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リリカルなのはクロスSSその124

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/03/06(水) 21:49:31.87 ID:yqtnBkA8
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
本スレが雑談OKになりました。ただし投稿中などはNG。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその122(実際は123)
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1332255503/l50

規制されていたり、投下途中でさるさんを食らってしまった場合はこちらに
リリカルなのはクロスSS木枯らしスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1257083825/


まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはデータwiki】
ttp://www31.atwiki.jp/nanoha_data/

73 : ◆jTyIJlqBpA :2013/09/11(水) 20:53:03.06 ID:N5hyN/KT
ダァ……ァ……ン

何かが聞こえた。

(なんスか今の……銃声?)

ダ……ァァ……ン

銃声のような音は、坑道内を微かに反響しながら飛んできた。それからも数回、音は連続してウェンディの耳に届いた。
耳を澄ますと、音はエレベーターより上から聞こえてきた。どうやら地上から響いているらしい。

(どうしたんスかね)

不審に思いながら地上の様子を探ろうと、目をつぶって意識を集中、銃声を響かせている主の視界を探る。

―――へは ぁ はぁ は ぁ はぁ あはぁ―――

どこかの小屋に乗っているのだろうか。廃炭鉱を見渡せる見晴らしのいい場所で、化け物の男が猟銃を撃ち続けている。

―――ダン、ダン、ダン―――

男は何者かを狙い撃っていた。
男がいる場所と対岸にある、窓枠や扉すらない穴だらけで二階建ての荒廃した鉄筋コンクリートの建物。
男はそこに向かってひたすら猟銃を撃ち続けていた。

―――ダァン―――

その時、建物の二階のぽっかりと空いた窓から、発砲音が鳴り響いた。

銃声の直後、男の視界が大きく揺らいだ。首に被弾したようで、視界の真下からは大量の血が爆発したように飛び散る。
男は呻き声も上げられずにそのまま倒れ伏して、やがてその視界は暗転していった。やはり何者かが奴等と戦闘をしているようだ。

(一体誰が………)

男を撃った誰かがいる方向に意識を集中させる。頭痛と共に視界は切り替わった。

―――はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ―――

あの二階建ての建物の中にいるらしく、視界の主は息を切らしながら、長い間打ち捨てられてボロボロになった階段を駆け下りていた。
足取りはしっかりとしており、その手には猟銃が握られている。整った呼吸に、機敏な動き、血の通った浅黒い腕からして、奴等とは違う。
恐らく、人間だ。

(ちゃんと……ちゃんといたんスね、普通の人間が)

化け物達以外に、ちゃんと人間がいる。
その事実だけでも、長時間地下空間で化け物と共に閉じ込められていたウェンディを安堵させた。

――んは あ ぁぁ――

とその時、ふと背後から気配を感じ、ウェンディは思わず目を開けて後ろを振り返った。

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/09/11(水) 22:32:50.26 ID:T11RBzvw
支援

75 : ◆jTyIJlqBpA :2013/09/12(木) 01:59:11.57 ID:cyzB/JDx
すいません。いつも投稿している携帯が規制かけられたので、PCから投下を続行します

76 : ◆jTyIJlqBpA :2013/09/12(木) 02:08:37.85 ID:cyzB/JDx
PCからも上手くいかないのでやっぱり避難所に投下します。
レス無駄に消費して申し訳ありませんでした

77 :代理投下:2013/09/12(木) 02:22:57.33 ID:yNgIH9Uv
「か ぁがや ぁけ ぇ ぇた もぅ うぅ」

そこには化け物がいた。その手に握られた懐中電灯とつるはしに、呟いている口振りからすると、先程トロッコに隠れてやり過ごしたあの男のようだ。
ウェンディと目が合った途端、血涙に濡れた蒼白な顔を愉快そうに歪め、錆び付いたつるはしを持ち上げてみせた。

「……ネチっこいスね、ホントに」

溜め息を吐いてから、ウェンディは笑う男と対照的に恨めしそうな目で睨み付け、持っている金槌を構える。

「ひい゛ ぃと ぉつ ぅ や゛ぁ !!」

男は叫びながらつるはしを振り上げて躍り掛かってきた。ウェンディは振り下ろされるつるはしを避けるとその勢いで身体を回転させる。
そしてつるはしを振り下ろしてよろめきながら通り過ぎていく男の後頭部を目掛けて、裏拳のような形で金槌を叩き込んだ。
ごきっという鈍い音と共に、手に頭蓋骨が砕かれる感触が伝わる。

(やっぱ気持ち悪いっスね、この感触!)

ウェンディが未だ馴れない感覚に気分を悪くしている一方で、男はそのまま前のめりになって地面に倒れる。
しかしまだ余力があるようで、うつ伏せから仰向けになると、再び立ち上がろうとする。
ウェンディは倒れた男にすかさず馬乗りになり、とどめの一撃を振り上げる。その時、男は血に濡れた目をウェンディに向けて、余裕からか悦からか、歯茎を剥き出しにして笑って見せた。

「ッ……キモいんスよっ!!!」

男の気持ち悪い笑顔を見て、ウェンディは苛立ちを爆発させながら、その顔面に渾身の一撃を叩き込む。
べきょっ、という音と共に金槌の先が男の額にめり込み、呼応するように男の両目が飛び出かけた。男は手足を痙攣させて、そのまま動かなくなった。

ウェンディは息を切らしながら金槌を持ち直して黙って立ち上がり、男から離れた。
程なくして男は脊髄反射のような感情の無い動作でうつ伏せになり、土下座をしているような体勢に入った。

……まただ。
絶命してからするこの動作にどんな意味があるのかは分からないが、奴等化け物は一度殺すと、決まってこの体勢になり、
暫くすると何事も無かったかのようにまた復活をするのだ。
しかもこの体勢に入った奴等は鉄塊のように異常に硬くなり、その場からびくともしなくなる。
その姿はまるでさながらサナギのようだった。

78 :代理投下:2013/09/12(木) 02:24:57.70 ID:yNgIH9Uv
ビーッ ビーッ ビーッ ビーッ

『硬化』した男を呆然と見ていると突然、今度はどこからともなく、けたたましい音が響き渡った。

「な、なんスか!?」

驚いて思わず声をあげる。
何かの警告音のようだ。取り敢えず目をつむり意識を集中して、音の原因を探る。そしてそれはすぐに分かった。
先程上で奴等と撃ち合っていた、あの人間だ。
どこかの施設にいるらしく、目の前には赤いボタンがあった。どうやらそれを押したことでこのサイレンを鳴らしたようだ。
その行動の意図は分からないが、能力を通して見たところサイレンは坑内中に鳴り響いているようだ。
他の化け物達に意識を向けると、どの化け物達もサイレンの音に反応して今までの行動から外れた行動を取り始めている。
もしかしたら脱出の糸口が掴めるかもしれない、そう思ってウェンディは一人一人の視界を注意深く観察した。

―――なあ ぁ あ ぁぁ に ぃ い―――

音を辿るように、坑内を歩いている者。

―――ひっ はぁ あ はっはぁ ああは ぁ―――

音に反応してただ周りを見回すだけで、その場から動かない者。奴等のサイレンに対する動きは様々だが、その動向は大まかに動く者と動かない者で分けられていた。

(…………!)

―――えぇ ひっえひぃっ ひひ ぃひ ひひ ひ ひぃっ ひ ぃひ―――

奴等の視界の中に、大量のスイッチやランプが並んでいる機械が映っているものがあった。
ウェンディはその視界に集中し、見えるものを観察する。暗闇の中、化け物の照らす懐中電灯に浮き上がっているそれは、何かの制御盤のようなものだろうか。
もしかしたらエレベーターを稼働する電源があるかもしれない。

(もしかして、また当たりっスか?)

先程のエレベーターと同じく、視界から得た情報に確証は無い。
しかし暗黒に包まれた穴の中で明かりとなるデバイスを見つけて、何時間もさまよったと言えど運良くエレベーターを見つけ、
さらには偶然にも他の生存者が鳴らしたサイレンによって電源の制御盤らしきものを見つけたのだ。
まるで何かに導かれているかのように。

(……やっぱツイてるっスよ、あたし)

一連の出来事からウェンディは、その制御盤がこの錆び付いたエレベーターを動かしてくれると確証していた。
なにより能力で見た機械に付属しているランプは、赤や緑色に光っている。それは少なくとも電源は生きているという証拠だった。

「……行くっスかね」

そう呟き、ウェンディは一抹の確かな希望を胸に、制御盤を目指して、再び行動を開始した。

79 :代理投下:2013/09/12(木) 02:25:49.99 ID:yNgIH9Uv
以上です

80 : ◆jTyIJlqBpA :2013/09/12(木) 02:42:52.83 ID:p9PSygmZ
仕事早いですね……
代理投下本当にありがとうございます

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/09/16(月) 01:39:22.96 ID:RlGtCFob
投下乙
トライガンの人も来てたし
ブラスレイターの人も来ないかな

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/09/16(月) 13:09:33.23 ID:nUzvYv2b
R-TYPEΛ氏とEXECUTOR氏最近来てないですね

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/10(木) 18:07:14.78 ID:2M2SKjb3
何か避難所に書き込みあったけどここって余所の投稿サイトに晒しても良いんだっけ?
何かクラナガンとか別サイトで見覚えあるんだけど

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/10(木) 20:39:08.56 ID:onZHCY6S
そいつもしかして理想郷追い出された奴なんじゃないか?

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/14(月) 01:23:02.06 ID:NhS0S9E1
なのはもしくはなのはキャラが他作品世界でTUEEEするクロスって何かありませんか?
長編で

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/18(金) 11:39:46.31 ID:7EQv1Npx
ロクゼロとR-TYPEΛが撤退だってよ

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/10/23(水) 21:16:54.05 ID:BcHmwuQU
ロクゼロはどうでもいいが、r-typeは残念だな

88 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/26(土) 22:31:13.87 ID:13SiOR7L
お久しぶりです。本日23時半より『リリカル星矢StrikerS』第十話投下します。

89 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/26(土) 23:37:09.42 ID:13SiOR7L
それでは時間になりましたので、投下開始します。

   第十話 聖剣対魔剣! 燃え上がる業火

 研究室の中で、スカリエッティは複数のモニターを前に座っていた。
 映し出されている映像は、彼の最高傑作ゾディアック・ナンバーズが次々と敗北していく姿。しかし、スカリエッティは動揺を感じさせない冷徹な眼差しで、モニターをじっと観察していた。
「トーレとクアットロの様子は?」
 スカリエッティは通信画面越しにウーノに話しかける。
『現在、敵の追跡を受け、帰還がままならない状況です。通信をつなぎますか?』
 スカリエッティが頷くと、画面に新たにトーレが映し出される。姿を消して逃走しているクアットロは音声のみだ。
「二人とも、問題は?」
『機械に損傷はありません。正常に作動しています』
 トーレが掠れた声で答えた。
 自制心の強いトーレが疲労を隠し切れないのだから、フェイトの一撃が相当に堪えたのだろう。
 トーレがタウラスの聖衣を失わずに済んだのは、偶然によるところが大きい。グレートホーン・インパルスで突進の勢いを削いだのは確かだが、もしフェイトが腹部ではなく機械のある胸部を狙っていたら、あるいはトーレの体格がもっと小柄だったら機械は砕かれていた。
『申し訳ありません、ドクター。こっちは積尸気冥界波が使えなくなってしまいました。戻り次第、修理をお願いします』
 廬山昇龍覇にやられてからというもの、機械が不具合を起こしていた。直撃を避けてもこれだけの影響を及ぼすのだから、ドラゴンの奥義がいかに恐ろしいかよくわかる。
「積尸気冥界波は扱いの難しい特殊な技だからね。聖衣が無事だっただけでも、よしとしよう」
『乙女の柔肌に痣をつけるなんて、あの男、次の機会には八つ裂きにして差し上げますわ!』
 敗北したのが余程屈辱だったのだろう。クアットロは憤懣やるかたない様子だ。
 スカリエッティは二人との通信を終えると、ウーノに指示を出す。
「ガジェットの発進用意をしてくれ」
『妹たちの撤退支援ですね?』
「そうだ。ここの防衛に一部残して、残りは支援ついでに適当な町でも襲わせてくれ」
『わかりました』
 アジトの地下で、ずっと眠っていた兵器群に光が灯っていく。
 対時空管理局用に数だけは揃えている。AMFの意味がない聖闘士たちが相手でも、時間稼ぎくらいなら出来るだろう。
 それでも修理の時間まで確保できるかどうかは怪しい。この場所にも徐々に敵が接近してきているのだから。
 スカリエッティの顔に歪な笑みが浮かんだ。
「ああ、後少しだ。もうじき私の夢が叶う」
 事ここに至っても、スカリエッティは自らの夢の達成を微塵も疑っていなかった。

 広い湖の上で、シグナムは敵を迎え撃つべく待機していた。
「すまないな、アギト。不満はあるだろうが、まずはこちらの任務に付き合ってくれ」
 シグナムは隣のアギトに話しかける。
 本来ならドゥーエの対処をするはずだったのだが、今のところ所在が確認されていない。
「いないもんはしょうがねぇ。こいつを倒してあぶり出してやるぜ」
 シグナムとアギトがユニゾンする。シグナムの騎士服の上着が消失し、背中に四枚の炎の羽が出現する。
「あなたが、わたしの相手ですか」
 カプリコーンの聖衣をまとったディードが、湖の端に到達する。ディードの両手には、赤い光の刀身を持つ双剣が握られていた。前回の戦闘では使われなかったディードの固有武装ツインブレイズだ。
「そうだ」
 頷き、シグナムが左手を開く。掌の上には、ゼストの形見の指輪が乗せられていた。
『旦那』
「騎士ゼスト、あなたの魂をお借りする」
 指輪が輝き、形を変える。柄を縮め、まるで短刀のような姿になったゼストの槍を、シグナムは逆手に構える。
「エクスカリバー!」
 ディードがツインブレイズを使い聖剣を放つ。

90 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/26(土) 23:47:52.67 ID:13SiOR7L
 それよりわずかに早く、ゼストの槍がフルドライブを発動させる。急加速したシグナムの真横を走り抜けた斬撃が、湖を割り大量の水しぶきを上げる。
 エクスカリバーの威力を目の当たりにしながら、シグナムは不可解そうに眉を潜めた。
「一つ尋ねるが、エクスカリバーは手刀を使って放つ技ではなかったか?」
 カプリコーンの黄金聖闘士は四肢を刃のように研ぎ澄ませる。中でも手刀は、聖剣の名にふさわしい切れ味を誇る。
「ドラゴンに手刀の切れ味が悪いと指摘されましたので、武器で補わせていただきました」
「…………剣を使ったのは、それだけの理由か?」
「はい。どのような形であれ、技が使えるなら問題ないでしょう」
「ほう」
 口調こそ穏やかだが、シグナムの瞳が獲物を見つけた猛禽のように鋭くなる。
『シ、シグナム?』
 ユニゾンしているアギトが、シグナムの変化を感じ取り、やや怯えた声を出す。
「実はな、私はお前の相手はドラゴンに譲るべきかと思っていたんだ」
 カプリコーンの黄金聖闘士シュラは、強大な敵として青銅聖闘士たちの前に立ちはだかった。しかし、紫龍の覚悟に打たれたシュラは最後に改心し、諸共に死ぬはずだった紫龍を助け、たった一人で死んでいった。紫龍にとって恩義のある相手だ。
「だが、私にもお前と戦う理由ができた。お前は聖闘士でも騎士でもない。お前に聖剣を扱う資格はない」
「私の技に不満がおありですか?」
「大ありだ!」
 レヴァンティンがカートリッジをロードし、刀身が炎に包まれる。あたかもシグナムの怒りを体現するかのように。
 シュラがエクスカリバーをいかに誇りに思っていたか、紫龍の話だけで察するに余りある。
 武器も技もただの道具としか考えられない輩に、その誇りが弄ばれている。聖闘士と騎士の違いはあれど、同じく剣に誇りを持つ者として、シグナムに見過ごすことなどできない。
「貴様のまとう黄金聖衣、早々に聖闘士たちに返してもらおう」
 犯罪者の手に落ちた聖剣と、正義の騎士が振るう炎の魔剣が激突する。

 安全装置を解除したゼストの槍の性能と、ユニゾンによる負担の分担によって、シグナムは光速に限りなく近い速度をだせるようになっていた。
 最高速度はフェイト、なのは、キャロの支援を受けたエリオにわずかに劣る。だが、機動力では、なのはを抜いて三番手に位置し、攻撃と防御、速度のバランスはもっとも取れている。
 常人には視認できない速度で、二人は斬り結ぶ。レヴァンティンの炎とツインブレイズの光だけが長い尾を残し、まるで湖の上で炎と光の竜が暴れ狂っているかのようだった。
 シグナムはツインブレイズを的確に捌いていく。時折、刃が掠め肌を浅く切り裂くが、戦闘の趨勢に影響するようなものではない。
 通常の斬撃だけで勝てるだろうと高をくくっていたディードだが、シグナムの技の冴えに思わず目を見張る。
「私の方が速いはず…………なのに、どうしてついてこられるのですか!?」
 ツインブレイズを左右から挟み込むように振るう。シグナムは両腕の武器で受け止めると、すかさずディードを蹴り飛ばす。
「生憎と、自分より速い敵を相手にするのは慣れていてな」
 長年フェイトと競い合ってきたおかげで、スピードで勝る相手にどう対処すればいいかは、頭と体に叩き込まれている。
 まして、ディードがツインブレイズを実戦で使うのはこれが初めてだ。ナンバーズは戦闘データの共有ができるらしいが、長剣を装備している者は他にいない。ただでさえ習熟の難しい二刀流だ。ディードの剣技は拙さこそないが、動きが素直で読みやすい。
 剣の騎士の二つ名を持つシグナムの技量があれば、速度の差は埋められる。いっそでたらめに振りまわしていた方が、シグナムは苦戦しただろう。
「それなら――」
 ディードが双剣を大上段に振りかぶる。最大威力でデバイスごと両断するつもりだ。
「エクスカリバー!」
「レヴァンティン!」
 シグナムの剣がツインブレイズの横腹を叩き、強引に軌道を変える。
 紛い物でも、エクスカリバーの切れ味は侮れない。シグナムに防御の手段はなく、斬撃の軌道をそらすか、かわすしか選択肢はない。
 ディードがエクスカリバーを織り交ぜながら攻め立ててくる。
 シグナムにしてみれば、防具もなしに真剣で斬り結んでいるようなものだ。一手でも読み違えれば、即命取りとなる。それをこれまで経験したことのない光速の領域で実践せねばならない。
 シグナムは激しい怒りを感じる一方で、ぎりぎりの緊張感に心が躍るのを抑えられなかった。

91 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/26(土) 23:53:35.09 ID:13SiOR7L
「エクスカリバー!」
 横一文字に振るわれた聖剣を、今度は急上昇してやり過ごす。
「言ったはずだ。お前に聖剣を扱う資格はない」
 シグナムがディードを見下ろしながら厳しく言い放つ。
 人が武器を持つのは、素手以上のリーチと殺傷力を得られるからだ。しかし、その代償に動きは多少なりとも制限されてしまう。
 素手でありながら武器以上の切れ味を持ち、拳圧によって離れた敵を攻撃できるエクスカリバーは、究極の一つの形だ。
 ディードは武器によって威力は補えたが、斬撃が大振りとなり、聖剣本来の使いやすさを捨て去ってしまったのだ。
「お前の剣には魂がこもっていない。そんなもので、私を倒すことはできん」
「おかしなことを言いますね。ツインブレイズはデバイスではありません。魂がなくて当然ではないですか」
「そういう意味ではない!」
 ディードがツインブレイズを強く握りこむ。それがエクスカリバーの前兆であると、シグナムはすでに看破していた。
 シグナムは最大速度で敵の懐へと飛び込み、今まさに振り下ろされようとしていたディードの両腕をゼストの槍ではね上げる。
「これで終わりだ」
 レヴァンティンの炎が唸りを上げて逆巻く。
「紫電一閃!」
 袈裟がけの一閃が炸裂し、ディードを炎が呑みこむ。
 剣に乗せられた魔力が黄金聖衣を突き抜け、内側に取り付けられた機械を砕く。
 勝利の手応えを感じた瞬間、炎を突き破りディードのつま先がシグナムの両脇を引っかけた。
「これは――」
 シグナムの体が減速せずに、ディードに引っ張られるように加速していく。単純な拘束に見えるが、どうやっても外すことができない。
 シュラの使うもう一つの技、ジャンピングストーン。相手の勢いを利用して吹き飛ばすカウンター技だ。
 ディードから次々と黄金聖衣が離れていく。ディードは聖衣が完全に失われる前に、最後の執念で技を発動させたのだ。
「なるほど」
 シグナムは相手の顔を見上げるが、すでに昏倒した後だった。 
 騎士であるシグナムの盲点だった。まさか最後に頼るのが、剣ではなく足技だとは。
「お前は聖闘士でも騎士でもない…………だが、戦士ではあったのだな」
 シグナムのように己の武器や技に誇りを持つ者がいる一方で、武器も技も、己自身すら道具と割り切る者がいる。両者が相容れることは決してない。ただ強さで、己の正しさを証明するのみだ。
「見事だ。次はお互い、借り物なしで手合わせ願いたいものだな」
 シグナムは不思議と穏やかな心境で、敵の勝利への執念を称賛する。
「シグナム!?」
 シグナムからアギトが分離する。ゼストの指輪を抱え、アギトは戸惑いの声を上げる。
「行け。お前の使命を果たせ!」
 アギトの眼前で、シグナムの体が光速で蹴り上げられ、岸壁へと叩きつけられた。
 
 現場にヴィータとリインが到着した時、戦闘はとっくに終わった後だった。
 湖の岸辺に倒れたディードと、傍らに鎮座する黄金の山羊のオブジェ。そして、岸壁に深く穿たれた穴の底で、土に半ば埋もれるようにしてシグナムが横たわっていた。
 アギトの姿はどこにもない。
「……シグナム?」
 ヴィータがシグナムの隣に立ち、顔にかかっていた土を払ってやる。
「おい、起きろよ」
 シグナムの表情は穏やかで眠っているようにしか見えない。しかし、よほど深く傷ついているのか、呼びかけても反応はない。
 すでにこの結果は、アースラから伝えられていた。それでも実際にこの目で見るまでは信じたくはなかった。

92 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/26(土) 23:56:41.15 ID:13SiOR7L
 傍らのリインは口元を押さえて瞳を潤ませている。
「……またかよ」
 ヴィータの足元に滴が落ちる。
 脳裏に、ザフィーラとシャマルが闇に呑まれた姿が、子供の様に泣きながら倒れたはやての姿が、蘇ってくる。
「どうして……」
 ヴィータは己の手を見つめた。記憶はさらに過去にさかのぼる。八年前、ヴィータの目の前でなのはが撃墜された。なのはの血で赤く染まった掌を、ヴィータは一日たりとて忘れたことはない。
 ヴィータはあの日のなのはようにシグナムを抱き上げた。
「どうして私は、誰一人助けることができないんだよ!」
 ヴィータの嘆きの声が、湖畔に響き渡った。

「ピラニアンローズ!」
「サンダーウェーブ!」
 黒バラを貫き、瞬のネビュラチェーンが稲妻の軌跡を描いて飛ぶ。
「IS発動、ランブルデトネイター」
 チンクが指を弾くと、貫かれた黒バラが爆発し、ネビュラチェーンの勢いを削ぐ。
「くっ!」
 瞬はやむなく鎖を手元に引き戻す。
 チンクが同時に四つの黒バラを投擲する。
「ローリングディフェンス!」
 瞬の鎖がまるで竜巻のように回転し、黒バラも、続いて起きた爆風も全て吹き散らす。
 都心から離れた場所に存在する研究施設。資材搬入用の大きな通路の中で、瞬とチンクは戦っていた。
「まさか、たった数日でランブルデトネイターを防げるようになるとはな」
「なのはさんたちのおかげだよ」
 訓練の間、なのはやフェイトたちの砲撃魔法を受け続けたのだ。ネビュラチェーンが過剰反応しないよう闘志を抑えて攻撃できるのだから、六課隊長たちの実力はさすがだ。
 瞬は呼吸を整えながら、チンクの攻略法を模索する。
 ランブルデトネイターが強力な武器であることはわかっていたが、まさか強固な盾にもなるとは思わなかった。爆発で鎖を防ぐ様は、まるで炎でできた大輪のバラの盾だ。ネビュラチェーンは、バラの盾によってことごとく無効化されていた。
 互いに攻防一体、否、防御の比重の方が大きい。ゆえに、戦いはどちらも決め手に欠けるまま、三十分が経過した。

93 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/26(土) 23:59:10.79 ID:13SiOR7L
 六課のみんなには一時間という時間制限がある。もしもの場合に援護に行けるよう、これ以上ここで時間をかけるわけにはいかない。
 瞬はコスモを燃やし、鎖を構えた。
 
 死力を尽くして戦う二人の様子を、物陰からひっそりと窺う者がいた。兜についたサソリの尾が音もなく揺れる。
 瞬が攻撃に意識を傾けた瞬間、ドゥーエは地面を滑るように動き出した。真紅に塗られたピアッシングネイルが、瞬の脇腹を狙って突き出される。
「なっ!」
 突然の乱入者に、瞬だけでなくチンクまでもが驚く。
 瞬のサークルチェーンが防御しようとするが、刹那の差で間に合わない。ドゥーエの爪が瞬に迫り――

 ヒュッ。

 風を切り飛来した金属片が、ドゥーエの爪にぶつかり動きを止めた。
「誰!?」
 ドゥーエは手首を押さえて、誰何の声を上げる。金属片は鳥の尾羽のような形をしていた。
「盗人だけでは飽き足らず、一対一の真剣勝負に横槍を入れるとは、どこまでも見下げ果てた奴よ」
 驚くほど攻撃的なコスモが顕現する。全てを焼き尽くす業火の様なコスモが、不死鳥の姿を形作る。
 通路の奥から、眉間に傷を持つ精悍な顔立ちの男が歩いてくる。身にまとうのは、不死鳥の尾羽がついた白と濃紺の聖衣。
 男を見て、瞬は喜びに顔を輝かせる。
「兄さん、やっぱり来てくれたんだね」
 男は瞬にほのかに笑いかけると、一転して強烈な殺気をドゥーエに向けて放つ。
「貴様には、このフェニックス一輝が天誅を下してくれる!」
 瞬の兄にして、青銅聖闘士最強の男、一輝がミッドチルダの大地に降り立った。

94 :◆ce0lKL9ioo :2013/10/27(日) 00:05:39.54 ID:kV5hoDrZ
以上で投下終了です。
それでは、また。

95 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 22:36:40.32 ID:PPnPV5b1
お久しぶりです。本日23時半より『リリカル星矢StrikerS』第十一話投下します。

96 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 23:37:26.45 ID:PPnPV5b1
それでは、時間になりましたので投下開始します。

   第十一話 絆の為に! バラは炎と共に散る

 暖かな空気が、泥沼の底に沈んでいたセインの意識を覚醒させた。
 白く清潔に保たれた室内に、かすかに漂う消毒液の臭い。セインは医務室のベッドに寝かされていた。
 セインが上体を起こすと、三枚重ねて乗せられていた毛布がずり落ちる。
「来たか、一輝」
 小さな呟きに振り向くと、室内の色に溶け込むように、キグナスの聖衣をまとった氷河が窓辺にたたずんでいた。
 氷河は遠い眼差しを窓の外へと注いでいた。まるでよく知る誰かがそこにいるかのように。
 その瞬間、セインは絶対零度の凍気によって自分が倒されたことを思い出した。
 蘇ってきた寒気と恐怖に、セインは震えながら毛布を抱き寄せる。もしやと思って指先を調べるが、凍傷にかかった様子はなかった。
 セインはひとまず胸を撫で下ろす。
「気がついたようだな」
 氷河が視線だけをこちらに向けてきた。キグナスの聖衣の氷はまだほとんど解けていない。セインが敗北してから、さほど時間は経っていないようだ。隣には、水瓶を抱えた乙女のオブジェとなった黄金聖衣が置かれている。
「黄金聖衣とコスモに感謝するんだな」
 氷河が突き放すように言う。その二つのどちらが欠けても、セインは凍死していたはずだった。
 しかし、セインは毛布に包まりながら、にっこりと氷河に笑いかける。
「優しいんだね」
「何のことだ?」
 氷河はとぼけるが、セインにはお見通しだった。
 セインが意識を失っていた時間はごくわずかだ。なのに、アクエリアスの聖衣は表面に結露こそ生じているが、どこも凍結していない。
 黄金聖衣を凍結させるには、絶対零度が必要となる。つまり最後のオーロラエクスキューションは、絶対零度にわずかに足りていなかったのだ。氷河が手加減してくれたのだろう。
 仮にセインを倒すのにそこまで必要ないと判断していたとしても、同じことだ。凍傷にすらかかっていないということは、氷河はセインをあの極寒の室内からすぐさま連れ出し介抱してくれたのだ。
 三枚重ねの毛布に、室内の気温はエアコンによりやや高めに保たれている。セインが寒くないようにという配慮だろう。敵である自分にここまでしてくれるのだ。どんなにクールを気取ろうと、氷河が人情家であることは疑いようがない。
(そして、甘いんだね)
 セインは心の中で舌を出し、ディープダイバーの準備をする。
 助けてくれたことには感謝しているが、それはそれ、これはこれだ。連行される前にとっとと逃げ出すに限る。
 セインはにこにこと愛想笑いを浮かべつつ、慎重に氷河の隙を窺う。
 氷河はしばらくセインを見ていたが、やがて興味を失ったように窓の外に視線を戻した。
 セインは即座にディープダイバーを起動させた。ベッドを突き抜け、一息に床下まで潜行しようとする。
 ピタリと氷河の人差し指が、セインの額に突きつけられた。
 セインの体は、わずかにベッドに沈んだだけだ。いつの間に隣まで移動したのか、セインにはわからなかった。聖闘士のスピードの凄さを改めて実感する。
「逃げるつもりなら、動きを封じさせてもらうが?」
 氷河の指先に凍気が集中する。カリツォー、またの名を氷結リング。氷の輪で相手の動きを封じる技だ。
「……あ、あははは、冷たいのはもう勘弁」
 セインは両手を上げて降参の意を示す。どうやら逃亡は無理のようだ。
 凍結の恐怖はセインにしっかりと植え付けられていた。セインが冬を好きになることはもうないだろう。

 その頃、通路の中で、聖闘士の兄弟とナンバーズの姉妹が互いに牽制しあっていた。
「兄さん、気をつけて。彼女たちは黄金聖闘士の技の他に、魔法を使うんだ」
 チンクから視線をそらさず、瞬が一輝に警告する。
「魔法か。どうりで面妖な術を使うわけだ」

97 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 23:38:29.30 ID:PPnPV5b1
「ピスケスは僕に任せて。兄さんはスコーピオンをお願い」
 一輝の問いかけるような眼差しに、瞬は笑顔で応える。
「僕もアテナの聖闘士だ。一人でも大丈夫だよ」
「そうか」
 一輝がドゥーエに拳を向ける。
 チンクとドゥーエは素早く通信を交わすと、ドゥーエはその場から身を翻した。
「逃がさん!」
 一輝がドゥーエを追いかけ、二人は建物の外へと走り去っていく。
 瞬とチンクが通路に取り残された形になる。瞬が鎖を構えると、
「すまない。私の姉が無礼をした」
 いきなりチンクが頭を下げてきた。
「えっ?」
 まさか謝られるとは思っておらず、瞬は意表を突かれた。
「信じてもらえないだろうが、私はこの戦いを誰にも邪魔させるつもりはなかった」
 チンクは瞬の目をまっすぐに見据えて言った。
 これまでチンクは戦いに信念など持っていなかった。そもそもナンバーズは闇討ちや破壊工作など、聖闘士からすれば卑劣と罵られる行為を、平然と行ってきた。
 もしドゥーエの行動が最初からの計画通りならば、それは知略の勝利だろう。しかし、ドゥーエはチンクに何の説明もなしに潜んでいた。別にチンクが劣勢になっていたわけでもない。これではチンクの力量を信じていないようではないか。
 チンクは戦う為に生み出された戦闘機人だ。己の性能を限界まで引き出せるアンドロメダとの戦いは、存在意義を認められたような気分にさせてくれる。この上で、勝利を得られるならば、それは最高の栄誉となるだろう。
 もしかしたら、知らず知らずのうちに聖衣や聖闘士に感化されているのかもしれないと、チンクは自嘲する。
「さあ、仕切り直しと行こう」
 ドゥーエにこの場から去ってもらったのは、チンクの意思だ。邪魔をされたくなかったのも理由だが、これでランブルデトネイターを思う存分使うことができる。
 黒バラを両手に構えるチンクに対し、瞬は両腕をだらりと下げたままだった。
「どうした? 決着はまだついていないぞ」
「……わからない」
 瞬のコスモが急速に勢いを失っていく。
「やっぱり君からは邪悪な気配が感じられない。なのに、どうしてスカリエッティに協力しているんだい?」
 ネビュラチェーンを地面に垂らしたまま、瞬は尋ねる。
「我らはドクターの夢を叶えるために生み出された。それ以外の理由など必要ない」
「そうか…………君たちと僕らは似てるんだね」
 瞬たちは、アテナの養父、城戸光政によって聖闘士の候補生として集められた孤児たちだった。兄弟からも無理やり引き離され、この世の地獄と呼ばれる修行の地へと送り込まれた。生きて日本に帰るには、聖闘士になるしかなかった。
 子供は無力だ。大人の言いなりになるしかない。
 それでも、瞬は自分をまだ恵まれている方だと思っていた。修業はつらく苦しかったが、師にも修行仲間にも恵まれ、兄とも再会できた。そして、今はアテナの聖闘士。戦いは嫌いだが、地上の愛と平和を守る礎となれる。
「知った風な口を。もういい。戦わないと言うならば、この場で倒す!」
 チンクが右腕を振りかぶる。
 瞬は悲しげに目を伏せ、ネビュラチェーンを地面に落した。
 チンクの視界が激しい怒りで真っ赤に染まる。最高の戦いになるはずが、相手の戦意喪失によって幕引きとなる。こんな結末、物語なら三流以下だ。
「ピラニアンローズ!」
 激情に任せ、黒バラを投擲しようとする。その時、瞬のコスモが爆発的に膨れ上がった。
「なっ!」
 チンクが黒バラを振りかぶった不自然な体勢で停止する。どれだけあがいても、指先を動かすことすらままならない。
「これは…………風!?」
 瞬の掌から発せられる風が渦を巻き、見えない鎖となってチンクを縛り上げていた。
「ネビュラストリーム」
 憂いを帯びた声で瞬が呟いた。
 アンドロメダ最大の奥義だ。瞬の生身の拳は威力があり過ぎる。ゆえに、普段はネビュラチェーンを使い、拳を封印してきた。

98 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 23:39:54.17 ID:PPnPV5b1
「この技だけは使いたくなかった。でも、これ以外に君を傷つけずに捕まえる方法がない」
 ネビュラストリームは、拳から気流を生み出し相手の動きを封じる。気流は、瞬のコスモの高まりに応じて激しくなり、最後は嵐となってあらゆる敵を粉砕する。ピスケスの命を奪った忌まわしき技だ。
「この程度……」
 気流を遮ろうとバリアを展開するが、間髪いれずに気流の圧力によって砕かれる。
「無駄だよ。本物のピスケスならばともかく、君はもう動くことはできない」
 ピスケスの黄金聖闘士アフロディーテは、瞬の気流に捕らわれながらも必殺のブラッディローズを放ってみせた。だが、ナンバーズの機械頼みのコスモでは、ネビュラストリームを破る域にまで達しない。
「スカリエッティは犯罪者だ。いくら親だからって、そんなものに従う必要はないんだ」
「ドクターを侮辱するか!」
「もっと君にふさわしい居場所が、きっとある。それを見つける為にも、罪を償う為にも、今は降伏してくれ!」
 瞬が必死にチンクに降伏を呼びかける。
 ネビュラストリームから抜け出す方法を見つけられず、チンクは唇を噛みしめる。
 その時、ウーノから戦況報告が送られてきた。
「何だと?」
 チンクが表情を一変させる。
「ノーヴェとウェンディが……ディエチとセインもか?」
 それはチンクの妹たちがことごとく捕縛されたという知らせだった。
「お願いだから、降伏してくれ!」
「………………」
 重ねて呼びかける瞬に対して、チンクは怒りの消えた静かな眼差しを返した。
 瞬は猛烈に嫌な予感に襲われた。チンクの眼差しは静かでいながら、奥底にはこれまでより強い覚悟が潜んでいる。瞬はあの目を知っている。あれは死を覚悟した戦士の目だ。
「残念だが、それはできない」
 チンクの周囲に二本の黒バラが出現する。気流で体の動きは封じられても、武器の転送だけはできる。しかし、その手で投げなければ、聖闘士に通用する速度はとても出せない。
「IS発動ランブルデトネイター」
 チンクの声に合わせ、黒バラが爆発する。しかし、距離が遠すぎるのと、ネビュラストリームの気流に邪魔されて、爆風は瞬の元へは届かない。
 何の意味もない行動を、瞬はいぶかる。
 次の瞬間、爆炎を突き破り、チンクが飛び出してくる。
「まさか!?」
 瞬は我が目を疑った。
 チンクはランブルデトネイターの爆発で気流を乱し、拘束を弱めたのだ。
 いかに黄金聖衣をまとっていたとはいえ、至近距離での爆発はチンクに深いダメージを与えていた。
 瞬が再びネビュラストリームを放つと同時に、チンクは両腕に持っていた黒バラを放り投げる。
 再び起こった爆発が、ネビュラストリームを霧散させる。
「まだだ!」
 爆風でピスケスの兜が吹き飛び、地面に落ちる。眉間から血を流しながら、チンクは隻眼で瞬を睨む。
「もうやめるんだ。これ以上やったら、君が死んでしまう!」
 瞬が気流を強めると、チンクはより多くのバラを爆発させ対抗する。熱風と衝撃波に命を削られながらも、チンクは決して歩みを止めない。
「どうして、そこまで……君はそこまでスカリエッティを……」
「違う」
 チンクは首を横に振った。
「アンドロメダ。白状するが、お前の指摘は正しい。私はドクターの夢に共感できているわけではない」
 チンクは生みの親であるドクターに感謝しているし、願いを成就させる手伝いもしたいと思っている。だが、それは強い動機になりえなかった。
 チンクは生まれてからというもの、命じられるまま粛々と任務を遂行してきた。
 しかし、妹たちが次々と誕生し情を移していくにつれ、研究と発展のためとはいえ、同じように家族がいて平穏に暮らしている者たちを犠牲していいのかという迷いが発生した。
 迷いが生まれるまでに、チンクは随分手を汚してきた。今さら生き方を変えることはできないから、他に生きる方法を知らないからと思考を停止させ、迷いから目をそらし続けてきた。

99 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 23:42:24.10 ID:PPnPV5b1
「だが、先ほど連絡があった。私の妹たちはほとんど捕まったらしい。お前たちに兄弟の絆があるように、私たちにも姉妹の絆がある。妹たちを助けられるのなら、この命など惜しくはない!」
 今のチンクにはもう迷いはない。ドクターの夢の為ではなく、捕らわれた妹たちを助けたいという強く純粋な願いが、チンクを修羅と化した。
「アンドロメダ、貴様の命もらい受ける!」
 チンクが血を吐くように宣言する。爆発にさらされ続けたチンクの両腕は、もうほとんど力が入らない。残された攻撃方法は、ランブルデトネイターによる自爆しかない。
 ネビュラストリームは黄金聖闘士すら縛り上げる恐るべき技。ナンバーズで瞬の気流を破れるのはチンクだけだろう。
 六課のメンバーは勝利こそすれ、ほとんどが戦闘不能で事実上相打ちに近い。残ったメンバーや聖闘士たちも、かなりのダメージを負っている。敗走中のトーレとクアットロが回復すれば、まだ勝機はある。
 チンクはここで諸共にアンドロメダを排除し、残った姉たちに後を託そうとしていた。
「君にも守りたいものがあったんだね」
 チンクの覚悟を知った瞬の頬を、一筋の涙が伝う。
 傷つけずに降伏させるはずの拳が、かえってチンクを追い詰め、死を覚悟させてしまった。やはりネビュラストリームは封印しておくべき技だったのだ。
 瞬は後悔の念に苛まれながらも、こちらも覚悟を決めるしかなかった。
 もしも瞬一人が命を差し出すことで、チンクが救われるならばそうしたかもしれない。しかし、チンクは瞬を道連れに死ぬつもりだ。
 瞬たちの世界は、常に神々の脅威にさらされている。黄金聖衣はアテナと世界を守る最後の砦だ。瞬たちの世界とミッドチルダ、二つの世界の愛と平和を守る為に、瞬はここで死ぬわけにはいかない。
「ごめん」
 瞬のコスモが高まり、気流がさらに激しく荒れ狂う。
「すまない、妹たちよ」
 愛する者たちの姿を思い浮かべながら、チンクは最後の力で跳躍する。アンドロメダはもうすぐそこだ。
「姉は先に逝く!」
 チンクはありったけの黒バラを召喚する。
「オーバーデトネイション!!」
 黒バラが一斉に起爆し、通路を爆炎が満たす。この瞬間、炎のバラが回廊を埋め尽くした。
「ネビュラストーム!!」
 瞬の拳から放たれた嵐が、炎のバラを吹き飛ばした。

 ピスケスの聖衣がチンクから離れ、魚のオブジェへと姿を変える。
 ネビュラストームによって天井に叩きつけられたチンクが、地面に横たわっていた。まるで手向けの花のように、周囲を炎の残滓が舞っている。

100 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 23:43:58.36 ID:PPnPV5b1
 美しくも悲しいその光景に、瞬は再び涙した。
「僕の拳は……また人を殺したのか」
 オーバーデトネイションは、瞬の体も激しく傷つけていた。瞬は足を引きずりながら、チンクの元へと歩いていく。
 瞬を倒したと確信したのか、チンクは安らかな表情をしている。
 せめて手厚く葬ってあげようと、瞬はチンクに向かって手を伸ばした。
「……」
 その時、かすかに、ほんのかすかにだが、チンクが身じろぎした。
 瞬はすぐさまチンクの口元に耳を近づけ、首筋に指を当てた。
 微弱だが、呼吸も脈も確かにある。
「……生きてる」
 瞬の体が歓喜に打ち震える。
 全力で放った互いの技が相殺しあったのだろう。もしも瞬が少しでも手心を加えていれば、どちらも助からなかった。
 奇しくも、相手を殺すはずの技が、相手を救ったのだ。
「僕の拳が……命を救ったのか?」
 瞬はわななきながら、己の手を見つめる。
 ただの結果論でしかないことはわかっている。チンクを殺す覚悟で拳を放った事実も消えるものではない。
 それでも、瞬は祈るようにチンクの前に跪いた。
「……ありがとう……生きててくれて、ありがとう」
 瞬は感謝の言葉を繰り返す。今度は悲しみではなく、喜びの涙が溢れてくる。
 ずっと、相手の命を奪うことしかできない呪われた拳だと思っていた。たった一つでも命を助けられたことで、どれだけ救われただろう。
 瞬は震える手で、量産型ストラーダを取り出した。爆発の余波であちこち破損していたが、まだかろうじて動いている。
 瞬はアースラにチンクの救助を要請すると、力を使い果たし、その場に倒れ伏した。

101 :◆ce0lKL9ioo :2013/12/23(月) 23:44:51.53 ID:PPnPV5b1
以上で投下終了です。
それでは、また。

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/01/31(金) 00:12:53.83 ID:hj3JuMuy
なんか1/1艦娘ネタ見てたら、アースラが1/1艦娘になるの想像した。

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/05/04(日) 22:00:41.25 ID:hdaMRG5f
保守

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/07/26(土) 22:40:33.58 ID:bNslOH7M
保守

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/09/20(土) 06:32:47.86 ID:V8IxB+Nf
保守
ブラスレイターの人とか来ないかな
某スレで7年ぶりの投稿があったんでいつまでも待ってる。

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/10/26(日) 00:42:24.52 ID:AWWB2FR9
保守

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/11/03(月) 18:24:05.60 ID:WOLVpfT/
保守

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/11/18(火) 00:55:10.61 ID:tN9jhiWs
右へ右へと進み続けるRPGが進化して帰ってきた
http://www.silversecond.net/contents/game/katamichi_plus/

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/03/13(金) 11:02:38.64 ID:PR9Zzd3q
意外とないのか、仮面ライダーウィザードとのクロス

はやての病状が悪化する前に拾った仁藤の餓死を防ぐため
蒐集開始せざるを得なくなるヴォルケン、とかしか思い浮かんでないけど

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/05/12(火) 17:38:47.02 ID:8wMvloy8
ここも滅んでしまったか、悲しいなあ

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/05/27(水) 08:23:33.60 ID:UoIuKL64
どう見ても水と油なクロスSSに挑戦したい
なのは(+とらハ設定) VS 東方Project と思いきや…まさかの協力

意外とこの2作品が真っ向からクロスすることってないんだよな
以前見た携帯の小説でstsメンバーが幻想入り?ってのはあったが

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/20(土) 13:42:45.09 ID:mgMS75Ap
騎士ガンダムとのクロス好きだけど続きこない。
もう書かないのだろうか・・・

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/28(日) 18:45:15.30 ID:aAX2Wyaq
>>111
そういえば確かにあまり見たことないな
今は無きにじファンやニコニコの幻想入りシリーズならあるかもしれんが

>>112
R-TYPE、トランスフォーマー、HELLSING…皆滅んでしまったよ

114 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/02(水) 22:10:37.64 ID:j2T0bbS6
こんばんは。
「魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS」の作者です。
明日夜に話を少しupしようと思いますので、皆様よろしくお願いいたします。

115 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/03(木) 23:12:51.76 ID:W+0xj8gv
それでは、UPを始めます。

―――2

デモリッシャーは巨大な車輪を豪快に振り回し、周囲に大量の海水を撒き散らして
派手に暴れ回っていた。
回転に巻き込まれたウェンディは遠心力に捕われ、脱出する事もままならない。
チンク達にとっては自分の姉妹が人質に取られているようなもので、簡単に手出し
できる状況ではなかった。
もやは相手にならず確信したデモリッシャーは、新たな行動を始める。
両腕を器用に動かして陸地へ向けて移動を開始したのだ。
再上陸されたら更に被害が拡大するばかりか、ウェンディがどうなるか判らない。
時間がない事を悟ったチンクは、禁止されている本局との直接通信を決意した。
「こちら蛮子隊リーダーチンク・ナカジマ。
現在正体不明の巨大機械と交戦中、至急増援を求む」

「こちらは管理局本局。
そちらのステータスでは当方との直接交信は認められていない。
直ちに所定の周波数へ戻り、そちらからの指示を待て」
予想されていたとはいえ、あまりにも官僚的な物言いに、チンクは怒りの声を上げる。
「それは分かってる!
だが、こんな巨大な機械の化け物が、今クラナガンに上陸しようとしているんだ!
今すぐ増援を寄越してくれ!!」
チンクは怒鳴りながら、水を蹴立てて陸地へと進むデモリッシャーの映像を転送する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ――」
送られてきた映像に度胆を抜かれた本局のオペレーターがそう言うと、画面に「保留中」と
表示が出る。
すぐに階級章で将官クラスと分かる、チンクの知らない幕僚に映像が切り替わった。
「蛮子隊リーダー、陸士隊と航空隊双方をそちらへ直ちに送る。
ただ、到着まで5分はどうしてもかかる。
その間は辛いと思うが、何とか踏み止まってくれ」
「了解しました」
通信が切れた後、チンクは苦々しげに呟いた。
「5分か…簡単に言ってくれるな…」
平常ならあっという間に過ぎるだろうが、1秒の差が生死の境を分ける今の状況では、
永遠とも思える長い時間だ。

116 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/03(木) 23:18:28.88 ID:W+0xj8gv
「チンク姉、今度は全員で一斉に攻撃を仕掛けてみるのはどうかな?」
ノーヴェの提案にチンクは尋ねる。
「一斉に?」
ノーヴェは頷くと話を続ける。
「今まではみんなバラバラに戦っていたけど、奴にはデカ過ぎてそれが通用しない。
でも、同じ時に一斉に攻撃すれば…
そこで言葉を切ったノーヴェの後を継いで、ディエチが続ける。
「倒すのは無理でも、動きを止められるかもしれない…だね?」
迷ってる時間も惜しい、チンクは即座に決断を下した。
「よし、すぐに攻撃をかけよう。狙うポイントは…」

陸地へ向けて着実に歩を進めていたデモリッシャーの眼前に、チンクが再び
姿を現した。
ランブルデトネイターを立て続けに撃ち込んで来るが、それらはことごとく
デモリッシャーの車輪に弾き落とされる。
「このチビが! いい加減しつこいぞ!!」
しつこく付きまとわれる事に苛立ったデモリッシャーは怒鳴り声を上げると、
チンク目掛けてミサイルを撃ち出す。
ミサイルはチンクへ肉薄するが、彼女は冷静にランブルデトネイターで一つ一つ
丁寧に撃ち落として行く。
デモリッシャーは唸り声を上げると、今度は回転する車輪をチンクに向ける。
チンクの方はハイスピードで一気に後退して車輪と巻き上がる海水の塊から逃れた。
その様子に更に怒り狂ったデモリッシャーは、チンクを標的に定め、彼女の後を
追って沖へ向かう。
“よし、喰い付いた!”
デモリッシャーが挑発に引っ掛かったのを確認すると、チンクはノーヴェと
ディエチに念を押す。
“二人ともまだだぞ。合図があるまで待て!”
“了解!”
二人から返事が返ってくると、チンクは更に沖へおびき出そうとデモリッシャー
に挑発を仕掛ける。
デモリッシャーは更にいきり立ち、怒りに任せてミサイルと機銃をむやみやたら
と撃ちまくる。
“今だ!”
デモリッシャーが冷静さを失っていると判断したチンクは、ノーヴェとディエチ
に攻撃を指示した。
チンクのランブルデトネイター、ノーヴェのリボルバースパイク、ディエチの
ヘヴィバレル、総ての攻撃がデモリッシャーの右腕、それも肘の一点に集中する。
彼女達の攻撃はことごとく命中、全員は手応えを感じていた。
しかし、デモリッシャーは倒れなかった。
ニヤリと不気味な笑いを浮かべると、デモリッシャーは片腕を振り上げて驚愕する
チンク達を薙ぎ払う。
「挑発して注意散漫になったところで、一箇所を攻撃を集中してひっくり返す…か。
中々いい考えだったが、相手が悪かったな!」
デモリッシャーは嘲ると、今度はチンク達の攻撃を意にも介さずに陸地へと向かう。

117 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/03(木) 23:23:34.70 ID:W+0xj8gv
「ぐっ…!」
策を破られたチンクが呻くのと同時に、彼女の傍らで空間モニターが一つ開く。
「こちらは“フライングタイガースリーダー”遅くなって申し訳ない。
蛮子隊リーダー、状況を教えてくれ!」
来てくれたか…。チンクは心底ホッと安堵した表情で、増援部隊からの通信に返答する。
「こちら蛮子隊リーダー。
奴はこちらの追撃を振り切って陸地に向かっている!
敵はミサイルなどの強力な質量兵器を多数保有しているから気をつけろ!!」

「新手か…しゃらくせぇ!」
増援部隊を視認したデモリッシャーは、先手とばかりにミサイルを一斉に発射する。
空戦魔導師たちは撃ち出されたミサイルを回避しようと散開するが、誘導装置が
逃げる魔導師たちを捕捉し、どこまでもしつこく追って来る。
ミサイルを撃墜、または障害物を利用して自爆させた者以外は次々と撃ち落とされる。
部隊は、たちまちのうちに全戦力の三分の一を喪失した。

118 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/03(木) 23:33:25.58 ID:W+0xj8gv
増援を蹴散らしながら進むデモリッシャーをチンクは歯噛みする思いで見ていた。
彼等が打ち破られたらデモリッシャーを防ぐ術はもはやない。
“誰でもいい、奴を止めてくれ!”
万策尽きたチンクが心の底から願った時、それに応えるかのように一隻のシャトル
が現れた。
シャトルは海上の様子を確かめるかのように一度旋回すると、一気に高度を下げ、
陸地に向かって進むデモリッシャーの右腕――先程チンク達が攻撃を仕掛けた部分――
目掛けて背後から体当たりをかける。
倒れなかったとはいえ、それなりにダメージを受けた部分へ、それも後ろからいきなり
シャトルにぶつけられては、さしものデモリッシャーも堪ったものではない。
完全に横倒しになり、巻き上がる水煙で姿が見えなくなる。

車輪が停まった際に空中に放り出されたウェンディを、機内から出てきた、
人の手の形をした大きなマニピュレーターが器用につまみ上げる。
デモリッシャーは怒りの咆哮を上げると、海中から全方向に向けてヤケクソ気味に
ミサイルを乱射する。
シャトルはそれをひょいひょいと回避し、自身もミサイルを発射して撃ち落としながら、
次にチンク達を収容してデモリッシャーから離れる。
チンク達を抱えたシャトルは人型に変形しながら優雅に対岸の埠頭に着陸を決め――
損ねた。
ズッコケたシャトルは、盛大に転げ回って真正面にあった倉庫の一つに正面からぶつかり、
建物を派手にぶっ壊す。
「ええい畜生! 着陸装置めすっかりイカれおって!」
老人のようなしわがれた声で悪態をつきながら、シャトル改め機械の巨人はコンクリート片やら
資材の残骸やらを撒き散らしつつ起き上がる。
埠頭に放り出されたチンク達は呆然と見詰める中、シャトルは着陸脚を杖代わりにして
立ち上がった。
と、次の瞬間、屁をこくような爆発音と共にシャトルの尻の部分からパラシュートが
飛び出して、機械の老いた巨人は先程潰した倉庫の上に仰向けにひっくり返る。
「何てこった今度はドラッグシュートもかい! こりゃラチェットに本格的な修理を頼まんと…」

119 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/03(木) 23:35:42.10 ID:W+0xj8gv
愚痴を垂れながら何とか起き上がった巨人にチンクが声をかける。
「あ、あの…」
それに対して、巨人は手を挙げて制しながら言った。
「おっと失礼、ちょいと状況を報告しないといかんのでね」
そう言うと、巨人はモニターを開いてどこかと連絡を取り始めた。
「こちらスカイファイアー。
アイアンハイド、そちらの要望通りデモリッシャーとやり合ってた魔導師の連中を救助したが、
これからどうするね?」
モニターの向こうから、“アイアンハイド”と呼ばれた人物(?)から返事が来る。
「了解したスカイファイアー。
コンボイ司令官から一旦撤収してくれとの事だ」
“スカイファイアー”という名の巨人は、頭を掻きながら愚痴った。
「やれやれ、面倒臭いのう。
ここで颯爽とデストロンの奴らをやっつける…という風にいかんのかい!?」
ぼやく巨人をアイアンハイドは宥めるように言う。
「仕方あるまい、デストロンとの戦闘で殺気立ってる現状では冷静な話し合いも
難しいだろう…というのは、マイスターと司令官の一致した考えだし、俺も同じ
意見だ」
「ま、司令官がそう言うのなら間違いあるまい。
了解した。直ちにザンティウムに引き上げる」
巨人は通信を終えると、チンク達に振り向いて言う。
「というわけで皆さん方、色々と聞きたい事があるかとは思うが、現状話し合いは
無理というのが上の意見だそうなので、わしはここで失礼させてもらうよ」
そう言いかけて巨人は飛び立とうとしたが、何か思い付いたらしく再びチンクたちの
方を振り向いた。
「おお、そうじゃ。自己紹介ぐらいなら大丈夫じゃろう。
わしはサイバトロン空中守護騎士のスカイファイアーっちゅうもんじゃ。
いずれまたお目にかかると思うが、その時はまたよろしく。
それでは、は〜いちゃいちゃい」
スカイファイアーと名乗った老巨人は掛け声と共にシャトルに変形すると、
瞬く間に空の彼方に姿を消した。

「な、何だったんだ…?」
「さあ…?」
唖然とした表情で呟くチンクに、同じく唖然としているノーヴェが気の抜けた声で答える。
その傍らで、目を回したウェンディが大の字になって伸びていた。
「はらほろひれはれ〜」

120 :魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS:2015/09/03(木) 23:41:26.09 ID:W+0xj8gv
では、今回はここまでになります。
ちなみにスカイファイアーが最後に言う「は〜いちゃいちゃい」は、「宇宙忍者ゴームズ
(ファンタスティック・フォー)」からの引用です。
次回はボーンクラッシャーvsスバルの戦闘にサイバトロンが介入するところの予定です。
皆様お疲れ様でした!

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/31(木) 12:05:10.88 ID:/UDHobN4
ふと思って覗いてみたら新作きててびびった
投下お疲れ様です
相変わらず面白いです

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/05/01(日) 02:32:36.15 ID:p01TJoYt
R-TYPEΛ復活してんじゃん!

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