待に胸を膨らませた。

「す、すごい呪文ですわね……。
 その、これは……、どんな壁にでも穴を開けられるのでしょうか?」

「まあ、大抵はね」

「その、たとえば金属の壁でも、魔法で固定化された壁でも?」

「……ン〜、そうだね……」

ディーキンはちょっと考え込むような仕草をしながら、さりげなくロングビルの様子を観察する。

彼女に少し鎌をかける意味も込めて、今の《壁抜け(パスウォール)》の呪文をお披露目してみたのだが……。
そうしたら案の定、普通に考えてフーケとの戦いには役立ちそうもない壁抜けの呪文に、露骨な関心を示している。

これはもう、どう考えてみても怪しいと言わざるを得ない。
だが、いかに怪しいとはいっても、依然としてそれは疑惑であって、確定ではない。

彼女が白か黒かは、この小屋を出て他のメンバーと合流する前にはっきりさせておかなくては。
もし潔白だったら彼女に不快な思いをさせてしまうことにはなるが、この状況では致し方ない。

177 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/20(月) 13:25:04.18 ID:6B7jbryC
 
ディーキンは静かに杖を置くと、真剣な顔をしてロングビルの方をじっと見上げた。

「ねえ、ロングビルお姉さん」

「はい?」

「ディーキンはこんなことを言うのはとっても失礼だとは思うんだけど……。
 後で殴ってもいいから、ちょっとだけ聞いてほしいの。
 実はね、ディーキンはさっきから、もしかしたらお姉さんがフーケだったりしないかなって思ってるんだよ」

フーケはその唐突な言葉に、ぎょっとして目を見開いた。
それまでは期待と興奮とで若干紅潮していた顔の色が、たちまち青ざめていく。

「!! ……な、何故、そんな……?」

かろうじてそんな言葉を喉から絞り出したロングビルに、ディーキンは心底申し訳ないといった様子で深々と頭を下げる。
それから、自分がそのような疑いを持つに至った理由を、包み隠さずに一から説明していった。

――もちろん、この選択は有利不利という面から見れば、まったく賢明とはいえない。

もし本当に彼女がフーケであるならば、自分の疑念に相手がまったく気付かずに油断しきっているという有利な状況を、自ら手放したことになる。
しかも、自分の疑念を明かすことで、一触即発の極めて危険な状況を招いてしまう危険性も高い。

ここは自分の考えを隠し通して何食わぬ顔でいたほうが安全だし、尻尾も掴みやすいだろう。
手段を問わないなら、密かにロングビルの思考を読むなり、心術で操って自白させるなりすれば、もっと話が早い。

勿論そんなことは、ディーキンも十分承知している。
だが、やっぱり性に合わない。
下手に隠し立てなどせずに、こうして疑っているなりに誠心誠意正面から相手に向き合うほうが気が楽だ。
ボスでもきっとそうすることだろう。

今ここには、自分と彼女の2人しかいない。
仮に彼女が真犯人でも、自分が疑いを暴露したことで他の仲間が人質に取られるなどの危険に晒される心配は、当面はない。
そして場合によっては、犯罪を止める約束と引き換えに彼女の正体を自分の胸の内にだけ秘めておくというような提案をすることもできる。

先程はできることならルイズらに相談したいとも思っていたが、今考えるとそれは必ずしもよい方法では無いかもしれない。
別に仲間を頼りにしていないからではなく、彼女らの立場を考えた上でのことだ。
もしパラディンであるシエスタや貴族としての責務があるルイズらに知らせれば、立場上、彼女らはフーケを捕らえないわけにはいかない。
そして彼女を司法機関に突き出し、おそらくは死刑確定であるとわかり切った裁判にかけざるを得ないだろう。

そうなってしまえば平民でしかないシエスタや所詮は学生の身であるルイズらがいくら口添えしてみたところで、フーケの命を救えはしまい。
それが本当に望ましい、最良の結末だとはとても思えない。
もしロングビルが本当にフーケだったとしたら、フーケによる被害を終わらせ、かつフーケの命をも救うという選択ができるのは今しかない。
少なくとも、ディーキンにはそう思えた。

それら諸々の理由から、ディーキンは今、この場で彼女と向き合うことに決めたのだ。



(……ちっ。このガキ、変わった特技があるだけなのかと思ったら、案外鋭いじゃないか。
 もしかしたら、見た目ほどは子どもじゃないのかもしれないね……)

先程は突然のことで一瞬目の前が真っ暗になったような気がしたフーケだったが、ディーキンの話を聞いているうちに少し落ち着きを取り戻した。
むしろディーキンの方が、彼女が気を落ち着けて話をできるよう言葉遣いや話の筋道などを考慮して丁寧に話を進めたからという面もあるのだが。

(ふん……。だけど、黙っときゃあ私を不意打ちでもできたかも知れないものを。
 わざわざ教えるなんて、こいつはとんだ間抜けさ!)

178 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/20(月) 13:27:26.50 ID:6B7jbryC
 
まあ、あのエロボケじじいや純情ハゲよりは手強い。
だが、やはり愚か者は愚か者。
せっかくの値千金の気付きを無駄にして、自らの優位をドブに捨てるとは。

正面から話せば何とかなるだろうという、思慮の浅い甘い考えか?
それとも、自分の素晴らしい気付きをひけらかしたいという、子どもじみた自己顕示欲か?

いずれにせよ確かなのは、所詮ガキはガキだったということだ。
屋内で近距離からこうして向き合っていては打つ手がないとでも思っているのかも知れないが、こっちだって保険くらいは掛けてある。
自分もいささか油断していたが、おかげで助かった。

ディーキンが丁寧に説明を続けている間に、フーケはこの状況を打破するための行動計画をまとめていた。



「――――そういうわけで、ディーキンは今、お姉さんへの疑いが捨てきれなくて。
 それで、その、すごく失礼だとは思うんだけど。
 呪文でお姉さんが嘘をついていないかどうか調べる方法があるの、ちょっとだけ調べさせてもらえない?
 後で何か、お詫びはするから……」

フーケが内心で自分を嘲り、始末する計略を巡らしていることに果たして気が付いているのかどうか。
ディーキンは一通りの説明を終えると、そう頼んで深々と頭を下げた。

「……ええ、そうですね……。
 なるほど、言われてみれば疑われるのももっともですわ――――」

そう答えつつ、宝物の2振りの杖をさりげなく自分の後ろの方へ押しやった。
その事を不審に思われぬよう、すぐに自分の杖もポケットから取り出してそれらの杖と並べて置くと、ディーキンの方へ向き直る。
抵抗の意志が無いことを示すための所作の一環と見せかけたわけだ。

「わかりました……、どんな呪文かは知りませんが、どうぞ試してみてくださいな?」

そう言うとすっと姿勢を低くして、取り調べを待つ罪人のようにディーキンの前で大人しく膝をつき、頭を垂れた。

「オオ、本当にいいの?
 ありがとう、ディーキンは寛大なお姉さんに感謝するよ!」

やや身構えていたディーキンはあっさり受け入れられたのが少し意外だったのが、しばし目をぱちぱちさせていた。
が、すぐに気を取り直してもう一度深々とお辞儀をすると、早速準備に取り掛かる。

実際にはこの姿勢は、予備の杖を抜く動作を不審がられぬよう誤魔化すため、しおらしく頭を垂れて見せたのは、表情や唇の動きを観察されぬため――。
フーケはディーキンから見えぬ死角で、密かに太腿のガーターベルトに仕込んだ予備の杖を手に取った。
そして、気付かれぬよう伏せた顔の下で小さく唇を動かし、呪文を紡ぎ上げる。

(………今だ!)

呪文を掛けるのに必要な道具でもあるのか、背負い袋から何かを取り出そうとしてディーキンが自分から視線を外した隙にフーケは行動を起こした。

ディーキンに見えないよう素早く利き腕と逆の手で予備の杖を抜いて小さく振り、呪文を解放。
唱えたのは『念力』の呪文、それで先程後ろに置いた自分の本来の杖を引き寄せ、空いている利き腕で掴む。

それにしても、何故予備の杖ではなく、本来の杖が必要なのか?

それは、この中にディーキンを始末するべき事態が起きた時に備えて、小屋に入る前にあらかじめ唱えておいた必殺の呪文が蓄えてあるからだ。
ハルケギニアの系統魔法では、あらかじめ詠唱を済ませた魔法を即座に発動させずに待機させておくことができる。
フェイルーンの呪文にも、唱えた後チャージ消費までそのまま保持しておける種類の物があるが、それと同じようなものだ。
ただし系統魔法は、たとえ事前に唱えておいたにせよ、その杖が無ければ発動させることはできない。

179 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/20(月) 13:30:11.13 ID:6B7jbryC
 
もちろん本来の杖を机に置いたりしなければ予備の杖を使う手間も無かったが、これには狙いがある。
目の前のディーキンを安心させ、油断させるためなのは勿論だが、それ以外にもフーケにはもうひとつ気がかりなことがあったのだ。

それは、使い魔との感覚共有によって、彼の主であるルイズにこの一件が伝わっているのではないかということ。
感覚共有は、常時作動しているわけではない。だが今は非常時であり、ルイズが頻繁に使い魔の様子を見ていることは十分に考えられた。
だから、フーケはディーキンの目を通して見ているかもしれぬルイズの疑いを晴らすことも意識していた。
今は杖を持っていない状態であり、不審な動作も無かったのだから、結局ロングビルはフーケではなかったのだ……、と印象付けようとしたのだ。

実際にはディーキンはルイズと正規の契約をしていないからそんな心配はないのだが、それはフーケには知る由もない。

本命の杖を手にしたフーケは、ディーキンがまだ荷物袋の方に気を取られている間に、素早く蓄えておいた呪文を解き放った。
と同時に、小さく後ろへ跳ねるようにして飛ぶ。

「んっ? ……!?」

なにか不自然さを感じたのか、ふっと顔を上げたディーキンの目が驚きに見開かれる。
次の瞬間、小屋の天井を打ち破って、ディーキンの上に土混じりの巨大な鋼鉄の拳が降ってきた!

突然の強襲に、ディーキンは目の前が真っ暗になった。



「……!? 危ない!!」

「え? ……きゃ、きゃああああああ!? ディーキン、ディーキン!?」

「せ、先生!? ……ミス・ロングビル!」

「そ、そんな、いったい、フーケはどこから……!?」

ルイズらは、杖を調べている間はフーケの接近を見張ってくれるようにとロングビルから強く頼まれ、散開して主に外の方向に気を配っていた。
そのため、小屋のすぐ横に唐突に出現した巨大なゴーレムに気付いて、警告を発するのが遅れたのだ。
鋼鉄と化した拳が小屋を叩き潰す直前にタバサが気付いていつにない大声で警告を発したが、ゴーレムの攻撃を避けるには遅すぎたようだ。

ルイズとシエスタは恐怖に顔を歪め、半ば狂乱したような状態で自分の身も顧みず小屋の方へ駆け寄る。
キュルケは悲痛な顔をしながらも、フーケの姿を見つけようと必死に周囲を見渡した。
タバサもキュルケの傍に寄ると、いつもの鉄面皮を僅かに歪ませながらも、ゴーレムの動向を警戒し続けた。

「あ、危ないです! みなさん、逃げてっ!!」

宝物の杖を2本も抱えたロングビルが、必死な様子で小屋の窓から飛び出すと近づいてくるルイズとシエスタに警告を発した。

「ミ、ミス・ロングビル! 無事だったんですか!! ディーキンは……、」

それを見て皆が喜び、僅かに安堵したのもつかの間。
続いてディーキンが飛び出してくることはなく、ロングビルが小屋から飛び出した直後にゴーレムは崩れ落ちて、ただの土の塊になった。
そうしてできた大量の土砂が雪崩れ落ち、ルイズとシエスタの目の前で、完全に小屋を埋め尽くす。

2人の悲痛な絶叫が、あたりに響いた。

180 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/20(月) 13:32:38.44 ID:6B7jbryC
 
<魔法装置使用(USE MAGIC DEVICE)>:
この技能の判定に成功すれば、本来ならば使用条件を満たしていない魔法の品を強引に使用することができるようになる。関係能力値は魅力。
たとえば魔法の使い手ではない者がワンドやスクロールを使用したり、善属性でなければ起動できない聖具を悪属性の者が使用したりできる。
能力値不足で使えないアイテムを使うために高い能力値があるかのように装ったり、本来は特定の種族やクラスでないと使えない品を使うこともできる。
ハルケギニアでいえば、廉価版ミョズニトニルンのような真似ができると思えばよい。
ただし、最も簡単なワンドの使用等であってもそれなりの達成値が要求されるので、技能レベルが低いうちはなかなか成功しない。

マギ(魔道師)、アークマギ(大魔道師):
D&Dの第3.0版以前、AD&D1st時代の用語で、マギは16Lv以上、アークマギは18Lv以上のウィザードのことを指す。
ディーキンはウィザードではないので、いくら強かろうとそう呼ばれることはない。

メイジ・アーマー
Mage Armor /魔道師の鎧
系統:召喚術(創造)[力場]; 1レベル呪文
構成要素:音声、動作、焦点具(保存処理を施した革一切れ)
距離:接触
持続時間:術者レベル毎に1時間(解除可)
 不可視だが実体のある力場が呪文の対象を取り巻き、アーマー・クラスに+4の鎧ボーナスを与える。
この鎧には防具による判定ペナルティも秘術呪文失敗率もなく、移動速度も低下しない。
また、力場でできているため、普通の鎧を素通りしてしまう幽霊等の非実体クリーチャーの攻撃に対しても有効である。
 この呪文はその名の通りウィザードやソーサラーの呪文であり、バードの呪文ではない。

パスウォール
Passwall /壁抜け
系統:変成術; 5レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(ゴマひとつまみ)
距離:接触
持続時間:術者レベル毎に1時間(解除可)
 術者は木製の壁、漆喰壁、石壁を通り抜ける通路を作り出す。金属その他の、それより硬い材質の壁を通り抜ける通路を作ることはできない。
この通路の奥行きは10フィート+術者レベルが9レベルを超える3レベルごとに5フィートである(ただし最大でも18レベル時の25フィート)。
パスウォール呪文を何回か使用することで、非常に厚い壁に穴を開ける連続した通路を作り出すこともできる。
呪文の持続時間が終了すると、その通路の中にいたクリーチャーは最寄りの出口へと排出される。
誰かがパスウォールを解呪したり、術者が解除した場合、通路の中にいたクリーチャーはその時点で開いているうちの遠い方の出口から外に排出される。
 この呪文はウィザードやソーサラーの呪文であり、バードの呪文ではない。

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/20(月) 13:33:10.47 ID:vWsVo9Nt
支援

182 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/20(月) 13:33:48.39 ID:6B7jbryC
今回は以上になります。
では、またできるだけ早く続きを書いていきたいと思いますので、次回もどうぞよろしくお願いいたします……(御辞儀)

183 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/20(月) 13:34:37.49 ID:6B7jbryC
>>181
ご支援をいただきまして、ありがとうございます(深々)

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/20(月) 13:35:01.78 ID:vWsVo9Nt
乙です

185 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:35:20.27 ID:VtEMTDMB
ディーキンさん乙です。
みなさんこんばんは。暗の使い魔です。
宜しければ19時40分から投下の方、させてください。

186 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:40:09.29 ID:VtEMTDMB
翌朝。朝もやの中、ルイズと官兵衛そしてギーシュは、馬の背に荷物と鞍をくくりつけていた。
その片手間に、これからの旅路について話し合う。
ちなみに官兵衛の乗る馬は、二人の馬に比べて一回りほど大きく立派なものが用意されていた。
官兵衛の引き摺る鉄球は、並みの男では持ち上げる事すら敵わない。
そんな鉄球をくくりつけられた官兵衛が騎乗するとなると、馬も通常のものでは満足に長距離を走る事は出来なかった。
「お願いがあるんだが……」
準備の途中、ギーシュが困ったように二人に言葉を投げかけた。どうした、と官兵衛が振り返る。
「僕の使い魔を連れて行きたいんだ」
「お前さんの使い魔?」
官兵衛が怪訝な顔で答えた。
「連れて行きたいなら行きゃあいい。どこにいるんだ?」
官兵衛があたりを見回す。しかしそれらしい影はどこにも見当たらない。
ギーシュはにやっと笑うと、地面を叩いた。すると地面の土が盛り上がり、その山の中から茶色い巨大な生物が顔を出した。
「こいつは……」
官兵衛はこの生物に見覚えがあった。たしかヴィリエに決闘を挑んだ時、ギーシュが抱えてた生き物だ。
ギーシュがすさっと屈み、それを抱きしめる。
「ヴェルダンデ!ああ!僕のかわいいヴェルダンデ!」
ヴェルダンテは嬉しそうにギーシュにすり寄る。
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
ルイズが小熊ほどもあるヴェルダンデを見て言った。
「そうだ。ああヴェルダンデ、きみはいつ見ても可愛いね。困ってしまうね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」
ギーシュがにへら顔で頬ずりするのを見て、ルイズはドン引きした。官兵衛もなにやら可哀想なものを見る目になる。
いくら可愛いとはいえ、ギーシュの使い魔に寄せるその愛情は異常であった。
「ギーシュ。使い魔とのスキンシップの所悪いけど、そのモグラは連れて行けないわ」
「ど、どうしてだね!」
ルイズの言葉にギーシュがいきりたって言う。
「だって私達、これからアルビオンに行くのよ?地中を進む生き物なんて連れて行けないわ」
ギーシュの顔が瞬く間に絶望に染まった。
「そ、そんな……。お別れなんて寂しすぎるよ……。ヴェルダンデ……」
へなへなと地面に崩れ落ちるギーシュ。そんな彼をよそに、官兵衛は巨大モグラを眺めた。
「(モグラ、モグラか……)」
官兵衛はヴェルダンデを見つめていると、いつしか穴倉に置いてきた人懐っこいモグラの事を思い出した。
サイズは大分違うが、あいつもこんなつぶらな瞳をしていて可愛かったなぁ。
発掘作業中いつでも傍に居て、ちょこちょこ付いて来て。
天下を取ると、いつしか約束してきたが元気にしているだろうか。
そんな事を思い浮かべながら、官兵衛はしんみりとヴェルダンデの頭を撫でた。
「ああ、可愛いな……。確かにこいつは可愛い……」
「な、なによカンベエ。まさかあんたまで……」
ルイズは顔を引きつらせながら、そんな男二人の様子を眺めていた。
と、突如ヴェルダンデが鼻をヒクつかせ、ルイズに覆いかぶさった。
「ちょ、ちょっと!」
ルイズの体中を鼻でまさぐるヴェルダンデ。
ルイズは振りほどこうと地面をのた打ち回るも、小熊程もあるジャイアントモールに拘束されてはたまらない。
「ああ、美少女と戯れるヴェルダンデもまた可愛らしいなぁ。絵になるじゃあないか。はっはっは……」
「お前さん。戦ったあの夜、鉄球でもくらったか?」
どこか的外れな感想を述べるギーシュ。そんな彼を真剣に官兵衛は心配した。
「ちょっと!少しは助けなさいよ!きゃあっ!」
ちなみに官兵衛が助けないのは、鬱憤が溜まっている所為である。
そうこうしている内に、ヴェルダンデはルイズの右手の薬指に光る水のルビーに鼻を摺り寄せる。
「この!無礼なモグラね!姫様に頂いた指輪に鼻をくっつけないで!」
「成程指輪か。ヴェルダンデは宝石が好きだからね」
「ほう、随分賢いじゃないか」
官兵衛が感心したように言う。
「そうさ、彼はすごいんだよ。貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ」
「マジか!それじゃあ一攫千金も夢じゃあないな……!よければ今度小生にも貸してくれ!」
そんな間の抜けた会話をしている、その時だった。

187 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:42:06.75 ID:VtEMTDMB
突如一陣の風が吹きぬけ、ルイズに覆いかぶさるヴェルダンデが吹き飛ばされた。
「ヴェ、ヴェルダンデェーーーーッ!」
ギーシュが、風が飛んできた方向を見て絶叫する。朝もやのなかから長身の羽帽子の貴族が現れた。

暗の使い魔 第十五話 『ワルド』

「貴様アァァァァァァァァッ!」
どこぞの凶王の如く、目から血涙を流しながらギーシュは激高した。
薔薇の造花を振るおうとしたが、先に杖を抜いた羽帽子の貴族が即座にそれを吹き飛ばす。模造の花びらが宙を舞った。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行することを命じられてね。君達だけではやはり心もとないらしい。
しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたって訳だ」
長身の羽帽子の貴族が、帽子を取ると一礼した。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
しかしそんな相手を気にした素振りもなく、ギーシュは尚のこと吼える。
「ザンメツしてやるッ!末に広がる十六裂きにッ!」
「落ち着けお前さんっ!味方だ、味方!というか、どこで覚えたその言葉!」
拳を構え、ずんずん突き進むギーシュを官兵衛が全身を使って抑える。
その勢いに、若干引き気味に答えるワルド。
「す、すまない。婚約者が、モグラに襲われているのを見て見ぬ振りは出来なくてね」
「婚約者?」
官兵衛は首を捻った。とりあえずギーシュをバックドロップで沈め、官兵衛はワルドに向き合う。
「ワルドさま……」
ルイズが立ち上がり、震える声で言った。
「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」
「お久しぶりでございます」
ワルドはルイズに駆け寄り、その身体を抱え上げた。ルイズも思わず頬を染める。
「相変わらず軽いな君は!まるで羽のようだね!」
「お恥ずかしいですわ……」
出やがったよ貴族特有の芝居がかったやり取りが、と官兵衛は思った。
正直こういった演劇は、嫌な思い出が蘇る。主に、元居た世界の南蛮宗教の演劇を思い出すのだ。
ここが異世界じゃなかったら、ステージを提供してやるのになぁ、と官兵衛はぼやいた。
「彼らを紹介してくれたまえ」
ワルドはルイズを下ろすと、再び帽子を目深にかぶりながら言った。
「あ、あの……、ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のカンベエです」
ルイズは地面でのびてるギーシュと、官兵衛を指しながら言った。
「はじめまして、だ」
官兵衛は気だるげに挨拶した。
正直官兵衛は、この羽帽子の貴族が気に入らなかった。
実力、地位、人気、全てを持っている。握手など求めてきたら、その隙に左手でグサリとしてやりたいくらいだ。
「君がルイズの使い魔か。まさか本当に人とは思わなかったよ」
気さくな感じで話しかけてくるワルドであった。しかし官兵衛はぶっきらぼうに接する。
「僕の婚約者がお世話になっているよ」
「そうかい、小生も随分世話になってるよ。あの娘っ子にはな」
何やら嫌味ったらしくルイズに向けて官兵衛が言う。それを聞いてルイズはフンとそっぽを向いた。
そんなやりとりを見て、ワルドは目を瞬きさせると、豪快に笑った。
「あっはっは!仲がいいようで何よりだよ!」
ワルドが口笛を吹く。すると、もやの中からグリフォンが現れた。
ワルドはひらりと華麗にグリフォンに跨ると、ルイズに手招きした。
「おいで、ルイズ」
ルイズはそれを見て、ためらう様に俯いたが、やがて顔を上げると静かにワルドの手を取った。
いつの間にか目覚めていたギーシュも、う〜んと唸ると周囲を見渡して首をかしげた。
「あれ?僕はいったい何をしてたんだっけ?」
「ほれ、さっさとしないと置いてかれるぞ」
官兵衛の言葉にギーシュは慌てて馬に跨る。そして最後に官兵衛が馬に跨ると、一向は出発した。
「では諸君!出撃だ!」
官兵衛はいつの間にか仕切っているワルドを忌々しく思いながら、馬を走らせた。

188 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:45:25.51 ID:VtEMTDMB
学院長室の窓から出発する一行を、アンリエッタは見つめていた。手を組み、目を閉じて祈る。
「彼女達にご加護をお与え下さい。始祖ブリミルよ……」
そんな厳かな雰囲気をぶち壊すかのように、隣ではオスマンが鼻毛を抜いていた。
「見送らないのですか?オールド・オスマン」
「ほほ、姫、見ての通り、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますのでな」
アンリエッタが額に手をやった。そこへ、激しいノックとともに、慌てた様子のコルベールが現れた。
「いいい、一大事ですぞ!オールド・オスマン!」
「君はいつでも一大事ではないか。どうしたのかね?」
「チェルノボーグの牢獄から、フーケが脱獄したそうです!門番の話では、さる貴族を名乗る妖しい人物に眠らされたと!
また、どうやら他の囚人を伴って脱獄した様子で!」
コルベールが一気にまくしたてるのを、まあまあとオスマンが宥める。アンリエッタが蒼白になった。
「わかったわかった。その件については後で聞こうではないか」
オスマンがコルベールに退室を促すと、コルベールは渋々いなくなった。アンリエッタは机に手をつき、ため息をついた。
「さる貴族……。間違いありません!アルビオン貴族の暗躍ですわ!」
しかし、アンリエッタの勢いを意に介さず、オスマンは鼻毛を抜きつづける始末。
「どうしてそのような余裕の態度を。トリステインの未来がかかっているのですよ」
「すでに杖は振られたのですぞ。我々にできる事は待つことだけ。違いますかな?」
「そうですが……」
アンリエッタは居ても立ってもいられないといった様子である。
「なあに彼ならば、道中どんな困難があろうとも、やってくれますでな」
「彼とは?あのギーシュが?それともワルド子爵が?」
オスマンが首を振った。
「まさか、あのルイズの使い魔の青年が?彼はただの平民ではありませんか!」
「姫は始祖ブリミルが用いた、最強の使い魔、ガンダールヴをご存知かな?」
「ええ、それが何か?」
アンリエッタは突如ふられた話題に首を捻った。そして、やや黙考の末、オスマンを見つめて言った。
「まさか、彼が?」
オスマンは喋りすぎたとばかりに目を瞑った。
「いやなに、彼はそのガンダールヴ並みに使える、と。そういう事ですじゃ」
はあ、とアンリエッタが口を開ける。
「加えて彼は異世界からやってきたのです。我々の想像も及ばない世界からのう」
「異世界?そんなものが……」
「無いとは言い切れますまい。現に彼は、あのような枷を負いながらも、顔色一つ変えずに様々な事をやってのけました。
我々とは、思考も行動も違う。そんな彼ならば、やってくれると信じておりますでな。余裕の態度もその所為なのですじゃ」
アンリエッタは遠くを見るような目になると、目を瞑り微笑んだ。
「ならば祈りましょう。異世界から吹く風に」

トリステインより馬で二日の距離にある港町ラ・ロシェール。
この港町こそ、現在ルイズ達が目指している、アルビオンへの玄関口であった。
固い岩肌に囲まれたこの町は、常に人口の十倍以上の人間がひしめく。商人、軍人、旅人、そして少なからずのならずもの達。
そんな町の裏通りを、人知れず歩き回る人影が二人いた。
脱獄した盗賊・土くれのフーケと、戦国の武将・長曾我部元親である。
「やれやれ、脱獄に成功したはいいけど、動きづらいったらありゃしないよ」
フーケが物陰に隠れながら愚痴を言う。逃げ出したフーケを捕らえるために、表通りには厳戒な封鎖がなされているのだ。
「どうやってアルビオンに渡ったものかねぇ」
それに対して元親は答えず、隣に座り、涼しい顔で武器の手入れをしている。
元親の手には、身の丈を遥かに超える巨大な槍。槍の穂先には、舟艇を固定する碇のようなものが、存在を誇示する。
長曾我部元親の自慢の得物、碇槍であった。
長曾我部元親は四国の地を治める武将である。
彼が突然にこの世界に放り出されたのは、約一週間前のことであった。
彼は、豊臣と毛利の間に怪しい動きがあるという情報を、雑賀衆頭領・雑賀孫市から手に入れた。
四国の長曾我部は、故あって豊臣の石田と親交がある。
しかしながら、長年西の海の覇権を争って睨みあって来た宿敵・毛利元就とは未だに敵対している。
彼は毛利と問いただそうと思い、船を出した。
いや、『それ』は船と呼ぶには語弊があるだろう。その山をおもわせる巨大なモノは。
それは、国の財政が傾くどころか火の海に沈むほどの資金、それをつぎ込んだ元親の最高傑作。
最高の技術、そして最高の漢の浪漫を凝縮させた、この世に二つとない代物。

189 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:47:34.71 ID:VtEMTDMB
元親は、百の鬼を束ねて海を制覇する、そんな想いを込めてその最高傑作をこう名づけた。
海賊要塞・百鬼富嶽、と。
百鬼富嶽には最新鋭のカラクリ兵器も積んであった。戦の準備は万端、と意気込んでいた長曾我部軍。その時だった。
なんと、彼の操る移動要塞・百鬼富嶽の上空に、暗黒の空間が姿を現したのだ。
星が煌き、宇宙空間を思わせるそれは、要塞全てを飲み込まんと迫ってきた。
混乱する長曾我部軍。得体の知れない現象におののいた彼らは、元親の指示のもと脱出を決意。
乗組員が逃げ切り、脱出は元親を残すのみとなった時、彼はその空間に飲み込まれてしまったのだ。

「で、気がついたら一人ハルケギニアにいたって?ハハハッ!冗談はやめておくれよ!」
「ウソじゃねえっ!海の男はウソなんかつかねえっ!」
「嘘じゃなかったら変だよアンタ!だいたい、移動する城?そんな馬鹿げたもん、作る発想も技術も、このハルケギニアには無いよ!」
フーケに話しても笑うだけで、信じて貰えなかった。

その後、右も左もわからず、町や村をさ迷っていた彼は、ふとした事である騒ぎを起こす事になる。
彼が首都トリスタニアを歩いていると、そこには配下をぞろぞろと引き連れた貴族。
いかにも偉そうなその貴族は、道の真ん中を堂々と闊歩する元親を見るなり、因縁をつけてきたのだ。
この世界のルールを知らない元親は、そんな貴族に即座に喧嘩をふっかけた。
配下のメイジを殴り倒し、その貴族に碇槍を突きつけた。その結果、魔法衛士隊がやってきた。
流石の戦国武将も、魔法の手ごわさと汎用性を知らなければ不覚を取る。
元親は、『くもの糸』という魔法で幾重にも縛り上げられた上、スリープクラウドをくらいお縄となった。
そしてフーケとともに脱獄し、今に至るわけである。
その様に、この世界で行くアテのない彼は、フーケに付き合い、警備の厳重なトリステインから一時撤退する計画を立てた。そのためアルビオンという大陸に渡ろうとしていたのだ。
「全く、貴族に喧嘩売るなんて何考えてるんだい」
「テメェが言うな。だいたい何だ、貴族だの何だか知らねえが、田舎モンがよ」
フーケは、元親から詳しく話を聞くなり、呆れ果てた。よもや貴族に喧嘩をふっかけて牢に入れられる奴が居ようとは。
最もそれを言えば自分も、散々貴族相手に盗みを働いた挙句捕まったクチだが。フーケは苦笑しながら元親の話を聞いていた。
「それよりも、だ」
槍を手にしながら、元親はつまらなそうにフーケに尋ねる。
「アルビオンって大陸に渡るにしちゃあ海が見当たらねぇぜ?潮の香りも漂ってこねぇ。ここが港町か?」
元親は心底がっくし来たように肩を落とした。
元親は、武将であると同時に、海賊団を率いる海の男でもあった。彼は当初、大陸に渡ると聞いて内心ウキウキしていたのだ。
こちら側に来て初めての海。一週間そこらとはいえ、潮風が恋しい。
そんな彼だったが、進めど進めど一向に海になど辿り着かない。むしろ険しい山道を登る一方である。
いい加減痺れを切らして、元親はフーケに尋ねた。するとフーケは。
「何言ってるんだい?海なんか越えないよ?」
彼にとって衝撃的な一言を言い放った。
「んだと!?」
元親は目を見開き、フーケにくってかかる。
「バカ言うんじゃねぇ。じゃあどうやってアルビオンとやらに渡るんだ」
「あんたアルビオンを知らないのかい?」
フーケが呆れたように元親に言った。元親が知るか、と声を上げようとしたその時である。元親の右目が鋭く煌いた。
同時にフーケも、異様な気配を感じてあたりを見回す。
裏通りにちゃきり、ちゃきりと刀の唾鳴り音のようなものが響き渡った。
音の方角に目を向ける二人。聞けば、唾鳴り音とともに、ガシャガシャと甲冑の擦れる音まで聞こえてくる。
その音は、闇の中から真っ直ぐ此方に向かってきていた。
「もうお出ましかい。早いね連中は」
フーケが舌打ちしながらそう言った。この状況で、二人が警戒するべき相手は二種類いた。
一つは、脱獄したフーケらを捕らえようとするトリステインの衛士達。
そしてもう一つ、それは秘密を知ったフーケ達を始末しようと目論む貴族の連盟。
「レコン・キスタ……!」
「その通りだ」
驚くほど淡々とした声が、暗闇の奥から響いてきた。
「察しがいいな」
と、今度はフーケの背後から同じような声が聞こえてくる。
「だが、もう遅い」
元親の頭上から三つ目の声が響くと同時に、元親は後ろに飛びすさった。

190 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:50:17.85 ID:VtEMTDMB
元親がいた箇所に、黒い影とともにズドン!と刀の先端が振り下ろされた。
地面の岩盤が砕け、僅かな岩片が飛び散る。まともにくらったら一刀両断にされかねない、強烈な一撃であった。
「モトチカ!」
フーケが、突如屋根から降ってきた黒い影に土の弾丸を放った。
影が、土の弾丸を顔面に喰らい吹っ飛ぶ。するとフーケの背後から、ひゅっと風切り音が響いた。
振り返ると、背後の影から白刃の刃が打ち下ろされようとしていた。しかしフーケは動かない。
ガキンと鈍い音がして刃が受け止められる。見ると、いつの間にか練成されていた鉄の壁が、フーケの背後を守っていた。
即座にその場から退避するフーケ。すると、鉄の壁を裂いて、白刃の薙刀がフーケのいた地面を貫いた。
「んなっ!?」
フーケは目を見開いて驚愕した。仮にもこの自分が練成した鋼鉄を、いともたやすく剣で切り裂くとは。
そのまま地面に刺さった刃目掛けて、錬金を唱えるフーケ。しかし、相手の薙刀は土くれに変化しない。
どうやら、強力な固定化が施されているらしい。自分の錬金を跳ね除けるとは、どれ程強力な使い手の固定化だろう。
さすが、革命を起こすだけあって、レコン・キスタはメイジが揃っている。フーケは悔し紛れに唇を噛んだ。
「チィッ!」
と、突如元親が苦しそうな声を上げた。見ると、先程土弾をくらわせたはずの影が起き上がり、元親と鍔迫り合いをしていろ。
元親が気合を込めて相手の薙刀を弾き返す。と、相手の顎に強烈な蹴りを喰らわせた。
そのまま槍を振り回し、相手を薙刀ごと彼方に突き飛ばす。
「おいフ−ケ!逃げるぞ!」
「ああ!」
フーケがルーンを唱え、杖を振り下ろす。すると、地鳴りとともに地面が盛り上がり始める。
見る見るうちに屋根の高さまでのゴーレムが出来上がった。ゴーレムの肩に乗る二人。それを見上げる三人の刺客。
フーケと元親は、岩で出来た足場に飛び乗ると、屋根づたいに駆け出した。

「奇襲は失敗だな」
「追わないのか?」
「いや、時間だ」
三人の男は、獲物を追おうともせず、ただ静かに立ち尽くしていた。
三人はもとより長々交戦するつもりは無い。速やかに奇襲をかけ、一撃で仕留める手はずであった。
しかしそれが、予想以上の人物に出会い手間取ったため、深追いをやめたのだ。
「絶望に、押しつぶされていなかったな」
「しぶといな」
「全くだ」
取り逃がした眼帯の男を思い浮かべながら、三人は淡々と呟く。そこへ、闇の中から一人の仮面の貴族が現れた。
三人が貴族に向き合う。
「逃したか、まあいい。流石は土くれだな。それより――」
仮面の貴族は三人を一瞥すると、静かに言った。
「連中が、じきにこのラ・ロシェールに辿り着く。手はずはいいな?」
「心得た」
「承知した」
「行くぞ」
それぞれが言葉を呟くと、三人は即座に跳躍。三メイルはある岩の屋根に飛び乗り、駆け出した。夜空に月が浮かび上がる。
もうすでに、連中は入り口に差し掛かっている頃だろう。第一段階は傭兵集団にまかせてある。
あとは、あの三人をどう動かすかだ。仮面の貴族は、そんな事を考えると、人知れず呟いた。
「どんな手を使ってでも、求めてみせる。必ずな……」
短く、静かに笑う男の影が、風に吹かれると同時に霞のように消え去った。

「や、やっと着いた。どうなってるんだ、君も、あのワルド子爵も……。化け物か……」
官兵衛達は、途中何度も馬を使い潰して、二日掛かるラ・ロシェールまでの距離を一日で走破した。
すでに日は落ち、二つの月が夜道を照らす。
ちなみにルイズとワルドはグリフォンに騎乗しているため疲れ知らずであり、遥か先にまで行ってしまっている。
慣れない長時間の乗馬のためか、ギーシュが馬の上でへばりながら先程のような言葉を愚痴る。
しかし、肩に鉄球を担いだ官兵衛は、平然とした顔で先を見やっていた。
「まあ、もうじき着く。馬での長旅とは一先ずおさらばだ」
官兵衛は、疲れ果てたギーシュを落ち着けようとそう言った。
最もこの程度の事でへばっていては密使など務まらないのだが。
ましてや、目的地は今にも滅びそうな王朝の陣中である。おまけに、いつ貴族派の妨害にあうかも知れない。
拙速を尊ぶのは当然であった。そう考える官兵衛であったが、ギーシュも秘密を握っている以上、捨て置くわけにはいかない。

191 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:52:21.71 ID:VtEMTDMB
やれやれと、馬を止めると、官兵衛は懐から水の入ったポーチを取り出し、ギーシュに投げてやった。
ゴクゴクと喉をならして水を飲むギーシュを尻目に、官兵衛は目の前の道を険しい顔で眺めていた。
目前には、険しい崖に挟まれた、ラ・ロシェールへと続く山道が続いていた。
官兵衛は用心した。高所、そして遮る物のない夜道。奇襲を行うには最適の地形と言えた。
武将としての勘が警鐘を鳴らす。
(迂回するか?しかし一本道だ……)
迂回すれば町に入るまでどれほど時間がかかるか知れない。ここは慎重に馬を進める事を選んだほうがいい。
官兵衛は即座にそう判断すると、水を飲んでいるギーシュに告げた。
「お前さん、杖を構えておけ」
「ぷはぁっ!一体どうしたね?」
ボトルから口を離し、ギーシュが言われるままに杖を取り出す。
官兵衛達が合図し、二人は慎重に馬を進めた。官兵衛の唯ならない様子に、手綱を握る手に力が篭るギーシュ。
やがて渓谷に挟まれるようにして町明かりが見えた。と、その時である。
崖の上から、二人目掛けて何本もの松明が投げ入れられた。
「うわあっ!」
驚いた馬が前足を高々と上げる。ギーシュが馬から放り出され、悲鳴をあげた。
官兵衛は、松明が投げ入れられると同時に馬の背を蹴って飛び上がった。
すると、スココンと、何本かの矢が馬の足元の地面に突き刺さる。
「奇襲だ!」
ギーシュが叫びながら立ち上がろうとした。しかし官兵衛が大声でそれを制す。
「あのゴーレムを出せ!」
官兵衛の声にハッとすると、ギーシュは薔薇の造花を振るった。
瞬く間に青銅のワルキューレが練成され、ギーシュの盾となる。
それと同時に、無数の矢が唸りをあげてズガガガッ!とワルキューレに突き刺さった。
「うわっ!」
ギーシュは青ざめた顔でその光景を見ていた。
官兵衛は、空中で身を捻ると、力任せに鉄球を蹴り飛ばす。鉄球が崖の岩肌に激突し、地震の如き揺れを引き起こした。
すると、崖上で男達の悲鳴が聞こえ、大勢が情けなく転がり落ちてきた。
官兵衛はずしんと地面に着地すると、岩肌に埋まった鉄球をぐいと引き寄せた。
がらがらと岩壁が崩れ落ち、鉄球が手元に戻ってくる。
「これで全部……じゃあなさそうだな」
官兵衛が気だるげに呟いた。
するとその言葉の通り、今度は反対側の崖から矢が飛んでくる。
官兵衛が咄嗟に手枷を構えた。だが、次の瞬間であった。
突如、官兵衛の目前の空気がゆらぎ、小型の竜巻が発生したのだ。
竜巻が飛来する矢を巻き込み、あさっての方角に弾き飛ばす。
「大丈夫か!」
官兵衛は声の方角を見やる。見ると、グリフォンに跨ったワルドが杖を掲げていた。
ワルドは次々に飛んでくる矢を風の魔法で逸らしながら、こちらに駆けてくる。
「た、助かった……」
ギーシュが安堵のため息をついてよれよれと立ち上がった。
官兵衛が、第二波の矢が飛んできた方向を睨む。
何故かもう矢は飛んでこない。そんな不自然な奇襲を、官兵衛は怪しんだ。
「夜盗か山賊の類か?」
ワルドの呟きに、ルイズがはっとした声で言った。
「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも……」
「貴族なら、弓は使わんだろう」
ワルドがそう否定する。その時、夜風の音に紛れて、バッサバッサと羽音が聞こえた。
すると、崖の上から悲鳴が聞こえ、またもや大勢の男達が落下してくる。
何かしらの魔法を受けたのか、所々焼け焦げた跡や擦り傷で、満身創痍であった。
官兵衛は男達の受けた魔法の痕跡と、羽音から、即座にアタリをつけた。
そして、その答えを示すように、月をバックに見慣れたシルエットが空に現れた。
ルイズが驚き声を上げる。
「シルフィード!」
そう、それは確かにタバサの操る風竜、シルフィードであった。
シルフィードが砂埃を舞い上げながら、その巨体を着地させる。
すると、その背中からキュルケが飛び降り、髪をかきあげながら言った。
「お待たせ」

192 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 19:53:24.03 ID:VtEMTDMB
「何であんたがここにいるのよ!」
ルイズは声を張り上げながら、得意げに佇むキュルケに食ってかかった。
「だって。今朝方、起きてみれば貴方達、馬で旅支度してるじゃない。
気になったからタバサに頼んで後をつけてもらったのよ」
見ればシルフィードの上で、タバサはパジャマ姿で本を読んでいる。恐らくは、寝起きを叩き起こされたのだろう。
「お前さんも、随分と難儀するな」
同情の言葉をタバサに掛ける官兵衛。タバサは官兵衛をチラリとみやると、気にした風も無く再び本に目を戻した。
「あのねツェルプストー。これはお忍びなのよ?」
「お忍び?だったらそう言いなさいな。わからないじゃない!」
キュルケが手を広げて言った。
「とにかく、感謝しなさいよね。あんた達を襲った連中を捕まえたんだから」
キュルケは、崖の上から落ちてきた男達を指差した。男達は皆一様に鎧を着込み、弓矢や剣を携えている。
顔や腕についた生々しい傷跡が、歴戦の傭兵である事を窺わせた。成程、確かにこいつら自身はメイジではない。
だが、だからといってこの襲撃に貴族派が絡んでいないとは限らない。かく乱のために兵を雇う事は十分にあり得た。
ギーシュが近寄り尋問する。
「君達、一体何者かね?どうして僕らの命を狙ったんだい?」
ギーシュはさっと髪をかき上げ、左手を胸に仰々しく当てたポーズをとりながら、右手で杖を突きつけた。
先程まで矢に怯えていたにも関わらず、自分の安全が確保された途端、キザに振舞うギーシュ。
そんなギーシュを見て、傭兵一団は目をぱちくりさせる。キュルケは呆れて手をすくめた。
「答えたまえ。さもなくば僕の青銅のゴーレム、ワルキューレが黙っていないよ」
ギーシュが優雅に杖を振るう。模造の花びらがこぼれ、地面に舞い落ちる。しかしゴーレムはいつまで経っても現れない。
先程、矢を防ぐ為に精神力を全て使い切ってしまったのであった。
ギーシュは滝の様に汗を流しながら、傭兵一団から目を逸らした。
男達は、微かに笑みを浮かべると、こりゃ丁度いいとばかりに嘘八百を並べ立て出した。
曰く、自分達はただの物取りである。襲うなら誰でも良かった。貴族とは思わなかった、等々。
そんな、いかにもな回答を聞くと、ギーシュは満足したのか杖をおさめ、ワルドに告げた。
「子爵、あいつらはただの物取りだ、と言っています」
「ふむ……、なら捨て置こう」
ワルドがそう言うと、男達はほっとしたように顔を見合わせた。これであのおっかない雇い主にどやされないで済む、と。
だが、その時であった。
ズドン!と地震のような地鳴りがして大地が揺れた。傭兵一団が、どわあっと慌てふためいた。
見ると、官兵衛が鉄球を地面に打ち下ろし、ギロリと男共を見据えている。
官兵衛は無表情で、ゆっくり一歩一歩と傭兵達に近づいた。
「な、なんでぇ」
傭兵の筆頭格と思われる男が、そんな官兵衛に対して恐る恐る口を開いた。
だが官兵衛は答えず、淡々とした口調でただ一つの質問を投げかけた。
「お前さん、右と左どっちだ?」
「は?」
男が首を傾げた。
「残すほうの足だよ」
官兵衛が、変わらず無表情で言った。しかし、その眼光は鋭い。その言葉に、傭兵の頭は青ざめた。
官兵衛が手枷ごと鉄球を構えると、地面に一直線に振り下ろす。轟音がラ・ロシェールの荒野に響き渡った。
「ひぃぃぃっ!」
男達は恐怖した。
官兵衛が鉄球を振り下ろした箇所には、直径3メイル、深さは1メイルはあろうクレーターが出来上がったのだ。
こんな凄まじいものを喰らったら、足どころの騒ぎではない。
「右か左か。選ぶんだな」
「ひ!言います!洗いざらい白状します!」
歴戦の傭兵はいとも容易く、雇い主の情報を漏らした。

193 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/20(月) 21:20:48.32 ID:VtEMTDMB
傭兵一味を雇ったのは、仮面の男。崖下に馬が通りかかったら襲えといわれていた事。他にも雇われた連中が居る事。
頭とその連中は、情報の洗いざらいを吐いた。それを聞くと、官兵衛は静かに頷き、ワルドを見据えて言った。
「だ、そうだ子爵」
「ふむ、アルビオン貴族派の仕業かもしれない、ということか」
ワルドは顎に手をやり、しばしの黙考の後に全員に告げた。
「ひとまずその白い仮面の男とやらが気になるが、先を急ごう。今日はラ・ロシェールに一泊して明日の朝にアルビオンへ渡る。」
ワルドは颯爽とグリフォンに跨ると、ルイズを抱きかかえて駆け出した。
ワルド以外の全員はしばし官兵衛の行動に呆気にとらわれていたようだが、すぐに気を取り直した。
「すごい!すごいわダーリン!頼もしい!やっぱりあんなヒゲよりダーリンね!」
キュルケが官兵衛に抱きつこうとしてきた。ワルドに対して嫌悪感を露にするキュルケ。
先程キュルケがワルドに言い寄っていたのが見えた。大方あしらわれたか何かしたのだろう。
それほどでもない、と鼻を鳴らしながらも、官兵衛はしてやったりという表情をした。
「すまない、僕がもっとちゃんと尋問しておけば……」
ギーシュが申し訳無さそうに官兵衛に言った。しかし官兵衛は首を振り静かに、気にするな、と呟いた。
官兵衛達は、馬と風竜に乗り込むと、即座にワルドのグリフォンを追った。


今回は以上になります。アルビオンへ向かう官兵衛達の旅が始まりましたね。
第二章では官兵衛一行以外にも、長曾我部・フーケコンビの動向も重要になってきます。お楽しみに。
それと前回さるってて言えませんでしたが、支援してくださった方どうもありがとうございました。
次回は二週間後くらいに投下できればと思います。
それでは、また。

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/20(月) 21:49:05.13 ID:vWsVo9Nt
乙ですー

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/21(火) 22:03:19.71 ID:efs6LUeM
乙です
Pixivにも投稿してるようですが何故小説には使いづらい場所でやってるんですか

196 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/21(火) 23:02:32.12 ID:oe605GiB
こんばんは。
自分の場合ですが、以前からpixivを良く利用していたのが理由ですかね。
最初はスレだけで済ませようと思っていたのですが、せっかくアカウントあるので投稿してみよう、と。
それで投稿するうちに反響目的でハーメルンにも投稿してみようといった具合です。ちょっとあちこちやりすぎたかな。

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/21(火) 23:14:14.13 ID:efs6LUeM
Pixivはイラスト投稿サイトで小説には向いてないし、投稿する場所が多いと無駄な労力だと思います

198 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/07/22(水) 00:25:54.38 ID:gUUjmwpt
そうですね、pixivもメインはイラストですから。自分も少しでも閲覧があればもうけもの程度でやっております。
今後pixivへの投稿が負担となったり、問題となるようであれば自粛しようかと考えております。
貴重なご意見どうもありがとうございました。

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/22(水) 00:28:58.89 ID:2lzHnIgE
いいじゃんさ、規約に違反しない形ならいろんな場所で投稿したって
せっかく書いたものは一人でも多くの人に読んで欲しいもの

200 : ◆6xBEczax04pk :2015/07/23(木) 01:39:53.20 ID:/pCUWLQm
はじめまして、こんばんは。
1:45辺りに投下させていただきます。
タイトルは「カメの使い大魔王」です。
マリオシリーズから、クッパが召喚されます。

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/23(木) 01:43:11.14 ID:NOjMtJFL
じゃ、寝る前に支援
あとsageてね

202 :カメの使い大魔王 プロローグ ◆6xBEczax04pk :2015/07/23(木) 02:07:26.91 ID:/pCUWLQm
「…むぅ、未だに計画が思いつかんなぁ…」

石作りの広い城の廊下を、腕を組みノシノシ歩きながら、この城の主クッパ大魔王は、そう呟いた。

クッパ「今まで、色んな手を使って世界征服をしようとしたが…ピーチ姫の誘拐は同じ方法ばかりだったせいで、マリオ達にも耐性がついてしまった…
逆にマリオを遠くに投げ飛ばしでピーチ城をのっとっても結局負けて、この方法の耐性もすぐにつけおった…
何か良い方法は無いか…」

ボコンッ! デロデロデロ

クッパ「むっ…?いきなり土管が生えてきおった。まったく…何故こんなところに生えるのだ、床も壊れてしまったし…粉砕してくれるっ!…?」

*ガミ*ビキ**タエヨ…

クッパ「何か音が…?良く聞こえん!」

そういい、クッパは土管の入り口に耳を突っ込んだ。

ワガミチビキニコタエヨ…

クッパ「ぐぬぬ…そもそもこの土管はどこに繋がっているんだ!」

クッパは若干腹をたてながら、更に耳を押し込む。

我が導きに答えよっ!!!

クッパ「!?な、なんだっ!?…うおっ!?」

突然聞こえた大声に驚いたクッパは、足を床から離してしまい、そのまま土管に落ちそうになったが、入り口の淵の所に手をかけ、落下を回避した…が…

クッパ「ん?なんだ…?この緑に光っている物は…ぐっ…!?吸い込まれるっ…!?」

そして、そのままクッパは土管に吸い込まれてしまった…正確に言うと、土管の中にあった、緑の物体に吸い込まれてしまったのだ。
そして、土管にあった謎の緑の物体は消滅してしまった…

クッパ「…な、なんだ…?ここは…?浮遊感がする…む?向こうに何かが見える…なんだ?」

そしてクッパはその何かが見える方へ、泳ぐような感覚で進んで行った…

クッパ「…」

そして、再びクッパは吸い込まれる。

203 :カメの使い大魔王 プロローグ ◆6xBEczax04pk :2015/07/23(木) 02:48:26.53 ID:/pCUWLQm
ここはハルケギニアにある、トリステイン魔法学院。今日は、そこの1年の生徒達が2年に進級するために必要な、使い魔召喚の儀式、コントラクト・サーヴァントが行われていた…

「私が心より求め、訴えるわ!」

「我が導きに答えよ!」

と言っても、ほとんどの生徒は、使い魔を召喚しており、儀式を終えていないのは、この学院でメイジであるにもかかわらず、魔法を何一つ使うことができない…
と言うより成功させることができない、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、残るただ一人。
彼女は、呪文斉唱回数が3桁に達している。
何故かというと…

ドゴオオオォォォン!

このように、何の呪文を唱えても爆発が起きてしまうのだ。

ルイズ「どうして…どうしてだめなの…?」

何回やっても使い魔を召喚することができず、他の生徒にも大勢で馬鹿にされ、ルイズの心は折れかかっていた…

「…おや…?…煙に影が…!」

そう言ったのは、この生徒達のコントラクト・サーヴァントを担当している教師、コルベール。

ルイズ「…え…?」

その声を聞き、ルイズは煙の方へ顔を向ける。
そこには、ぼやけてはいるが、確かに影が見える!それも大きな影が!

ルイズ「や…ったぁ…ついに…ついにっ…!」

そして煙が晴れると…

クッパ「ぐっ!…アイタタタタ…顎を打ってしまった…ん?」

鋭い棘が何本もある甲羅を纏い、頭には二本の大きな角。そして、赤い鬣を後頭部にまで生やした、巨大な生物だった。

クッパ「ここは…何処だ…?」

そして、魔法使いの少女と、カメ一族の大魔王の物語が始まる。

204 :カメの使い大魔王 01 ◆6xBEczax04pk :2015/07/23(木) 04:23:50.31 ID:/pCUWLQm
そして、魔法使いの少女と、カメ一族の大魔王の物語が始まる。

のだが、ここで問題発生

ルイズ「いうことを聞きなさい!屈んでよ!」

クッパ「I hear that you are who here where!」

そう、言語の違いである。

少し時間を遡る

ルイズ「やったわ!とても迫力があって凄く強そうな使い魔じゃない!」

「まさかルイズがこんな使い魔を召喚するなんてねぇ」

ルイズ「…フ、フン!だから言ったでしょう、キュルケ!私コントラクト・サーヴァントだけは自信あるって!」

キュルケ「…そうね、ほんの少しだけ見直してあげるわ」

キュルケと呼ばれた女は、少々嫌味ったらしく言う。

コルベール「見たことのない生き物ですね…貴重な種族なとでしょうか…?とにかく、ミス・ヴァリエール!喜ぶのは後にして、時間がないので早くコントラクト・サーヴァントを…」

ルイズ「は、はい…!」

そして、ルイズはクッパに歩み寄る。

クッパ「Ah…my name is koopa,King Bowser Koopa.wath is your name?」

ルイズ「んん…ちょっと!届かないじゃない!あなた!屈みなさいよ!」

クッパ「Hey my name is koopa!Wath is your name?」

ルイズ「何言ってるか分かんないわよ!いいから早く屈んで!」

クッパ「ROOOOOOOOOAR!!!」

クッパ視点

クッパ「(ここはどこだ?こいつはなんなんだ?)あー…吾輩の名前はクッパだ!お前の名前は?」

クッパ「(…何をやっているんだ?こいつは?吾輩の言ったことを聞いていなかったのか?)おい!吾輩はクッパだ!お前は!?」

クッパ「…」

クッパ「…」#

クッパ「…」##

クッパ「ガオオオォォォ!!!」

といった感じでああなったのである。

205 :カメの使い大魔王 01 ◆6xBEczax04pk :2015/07/23(木) 04:37:13.49 ID:/pCUWLQm
クッパ「さっきからお前は何を言っているのだ!?…まさか、言語が違うのか?」

どうやら気づいたみたいだが…

クッパ「ゲドンコ星人でも吾輩達の言葉を話せたんだぞ!お前も吾輩達の言葉で話せ!!!」

そうクッパが怒鳴った時、つい力みすぎて、
少し前屈みになってしまい、そのタイミングで、ルイズは呪文をとなえ…

クッパ「…!!!?」

口づけをした。

ルイズ「まったく、一度で言う通りにしなさいよね!」

クッパ「き、貴様あああぁぁぁっ!!!よくも吾輩の唇を奪ったなああぁぁ!!ピーチ姫のためにとっておいた初めてをおぉっ…!?グウゥッ!あ、熱い!熱いぞおおおぉぉぉ!!!」

クッパが、今にもルイズに遅いかかろうとした、その瞬間、クッパの手の甲にとてつもない激痛が走る。

ルイズ「使い魔のルーンが刻まれてるのよ。すぐ、終わるから」

クッパ「あ、熱いっ!溶岩とは違う熱い!!!グ、グウウゥゥオオォォ…」

そのままクッパはショックで気絶してしまった。

ルイズ「え?ちょっと!もう!なんで気絶するのよ!誰が運ぶっていうのよ!?」

206 : ◆6xBEczax04pk :2015/07/23(木) 04:43:20.23 ID:/pCUWLQm
今回の投下は以上です。
少ない気がしますが、もう眠いので…

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/25(土) 20:25:46.84 ID:Bfuobo1S
乙、と言いたいが台本形式はここではあまり歓迎されんな

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/25(土) 21:43:23.32 ID:0IrXa9bG
>>207
まだそんなこと言ってんの
そりゃ過疎るわけだよ

209 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:29:30.92 ID:8S42Rt4q
皆様、お久し振りです。
よろしければ、18:35頃から続きを投下させてください。

210 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:35:08.46 ID:8S42Rt4q
 
目の前でディーキンを中に残したまま、小屋が大量の土砂に埋もれてしまった。

駆け寄ったシエスタは半狂乱になって泣き叫びながら、土砂を素手で掘り起こそうとする。
ルイズは放心して膝をついていたが、そんなシエスタの姿を見て我に帰り、自分も杖を手に取って何か呪文を唱えようとした。

しかし、そこで先ほど自身も間一髪小屋から飛び出してきたばかりのロングビルが、鋭く声を上げる。

「待って下さい、2人とも!
 お気持ちは分かりますが、まだどこか近くに、これをしでかしたフーケがいるのですよ。
 そんなことをしていては、私たちまで攻撃されて潰されてしまいます!」

ロングビルの指摘に2人は一瞬はっとして顔を上げ、周囲を見回した。
しかし、どうしても小屋の方を気にせずにはいられない。

「でっ、でも! 先生が……!」

「私のパートナーが、ディーキンがこの下にいるんですよ! このまま放っておいたら……!」

涙ぐんで訴える2人に対して、ロングビルは自分を指差してみせた。

「私がこの土砂を取り除けて、ミス・ヴァリエールの使い魔を助け出してみせますわ。
 私とて土メイジのはしくれです、どうか任せて下さい。
 あなた方は、その間周囲の警戒を……、『今度こそは』絶対にフーケを近付けないように見張っていてください!」

毅然とした態度を装って、そう提案する。
抜け目なく、今度こそは、の部分を若干強調することも忘れない。
先ほど見張りを引き受けたにもかかわらず、フーケの接近を見逃したことに対して彼女らが抱いているであろう罪悪感を刺激しようというのだ。

目論見通り、それを聞いたルイズは俯いてぎゅっと唇を噛み、ややあって涙を拭うと、顔を上げて力強く頷いた。

「っ……、わかりました! 今度こそ、絶対にフーケを見つけ出して、倒してみせます!
 ミス・ロングビル、どうか、私の……使い魔を、よろしくお願いします!」

ルイズはそう言ってひとつ大きくお辞儀をすると、まだ見ぬフーケへの敵意を瞳に燃やしながら、きっと森の方を睨む。
シエスタも同じように頷き、表情を引き締めると、クロスボウを構えてルイズの側へ移動した。

キュルケとタバサもお互いに頷き合うと、2人が向かったのとは違う方向へ、それぞれ散ってフーケの捜索を開始しようとする。

(よしよし……、どいつもこいつもちょろいもんだね)

ロングビルは内心でほくそ笑んだ。

この反応からすれば、どうやらあの使い魔の主人であるルイズとかいう小娘は、小屋の中のやり取りを見てはいなかったようだ。
依然として誰にも不信感は持たれてはいないようだし、万事問題なく進んでいる。
まったく、揃いも揃って騙されやすいお人よしどもだ。

もっとも、その人の良さと騙されやすさのおかげであの使い魔は命を落としたが、こいつらは助かるかもしれない。

予定ではこの後、ガキどもがみんな小屋の回りから見えなくなってから、次の行動を開始するつもりだ。
総員で周囲を捜索していたにも関わらず、またいつの間にか小屋の跡地に出現したゴーレムによって自分が襲撃されたことにして姿をくらますのだ。
ガキどもが駆け付けた時にはすでにゴーレムは消えて、盗賊フーケも秘書ロングビルも消息不明になっている、という寸法である。
その後は、必死の調査を続けるも手掛かりはなく、事件は迷宮入りというわけだ。
自分は見つからないように、ほとぼりが冷めるまでトリステインから離れて他所で仕事を続ければいい。

こいつらからは疑われてもいないようだから、予定通りに上手くいけば殺す必要はない。
おそらく使い魔だけ死なせて結局何の役にも立たなかったという無力感に、長く苛まれることにはなろうが……。

(……ふん)

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/29(水) 18:35:40.32 ID:Uf62IaRs
支援

212 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:37:09.79 ID:8S42Rt4q
 
彼女自身も、別段恨みがあるわけでもない純真な使い魔や少女たちに対する先ほどのからの仕打ちには、若干の後ろめたさを感じないでもなかった。
が、自分には赤の他人の命や痛みなどを気にしている余裕などないのだ。連中が間抜けなお人好しで、そのくせ要らないことにばかり鋭いのが悪い。
そう言い聞かせて、些細な感傷はさっさと頭から追い払った。もう随分と長くこの稼業を続けているのだから、今更というものだ。

フーケは今後の予定を頭の中で復習しながら、ルイズらが森の奥へ駆けだして行くのをじっと見送った。
そうして彼女らが見えなくなってから、次の準備に取り掛かる。

まずは宝物の杖を抱えて、小屋からゴーレム作成の呪文が届くギリギリ限界の位置にまで遠ざかり、手近の木陰に身を潜めた。
そして、ゴーレム作成の呪文を唱えて巨大な土ゴーレムを再び小屋のあった場所に作り出そうとした、ところで。

「……んっ?」

ふと、小さく囁く声のような妙な音を聞いた気がして、出所を探ろうと背後を振り返る。
フーケは少し離れた場所にその声の主の姿を認めると、愕然として目を大きく見開いた。

「……ひっ!? な、なっ……!?」

思わず怯えたような、呻くような声を喉から漏らして、二、三歩あとじさった。
それも無理もあるまい。

視線の先には、先程確かに自分が殺して埋めたはずの、あの亜人の使い魔が立っていたのだから。

(……ば、ばっ、ばば、馬鹿な!?
 私は確かに、こいつを潰して、小屋ごと土砂に埋め殺したはず……、い、いや、それよりも、埋まった筈なのにどうして後ろに……!?!?)

ディーキンもまったくの無傷というわけではなく、泥まみれで、体のところどころに鱗が避ける裂傷を負って血が滲んでいる。
しかし、どう見ても致命傷となるような深手ではない。自分の体より大きいゴーレムの鋼鉄の拳に潰されたとはとても思えない軽傷だった。
本人も傷を気にした様子もなく、こちらをじっと見つめながら、手に巻物を持って呪文らしき文句を紡いでいる。

混乱したまま反射的に杖をそちらに向けようとしたが、すでに手遅れだ。
その瞬間、ディーキンがフーケの額を指さすような動作と同時に、詠唱を完成させた。

「―――《キアルズ・マンスレック》」

フーケの頭の中にその言葉が、やけに大きく響く。

その途端、彼女の体は動かなくなった。
自分の意思に反して金縛りになったのではなく、抵抗しようという意思そのものが突然、抜け落ちたようになくなったのだ。
それどころかすべての思考がきれいさっぱり消えうせ、ただ目の前のディーキンを虚ろな目で見つめるばかり。

「……おほん。やあ、さっきの攻撃で、お姉さんに怪我がなくてよかったよ。
 さっき呪文をかけていいって言ってくれてたから、いきなりで申し訳ないけど、かけさせてもらったからね。
 それで、ええと……、もしあんたがフーケだったらその杖を……、いや、服以外のあんたの持ち物を、全部ディーキンに渡して。
 アア、別にあんたがフーケでも危害を加える気はないし、泥棒をしようってわけでもないからね?
 もし誤解だったらすぐに呪文は解くし、持ち物も後でちゃんと返すの」

一瞬、その言葉に抵抗しようという考えが頭をかすめたが、それは弱弱しい囁きでしかなかった。
今や、まるで頭の中に直接響いているように感じられる目の前の亜人の声のほうが、ずっと重々しく強い影響力を持っていた。

フーケはすぐに手にした杖と宝物の2本の杖、それに隠し持った予備の杖を差し出し、それから自分の体のあちこちを探った。
いざというときのためにいつも隠し持っている短剣や、土石等の魔法の品々を片っ端から取り出して、躊躇なくディーキンに手渡していく。

その中には、しかるべき調査に回せば自分の犯行を立証する決め手となりうる、過去の盗品も含まれていた。

「ンー、やっぱりお姉さんがフーケだったみたいだね……。
 残念だけど、しょうがないね。じゃあね、これから、してほしいことを言うから――――」

213 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:40:07.34 ID:8S42Rt4q
 
彼女はもはや、自分自身の瞳の中に囚われて己の体が演じる劇をぼんやりと見つめる、観客のようなものだった。
欲望も理性も抜け落ちた真っ白な頭の中を、目の前の亜人の言葉だけが何度も反復して、埋め尽くしていく。
虚ろな心は、その指示と自分自身の考えとの区別をつけることもできず、ただ唯一与えられた行動の指針に唯々諾々と従うのみ……。





『……アー、みんな、聞こえる? 心配かけてごめんなの、ディーキンは無事だよ』

森の奥を懸命に捜索していたルイズらの耳に、まだ機能している《伝言(メッセージ)》の呪文を介して、馴染みの声が響いた。
それを聞いたルイズらの動きが、ぴたりと止まる。次いで、歓喜の声が上がった。

「ディ……、ディーキン!」

「先生!」

「ディー君! 無事だったのね!」

「……よかった。怪我は?」

『うん、ロングビルお姉さんのおかげで大したことないよ。みんな、一回戻ってきてくれる?』

安堵の笑みや喜びの涙などを浮かべながら、森の奥から急いで仲間たちが駆け戻ってくる。
ディーキンはどこかぼんやりした様子のロングビルの傍に立って、そんな仲間たちに、にこやかに大きく手を振った。

「大丈夫!? 怪我をしてるじゃない、早く治療しなきゃ……!」

「ふえぇ……、先生、無事でよかった……。
 ミス・ロングビル、本当にありがとうございます!」

ルイズはいち早く彼の元へ駆け寄って涙を浮かべながら泥で汚れるのも構わずその小さな体を抱きしめたり、怪我の心配をしたりする。
シエスタも嬉し泣きしながら、反応の薄いロングビルに礼を言ってお辞儀をしたりしている。

少し遅れたキュルケは、微笑ましげにそれを見守りながら、あなたも行ったら? などと傍らのタバサをけしかける。
そのタバサはといえば、ほっとしたような気配を見せながらも、何か思うところがあるのか、しばらくじっとディーキンの姿を見つめていた。

「みんな、心配してくれてありがとう。
 ディーキンはすごく申し訳ないし、うれしいよ。でも、本当に大したことはないからね……」

ディーキン自身はといえば、皆を安心させるようににこやかな笑みを浮かべながらも……。
内心ではルイズやシエスタがあまり泣くので、少し後ろめたいような、申し訳ないような気分になっていた。

実は、彼は上空から先ほどからの一部始終をちゃんと見ていたのである。
ルイズやシエスタが潰れた小屋に自分の名を呼びながら駆け寄るところも、フーケが皆を言いくるめて小屋から離れさせたところも。

ディーキンが先ほど、思いがけない強襲で完全に不意を打たれ、ゴーレムの拳をモロにくらったのは事実である。
それなのに生きていたのには、別に何の裏もない。
ただ単に、彼がその程度では死なないくらいに丈夫だというだけのことだ。
一般人なら叩き潰されて即死だっただろうが、高レベルの冒険者にとってはあんな拳の2発や3発では、致命傷には程遠い。
実際、今ディーキンの手にしている『破壊の杖』ことM72ロケットランチャーでさえも、単発では到底エピック級の冒険者は殺し得ないだろう。

とはいえ、傷が浅かったにせよ、ディーキンは拳の重量を押しのけて脱出する前に、大量の土砂に埋められてしまった。
それがなぜ、上空から姿を現したのか?

それは、簡単にいえば魔法の力によるものだ。

214 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:42:07.73 ID:8S42Rt4q
 
ディーキンは事態を把握すると、まずは自前の爪で土砂をかき分けてある程度のスペースを確保し、口の中に入った泥を吐き出した。
それから《次元扉(ディメンジョン・ドア)》の呪文を使って、上空へ百フィートほど瞬間移動し、土砂から逃れたのである。
多少時間をかければそのまま土を掘って脱出することもできなくはなかっただろうが、一刻も早くロングビルの動向を確認したかったのだ。
いくら杖を置くなどの小細工を弄したところで、あまりにできすぎたタイミングでのこの強襲には疑いを増さざるを得なかった。

その後は、上空からひどく取り乱して心配している仲間たちを見て、すぐにでも降りて行って無事を知らせたい、とは思ったが……。
しかしロングビルへの疑惑にここではっきりとケリをつけておかなくては、今度は他の仲間まで危険にさらされかねない。
そう考え、心苦しいながらもすぐには出ていかず、透明化してそのままロングビルの動向を見張り続けたのである。

案の定その後もロングビルは人払いをしたり、こそこそと森の奥に隠れてゴーレムを作り出そうとしたりと、怪しい行動をとり続けた。
そこでもうこれ以上静観する必要はなしと判断し、フーケの背後へこっそりと接近して呪文をかけたというわけである。

かけた呪文は、《人物支配(ドミネイト・パースン)》である。
先程の小屋の中では、《嘘発見(ディサーン・ライズ)》を使うだけで済まそうと思っていたのだが……。
いきなり小屋の外からゴーレムで強襲してくるような相手では、しっかり行動を束縛しておかないと危険だろう。

まあとにかく、ちょっと面倒はあったが、幸い自分が軽く負傷しただけでみんな無事だったわけだし、これで一区切りついただろう。

ディーキンがそう考えてほっと一息ついているところへ、タバサがつと歩み出た。
別にキュルケにけしかけられたからというわけでもないだろうが、彼女はそのままディーキンの傍へ寄って、傷の具合を間近で観察する。

……ゴーレムに潰されたにしては軽傷だが、おそらくどうにか、直撃は免れたのだろう。
とはいえ、それでもあちこちに小さな裂傷があるし、そこから鱗の下の肉が覗いて血が滲んでいる。
体中に土がついているし、ここは感染症を避けるためにも、早く手当てをした方がいいはずだ。

「私が治す。動かないで」

ハルケギニアのメイジには、『ヒーリング』と呼ばれる水系統の回復魔法がある。

熟達すれば切断された四肢をつなげることも可能だが、そこまでできるのはスクウェアクラスの水メイジくらいのものだ。
並みのメイジでは完全に治せるのは掠り傷などの軽傷だけで、ある程度深い傷を治すには『水』の秘薬が必要になる。
命に係わるほどの重傷では秘薬を用いても完全に治すことは難しく、命に別状がないところまで治癒させた後は、自然回復を待つ形になることも多い。

とはいえ、タバサは学院では屈指のトライアングルクラスのメイジであり、水も二番目に得意な系統である。
このくらいの傷なら、精神力はかなり使うがなんとか秘薬なしでも塞げるだろう、と考えたのだ。

いや、本当に大したことないから……、と遠慮するディーキンをよそに、タバサは呪文を唱えた。

「イル・ウォータル・デル……」

しかし、呪文を完成させても、傷が思うように塞がらない。
タバサは僅かに首をかしげてさらに精神力を注ぎ込み、呪文の力を強めてもう一度やってみた。
それでもやはり、傷はほとんど癒えた様子もない。

「……ごめんなさい、私では無理。
 学院へ戻って秘薬を買って、教師に頼んで」

タバサはやや怪訝そうな、悔しげな様子で、ほんの少し顔をしかめた。
思ったほど自分には『水』の力がないのか……、これでは自分の精神力が尽きるまでやっても、この傷は治せそうにない。

実はこれは、タバサの実力が低いからではなく、ディーキンの生命力が見た目からは想像もできないほどに高いせいなのである。

ディーキンは外見上は軽傷を負っているだけに見えるが、これでも巨大ゴーレムの拳をモロに直撃された上に生き埋めになっている。
彼が失った生命力は、ごく平凡な一般人なら軽く2回は死ねるほどの量であり、それが彼にとっては浅手に過ぎないというだけのことなのだ。
一般人の軽い怪我を治す程度の治癒呪文では焼け石に水で、ろくな効果が見られないのは当然といえよう。

「ありがとうなの、タバサ。
 でも、全然そんな必要はないよ、そこまで気を使ってもらわなくても……」

215 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:45:08.57 ID:8S42Rt4q
 
ディーキンはお辞儀をしてそういったが、誰もかれもが口々に自分の身を案じてくる。
ルイズなど、すぐに水の秘薬をありったけ買ってあげるからとかなんとか、えらく大げさなことを言っていた。

「ンー……、ええと、心配してくれてありがとう……」

ディーキンは頬をかいてそう礼を言いながらも、内心少し困っていた。

大事な使い魔だからというのもあるのだろうが、冒険生活になど縁のない貴族の令嬢には、この程度でも酷い重傷に見えるらしい。
自分としてはこの程度の怪我くらい、一晩ゆっくり寝て休んだら魔法をかけるまでもなく全快するだろうと思っているのだが……。

しかし、先程はフーケを捕らえるためとはいえ余分に長く心配させてしまったのだし、これ以上余計な心配をさせたくはない。
それにこのままだと、秘薬を買うとか言っている。そんな余計な費用をかけさせるわけにもいくまい。
こうなったら、自分で魔法を使ってさっさと治すとしよう。

「わかったの、だけどみんなに迷惑はかけられないよ。
 ディーキンは自分でなんとかできるから、ちょっと離れてて……」

そう言って案じる皆を離れさせると、先程と同じように、呪文構成要素ポーチの中から小さな鞄とろうそくを取り出した。
そしてまた、朗々と響く声で呪文を詠唱しながら手を複雑に宙に躍らせ、《怪物招来(サモン・モンスター)》の呪文を紡いでいく。

それを見て、ルイズらは不思議そうに首を傾げた。
一体あの小妖精のような少女たちをまた呼び出して、何をしようというのだろうか?

「《サーリル、ベンスヴェルク・アイスク……、ビアー・ケムセオー……、
  アシアー! ブララニ・エラドリン!》」

数秒間の詠唱の後に、最後の一言に前回とは違う名を唱えて、焦点具を持った手を高く掲げる。
呪文が完成し、ディーキンの目の前にほのかに輝く魔方陣が浮かび上がった。
そこへ理想郷の高貴な存在のエネルギーが招来され、青白く煌めく旋風となって渦を巻いて集まり、瞬く間に実体化した。

それは、ゆったりとしたチュニックを身に帯び、美しく輝く曲刀と弓を身に帯びた男だった。
どこか中性的で整った端正な顔立ちと、落ち着き払った優雅な態度。
それとは裏腹に、肩幅が広く、鍛え上げられた逞しい身体。
落雷色の白銀の長髪を風に靡かせ、その目には不思議な、鮮やかな色彩が渦巻いている。

しかし、何よりもルイズらが注意を引かれたのは、そのとがった耳だった。
この姿は、まさに、話に聞く……。

「エ、エルフ!?」

この呪文を披露するのは2回目であるにもかかわらず、先ほどクア・エラドリンを見た時以上の驚きの声が上がった。
皆の声の調子には、若干の怯えさえ混じっている。

それも、無理はないだろう。

ここハルケギニアにおいて、エルフは“最強の妖魔”として広く畏怖されているのだ。
人間の文明圏の東方に広がる砂漠に暮らす、長命の種族。
人間の何倍もの歴史と文明とを誇る、強力な先住魔法の使い手にして、恐るべき戦士として。

彼らの住む土地にはブリミル教における聖地が含まれているため、かつてはその地を奪取せんと、幾度となく軍が編成されたという。
だが、彼らの数の十倍以上の兵を繰り出してようやく勝てるかどうかといった有様で、到底成功の見込みはなく、いつしか派兵は打ち切られた。
ここ数百年というもの、彼らに手を出そうとする愚か者はなく、今ではその恐ろしさにまつわる噂や伝説が一人歩きしている。

ディーキンはそういったこの地の事情を思い出して、ちょっと苦笑した。
確かに、ここの人々から見るとエラドリンは大概エルフみたいなものかもしれない。
フェイルーンの感覚では、エラドリンはエルフに似ているが、もっと頑強で強い天界の種族、といった感じだ。

さておき召喚された男は、少女たちの警戒した様子を見て、怪訝そうに眉をひそめる。
それから、身に覚えのない非友好的な反応に少々気分を害したと見えて、小さく鼻を鳴らすと自分の召喚者であるディーキンの方へ向き直った。

216 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:47:15.03 ID:8S42Rt4q
 
「エルフではないよ、御嬢さん方。私はブララニ、エラドリンだ。
 君らが何を警戒しているのかは知らんがね。
 ……して、わが召喚者よ、今日はいかなるご用件かな?」

ディーキンは腕を広げて、自分の怪我を負った体を示して見せた。

「見ての通りなの。面倒をかけて申し訳ないけど、ディーキンを治してくれる?」

「心得た」

ブララニは短く率直に答え、屈みこんでディーキンの肩に手を置くと、目を閉じて精神を集中させた。
その身に備わった疑似呪文能力が呼び起こされ、暖かい純白の治癒の光が掌から溢れ出す。
光はディーキンの体のあちこちの傷口を包むと、たちまち塞いでいった。

それを見たルイズらは、驚きに目を見張った。
先ほど、タバサの治癒がまるで効かなかった傷口を、秘薬も使わずに瞬く間に塞いだのだ。

一回では完全に傷が塞がりきらなかったため、ブララニはもう一度同じ能力を使って、ディーキンの体の傷を完全に治癒させた。
ディーキンはせっかくだからと、その後ついでに突風を吹かせてもらい、全身に付着していた土を吹き飛ばしてきれいにしてもらった。

「他には、何か?」

「いや、もう十分なの。ありがとう、ディーキンは感謝するよ」

「そうか。できれば今度は、戦いのために呼ばれたいものだな」

ディーキンが深々とお辞儀をして礼を述べると、ブララニは会釈を返して、そのまま姿を消した。

ルイズらは驚きのあまりディーキンの傷が癒えたことに安堵するのも忘れて、しばし呆然として立ち尽くしていた。
ただタバサだけは、何か思うところがあるのか、杖をぐっと握りしめて、ディーキンの方を見つめていた。



(…………)

フーケは、ぼうっとした顔で、どこか遠くの景色を見るように、一連の出来事を眺めていた。

217 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/07/29(水) 18:50:26.35 ID:8S42Rt4q
 
虚ろな頭には驚きや怯えのような感情は沸き起こってはこなかったが、それでも周囲の出来事は正しく認識している。
現実感のないぼんやりした頭で、フーケは他人事のように、自分は選択を過ったのだと悟っていた。

巨大なゴーレムに叩き潰されても平然としている、異常な頑健さといい。
伝説の妖精やエルフに酷似した強力な魔力を持つ亜人を召喚して使役する、わけの分からない術といい。
そして今、自分を支配している、この得体のしれない精神制御の魔法といい……。

自分は甘かった、見た目に騙されていた。
こいつはエルフ以上の、とんでもないバケモノだ。始末しようなど、論外だった。
一切手出しをせず、関わり合いにならず、素直に宝物を返して次の機会を待つべきだったのだ。

霞がかったような頭に、僅かに後悔の念がよぎる。
だが、もう手遅れだ。今の自分には何もできない。

今は、他のガキどもが戻って来る前に、こいつが言ってくれた言葉だけが頼りだった。

『心配しないで、お姉さん。
 ディーキンはあんたを、死刑にさせるようなことはしないからね』

とはいえ、どこまでそんな約束が信用できるものか。

結果的にはまるで堪えていなかったとはいえ、自分はついさっき、こいつを潰して殺そうとしたのだ。
たとえ本当に命だけは助けてくれるとしても、自分を殺そうとした相手に、そんなに寛大になってくれるとは思えない。
自分がフーケだと露見したとき、その場で引き裂かれなかっただけでもありがたいくらいだろう。

(ごめんよ、テファ……。私は、帰れないかも……)

心の奥でそんな詫びの言葉を呟いて溜息を吐きながら、フーケは自分の体が指示に従って動くのを、どこか遠くの景色のように眺めていた。
ディーキンはフーケと口裏を合わせて他の探索隊の面々を説得し、宝物を回収して一旦学院へ戻るように話をまとめた……。

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/29(水) 19:12:56.06 ID:4MpzKek/
支援

219 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/29(水) 19:53:58.12 ID:8S42Rt4q
 
ディメンジョン・ドア
Dimension Door /次元扉
系統:召喚術(瞬間移動); 4レベル呪文
構成要素:音声
距離:遠距離(400フィート+1術者レベル毎に40フィート)
持続時間:瞬間
 術者は自分自身を距離内の任意の場所へと瞬時に、正確に転送する。その場所を思い浮かべるか、方向と距離を指定すればよい。
この際、自分の最大荷重を超えない重量であれば、所持品を一緒に運ぶことができる。
また、サイズが中型以下の同意するクリーチャーとその所持品を、術者レベル3レベルごとに1体ぶんまで一緒に運ぶこともできる。
大型クリーチャー1体は中型クリーチャー2体相当、超大型クリーチャー1体は大型クリーチャー2体相当である。
 すでに固体が占めている場所に到着した(いわゆる「いしのなかにいる」状態になった)場合、転送されたクリーチャーは1d6点のダメージを受ける。
その後、意図した出現場所から100フィート以内にある、適切な表面の上の何もないランダムな場所に放り出される。
100フィート以内に開けた場所が無ければ、より大きなダメージを受けた上で、1,000フィート以内の開けた場所に飛ばされる。
1,000フィート以内にも開けた場所が無い場合には、さらに大きなダメージを受けた上で、呪文は失敗する。
 敵の懐に一瞬にして斬り込んだり、逆に敵に囲まれた状態から逃走したり、ダンジョンの奥からのリレミト的な用法に使ったりと、大変便利な呪文である。
また、この呪文の構成要素は音声のみなので、縛り上げられるなどして体が動かない場合でも、口が自由ならば唱えることができる。

ドミネイト・パースン
Dominate Person /人物支配
系統:心術(強制); 4レベル呪文
構成要素:音声、動作
距離:近距離(25フィート+2術者レベル毎に5フィート)
持続時間:術者レベル毎に1日
 術者は対象の人型生物の精神との間にテレパシー的なつながりを作り出し、その行動を制御できる。
一度制御が確立してしまえば、術者が対象と同じ次元界にいる限り、対象を制御できる距離は無限であり、直接姿が見えている必要もない。
術者と対象が同じ言語を知っているなら、術者は相手を、相手の能力の範囲内でおおむね自分の望む通りに行動させることができる。
同じ言語を1つも知らないなら、ごく初歩的な命令を与えることしかできない。
術者は呪文に精神を集中することで、術者は対象がすべての知覚を用いて感じ取り、解釈した感覚を受け取ることができる。
その場にいるかのように直接見聞きできるというわけではないが、それでも何が起こっているのかについて、かなりの情報を得ることができる。
ただし、術者と対象がこのテレパシー的なつながりを通して、直接意思疎通ができるわけではない。
 対象は日々の生存に必要なもの(睡眠、食事など)を除く他のありとあらゆる活動に優先して、術者からの命令を遂行しようと試み続ける。
このように活動パターンが狭まるため、難易度15に対する<真意看破>判定に成功した者は、対象の行動が心術効果の影響下にあると知ることができる。
 自分の本性に反する行動をするように強制された対象は、+2のボーナスを得て、改めてセーヴィング・スローを行なうことができる。
また、この呪文の支配下にあっても、明らかに自殺的な命令は実行されない。
たとえば、中身が青酸カリだと知っている飲料を飲ませたり、酸のプールに飛び込ませたりすることはできない。
しかし、中身が毒だとはっきり知らない飲み物を飲ませたり、酸の溜まった落とし穴が隠してある通路を歩かせることはできるだろう。
 なお、これはバードにとっては4レベルだが、ウィザードやソーサラーにとっては5レベルの呪文である。

ブララニ・エラドリン:
 エラドリンの中の一種族である彼らは、心臓の鼓動の一回一回に至るまで、栄光と褪めること無き情熱でできていると言われている。
彼らは砂漠の遊牧民に似ており、聖なる力を持つシミターとコンポジット・ロングボウを巧みに使いこなす。
また、攻撃、治癒、戦闘補助、行動妨害、精神籠絡などの数々の疑似呪文能力をも扱える、優秀な魔法戦士である。
 彼らの体は冷たい鉄製の武器や悪しき力を帯びた武器でなければ容易に傷つかず、呪文抵抗力によって弱い呪文を水のように弾く。
さらに、ブララニは本来の姿に加えて竜巻の形態を取ることができ、その形態では高速・高機動で飛行し、突風の攻撃を仕掛けることができる。
彼らの戦闘力はクアとは比較にならないほど高く、ほとんどの人間の及ばない域にあるが、それでもエラドリンの中では比較的弱い部類である。
 ブララニは、サモン・モンスターYの呪文で招来することができる。

220 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/07/29(水) 19:55:06.54 ID:8S42Rt4q
今回は以上になります。
ご支援いただき、ありがとうございました。

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/29(水) 19:57:07.64 ID:Uf62IaRs
乙でした

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/29(水) 22:27:49.22 ID:ZZtkfTK/
面白い

223 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:19:06.42 ID:v+MbwNTg
こんばんは。焼き鮭です。六十八話の投下を致します。
開始は21:22からで。

224 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:22:10.97 ID:v+MbwNTg
ウルトラマンゼロの使い魔
第六十八話「恋するレギュラン」
熔鉄怪獣デマーガ
悪質宇宙人レギュラン星人 登場

 トリステインの一画の平原で、グレンファイヤーが大地を破り出現した怪獣の相手をしていた。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
 典型的な恐竜型の怪獣で、背中にはサメのものに似た背びれが縦に並び、頭頂部には一本角が
黄色く光っている。この怪獣の名はデマーガ。肉体の79%が溶けた鉄という特異な体質の怪獣で、
そこにいるだけで大気が熱せられて水が沸騰するほどの高熱の持ち主なのだ。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
 デマーガの背面が赤熱化すると、そこから火山の噴火を彷彿とさせる勢いで火炎弾が発射された! 
火炎弾は辺り一面に降り注ぎ、瞬く間に平原を火の海に変える。
『うおッ!? こいつはやっべぇ怪獣だぜ!』
 咄嗟にデマーガの攻撃をよけながら、グレンファイヤーは焦りの言葉を発した。これほどの破壊を
巻き起こす怪獣が市街地に入り込んだら、甚大な被害が出ることは確実。絶対に食い止めなければならない。
『だが、熱さでこのグレンファイヤー様が負けてたまるかぁ―――――! うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』
 対抗心を駆り立てられたグレンファイヤーは真正面からデマーガに挑んでいき、取っ組み合った。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
『ぐぅッ!』
 だがデマーガの腕力は高く、さしものグレンファイヤーも押され気味になる。デマーガには
これといった特殊能力はないが、その代わりに筋力に優れたパワー型の怪獣なのだ。
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
 そしてデマーガは至近距離からグレンファイヤーに口からの熔鉄光線を食らわせた!
『ぬおおぉぉぉッ!?』
 デマーガ必殺の一撃により大きく弾き飛ばされるグレンファイヤー! しかし、さすがは炎の戦士。
その攻撃を耐え切った!
『何のこれしきぃッ! ファイヤァァァァァァッ!!』
 胸のファイヤーコアを熱くたぎらせて、グレンファイヤーは再び突っ込んでいく。そして今度は連続パンチ!
『おらおらおらぁぁぁ―――――!』
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
 炎のパンチの猛攻にデマーガはなすすべがない。ボディに、顔に拳を浴びて大きくひるむ。
『こいつでとどめだぁぁぁぁぁぁぁッ!』
「グバアアアアッ!!」
 そうして強烈なアッパーが炸裂した! それが決め手となってデマーガは大爆発を起こして倒れた。
 今日も怪獣を撃破したグレンファイヤーは、縮小して人間のグレンの姿へと戻っていく。
「ふぅ、いっちょうあがりだぜ。……にしても、ゼロとサイトの奴はどこに行っちまったんだ……。
本当に死んじまったなんてことはねぇよな……」
 グレンが一向に行方の知れない才人、そしてゼロのことを案じたその時、近くの水たまりに
ミラーナイトの顔が映り込んだ。
『グレン、グレン。大事なお知らせがあります。ゼロとサイトのことです』
「何!? あいつらが見つかったのかミラーナイトッ!」
 グレンはすぐさま水たまりに飛びつくようにした。それだけ聞きたかったことなのだ。
『ええ。心して聞いて下さい……』
 ミラーナイトはそんな彼に、アルビオンのウエストウッド村で発見した才人のことを全て話した……。
「な……何だってー!?」

 その肝心の才人は、たった今絶体絶命の窮地に陥っているところだった。
『グハハハハハ! さぁ〜て、覚悟はいいかなぁ〜!? よくなくても殺すがなぁ〜!』

225 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:24:14.71 ID:v+MbwNTg
 才人はレギュラン星人に踏みつけられて、全く身動きの取れない状態。デルフリンガーも
弾かれてしまい、完全なる丸腰。もうレギュランの気分一つで命が絶える、どうしようもないありさまだった。
(ゼロ、ごめん……。せっかく命をつないだのに、俺が弱っちぃせいで、こんなことでまた
死んでしまうなんて……)
 才人は己の弱さを恥じた。後悔した。しかしもう、何もかもが遅すぎる。
 最早ここまでと、反射的に目を閉ざした、その時、
「サイト、どうしたの? さっきから変に騒がしいけれど……」
 小屋の陰からティファニアがひょっこりと顔を出した。そして現状を目の当たりにして、
ハッと息を呑む。
「これは……!」
『んん〜? むッ! これは何とも美しい娘がいたものだ! 全く驚きだ!』
 ティファニアに目を向けたレギュラン星人は、その美貌に思わず釘づけとなった。
『こいつは宇宙の好事家に高く売れそうだな! ガッハッハッ! 思わぬ収穫だ!』
「ぐッ……テファ、逃げろ……!」
 レギュラン星人はティファニアにまで手を出そうという。才人は必死にティファニアへ警告を向ける。
 しかしティファニアはそれに従わず、驚くべき行動に出た。懐から小さく細い杖を取り出すと、
朗々と呪文を唱え始めたのだ。

 ナウシド・イサ・エイワーズ……
 ハガラズ・ユル・ベオグ……
 ニード・イス・アルジーズ……

「こ、この呪文は……!?」
 才人は驚いた。ティファニアはメイジだったのか。
 しかもただのメイジではない。この呪文の響き……ルイズの『それ』に酷似している! ということは……。
『ぬぅ? 魔法を使うつもりか? 馬鹿めッ! この宇宙一の嫌われ者ヅヴォーカァに、
この星の貧弱な魔法など効かぬわ! 受け切って、力の差を見せつけてくれようぞ!』
 レギュラン星人はティファニアが唱えている呪文の正体に気づいていない。余裕を見せつけている。

 ベルカナ・マン・ラグー……

 呪文が完成し、ティファニアが堂々とした態度で杖を振り下ろした!
 その瞬間、レギュラン星人を包む空気が歪み……元に戻った時には、レギュラン星人に
大きな変化が起きていた。
『……ぬ? ここはどこだ? 私はどうしてこんなところにいるんだ? 何をするつもりだったのか……
まるで思い出せない』
 魂を抜かれたかのようにぼんやりと立ち尽くし、そんなことをつぶやいたのだ。才人からも
足をどかし、ポカンとする。
「ど、どうしたんだ……?」
 才人は何が起きたのか理解できずに、同じように呆ける。
『そこの綺麗なお嬢さん、何か知らないかな?』
 レギュラン星人はティファニアに尋ねかけた。彼女はこう答える。
「早く故郷に帰らないと、って言ってましたよ」
 あろうことか、レギュラン星人はその嘘を真に受けた。
『何、そうだったか! それはいかんな。お嬢さん、教えてくれてありがとう! お礼にこの
レギュラン人形をあげよう』

226 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:26:56.18 ID:v+MbwNTg
 どこから取り出したのか、レギュラン星人は風車を片手に持った小さなレギュラン星人の人形を
ティファニアに差し出した。
「あ、ありがとう……」
 ティファニアはすごく微妙な笑顔を作った。
『それではさらば! 急げ急げ〜』
 そしてレギュラン星人は空へ飛び上がり、本当に帰っていってしまった。唖然としてそれを見送る才人。
 ティファニアの方を向くと、彼女は恥ずかしそうな声で言った。
「……あの亜人の記憶を奪ったの。“森に来た目的”の記憶よ。しばらくしたら、わたしたちのことも
すっかり忘れてるはずだわ」
 才人はこれと似たようなことがあったのを思い出した。戦死したと思われたルネ隊がひょっこり
帰ってきて、それまでのことを何一つ覚えていなかったことだ……。
「じゃあ、竜騎士たちを助けて、その記憶を奪ったのも……」
「そう。あの人たちは知り合いだったのね」
 ティファニアは肯定した。
「……今のは、どんな魔法なんだ?」
 才人が聞くと、ティファニアに代わってデルフリンガーが答えた。
「虚無だよ。“虚無”」
「虚無?」
 意外にもティファニアが聞き返した。
「……なんだ、正体も知らねえで使ってたのかい。とにかく……、お前さんがどうしてその力を
使えるようになったのか、聞かせてもらおうか」
 デルフリンガーの提案で、才人たちはティファニアから詳しい事情を教えてもらうこととなった。

 夜になって、才人とデルフリンガーは居間でティファニアと向き合った。
「待たせてしまってごめんね。夜にならないと、話す気になれないものだから」
 いいよ、と才人は言った。
 ティファニアは自身の生い立ちをゆっくりと語り始める。
「わたしの母はね、アルビオン王の弟の……、この辺りは、サウスゴータっていう土地なんだけど、
ここを含むさらに広い土地を治めていた大公さまの、お妾さんだったの。大公だった父は、王家の財宝の
管理を任されるほどの偉い地位にいたみたい。母は財務監督官さまって呼んでたわ」
 その妾というのは、ティファニアがハーフエルフである以上、エルフであることは確定だ。
「なんでエルフが、その大公の妾なんかやってたんだ?」
 デルフリンガーのもっともな疑問。人間と敵対しているエルフが、よりによって大公の妾というのは、
まずありえないことだ。
「そのあたりのことは知らないわ。エルフの母が、どんな理由があって、アルビオンにやってきて、
父の愛人になったのか、わたしは知らない。母も決して話そうとはしなかったし……。でも、この
ハルケギニアで、エルフのことを快く思ってる人はいないから、何か複雑な事情があったことは間違いないと思う」
 エルフの外見を持つティファニア母子は表に出られなかったものの、穏やかな生活を送っていたという。
しかし、
「そんな生活が終わる日がやってきた。四年前よ。父が血相を変えてわたしたちのところにやってきたの。
そして、『ここは危ない』と言って、父の家来だった方の家に、わたしたちを連れて行った」
「どうして?」
「母の存在は、王家にも秘密だったらしいの。でも、ある日それがバレちゃったらしいのね」
 大公がエルフと愛し合っているなど、前代未聞のスキャンダルだ。当然王は許さず、
ティファニア母子の行方を血眼になって捜した。そして……。
「今でもよく覚えてる。降臨祭が始まる日だったわ。わたしたちが隠れた家に、大勢の騎士や兵隊が
やってきた。母はわたしをクローゼットに隠して、兵隊たちに立ちふさがった。母はこう言ったわ。
『なんの抵抗もしません。わたしたちエルフは、争いを望みません』。でも、返事は魔法だった。
恐ろしい呪文が次々母を襲う音が、聞こえてきた。追っ手たちは、次にわたしの隠れたクローゼットを
引きあけた……」

227 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:28:59.57 ID:v+MbwNTg
 ティファニアは、苦しそうな顔でワインを一口飲んだ。
「それで、捕まったのか?」
「ううん……」
「じゃあ誰かが助けてくれたのか?」
「いいえ。さっきの呪文。あれがわたしを助けてくれたの」
「どうして、あの魔法に目覚めたんだ?」
「わたしの家には、財務監督官である父が管理している財宝が、たくさん置いてあった。
その中に、古ぼけたオルゴールがあった。父の話では王家に伝わる秘宝だそうだけど、
音が鳴らないの。だけど、わたしはある日気づいた。同じく秘宝と呼ばれていた指輪を
嵌めると、曲が聞こえることに。不思議なことに、その曲はわたし以外の他の誰にも
聞こえなかった。たとえ指輪を嵌めても」
 才人は息を呑んだ。ルイズの時と状況が酷似している。
「その曲を聞いているとね、頭の中にね、歌と……、ルーンが浮かんだの」
「それが、さっき唱えたルーン?」
「そうよ。クローゼットを兵隊たちにあけられたとき、頭に浮かんだのはそのルーンだった。
気づいたら、父から貰った杖を振りながらその呪文を口ずさんでいた」
 それが“虚無”の魔法の一つ、『忘却』の呪文だったのだ。兵隊は先ほどのレギュラン星人同様、
目的を忘れた。だからティファニアだけは助かったのだった。
 それからティファニアは、紆余曲折あってウエストウッド村に流れ着いた。しかしここは、
村とは名ばかりの親を亡くした子供しかいない孤児院。ティファニアは彼らの世話を焼きながら
生活するようになった。
 村を狙う野盗などは、ティファニアの『忘却』で全て追い返していた。そのためウエストウッド村は
世間から忘れ去られ、戦争の際にも戦火に巻き込まれずに済んだのだという。
「そう、わたしの魔法は“虚無”っていうのね。不思議な力だと思ってたけど……」
「そのことは、あんまり人に言わないほうがいい」
 才人は釘を刺した。
「どうして?」
「“虚無”は伝説なんだ。その力を利用しようとするヤツがいないとも限らない。危険だよ」
「伝説? 大げさね!」
 ティファニアは笑った。
「こんなできそこないのわたしが、伝説? おかしくなっちゃうわ!」
「ほんとなんだよ」
 才人が真顔でそう言ったら、ティファニアは頷いた。
「わかったわ。あなたがそうまで言うなら、誰にも言わない。というか話す人なんか元からいないし、
バレたところで記憶を奪えばいいだけの話だし……」
 世間から外れた場所で育ってきたティファニアには、ことの重大さがよくわかっていないようだ。
今時、侵略者のこともよく知らないようでもある。才人は若干心配したが……今まで誰にも
見つからなかったのなら、そうそう簡単に見つかることはないだろう。
 彼らが話していたところ……いきなり家の扉が外からダンダンッ! と荒々しくノックされた。
「あら……? こんな夜更けに誰かしら。子供たちじゃないわね……」
 怪訝な顔をするティファニア。ノックの音はやたら力強く、また位置が高かった。子供たちの
背丈からは考えられない。
 家人の返事を待たずに、扉は勝手に開け放たれた。
「すいませーん! ここにヒラガ・サイトっていう奴がいるって聞いて来たんですがー!」
 扉を開けた者の顔を見て、才人は目を丸くした。
「グレン!」
 才人の顔を見つめ返したグレンは……一直線に彼に近づいて思い切り抱き締めた!
「うおおおぉぉぉぉぉ―――――――――! サイトぉぉぉぉ――――――――――! 
ホントに生きてたんだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「うわぁぁッ!?」

228 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:31:18.63 ID:v+MbwNTg
 歓喜するグレンはそのまま才人の決して小柄ではない身体を抱え上げ、グルグルと振り回す。
才人は軽く悲鳴を上げた。
「よかったぜぇ! ホントによかったッ! ずっと心配してたんだぞ! ミラーちゃんの
言った通りでほっとしたぜぇッ!」
「ちょっ、グレン、苦しいって……」
 才人が目を回している一方で、ティファニアはグレンの顔を見て唖然としていた。
「えッ……!? ウェールズさま……!?」
 ハッ、と焦る才人。ティファニアの言ったことが全て本当なら、彼女はウェールズの従妹となる。
グレンの正体がバレてしまうか!? と思ったが、
「いや、違う違う。俺はグレンって言うんだよ。ウェールズってのに似てるってよく言われるんだけどよー、
単にそっくりなだけだぜ。関係ねぇから」
「そ……そうですよね。ウェールズさまはとっくに亡くなられたんだし、本人のわけないですよね……」
 グレンのすっとぼけをあっさり信じた。従妹と言っても、ウェールズの顔をよく知っているわけではないようだ。
「おっと、いきなり上がってすまなかったな、お嬢ちゃん。つい興奮しちまってよ。俺はこいつの友達でな」
 才人を下ろしたグレンが謝ると、ティファニアはあっさりと許した。
「構いませんよ。……それより、さっきサイトのことを聞いて来たって言ったけれど……
誰に聞いたんですか? サイトのことは誰も知らないはずなのに……」
「えッ!? あ……い、いやー、あれだよ、風の噂って奴だよ! 噂ってのはどこからともなく
流れるもんだからな! 不思議だよなぁー!」
 冷や汗を垂らして強引にごまかしたグレンは、話題をすり替える。
「そ、それよりサイトのことだ。サイトお前、身体は大丈夫なのか? 今日まで何か危ない目に
遭ったりとかしてねぇか?」
「危ない目……は、昼にあったかな……」
「何!? そりゃマジか!?」
 才人はレギュラン星人の件をおおまかにグレンに話した。とりあえず、ティファニアの
“虚無”の魔法の件は伏せて。
「そうだったのか……。けどお前が無事で何よりだぜ」
 安堵したグレンに、才人はこう頼んだ。
「ちょうどいい機会だ。グレン……お前の旅に、俺を連れてってくれ」
「何?」
 ティファニアは若干驚いた顔で才人を見た。
「サイト、行っちゃうの? でも、トリステインに戻るんじゃ……」
「いや、今の俺にはトリステインに戻る資格がないよ。使い魔じゃなくなったから……。
けれど、ここにずっといるわけにもいかない。昼の奴は、元々俺を狙ってたんだ。
今後もああいう奴が現れるかもしれない。今回は追っ払えたけど、いつも上手く行く
保証なんてないし……。ここに残ってたら、テファたちに迷惑をかける。だから、
ここから離れないといけないんだ」
 と語った才人は、再度グレンに頼み込む。
「そういうわけだから……グレン、頼むよ」
 しかし、グレンは難しい表情で腕を組み、首を横に振った。
「いいや、そいつは駄目だな」
「えッ!? 何で!?」
 グレンは指を差して、才人に指摘する。
「サイト、今のお前はひっでぇ顔だぜ。打ちのめされて自信をなくしちまった、哀れな男の顔だ」
「うッ……」
「そんな奴を喧嘩だらけの俺の旅に連れてくわけにゃいかねぇよ。そもそも俺、暗いの嫌いだしな」
 ばっさりと断れた才人はますます落ち込む。が、
「……けど、どうしても連れてってほしいってんなら、俺が言うことを出来たら連れてってもいいぜ」
「え? それって何だ?」
 顔を上げた才人に、グレンは不敵に笑いかけた。

229 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:32:30.11 ID:v+MbwNTg
「よぉっく聞けよ。明日から、俺がお前を鍛える!」
「えぇ!?」
「そんでお前が立派な男に生まれ変わったと俺が判断したら、それでオーケーだ! どうだ?」
 唐突な申し出に、才人は目をパチクリさせた。
「な、何でそんなこと……」
「俺はな、ずっと思ってたんだよ。お前はちゃんと鍛えりゃ一人前の戦士になれるってな。
こっちこそちょうどいい機会だ。みっちりと鍛え込んで、お前のウジウジした空気を
ぶっ飛ばしてやるぜ! デルフ、どうよ?」
「俺には何の異論もねえぜ。相棒が強くなるのは、こっちとしても願ったり叶ったりだ」
 デルフリンガーは賛同する。そして肝心の才人は、
「……わかった。やるぜ!」
「おぉしッ! よく言ったな!」
 承諾した才人に、ティファニアがやや不安そうに尋ねかけた。
「サイト、大丈夫なの? あの人、何だか無茶しそうなんだけど……」
「大丈夫さ。ダラダラしててもしょうがないって考えてたところだし」
 そう答える才人。実際、才人は己の弱さについてずっと悶々としていたのだ。それを解消できる
というのであれば、望むところだ。
「そうと決まれば、嬢ちゃん、わりぃけど今日から俺も厄介になるぜ。よろしくな!」
「は、はい……」
 ビッとサムズアップしたグレンに、ティファニアは若干引きながらうなずいた。どうもグレンの
暑苦しい雰囲気に押されている様子だ。
 何はともあれ、才人は急な話ではあるが、グレンの指導の下に自身を鍛え上げることになったのであった。

230 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/07/31(金) 21:33:11.12 ID:v+MbwNTg
以上です。
久々の完全新規デザインの敵怪獣が嬉しくて、つい出してしまった。

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/31(金) 21:33:39.71 ID:hSqzn2Yn
乙!

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/31(金) 22:52:29.52 ID:eNozt2+n
お、今日はダブルでウルトラやね

ゼロの人と4番目の人に乙

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/31(金) 22:56:16.66 ID:eNozt2+n
間違い
5番目やった

234 :ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2015/07/31(金) 23:09:41.06 ID:9k/TcV71
ウルゼロの人、乙でした
すでに見られた方がいたようですが、避難所のほうに30話を投稿してきました。

あと、前回投稿した後にモルフォ蝶の鱗粉の効力についてよからぬ想像をしておられた方がいたようですが、
やろうと思えばできますが、あのシリアスな場面じゃさすがにやりませんよ(笑
まあ一段落したら水着回でもやりましょうか。ちょうどアニメOVAにはちょうどいい話があることですし

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/31(金) 23:58:41.00 ID:0jqQpzJ5
>ディーキンさん
んー、ディーキンはドラゴンディサイプルだから体力で耐える系のキャラで合ってるのかもしれんけど、
D&DでHPって、 “肉体の頑丈さだけではなく、技術幸運決意など生き延びるためのものすべてを表す”みたいにルールに書いてるし、
直撃を喰らってピンピンしてるのはイメージに合わないかも
じゃあ回復呪文で回復するのはなんなのかって話にもなってしまうが……なんじゃろな

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 00:31:12.20 ID:6GDHZMIz
>>234
やっぱり無理かw

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 02:43:01.27 ID:xD2im+zU
>>235
外皮ボーナスが上がる特技を持っていたとか

育ち切ったD&Dのキャラにとってはこの程度は「アー痛かった」で済むのかもしれない。

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 03:03:24.12 ID:nS/ZxlEb
>>235
回復で回復するのは素早く動けなくなってしまうような怪我や、盾持つ手の捻挫なんかもHPの内だからじゃねーの

ドラゴンディサイプルは皮膚でアーマーくっそ強くなるしデカいヒットダイスに強靭なセービングスロー、しかも筋力バリバリ増えるでしょ?
そこらへん+前提技能、武器と防具の習熟の特性一切なしってとこ見ると
技術なんてほとんどなしででその強大な身体能力に任せて戦闘するイメージじゃねーかな

セービングスローの最終的な各数値 頑健+7 反応+3 意志+7 ってのもプロレス的なガチ殴り愛する姿を設定してように見える

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 03:05:25.60 ID:dxFH6qcZ
HPはHPだもんなぁw

240 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/01(土) 07:40:42.58 ID:0Vg9RB5W
ご意見を頂きまして、ありがとうございます(御辞儀)。

確かにhpの定義は「致命傷を避けるあらゆる能力」であって体の頑丈さのみではないですね。
たとえばhp200の普通の冒険者なら、とっさに体を捻ったり腕で頭を庇ったりして完全な直撃ではなかった、という描写にするべきでしょう。
しかし、同じhp200でもドラゴンであれば、まともに殴られても僅かに顔をしかめただけで耐える、もしくは平然としている(ACを抜けなかった)という描写でよいかと思います。

ディーキンは冒険者にしてドラゴン、というキャラです。
技巧や体捌きで攻撃をかわす部分もそれなりにあるでしょうが、純粋に体が頑丈だという部分もかなり大きいかと思います。
マジックアイテムでの強化無しでも素の外皮が5、プラス鎧もあるので、直撃といっても防護服の上からみたいな感じになりますし。
そうでなくても、私としては彼は素の肉体の頑丈さでもライオンやシロクマのような現実の猛獣よりは上だろうと考えております。
少なくとも、時速数十kmで走る自動車にはねられても致命傷にならないくらいには丈夫だと思ってます。

感覚的に合わない部分もあるかも知れませんが、本作ではそういう解釈である者としてご了承ください。
よければまた、どうぞよろしくおねがいいたします。
ありがとうございました。

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 15:45:06.22 ID:tCM72U+X
ディーキンさんご丁寧に返信ありがとうございます
他のコメくれたみんなもどうもですー

(ディーキンさんの丁寧誠実な態度はディーキンと似てるかもしんない)

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 16:01:57.20 ID:nS/ZxlEb
ディーキンの世界でコボルとに似てるとか言われたら刃傷沙汰おきそうw

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 16:29:23.49 ID:tCM72U+X
バロスwww

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/01(土) 21:36:20.99 ID:yxkJ9zhz
>>236
もしやってたら自殺ものの羞恥プレイだろwww

245 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 05:51:28.36 ID:GIRVrjF4
初めまして、今回こちらに初投稿させていただきます。
題材はファイナルファンタジー[より、スコール・レオンハートを召喚しました。
予めに説明しておきますと、この話はFF[のエンディングから1年後くらいの話です。
そして、スコールはリノアと別段結ばれている訳ではありません。
スコールの使うG.F.はゼロつかの世界ではかなり有名な幻獣という設定です。
最後に、稚拙な文章ではありますが、お付き合いいただけると嬉しいです。
投稿は6時頃より始めます。
結構書き溜めたと思ったのですが、意外と少なかったようで…

246 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:00:35.93 ID:GIRVrjF4
ゼロと獅子

「アルケオダイノスが大繁殖していたから討伐してほしい」
 その依頼はスコールにとっては鬱になることこの上ない話だった。
 どのくらいなのか? そう聞いても要領を得ず、結局自ら出向くことになった訳だが具体的な回答ができないという時点で終わっている。
 地下に続く洞窟の奥に異常な数のアルケオダイノスが生息しており、異常で対処できないから倒してくれ、という話なのだが何故そんな所に行く事になったのか非常に気になる問題だ。
 自ら進んで人間を襲うモンスターは討伐を良しとするが、人間の方から近寄って襲われ、それを討伐してくれという話は正直な所好ましくない。
 ではあるが、具体的な数を挙げないというのはやはり見逃せないところだった。
 誰かが犠牲になってからでは遅い訳であり、どの程度の数がいるのか正確に知っていれば対処のしようもある。
 依頼主との話し合いでとりあえず調査という形で出向くことにした。
 その時の依頼主に貴重な鉱石がどうだ人類の為がどうだと言われたが、一睨みして黙らせた。
「(やっぱりそういう話か……)」

 そういう訳でアルケオダイノスが大出現したという、セントラ大陸・エスタを南下した所にある洞窟の前まで来た。
 洞窟の入り口から奥まで続く道はかなり広く、暗闇の奥からは不気味な雰囲気を感じる。
 ちなみに、今回の任務に同行者はいない。いくらガーデン内の訓練施設にも放してるとは言え、学園生でアルケオダイノスを相手にできる人間は限られている。
 その限られているメンバーも今は仕事に行っていていないため、自動的にスコール一人でやることとなる。
「それでは、まずはよろしくお願いします、スコールさん」
 三人いた男のうち二人は洞窟前で待機、依頼人が着いてくるとのこと。
 ライトを手に洞窟の中に入り、様子を伺う。
 見たところ特に変わった様子も無いが……。
 不意に肩を叩かれる。
「スコールさん、悪いんだがね、これを受け取ってくれないか?」
「これは?」
 依頼人はいきなり声をかけてきたかと思うと、紙を渡してきた。
「あぁ、まだ読まんでください。アルケオダイノスを見つけた時に必要になりますから」
「……そうか」
 そう言われ、ポケットに入れておく。
 その紙のことからは意識を外し、注意深く辺りを見ながら奥へと進んでいった。
 音が聞こえてきた、間違いなくアルケオダイノスのものだ。
 声を頼りに、明かりを弱くしてゆっくり近づいていく。
「……っと」
 崖に行き当たった。いや、若干急な坂か……?
 その下には……確かにアルケオダイノスがいた。いたにはいたのだが……。
「なんだ、これは……」
 目算だけでも、78……79頭。
 先にはまだ穴がいくつかあり、明らかにアルケオダイノスの巣といったところだった。
 何頭かが光に気付き、スコールは光を消してさっと身を隠す。
 こんなことがあるのか……? 何が起こっているんだ……?
 先ほど渡された手紙を思いだし、開いて中を見てみる。

247 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:01:48.33 ID:GIRVrjF4
「悪いが、こちらも仕事でね。
 あんたにはあいつらをなんとかしてもらわないといけねぇ。
 あいつらを全員倒すまであんたはこの洞窟を出られない。
 代わりに依頼を達成してくれたら金は弾ませてもらうよ。
 それじゃあな、先生」

 直後、スコールが入ってきた方、ずっと向こうの方で爆発音が響いてきた。
 ……ハメられたか……。
 手紙に爆弾のスイッチでもつけられていたのだろうか、タイミングが良すぎる気もする。
 入口は塞がれた上に、今の音でこちらへ向かって来るだろう……こんな暗闇の中でアルケオダイノスの軍勢と戦うなど自殺行為以外のなにものでもない。
 GFもここで使えば何が起こるか想像に難くない。大体が自分の首を絞めることになるだろう。
 流石にあの群れを相手にはしたくない、最悪死ぬことになる。
 この展開を予測していなかった為に、回復アイテムも魔法もほとんど持ってきてはいない。
 ……何を考えてこんなところに一人放り出したんだ、あいつらは?
 金の問題ではなく、スコールは苛立ちを覚えていた。
 エスタの大統領に後程直訴しよう。
 自分の準備の悪さを棚におき、何としてでも生きて帰ることを決意する。

 やはりというか、アルケオダイノスが数頭近づいてきた。
 明らかな敵意を前に、戦闘準備をしようとして更にもう一つ重大なことに気付く。
 ライトを持てばガンブレードをしっかりと握れなくなり、ライトを捨てればそもそも戦うこともままならなくなる。
 気配を頼りに戦うこともできなくは無いが、それは少人数での戦いの話だ。
 こんな適当な暴力を前に避ける足場も無い場所でそんなことをすれば、自殺するだけだろう。
 どうせ俺が死んだところで、あいつらは好き勝手言い、己を正当化できる……生きるためにどうするか。
 ……仕方ない………。
 そう考え、突っ込んできたアルケオダイノスをガンブレードで弾き飛ばす。

「ぐ……」
 片手で振るガンブレードの衝撃に顔をしかめるが、そんなことをしてる暇も惜しい。
「イフリート……天井を!」
「……任せろ」
 出現するイフリートに、スコールは天井を破壊させた。
 崩れ落ちる洞窟にアルケオダイノス達は奥へ引っ込んでいく。
 勿論先にも後にも行けなくなったわけだが、アルケオダイノスの群れと戦うよりはいくらもマシだろう。
 落石の除去を行えば助かる可能性もあるかもしれない。
 さて……スコールは来た道を引き返していた。
 やはりというか、完全に道は封鎖されている。こんなところでGFを使っても余計被害が酷くなるだけだ。
 手で掘り進めるとしても、何日かかることか。
「……………………はぁ……」
 ため息を吐いて、スコールは少しずつ穴を掘り始める。

248 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:02:58.77 ID:GIRVrjF4
 数時間掘り進めたところで、GFに作業をさせれば力もあるし楽じゃないか? その考えにようやく至ったスコールはただ今戦力になる召喚獣たちを呼び出し、先を急がせている。
 複数召喚すると一匹の威力が落ちていくが、こういう状況なら問題ない。
 召喚獣たちの不満が聞こえたが、適当に無視する。
 主に、イフリート、ブラザーズ、ディアボロス、パンデモニウム、ケルベロスに任せ、スコールは疲れた体を座らせた。
 この調子でいけば明日には出られそうだ。
 休もう……と目を閉じると、瞼を突き抜けて光が入ってくる。もう掘れたのか?
 目を開けると……何か、鏡?のようなものが空中に出現した。
 こんな暗闇の中、光輝くそれは異様だった。
 召喚獣たちもそれに集中している。
 起きあがりそれに触れてみると……突然スコールの身体が吸い込まれた。
「な……!」
 もがくがなんの対処も出来ないスコールに、出ていた召喚獣が捕まってくれる。
 だが、どうにもならない。
 結局召喚獣たちも巻き込んでスコールは向こう側に消えていった。


1話 召喚された獅子

249 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:03:45.56 ID:GIRVrjF4
「おい、どうなっているんだ!?」
「使い魔が七体も! しかも一人は平民!?」
 騒がしい。起きあがると、周りには……。
 なんだこいつら? いつの時代かの魔法使いのような服装をした人間がスコールを囲んでいた。
 その周りには召喚獣が倒れている。一様に騒ぎに気が付き、起きてきた。
 呆然と俺たちの前に立つ桃色の髪をした女に気が付き、ハゲ頭の男も困惑顔でスコールと女を見てなにかを話していた。
 なんだ、この状況は。先ほどまで洞窟にいたと思えば、いつのまにか草原の上で不思議な格好をした人間たちに囲まれている。
 何が起こればこんなことになるんだ、と考えて先ほどの鏡のような何かを思い出した。
「せ、先生! これはいったい…」
「い、いやぁ…私にも何がなんだか……」
 どうにも分からないこの状況に召喚獣たちもどうしたものかとスコールを見ている。
 仕方がないので全員を体内に戻すと、さらにどよめきが起こった。
「使い魔が消えたぞ!?」
「今のは幻か!?」
 そんなギャラリーを無視して、ガンブレードを手にすると、スコールは跳んでその場を離れ、囲いから脱出する。
 その身のこなしに、その人間たちは驚愕の顔を向けてくる。
「ちょっと! 私の使い魔をどこにやったのよ!?」
 そんな中一人だけ、先ほどの桃色髪の女だけはスコールに近づいてきた。
 見たところ武器のようなものを所持しているように見えない、戦闘能力は皆無だと思い、一瞬で距離を詰めて女の首を掴んだ。
 女はうぐっ、と苦しそうにもがくがスコールの手を離すことはできない。

「ここはどこだ」
 そう、スコールは先ほどまでの状況にひどくイラだっていた。
 それも仕方ないだろう。暗闇の中閉じ込められ、何時間も穴を掘り進めて、身体が疲れきっていた。
 オマケにこんな状況ともなれば、冷静でいられないのも無理はない。
 いや、スコールは幾分冷静ではあったのだが、あの依頼人と関係が無いとも言い切れないのであれば、尋問をして当然だと判断したのだ。
 ハゲ頭の男は慌てて近づいてくる。
「ミス・ヴァリエールを離しなさい!」
「その前に、何故俺をここに連れてきた? 返答次第ではお前ら一人一人を尋問する」
「連れてきた…? 何のことです?」
「とぼけているのか? お前たちはあの男とは関係があるんだろう?」
「ですから、いったいなんの話を…」
 ハゲ頭はスコールの言葉に、本気で何を言っているのか分からないという雰囲気を出してきた。
 演技にしては出来すぎている……そう思い、女を地面に降ろす。
「な、何をするのよ…! げほっ」
「…………なら、何が起きたんだ…? どう俺をここまで移動させた。それに俺はこんな所に見覚えは無い」

250 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:04:24.72 ID:GIRVrjF4
 一人考えるスコールから離れた桃色髪の女は、ハゲ頭と何をか話す。
「…ミス・ヴァリエール、どうやら人間をサモン・サーヴァントで呼び出してしまったようだね」
「そんな! でも先ほどは使い魔を…」
「どういったことかは分からないが、その使い魔に思われたものたちは彼の中に入っていった…つまり、彼の使い魔と見るのが一般的だね。それもあり得る筈の無い話ではあるのだが…」
「ということは……彼はメイジ…?」
「それは分からないが、とにもかくにも彼を呼び出したということは、彼はあなたの使い魔…彼とコントラクト・サーヴァントをしなければいけないのだよ、ミス・ヴァリエール」
「人間を使い魔にするなんて聞いたことがありません! それもメイジなんて!」
「気持ちは分かるが、これは通例の儀式なのだよ。さあ」
 桃色髪はそれ以上何も言えなくなり、キッとスコールを睨んだ。
 スコールに歩みよる桃色髪は、スコールの頬に手を添える。
「なんだ?」
「感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
「……だから、なにを……」
「動かないで!」
 チュッ。と、スコールと桃色髪は口づけを交わす。
 スコールには彼女が何をしようとしているのか理解できたが、何が起こってそうなるのか分からないスコールはただ身を任せるに極めた。
「…ッ!?」
 突如、左手を鋭い痛みが走る。手袋と取ると、そこには……何かが刻まれていた。
「おい、何をした?」
 詰め寄るスコールに、桃色髪は少し怯えたように、だがすぐに持ち直して、こういった。
「あんたは今日から私の使い魔だから。文句なんて許さないわ」
 ……使い魔とは何か、まるで分からないスコールはその桃色髪にどう反応してやれば良いか分からなかった。

 その夜、何も分からないスコールはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと名乗った少女に色々と説明を受けていた。
 今日一日スコールは大人しくしていた。
 危険もないここで、この地に見覚えのないスコールがどう動いても、どうにもならない。
 数人に話しかけてみても良い返事も返ってこないため、ルイズに話を聞けるようになるまで待っていたのだ。
 さて、話を聞いてみても結局の所、意味は分からなかった。
 地名を聞いてもそんな所聞いたことも無い。スコールの知っている地名にしても、彼女の反応は薄い。
 この世界について聞いても、魔法だの貴族だのメイジだのと本の中のような話が続いた。
 更にスコールは使い魔になったらしい、このルイズの。使い魔とは、つまりルイズの従者。
 部下とか下僕とかそんな感じの奴だろう。勝手に何をしてるんだこいつは。
 結局二人の会話は交わらず、お互いに頭の上にハテナを浮かべるだけの結果に終わったのだった。
 だが、スコールは何となくだが分かってきていた。
 というのも、ここはスコールのいた世界では無いということだ。
 本の中のような話とは言ったが、異世界に行ってしまう人間の話を見たことがあるスコールは、すぐにそれに行きついた。

251 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:05:10.10 ID:GIRVrjF4
「……はぁ…埒があかないわね…あなたの作り話に付き合っている暇なんてないの」
「……そうか。それで、俺を元居た場所に帰すことはできないということで良いんだな」
「ええ、そうよ。サモン・サーヴァントは一方通行、戻す魔法なんて聞いたこともないわ」
「…分かった」
 驚くほど素直なスコールだが、どうにもならない状況に騒ぎ立てるのは得策ではないと判断しただけであって、ルイズのいう事に納得した訳ではない。
 こいつが知らないのなら、自分で調べれば良い。ただそれだけのことだ。
「……使い魔は、主人の目となり耳となれる。それは良いが、どうするんだ?」
「どうするも何も、聞いた限りでは使い魔の見たもの聞いたことを私も感じることができる筈…なんだけど、あなたじゃ無理みたい」
「…そうか。主人が望むものを見つけてくるとも言っていたが、俺にはどうしようも無いな」
「そりゃそうよね。何も知らない田舎者みたいだし」
「そして、主人を守る剣となり盾となる…だったか。それくらいならできるが」
「あんた、それしかできないみたいね」
「………かもな」
「はぁ……それだけでもマシか……とにかく、使えないあんたに仕事をくれてやるわ」
「……なんだ?」
「掃除、洗濯、その他雑用よ」
 それだけ聞くと、立ち上がったスコールは部屋から出ていこうとする。
「ちょっと! どこ行くのよ!」
「悪いが、そんなものに付き合うくらいならさっさと帰る方法を探して帰る」
「なんでよ!」
「無理やりここに連れてこられたと思えば使用人扱いか? 他を当たれ、と言っているんだ」
「あんたは私の使い魔なのよ!? 分かってるの!? 私と契約した、私の使い魔よ!」
「ならあんたを殺せば契約解除か?」
 怒気を孕んだスコールの言葉に、たじろぐルイズ。
 スコールの目を見て、本気だと察したのだろう。
 と言っても実際スコールは脅しているだけのつもりだったが、ルイズにそんな違いは分からない。
「わ、分かったわよ! ただ、必要な時は手を貸してもらうわよ…?」
「俺とお前は主従関係ではなく、あくまで契約関係だ。俺はお前に力を貸す、お前を守れと言われれば守るし、そうだな…探し物があると言われればどこにだって赴こう。お前は俺に相応の代金を支払え。それをもって契約とする」
「お、お金なんてあんまり持ってないわ…」
「………………………仕方ないか…衣食住に不自由がなければ、なんでも良い」
「……分かったわ…」
 契約成立とばかりに、スコールは椅子に座りなおす。
 ルイズは内心ホッとしていた。今使い魔に逃げられれば、進学はできなくなる。
 魔法の使えないルイズにとって、スコールを召喚できたのは奇跡に近いことだった。
 それまでに何度も何度も失敗し、ようやくスコールを召喚できたのである、簡単に諦めることはできない。
 だが、スコールの優位に立てなかったことが、貴族としてのプライドに傷をつけた。
 主従関係ではなく、契約関係。上と下は無く、ただただ並列。
 彼はメイジではなく平民ということも分かっており、平民のスコールと貴族のルイズが並列関係であることは、とても気にくわないことだった。

252 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/02(日) 06:06:18.49 ID:GIRVrjF4
 そういえばと、ルイズはとあることを思い出した。
「そういえば、あの召喚獣はなんなの? あなたの使い魔?」
「あんたらの言う使い魔とは違うが、似たようなものだ。契約し、力を貸してくれる。そういう存在だよ」
「なんで複数の使い魔を使えるの?」
「一人につき一体なんて決まりは無い。契約さえできれば召喚獣を何体でも扱える、こっちではそういうものだ」
「その契約、って?」
「何かに宿っていたり封印されていたりするものをこちらに引き出すか、あるいは力で捻じ伏せる。そうすることで召喚獣はこちらを主と認め、仕える」
「え!? じゃああの時の六体全部を倒してきたの!?」
「一体だけ違うが、それ以外はそうだな」
「あんた、強いのね」
「…まぁな」
「あの時の六体で全部なの?」
「いや。全部で19体だ」
「19!?」
 あんな強そうな使い魔を19体も!?
 ルイズの表情には、驚愕と同時に喜びが溢れてきた。
 もしかして自分はとんでもない当たりを引いたのではないか、その思いが強くなったからだ。
 確かに見た目はただの人間ではあるが、使い魔を多く所持し、さらには本人も相当に強い。
 その事実を認識したルイズは、先ほどまでの傷ついたプライドのことなどすっかり忘れてうきうきしてしまう。
 こんな使い魔を呼び出した私ももしかしたらすごいのでは?
 そんなことまで考え始める。
「ねぇ、あなたの使い魔をまた見たいんだけど、何か出してくれない?」
「…分かった。イフリート、来い」
途端、部屋の中央でいきなり炎の火柱が立った。それももの凄い勢いの火柱だった。
ルイズは飛びのいてベッドの上の布団に隠れる。
「なんだ、主よ」
「ルイズ。イフリートだ、さっきも見ただろ」
恐る恐る布団から顔を出すと、既に炎は消え、そこには炎を纏った人間のような獣のような使い魔が立っているだけだった。
確かに、先ほど見た使い魔の一匹だった。
だがそれよりもルイズには気になることがあった。

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 06:10:19.50 ID:GCmXQtig
テスト

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 06:13:39.24 ID:GCmXQtig
うーん、規制されちゃいましたね
仕方ないのでこちらで。

「イフリートって……炎の大精霊の!?」
 そのルイズの言葉を聞き、イフリートは何とも言えない顔をする。
「大精霊と呼ばれたことは無いがな……」
「あなた、凄いじゃない!」
「……そうか」
 別段興味も無さそうにつぶやき、イフリートを戻す。
 まだ興奮が収まらないルイズはスコールに詰め寄り、もっと見たいと目で伝えてくる。
「面倒だ。またそのうちな」
「えー……じゃあせめて、あなたが使える使い魔の名前、教えてちょうだい」
「…仕方ないな」
 これ以上せがまれても面倒、そう思い、説明することにした。
 スコールの出す名前に、ルイズは何度も驚かされた。
 どれもこれもが本や言い伝えでしか聞いたことのない幻獣だったからだ。
 一部、サボテンダーだとかトンベリだとか聞いたことのないものもあったが、それでもバハムートだとかリヴァイアサンだとか、嘘だと思うようなものがスコールの口から聞こえてきたのだった。
「こんな所だ。今日は疲れたから、もう寝るぞ。俺はどこで寝れば良い?」
「あ、ちょっと待ってて」
 スコールの言葉を聞いて、ルイズは外へ出ていく。
 数分して戻ってきたルイズの手には布団があった。重そうにしていたので手伝う。
「最初は藁でも敷いてそこに寝かせようと思ったけど、そんなことしたらあんた怒りそうだし。これで文句ないわよね?」
「あぁ」
 心の中で、藁だったらイフリートに燃やし尽くさせてやるところだった、と考えながら布団を床に敷き、驚くほどの速さでスコールは睡眠をとり始める。
 余程疲れがたまっていたのだろう。
 その寝顔をルイズは見つめていた。
 今まで気にしていなかったが、スコールは一般に美男子と呼ばれるほどに顔が整っている。
 それなりにカッコイイと言われているギーシュにしても、スコールの前には数段以上劣るだろう。
 鼻のところにできている傷も、魅力のように感じて、慌てて目を逸らす。
「(使い魔に何アホなこと考えているのよ!)」
 恥ずかしくなったルイズもさっさと布団に入り、寝ることにしたのだった。

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 06:15:57.68 ID:GCmXQtig
一旦ここまでにします。
規制のことを失念してしまい、申し訳ありません。
至らぬ点もございますが、どうかスコールとルイズのゼロつか空間をお楽しみいただけると幸いです。

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 09:59:29.01 ID:o1vDiE16
乙です

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 14:24:51.79 ID:v0Uw/T9f
乙です。
新作投下が続いて嬉しい限り。続き期待してます。

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 15:04:37.64 ID:GyFmZ8J2
乙でーす
新刊でてまた人増えるといいな

259 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:26:10.09 ID:Uhd0L+hG
こんばんはです。
よろしければ、また23:30頃から続きを投下させてください。

260 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:30:02.37 ID:Uhd0L+hG
 
ディーキンは、宝物である2振りの杖を取り戻し、さらに下手人である『土くれ』のフーケをも密かに捕えたので、学院への帰還を皆に提案した。

最初ルイズらは、フーケを捕えずに帰還することにかなり難色を示し、捜索を続けたがっていた。
ディーキンの負傷も癒えたのだし、このまま戻ればフーケを捕えられる見込みはなくなりそうだし、もっと粘るべきではないかというのだ。
だが、ディーキンは譲らず、丁寧に彼女らを説き伏せていった。
実際のところ同行者のミス・ロングビルこそがフーケであり、それを捕えた以上は、ここで待っていても何の意味もないのだから。

ディーキンはまず、先ほどの強襲以降姿を見せていないフーケは多勢に無勢とみて宝物の奪還を諦め、すでに立ち去った可能性が高いと指摘した。
ここで諦め悪く網を張ってもたもた留まっていれば、立ち去ったフーケが準備を整えて戻ってきて、更なる危険に晒される可能性もある。
しかもフーケは先ほど、“何故か”見張りにもかかわらず奇襲を成功させた。
その手口がわからない以上、ここで戦おうとするのは危険で、もう一度同じように襲われれば、今度こそ犠牲者を出す恐れもある。

「もともと、宝物を取り返すのが一番の仕事だよね?
 今はそれを確実に成功させるべきだと思うの。遅くなったら、先生たちも心配するでしょ?」

さらに続けて、自分もさっきの攻撃で“大分”消耗したので、遭遇しても万全の状態で戦えず危険だと話す。

「私もそう思います。大分精神力を使いましたので……」

どこかぼんやりしたような表情のロングビルも、そう言って同調した。

これは現在の彼女の“主人”であるディーキンからの指示によるものだが、まんざら嘘というわけでもない。
実際昨夜からあちこち駆け回ったり、策略を練ったり、呪文を使ったり、その甲斐もなく敗北して操られたりで、彼女は心身ともにかなり疲弊していた。
また、精神に制御を受けてややぼうっとした様子が、意図せずして消耗しているという本人の話に説得力を持たせていた。

結局、タバサやキュルケがもっともな意見だとして帰還賛成に流れたことで、ルイズやシエスタも渋々了解した。

「わかりました……。けど、盗みや人殺しを平気でするような悪党を捕まえられないなんて、悔しいです……!」

「貴族として、盗賊なんかに背を見せるのは嫌だけど……。仕方ないわ……」

悔しげにしているシエスタや、未練がましそうなルイズの姿を見て、ディーキンはいくらか罪悪感を覚えた。
しかし、事実を話せばフーケは間違いなく牢獄へ送られて死刑だろう。彼女の命を救うためには、申し訳ないがやむを得まい。

ルイズやシエスタに満足してもらうために、偽のフーケをでっち上げて戦いを演出し、退治したことにしたらどうかというのも、考えてはみた。
地の精霊(アース・エレメンタル)あたりを召喚してゴーレムに見せかけ、フーケ役も別に用意して芝居をさせれば、どうにかなりそうには思える。

だが、それはかなり難しそうだし、途中で失敗したらなんでこんな真似をしたのかと皆から不信感を持たれてしまいかねない。
それに、退治してもいないフーケをでっちあげで倒したことにして、褒賞をせしめるというわけにもいくまい。
自分の実力を超えた敵を倒せたと錯覚させるのも、長い目で見ればかえってためにならない。

何よりも、今そんなことをしなくても、ルイズらは近い将来、必ずやもっと大きなことをやり遂げられる人たちだとディーキンは信じている。
だというのに、真の英雄たちをそんな要らぬ気遣い、思い上がった欺瞞で、ほんの一時だけ満足させるなど、本当にやるべきことではないはずだ。

「ありがとう、ディーキンは意見を聞いてもらえたことに感謝するよ」

捜索隊は、結局2振りの宝物の杖だけを取り返し、フーケの捕縛はあきらめて学院への帰途に就いた。
せめてものお詫びにと思ったのか、ディーキンは帰りの馬車のなかでルイズらのリクエストを代わる代わる聞いて、演奏を披露し続けていた……。





しばし穏やかな時を過ごしたのちに、馬車は何事もなく学院に到着した。
一行は早速、学院長室に赴いて、事の次第を報告する。

その前にディーキンは、ロングビルの腕を引いて、こっそりと何事か耳打ちしていた。

261 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:32:12.07 ID:Uhd0L+hG
 
「……うむ、全員無事でよかった。まずそれが、何よりの朗報じゃ。
 それに、よくぞ学院の宝物を、2つとも取り返してきてくれた。教師一同を代表して、君たちの素晴らしい働きに感謝するぞ。
 このような素晴らしい生徒が……、それに校務員や使用人、使い魔がいるということは、当学院の誇りである!」

一通りの報告を聞いた学院長が顔をほころばせて力強く労いの言葉をかけると、皆、誇らしげに胸を張って一礼した。
オスマンは、一人ずつ順に頭を撫でていく。

「……もしフーケを捕縛していれば、王宮へ爵位や勲章の申請をすることもできたのだが。
 しかし、それは所詮、結果論じゃ。賊を捕えられなかったからと言って、君らの名誉ある行動の価値がいささかも減ずるわけではない。
 それに見合うだけの十分な報奨とは言えまいが、学院から後日、君たち全員に薄謝を進呈しよう」

恩賞の沙汰に、少女たちは皆、程度の差こそあれ嬉しそうな顔をする。
ディーキンもまた、満足そうにウンウンと頷いた。他人からの評価の証として与えられる金銭は、殊に嬉しいものだ。

ただ一人、先程から妙に反応の薄いロングビルをしげしげと見つめて、オスマンは首を傾げる。

「ミス・ロングビル、どうかされたのですか?」

同席していたミスタ・コルベールが、心配そうに尋ねた。

「……ええ。申し訳ないのですが、私、大分疲れたものですから。
 できれば退席して、部屋で休みたいのですが……」

「おお……、そうか、それはそうじゃろうな。君は今朝から、ずっと働き通してくれておったのだからのう。
 いや、すまなかった、大変な苦労を掛けたわい。今日の残りは特別休暇にしておくから、どうかゆっくりと休んでくれ」

ミス・ロングビルは、軽く会釈して早々に部屋から出ていった。
オスマンはそれを見送ると、皆の方へ向き直って、ぽんぽんと手を打った。

「さて、君らも疲れたろう。今日は授業や仕事はよいから、湯でも浴びてしばらくゆっくりしなさい。
 だが、今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。こうして無事に宝物も戻ってきたことだし、予定通りに執り行おうぞ。
 今夜の主役は何と言っても君らじゃからな、夜には是非とも参加して、英気を養ってくれ」

「まあ、そうでしたわね! フーケの騒ぎで忘れておりましたわ!」

キュルケはぱっと顔を輝かせると、タバサの背を押しつつ、いそいそと部屋から出ていった。親友をつきあわせて、早速支度に取り掛かる気らしい。
シエスタもまた、深々とお辞儀をすると、部屋から出ていった。
ルイズもディーキンを連れて退出しようとしたが、ディーキンは首を横に振った。

「ディーキンはね、ちょっとおじいさんに宝物を調べた説明をしたりとかの用事があるの。
 悪いけど、ルイズは先に戻って休んでてくれないかな?」

ルイズはやや不満そうだったが、そういえばディーキンは、確かに宝物の使い方だかの調査をしていたのだった。
奪還の功労者とはいえ、一介の生徒である自分が同席して、一緒に話を聞かせろというわけにもいくまい。

「仕方ないわね……、わかったわ、でも舞踏会には出なさいよ!」

「もちろんなの。ありがとう、ルイズ」

言われずとも、バードとしては、せっかくの舞踏会に顔を出さないなどということは有り得ない。
たとえ断られようとも、頼み込んででも参加させてもらうつもりだった。

ルイズが教師らに御辞儀をして部屋を出ていくと、オスマンとコルベールは、ディーキンの方に向き直った。
取り返された『破壊の杖』と『守護の杖』が、学院長の机の上に並べられている。

「ふむ、それで……、君はこの『守護の杖』の使い方を調べた、ということであったが。
 調べてみて、何かわかったのかね?」

「うん。その杖はね、ディーキンのいた世界じゃ、すごーく有名だよ!」

262 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:35:24.55 ID:Uhd0L+hG
 
ディーキンはそれから、『守護の杖』について自分が知っていることを、順々に説明していった。

まず、この杖の本当の名前が、『魔道師の杖(スタッフ・オヴ・ザ・マギ)』であること。
それから、手に握っているだけで弱い呪文の影響を受けない『呪文抵抗力』が得られるのに加えて、複数の呪文の発動ができること。
発動する呪文の種類によっては、杖に蓄えられた『チャージ』を消費すること。
呪文抵抗力をわざと下げることで、所有者に向けられた魔法を吸収して再チャージができること。
ただし、発動にはそれらの呪文を習得できるクラスの者である必要があり、そうではないこの世界のメイジには残念ながら使用できないこと。
チャージが限界値を超えたり、所有者が杖をへし折ったりすると、内部に蓄えられた魔力が全開放されて、次元をも歪める大爆発を引き起こすこと……。

さらに実演として、許可を得ていくつかの、チャージを消費しない下位の呪文を使用してみせた。

特に、《人物拡大(エンラージ・パースン)》を使用してコルベールの身長を2倍にしてやった時などは、2人とも非常に驚いた様子だった。
フェイルーンでは冒険者等が頻繁に利用するごく低レベルの呪文なのだが、ハルケギニアの系統魔法には似たようなものが存在しないらしい。

「いやはや、なんともすさまじい品ですな、これは!」

「うむ……。流石に、あやつが遺していった品だけのことはあるのう……」

興奮するコルベールと、重々しく頷いて、何事か考え込んでいるオスマン。
ディーキンはそんな2人の様子を見比べながら、小屋でこの杖を見た時から疑問に思っていたことを尋ねてみた。

「ええと、オスマンおじいさん? もしよかったら、聞きたいんだけど……。
 この杖を遺していった人っていうのは、誰なのかな?」

「む? ああ……、そうじゃな。
 この機会に話しておくべきじゃろう、君も知っておる者かもしれんからの」

オスマンの言葉に、ディーキンは不思議そうに首を傾げた。

「この間の話し合いで君の口からその名が出た時には、まったく驚いたわい。
 二十年ばかり前を最後に、この杖を置いていったきり姿を現さんわしの友人の名がの。
 この杖の持ち主の名は、エルミンスターじゃ」

「……へっ? エルミンスター?」

ディーキンは思いがけないところでその名を聞いて、目をぱちぱちさせた。

「そうじゃ。君は、彼のことを知っておるのか?
 わしはずっと、あやつが何故姿を現さなくなったのか、気にかかっておってのう……。
 もし何か知っておるのであれば、教えてはくれまいかな」

オスマンはそれから、自分とエルミンスターとのかかわりに関する話をかいつまんで説明し始めた。

要するに、エルミンスターの方がある時急に姿を現して、自分は遠く離れた世界から来たメイジだと言ったらしい。
オスマンはいろいろあって彼と茶飲み友達になり、それから、たまに向こうからやって来ては、また唐突に帰ることが幾度かあった。
彼は別に自分が何の目的で来たとも言わなかったが、何か調べ物をしているらしく、よく図書館を借りたり、どこかに出かけたりしていたという。
宝物庫で件の『破壊の杖』を、興味深そうに調べていたこともあった。

だが、彼はもう二十年ばかり、姿を現していないそうだ。

「……ええと、その。知ってるのかっていわれれば、知ってるの。
 でも、個人的に知り合いかっていう意味なら、そうじゃないよ」

エルミンスターは、大いなる魔法使いとして広くその名を知られた、フェイルーンでも屈指の有名人だ。
何もディーキンのようなバードでなくたって、子どもでも名前を知っていて不思議ではない。
そういう意味で知っているのであって、個人的に面識があるわけではないのだ。

ディーキンはその事を、オスマンに説明した。

263 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:37:10.46 ID:Uhd0L+hG
 
「ただ、エルミンスターだったら心配しなくても、今でも元気にしてるはずだよ?
 彼が死んだっていう話は、全然聞かないからね」

「そうか……。あやつは、君のいたところではそんなに有名なメイジだったのか。
 まあ、元からどこに住んでおるかも知らぬし、たまに向こうから、ひょっこり訪ねてくるだけだったんじゃがの。
 とにかく、今でも元気だというのであれば安心じゃな。
 だが、そうであればなぜ、この杖をここに置いたまま、急にばったりと足が途絶えたのか……」

「……うーん。二十年くらい前から、ここに来なくなったんだね?」

ディーキンはオスマンがほっとしながらも悩んでいるのを見て、自分も何か思いつくことはないかと、知恵を絞って考えてみた。
二十年ほど前、二十年程前といえば……。

(……“災厄の時”……?)

そのあたりの時期のフェイルーン側の大事件といえば、何といってもそれだろう。

フェイルーンのほぼすべての神がその座を追われ、魔法を司る女神であるミストラが一度滅びて、あらゆる魔法の力が混乱していた時期だ。
そういえばエルミンスターは、ミストラ女神とは特殊な結び付きのある人物であり、この一件にも深く関与していたと聞く。

たとえば、こういう筋書きはどうだろうか?

エルミンスターは、ある時何かのきっかけでこの世界に来る方法を知り、たまに訪れては、オスマンと友好を深めたりしていた。
だが、“災厄の時”の魔法の力の混乱と、その後の再編によって、以前には通じた方法が使えなくなり、この世界へ来ることができなくなってしまった……。

(……ウーン、ありえるかも……)

とはいえ、それは考え得る可能性であって、確証はない。

仮にそうだとしても、エルミンスターはそもそも何の目的でこの世界に足を運んだり、『魔道師の杖』を置いていったりしたのだろう。
この世界に来ていたこと自体は単なる観光程度のものだったのかも知れないが、杖を置いていったのは解せない。
彼ほどのメイジにとっても、この杖は作成不可能、容易には手に入らない貴重品のはずだ。

(もしかして、ミストラと何か関係があるとか?)

フェイルーンの魔法の女神ミストラは“災厄の時”に一度滅び、現在では代替わりして、新たな女性がその名と地位を継いでいる。

しかし、先代のミストラは、実は“災厄の時”のような致命的な事態の訪れを以前から予感し、それに備えていたのだ、とも噂されている。
エルミンスターのような英雄も、実はその計画の一環として、ミストラ自らの介入によって生み出されたものだというのだ。
だとすれば、ハルケギニアへエルミンスターを来訪させたのも、先代のミストラの計画によるものだとは考えられないだろうか?

今まで見聞きした限りでは、この世界はフェイルーンのみならず多くの次元界を揺るがした“災厄の時”にも、特に影響は受けなかったようだ。
そしてまた、フェイルーンとは随分と異なる魔法体系の独自に発展した地でもある。
それでいて、フェイルーンの魔法もすべて、同じ性能で問題なく使えるのだ。

魔法が混乱したときの避難場所として、新たな魔法の研究場所として等、魔法を司る神格にとっては、利用する方法はいろいろと考えられるだろう。
この世界の奇妙な性質や独立性自体が、ミストラないしは太古の他の神格の介入によって調整されたものだということも考えられる。
人間にとっては希少極まりない『魔道師の杖』のようなアーティファクトも、神であるミストラにとっては必要に応じて用意するなど容易いはずだ。

しかるにミストラが策謀虚しく滅びて代替わりしたときに、その計画は自然に消滅し、エルミンスターがここに来る理由も無くなったのかも知れない……。

だがまあ、すべては憶測でしかないし、ここでいくら考えていても、確かことがわかるわけでもない。
もし本当にミストラに関わりがあるのだとすれば、なおさらのことだろう。定命の存在に神の計画の全貌など、正確に把握できようはずもないのだから。

一応、後でエンセリックが戻ってきたら話しておこうと決めると、ディーキンは首を振って思案を打ち切った。

「……まあ、エルミンスターのことはよく分からないけど。
 ディーキンも、彼にはちょっと会いたいと思ったことがあるからね。もし今度会うことがあったら、聞いてみるの」

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/02(日) 23:39:52.49 ID:GyFmZ8J2
しえーん

265 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:40:02.12 ID:Uhd0L+hG
 
ディーキンがそう言うと、オスマンは興味深そうに身を乗り出して、ディーキンを見つめた。

「ほう? 君はエルミンスターに会うあてがあるのかね?」

「ンー、まあ、帰るのは問題なさそうだって、この間調べて分かったし。
 エルミンスターは有名な人だから、会おうと思えば会えないことはないと思うの。
 アア……、でもルイズの使い魔をする約束だから、すぐには無理だね」

ディーキンはちょっと首を傾げてそう言うと、ぴっと指を立てて見せた。

「とにかく、その杖はすごーく貴重な物なの。友だちの持ち物なら、なおさらだね。
 おじいさんの恩人の形見だっていうもう片方の杖と一緒に、大事にしてあげたらいいと思うよ」

三十年前にオスマンが『破壊の杖』の元の持ち主によって救われたという話は、今朝その使用法を説明してもらった時に、一緒に聞いている。

「……うむ。まったく、その通りじゃな。
 いや、よくぞ我が友、エルミンスターのことを教えてくれた。長年の胸のつかえが下りた気分じゃ、改めて礼を言うぞ」

顔を綻ばせて頭を下げるオスマンに会釈を返すと、色々と話を聞きたそうなコルベールにまた今度と約束をして、部屋を辞した。
舞踏会の前に、もうひとつ済ませておかなくてはならない用事があるのだ。





ディーキンは真っ直ぐにミス・ロングビルこと『土くれ』のフーケの私室へ向かうと、ドアをコンコンとノックした。

「おねえさん、ディーキンだよ。開けて」

すぐにかちゃりと音を立ててドアが開かれ、フーケが顔を覗かせた。

彼女は未だに外出した時の格好のままで、汚れた服を着替えもしていなかった。
何故ならば部屋に戻るやいなや、すぐにディーキンが事前に指示していた仕事に取り掛かったからだ。
今の彼女にとってはその命令こそが最優先であって、自分の服装などという些事にはまるで気が回らないのであった。

「頼んでおいたのは、書き上がった?」

「ああ……。ここに」

問いかけに対して、フーケは頷くと、文章が書き連ねられた紙の束を差し出した。
口調が何やらいつもと変わっているが、多分これが地なのだろう。
ディーキンは目を通して、内容を確認していく。

「フンフン……、お姉さんは、字が上手だね……」

内容は、フーケの本名や生い立ち、盗賊となるまでの経緯、盗みを働く理由などに関する供述書である。
成る程、上品な字を書くと思ったが、育ちがかなりよいらしい。
今は取り潰されたアルビオンの名家の貴族の生まれで、盗みを働く理由は自身の生活と、貴族社会への恨みと、身内や孤児を養うため。
文末には、『以上、告白します。マチルダ・オブ・サウスゴーダ』というサインが入っていた。

最後まで読むと、ディーキンはその書類を丁寧に束ねて、誰にも読まれないように荷物の奥へ仕舞い込んだ。

「よく分かったの。ありがとう、お姉さん。
 いろいろと事情があるのはわかったよ、無理に書かせて申し訳ないの。
 教えてもらったからには、ディーキンは絶対、あんたに悪いようにはしないって約束するね」

ディーキンは正直なところ、この書面を書くよう指示したときには、かなりの抵抗があるのではないかと思っていた。
最悪術が破れるかもしれないと覚悟して、その場合の行動も考えていたのだが、意外にも彼女はまるで抵抗せずに指示を受け容れた。

266 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/02(日) 23:42:37.59 ID:Uhd0L+hG
 
フーケとしては、既にどうあがいても逃げられる状況と相手ではなく、逆らうだけ自分の立場が悪くなるだけだと理解しているのだ。
それでも精一杯の抵抗として、指示されたとおり自分のことは隠さずに書いたが、できる限り同情を引けそうな文面にして。
自分自身のことではない、匿っている『身内』の詳細、それが元大公家の娘のハーフエルフであることなどには、触れないでおいた。

もっとも、司法機関にあの供述書が渡って自分の家系が取り潰された理由等を詳細に調べられだせば、遠からず露見してしまうだろうが……。

こいつが自分のことを知って、これからどうするつもりなのか。
基本的にはお人好しなガキに見えるが、油断ならない相手でもあるのは身に染みている。
第一人間ではないのだから、どういう判断を下すものかがまったく読めない。

(……結局、こいつが本当に悪いようにはしないでいてくれるのを、期待するしかないか……)

そんなフーケの苦悩をよそに、ディーキンは会釈すると荷物袋の中から、瓶を一本取りだした。
美しい赤色をした、ワインの瓶だった。

「申し訳ないけど、もうしばらく術はかけたままにしておくからね。
 今日はもう服を着替えて、お風呂にでも入って、ゆっくり休んで。
 ……これは、良かったら飲んでみて。美味しいお酒だよ」

今の状態のフーケを舞踏会に参加させて大勢の人目に晒せば、不信感を招く元になるかもしれない。
ハルケギニアにも、ある種の人の精神を操る呪文や薬は存在するのだ。
せっかくの舞踏会に参加できないお詫びも兼ねて、せめてできる限り寛いで休んでほしいという気遣いから、フェイルーンの珍しい酒を進呈したのである。

ちなみにこれは“ガーネット・ワイン”といって、ドワーフが高山で採れる葡萄から造った、一瓶で金貨90枚もする高価な酒だ。
辛口だが飲みやすく、風味を利かせるために、本物のガーネットの粉末が混ぜ込まれているという。
たぶん、『土』のメイジには相性もいいのではないだろうか。

「ああ、そうするよ……」

「アー……、そうして。
 じゃあね。もしかしたら、後で舞踏会の料理とかお酒とか、持ってこれるかも……」

命令に忠実に、早速服を脱ぎだしたフーケに失礼にならないよう、ディーキンは慌ててそう言って。
ワインの瓶を置くと、回れ右して部屋を出ていった……。

267 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/08/02(日) 23:45:03.98 ID:Uhd0L+hG
エンラージ・パースン
Enlarge Person /人物拡大
系統:変成術; 1レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(鉄粉ひとつまみ)
距離:近距離(25フィート+2術者レベル毎に5フィート)
持続時間:術者レベル毎に1分
 対象の人型生物1体を直ちに拡大し、身長を2倍、体重を8倍にする。
それによってクリーチャーのサイズ分類は1段階大きなものとなり、間合いや接敵面もそれに伴って大きくなる。
また、目標は筋力に+2のボーナス、敏捷力に-2、攻撃ロールとアーマー・クラスに-1のペナルティを受ける。
クリーチャーが着用または運搬しているすべての装備もこの呪文によって一緒に拡大され、それに伴って武器のダメージなども増加する。
この呪文の効果はパーマネンシイ呪文によって永続化することができる。
 近接戦闘を行うファイターなどを強化するために低レベルからよく使用される、非常にポピュラーな定番呪文のひとつである。
なお、この呪文はウィザードやソーサラーの呪文であり、バードの呪文ではない。

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今回は以上になります。
また、できるだけ早く続きを書いていきたいと思いますので、次の機会にも、どうかよろしくお願いいたします(御辞儀)

268 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/03(月) 00:26:39.52 ID:a2ur87cf
>>264
遅くなりましたが、ご支援いただき、ありがとうございました(深々)

269 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:01:20.33 ID:+KZnGiFJ
ディーキンさん投下お疲れ様です。
よろしければ1時5分より投下させてください。

270 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:05:31.79 ID:+KZnGiFJ
「アルビオン行きの船は明後日にならないと出ないらしい」
桟橋に交渉に向かっていたワルドが、戻るなり椅子に腰掛けた一同に向かってそう告げた。
大理石でできたテーブルにぐったり張り付きながら、ギーシュはほっとため息をついている。
キュルケは退屈そうに頬杖をつきながら。タバサはやはり変わらず本を読みながら。
そして官兵衛は、鉄球に腰掛け肩を回しながら、その話に耳を傾けていた。
ワルドの話によれば、明日はスヴェルの月という、二つの月が重なる夜なのだそうだ。
その翌日の朝、アルビオンがここラ・ロシェールにもっとも近くなるらしい。
「急ぎの任務なのに……」
ルイズは不満そうに口を尖らせた。
彼らは今、ここラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』亭に宿泊していた。
宿を選んだのはワルドである。官兵衛は、あまり目立つような場所に寝泊りするのは危険だ、と反対したのだ。
しかし、あまり粗末な宿では強盗やスリなど、かえって遭遇する危険も増す、という事から、一向はワルドの提案を受け入れた。
いまいち納得がいかない官兵衛であったが、ここで揉めても仕方が無い。彼は渋々承諾した。
ワルドが今日はもう休もう、と鍵束を机の上に置く。
「キュルケとタバサは相部屋だ、そしてギーシュとカンベエが相部屋、僕とルイズは同室だ」
ワルドの言葉に、それぞれが自分の部屋の鍵を取った。ルイズが慌てて、ワルドに言う。
「ダメよワルド!私達まだ結婚してないじゃない!」
しかしワルドは首を振って、ルイズを見つめる。
「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」
ルイズはそう言われて、困ったように官兵衛を見た。
しかし官兵衛は、欠伸をするのみでこちらを見向きもしない。挙句、さっさと寝よう、疲れた、などとのたまうばかり。
そんな官兵衛の態度にルイズはカチンと来てしまった。
なによ、いつも一緒にいるんだから何とか言いなさいよ、と腹が立った。
ワルドがルイズを促す。彼女は仕方なしに、部屋へと向かった。

暗の使い魔 第十六話 『青銅新鋭戦』

ギーシュは部屋に入るなり、一直線にベッドへと向かい倒れこんだ。
なにせほぼ一日中馬を駆けさせていたのだ。疲労感でぐったりであった。
官兵衛も同様に、部屋の向かい側に備え付けられたベッドに向かい、腰掛ける。
しかし彼はすぐ眠ろうとはしなかった。眼前で手を組み、じっと黙考する。
そんな官兵衛の様子に気付き、ギーシュが身を起こした。
「眠らないのかい?」
「ん?まあそうだな、ちょいと気になることがあってな。考え事だ」
ギーシュはそうか、と短く呟くと、次にため息をつきながら言った。
「君は元気だね。あんなに長時間馬に揺られ、鉄球引き摺っても、顔色一つ変えないなんて……」
「まあな。元気と野望だけが小生の取り得でね!」
「野望?」
ギーシュが怪訝な顔をするのを見て官兵衛は、うっと言葉を詰まらせた。そして静かになんでもない、と呟く。
しばらく怪しんでいたギーシュだが、まあいいかと言うと再びベッドに身を横たえた。
しばらくの間、静かな時間が流れる。
部屋の窓から、重なりかけた二つの月がひっそりと覗いていた。
月明かりに照らされながら、官兵衛はふかふかのベッドに横になる。
官兵衛は横たえたままの視線で、目前をぼんやりと見つめながら、任務の事について思考をめぐらせていた。
まずアルビオンに着いたらどの様に立ち回るのか。
自分ひとりなら、反乱軍の陣をかわし、王軍と接触するのは造作も無い。しかしルイズやギーシュが居るともなれば話は別だ。
誰かを守りながら、何かを成す事ほど難しい事はない。
それに、先程の襲撃のようにいつ、どのように貴族派による襲撃があるかも分からないのだ。
「(こりゃあ予想以上に骨が折れそうだ)」
官兵衛は身を起こし立ち上がると、ふぅっと息を吐いた。

271 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:07:48.50 ID:+KZnGiFJ
と、その時であった。寝ていた筈のギーシュから声が掛けられた。
「何をそんなに気にしているんだい?」
見るとギーシュも身を起こし、こちらを見ている。
「大した事じゃない。それよりお前さん眠れないのか?」
「そうだね、姫様から賜った重要な任務だからね。いまだに、緊張が解けなくて。疲れてるはずなのになぁ」
それくらい緊張してもらわねば困る。この宿だっていつ襲撃されるか分からないのだから。
官兵衛は震えるギーシュを見てそう思った。と、その時である。
「なあ、ひとつ聞いてもいいかね?」
「何だ?」
打って変わって真剣な様子で問うギーシュに、官兵衛が答えた。
「君は、一体何者なんだい」
またその質問か、と官兵衛はうんざりしながら肩をすくめた。やれやれと顔を向けずに答える。
「おんなじ事、ルイズにも聞かれたぞ。どうしてそんな事を聞く?」
「君が、ただの平民とは思えないからさ。僕やド・ロレーヌを負かし、フーケを捕まえ……そしてさっきの尋問」
官兵衛は答えず、ただじっと押し黙る。
「や、勿論平民にも優れた人間はいるさ。でも君は彼らと比べても普通じゃない。どこか根幹が違うような気がしてね」
しばらくの沈黙が場を支配する。ギーシュは顔を伏せた。変な事を聞いてしまったか、と気まずくなってしまったのだ。
やがて彼が、忘れてくれ、と声を上げようとした時。
「小生は、ここから遠く離れた場所から来た」
「え?」
官兵衛はゆっくりと口を開いた。どこか遠くを見るように、淡々と語る官兵衛。
ギーシュはそんな彼の言葉に顔を上げ、耳を傾けた。
「お前さんらの想像もつかない程遠くからな。そこにはお前さんらのようなメイジはいない。」
「何だって?メイジが居ない?」
ギーシュは驚愕に目を見開いた。そんな馬鹿な、とでも言いたげな表情で、口をあんぐりと開いたままになる。
メイジが居ない、即ち魔法が存在しない。自分達にとっての文明の象徴が存在しないという事だ。
船を動かす動力。物を加工する能力。治癒する能力。
その他ありとあらゆる生活に欠かせない事象が存在しないということになる。彼にとって非常に信じ難い内容である。
「馬鹿げてるよ。そんな事ありうるはずが無い。ぼくをからかっているのかい?」
「言っただろう?お前さんらの想像もつかない場所だと」
ギーシュはそれを聞くと、押し黙ってしまった。官兵衛は尚のこと続ける。
「まあ早い話、お前さんが小生に違和感を感じるのは、小生がそんな遠くから来た人間だからだろうな。
信じる信じないはお前さんの勝手だ。と、こんな所でいいか?そろそろ眠くなってきたんでな」
ギーシュは答えずに、何かを考え込んでいる様子で、じっと壁の一点を睨んでいる。
そんなギーシュの態度を肯定ととったのか、官兵衛はゆっくりとベッドに横になろうとした。しかし。
「頼みがある」
そんな官兵衛の行動は、ギーシュの一言で遮られた。
「もう一度、僕と戦ってくれ」
「何だって?」
そこには立ち上がり、真剣な眼差しで官兵衛を見つめるギーシュがいた。

『女神の杵』亭の中庭は、かつて練兵場として使用されていた。
ラ・ロシェールの町は、アルビオンの玄関口であるとともに、その大陸に最も近い戦の拠点でもあったのだ。
かつて、幾人もの兵士やメイジがここで得物を振るい、心身を鍛え上げ、時には決闘で刃を交えた。
そんな歴史を感じさせるような広場を、ゆっくりと歩む人影が二つ。
清々しい朝日の中、照らされたその二人はぐるりと辺りを見回す。
そして、周囲に人の気配が無い事を確認すると、静かに口を開いた。
「本気か?」
野太い声が傍らの影に問いかける。
「ああ、本気だとも」
それに対して、なにやら自信満々に答えるもう一人。
二人の影は、官兵衛とギーシュであった。
ギーシュは練兵場の入り口を背にして、約10メイル程の距離を置いて官兵衛と向き合う。
その手に薔薇の造花を固く握り締め、じっと官兵衛を見据えていた。
官兵衛は両手を頭上に掲げ、思いっきり伸びをすると、改めてギーシュに向き直った。

272 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:09:29.63 ID:+KZnGiFJ
「そいじゃあ、さっさと済ませるとするか。言っておくが――」
「ああ。互いに手加減は無用だ!いざ勝負!」
官兵衛の言葉に続き、ギーシュが威勢よく言い放つ。薔薇の杖を真っ直ぐに持ち直し、ギーシュは構えた。
そして、ギシリと木枷ごと鉄球を手繰り寄せる官兵衛。二人は、先程までの暢気そうな様子とは一変していた。
片や、相手を射殺さんばかりの眼差しを向けるメイジの少年。片や、ただただのんきな表情を浮かべる戦国の武将。
二人の戦いが今まさに始まろうとしていた。

ギーシュは、ここにきて、ある日の出来事を脳裏に浮かべていた。
それは、官兵衛と戦い敗れ去った夜の記憶ではない。それは、ド・ロレーヌと官兵衛の決闘。
あの時、現実を突きつけられた惨めな自分の記憶だった。
自分は家名に泥を塗った。家族の名誉を傷つけた。そうド・ロレーヌに言われ、悔しさに身を震わせたあの時。
周囲の友人は次々と口にしたのだ。気にする事はない、あのド・ロレーヌが敗れ去った相手なのだから、と。
その言葉に、ギーシュはあろうことか、安堵を感じてしまったのである。
許せなかった。そんな言葉に、心から気を許してしまった自分が。言い訳に縋り付こうとした己が。
そしてその日から、ギーシュは人知れず特訓を重ねてきたのだった。いつか再び、官兵衛と戦うその時の為に。

「出でよ!ワルキュ−レッ!」
ギーシュが杖を勢い良く振るった。空中に舞った花びらが、瞬く間に青銅の塊を形成する。
巨大な戦乙女が四体、ずしりと練兵場の土を踏みしめた。
「出やがったな、この前の人形」
「言っておくけど、ついこの前の僕と同じとは思わない事だね。
あれから、錬金の精度も、ゴーレムの操作もことごとく見直した。油断していると……」
ギーシュの合図でワルキューレの瞳が怪しく輝き。
「怪我じゃすまないよっ!」
巨体が、力強く大地を蹴り躍動した。

その頃、官兵衛とギーシュが宿泊する部屋の前に、一人の影があった。
腰に装飾のほどこされた杖を引っさげ、つば広の帽子を片手に扉をノックする男が一人。
「留守か……」
ワルドは、ノックの返事が何時までも返ってこないためそう呟いた。
早朝の時間帯であるため、まだ眠っている事もありうる。しかしそこは一流の風の使い手。
室内の空気を感じ取れば、そこに気配があるかどうかは一目瞭然である。
「やれやれ、こんな時間に二人ともどこで何をしているのかな?」
早朝から留守とは当てが外れた、とワルドはため息をついた。
「ここであの使い魔君の実力を見ておきたかったんだけどなぁ」
残念そうに肩をすくめるワルドであった。と、その時。
「ん?」
屋外から響いてくる喧騒に、ワルドは気がついた。度々響く金属音、騒がしい声。
ワルドがいる廊下からは窺い見る事は適わなかったが、その騒ぎはどうやら中庭の練兵場から聞こえてくるようだった。
「これは……」
ワルドは音の元を辿るように、足早にその場から歩き出した。
そして、中庭がゆうに一望できる場所を探し当てると、そこから様子を眺めやる。
その目は、いつものにこやかな表情からは一変、冷たく無表情なものへと早変わりしていた。

「うおおっ!?」
官兵衛は、戸惑いの声を上げながら、後方へと飛び退った。
がきんと、ハンマーのような拳が、官兵衛の手枷の防御を弾き飛ばしたからだ。
そして官兵衛の居た地面に何本もの青銅の弓矢がめり込む。
地面をごろごろと転がりながら、官兵衛は以前とは全く違うギーシュのゴーレムと奮戦していた。
ギーシュの練成したワルキューレは、以前よりも一回りほど大きく、パワーが段違いであった。
例えるのなら、戦国の世にいた力自慢の兵。通称、剛力兵の腕力に匹敵するパワーを得ていた。
だが官兵衛が手こずっているのはそれだけではない。今官兵衛がやり合っているのは、前方で構える二体のワルキューレのみ。
残り二体のワルキューレはというと。
「ちっ!また来るか」
ぎりりと弓に装填される音が聞こえる。ジャキリと、青銅で出来た凶悪な矢尻が官兵衛に狙いを定める。
後方に控えた二体のワルキューレの目が閃き、瞬間。
ズドドン!と官兵衛目掛けて矢が発射された。

273 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:10:38.24 ID:+KZnGiFJ
「っ!」
官兵衛は上体を仰け反らせ、矢をすれすれで避ける。彼の体の真上を、金属の矢が通り過ぎていった。
後方の二体のワルキューレがその手に持つ得物。それは非常に簡素な造りの、青銅製の弩であった。
「っ!よりにもよって飛び道具か!小生の一番苦手な!」
官兵衛は、迫り来る二体と、その後方でこちらを狙う二体のゴーレム、それぞれを交互に見ながら舌打ちした。
次にギーシュを見やる。その顔には、油断や余裕の表情は見て取れず、じっと戦況を見据えている。
「おいおい!こっちは手枷付きだぞ!手加減してくれぇ!」
そう叫びながら、地面を転がる官兵衛。
「言ったはずだよ!手加減無用!問答無用!」
ギーシュの掛け声とともに再びゴーレムが掴みかかってきた。
練兵場は非常に広く、官兵衛達が動き回るのに不自由しない。しかしその広さゆえに、官兵衛は追い詰められていたのだ。
官兵衛からギーシュまで20メイル程。そして射手ゴーレムはその間の10メイルの距離に。
剛腕ゴーレムは官兵衛に張り付くように陣取っていた。
動きの鈍い官兵衛を剛腕ゴーレムが押さえ、後方から射手ゴーレムが狙い打つ。
本体であるメイジを攻撃しようにも、官兵衛の鎖の間合いから外れたギーシュには届かない。
官兵衛の戦い方を見て、確実に弱点をついた戦いであった。
ゴーレムを最大数の七体出さないのは、不足の事態に備えての、精神力の温存だろう。
成程、確かに以前とは別物の戦いっぷりだ。
「(小生が打ちのめしたのが相当堪えたみたいだな。)」
官兵衛はギーシュの顔を見やる。その顔は、眉はつり上がり、目は見開かれ、口はへの字に曲がっている。
名誉挽回に躍起になってるのか、はたまた復讐に燃えているのか、いずれにせよ官兵衛は。
「(わっかりやすいな……)」
と、そう思った。
「(戦いは熱くなったら仕舞いだってのに……)」
官兵衛は、やれやれと内心で手をすくませた。そして、目の前のゴーレム達を見やった。
ぼちぼち終わらせよう、と。
官兵衛は地を蹴り、剛腕ゴーレムから3メイル程の距離をとった。
そして、頭上に手枷を掲げだす。
ギーシュはムムムっ、と注意深く官兵衛を見つめる。一体何をしでかすつもりか、と。
じゃらりと鎖を掴んで枷を掲げたポーズ。それは、彼も見たことのある攻撃の予備動作。鉄球の打ち下ろしの構えである。
「(成程!鉄球を地面に打ち下ろした衝撃でワルキューレを破壊し、一気に距離をつめてケリをつける。)」
そんな腹積もりだね、とギーシュは得意げに考えを巡らした。しかし、そううまく行くかな、とギーシュはほくそ笑む。
「さて、行くかね!」
官兵衛が合図するかのように、息を吸い込んだ。そして彼は、渾身の力を込めて鉄球を地面に打ち下ろした。
ずどん、と轟音が辺りに響き、土埃が舞い上がる。
鉄球が打ち下ろされた衝撃で、その場に小型の竜巻が巻き起こる。
練兵場の隅に積まれた材木が、音を立てて崩れ落ちた。
見るものが見れば、目を疑うような光景である。しかし、その異様な光景にギーシュは動じない。
彼はじっと、竜巻が巻き起こす土煙の向こう側を見続けた。
そして官兵衛も、ゼイゼイと肩で息をしながら、同じように土煙を見やった。
しばしの時間をおいて、土煙が晴れる。そこにあったのは。
「ば、馬鹿なッ!!」
官兵衛がその光景を見て声を上げた。
そこにいたのは、傷一つ無い剛腕ゴーレム。
直撃しなかったにしろ、鉄球が起こした地を伝わる衝撃をものともしないで屹立する、青銅の戦乙女がそこにいた。
「フフフ!見たかい!僕の新たなるゴーレムの力を!」
ギーシュが左手を頭上に掲げ、右手を後方に伸ばした珍妙なポーズを決める。
口元に薔薇の造花をくわえ、その顔は自信に満ち溢れている。
「ちっくしょう!」
官兵衛は二体の無傷なゴーレムを見て、思わずあとずさった。
鉄球を打ち下ろした場所には、深さ1メイルにも及ぶ深い穴が出来ている。

274 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:12:37.06 ID:+KZnGiFJ
そんな衝撃にもかかわらず、ひび割れ一つ無いのだ。
もはや成すすべはない、とばかりに官兵衛は迫り来る二体のゴーレムを眺めやった。
「くそう!来るな!あっちいけ!」
上ずった声で、精一杯声を張る官兵衛。
じりじりと後退する官兵衛をよそに、彼を取り押さえようと剛腕ゴーレムが近づいて来た。
そしてゴーレムの手が官兵衛に触れようとした、その時だった。
「よっと」
「なぬぅ?」
ギーシュは目を疑った。官兵衛が二体のゴーレムに足払いをかけたのだ。
ガシャンとその場に倒れて、折り重なるゴーレム二体。
それだけではない、官兵衛は二体の転倒したゴーレムを足で蹴飛ばす。そして、先程の衝撃で開いた穴にひょいと蹴り込んだのだ。
「なっ!?」
今度はギーシュが、素っ頓狂な声を上げることとなった。手足が絡み、ジタバタと穴の中でもがきあうゴーレム。
そんな間抜けな光景が、彼の眼前に広がっていた。
「さてと……」
官兵衛がふう、と息を吐きながら、真っ直ぐにギーシュを見た。その様にギーシュはハッとした。
見れば、一直線に射手ゴーレムに向けて駆ける官兵衛。突然の不利にギーシュは混乱した。
ゴーレムを操らねばと、杖を必死に振るいゴーレムを遠隔操作する。
射手ゴーレムに、次弾を装填し、弦を引き、引き金に指をかけさせる。
しかしそんな流れるような動作の間でも、官兵衛は早足で距離を詰めた。
距離にして3メイル。弩から一斉に矢が発射される。
しかし官兵衛は、走る勢いをそのままに膝を折り、前転して矢を掠める。
そして、そのまま鉄球にしがみつくと、官兵衛は鉄球と一体となって回転した。
地面の土を撒き散らし、猛牛の如き勢いで急発進する官兵衛。その勢いに、射手ゴーレムが耐えられる筈もない。
彼らは、矢を撃ち尽くした無防備な状態で、無残にも疾走する官兵衛に弾き飛ばされてしまったのだ。
「うわ!うわわわ!」
ギーシュは自分のゴーレム全てが行動不能になったのを見て、慌てて造花の杖を振るった。
花びらが舞い落ち、新たなゴーレムが生成される。しかし間に合わない。
茶色に染まった球体が、ギーシュのすぐ横を掠めて行った。それと同時に、宙を舞う物が一つ。
赤い薔薇の花びらとともに、舞い散るそれ。ギーシュの造花の杖だ。
持ち主の手から弾き飛ばされたギーシュの杖は、緩やかなカーブを描いて飛ぶと、すとんと地面に落ちた。
そしてそれを、球体状態を解除した官兵衛がひょいと拾い上げる。
「あ、あれ?」
くいくいと、空を掴むギーシュ。
そして彼は、杖を持って立つ官兵衛を見て、自分の手の中に薔薇がない事にようやく気がついた。
「ちょっと待って、僕……」
それ以上何かを言おうとしたギーシュに、官兵衛から杖が投げられる。
パシリと両手で杖を受け取ったギーシュ。それを確認すると、官兵衛は少しも疲れた様子を見せずに、こう言った。
「メシにしよう」
官兵衛のあっけらかんとした口調に、ぽかん、と口が開くギーシュ。
あまりのあっけない敗北に、開いた口は塞がらない。
そして彼はすとん、と地面に両膝をついて、静かに呟き始めた。
「う、うそだ……。僕の新鋭ワルキューレ……」
顔を俯かせ、目を虚ろにしながら、ギーシュはブツブツと独り言を呟いた。
その言葉の端々には、嘘だだの、負ける筈無いだの、目の前の敗北を受け入れられない様が見えていた。
「おい、お前さん」
官兵衛がゲンナリしながらギーシュに歩み寄る。
官兵衛からしてみれば、こんな『模擬戦』さっさと終わらせて朝食にありつきたかったのだ。
しゃがみ込んでギーシュの肩を叩く。
「おい。気分はわからんでもな……くもないが、早く立ち上がれ。」
しかし全く反応が無い。仕方無しにと官兵衛は、ギーシュの顔を覗き込もうとした。

275 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:13:53.93 ID:+KZnGiFJ
しかし次の瞬間、ギーシュはがばっと顔を上げた。そして立ち上がり、ずんずんと官兵衛に詰め寄ったのだ。
「頼む、もう一戦!もう一戦、たたかってくれ!」
「おいおいおい!」
あまりの要求に官兵衛は、勘弁してくれとばかりにかぶりを振った。
「冗談じゃない!腹だって減ったし!小生も何回もこんな『稽古』に付き合う程暇じゃないんだぞ!?」
「稽古じゃない!『決闘』だ!」
官兵衛の言葉に、ギーシュは歯をむき出しにして獣のように叫んだ。その様に、官兵衛は冷静に答える。
「じゃあ尚更ダメだろう。決闘ってもんはそうポンポンやるもんじゃない。それに介添人だって必要だろう?」
その言葉にギーシュはうっ、と言葉に詰まった。
「そ、それはそうだけれども……」
「じゃあ終わりだ!さっさと皆を起こして賑やかに朝食だ!」
ウキウキと、官兵衛は足取り軽く建物へ入ろうとした。しかし、そんな彼の行動はギーシュの一言に遮られる。
「ぼ、僕は!強くなければ、ならないんだ!」
女神の杵亭全てに響き渡るほどの声量が、その場を支配した。
「おう?」
官兵衛が首だけで振り返る。
「僕は、名門グラモン家の男!例え兄さんや父上に遠く及ばずとも!強くなければならないのだよ!」
ギーシュの只ならぬ様子に、官兵衛はゆっくりと体を向ける。
「この旅で強くなって、名誉を挽回する!泥を塗った家名を払拭するんだ!君に負けない男になって!
そうしなければ、この旅に同行した意味が無いんだ!」
固く薔薇の造花を握り締め、ギーシュは声を震わせた。泣いているのか、再び俯いたその様子からは表情はわからない。
しかし彼の全身はわなわな震え、感情がむき出しになっている事は確かだった。
「……はぁ」
官兵衛は頭を掻きながら、震える少年の言葉に耳を傾けた。
「お願いだ!もう一度だけ、僕と!」
それはギーシュの渾身の願いだった。彼の意地をかけた、ただ一つの。
しかし官兵衛は。
「無駄だよ」
ただひたすらに冷たく、一言でギーシュの願いを跳ね除けた。
その答えに唖然とするギーシュをよそに、官兵衛は続ける。
「お前さんじゃあ、何度やっても小生には勝てん」
しばしの間、官兵衛の言葉を反芻するギーシュ。やがて、その意味を理解すると彼は官兵衛に対して猛烈に抗議した。
「な、な、な、何を言うかね!そんな筈はない!」
あまりの言い様に、声を震わせるギーシュ。
怒りの中に、焦りの感情をまじえさせながら、彼はまくしたてるように言葉を放った。
「あれから!あの時から!僕は特訓してきたんだ!錬金の精度も見直した!ゴーレムの操術も!武器の練成も!
負けるはずが無かった!無かったんだよ!」
滝の様に流れ出る言葉。しかし官兵衛は言う。
「それだ」
へ?と突如、ギーシュは言葉を途切れさせた。
「お前さん、負けるはずが無いと、本気で思いこんでいただろう?」
「当たり前じゃないか!」
何を当然の事を、とばかりに口調を荒げるギーシュ。
「そいつが命取りなんだよ」
いつもとは異なる、低く真面目な口調で、官兵衛はきわめて冷静に喋りだした。
「戦じゃあ絶対なんてもんは存在しない。あるのは結果だけだ。
自分は大丈夫、自分は負けない。そう思い込んで突出したやつが真っ先に命を落とす。戦いってのはそんなもんだ」
官兵衛は続ける。
「まあ落ち込ませてばっかでもアレなんで言うが、お前さんのゴーレムは正しく扱えば、並みの一団相手でも相手取れるだろうさ。でもな……」
やや語調を強める官兵衛。そんな彼に、ギーシュは何も言えなくなってしまう。
「指揮がなってなきゃあ、どんな兵もあっという間に烏合の衆と化す。まあ、覚えといて損はない」
「くっ……!」
悔しげに俯くギーシュ。
ギーシュは、ただただ拳を固く握り締め、官兵衛の言葉に聞き入っていた。
無力感、後悔、やるせなさ、そして悔しさ。それらが彼の心を苛んだ。

276 :暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY :2015/08/03(月) 01:16:19.19 ID:+KZnGiFJ
ギーシュのグラモン家は軍人の家系だ。
ギーシュ自身も、優秀な兄達や偉大な父に恵まれて育ち、決して戦に無関係ではない。
そんな彼にとって、官兵衛の言う事は痛いほど良くわかった。
戦場で突出することの恐ろしさ。指揮官の能力。それらの事を理解しているつもりだった。
しかしいざ蓋を開けてみればどうであろう。勝利を疑わず、それが崩れた途端慌てふためき、敗北した自分。
まるでなっていなかったのだ、とギーシュは痛感した。
ギーシュは顔をあげて見やる。
伸びた前髪で表情はよくわからないが、官兵衛はじっとこちらを見据えている。
一体何を考えているのか、うかがい知る事は出来ない。
そんな官兵衛は、くるりと踵を返した。
待て、と声をかけようとする。しかし、何故か言葉が出てこない。
そうこうしている内に、官兵衛は建物の中へと消えようとする。
待ってくれ、まだ話し足りない。まだ話すことも、聞きたいことも沢山ある。
ギーシュはそう思って口を開こうとした。しかし先程の官兵衛の言葉を反芻するたびに、彼の喉から言の葉が消えるのだ。
とその時、官兵衛がついと、入り口の前で立ち止まった。
「まあ、なんだ」
官兵衛が背を向けたまま、独り言のように言葉を紡ぐ。
「最後のあの時、お前さんはゴーレムに頼らず、他の方法を探していれば。勝機があったんじゃないか?」
その意外な言葉に、ギーシュは瞬きしながら、官兵衛の背中を見つめる。
「お前さん、ゴーレムが突破されたとき、次を出す事しか考えていなかっただろう?小生が目前に迫ったにもかかわらず。」
確かにその通りだ。後続を出す事に夢中になり、結果転がってきた官兵衛に杖を掠め取られた。
「あそこでお前さんは、ゴーレムじゃなくて、手早く小生を退けられる手段をとるべきだった。そうすりゃあ攻勢にも転じられた」
その言葉に、ギーシュはハッとした。その瞬間、彼に浮かんだのはいくつかの対応策。
それらが全て最善とは言わないが、少なくとも時間がかかるゴーレムよりは有効な打開策であろう。
そんなギーシュの様子を見て、官兵衛が言う。
「今のお前さんなら思い浮かぶんじゃないか?」
ハッとして前を見やるギーシュ。気がつくと官兵衛がこちらを見ていた。
相変わらず前髪で目元が窺えない。しかし心なしかその唇は、僅かだが笑っているように見えた。
「今のお前さんの頭ン中を忘れるなよ?どこでもそいつが出せりゃあ、まあ勝てなくとも死ぬ事はないだろうさ」
官兵衛は再び背を向けると、腹が減ったとのたまいながら、今度こそ食堂へと消えていった。
「僕の、今の……」
ギーシュはうわ言のように呟いた。胸の内が激しくざわめく。
官兵衛が消える際に見せた背中を思い出しながら、ギーシュはしばらく間その場に佇んでいた。

女神の杵亭の三階から練兵場の一部始終を見ていた彼は、納得したように頷いていた。
先程まで浮かべていた冷たい表情とは一変、ワルドは再びにこやかな表情を浮かべていた。
「成程ね。確かに彼はただの使い魔じゃないみたいだね」
腕を組み、空いた手であごひげを弄りながらそう言う。
「だが、これじゃあ話にならない。とても彼じゃあ彼女を守れない」
ワルドは、再び目つきを鋭くしながら呟いた。
「なあ?ガンダールヴ君……」


今回はここまでになります。次回はまた二週間後あたりに投下したいと思います。
それでは、また。

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/03(月) 01:16:45.84 ID:TeF2M+ZQ
二人とも乙です

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/04(火) 16:52:24.81 ID:wxJnRzS4
遅まきながらウルゼロの人乙
>デマーガにはこれといった特殊能力はないが
全身が溶けた鉄でできてて火炎弾を吐けるのは立派に特殊能力持ちじゃないですかな
それとこの世界ってヅォーカァ将軍が実在してるんだ

279 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/04(火) 21:13:35.25 ID:4m1P/Gu2
お二方、乙です。
こちら、20分くらいに投下開始します。

280 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/04(火) 21:20:51.60 ID:4m1P/Gu2
 朝、目が覚める。一瞬己の現状に眉間にシワを寄せるが、すぐにルイズのことを思い出した。
 起き上がると布団を畳み、音をたてないように外に出る。
 学園の壁を飛び越えて外に出てきたにスコールは、ガンブレードをしっかりと握ると、いつもの自主訓練を始めた。
 毎朝1、2時間程度(最近は学園のこともあり、やれない日ややれても数十分だけだったが)ガンブレードを用いた訓練をしている。
 仮想敵をイメージし、それを相手にどう効率よく戦うか……イメージトレーニング。
 まずはガルバディア兵を四人イメージする。
 二人が同時に剣を降り下ろす、それをガンブレードで防ぎ、一人を蹴り飛ばす。
 後方から銃を乱射してくるのでもう一人をガンブレードで弾き飛ばしたあとに跳んでかわす。
 銃を持った一人の目の前まで跳んだスコールの目の前に援護待機していた兵が剣を構えていたので、ガンブレードのトリガーを引いたフリをして、剣もろとも叩き斬る。
 驚いた銃兵もそのままガンブレードで斬り飛ばし、後ろから迫っていた兵の顔を掴み、少し後ろにいた兵に投げ飛ばす。
 そのまま追いかけて斬り飛ばし、沈黙する。
 息をあらげることもないスコールの脳内に直接声が聞こえてきた。
「フッ……主よ、空虚と戦っていても落ち着けぬであろう? たまにはワレが相手になってやろう」
「バハムートか……」
 確かにその通りだった。スコールはどうにか心を落ち着けようと憂さ晴らししていたのだ。
 みんなは何をやってるのか? どうすれば戻れるのか? これから俺はどうなるのか? 何故俺が呼ばれたのか? はやく帰りたい。何故こんなところに俺はいるんだ。もしかしたらこのまま戻れないのかもな。そんなの嫌だ。
 一晩たってもどうにもならないものは仕方がない。
「……あぁ、頼む」
 バハムートの呼び声にスコールは応じ、バハムートを召喚した。
「……主よ……再びワレに力を示してみよ……」
 最初から容赦のないバハムートの攻撃、メガフレアが襲ってくる。
 途方もない高威力のそれは、スコールを傷つけることはなかった。空中に逃げているスコールに、しかしお見通しとばかりにバハムートの突進がスコールを直撃した。
「ぐっ……!」
 宙に放り出され、なんとか体勢を立て直そうとしたが、バハムートの尾が追撃で放たれる。
 キスティスの鞭より鋭いな……そんなことを考えながら、転げ回るように着地する。
 そのスコールの着地地点にメガフレアがほぼノータイムで降り注がれた。
 流石にこれには為す術もない、スコールは何度もメガフレアの直撃を身体に受ける。

281 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/04(火) 21:21:09.99 ID:4m1P/Gu2
 大ダメージを負ったスコールは立ち上がるが、それでも膝をついてしまう。
「主よ……さぁ、来るがいい」
 その言葉を発した瞬間には、スコールは既にバハムートの眼前に迫っていた。
 ダァン! という衝撃音と共に、バハムートの頭部が上に跳ね上がる。
 無意識に翼を前に出して顔を守ろうとしたバハムートの、その翼に降り立ったスコールは翼にガンブレードを振り下ろす。
 体勢を崩したバハムートの頭へ跳び、ジャンプしてガンブレードを上から振り下ろす。そのまま地面に落ちて行くバハムート。
 空中から更に落ちたバハムートへ向けて追撃を放った。
 地面でもがくバハムートめがけて走り、ガンブレードで切り上げる。と同時に闘気がバハムートの身体を空中に飛ばし、再度地面に踵落としで叩きつけた。
 フィニッシュブロー・ラフディバイド、その攻撃を受けたバハムートは羽ばたくが、どこか弱弱しい。
「流石だ、主よ……迷いは晴れたか?」
「さぁな……」
 バハムートはにやりと笑うと、スコールの体内に戻っていった。曖昧に返したものの、若干スッキリしているスコールだった。
 とりあえず、色々な悩みは置いておくことにする。
 ガンブレードを戻し、さてと遠巻きからの視線に目を向ける。
 最初にバハムートからメガフレアを受けた少しあとから人が増えていたのだが、気にしないことにしていた。
 視線の一つには、ルイズもいた。
「だ、大丈夫なの……?」
「少し、訓練をしていただけだ」
「訓練ってなによ! あんな化け物と戦って、こんなにデコボコにしちゃって!」
 言われてから、そういえばメガフレアで大地が抉られたりしているのに気が付いた。
 しまったな……そこまで考えていなかった、考える余裕の無かった自分に驚かされるスコール。
「すまない」
「すまない…じゃないでしょ!!」
 ヒートアップするルイズの頭に手を乗せ、そのまま歩き去っていく。
「ちょっと!」
 そんな自由なスコールの後に続いていくルイズ。

 遠目から、そんなスコールとルイズを見つめる二つの影があった。
「…彼はいったい何者じゃね?」
「分かりません。ただ、ミス・ヴァリエールの使い魔ということだけしか…」
「あのような竜を見たことは無いのぅ……すまないが、彼をここへ連れてきてはくれんか?」
「分かりました」

282 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/04(火) 21:22:15.41 ID:4m1P/Gu2
 コルベールと名乗るハゲ頭から声をかけられて現在スコールは校長室に呼び出されていた。
 ルイズはコルベールに言われ、現在外で待っている。
「すまんの、ミスタ…なんと?」
「…スコール・レオンハート。レオンとでも呼んでくれ」
「では、ミスタ・レオン。質問なんじゃが、あの竜はなんだね?」
「あれは、バハムート。ガーディアン・フォースだ」
「ガーディアン・フォース? それは?」
「……………使い魔みたいなもの、じゃないか?」
「ほう、使い魔! じゃが儂の見た所、君は他にも使い魔を有しているのではないかね?」
「あぁ…」
「君はどこから来たのかね?」
「………バラム…と言って分かるか?」
「バラム…ふぅむ、聞いたことも無いのぅ」
「………だろうな」
「そのバラムでは、使い魔を複数有することは当たり前なのかね?」
「さぁな…他人のことに興味を持ったことはない。基本的には一人一体のみだった気がするがな…」
「では何故君は?」
「……たまたまだ」
 細かい問答を、オスマンと名乗ったこの学園の校長としていた。
 あの時姿が見えなかったが、このオスマンもバハムートとの戦いを見ていたらしい。
「ミスタ・レオン、君の使い魔のルーンを見せてはもらえんかね?」
 少し考えたあと、左手の手袋を外し、それを見せる。
 コルベールが、おや? とスコールのルーンを凝視し、それを紙に書いていく。
 オスマンもふぅむ…とルーンを眺めている。
「ふむ、ありがとう。君の国のことも教えてもらえんかね?」
 そう問われ、スコールとしては隠すことも何もないため、スコールの身の回りのことを話し始める。

283 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/04(火) 21:22:29.29 ID:4m1P/Gu2
「………なんと……」
 話を聞き終えたオスマンはスコールを驚きの目で見ていた。
 無理もないだろう。こことは違う異世界から来たという話に始まり、魔女を倒す為に作られたSeeDだの伝説のSeeDだったスコールだの、眉唾な話ばかりだ。
 魔女にしても滅茶苦茶だった。時間圧縮…過去と現在と未来を融合させようとする魔女。
 そんな魔法、見たことも聞いたことも無い。時間を全て圧縮し、過去や未来という概念を消し去る…。
「信じられないのも無理はないが、全て本当の話だ」
「そうか……」
「もう良いか? 俺から話せることはこれ以上無い」
「あああああああああああ!」
 席を立とうとした所で、難しい顔をしながら本を読んでいたコルベールが大声をあげた。
「な、なんじゃねミスタ・コルベール! 急に大声をあげて!」
「これ! これですよオールド・オスマン!」
 本をオスマンの顔に突きつけるかのように見せるコルベール。その指さす所には…。
「これは……ミスタ・レオンのルーン……ガンダー…ルヴ?」
「そうです! これは伝説の使い魔、ガンダールヴの!」
 それから二人が話し合いを始めてしまったので、改めてスコールは適当に声をかけて退室したのだった。

 スコールはルイズに連れられ、アンヴィーズの食堂に来ていた。
「ホントならあんたみたいな平民はこのアンヴィーズの食堂には一生入れないのよ」
 だからどうしたとばかりに適当な椅子に座ったスコール。
 文句を言おうか悩んだが、使い魔扱いすると不機嫌になるスコールに何も言えなくなる。
「お、おい平民! そこは僕の席だぞ!」
 もちろんそれに不満を言う人間も現れた。今スコールが座っている席の持ち主だ。
「……………」
 立ち上がるスコールが、その生徒を見下ろす。
「な、なんだよ…」
 その威圧感に圧され、一歩下がってしまうが貴族のプライドでなんとか推し留まり、睨み返す。
「……悪かったな」
 そう一言だけ言うと、スコールは外に出て行く。
「どこ行くのよ!」
「別に」
「もう! なんなのよ!」
 そう叫ぶルイズだったが、教師に注意されて大人しく昼食を食べるのであった。

284 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/04(火) 21:24:05.05 ID:4m1P/Gu2
すいません、短いのですがここまで。
実は投下する寸前に大きな間違いに気付いて、一部大削除と相成りました。
ちくせう……

戦闘シーンって難しいですよね、言葉だけで動きを説明しなければならないので、どうにもこうにも。
それではまた!

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/04(火) 21:25:35.55 ID:+lapc0nW
乙です

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/04(火) 21:41:48.11 ID:zSeJT8K2
乙です

ところで、なんかメールアドレスが変ですよ
sageが二重に入ってるみたい

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/05(水) 20:29:41.25 ID:VqIIM/cU
神撃のバハムートとのクロスも誰かやってくれないかなあ

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/06(木) 23:48:25.77 ID:OFhbFEec
言い出しっぺの法則

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/08(土) 10:20:45.38 ID:7jqi6xst
神撃のバハムートはファンタジー同士で雰囲気も近いし、ハルケギニアの街中をファバロやカイザルが歩いてても違和感ないな
ゲーム準拠ならバハム名物のカオスなイベントにルイズたちが巻き込まれるってのもおもしろいかも

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/08(土) 21:17:54.16 ID:uXZY8Mty
ルイズさんに召喚して欲しい方々
bleachの十刃バラガンの従属官シャルロッテ・クールホーンが魅惑の妖精亭で大暴れとか
bleachの井上織姫でティファニア・カトレア(織姫ならたぶん病気治せるだろう)と天然巨乳三姉妹アイドル結成とか
テニスの王子様より跡部で主従逆転?とか
とっても!ラッキーマンのラッキーマンとか

文才ないので誰か書いてくんない?w

291 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 21:48:39.50 ID:4iczreup
皆様、こんばんは。
先程町内会の納涼祭に参加して参りましたが、連日暑い日が続きますね。

よろしければ、22:00頃からまた続きを投下させてください。

292 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 22:00:17.20 ID:4iczreup
 
アルヴィースの食堂の上階は、大きなホールになっている。
トリステイン魔法学院の春の恒例行事、女神フリッグの名を冠する舞踏会は、そこで行われていた。

楽士たちの奏でる美しい音色が静かに響く中で、美しく着飾った男女がそこかしこで談笑しては、曲に合わせて手を取り合って踊っている。
2つの月の明かりがバルコニーからホールにまで届き、蝋燭の揺らめく明かりと絡み合って、彼らの姿を照らし出す。

何とも美しく、幻想的な雰囲気であった。

「オオ、いい感じなの。みんなも、すごーく楽しんでるみたいだね」

ディーキンはと言えば、何やらタキシードっぽいもの一式をビシッと着込み、胸元にでっかい蝶ネクタイを飾って、えへんと胸をそらしていた。
本人は紳士っぽくしているつもりなのかもしれないが、なにやら滑稽で愛嬌があってかわいらしい。
楽士たちの演奏には加わらず、一参加者として生徒らに交じっている。
バードとしては参戦したいところなのだが、既に楽士たちがいる以上、無闇に出しゃばるのも彼らに失礼かと自重したのだ。

ちなみに、ディーキンは別に自分の体に合う正装一式を荷物袋に入れて持ち歩いていたわけではなく、魔法で用意したのである。
《洋服店の衣装箱(クロウジャーズ・クロゼット)》という呪文をもってすれば、金額制限の範囲内でなら、どんな衣装でも思いのままに作れるのだ。
別に《変装帽子(ハット・オヴ・ディスガイズ)》による変装で済ませてもいいのだが、ただの幻覚では他人は騙せても自分自身の気が乗らない。
せっかくのお祭り騒ぎなのだからなるべくきちんとやりたいというのが、ディーキンなりのこだわりである。

ディーキンには既に仲の良い教師や生徒らが大勢おり、また今回のフーケ騒動の貢献者でもあるため、特に参加を咎められることもなかった。
いろいろな人と談笑をしたり、食事を給仕らに頼んで取ってもらったり、音楽に合わせた即興の一人用ダンスを披露してみせたりして、大いに楽しむ。
ダンスは専門外とはいえ、たしなみ程度に踊れるだけの教師や生徒らに、感嘆の溜息を吐かせるだけの腕前はあるのだ。

もっとも、背が低すぎるので、誰かとペアで踊ることはなかったが……。



「あなたも食べてばかりいないで、ディー君のところに行ってこればいいのに?」

ディーキンの様子を微笑ましく見つめながら、そういって親友をけしかけているのは、例によってキュルケである。
彼女は艶やかなドレスに身を包み、他のどの女子よりも大勢の男子生徒に取り巻かれていた。まさに今日の主役といった風情である。
もっとも今日に限らず、彼女はこの手のイベントの時は、概ねいつでもこんな感じだったが。

タバサの方はといえば、誰の傍にもよらず、キュルケ以外には先程から話した相手さえもいない。
品の良い黒いパーティドレスに身を包んで、愛用の大きな杖を傍らに置いたまま、一人黙々とテーブルの上の食事を平らげていた。
彼女は小柄で細い体に似合わず非常に食欲旺盛だが、机や服を汚すような食べ方は絶対にしないあたり、見る者が見れば育ちの良さは伺えるだろう。

タバサはキュルケの勧めを聞いて、食事の手を一旦止める。
そして、今はコルベール教師と話し込んでいるディーキンの方を、ちらりと見た。

ミスタ・コルベールは、何を思ったかロールした金髪のカツラや装飾過剰なローブなどでゴテゴテに着飾っており、周囲の失笑を買っていた。
どうも本人は、秘書のミス・ロングビルが目当てでおめかしに気合いを入れたつもりらしい。
そういえば、フーケのゴーレムが宝物庫を襲った晩も確か、似たような恰好でロングビルと一緒にいた気がする。

あいにくと彼女は昼間の仕事で疲れたのか舞踏会に姿を見せておらず、その事で先程まではいささか落ち込んだ様子であったが……。
ディーキンと話しているうちに元気を取り戻したらしく、今は目を輝かせて何やら知的な会話に夢中になっている。
その内容に興味を惹かれたのか、周囲には勉学熱心な数人の生徒らが集まって話に耳を傾けたり、質問を挟んだりしていた。

タバサは一瞬、自分もあの話の輪の中に入って会話に参加してみたい、という衝動に駆られた。
だが、自分はそんな目立つ真似をするべきではないとすぐにそれを振り払い、僅かに首を横に振って、短く返答する。

「後で」

キュルケはその返事を聞くと、目を細めて得心したようにうんうんと頷いた。

「ははあ、後でねえ……。
 そうよね、よく考えたら、今は人が多すぎるものねえ……」

293 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 22:02:23.23 ID:4iczreup
 
彼女は一人でそう納得すると、親友の肩に腕を回して頬にひとつ接吻をしてから、取り巻きを連れて去っていった。
タバサは心なしかじとっとした目でそれを見送ると、食事を再開する。

自分の用件は、キュルケの考えているようなことではない。
とはいえ、人が多いときでは都合が悪い内容だということは確かだった。



「先生、貴族の方々からも、すごく人気があるんですね……」

パーティ会場の隅の方に控えめに佇むシエスタは、敬慕する亜人の様子を遠くから見つめて、そう嘆息した。
彼女は、本日の功労者の一人なのだから給仕ではなく参加者として出席しろとマルトーやオスマンから強く勧められて、それに従ったのだが……。
先程まではディーキンの傍にくっついて回っていたが、彼があんまり頻繁に大勢の教師や生徒に取り巻かれるので恐縮して、会場の隅に退散したのであった。

なお、その理屈で行くとデルフリンガーも参加した一人だとシエスタは考えているので、場違いなのを承知で背負って来ていた。
よく話し相手になっているエンセリックも今は留守だし、一人で置いてきたらかわいそうだ、という思いもあった。

ゆえに今の彼女は、メイド服を着て背中にはデルフリンガーを背負った、いささか場違いな格好である。
給仕ではなく参加者なのになぜメイド服のままなのかはごく単純な理由で、彼女は貴族の舞踏会に出られるような立派なドレスなど持っていなかったからだ。
もし事前に彼女がディーキンに相談していたら、きっとシエスタの分の衣装も彼が呪文で作っていただろうが、今更どうしようもない。

さっきまで大きな剣を背負ってディーキンの後について回っていた様子は、まるで彼の専属の護衛メイドか何かみたいな感じであった。
大きな剣を持ったメイドさんである。つまりはメイドさんと大きな剣である。
だからどうした、と言われても困るが。

「そうだなあ。まあ、今回の件でも実際になんか仕事したのはあの坊主と、後は秘書の姉ちゃんだけみてえなもんだしな。
 そりゃあ人気もでるだろ……、って、」

内心気に病んでいたことを言われてしょんぼりした様子のシエスタを見て、デルフリンガーは慌てて付け加えた。

「ああ、いや! 別に、おめえを責めてるわけじゃねえんだからな?」

「……そうですよね。せっかく先生からデルフさんを紹介していただいたのに……。
 今日は、何の仕事もできなくて。すみません……」

「いやいや、だから気にすんなって!
 あの亜人の坊主はえらく強えしよ、そりゃあんなのと一緒に行けば、そういうこともあらあな。
 俺はおめえに毎日訓練で使ってもらえて、それなりに満足してるよ。
 最近は鞘に収めたっきり、何ヵ月も使わねえ、手入れもしねえってろくでなしどもが多いみてえだからな!」

「……ええと、ありがとうございます。そう言ってもらえると、嬉しいです」

そう言われて急にぱっと気が晴れるというものでもなかったが、シエスタはとりあえず微笑みを浮かべて、気遣ってもらった礼を言った。

勧められて参加はしたものの、今回の件で自分が何ら貢献できたわけではないことは、よく分かっている。
それなのに、ただ同行しただけで主賓だなどといわれても、何だか申し訳ないような気がするばかり。
所詮は平民ゆえに主賓などとは名ばかりで、使用人仲間も仕事で忙しいために、ほとんど人が寄ってこないのはかえってありがたかった。

彼女は、ディーキンが他の人々との話を一段落させてルイズの元へ向かうのを見ると、自分もそちらの方へ足を運んだ……。



「ずいぶん楽しんでいるみたいね」

ルイズは、ようやく他の生徒や教師らの相手を終えて自分の元へてくてくと寄ってきたディーキンに、つまらなさそうにそう声を掛けた。

彼女は長い桃色がかった髪をバレッタにまとめ、やや胸元の開いた白いパーティドレスに身を包んでいた。
腕は肘まである長い白手袋に包まれており、ルイズの高貴な印象を際立たせている。

294 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 22:05:12.47 ID:4iczreup
 
「うん。ここは、みんないい人ばかりだからね!」

ディーキンはにっと笑って、大きく頷いた。

いくら功績があったとはいえ、コボルドを同じパーティの席に上げて、こんなにちやほやしてくれるなんて。
ここの人たちはなんと心が広いのだろうかと、改めて感動することしきりである。

「ルイズは、あんまり楽しくないの?
 主役なんだから、キュルケみたいに踊ったり、お話ししたりしたほうが、みんな喜んでくれると思うのに」

ルイズの元へは、当初その美貌に惹かれた男子生徒らが集まって、盛んに彼女にダンスを申し込んでいた。
その中には、マリコルヌという少年などの、普段はルイズをからかったり侮蔑したりしている同級生も数名含まれていた。
だが、ルイズはそれらをすべて、すげなく断ってしまったのである。
どうやら目が無さそうだとわかると、貴族である彼らは体面やプライドを傷つけられるのを嫌って、彼女に申し込むのをやめた。

ならば話から入って親しくなってやろうと考えたのか、盗賊から宝物を奪い返した功績を称えたり、武勇伝を聞かせてくれと頼んだりする者もいた。
しかしルイズは、武勇伝なら私のパートナーに聞いたほうがいいと素っ気なく答えて、それ以上の話を拒絶したのである。
その後は、一人でワインをちびちび傾けたり、食事を摘まんだりしながら、ディーキンの楽しんでいる様子をぼんやりと見守っていたのだ。

「……だって、私は何もしていないじゃない。
 フーケを捕まえられたわけでもないし、あんたが殴られたときだって、何もできなかったのよ。
 それで主役気取りで楽しんでいられるほど、私はあつかましくないわ。
 ツェルプストーは、どうだか知らないけど……」

少し沈んだ様子でそう言いながら、ルイズはキュルケの方をちらりと伺った。
彼女はいつものように女王然として、取り巻きを連れてパーティの主役らしく振る舞っている。

ルイズは鼻白んだような顔をして小さく鼻を鳴らすと、ぷいと顔を背けた。

自分だって何の貢献をしたわけでもないだろうに、臆面もなく主役面をしていられるなんて。
ゲルマニアの成り上がり者は、やっぱり恥知らずだ。

「……その、でも、ミス・ツェルプストーは先日、宝物庫を襲ったゴーレムを倒すのに貢献されましたし。
 ミス・ヴァリエールも、あのゴーレムを攻撃するのに協力されていたじゃないですか。
 それに比べたら、私などは、本当に何もしていませんから……」

いつの間にやら傍にやって来ていたシエスタが、会釈をしておずおずと口を挟んだ。

「ふん……。お世辞なんかいいのよ。私の爆発は、ぜんぜん効いてなかったわ。
 何もしてないのと変わらないじゃない。私なんか居なくたって、あのゴーレムは倒せたんだから」

「い、いえ、そのようなことは……」

自嘲気味に笑ってちょっとやさぐれたような様子を見せるルイズと、なんとかフォローしようとおろおろするシエスタ。

「……ンー、」

ディーキンはそんな2人の様子をじいっと見つめると、少し首を傾げた。

「ルイズもシエスタも、すごく責任感があって立派な人だと思うの。
 でも……、ディーキンは、2人の考えにはいくつか反対したいところがあるの」

怪訝そうな、戸惑ったような目を向ける2人に、ディーキンはぴっと指を立てて見せると、自論を語り始めた。

「ええとね。まず、ディーキンは、キュルケは素敵な人だと思うの。
 それは、この間ゴーレムを倒したとかじゃなくて、今、みんなの期待に応えているからね。
 ほら、みんな楽しそうにしているでしょ?」

ディーキンはそう言って、キュルケの周りにいる人々に注意を向けるよう2人を促した。

295 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 22:07:35.05 ID:4iczreup
 
なるほど、キュルケの周りにいる者たちは、誰もが皆、楽しげにしている。
ちょっと媚態を向けられてのぼせ上ったり、ダンスに付き合ってもらえて有頂天になったりしている男子生徒たち。
彼女が聴衆にせがまれて語る手柄話は、多分に誇張が混じっており、生真面目なルイズやシエスタにとっては眉をひそめたくなるような代物だった。
しかし周りの者たちは、皆、目を輝かせて聞き入っていた。

「今日、別に大したことをしてないのは、ディーキンも同じなの。だってゴーレムに潰されて、みんなに心配をかけただけでしょ?
 でも、英雄を期待している人たちの前では、もっと楽しい話をするの。
 ディーキンは嘘つきじゃないけど、ただ、みんなに喜んでもらいたいと思うからね」

ディーキンが控えめにそう話すのを聞くと、シエスタは素直なもので、感心したような顔をして頷いた。
しかしルイズは、むっとした様子で腰に手を当てる。

「そりゃ、あんたは詩人だから、そういうものかもしれないけど……。
 キュルケはそんなつもりじゃないわよ。あいつは、いっつも男漁りをしてる色ボケで、そのくせ飽きたら見向きもしないで捨ててるんだから。
 みんなを喜ばせてやろうなんて気のある女じゃないわ。あれはただ、調子に乗って自分の手柄を吹聴してるだけよ!」

確かにディーキンのおかげで彼女とも一緒に出かけたりして、少しは仲良くなったというか、よい部分も見えてはきたのだが……。
先祖代々の敵対関係とこれまでの不仲、それに根本的な性向の違いからくる反感は、そうあっさりと消えるものではない。

ついでに言うなら、ルイズはディーキンが初対面の時からずっと、キュルケの言動を過剰に好意的に解釈しているように思えるのが気に入らなかった。
そんな殊勝な考えなど、あの節操なしにあるはずがないのに。
仮にも自分のパートナーだというのに、どれだけあの女に肩入れするのか。

「ン〜……、もしかしたら、ルイズの言う通りなのかもしれないね」

ディーキンは、それについては譲歩した。

確かにキュルケは根は善良だとは思うが、周囲の者を傷つけないようにいつも配慮している、というわけではなさそうだ。
彼女には自分の見たいように物事を見て、都合の悪いことはすぐに忘れるという面もあるように思える。
今だって、自分の楽しみのためにしているだけで、周りの者を楽しませてやろうとしているというわけではないのかもしれない。

しかし、それならそうでもいいじゃないかとディーキンは思う。
人間というのは、百点か零点かというような極端なものではないだろう。

「それでも、キュルケの周りにいる人たちが今、楽しんでるのは間違いないと思うの。
 いつもがどうだろうと、自分も楽しんで周りの人も一緒に楽しめるんだったら、キュルケが今してるのは、いいことだよ」

ルイズはまだ何か言おうとしたが、ディーキンはそれを止めて、彼女に質問した。

「それに、ルイズは、自分は何もしてないっていうけど……。
 でもディーキンが行くって言ったときに、自分から進んで名乗り出てくれたでしょ?
 だったら、たとえ結果的には役に立たなかったとしても、行こうとしなかった人たちよりは自分は偉いって思わない?」

「そ、それは、まあ……」

「でしょ? けど、あの時に名乗り出なかった人たちも、みんな楽しそうにパーティに参加してるよ?」

ディーキンはそう言って、そういった教師の一人であるギトーの方を指で示した。
正確には、一応遅れて名乗り出はしたものの、オスマンから頼りないと駄目出しをされて学校に残ったわけだが。

彼は酒が回った赤い顔で目についた生徒に次々に絡み、いつも以上に滔々と風属性最強説を披露しては、うんざりした顔をされている。
フーケ討伐に二の足を踏んで屈辱を味わったせいで、酒を飲んで管を巻きたい気分なのだろう。
とはいえ、いつもは陰気で冷たい雰囲気のギトーの珍しい一面が見れたためか、生徒らも大概苦笑こそすれど、本気で嫌がっている感じではなかった。

「ディーキンは別に、あの人たちが悪いとか、恥知らずだとは全然思わないの。
 パーティっていうのは特別なお祝いなの、参加している人には誰にだって楽しむ権利があるはずだよ。
 だからルイズにもシエスタにも、あの人たちと同じくらいにいばって今日のパーティを楽しむ権利は、絶対にあるんだよ」

「……その、そうかもしれません。いえ、そうだと思います。でも……、」

296 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 22:10:13.46 ID:4iczreup
 
おずおずと遠慮がちに何か言おうとするシエスタを遮り、ディーキンは顔をしかめてさらに言葉を続けた。

「それにね、2人とも。何もできなかったから偉くないなんて、そんなのは間違いだよ。
 冒険者っていうのはね、仲間がみんな協力したから成功できたんだって、そう考えるものなの。
 誰が一番活躍したとか、お前は今日は活躍しなかったから取り分なしだとか……、そんなことを言ってたら、いつまでも仲良しでいられないでしょ?
 わかる? ねえ、わかる?」

ディーキンはちょっと据わった目でそう言うと、通りかかった給仕からワイングラスを受け取って、一気に飲み干した。
そして、返事に困った様子で顔を見合わせるルイズとシエスタに向けて、さらに話し続ける。

「ディーキンなんかね、冒険者になったばかりの時にボスにそんなこと言われてたら、とっくの昔に一文無しで冒険者を廃業してるはずだよ。
 ルイズやシエスタは、ディーキンがもし今日、役に立たなかったら、責めてたの? そうじゃないでしょ?」

「おっ、その通りだぜ! 娘っ子、おめえの先生の言うとおりだ。
 おめえはまだまだ駆け出しなんだし、成功するのはこれからだぜ。今日役に立ったとか立たなかったとかで落ち込む必要はねえ。
 さすがに坊主はよくわかってるぜ。強ええだけじゃなく、なかなかどうして経験も豊富らしいな?」

口を挟んだデルフリンガーに、ディーキンはエヘンと胸を張って見せた。

「でしょ? ディーキンは冒険者の中でも最高にベテランなの!
 ……ああ、いや、その、かなり……、割と……、どちらかといえばベテラン、かもしれない可能性はあるってくらいかな……?」

それから、気を取り直すように咳払いをすると、さらにぐぐっと背伸びをして。

「っていうか……、ディーキンは今日は、主役ってことなの!
 オホン、そのディーキンが、2人にもっと楽しんでほしいって言ってるんだよ。
 もし2人が主役なら、堂々と楽しむべきなの。そうじゃないっていうなら、脇役はディーキンの言うことを聞くの。
 なんて言っても、今日のディーキンはとっても偉い役なんだからね!」

びしっ、と自分たちの方に指を突きつけてそう宣言するディーキンを見て、ルイズとシエスタはつい失笑した。

ウロコに覆われているので最初はよくわからなかったが、よく見ると彼はあちこちで酒を勧められたせいか、ほろ酔い加減になっているようだ。
どうりで、さっきからよく人の言葉を遮ってまで弁舌を振るい続けたり、いつもにもまして雄弁だと思った。

「はいはい、わかったわ。あんたの言う通りよ。
 ……けど、ダンスの相手はさっきみんな断っちゃったし、そうでなくてもあいつらとはあんまり、踊りたい気分じゃないのよ。
 私にだって、パーティを楽しむために相手を選ぶ権利はあるんだから。そうでしょ?」

「ン〜……、」

ルイズにそう言われて、ディーキンは首を傾けて考え込む。
当のルイズ本人は何か言われるのを待たずに、すっと自分のパートナーに近づいて屈み込み、顔の高さを合わせた。

きょとんとしたディーキンに微笑みかけると、ルイズは両手でスカートの裾を持ち上げて、丁寧に一礼する。
それから、わずかに顔を赤らめて咳払いをすると、すっと手を差した。

「小さなジェントルマン。仲間のよしみで、わたくしと一曲、踊ってくださいませんこと?」

ディーキンはちょっと目をしばたたかせると、困った風に頬をかいた。

「……その、すごくうれしいけど。
 ディーキンはおチビだから、ルイズとペアで踊るのは、難しいかもしれないよ?」

「もう……、あんたは歌も踊りも、得意なんでしょ。
 何かほら、適当な方法を考えなさいよ」

「ウーン、そう言われても……」

ディーキンがちょっと悩んでいると、シエスタも同じように脇から進み出て、ルイズと並ぶように屈んで一礼した。

297 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/08(土) 22:12:37.54 ID:4iczreup
 
「その、先生。ミス・ヴァリエールの後で、私とも踊っていただけませんか?
 貴族の方々に申し込むわけにはいきませんし、使用人仲間はみんな仕事で忙しいですから……」

頬を赤らめてそう言うシエスタをルイズは横目でじろっと睨むんだが、文句を言うような不作法はしなかった。

「オオ、シエスタも?
 でも、主役なのに使用人だから貴族と踊れないなんて、ヘンな話だとは思うけど……、」

ディーキンはそこで何か閃いたのか、ちょっと待ってねと断ってから、タバサとキュルケにも声を掛けて引っ張ってきた。

「じゃあね、この全員で、輪になって踊ればいいと思うの!
 みんながずっと、仲良しでいられるようにね。
 この舞踏会で一緒に踊った人たちは、結ばれるって言われてるんでしょ?」

大人と子供のように身長差が大きい組み合わせでは、ペアでのダンスは難しいが、手をつないで輪になって踊るのならば問題はない。
このくらいは今日の主役としての権利だと決めて、さっそく楽士たちに合いそうな音楽をリクエストすると、彼女たちと手をつないで踊り始める。

最初は少し不満そうにしていたルイズや恐縮そうにしていたシエスタも、しばらく踊るうちに楽しげな様子になっていった。
キュルケはもとより、タバサでさえも、相変わらずの無表情ながらどこか楽しげに見える。
不参加のミス・ロングビルを除く今日の主役全員が輪になって楽しげに踊っているのを、他の参加者たちも食事やおしゃべりを止めて見守った。

やがて誘われたように、一人、また一人と願い出て踊りの輪に加わる人数が増えていき、しまいには会場のほぼ全員が輪に加わっていた。

「もっと、もっと。こういうのは、気にしないで大勢でやった方が楽しいよ!」

ディーキンが提案し、責任者のオスマンがそれを快諾したことで、最後には楽士や使用人までもが、一時仕事の手を止めて踊りの輪に加わった。
楽士らの演奏はディーキンが、《動く楽器(アニメイト・インストゥルメント)》などの呪文も駆使して引き継ぐ。
そろそろお開きも近いのだから、このくらいは出しゃばっても罰は当たるまい。

「こいつはおでれーた。てーしたもんだ!
 亜人が仕切って、貴族も平民もみんなを輪になって踊らせるダンスパーティなんざ、初めて見たぜ!」

デルフリンガーがかたかたと鞘を鳴らして、楽しげにはしゃいでいる。
パーティの夜はそうして、楽しく、和やかに更けて行った……。

298 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/08/08(土) 22:31:12.28 ID:4iczreup
 
クロウジャーズ・クロゼット
Clothier's Closet /洋服店の衣装箱
系統:召喚術(創造); 2レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(100gp以上の価値がある宝石1つ)
距離:近距離(25フィート+2術者レベル毎に5フィート)
持続時間:術者レベル毎に1時間
 術者は、合計で100gpまでの範囲で好きな種類の衣服を、何人分でも自由に創造することができる。
呪文の持続時間の間、術者の選択した2つの直立した壁の間に棒と必要な数のハンガーとが出現し、衣類はそこに掛けられた状態で出てくる。
作り出された衣類はあらゆる点で通常の品物と同様であり、魔法のオーラを放射しない。
この呪文の持続時間が終了すると、棒とハンガーとは消えるが、作り出した衣類はそのまま残る。
 この呪文はエベロンと呼ばれるフェイルーンとは別のD&D背景世界に属する呪文だが、ディーキンは何らかの経路で流入してきた知識を得たのであろう。
エベロン特有の“ドラゴンマーク”と呼ばれるものともつながりがある呪文なのだが、それはディーキンには関係の無い話である。
 残念ながら、この呪文が掲載されているエベロン関連のサプリメントは、現時点では日本語未訳となっている。
 余談だが、この呪文はウィザード/ソーサラーの呪文リストにも含まれているので、シャドウ・カンジュレーションでの効果模倣ができる。

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今回は以上になります。
一応、今回で原作第一巻の最後の時点まで進んだ、ということになるでしょうか。
既に魅惑の妖精亭に顔を出していたりと、完全に原作沿いに進んでいるわけでもないですが……。

それではまた、できるだけ早く続きを書いていきたいと思います。
次回も、どうぞよろしくお願いいたします(御辞儀)

299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/08(土) 22:31:29.78 ID:mfo0p6ME
乙でした

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/09(日) 09:28:29.73 ID:5TuWD+BP
スコール召喚物は過去にもあったけど、どんな展開になるのか期待してるよ
完結決定の朗報もあったことだし、どんどん新作が出てきてくれたら嬉しいね
ソーサリーとかラスボスとか、だんじょん商店会とか、名作の続きも読みたいな

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/09(日) 15:25:13.11 ID:lfSz3HrL
新しい部類の作品とのクロスに期待

302 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:13:23.46 ID:+FSPrCyj
20〜25分くらいに投下を開始致します。

遅筆な上に書き溜めも中々できてないのですが、少しずつでも完結に向かいたいと思います。
余談ですが、最初はハルク×ルイズで書こうと思っていたのですが、「もうあいつ一人でいいんじゃね?」みたいになる(今のスコールも大概ではあるが)のが目に見えたので泣く泣く断念しました。
ハルク強すぎんよぉ……

303 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:21:11.10 ID:+FSPrCyj
 外に出たスコールは、当然のことだがあてがある訳でも無い。面倒ごとは御免と出てきたは良いが、空腹であることも事実だった。
 正直な話、スコールが短気を起こしただけの話でしかない。
 見た限りではスコールの椅子は用意されてなかったし、周囲の目はスコールをまるで歓迎していない。
 あのままあそこにいれば床で飯を食えという話になるような気もして、また無駄な問答になる気もしたのでさっさと出てきたという訳だった。
 どこか外にでも行って何か探してこよう…そう思い、すぐ近くにいた女性に声をかけた。
「…少し良いか?」
「え? あ、は、はい! なんでしょう!」
「いや…このあたりに何か、果物でも良いんだが、採れる場所を知らないか?」
「果物ですか? さぁ…聞いたことは無いですね…」
「…そうか…」
 街ならあるかも知れないが、スコールの持っているギルはこの世界では通用しないだろう。
 そうなると、もうどうにもならないと悟ったスコールは、空腹を紛らわせるために仮眠でもするか…と部屋へ戻ることにした。
「あの! もしかして、あなたが使い魔として呼ばれた平民の人ですか?」
「………あぁ」
 スコールの返事を聞いて、ガンブーレドに目をやっていた女性は笑った。
「あぁ、やっぱり! 不思議な格好をしていて、とてもかっこいい方だと聞いていたのでもしかしたらと」
「…(かっこいい?)」
 女性のことを無言で見つめているスコールが、良く分からないという顔をしたからか、女性は少し照れたように小さく笑った。
 それから、あ、と口を開く。
「もしかしてご飯食べさせてもらえなかったんですか?」
「…そんなところだ」
「それでしたら、こちらへ。軽いものでしたら用意できますから」
「良いのか?」
 スコールにとっては有り難い申し出。だが彼女の身なりを見るにここに勤務している従業員だと推測される。
 迷惑じゃないのか、そう視線で聞いたが、女性はまるで問題ないと笑顔で返してくる。
「すまない、頼らせてもらう」
「はい! あ、私はシエスタと言います! あなたは?」
「スコール・レオンハートだ。レオンとでも呼んでくれ」

 賄い食ですが、と出された物はどれもスコールが食べる学食の料理には無い美味さがあった。
「……美味い…」
「本当ですか? 良かったです」
 こんなに美味しい料理は、エスタの大統領と世界で十番目くらいに美味い? 料理店に行った時以来だ。(何故?がつくかと言うと、あの駄目親父が曖昧だったからだ。それに十番目くらいと言ってもスコールが味わったことのないものばかりだったので比べようもない)
 つい食事の手が進むスコールを、ニコニコとシエスタが見ている。
「……助かる。どうにも、ここに馴染めてなくてな」
「なんで食事をとらせてもらえなかったんですか?」
「…さぁな…」
 子供のような理由で食事を諦めたスコールは当然その話ができる訳もない。
 適当に話題をスルーする。
「…美味かった、ありがとう」
「いえ、喜んでいただけたら良かったです」
「……何かしてほしいことはあるか? できる範囲で依頼に答えるが」
「え? いえ、そんな…」
「貰ってばかりも悪いからな…」
「あ、そうだ。じゃあですね」
 シエスタのお願いを聞いたスコールは、少しだけ後悔したが、それでも恩に報いる為にとそれを引き受けた。

304 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:22:08.72 ID:+FSPrCyj
「わぁ……」
 思わず感嘆の声をあげてしまうシエスタ。今彼女の視線を奪っているのはスコールだった。
 今スコールが身を包んでいるのはいつもの私服ではなく、給仕服だった。
 シエスタのお願いというのが「デザートを運ぶのを手伝ってください」と言うものだったので、着ることになったのだ。
「やっぱりスコールさんは何を着ていても決まりますね!」
 シエスタも言うとおり、スコールの綺麗とも言える容姿は、そのただの給仕服に驚くほどマッチしていた。
 というよりスコールなら大抵の服なら着こなせるのだろうと思われるが、シエスタの目にはこれが一番ベストなんじゃないかと錯覚を覚える。
「それはどうも」
 やることはやる、とばかりにケーキを乗せた銀のトレイを持っていく。
 広場に出ると、スコールに気付いた生徒たちがざわついた。
 シエスタの後に続いて歩いていくと、女生徒達から熱い視線を送られていることに、スコールは内心でため息を吐く。
「(どこの世界でもこういうのは一緒だな…)」
 自分の容姿のことについて対して気にかけていないスコールに(と言っても年相応にお洒落な格好をしているスコールだが)、そのことについて特に気に掛けることはなかった。
 男子生徒の恨みがましい視線も受け流す。
「ねぇ、あなた」
 一人の女生徒に声をかけられて、そちらへ目を向ける。シエスタは驚いたようにして、頭を下げた。
「…俺のことか?」
「えぇ。確かゼロのルイズの召喚した平民よね?」
「………あぁ」
「ふーん…」
 上から下まで値踏みするように見つめる視線に、うんざりする。この世界の貴族というのは、やはりどうにも好きになれない。
「あなた、私の執事にならない? 今よりもっと良い生活をさせてあげるわよ?」
「……なに?」
 言われたことの意味が分からないスコールが思わず聞き返す。それにイラッとした顔をしたが、すぐに涼しい顔に戻る女生徒。
「私はラザリア・ド・オリアン。もう一度聞くけれど、私の執事になればルイズよりも良い生活をさせてあげるわよ?」
 もう一度言われて、スコールはラザリアを見つめた。その真意を探ろうとして、ただ自分の顔を見ているだけの彼女に理由を察した。
「…悪いが、断らせてもらう。ルイズと契約をしているからな……基本的に依頼が完了しない限り上書きはしない」
「ルイズに随分低い扱いを受けているみたいじゃない? そんな給仕の真似事までさせられて」
「……あんたには関係ない話だ。これにルイズは関わっていない」
 そのスコールの物言いにラザリアは目を見開いた。
 この平民、私のこと今あんたって言った?
 スコールの顔目当てで近寄ったが、やはり貴族としてのプライドを傷つけられるのは許せないと、スコールを睨み付けた。
「あなた、貴族にそんな口の利き方をして許されると思っているのかしら!?」
「…さぁな……だが、俺は明確にあんたの話を断ったんだ。それに食い下がるのに貴族も平民も無いと思うんだがな」
「なんですって!?」
「そもそも…俺はよく知らないが、俺はルイズの使用人ではない。使い魔だ。あんた、他人の使い魔を主の了承無しでこんな話をして良いのか?」
 スコールの話にぐっ、と言葉を詰まらせるが、尚引き下がらない。
「どうせあなた、召喚できないゼロのルイズが金を払って呼ばれた平民なんでしょ!?」
「そんな事実がどこにあるんだ? 俺は不本意だが、あのルイズにここに召喚された。その事実しか知らないな」
 今度こそラザリアは黙った。
 スコールを一睨みした後、数人の友達の輪に戻っていく。
「あ、あなた…あんな風に貴族の人に言うと、下手したら殺されますよ…!」
「…そうか。その時はその時だ…」
 そんなことを言うスコールに、青い顔をしたシエスタも黙ってしまった。
 だがまったく気にしていない様子のスコールに、シエスタは気にしても仕方ないと気を取り直してデザートを配り終える。

305 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:22:46.00 ID:+FSPrCyj
「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」
「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
 そんな話声が聞こえてきて、戻ろうとしたスコールは話をしている少年たちの方へ視線を向ける。
 ポロッ、と何か落ちて、スコールはそれを拾い上げた。紫色の液体が入った小壜だった。
 ギーシュがスコールに気付き、その手にしている物を見て不味い、と言うような顔をする。
「おお? その香水は、もしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」
「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「おい、ギーシュ! お前のポケットから落ちたものだよな?」
「いや、違う。僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
 ざわざわとうるさくなってきて、自分に注目が集まっていることにスコールは嫌な顔をした。
 面倒ごとに巻き込まれそうな予感、とでも言うのだろうか。
 ギーシュが言い訳をしようとしていると、突然その顔がひきつった。
「ギーシュさま……やはり、ミス・モンモランシーと……」
「違う、誤解だケティ。僕の心の中には――」
「その香水があなたのポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」
 パンッと頬をひっぱたかれ、ケティという少女は泣きながら走り去って行った。
 そして更にもう一人、巻き髪の女の子が近寄ってきて、ギーシュを睨み付けた。
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね? うそつき!」
 その言葉と共に、やはりというかギーシュの頬がパンッと叩かれ、走り去って行く。
「…あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
 スコールはそのやりとりを馬鹿らしいことと捉え、ギーシュに小壜を渡して立ち去ろうとする。
「待ちたまえ」
 ギーシュは逃がすまいとスコールの肩を掴んで呼び止めた。
 なんだ? と振り返ると、怒りに顔を歪ませたギーシュが立っている。
「君が香水の壜を拾い上げたおかげで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「……さぁな…俺には関係が無い」
「なんだと? 平民の分際で口答えする気かね!」
「……(訳が分からん。そもそも二股なんてしているお前が悪いし、小壜を拾っただけでバレる浮気なんてするな)」
「なんだね! 言いたいことがあるならハッキリと言いたまえ!」
「…別に」
 そのスコールの態度にビビっていると判断したのか、ギーシュは見下したように笑っている。
 朝のスコールの訓練風景を見ていた数人だけは、ギーシュを止めようか迷う素振りをしていたが、その間もギーシュは止まらない。
「そういう物を拾ったなら、後でコッソリと渡すのが暗黙の了解だろう。平民は本当に気が利かなくて頭が悪いから困るよ。さあ、土下座したまえ。今ならそれで許してやろう」
 まるで我関せずとばかりに立ち去ろうとするスコールに驚き、慌てて行く手を塞ぐ。
「謝罪もせずに逃げるつもりかね! これだから平民は!」
「黙れ」

306 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:23:11.03 ID:+FSPrCyj
 自分のミスでフラれた腹いせにスコールに怒りをぶつけようとするギーシュがひどく鬱陶しかった。
 だが揉め事を起こすのも嫌だったので、掴まれた手を払いのける。
「良いだろう…そういう態度をするのなら、決闘だ!」
 ギーシュは自分の手袋を外すと、スコールに投げた。これを受け取れば決闘承諾の合図となる。
 スコールはそれを避け、ギーシュを押して倒し、面倒くさそうにため息を吐いた。
「逃げるのかね!?」
「あんたにも、あんたの彼女にも興味なんて無い。勝手にしてろ」
「なんだと!?」
 心の底からどうでも良い。そういう態度をしているスコールに、怒りが激化するギーシュ。
 このまま逃げられたのでは腹の虫が収まらない。
 本来ならここで決闘をすることは避けようとしただろうが、怒りが限界を超え、薔薇型の杖を取り出した。
 周りがざわつき、すぐに避難を始める。
「おいギーシュ! 落ち着けって!」
「黙りたまえ! この生意気な平民に貴族のプライドを傷つけられたのだ! 黙っておけるものか!」
「ちょっと! 何をやってるのよスコール!」
 喧噪の中、ルイズが慌てたようにスコールとギーシュへ走ってきた。
「そいつに聞いてくれ」
「ギーシュ! いったい何の騒ぎ!?」
「君の使い魔が僕を愚弄したんだ。相応の裁きがあって然るべきだろう!」
 どういうこと? とスコールに視線を投げるが、腕を組んで向こうの方を向いている。
 近くで震えていたシエスタを見つけたルイズは、ヒソヒソと説明を受けていた。
 ルイズはシエスタの説明を聞き、ため息を吐く。
「ギーシュ、あなたが悪いんじゃない。小壜を拾ったことでフラれたからって、それをスコールに押し付けようなんて流石にやり過ぎよ」
「ぐっ…と、とにかく決闘だ! その後も彼は僕を馬鹿にするような言動をしていた、それを許すことはできないな!」
「決闘は禁止されているわ!」
「それは貴族同士のことだろう。彼は平民だ、何も問題は無い」
 ルイズがそれは…と黙ってしまう。そしてスコールの方に耳打ちをした。
「あんた、謝っちゃいなさいよ。土下座でもすればギーシュの怒りも収まると思うし」
 そう言われ、ため息をつくスコール。そして…。
「おい。ここだと周りに迷惑だ」
 ルイズはてっきりスコールが素直に謝罪するものだと思った。
 だがスコールからギーシュに放たれたその言葉は、決闘の了承の言葉。
 それを聞いたギーシュはにんまりと笑い、ルイズは驚いた顔でスコールをにらむ。
「ついてきたまえ」
 何か言おうとしたが、イフリートという召喚獣、それにバハムートと戦っていた姿を見ていたルイズには、スコールがギーシュに負けるとはとても思えない。
 結局、顔を真っ赤にさせながらもスコールとギーシュに続いていくことしかできなかった。

307 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:23:51.70 ID:+FSPrCyj
「僕はメイジだからね、魔法で戦う。文句はないね?」
 そう言ってワルキューレと呼ばれるゴーレムを数体だした。
「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
 そう言ったと同時に、一体がスコールに詰め寄り、拳を振るった。
 ゴスッ! と鈍く激しい音が響き、ワルキューレの拳がスコールの腹部に刺さっているのを見て機嫌を良くするギーシュ。
 しかしその顔はすぐに疑問の表情に変化する。
「(ワルキューレの攻撃は確かに当たった…にも関わらず彼は何故、あんなに平然と立っているんだ!?)」
 苦悶の表情一つ浮かべないスコールに、内心で焦りを感じた。
 だが、囲んでボコボコにすればすぐにやせ我慢もできなくなる、とワルキューレを操ろうとした所で、スコールが動きだす。
「…イフリート……来い!」
 その途端、火柱が現れ、炎を纏いし魔人が現れる。
 魔人は遅い来るワルキューレに対して、非情の一撃を振るった。と言ってもただ殴っただけであるが、その威力は絶大の一言に尽きる。
 殴られただけでワルキューレは吹き飛んだと同時にバラバラになる。その破片には炎が燃えていた。
「な…ぁ!?」
 その光景が信じられないギーシュは固まったまま動けない。
 イフリートは力を込めると、空中に浮いていく。その足の裏には、地面がくっついてきた。
 その地面は球体のようになり、炎が噴き出しそうなくらいに内側から燃え上っていた。
 そのまま高くまで飛んでいき、停止する。
 ギーシュは夢でも見ているのでは? と呆けていた。
 そのギーシュめがけ、イフリートはその燃える球体を思い切り殴りつけ、地面へ吹き飛ばす。
「ギーシュ! 逃げてえええ!」
 誰かの叫び声にハッとなったギーシュは慌てて後ろに、不恰好に尻もちをつきながら転がるように下がる。
 ドォオオオオオオオオオン! 地面に当たった球体は破裂に、爆音と共に燃え上がった。
 そこにいたワルキューレは破片も残らない。
 誰も言葉を発せない。ギーシュは顔を青ざめて、呆然となっている。
 あの強力な使い魔はなんだ? 初めてみる化け物だ。炎の化け物……それにワルキューレはあっという間に全滅させられた。
 そうして考えているギーシュに、スコールはスタスタと近づくと、見下ろした。
「悪いが、あんたの逆恨みに構っている程お人よしでもないんだ。まだやるか?」
「ま、参った…!」
 ギーシュから興味を無くしたスコールは、自分達を囲っている人間を一息で跳び越えて、部屋へ戻っていく。
「ま、待ちなさいよ!」
 そんなスコールに振り回されっぱなしのルイズも、後を追っていった。
 残されたのは、何が起こったのかサッパリと分からない学園生たちと、腰を抜かしてしまったギーシュだけである。

308 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/10(月) 06:24:49.52 ID:+FSPrCyj
ここまでです。

どうでも良い事ですが、こちらはsagaは使わなくても良いんですかね?
それではまた。

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/10(月) 12:18:05.50 ID:NUW2D1Rm
乙でした

310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/10(月) 12:57:13.08 ID:+Xu+cT3V
ディシディアに近い性格かね

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/10(月) 14:18:03.61 ID:r2qVcE4x
>>310
イメージはFF8からリノアとの恋愛要素を取り除き、仲間を思いやる心はあるけどあまり自分を表に出さない感じのスコールです
そうなるとFF8の物語が繋がらなくなるかもしれないけれど、そのあたりはゆゆうじょうパパワーで。
リノアが嫌いな訳ではないんですけど、エンディング後の素直なスコールを書いてても楽しく無いなと。
まぁなんならディシディアスコールといっても全然分からないですね

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 10:28:36.74 ID:+/QsJ89Y
ちょっと脳裏をよぎったけど、こういう話はありだと思う?
原作で悪の帝王をやっていた使い魔(ベガみたいな感じ)か
昼にギーシュがシエスタに八つ当たりをしていて、使い魔が「うるさい娘だ。そんな女などさっさと処刑でもしてしまえ」と言う
ギーシュには殺すつもりなどさらさらなく「僕は平民とはいえ女性を傷つけたりしない」と怒り決闘を申し込む
使い魔はゲルマニアの成金貴族と思われていて、決闘に勝てるとは思ってないが、誰も(シエスタも)心配したりしない、ルイズは一応心配するかも
使い魔は実は恐ろしい力を持っていてギーシュは負けてしまうが、平民をかばった貴族として マルトーに讃えられる。使い魔はエルフでも見るかのような目で恐れられる
後のキュルケのイベントはなくなるか、もしくはお誘いから邪悪な使い魔の退治に変わる

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 12:49:49.63 ID:+/QsJ89Y
風来のシレンがハシバミ草を食べたらどうなるか?
あいつはただの苦い草どころか本物の毒草でも一応飲むことはできるが
ジョジョスレのディアボロも平然と食ってたな

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 19:21:17.44 ID:/IEQMTeO
>>312
そんな感じの作品は別に過去にも例があるから好きにすればいいんじゃない?

>>313
ハシバミ草ってのは二次でやたら誇張されてる場合もあるけど単に癖のある味ってだけだぞ
どうなるも何も、うまいと思うかまずいと思うかはわからんが別にどうにもならんだろ

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 19:32:46.77 ID:W1u9nDEW
どう考えても改心しそうにない悪党召喚物で完結した作品(一発ネタ以外で)ってなんかあるかしら?
ルイズが使い魔に染まってジョゼフ化したりとか、使い魔がラスボスになるとかあるけど
どっちにしてもアルビオン辺りから展開が原作と完全に別物になるせいか、大体の作品がその辺で止まる…

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 22:34:29.80 ID:K4CC0gGa
>>314
タバ冒でハシバミ草の描写を確認してみたけど、シルフィードもタバサも苦いと感じてたぞ

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 22:36:26.14 ID:z6oqQunC
ちょっと苦さ強めの日本ほうれんそう想像してる

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 07:10:31.60 ID:wNhJzuqY
だから、単に癖のある味(苦い味)ってだけのことだろ?
そんなものを食ってどうなるかと言われてもどうもならんでしょとしか言いようがないじゃない
ウマいと思うかマズいと思うかはわからんけど

319 :123:2015/08/12(水) 08:05:39.61 ID:3i0lvyzN
スコールの人へ、せめて打ち切りは勘弁してよ(^_^;)

320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 10:46:10.35 ID:JqxAqy5y
>>319
ネットのSSにはよくある話だから気にしてたら身が持たんよ。

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 19:03:33.52 ID:oc92imIF
短編でもない限り9割はエタるものと思ったほうがいいよね

322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 22:25:33.42 ID:47Sro7Th
ディーキンは今回で一巻のラストまでいって一区切りついたみたいな感じかね

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 22:39:15.61 ID:3csL5+vD
原作一巻ってssにするとかなり長いんだよな。みんな知ってるシーンばかりなんだからかなり省略していいと思うんだが

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 22:44:12.83 ID:TMvJtrk4
あんま省略しすぎると読んでてつまんないやろ
ダイジェスト読みたいわけじゃなし

俺は濃いめの味付け好きだから描写濃いのは歓迎

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 23:07:55.76 ID:3csL5+vD
だからといって例えばギーシュとの決闘までに10話近くも費やすようなのは勘弁、実際そんなのもあった
原作と同じ展開をなぞるんだったらダイジェストのほうがいい

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 23:12:37.20 ID:TMvJtrk4
単なる好みの問題だと思うけどねぇ
同じ情景を描いて洋画描写次第で別物にもなるし面白さも全然変わってくるのが文章の面白いところ
単に飯食ってるだけのシーンでも面白いつまらないは確実にあるしな

327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 23:29:47.57 ID:3csL5+vD
好みについては、自分はテンポよく話を進めてほしいと思うほうだからそれはお互い様でいいかな
ただテンプレ展開、才人をただ入れ替えただけってのはどうしても読む気がしないな
それくらいなら完全オリジナル展開、もしくは本編の流れから離れたところで進む物語を見たい
一例としては同じくスコールが召喚されたSeed戦記ハルケギニアはけっこう好きだった

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/12(水) 23:38:24.74 ID:wNhJzuqY
テンプレ展開ってのはどこまでがテンプレに該当するんだ?
サイトの代わりにルイズに召喚されたら、
ルイズとの関係性が原作とは全然変わっていたりギーシュと決闘すんのがシエスタだったり、
そもそも決闘起きなかったりしてしてもテンプレ扱いになるのかな?

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/13(木) 10:09:23.03 ID:VQY7UArQ
>>328
ならないんじゃないか?
それは原作の流れに大体沿ってるってだけで、別物になってるように思う。

名前と口調、戦闘シーンだけ変化してるってやつのことだろか。テンプレとは。

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/13(木) 20:34:56.11 ID:KRNBS7Mx
テンプレなssがどういうものかといえば、昔なろうに銀魂とのクロスがあったけど
銀時ほか新撰組など銀魂の主要キャラの多数がハルケに来てるにもかかわらずアルビオンとの戦争まで大筋に一切の変化なしってのがあった
サイトとは性格も能力も影響力も全然違うキャラが長いこといるにも関わらずに頑ななまでの原作なぞりには呆れたわ。それでもなろうの魔境の中ではましなほうだったが

331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/14(金) 01:13:06.81 ID:niCYh8B0
テンプレにならない話か
ニャルラトホテプが召喚されるのを考えてたらシエスタに化けてギーシュをボコったり
フーケの代わりに宝を盗んだりレコンキスタに入ったり実はジョゼフの正体が別のニャルラトホテプだったり滅茶苦茶になった

332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/14(金) 21:09:15.65 ID:8I4g50o9
スパークドールズとギンガスパークを召喚したらどうなるだろうか

333 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:18:08.60 ID:c5GjywDw
>>319
自分で書いてて面白くないな、と思ったら、強引にでも終わらせます。
ですが、せめて一巻ラストくらいまでは頑張ろうと思っています。
いえ、気力があれば良いところまで書ききりたいと思ってはいますが。

この調子だと、私が480KBを踏みそうですね。
ですが、スレ建てをしたことが殆ど無いのでできるか不安ですが、やれるだけやってみます。

12時30分〜35分から投下を開始します。
もしかしたら規制くらうかも知れないので、ケータイから仮支援をするかも知れません。

334 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:31:29.51 ID:c5GjywDw
それと、今更ですが、重大なミスを見つけてしまいました。
朝起きてバハムートと戦って、その後オスマンと話して、朝食、という流れだったのですが、間に削除した部分があり、朝からいつの間にか昼食という形になっています。
朝食はスコールのせいで食べ損ねたとルイズが言う→ルイズの爆発→昼食
ということにする予定だったので、ルイズの爆発を前後させて
朝食食べ損ね→通常授業→昼食→決闘→ルイズの爆発、とし、最初の二つは短縮という形をとらせてもらいます。
申し訳ありません。


「恐るべき力じゃ……」

 騒動の中心にいたスコールを、遠くから見つめていたオスマンは、椅子に深く体を預けた。

「えぇ……とても強力で強大な力です」

 コルベールもイフリートの破壊力を目の当たりにして、己の炎でもあそこまでの力は出せないだろうと考えていた。
 数分前に揉め事が起きているから眠りの鐘の使用許可を教師が求めている、そうロングビルに伝えられ、その必要は無いと告げると杖を振るい、壁にかけてあった鏡から様子を二人で様子を伺っていたのだった。
 好奇心のつもりで見ていたのだが、あと少し遅ければギーシュはあの攻撃に潰されて命を落としていただろう。

「いかがいたしますか、オールド・オスマン」

 オスマンはその長い白髭を撫で、さてどうしたものかと考え始める。
 正直、スコールの行為はやり過ぎだ、と判断できるものだ。
 あの強大な力を無遠慮に生徒に向けたのだから。下手をすれば、というのはスコールも分かっているだろう。
 だが、オスマンにはスコールがギーシュを殺そうとしたようには見えなかった。

「…まぁ、今回は良いじゃろう。被害は抉られたヴェストリの広場だけのようじゃしな」

 そう言い、窓の外を見る。
 コルベールも少しだけ考えたあと、分かりましたと退室していった。

「(……さて、これからどうなるのかのぅ…)」

335 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:32:40.88 ID:c5GjywDw
 さて、ギーシュの決闘を終えたスコールが現在何をしているかと言うと。

「………はぁ…」

 ため息をつきながら、教室の掃除をしていた。
 あの後、部屋に戻ろうとしたのだがルイズに連れられて教室に向かい、一緒に授業を受けることになった。
 昼の出来事から自分に視線を寄せられて不快感をあらわにしていたスコールが教室から出て行くか考えた時に、その授業でルイズが教師に当てられ、教室が騒然となる。

「やめてください先生!」
「危険だ!」
「ルイズ、お願い、やめて」

 何が起こったんだ? 周りの反応が分からなかったスコールが教壇に立つルイズに注目する。
 何かしら呪文を言い魔法を放つ……ただそれだけのことだったのに、何故か大爆発が怒り、教卓は吹き飛び室内には黒い煙が立ち込めた。
 近くにいたルイズも煤だらけ、教師も吹き飛ばされて気絶、当然授業は中止になりルイズと使い魔であるスコールには滅茶苦茶になった教室の後片付けを命じられたのである。

「………おかしいでしょ。メイジなのに魔法もロクに使えないなんて」
「別に」

 どうでも良さげに即座にルイズとの会話を拒否すると、ルイズはスコールを睨んで、そろそろスコールに慣れてきたのか、すぐに落ち着きを取り戻してため息をついた。

「無愛想」
「…………あんたが魔法を使えるかどうかなんて俺には関係が無い。あんたが落ちこぼれだったり問題児だったとしても、あんたは俺の依頼主でしかないからな」

 突き放すような言い方に、もう少しくらい優しくしてくれても良いじゃない、と頬を膨らませるルイズ。
 だがそれはそれとして、先ほどギーシュを圧倒した力があるスコールに強く出れない。
 仮に、スコールの機嫌を損ねてスコールが自分の元から去ってしまうと、自分は本物のゼロになってしまう。
 初めてちゃんと成功した魔法なのだ、逃したくはない。
 と、そういえば昼食の時にスコールの席を準備していなかったことを思い出した。

「あの……お昼は、ごめんなさい。スコールの分を準備してもらうの、すっかり忘れてて。もう言ってあるから、夜からは普通に食べれるから」
「……あぁ」

 これにもスコールはやはりあまり気にしていなさそうにしていたので、ホッとして掃除を進める。
 黙々と作業をする二人。沈黙が続いていく。

「ねぇ、あのさ、前に魔女と戦ったって話してたわよね?」

 その沈黙に耐えきれなくなったルイズが、口を開いた。

336 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:33:06.63 ID:c5GjywDw
「凄い強い魔女だったんでしょ? どうして勝てたの?」
「……俺一人じゃ無理だった。何度も倒れそうになったが、俺には仲間がいた」
「その仲間も凄く強いのね」
「あぁ。そして誰も諦めなかった。大切なものを守るために戦ったんだ」
「時を圧縮する魔女……彼女は何がしたかったのかしら」
「…………さぁな」

 そんなもの知りたくも無い、と会話を途切れさせる。
 ただ、エスタの大統領が何か戯れ言のようなものを言っていたのを思い出した。

「……俺の知り合いが、「彼女は寂しかったんじゃないか?」と言っていたな」
「寂しかった……?」
「そいつはただのアホで、作戦のことも忘れて時間圧縮に飲まれた間抜けなんだが、時間圧縮の中で、死んだ妻と会ったらしい」
「…魔女にも、大切な何かがあったってこと?」
「どうでもいいことだけどな…」

 ある程度の掃除を終えたのはかなり遅い時間になってしまった。
 他の授業も既に終わっているとのことだったので、ルイズとスコールはアンヴィーズの食堂へ。
 アンヴィーズの食堂には、先ほどルイズが言った通りにスコールの席が用意されていた。
 ただし、その席は何故か教員達が座る席と同じ所にあり、スコールはまた不躾な視線に晒されて居心地が悪くなっていたのだが、随分とマシになっただろう。
 特に目の前に座る男はスコールをゴミでも見るかのように見ているので、それについても気分がまるでよくなかった。
 だが食べた物はかなり美味しかったので、それほど気にしないことにしたスコールだった。

 実の所、スコールに食べ物の好みは無い。
 あるものを食べ、あるものを飲む。その中で美味い不味いというものが付随してくるのだ。
 なので、コルベールに酒を勧められた時、スコールは面倒だ、と思った。
 というのも、食事が終わった後に「君の世界について聞きたいから、私の部屋で飲まないかね? 美味しいワインがあるんだ」と言われたのだ。
 であるが、どんな些細なことが元の世界へ戻ることに繋がるかは分からない。
 なるべくならそういうことに協力しよう…そう思って、ルイズにそれを告げてコルベールの部屋で二時間ほどの会話をした。
 普段酒を好んで飲まない(酒を飲んだのはバラムガーデンでのパーティ、その後のスコールたちの祝勝会、それとエスタの大統領に招かれてくらいだ)スコールにアルコールはそれなりにキツく、酔いを覚ます為に外の風に当たっている。
 
「…ふぅ……」

 この世界に来てから既に二日目の夜を終えようとしている。今日の朝まではそれなりに焦りのようなものを感じていたのに、今日一日で様々なことが起こり、そんな焦りも感じなくなりつつあった。
 それにスコール自身驚きを感じている。

337 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:33:41.44 ID:c5GjywDw
「(バラムガーデンはシド学園長がなんとかしてくれているだろう。今俺が欠けて困ることは何も無い)」

 スコールは現在、バラムガーデンの最高責任者という立場であり、世界中から英雄として扱われている。
 そんなスコールが消えたことにその世界が震撼していることなどスコールは知らない。

「(キスティス、ゼル、セルフィ、リノア、アーヴァイン。元気でやってるかな)」

 キスティスとゼルが、スコールが行方不明になったのはサイファーが絡んでいるかも知れない。
 そう言って風神雷神共々ボコボコにして尋問という名の拷問をしていることなど、スコールは知らない。
 もちろんサイファーに覚えは無いので、ひたすら口論という名の口げんかを繰り広げていることも知らない。

「…ふぅ…」

 再度ため息を吐き、部屋で戻ろうと立ち上がる。
 ルイズの部屋の前まで来て、ふと視線に気づいた。
 ……あれは…なんだ?
 トカゲのような生物がスコールをじっ、と見つめていた。スコールも負けじとじっ、と見つめる。
 やがてトカゲはスコールの足元へ近づいていくと、スコールの足を噛もうと口を開けた。
 後ろにスッと足を下げると、何もない空中で口を閉じる。

「なんだ?」

 そのスコールの問いに、トカゲはただ見つめることで答える。
 残念ながら何を言っているかサッパリ分からないので、謎のトカゲと睨めっこすることになった。

「キュルル…」

 そう鳴いたトカゲが、振り返るとノソノソと歩き出す。
 そして、キュル、と鳴いてスコールの方へ顔だけ向けた。

「…ついて来い、ってことか?」

 なんだか不思議な体験をしているものだが、酔いが回ったスコールは、とにかくいってみようとトカゲが向かった扉の前へ着いて行く。
 扉の前へ来た所で、何の前触れもなくガチャと扉が開くと、中から伸びて来た手がスコールの腕を掴んで中へ引きこんだ。
 少しだけ警戒をしたが、目の前ではかなりきわどい格好をした女がいて、スコールは呆然としてしまった。
 スコールの背後でガチャ、と鍵が閉まる音が聞こえる。

338 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:34:14.11 ID:c5GjywDw
「………。何の用だ?」

 すぐに落ち着きを取り戻したスコールは、眉間に皺を寄せてその女から目を逸らす。
 若干自分に何が起こっているのかに見当が付き始めていた。
 バラムガーデンでも同じようなことが起き、その時は冷たく突き放して泣き喚かれた上に他の部屋の連中が何事かと見に来て大騒動になったものの、スコールの言い分を信じてくれたので問題は解決した。
 が、こちらではスコールの人となりを知っている人物が殆どいない。何か問題でも起きたら…と内心ため息を吐く。

「いきなりごめんなさい。でも、この溢れる情熱を鎮火する手段を私は持ち合わせていないの」

 そんなことを言う女は、スコールの手を引くと無理やりベッドに座らせた。
 その強引な感じにリノアを思い出す。

「私の名前はキュルケ、そしてこの子は使い魔のフレイム、サラマンダー」
「……それで?」
「あなたはあたしをはしたない女だと思うでしょうね…見ず知らずの男を連れ込むなんて」
「あまり興味が無い」
「でも、私は微熱……松明のように突然燃え上がることもあるの」
「…そうか」
「あなたの姿……あのとてつもない力を持った竜と戦っていた時、そして、あの全てを燃え消そうとする程の力を持った炎の魔人を使役するあなたを見て、私の心も燃え上ってしまったの!」
「………」
「でも、あなたはきっとこんなはしたない女を許してくださると思うわ」
「………」
「あたし、あなたに恋をしてしまったの! まったく、恋はいつも突然ね」

 恋だとか愛だとか良く分からないスコールにとって、この手のアプローチは驚く程無意味だった。
 胸を押し付けられようと、露わになった足を開くような動作をしようと、スコールの表情一つ動かすに至らない。
 そんなスコールに、キュルケは不思議そうな顔をした。
 そしてキュルケにとってはあまりにも意外なことに、スコールはキュルケの肩をそれなりの強さでドンと押して、自分から離れさせ、立ち上がる。

「キャッ!」
「……悪いが、俺はそういうことにも、お前自身にも興味が無い。他を当たれ」
「あなたじゃなきゃダメなの!」
「一方的な行為なんて一人でしているのと変わらないだろ。だったら勝手にやってろ。俺を巻き込むな」
「………!」

 言い終えると部屋から出て行く。
 今まで男子にそんな扱いをされたことが無かったキュルケは、呆然とスコールが出て行った扉を見つめる。

「……ふ、ふふ…クールなのね。でもね、その程度の水をかけられた所で、私の情熱は消せないわよ…!」

 そう決意し、一人で燃え上がるキュルケだった。
 むしろ無下に断られたことでより一層火を強めるのは、キュルケの強さでもあった。

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/15(土) 12:34:48.26 ID:dwewn6qR
仮支援

340 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:35:32.48 ID:c5GjywDw
 廊下に出たスコールはそんなキュルケの決意など知る由も無く、目の前にいるこちらを睨むルイズにため息を漏らした。

「あんた、何してたのよ」
「別に」
「確か、ミスタ・コルベールとお話しをするって言ってたわよね?」
「あぁ」
「そそそそれがなんでミス・ツェルプストーの部屋から出てきているんですかねぇ?」
「………」
「お酒の匂いまでして! あああああんたキュルケに盛っていた訳ね? そそそそうなのね?」
「そんな事実は無い(なんで声が震えているんだ?)」

 スコールもさっさと否定すればルイズの怒りも収まったかも知れないのに、適当にあしらおうとしてしまうので、余計に風当りをよくしてしまう。
 というか既に嵐の前の静けさのようになりつつあるのだが、それでもスコールは弁明しようとしない。

「ダメ、キュルケだけは、絶対にダメ。手を出されるのも、手を出すのも、ぜぇーったいにダメ!」
「そもそも興味が無い。キュルケにも誰にもだ」

 その一言で、そういえばスコールはこういう奴だった……と怒りの風船から空気が抜けていく。

「………じゃあ、キュルケとは何にも無かったの?」
「コルベールと酒を飲んで戻ってきている最中にあいつにつかまっただけだ。面倒になったからすぐに出てきたが」
「…はぁ……それを先に言いなさいよ…」
「………。いや……。そうだな、悪かった」
「え?」

 スコールの意外な謝罪に、ルイズは素の返事を返してしまう。
 その反応に、若干拗ねたようになるスコール。

「俺だって謝罪くらいできる」
「あ、う、うん…そうね…」
「そこまで考えがいかなかった。すぐに経緯を説明すればよかったな」
「いや、私もその、問い詰める形になっちゃって、ごめん」
「いや」

 二人して謝罪をしあい、お互いに見つめ合うと、ルイズが面白そうに笑いだしてしまう。
 既に夜になっている為押し殺すように笑ってはいたが、今すぐにでも腹を抱えて笑い出しそうな様子だった。

「フッ……」
「あ……」

 スコールが、微笑んだ。
 それを見て、ルイズは、「(こんな顔もできるんだ…)」と心底驚いた。

「夜も遅い。早く寝るぞ」
「あ、うん」

 スコールが少しだけ、ルイズに心を開いた一日の夜。
 ルイズはスコールの顔を思い浮かべ、寝ているスコールをチラ見したりと悶々とした夜を過ごす事になった。

341 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:37:29.56 ID:c5GjywDw
ここまでです。
見やすいように、他の人の作品を参考にして、スペースを使うようにしてみました。

さて、初っ端からミスをやらかしたりとありましたが、少しずつ先に進めている現状に安堵するばかりです。

この仮支援、上手くいっているんでしょうかね……

それでは次スレを建ててきます。

342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/15(土) 12:50:02.59 ID:dwewn6qR
結局連続投稿規制されてしまいましたね……やりにくい……
どこかの投稿サイトかSS速報なども視野になってきますね、これじゃ……

次スレはこちらです。
http:hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1439610102/I50

343 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/15(土) 12:51:58.11 ID:dwewn6qR
手打ちしたのでミスりました……

http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1439610102/I50

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/15(土) 15:09:48.93 ID:2JBdtydG
乙乙

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/15(土) 16:45:52.81 ID:Nv6f2ipw

こんな態度でもモテるイケメンはずるいなぁ!

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